説明

移植機

【課題】走行変速レバーの握り部に設けられる作業機操作スイッチ及びマーカ操作スイッチによって、植付作業機の昇降、植付クラッチの入り/切り及びマーカの振り出し方向設定を行う移植機において、スイッチの誤操作を防止する。
【解決手段】走行変速レバー25の握り部25aに、上側作業機操作スイッチ29、下側作業機操作スイッチ30、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32を配置するにあたり、上側作業機操作スイッチ29及び下側作業機操作スイッチ30は、親指による操作を想定し、握り部25aにおける機体内方側の側面又は背面の上下位置に配置し、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32は、親指以外のいずれかの指による操作を想定し、握り部25aにおける前面の左右位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機などの移植機に関し、特に、走行変速レバーの握り部に作業機操作スイッチ及びマーカ操作スイッチを備え、これらのスイッチ操作に応じて植付作業機の昇降、植付クラッチの入り/切り、マーカの振り出し方向設定などを行う移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機などの移植機では、植付作業における枕地での旋回に際し、走行速度の減速操作、植付クラッチの切り操作、植付作業機の上昇操作、ステアリングハンドルの旋回操作、マーカの振り出し方向設定操作、植付作業機の下降操作、植付クラッチの入り操作、走行速度の増速操作などが行われるが、従来の移植機では、これらの操作機能(ステアリングハンドルの旋回操作を除く)が複数の操作レバー(作業機操作レバー、走行変速レバーなど)に割り振られていたため、枕地での旋回操作が煩雑であった。
【0003】
そこで、走行変速レバーの握り部に作業機操作スイッチ及びマーカ操作スイッチを備え、これらのスイッチ操作に応じて植付作業機の昇降、植付クラッチの入り/切り、マーカの振り出し方向方向設定などを行う移植機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような移植機によれば、枕地旋回時に要求されるほとんどの操作を走行変速レバーで行うことが可能になるので、オペレータの操作負担が軽減される。
【特許文献1】特開2003−79212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される移植機では、握り部の同一面(上面)に作業機操作スイッチ及びマーカ操作スイッチを配置しているので、誤操作が生じ易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、走行機体に昇降自在に連結される植付作業機と、該植付作業機を昇降動作させる昇降用アクチュエータと、植付作業機への動力供給を入り/切りする植付クラッチと、植付作業機の上昇に伴って格納され、植付作業機の下降に伴って選択的に振り出される左右一対のマーカと、走行機体の走行速度を変速操作する走行変速レバーと、該走行変速レバーの握り部に設けられる作業機操作スイッチ及びマーカ操作スイッチと、作業機操作スイッチの操作に応じて植付作業機の昇降及び植付クラッチの入り/切りを制御し、マーカ操作スイッチの操作に応じてマーカの振り出し方向を制御する制御装置とを備える移植機において、前記走行変速レバーの握り部に、上側作業機操作スイッチ、下側作業機操作スイッチ、左側マーカ操作スイッチ及び右側マーカ操作スイッチを配置するにあたり、上側作業機操作スイッチ及び下側作業機操作スイッチは、親指による操作を想定し、握り部における機体内方側の側面又は背面の上下位置に配置し、左側マーカ操作スイッチ及び右側マーカ操作スイッチは、親指以外のいずれかの指による操作を想定し、握り部における前面の左右位置に配置されることを特徴とする。このようにすると、上側作業機操作スイッチ及び下側作業機操作スイッチは、親指によりいずれか一方が選択的に操作されるので、誤操作が生じにくい。一方、左側マーカ操作スイッチ及び右側マーカ操作スイッチは、作業機操作スイッチとは別の面に配置されているので、作業機操作スイッチとの押し間違いを防止できる。しかも、左側マーカ操作スイッチ及び右側マーカ操作スイッチは、親指以外のいずれかの指で操作されるので、作業機操作スイッチとの同時操作が可能になるだけでなく、左右のマーカ操作スイッチの同時操作も可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用型田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が連結されている。走行機体1と昇降リンク2との間には、リフトシリンダ(昇降用アクチュエータ)4が介設されており、その伸縮に基づいて植付作業機3の昇降動作が行われる。
