説明

移植機

【課題】前後回転することにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理する複数の処理ディスクを備えた移植機において、圃場の状態等に応じて処理ディスクの左右方向の取付位置を適宜変更することが容易な移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体3の後部に植付作業機6を連結し、植付作業機6の前方に、前後回転することにより圃場を整地する整地ロータ16を左右方向に複数並べて配置するとともに前後回転することにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理する複数の処理ディスク17を設けた移植機において、整地ロータ16と処理ディスク17とを別体で形成し、各処理ディスク17を左右方向の並列された整地ロータ16の間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、前後回転することにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理する複数の処理ディスクを備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後部に植付作業機を連結し、植付作業機の前方に、前後回転することにより圃場を整地する整地ロータを左右方向に複数並べて配置した移植機が従来公知である。上記構成の移植機は、整地ロータにより整地された圃場に植付作業機によって苗を植付けることが可能である一方で、圃場面近傍に雑草等の狭雑物がある場合、整地ロータによっては狭雑物を処理できないため、植付作業機による作業効率が低下する可能性があるという欠点を有していた。
【0003】
上記欠点を改善するため、植付作業機の前方に、整地ロータとともに、前後回転することにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理する複数の処理ディスクを設けた特許文献1に示す移植機が公知になっている。
【特許文献1】特許第3080553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献の移植機は、処理ディスクが整地ロータの外周面に一体的に設けられ、圃場状態等に応じて処理ディスクの左右方向の取付位置を変更する場合に、整地ロータの配置も併せて変更する必要があるため、汎用性の面で課題が残る。
本発明は、上記課題を解決し、前後回転することにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理する複数の処理ディスクを備えた移植機において、圃場の状態等に応じて処理ディスクの左右方向の取付位置を適宜変更することが容易な移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の移植機は上記課題を解決するため、第1に走行機体3の後部に植付作業機6を連結し、植付作業機6の前方に、前後回転することにより圃場を整地する整地ロータ16を左右方向に複数並べて配置するとともに前後回転することにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理する複数の処理ディスク17を設けた移植機において、整地ロータ16と処理ディスク17とを別体で形成し、各処理ディスク17を左右方向の並列された整地ロータ16の間に配置したことを特徴としている。
【0006】
第2に、処理ディスク17にボス部33を一体的に形成し、該ボス部33に整地ロータ16を回転駆動させるロータ軸14を挿通させ、隣接する整地ロータ16の端部でボス部33を挟持することにより、前記ロータ軸14に対して処理ディスク17を取付固定したことを特徴としている。
【0007】
第3に、隣接する整地ロータ16の端部で処理ディスク17を挟持することにより、整地ロータ16を回転駆動させるロータ軸14に対して処理ディスク17を取付固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明の移植機によれば、左右方向に並べられた複数の整地ロータの間に処理ディスクを配置するため、処理ディスクが整地ロータに一体的に取付けられているものと比較して、処理ディスクの左右方向の取付位置を圃場の状態等に応じて変更することが容易になり、汎用性が向上するという効果がある。
【0009】
