説明

移植機

【課題】高さ調節が容易で、作業性に優れた苗供給装置を備えた移植機を提供する。
【解決手段】前方コンベア後端取付けブラケット22bには、ストッパプレート26が回動自在に連結されており、ストッパプレート26は、前方コンベア22の前端部30に設けられたノブ34を移動操作することにより回動する。ストッパプレート26が回動すると、ストッパプレート26の固定コンベア前端取付けブラケット21bとの当接面が、第1当接面26cから第2当接面26dへと変わる。すると前方コンベア22は、実線部に示す状態から二点鎖線で示す状態へと下降する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を圃場に移植する田植機等の移植機に係り、詳しくは機体前方から後方へ向けて予備苗を搬送する苗搬送装置を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予備苗載せ台を兼用した苗搬送装置を機体に備えた田植機が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
該苗搬送装置は、畦際から連続的に予備苗を補給するため、左右一対の外枠間に転動ローラを多数設けたローラコンベアを備え、予備苗が収められた苗箱等が機体前方から後方に向いて搬送されるように構成されると共に、該ローラコンベアは、前方部と、中央部と、後方部と、に分かれて構成されており、前方部、中央部及び後方部が、直線状に延びた展開姿勢と、中央部上方に前方部及び後方部が折り畳まれた格納姿勢等に姿勢変化可能に構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−176680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の苗搬送装置は、予備苗を搬送する展開姿勢と、予備苗載せ台として機能する格納姿勢との姿勢変化は容易に行えるが、展開姿勢において、畦際にいる作業者が苗箱を流す際の供給口である苗搬送装置前方部の前端部は、ボルト等によって固定された部材によってその位置が決まっている。
【0006】
そのため、畦際の作業者が苗補給のため、展開姿勢にある苗搬送装置前方部の前端部から苗箱等を流す際、作業者の体格の違いや、圃場条件の違いによって、予備苗の供給口である苗搬送装置前方部の前端部の位置が、畦際の作業者にとって苗箱を供給する際の適正位置にない場合があり、苗箱の搬送に多大な労力を要することがある。
【0007】
そこで、本発明は、畦際の作業者が、予備苗供給口となる前方端部分で、苗搬送装置の前方部分の高さ調節を行えるようにして、上述した課題を解決した移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行機体(1)の後部に植付装置(2)を連結し、前記走行機体(1)に該走行機体(1)の前方から後方に向けて予備苗を搬送し得る苗搬送装置(20)を設けた移植機において、
前記苗搬送装置(20)は、前記走行機体(1)に配置された固定部(21)に対してその前方部分(22)が上下方向に回動自在にかつ該前方部分(22)の前端側の高さを変更自在に調節する高さ調節手段(26)を介して連結し、
前記前方部分の前端部(30)に、前記高さ調節手段を操作する操作部(34)を設けた、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、苗搬送装置は、走行機体に配置された固定部に対してその前方部分を上下方向に回動自在かつ該前方部分の前端側の高さを変更自在に調節する高さ調節手段を介して連結し、前方部の前端部に高さ調節手段を操作する操作部を設けたことにより、畦際にいる作業者(補助者)が該操作部を操作することによって、苗搬送装置前方部の前端部の高さを調節することが出来る。これにより、畦際の作業者の体格の違いや、畦の高低差等による圃場条件の違いによって、苗搬送装置の前端部が作業者にとって適正位置になくても、畦際から容易に苗搬送装置の前端部の位置を適正位置に調節することが可能となり、畦際の作業者は、楽な姿勢で容易に予備苗の補給作業を行うことができる。
【0010】
また、苗搬送装置の前端部の高さ調節をする際、工具等を必要としなく、どのような条件下においても、適宜に苗搬送装置の前端部の高さ調節を容易に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。移植機(田植機)は、図1及び図2に示すように前輪3及び後輪4によって支持されている走行機体1を有している。走行機体1の前方中央部にはボンネット5に覆われたエンジンが搭載されており、その両側にはフロントステップ6が形成されている。また、ボンネット5の後方には、ステアリングハンドル9等を有する操作部8が配設されており、操作部8の床面はフロントステップ6から繋がるステップ10によって覆われている。操作部8の後方には運転席13が配設されており、該機体カバー12後方には左右両側に前記ステップ10よりも一段高く且つ平坦に構成した苗供給用ステップ14が設けてある。また、運転席13の進行方向左側には苗を搬送、載置しておく苗搬送装置20が配設されている。
