説明

移植機

【課題】 待機状態にある苗が予期しない姿勢や予期しないタイミングで搬送されることを防止できるようにする。
【解決手段】 本発明の移植機1は、待機状態にあるポット苗Nを送り爪12により押し下げて、略平行に軸支されるとともに互いに逆向きに回転駆動された一対の縦送りローラ14に挟持させることにより下方移動させるように構成されている。そして、一対の縦送りローラ14の間に、ポット苗Nの茎葉部Nbの径より狭く、かつ、ポット苗Nの下葉Ncの厚さより広い隙間Sを設けたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、花等の苗を移植する移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移植機としては、特許文献1に記載されたものを例示する。この移植機は、図4及び図5に示すように、ポット苗Nを苗搬送ベルト76により水平姿勢で搬送して、根部Naが下向きとなる垂直姿勢に姿勢変更して植え付けるようにしたものである。
【0003】
この移植機によれば、苗搬送ベルト76によって、ポット苗Nが終端側に向けて順次間欠的に搬送されて、苗搬送ベルト76に向けて前下がりに傾斜したシャッター97と、苗搬送ベルト76終端との間で、ポット苗Nが順次1つずつ保持される。シャッター97と苗搬送ベルト76との間に保持されたポット苗Nの根部Naは、根部押し棒103により下方に押圧されて一対の苗挟持ローラ87よりも下方に移動する。図5に示すように、この一対の苗挟持ローラ87の間には隙間が設けられていない。このとき、シャッター97が開くことにより、ポット苗Nがシャッター97から落下して、ポット苗Nの茎葉部Nbの先端側がテーブル101上に載るとともに、茎葉部Nbの基端側が、一対の苗挟持ローラ87間に入り込んで、一対の苗挟持ローラ87間に挟持される。そして、ポット苗Nは、水平姿勢から根部Naが下向きとなる垂直姿勢に姿勢変更しがらポット苗Nの茎葉部Nbが挟持され、一対の苗挟持ローラ87の回転に伴ってポット苗Nを根部Naが下向きとなる垂直姿勢で下方移動させれた後、植付カップ88により圃場に植え付けられる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−194553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図5に示すように、ポット苗Nのなかには、柔らかい下葉Ncを有しているものがあり、シャッター97と、苗搬送ベルト76終端との間でポット苗Nが保持されている状態のときに、その下葉Ncが垂れ下がって一対の苗挟持ローラ87の間にかみ込まれてしまうことがある。これにより、根部押し棒103が下方に押圧する前に、ポット苗Nが予期しない姿勢で縦送りローラ87に引き込まれてしまうことがある。このため、本来とはずれたタイミングで植付カップ88に投入されてしまい圃場にポット苗Nをうまく植え付けることができなかったり、ポット苗Nの植付け姿勢や植付け間隔が乱れたりする等の植付ミスが発生するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の移植機は、
待機状態にある苗を苗押下手段により押し下げて、略平行に軸支されるとともに互いに逆向きに回転駆動された一対の縦送りローラに挟持させることにより下方移動させるように構成された移植機において、
前記一対の縦送りローラの間に、前記苗の茎葉部の径より狭く、かつ、前記苗の下葉の厚さより広い隙間を設けたことを特徴としている。
【0007】
前記苗の茎葉部の径としては、特に限定されないが、正常に生育した前記苗における茎葉部の最小の径を採用することが好ましい。前記苗の下葉の厚さとしては、特に限定されないが、正常に生育した前記苗における下葉の最大の厚さを採用することが好ましい。
【0008】
この構成によれば、前記苗の下葉が前記縦送りローラの間に入っても、該下葉が該縦送りローラにかみ込まれることがなく、前記苗押下手段により押し下げる前に予期しない姿勢や予期しないタイミングで前記苗が前記縦送りローラに引き込まれることを防止することができる。
【0009】
前記移植機においては、前記一対の縦送りローラは、互いの軸間隔を調節可能に構成された態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記隙間を植え付けようとする前記苗の形態に柔軟に対応させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る移植機によれば、待機状態にある苗が予期しない姿勢や予期しないタイミングで搬送されることを防止できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図3は本発明を具体化した一実施形態の移植機1を示している。本例の移植機1は、図1に示すように、ハンドル9を備えた歩行型として構成されており、左右一対の前輪2及び左右一対の後輪3に走行自在に支持された機体4と、該機体4の上部に設けられ、ポット苗箱の載置自在な苗載台5と、ポット苗箱から横一列ずつ取り出されたポット苗Nを一本ずつ搬送する苗搬送装置6と、苗搬送装置6により搬送されてきたポット苗Nを圃場に植え付ける植付装置7と、圃場に植え付けられたポット苗Nの側方の土を押圧して鎮圧するとともに株際に土を押し付けて覆土する覆土・鎮圧装置8とを備えている。後輪3、苗搬送装置6及び植付装置7は、図示しない原動機としてのエンジンの動力により駆動されるようになっている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0013】
苗搬送装置6は、図2及び図3に示すように、供給されたポット苗Nを水平に移送する無端状の搬送ベルト10と、該搬送ベルト10の端縁から落下したポット苗Nを受ける苗受け手段11と、該苗受け手段11からポット苗Nを下方へ送り出す送り爪12と、該送り出し中のポット苗Nをガイドするための苗ガイド部材13と、送り出されたポット苗Nの茎葉部Nbを挾持して垂直に下降させ植付装置7に供給する一対の縦送りローラ14とを備えている。
【0014】
搬送ベルト10は、前後に間隔を置いて配設された一対のフレーム板20に回転自在に支持された左右一対の長手プーリ(一方の長手プーリ21のみ図示)に巻き掛けられている。搬送ベルト10の外周にはポット苗Nを1つずつ分割配置する突起23が所定間隔で配設されている。
【0015】
苗受け手段11は、搬送ベルト10の終端部における搬送方向Cの前方に配設され、ポット苗Nにおける床土部Na及び茎葉部Nbをそれぞれ受ける床土受け部25及び茎葉受け部26を備えている。
【0016】
床土受け部25は、根部としての床土部Naの外周面を両側から挟持状に受ける一対の受け部材として、固定受部材27及び可動受部材28を備えている。固定受部材27は、搬送ベルト10の終端部の略真下にその板面が搬送方向Cを向くように配置されており、搬送ベルト10の前方側に配置された状態で機体4に固定されている。可動受部材28は、搬送ベルト10終端部の搬送方向Cの前方に所定間隔をおいて配置され、その上端側が機体4に固定された支軸29に回動自在に支持されることにより搬送方向Cの前後方向に揺動自在とされており、支軸29に装着されたバネ等の付勢手段(図示略)により、その下部側が支軸29まわりに固定受部材27に近接するように付勢されている。また、この可動受部材28は、支軸29の端部に固定されたストッパ30によって支軸まわりの回動が規制されている。図3に示すように、可動受部材28がストッパ30によって回動規制された状態において、固定受部材27及び可動受部材28の対向間隔は、下方に行くほど徐々に狭くなるように構成されており、該両受部材27,28の間の上下方向中途部でポット苗Nの床土部Naの幅よりも狭くなるように構成されている。このため、ポット苗Nの床土部Naは、搬送ベルト10の終端において、位置決め用の突起23に案内されて固定受部材27と可動受部材28との間に上方から落下し、該両受部材27,28の間の上下方向途中部で、該両受部材27,28により挟持される。
【0017】
茎葉受け部26は、板材により形成されていて、搬送ベルト10の終端側よりも下方側に配置され、機体4に支持されている。この茎葉受け部26は、搬送ベルト10の略幅方向に延設された横壁部31を備え、該横壁部31におけるポット苗Nの床土部Na側を受ける側には下方に向けて湾曲形成された舌片部32を備えている。また、横壁部31における搬送ベルト10の幅方向略中央かつ反搬送ベルト側の側部には、茎葉部Nbを横壁部31上に位置決めする位置決め片33が上方へ突設されている。
【0018】
送り爪12は、搬送方向Cに延びる支軸(図示略)に支持アーム36を介して揺動自在に支持されており、この送り爪12が略水平姿勢で待機状態にある苗を押し下げる苗押下手段である。支持アーム36は、前記支軸まわりに間欠的に往復揺動され、これにより送り爪12が上下方向に間欠的に往復移動するようになっている。そして、送り爪12は、その下降途中で下端の接当面が固定受部材27と可動受部材28との間に受持された床土部Naに当接して該床土部Naを押し下げて行く。すると、床土部Naが可動受部材28を押し開きながら下方移動して床土受け部25から外れるとともに、茎葉部Nbの株元側が縦送りローラ14間にかみ込まれる。
【0019】
苗ガイド部材13は、図3に示すように、反搬送方向C側が開口した略コ字状となるように棒材が折曲形成されてなっており、その下側部が機体4に支持されている。この苗ガイド部材13の上側部は、搬送ベルト10の反搬送方向Cへ向けて突設された棒状部38となっている。この棒状部38は、その先端が搬送ベルト10の終端部の近傍まで延設されている。棒状部38の先端側は、茎葉部Nbが苗ガイド部材13の内側に入り込みやすくなるように、少し斜め上方に向けて折曲されている。そして、搬送ベルト10により移動されてくるポット苗Nは、該搬送ベルト10の終端部近傍において、その茎葉部Nbの葉先側がこの棒状部38の下側に入り込み、その状態で苗受け手段11により受けられるとともに、姿勢変更されるように構成されている。
【0020】
一対の縦送りローラ14は、茎葉受け部26の舌片部32の略下方で、かつ、植付装置7の上方で、かつ、固定受部材27の下部と可動受部材28の下部との茎葉受け部26方向側に配置されている。両縦送りローラ14は、搬送ベルト10の幅方向に延びる回転軸39に固定され、該回転軸39は、その軸心まわりに回転自在となるように機体4に支持されている。縦送りローラ14の周面には、スポンジ、ゴム、軟質樹脂等の弾性部材が配設されており、ポット苗Nの茎葉部Nbを傷めないように柔らかく接するようになっている。一対の縦送りローラ14の間には、ポット苗Nの茎葉部Nbの径より狭く、かつ、ポット苗Nの下葉Ncの厚さより広い隙間Sが設けられている。隙間Sは、茎葉部Nbの径の約1/2以下に、かつ、下葉Ncの厚さの約2倍以上に設定することが好ましい。例えば、植付対象のポット苗Nの茎葉部Nbの径が約4〜5mmであり、ポット苗Nの下葉Ncの厚さが約0.5mmである場合には、隙間Sを約1〜2mmに設定するとよい。この隙間Sの間隔を調節可能にするために、一対の縦送りローラ14の回転軸34の間隔を調節可能に構成してもよい。
【0021】
次に、この移植機1の動作について説明する。搬送ベルト10は、ポット苗箱から横一列ずつ取り出されたポット苗Nを、図2に符号Paで示すように、横向き姿勢で一本ずつ搬送する。搬送ベルト10により移動されてくるポット苗Nは、該搬送ベルト10の終端部近傍において、その茎葉部Nbの葉先側がこの棒状部38の下側に入り込む。そして、搬送ベルト10の終端から横向き姿勢で落下したポット苗Nを、苗受け手段11で受け止めて、押し下げ手段としての送り爪12によって押し下げられるまで一時待機させる。このとき、ポット苗Nは図2に符号Pbで示す位置にあり、該ポット苗Nは床土受け部25から茎葉受け部26に行くほど上方に移行する傾斜姿勢で苗受け手段11によって保持される。このとき、一対の縦送りローラ14の間に下葉Ncが垂れ下がっても、該両縦送りローラ14の間には隙間Sが設けられているので、下葉Ncが両縦送りローラ14にかみ込まれることがない。次に、上死点位置から送り爪12が下降すると、送り爪12は、その当接面が前端側から床土部Naに当接して行き、床土部Naを前述した待機状態からポット苗Nが起きるようにさらに傾斜させながら押し下げて、茎葉部Nbの株元側を縦送りローラ14間にかみ込ませる。このとき、ポット苗Nは、茎葉部Nbが茎葉受け部26で受持された状態で床土部Naが押し下げられることにより床土部Naが縦送りローラ14に近接するように揺動しかつ茎葉部Nbの株元側が縦送りローラ14間にかみ込まれることにより高速で互いに逆回転する一対の縦送りローラ14によって茎葉部Nbが挟持されて下方に高速で送られる。これら動作が組み合わされることにより、ポット苗Nは、図2に符号Pb,Pc,Pdで示すように、苗受け手段11によって受持された横向き姿勢から下方移動しながら茎葉部Nbが上側で床土部Naが下側となる縦向き姿勢へと姿勢変更する。縦向き姿勢で下方の植付装置7へと送られたポット苗Nは、該植付装置7によって圃場の畝に植え付けられる。その後、覆土・鎮圧装置8がポット苗Nの左右両側の土を押圧してポット苗Nの株際に土を押し付けて覆土する。
【0022】
以上のように構成された本例の移植機1によれば、一対の縦送りローラ14の間に、ポット苗Nの茎葉部Nbの径より狭く、かつ、ポット苗Nの下葉Ncの厚さより広い隙間Sを設けているので、ポット苗Nの下葉Ncが縦送りローラ14の間に入っても、該下葉Ncが該縦送りローラ14にかみ込まれることがなく、送り爪12により押し下げる前に予期しない姿勢や予期しないタイミングでポット苗Nが縦送りローラ14に引き込まれることを防止することができる。
【0023】
また、一対の縦送りローラ14における互いの軸間隔を調節可能に構成すれば、隙間Sを植え付けようとするポット苗Nの形態に柔軟に対応させることができる。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る移植機を示す側面図である。
【図2】同移植機の苗搬送装置の側面図である。
【図3】同苗搬送装置の後面図である。
【図4】従来の移植機における苗受け渡し装置部分の側面図である。
【図5】同苗受け渡し装置部分の後面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 移植機
2 前輪
3 後輪
4 機体
5 苗載台
6 苗搬送装置
7 植付装置
8 覆土・鎮圧装置
9 ハンドル
10 搬送ベルト
11 苗受け手段
12 送り爪
13 苗ガイド部材
14 縦送りローラ
38 棒状部
C 搬送方向
N ポット苗
Na 根部としての床土部
Nb 茎葉部
Nc 下葉
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
待機状態にある苗を苗押下手段により押し下げて、略平行に軸支されるとともに互いに逆向きに回転駆動された一対の縦送りローラに挟持させることにより下方移動させるように構成された移植機において、
前記一対の縦送りローラの間に、前記苗の茎葉部の径より狭く、かつ、前記苗の下葉の厚さより広い隙間を設けたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記一対の縦送りローラは、互いの軸間隔を調節可能に構成された請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−223253(P2006−223253A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43993(P2005−43993)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】