また、処理ディスクにボス部を一体的に形成し、該ボス部に整地ロータを回転駆動させるロータ軸を挿通させ、隣接する整地ロータの端部でボス部を挟持することにより、前記ロータ軸に対して処理ディスクを取付固定すれば、処理ディスクの左右方向の位置決めが容易になる他、ボス部が整地ロータ同士の間隔を設定する間隔設定部材を兼用できるという効果がある。
【0010】
さらに、隣接する整地ロータの端部で処理ディスクを挟持することにより、整地ロータを回転駆動させるロータ軸に対して処理ディスクを取付固定すれば、整地ロータ間に隙間が形成されるのを防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。図2は、整地ロータと、処理ディスクと、フロートと、植付作業機による植付箇所と、施肥ノズルによる施肥箇所との配置を示す要部平面図である。乗用田植機は、前後輪1,2を備えた走行機体3の後方に苗載せ台4を有する植付作業機6が昇降リンク7を介して昇降自在に連結され、植付作業機6の下部前方には左右方向の整地装置8が前後回転自在に支持されている。
【0012】
植付作業機6の下部には、苗載せ台4から苗を掻き取って圃場に植付ける植付部9と、圃場を均す前後方向のフロート11と、後方に延設された施肥ノズル12(施肥部)とが、それぞれ左右に並べられて複数設置されている。図示する例では、3つのフロート11,11,11が左右方向に並べて設けられ、各フロート11の左右に施肥ノズル12がそれぞれ設置され、各施肥ノズル12の後方斜め上方に植付部9が配置されている。
【0013】
そして、本乗用田植機は、植付部9により圃場に苗を植付けると同時に、圃場の地中に挿入された施肥ノズル12により圃場の苗の条列方向に沿って肥料を施肥していく。この際、圃場には、施肥ノズル12により前後方向に延びる帯状の施肥箇所L(圃場における肥料が施肥された箇所)が形成されるとともに、植付部9により施肥箇所Lに隣接して植付箇所P(圃場における苗が植付けられた箇所)が形成される。
【0014】
上記昇降リンク7には、左右方向に延びる角柱状(図示する例では四角柱状)の横フレーム13がローリング自在に連結されている。この横フレーム13からは後方に向かって前述の植付部9が延設されている他、横フレーム13の左右各端部からは上下方向の縦フレーム10,10が上方に向かって突設されている。左右の縦フレーム10,10間には、左右方向の支持軸(図示しない)が前後回動自在に架設されている。
【0015】
整地装置8は、主に、上記支持軸に前後回転自在に吊り下げ支持された左右方向のロータ軸14と、ロータ軸14に軸装されロータ軸14と一体回転する複数の整地ロータ16(整地体)とから構成される。くわえて、左右方向に並べられた整地ロータ16の間には、平面視前後方向に延びる直線状をなすように姿勢が定められた処理ディスク17(処理体)が設置されている。処理ディスク17の配置及び固定手段等については後述する。
【0016】
そして、上記整地装置8を圃場面に接地させて前後回転させることにより、圃場における機体旋回等により荒れた代掻き後の枕地等の整地を行い、この整地された圃場に植付作業機6により苗を植付けていく。処理ディスク17は、前後回転させることにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理するように構成されており、圃場内の狭雑物が、圃場に挿入された施肥ノズル12に絡み付いたり、苗を圃場に植付ける際に邪魔になったりすることによる施肥作業効率又は植付作業効率の低下を防止している。
【0017】
ロータ軸14の支持軸への吊り下げ構造について説明すると、支持軸の左右の各端部には支持軸とともに一体回動する支持アーム18の基端部が一体的に取付固定され、左右の各アーム18の先端部にはリンク機構19を介して上下方向の支持ロッド21の上端部が連結されており、この左右の支持ロッド21,21の下端部間にロータ軸14が前後回転自在に架設支持されている。このため、支持軸を前後回動させることによって、整地装置8を植付作業機6に対して昇降させることができる。
【0018】
ロータ軸14への動力伝動機構について説明すると、ロータ軸14の中間部分にはギヤケース22が設けられる一方、走行機体3の後端部下側にはロータ軸14駆動用の駆動ケース23が設けられている。そして、駆動ケース23は、ユニバーサルジョイント24及び駆動軸26を介して、ギヤケース22に連結されている。そして、駆動ケース23内に設けられたクラッチ(図示しない)を入切することにより、駆動ケース23からギヤケース22への動力伝動の入切をして、ロータ軸14が前後回動駆動の入切操作を行う。