【0012】
更に、走行機体1の後方には昇降リンク15を介して作業機である植付装置2が昇降自在に設けられている。植付装置2は後方に向けて下降傾斜するように設けられた苗のせ台16と、苗のせ台16より一株ずつ苗を掻き取って植えつける複数のプランタ17を備え、植付伝動ケースの下方には田面を整地すると共に植付け高さを一定にするための田面の高さを検知するフロート18が配設されている。なお、本実施の形態では、苗を載置して搬送するものを、苗箱を代表して表現しているが、スクレーパでもよいことは勿論である。
【0013】
図3に示すように、苗搬送装置20は、固定コンベア(固定部)21と、前方コンベア(前方部)22と、後方コンベア23から構成されており、機体左側方に配設されている。固定コンベア21は、走行機体1より延設されている取付けステー19によって走行機体1に固定されており、前方コンベア22は、固定コンベア21の前部に連結されている。また、後方コンベア23は、固定コンベア21の後部に連結されている。
【0014】
固定コンベア21は、左右一対の固定コンベアフレーム21aと、フレームを連結する複数の連結部材25と、フレーム間に配設された転動ローラ24等から構成されており、苗を搬送するローラコンベアとなっている。また、その前端において固定コンベア前端取付けブラケット21bが固設されており、その後端において固定コンベア後端取付けブラケット21cが固設されている。
【0015】
前方コンベア22は、その後端において前方コンベア後端取付けブラケット22bが固設されており、前方コンベア22は、該前方コンベア後端取付けブラケット22bと、固定コンベア21の前端に固設されている固定コンベア前端取付けブラケット21bと、を連結ピン27aによって回動自在に連結することによって、固定コンベア21と連結されている。
【0016】
また、前方コンベア後端取付けブラケット22bにはストッパプレート26が回動ピン28によって回動自在に連結されている。ストッパプレート26は、略々台形状の板状部材であり、中央部には円弧状の穴26aが設けられている。この円弧状の穴26aには前方コンベア後端取付けブラケット22bから突設された突起部が嵌合する。更に、ストッパプレート26の外周には、切欠き部26bが設けられており、該切欠き部26bは、前方コンベア後端取付けブラケット22bから突設される他の突起部と当接してストッパプレート26の回動範囲を規制する。この円弧状の穴26aと、切欠き部26bによってストッパプレート26の回動範囲が規定されている。
【0017】
一方、前方コンベア22の前端部30には、前方コンベア22を掴むための握持部材32が左右一対の取付けプレート31間に設けられている。取付けプレート31には、L字状の穴が設けられており、該L字状の穴には、ノブ(操作部)34が移動自在に設けられている。ノブ34は、連結ロッド33を介してストッパプレート26と連結しており、畦際の作業者が、ノブ34を移動操作することによって、ストッパプレート26を回動させることができるように構成されている。
【0018】
後方コンベア23は、その前端において後方コンベア前端取付けブラケット23bが固設されており、後方コンベア23は、該後方コンベア前端取付けブラケット23bと、固定コンベア21の後端に固設されている固定コンベア後端取付けブラケット21cと、を連結ピン27bによって回動自在に連結することによって固定コンベア21と連結されている。
【0019】
なお、前方コンベア22及び後方コンベア23も、固定コンベア21と同様に、左右一対の前方コンベアフレーム22a及び後方コンベアフレーム23aと、フレームを連結する連結部材25と、フレーム間に配設された転動ローラ24等により構成されており、苗を搬送するローラコンベアとなっている。
【0020】
また、前方コンベア22と、後方コンベア23は、固定コンベア21の上方に折り畳み可能であり、苗搬送装置20は、全体として直線状に伸びた伸展状態と、固定コンベア21上に前方コンベア22及び後方コンベア23が折り畳まれた格納状態等に姿勢変更可能に構成されている。
【0021】
苗搬送装置20が伸展状態にある場合、固定コンベア21が前高後低に走行機体1に対して固定されているため、苗搬送装置20全体として前高後低に傾斜しており、かつ前端30は、走行機体1の前端より所定量突出するように伸び、後端は、苗のせ台16上端の近傍まで伸びる。