【0007】
図2及び図3に示すように、走行機体1には、リフトシリンダ用油圧バルブ5及び植付けクラッチ機構(図示せず)に連繋される作業機操作カム6が設けられている。作業機操作カム6は、「上昇」、「固定」、「自動(下降)」、「植付」の4つのポジションを有し、作業機操作カムモータ7によってポジションが切換えられる。そして、「上昇」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ5が上昇位置、植付けクラッチ機構が切り状態となり、「固定」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ5が停止状態、植付けクラッチ機構が切り状態となり、「自動(下降)」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ5が自動位置(感知フロートFの上下動に応じて自動的に昇降制御を行う位置。ただし、作業機上昇時は感知フロートFが下がっているため、下降位置として使用。)、植付けクラッチ機構が切り状態となり、「植付」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ5が自動位置、植付けクラッチ機構が入り状態となる。
【0008】
図4及び図5に示すように、植付作業機3の左右両側には、次行程又は前行程に走行基準線を引くためのマーカ8L、8Rが設けられている。各マーカ8L、8Rは、左右側方に振り出される線引姿勢と、植付作業機3の側部に沿って起立する格納姿勢とに回動変姿自在に構成されると共に、スプリング9によって振り出し方向に付勢されている。一方、走行機体1には、左右一対のマーカ動作アーム10L、10Rが設けられており、各マーカ動作アーム10L、10Rが、それぞれワイヤ11L、11Rを介して、マーカ8L、8Rの基端部に連結されている。そして、マーカ動作アーム10L、10Rが前方へ回動すると、ワイヤ11L、11Rが引かれてマーカ8L、8Rが格納動作し、一方、マーカ動作アーム10L、10Rが後方へ回動すると、ワイヤ11L、11Rが緩み、マーカ8L、8Rの振り出し動作が許容される。
【0009】
マーカ動作アーム10L、10Rを前後回動自在に支持するプレート12には、更に、ローラ13を備えるローラアーム14が前後回動自在に設けられている。このローラアーム14は、ロッド15を介して昇降リンク機構2の基端部に連結されており、昇降リンク機構2の昇降動作に応じて、前後回動するようになっている。そして、ローラアーム14は、昇降リンク機構2の上昇に伴って前方へ回動すると、ローラ13を介して左右のマーカ動作アーム10L、10Rを前方へ押す一方、昇降リンク機構2の下降に伴って後方へ回動すると、左右のマーカ動作アーム10L、10Rの後方への回動を許容する。これにより、植付作業機3の昇降に応じて、マーカ8L、8Rの格納動作及び振り出し動作が自動的に行われることになる。
【0010】
マーカ動作アーム10L、10Rの前側には、左右一対のストッパアーム16L、16Rが設けられている。各ストッパアーム16L、16Rは、支軸17を支点として前後回動自在に構成されると共に、スプリング18L、18Rによって後方に付勢されている。そして、各ストッパアーム16L、16Rは、マーカ動作アーム10L、10Rが前方へ回動したとき、マーカ動作アーム10L、10Rに押されて前方へ退避回動した後、後方へ復帰回動してマーカ動作アーム10L、10Rに係合する。この状態では、マーカ動作アーム10L、10Rの回動がロックされるため、植付作業機3を下降させても、マーカ8L、8Rの振り出しが規制される。
【0011】
ストッパアーム16L、16Rの前方には、マーカ切り換えアーム19が設けられている。マーカ切り換えアーム19は、左右方向を向き、中央部の支軸20を中心に前後揺動するシーソー状の部材であり、その両端部には、ストッパアーム16L、16Rに連結されるロッド21L、21Rが融通連結されている。つまり、マーカ切り換えアーム19が中立姿勢のときは、ストッパアーム16L、16Rの前後回動が許容されるため、ストッパアーム16L、16Rによってマーカ8L、8Rの振り出しが規制される一方、マーカ切り換えアーム19が左右いずれかに傾くと、一方のストッパアーム16L、16Rがロッド21L、21Rを介して前方に引かれ、一方のマーカ8L、8Rの振り出しが許容される。これにより、マーカ切り換えアーム19の動作によって、左右のマーカ8L、8Rを選択的に振り出したり、両マーカ8L、8Rの振り出しを規制することが可能になる。
【0012】
マーカ切り換えアーム19には、マーカモータ22が連繋されており、その駆動に基づいてマーカ切り換えアーム19の姿勢が制御される。マーカモータ22は、マーカ切り換えアーム19を、左右振り出し規制位置と、左マーカ振り出し位置と、右マーカ振り出し位置とに選択的に動作させるが、植付作業機3の下降に伴って、一方のマーカ8L、8Rが振り出された後、マーカ切り換えアーム19を他方の振り出し位置へ動作させることにより、左右のマーカ8L、8Rを振り出す両側振り出し状態を現出させることが可能となっている。
【0013】
走行機体1の上部(運転操作部)は、オペレータが座る座席23、座席23の前方に設けられるフロント操作パネル24、フロント操作パネル24の左側方に設けられる走行変速レバー25、フロント操作パネル24の上方に設けられるステアリングハンドル26などを備えている。また、フロント操作パネル24には、作業準備スイッチ27及びマーカ自動スイッチ28が配置され、走行変速レバー25の握り部25aには、上側作業機操作スイッチ29、下側作業機操作スイッチ30、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32が配置されている。これらのスイッチ27〜32は、制御部(制御装置)33に電気的に接続されており、後述する制御部33の制御動作に基づいて、以下に示すような操作機能が付与される。
【0014】
上側作業機操作スイッチ29は、植付作業機3の上昇操作、植付作業機3の下降停止操作、植付クラッチの切り操作に兼用される操作スイッチである。つまり、制御部30は、上側作業機操作スイッチ29の操作時に、植付作業機3が植付け状態の場合は植付クラッチの切り動作を伴った植付作業機3の上昇動作を行い、植付作業機3が下降動作中の場合は植付作業機3の下降動作を停止させる。
【0015】
下側作業機操作スイッチ30は、植付作業機3の下降操作、植付作業機3の上昇停止操作、植付クラッチの入り操作に兼用される操作スイッチである。つまり、制御部30は、下側作業機操作スイッチ30の操作時に、植付作業機3が上方で停止している場合は植付作業機3を下降動作させ、植付作業機3が上昇動作中の場合は植付作業機3の上昇動作を停止させ、植付作業機3が接地している場合は植付クラッチを入り動作させる。ただし、本実施形態では、作業準備スイッチ27のON/OFFに基づいて、下側作業機操作スイッチ30の操作機能が切換えられる。
【0016】
上記のような作業機操作スイッチ29、30によれば、下側作業機操作スイッチ30の操作により植付作業機3を下降させた後、上側作業機操作スイッチ29の操作により植付作業機3を任意の高さで下降停止させることができるので、植付作業機3を任意の高さまで下降させるためのスイッチを別途設ける必要がない。これにより、スイッチ個数を削減し、コストダウンが図れる。
【0017】
制御部33は、作業準備スイッチ27がONの場合、後述するマーカ制御を実行する。マーカ制御は、マーカ自動スイッチ28がONの場合、植付作業機3の上昇操作毎に、振り出すマーカ8L、8Rを自動的に交互に切り換えるマーカ自動制御処理を行う。従って、通常の植付作業で要求されるマーカ8L、8Rの操作機能は、主に、マーカ8L、8Rの振り出し方向を設定するマーカ振り出し方向設定機能と、左右両側のマーカ8L、8Rを振り出す両側振り出し操作機能である。
【0018】
マーカ8L、8Rの振り出し方向設定は、植付作業機3が最上昇位置にあるときのみ許容される。この状態で左側マーカ操作スイッチ31を操作すると、次の植付作業機下降時に左側のマーカ8Lが振り出され、逆に右側マーカ操作スイッチ32を操作すると、次の植付作業機下降時に右側のマーカ8Lが振り出される。左右のマーカ8L、8Rを両方振り出す操作は、植付作業機3の下降に伴って一方のマーカ8L、8Rが振り出された後、所定時間内に行うことができる。つまり、左右いずれかのマーカ8L、8Rが振り出された後、反対側のマーカ操作スイッチ31、32を操作することにより、反対側のマーカ8L、8Rも振り出される。なお、マーカ操作スイッチ31、32の同時操作でも、左右両側のマーカ8L、8Rを振り出すことができる。
【0019】
次に、走行変速レバー25の握り部25aにおける各種操作スイッチ29〜32の配置について、図7及び図8を参照して説明する。これらの図に示すように、操作スイッチ29〜32は、いずれも押しボタン式のスイッチであり、走行変速レバー25の握り部25aに載せた手の親指及びそれ以外の指で操作するという想定で配置される。
【0020】
上側作業機操作スイッチ29及び下側作業機操作スイッチ30は、親指による操作を想定し、握り部25aにおける機体内方側の側面(本実施形態では右側面)又は背面の上下位置に配置し、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32は、親指以外のいずれかの指による操作を想定し、握り部25aにおける前面の左右位置に配置される。このようにすると、上側作業機操作スイッチ29及び下側作業機操作スイッチ30は、親指によりいずれか一方が選択的に操作されるので、誤操作が生じにくい。一方、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32は、作業機操作スイッチ29、30とは別の面に配置されているので、作業機操作スイッチ29、30との押し間違いを防止できる。しかも、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32は、親指以外のいずれかの指で操作されるので、作業機操作スイッチ29、30との同時操作が可能になるだけでなく、左右のマーカ操作スイッチ31、32の同時操作も可能になる。尚、図7は、上側作業機操作スイッチ29及び下側作業機操作スイッチ30を握り部25aにおける機体内方側の側面の上下位置に配置した例を示し、図8は、上側作業機操作スイッチ29を握り部25aにおける機体内方側の側面に配置し、下側作業機操作スイッチ30を握り部25aの背面に配置した例を示している。
【0021】
次に、制御部33の構成及び動作について説明する。制御部33は、マイコン(CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含む。)を用いて構成され、その入力側には、前述した作業準備スイッチ27、マーカ自動スイッチ28、上側作業機操作スイッチ29、下側作業機操作スイッチ30,左側マーカ操作スイッチ31、右側マーカ操作スイッチ32の他に、作業機操作カム6の位置を検出する作業機操作カムポテンショ34、マーカ切り換えアーム19の姿勢を検出するマーカロック検出スイッチ35などが接続されている。また、制御部33の出力側には、前述した作業機操作カムモータ7、マーカモータ22などが接続されている。そして、制御部33は、予めROMに格納されているプログラムに従い、作業機操作制御やマーカ制御を行う。以下、作業機操作制御及びマーカ制御の制御手順をフローチャートに沿って説明する。
【0022】
図10に示すように、作業機操作制御では、まず、下側作業機操作スイッチ30の操作を判断し(S101)、該判断結果がありの場合は、作業準備スイッチ27のON/OFFを判断する(S102)。この判断結果がOFFの場合は、現在の作業機状態(作業機操作カム位置)を判断し(S103、S104)、現在の作業機状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム位置を「固定」とし(S105)、現在の作業機状態が「固定」の場合は、作業機操作カム位置を「自動(下降)」とする(S106)。
【0023】
一方、作業準備スイッチ27がONの場合も、現在の作業機状態を判断し(S107〜S109)、現在の作業機状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム位置を「固定」とし(S105)、現在の作業機状態が「固定」の場合は、作業機操作カム位置を「自動(下降)」とする(S110)。また、現在の作業機状態が「自動(下降)」の場合は、作業機下降動作停止状態か否かを判断し(S111)、この判断結果がYESの場合は、作業機操作カム位置を「植付」とし(S112)、NOの場合は、植付クラッチ入待ち状態とする(S113)。
【0024】
ステップS101において、下側作業機操作スイッチ30の操作がないと判断した場合は、上側作業機操作スイッチ29の操作を判断し(S114)、該判断結果がなしの場合は、作業機クラッチ入待ち状態であるか否かを判断する(S115)。この判断結果がYESの場合は、作業機下降動作停止状態か否かを判断し(S116)、この判断結果がYESとなった時点で作業機操作カム位置を「植付」とする(S117)。
【0025】
一方、上側作業機操作スイッチ29の操作がありと判断した場合は、現在の作業機状態を判断し(S118、S119)、現在の作業機状態が「上昇」以外で、かつ、「自動(下降)」以外の場合は、作業機操作カム位置を「上昇」とする(S120)。また、現在の作業機状態が「自動(下降)」の場合は、作業機下降動作停止状態か否かを判断し(S121)、該判断結果がYESの場合は、作業機操作カム位置を「上昇」とし(S120)、NOの場合は、作業機操作カム位置を「固定」とする(S122)。
【0026】
図11に示すように、マーカ制御では、3つのフラグ「オートマーカフラグ」、「振り出し方向フラグ」、「植付けクラッチフラグ」と、一つのタイマ「両落ち操作タイマ」を使用している。オートマーカフラグは、オートマーカ機能のON/OFFを決めるためのものであり、振り出し方向フラグは、マーカ振り出し方向を決めるためのものである。また、植付けクラッチフラグは、植付けクラッチ操作を判断するためのもので、外部ルーチンでON/OFFのセットが行われる。また、両落ち操作タイマは、植付作業機下降後の両側振り出し操作時間を決める減算タイマである。
【0027】
マーカ制御においては、まず、作業準備スイッチ27のON/OFFを判断し(S201)、該判断結果がONの場合は、植付作業機下降動作状態か否かを判断する(S202)。該判断結果がNOの場合は、両落ち操作タイマをセットした後(S203)、植付作業機3が最上昇位置か否かを判断し(S204)、該判断結果がYESのとき、マーカ操作スイッチ31、32による通常のマーカ操作を許容する。この状態では、オートマーカフラグ(初期はON)の状態を判断し(S205)、該判断結果が自動ONのときは、植付けクラッチフラグのON/OFFを判断する(S206)。そして、植付けクラッチフラグがONの場合は、植付けクラッチ操作を伴う植付作業機昇降があったと判断し、マーカモードフラグの振り出し方向を反転させる(S207、S208)。ただし、マーカモードフラグがリセット状態(初期状態)のときは(S207)、マーカ振り出し方向を右側とする(S209)。
【0028】
その後、植付けクラッチフラグをリセットし(S210)、マーカ操作スイッチ31、32の操作を判断する(S211、S212)。ここで、操作有りと判断した場合は、現在の設定振り出し方向と同じ方向でないことを確認した後(S213、S214)、その操作方向に応じて、振り出し方向フラグにマーカ振り出し方向をセットすると共に(S215、S216)、オートマーカフラグを自動ONとする(S217、S218)。その後、マーカ自動スイッチ28の操作を判断し(S219)、ここで操作ありと判断した場合は、オートマーカフラグを反転させ(S220、S221、S223)、また、オートマーカフラグを自動OFFにする場合は、振り出し方向フラグをリセットする(S222)。
【0029】
一方、作業準備スイッチ27がONで、かつ、植付作業機3が下降した場合、前記両落ち操作タイマのタイマ値を参照し(S224)、これが0以外(下降後所定時間内)であるとき、マーカ操作スイッチ31、32の操作を判断する(S225、S226)。ここで、操作有りと判断した場合は、現在の設定振り出し方向と同じ方向でないことを確認した後(S227、S228)、その操作方向に応じて、振り出し方向フラグにマーカ振り出し方向をセットする(S229、S230)。これにより、左右両側のマーカ8L、8Rが振り出される。
【0030】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1に昇降自在に連結される植付作業機3と、該植付作業機3を昇降動作させるリフトシリンダ4と、植付作業機3への動力供給を入り/切りする植付クラッチと、植付作業機3の上昇に伴って格納され、植付作業機3の下降に伴って選択的に振り出される左右一対のマーカ8L、8Rと、走行機体1の走行速度を変速操作する走行変速レバー25と、該走行変速レバー25の握り部25aに設けられる作業機操作スイッチ29、30及びマーカ操作スイッチ31、32と、作業機操作スイッチ29、30の操作に応じて植付作業機3の昇降及び植付クラッチの入り/切りを制御し、マーカ操作スイッチ31、32の操作に応じてマーカ8L、8Rの振り出し方向を制御する制御部33とを備える乗用型田植機において、走行変速レバー25の握り部25aに、上側作業機操作スイッチ29、下側作業機操作スイッチ30、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32を配置するにあたり、上側作業機操作スイッチ29及び下側作業機操作スイッチ30は、親指による操作を想定し、握り部25aにおける機体内方側の側面又は背面の上下位置に配置し、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32は、親指以外のいずれかの指による操作を想定し、握り部25aにおける前面の左右位置に配置される。このようにすると、上側作業機操作スイッチ29及び下側作業機操作スイッチ30は、親指によりいずれか一方が選択的に操作されるので、誤操作が生じにくい。一方、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32は、作業機操作スイッチ29、30とは別の面に配置されているので、作業機操作スイッチ29、30との押し間違いを防止できる。しかも、左側マーカ操作スイッチ31及び右側マーカ操作スイッチ32は、親指以外のいずれかの指で操作されるので、作業機操作スイッチ29、30との同時操作が可能になるだけでなく、左右のマーカ操作スイッチ31、32の同時操作も可能になる。
【0031】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、例えば、図12に示すように、制御装置は、上側作業機操作スイッチの操作時に、植付作業機が植付け状態の場合は植付クラッチを切り動作させ、植付作業機が接地状態又は停止状態の場合は植付作業機を上昇動作させ、植付作業機が下降動作中の場合は植付作業機の下降動作を停止させ、一方、下側作業機操作スイッチの操作時に、植付作業機が上方で停止している場合は植付作業機を下降動作させ、植付作業機が上昇動作中の場合は植付作業機の上昇動作を停止させ、植付作業機が接地している場合は植付クラッチを入り動作させるようにしてもよい。つまり、図12に示す作業機操作制御は、上側作業機操作スイッチの操作時に、植付作業機が植付け状態の場合、図10に示す作業機操作制御のように、植付クラッチの切り動作を伴った植付作業機の上昇動作を行うのではなく、まず、植付クラッチを切り動作させ、これに続く上側作業機操作スイッチの操作に応じて植付作業機を上昇動作させる。このようにしても、通常要求される各種の作業機操作を二つの作業機操作スイッチで全て行うことが可能になる。以下、図12に示す作業機操作制御の操作手順について説明する。
【0032】
図12に示す作業機操作制御では、まず、下側作業機操作スイッチ30の操作を判断し(S301)、該判断結果がありの場合は、作業準備スイッチ27のON/OFFを判断する(S302)。この判断結果がOFFの場合は、現在の作業機状態(作業機操作カム位置)を判断し(S303、S304)、現在の作業機状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム位置を「固定」とし(S305)、現在の作業機状態が「固定」の場合は、作業機操作カム位置を「自動(下降)」とする(S306)。
【0033】
一方、作業準備スイッチ27がONの場合も、現在の作業機状態を判断し(S307〜S309)、現在の作業機状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム位置を「固定」とし(S305)、現在の作業機状態が「固定」の場合は、作業機操作カム位置を「自動(下降)」とする(S310)。また、現在の作業機状態が「自動(下降)」の場合は、作業機下降動作停止状態か否かを判断し(S311)、この判断結果がYESの場合は、作業機操作カム位置を「植付」とし(S312)、NOの場合は、植付クラッチ入待ち状態とする(S313)。
【0034】
ステップS301において、下側作業機操作スイッチ30の操作がないと判断した場合は、上側作業機操作スイッチ29の操作を判断し(S314)、該判断結果がなしの場合は、作業機クラッチ入待ち状態であるか否かを判断する(S315)。この判断結果がYESの場合は、作業機下降動作停止状態か否かを判断し(S316)、この判断結果がYESとなった時点で作業機操作カム位置を「植付」とする(S317)。
【0035】
一方、上側作業機操作スイッチ29の操作がありと判断した場合は、現在の作業機状態を判断し(S318〜S320)、現在の作業機状態が「植付」の場合は、作業機操作カム位置を「自動(下降)」とする(S321)。また、現在の作業機状態が「自動(下降)」の場合は、作業機下降動作停止状態か否かを判断し(S322)、該判断結果がNOの場合は、作業機操作カム位置を「固定」とし(S323)、YESの場合は、作業機操作カム位置を「上昇」とする(S324)。また、現在の作業機状態が「固定」の場合も、作業機操作カム位置を「上昇」とする(S324)。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】作業機操作カムを示す側面図である。
【図3】リフトシリンダ用油圧バルブと感知フロートの連繋構造を示す側面図である。
【図4】マーカ及びマーカ切換部を示す平面図である。
【図5】(A)は植付作業機上昇時のマーカ切換部を示す側面図、(B)は植付作業機下降時のマーカ切換部を示す側面図である。
【図6】フロント操作パネル及び走行変速レバーを示す平面図である。
【図7】(A)はスイッチの配置例を示す握り部の平面図、(B)は背面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図、(E)は正面図である。
【図8】(A)はスイッチの他の配置例を示す握り部の平面図、(B)は背面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図、(E)は正面図である。
【図9】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図10】作業機操作制御のフローチャートである。
【図11】マーカ制御のフローチャートである。
【図12】作業機操作制御の他例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1 走行機体
3 植付作業機
4 リフトシリンダ
8 マーカ
25 走行変速レバー
25a 握り部
29 上側作業機操作スイッチ
30 下側作業機操作スイッチ
31 左側マーカ操作スイッチ
32 右側マーカ操作スイッチ
33 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に昇降自在に連結される植付作業機と、該植付作業機を昇降動作させる昇降用アクチュエータと、植付作業機への動力供給を入り/切りする植付クラッチと、植付作業機の上昇に伴って格納され、植付作業機の下降に伴って選択的に振り出される左右一対のマーカと、走行機体の走行速度を変速操作する走行変速レバーと、該走行変速レバーの握り部に設けられる作業機操作スイッチ及びマーカ操作スイッチと、作業機操作スイッチの操作に応じて植付作業機の昇降及び植付クラッチの入り/切りを制御し、マーカ操作スイッチの操作に応じてマーカの振り出し方向を制御する制御装置とを備える移植機において、
前記走行変速レバーの握り部に、上側作業機操作スイッチ、下側作業機操作スイッチ、左側マーカ操作スイッチ及び右側マーカ操作スイッチを配置するにあたり、上側作業機操作スイッチ及び下側作業機操作スイッチは、親指による操作を想定し、握り部における機体内方側の側面又は背面の上下位置に配置し、左側マーカ操作スイッチ及び右側マーカ操作スイッチは、親指以外のいずれかの指による操作を想定し、握り部における前面の左右位置に配置されることを特徴とする移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−193998(P2008−193998A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34695(P2007−34695)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】