【0019】
なお、機体前進時に植付作業機6によって植付作業を行う際、整地装置8の整地ロータ16は、前後の車輪1,2と同一方向(図1における反時計回り方向,正転方向)に回転駆動される。
【0020】
図3(A)は整地ロータの斜視図であり、(B)は整地ロータの正面図であり、(C)は整地ロータの側面図である。整地ロータ16は、本体部27が側面視多角形状(図示する例では六角形状)の板状部材であり、本体部27の側面の中心部からは円柱状のボス部28が左右両方向にそれぞれ突出形成されており、本体部27の各頂点部からは整地ロータ16の正転方向と逆方向に突出する左右方向の整地片29が一体的に成形されている。
【0021】
ボス部28には、ロータ軸14を挿通させる左右方向の軸孔31が穿設されている。ロータ軸14の整地ロータ12を挿通させる部分は多角(図示する例では四角)柱状に形成される一方、上記軸孔31もそれに対応して側面視多角形状(図示する例ではロータ軸14の断面形状に対応させて四角形状)に形成されているため、整地ロータ16は、ロータ軸14に挿通させるのみで、ロータ軸14と一体回転するように構成される。なお、整地ロータ16は、ボルト(図示しない)等によって、左右スライド移動しないように、ロータ軸14に対して取付固定される。
【0022】
整地片29の正転方向と反対側の端部に波状の歯部29aが成形されている。そして、本体部27からの左右方向の突出量がボス部28と略同一になっている。
【0023】
なお、通常、図4に示すように、上記整地ロータ16は、互いのボス部28及び整地片29同士が当接するように左右方向に複数並べられた状態で、ロータ軸14に挿通固定されるが、図2に示す本乗用田植機では、整地ロータ16とは別体で形成された前述の処理ディスク17が、左右方向に並列された整地ロータ16の間に設置され、これによって、上記整地装置8を構成している。くわえて、整地片29同士の左右端部同士を当接させるため、整地片29の位相がずれないように(互いに隣接する整地片29同士が左右方向に一直線状に配置された状態になるように)複数の整地ロータ16をロータ軸14に挿通固定させる。
【0024】
図5は、(A)は処理ディスクの斜視図であり、(B)は処理ディスクの正面図であり、(C)は処理ディスクの側面図である。処理ディスク17は縁部に波状の歯部17aが満遍なく等間隔に形成され、側面の中心には上記ロータ軸14を挿通させる多角形状(図示する例ではロータ軸14の断面形状に対応させて四角形状)の軸孔32が穿設されている。
【0025】
図6は、整地装置の斜視図である。処理ディスク17は、軸孔32を介して、左右方向の並べられた整地ロータ16に挟まれた状態で、ロータ軸14に挿通支持される。この際、左右の整地ロータ16のボス部28が、処理ディスク17の左右側面に当接し、処理ディスク17のロータ軸14に対しての左右位置が固定される。すなわち、隣接する整地ロータ16,16の端部であるボス部28,28によって処理ディスク17を挟持することにより、ロータ軸14に処理ディスク17を取付固定する。
【0026】
くわえて、前述したように、整地片29の本体部27からの左右突出量はボス部29のそれと略同一であるため、左右に隣接する整地片29,29間の隙間には、処理ディスク17が配置され、隣接する整地ロータ16,16の間に隙間が生じることを防止している。
【0027】
そして、前述した動力伝動機構を介してロータ軸14を回転駆動させることにより、整地ロータ16及び処理ディスク17を前後回転させる。処理ディスク17は、圃場における施肥箇所L及び植付箇所Pとなる予定の箇所を予め処理するように、整地ロータ14によってロータ軸14に対する左右取付位置が定められている。このため、施肥ノズル12による施肥作業や、植付作業機6による植付作業時には、圃場面近傍にある雑草等の狭雑物が、処理ディスク17によって地中に押込み処理又は切断処理され、効率の良い作業を行うことができる。
【0028】
ちなみに、図2に示すように、上記整地装置8は4箇所に設けられ、1つが左側の支持ロッド21の外側(左側)に設けられた第1整地装置8A(外側整地装置)になり、1つが左側の支持ロッド19とギヤケース22との間に設けられた第2整地装置8B(内側整地装置)になり、1つがギヤケース22と右側の支持ロッド21との間に設けられた第3整地装置8C(内側整地装置)になり、1つが右側の支持ロッド21の外側(右側)に設けられた第4整地装置8D(外側整地装置)となる。