【0022】
ついで、以上の構成による苗搬送装置20を備えた移植機の動作について説明する。
【0023】
田植機等の移植機は、植付作業の開始時又は作業途中に苗の補給をする場合、苗搬送装置20を伸展状態にして畦に対して垂直に移植機を寄せる。畦際の作業者は、苗を苗箱に納めた状態、スクレーパで苗箱から苗を掬い取った状態、スクレーパを苗箱に差し込んだ状態等の様々な状態で畦際のトラックから苗搬送装置20に苗を流す。
【0024】
このとき、畦の高低差等による圃場条件の違いや、畦際の作業者の体格の違いにより、苗箱の供給口である苗供給装置20の前端部30が、畦際の作業者が苗を供給する際の適正位置よりも上方になる場合がある。その際、畦際の作業者は、苗箱の供給口を適正位置に調節するため、前方コンベア22の前端部30に配置された握持部材32を掴み、前方コンベア22を上方へと少し持ち上げる。この段階で、作業者は、ノブ34を取付けプレート31に設けられたL字状の穴の他端へと移動操作し、ストッパプレート26を回動させる。
【0025】
ストッパプレート26は、固定コンベア前端取付けブラケット21bと当接することで前方コンベア22の位置決めをしており、苗搬送装置20が、伸展状態の場合、ストッパプレート26の第1当接面26cが、固定コンベア前端取付けブラケット21bと当接している。ストッパプレート26が回動すると、ストッパプレート26の固定コンベア前端取付けブラケット21bとの当接面が、第1当接面26cから第2当接面26dへと変わる。すると前方コンベア22は、図3(b)中において実線部に示す状態から二点鎖線で示す状態へと下降する。
【0026】
なお、ストッパプレート26は、前方コンベア22が持ち上げられると、それまでストッパプレート26に掛かっていた前方コンベア22の自重が掛からなくなるため、ノブ34の移動操作により、回動可能となる。
【0027】
また、ストッパプレート26には、持ち手26eが設けられている。田植機側の作業者が、この持ち手26eを操作することによってもストッパプレート26を回動させることが可能である。
【0028】
畦際の作業者は、前方コンベア22が下降すると、苗を収めた苗箱を苗搬送装置20へと流し始める。このとき、前方コンベア22は、機体前方へと軽微に下降傾斜しているため、畦際の作業者は、苗箱を勢い良く押し出したり、固定コンベア21まで複数の苗箱を連ねて流したり、前方コンベア22を上方に持ち上げたりして苗箱を植付装置側に流す。
【0029】
上記のように、苗搬送装置20の前端部30は、該前端部30に設けられたノブ34を操作することによって高さ調節することが可能となる。これにより、苗搬送装置20の前端部30が作業者にとって適正位置になくても、畦際から容易に苗搬送装置20の前端部30の位置を適正位置に調節することが可能となり、畦際の作業者は、楽な姿勢で容易に予備苗の補給作業を行うことができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、前方コンベア22を伸展状態から下方に高さ調節可能に設けたが、上方に向けて高さ調節可能に構成してもよい。また、本実施形態では、前方コンベア22の高さ調節は2段階であったが、更に多段階に高さ調節することができるように構成しても良く、多段階に調節することによって前方コンベア22を上下方に高さ調節可能に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る移植機の平面図。
【図2】本発明に係る移植機の側面図。
【図3】(a)本発明に係る苗搬送装置の平面図。(b)本発明に係る苗搬送装置の側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 走行機体
2 植付装置
20 苗搬送装置
21 固定コンベア(固定部)
22 前方コンベア(前方部)
30 前端部
33 連結ロッド
34 ノブ(操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に植付装置を連結し、前記走行機体に該走行機体の前方から後方に向けて予備苗を搬送し得る苗搬送装置を設けた移植機において、
前記苗搬送装置は、前記走行機体に配置された固定部に対してその前方部分が上下方向に回動自在にかつ該前方部分の前端側の高さを変更自在に調節する高さ調節手段を介して連結し、
前記前方部分の前端部に、前記高さ調節手段を操作する操作部を設けた、
ことを特徴とする移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate