説明

移植機

【課題】作業性が良く、取付け容易な空箱戻し装置を備えた移植機を提供する。
【解決手段】走行機体1の側方に設けた苗搬送装置20の外側方に空箱戻し装置30を配置する。空箱戻し装置30は、空箱搬送部32と、空箱搬送部32の搬送後流において機体外側下方に突出して設けられた集積部38からなる。前記搬送部32にて搬送される載置部材は、その搬送方向下流端にて、ガイド部材37に沿って前記搬送方向と交差する方向に移動し、順次前記集積部38に集積される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を圃場に移植する田植機等の移植機に係り、詳しくは苗を植付装置に供給した後の空の苗箱もしくはスクレーパ等(載置部材)を機体後方から前方に搬送して、回収する載置部材搬送装置(空箱戻し装置)を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗搬送装置により搬送された苗を植付装置の苗のせ台に供給した後、苗を載置していた空の苗箱又はスクレーパ(載置部材)は、一般に、オペレータが畦上の補助者に手渡すか放り投げることにより回収されている。また、走行機体に、空になった苗箱(載置部材)を機体後方から機体前方に戻す空箱戻し装置(載置部材搬送装置)を備えた移植機が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
該空箱戻し装置は、機体前部に設けられた苗箱ストック部(集積部)と、該苗箱ストック部から後方に延出し、機体後部から戻される苗箱を前記苗箱ストック部に導く苗箱案内部とを備えて構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−73515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記空箱戻し装置は、苗箱案内部に空箱を立てた状態で挿入されて苗箱ストック部に落とし込み、上方が横方向に拡がっている苗箱ストック部において、上記空箱は、斜めに倒れて順次上方に積み重なるようにストックされる。
【0006】
このため、苗箱ストック部にてストックされる空箱の量(数)が制限され、頻繁にストック部から空箱を回収する必要があり、作業効率が悪い。また、案内部からストック部に自由落下で落とし込むため、空箱の姿勢が一定となり難く、その場合、一層ストックされる空箱の量(数)が制限される虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、空箱等の載置部材が、整然と集積部に集積され、もって上述した課題を解決した載置部材搬送装置を備えた移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行機体(1)の後方に植付装置(2)を支持し、該植付装置(2)に苗を供給した後の該苗を載置していた載置部材を前記走行機体(1)の後方から前方へと向けて搬送する載置部材搬送装置(30)を備えた移植機において、
前記載置部材搬送装置(30)は、前記載置部材を立てた状態で搬送する搬送部(32)と、該搬送部(32)の搬送後流側において側方下方に位置する集積部(38)と、前記搬送部(32)と集積部(38)との間に前記搬送部(32)の搬送後流側において斜め下方でかつ前記搬送方向と交差する方向に延びるガイド部材(37)と、を有し、
前記搬送部(32)にて搬送された載置部材がその搬送方向下流端にて、前記集積部(38)の前記ガイド部材(37)に沿って前記搬送方向と交差する方向に移動し、順次前記集積部(38)に集積されることを特徴とする。
【0009】
前記移植機は、前記走行機体(1)の前方から後方に向けて、前記載置部材に載置された苗を搬送する苗搬送装置(20)を備え、該苗搬送装置(20)の前記走行機体外側方に前記載置部材搬送装置(30)が配置される。
【0010】
前記載置部材搬送装置(30)の集積部(38)は、外側方に開いた集積状態と、内側方に閉じた格納状態とに姿勢変更可能に構成される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、載置部材搬送装置の高低差を大きく取る必要がなく、載置部材搬送装置を取り付ける取付け位置の自由度を広く取ることが可能となる。これにより、オペレータ側と作業者側との高さ設定を容易に設定することができ、載置部材の回収作業が容易となる。
【0012】
また、載置部材が集積部にて搬送方向と交差する方向(機体横方向)にガイド部材に沿って移動し、順次集積部に整列して載置されるため、一度に多くの載置部材を集積部に集積することができ、更に載置部材を集積部から回収する際、集積された載置部材をまとめて回収することが可能であるため、回収作業の効率が向上する。
【0013】
請求項2に係る発明によると、載置部材回収の際、載置部材搬送装置は苗搬送装置の外側方にあるため、苗搬送装置が載置部材の回収の妨げになることがなく、載置部材回収の作業性が向上する。
【0014】
請求項3に係る発明によると、作業者が、集積部を集積状態若しくは格納状態に適宜選択することが出来るようにしたことにより、集積状態では作業者が機体側方から集積部に集積された載置部材を回収する際の作業性を向上させることが出来る。格納状態では、集積部を機体左右方向にコンパクトに格納することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る移植機の平面図、図2は本発明に係る移植機の側面図である。移植機(田植機)は前輪3及び後輪4によって支持されている走行機体1を有している。走行機体1の前方中央部にはボンネット5に覆われたエンジンが搭載されており、その両側にはフロントステップ6が形成され、該フロントステップ6の両側には肥料タンク7が設けられている。また、ボンネット5の後方には、ステアリングハンドル10等を有する操作部8が配設されており、操作部8の床面はフロントステップ6から繋がるステップ12によって覆われている。操作部8の後方には機体カバー13に連続して運転席11が配設されており、該機体カバー13後方には左右両側に前記ステップ12よりも一段高く且つ平坦に構成した苗供給用ステップ14が設けてある。また、運転席11の進行方向左側には苗を搬送、載置しておく苗搬送装置20が配設されている。更に、該苗搬送装置20の左側方(外側方)には苗を収納していた空箱又はスクレーパ(載置部材)を回収する空箱戻し装置30(載置部材搬送装置)が配設されている。
【0016】
また、走行機体1の後方には昇降リンク16を介して作業機である植付装置2が昇降自在に設けられている。植付装置2は後方に向けて下降傾斜するように設けられた苗のせ台15と、苗のせ台15より一株ずつ苗を掻き取って植えつける複数のプランタ18を備え、植付伝動ケースの下方には田面を整地すると共に植付け高さを一定にするための田面の高さを検知するフロート19が配設されている。
【0017】
図3は苗搬送装置及び空箱戻し装置の上面図、図4(a)は苗搬送装置及び空箱戻し装置の側面図、(b)はその正面図、図5はその正面図である。なお、本実施の形態では、苗載置部材として苗箱(空箱)を代表して表現しているが、スクレーパでもよいことは勿論である。苗搬送装置20は走行機体より延設されている取付けステー21によって走行機体に固定されている固定コンベア22と固定コンベア22の前部に連結され、固定コンベア22の上方に折りたたみ可能な第1コンベア23と、固定コンベア22の後部に連結され固定コンベア22の上方に折りたたみ可能な第2コンベア24から構成される。苗搬送装置20が伸展状態にある場合、固定コンベア31が前高後低に走行機体1に対して固定されているため苗搬送装置20全体として前高後低に傾斜しており、かつ前端は、走行機体1の前端より所定量突出するように伸び、後端は、苗のせ台15上端の近傍まで伸びる。
【0018】
第1コンベア23は固定コンベア22の前端部に取り付けられた固定コンベア前端取付けブラケット22bと、第1コンベア後端部に取り付けられた第1コンベア後端取付けブラケット23bとを連結ピン27によって連結することによって固定コンベア22と連結される。また同様に第2コンベア24は固定コンベア後端取付けブラケット22cと、第2コンベア前端取付けブラケット24bとを連結することによって固定コンベア22と連結されている。
【0019】
固定コンベア22は左右一対の固定コンベアフレーム22aと、フレームを連結する複数の連結部材26と、フレーム間に配設された転動ローラ25等から構成されており、苗を搬送するローラコンベアとなっている。
【0020】
第1コンベア23及び第2コンベア24は、固定コンベア22と同様に左右一対の第1コンベアフレーム23a及び第2コンベアフレーム24a、フレームを連結する連結部材26と、フレーム間に配設された転動ローラ25等により構成されている。また、左側方の固定コンベア前端取付けブラケット22bの下端及び左側方の固定コンベアフレーム22a後部において空箱戻し装置30を取り付ける為の取付けプレート28がボルトによって締結されている。
【0021】
空箱戻し装置30(載置部材搬送装置)は、全長に亘って配置された空箱搬送部32と、該空箱搬送部32の搬送後流端側において機体外側方に突出して配置された集積部38と、上記搬送部と集積部との間に搬送部の搬送後流側において斜め下方でかつ搬送方向と交差する方向に延びるガイド部材37と、からなり、前記苗搬送装置20が後方向に下降傾斜しているのに対し、該空箱戻し装置30は前方向に下降傾斜するように配設されている。
【0022】
空箱戻し装置30の全長に亘って延びる右側枠31aが前記取付けプレート28を介して苗搬送装置20の固定コンベア22の外側に固定されており、該右側枠31aは、空箱戻し装置30の後端から中央付近に亘る空箱を挿入する挿入部において、挿入口を拡げるために上段部が走行機体1方向に向けて開いた状態で構成されている。また、右側枠31aは、空箱戻し装置30の中央付近から前端においては挿入部よりも一段低く構成されている。一方、右側枠31aと共に側枠31の一部を構成する左側枠31bは、空箱戻し装置30の後端から中央付近に亘る挿入部において、上段部が走行機体外側方に向いて開いた状態で右側枠31aよりも高く構成されている。右側枠31aは、空箱戻し装置30の全長に亘って形成される空箱搬送部32の全長に亘って設けられているが、左側枠31bは、空箱戻し装置30の搬送後流側が集積部38となるため、空箱戻し装置30の中央付近から前端に亘って左側枠31bは延設されていない。
【0023】
空箱搬送部32は、空箱戻し装置30の全長に亘り延び、かつ機体外側方に向けて軽微に下降傾斜(2〜5°)した底板33を有しており、底板33の上に空箱の搬送を滑らかにするための転動ローラ34が多数設けられている。更に、底板33の前端部には底板33に対して垂直に起立したストッパ41が設けられている。
【0024】
集積部38は、空箱戻し装置30の機体進行方向左側方の中央付近から前端に亘り、機体外側下方に突出して構成されており、空箱搬送部32の底板33と、集積部38の底板40から互いに延設された回動プレート35が連結ピン36によって回動自在に連結されることによって、空箱搬送部32の前部外側方に連結している。また、底板40の前端、中央、後端から空箱が落下しない間隔でガイド部材37が空箱搬送部32に向けて延設されている。
【0025】
集積部38の底板40の左側方には、右側枠31a、左側枠31bと共に側枠31を構成する集積部側枠31cが設けられており、更に底板40の前端部には、底板40に対して垂直に起立した集積部ストッパ42が設けられている。
【0026】
なお、ガイド部材37は、集積部38を構成する1部材として底板40と一体として記載されているが、底面40及び集積部38とは別部材として構成しても良い。また、空箱戻し装置30は取付けプレート28の調整等によって取付け位置や高さの調整が可能であり、更に、集積状態における集積部38の機体外側方への回動角度によって集積することの出来る空箱の数を調整することも可能である。
【0027】
ついで、以上の構成による空箱戻し装置30を備えた移植機の動作について説明する。
【0028】
田植機等の移植機は植付作業の開始時又は作業途中に苗の補給をする場合、苗搬送装置20を伸展状態にして畦に対して垂直に移植機を寄せる。畦上の作業者は、苗を苗箱に納めた状態、スクレーパで苗箱から苗を掬い取った状態、スクレーパを苗箱に差し込んだ状態等の様々な状態で畦上のトラックから苗搬送装置20に苗を流す。
【0029】
この際、機体上の作業者は、集積部38の底板40と、空箱搬送部32の底板33から互いに延設した回動プレート35を連結する連結ピン36を回動支点として集積部38を機体外側方に開き、集積状態とする。
【0030】
苗搬送装置20に苗が苗箱に収まった状態で搬送されてきた場合、スクレーパで掬い取り植付装置2の苗のせ台15に掬い取ったマット苗を載置する。また、スクレーパに載せられた状態や苗箱にスクレーパを差し込まれた状態で苗が運ばれてきた場合、作業者は、スクレーパからそのまま植付装置2の苗のせ台15に苗を載置する。
【0031】
マット苗を取り出され空になった苗箱やスクレーパ等の載置部材(以下、空箱という)は、作業者により、苗搬送装置20の外側方に設けられた空箱戻し装置30の挿入部から縦にして挿入される。挿入部に挿入された空箱は、空箱搬送部32によってストッパ41に当接するまで転動ローラ34上を搬送される。空箱は、空箱搬送部32の前端部に垂設されたストッパ41に当接すると、ガイド部材37上を傾斜に沿って機体外側方へ移動し、集積部38の側枠である集積部側枠31c(既に集積された空箱がある場合は集積された空箱)及び集積部ストッパ44に当接して、順次、集積部38上に空箱が整列して機体横方向に並ぶようにして載置されることによって集積される。
【0032】
作業者は、苗の補充が終わると、集積部38に集積された空箱を上方に持ち上げるようにして回収する。この際、空箱戻し装置30は集積状態であるため、集積部38が機体外側方に開いており、空箱の回収作業が容易である。また、空箱戻し装置30は、苗搬送装置20の外側方に設けられているので、空箱回収の際に苗搬送装置20が回収作業を阻害することもない。集積された空箱は、集積部38上に機体横方向に並ぶようにして載置しているため、集積された空箱に他の空箱の重さが掛かることがなく、任意の空箱を1つずつ取り出すことも、まとめて回収することもでき、回収作業の効率が良い。
【0033】
空箱の回収が終わると作業者は集積部38を格納状態へと戻し、苗の移植作業を再開する。格納状態では、集積部38が機体内側方に閉じているため、機体左右方向の幅がコンパクトになり、移植作業の際に邪魔になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る移植機の平面図。
【図2】本発明に係る移植機の側面図。
【図3】苗搬送装置及び載置部材搬送装置の上面図。
【図4】(a)苗搬送装置及び載置部材搬送装置の側面図。(b)載置部材搬送装置の正面図。
【図5】苗搬送装置及び載置部材搬送装置の正面図。
【符号の説明】
【0035】
1 走行機体
2 植付装置
20 苗搬送装置
30 空箱戻し装置(載置部材搬送装置)
31c 集積部側枠
32 空箱搬送部(搬送部)
37 ガイド部材
38 集積部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に植付装置を支持し、該植付装置に苗を供給した後の該苗を載置していた載置部材を前記走行機体の後方から前方へと向けて搬送する載置部材搬送装置を備えた移植機において、
前記載置部材搬送装置は、前記載置部材を立てた状態で搬送する搬送部と、該搬送部の搬送後流側において側方下方に位置する集積部と、前記搬送部と集積部との間に前記搬送部の搬送後流側において斜め下方でかつ前記搬送方向と交差する方向に延びるガイド部材と、を有し、
前記搬送部にて搬送された載置部材が、その搬送方向下流端にて、前記集積部の前記ガイド部材に沿って前記搬送方向と交差する方向に移動し、順次前記集積部に集積される
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記走行機体の前方から後方に向けて、前記載置部材に載置された苗を搬送する苗搬送装置を備え、
該苗搬送装置の前記走行機体外側方に前記載置部材搬送装置を配置した、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記載置部材搬送装置の集積部は、外側方に開いた集積状態と、内側方に閉じた格納状態とに姿勢変更可能に構成された
請求項1又は2記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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