【0029】
また、図示する例では、第1整地装置8Aが3つの整地ロータ16と2つの処理ディスク17により構成され、第2整地装置8Bが7つの整地ロータ16と4つの処理ディスク17により構成され、第3整地装置8Cが6つの整地ロータ16と4つの処理ディスク17により構成され、第4整地装置8Dが3つの整地ロータ16と2つの処理ディスク17により構成されている。ちなみに、第2整地装置8Bは最中央に配置された3つの整地ロータ16,16,16により形成される2つの整地ロータ16の間箇所には、処理ディスク17が配置されていない他、第3整地装置8Cは最中央に配置された2つの整地ロータ16,16の間箇所には、処理ディスク17が配置されていない。
【0030】
次に、図7,8及び9に基づいて、本発明の移植機を適用した乗用田植機の別実施形態について説明する。なお、以下に記載しない部分については、図1〜6に示す乗用田植機と同一構成であるものとする。
図7は、本発明の別実施形態を示す整地ロータ、処理ディスク及びフロートの要部平面図である。本乗用田植機では、左右方向に並列されたそれぞれの整地ロータ16,16間の全てに処理ディスク17が配置されている。
【0031】
図8(A)は処理ディスクの斜視図であり、(B)は処理ディスクの正面図であり、(C)は処理ディスクの側面図である。処理ディスク17の左右の各側面における中心には左右方向に突出するボス部33が一体的に突設されている。このボス部33には、ロータ軸14を挿通させる側面視多角形状(図示する例では、ロータ軸14の断面形状に対応させて四角形状)の左右方向の軸孔32が穿設されている。
【0032】
図9は、整地装置の斜視図である。処理ディスク17は、軸孔32を介して、左右方向の並べられた整地ロータ16,16に挟まれた状態で、ロータ軸14に挿通支持される。この際、左右の整地ロータ16,16のボス部28先端部が、処理ディスク17のボス部33の先端部に当接し、処理ディスク17のロータ軸14に対しての左右位置が固定される。すなわち、隣接する左右の整地ロータ16,16の端部である2つのボス部28,28の先端部によって処理ディスク17のボス部33を挟持することにより、ロータ軸14に処理ディスク17を取付固定する。
【0033】
そして、処理ディスク17のボス部33の左右突出量分だけ整地ロータ16の間に隙間が形成される。すなわち、処理ディスク17のボス部33が整地ロータ16同士の間隔を設定する間隔設定部材になり、処理ディスク17のボス部33の左右突出量を変更することにより、整地ロータ16間の距離を所望の距離に変更できる。くわえて、ボス部33により、処理ディスク17をより安定した姿勢で、ロータ軸14に挿通支持されることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。
【図2】整地ロータと、処理ディスクと、フロートと、植付作業機による植付箇所と、施肥ノズルによる施肥箇所との配置を示す要部平面図である。
【図3】(A)は整地ロータの斜視図であり、(B)は整地ロータの正面図であり、(C)は整地ロータの側面図である。
【図4】通常の整地ロータの取付構造を示す要部平面図である。
【図5】(A)は処理ディスクの斜視図であり、(B)は処理ディスクの正面図であり、(C)は処理ディスクの側面図である。
【図6】整地装置の斜視図である。
【図7】本発明の別実施形態を示す整地ロータ、処理ディスク及びフロートの要部平面図である。
【図8】(A)は処理ディスクの斜視図であり、(B)は処理ディスクの正面図であり、(C)は処理ディスクの側面図である。
【図9】整地装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
3 走行機体
6 植付作業機
14 ロータ軸
16 整地ロータ(整地体)
17 処理ディスク(処理体)
33 ボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)の後部に植付作業機(6)を連結し、植付作業機(6)の前方に、前後回転することにより圃場を整地する整地ロータ(16)を左右方向に複数並べて配置するとともに前後回転することにより圃場面近傍にある雑草等の狭雑物を地中に押込み処理する又は切断処理する複数の処理ディスク(17)を設けた移植機において、整地ロータ(16)と処理ディスク(17)とを別体で形成し、各処理ディスク(17)を左右方向の並列された整地ロータ(16)の間に配置した移植機。
【請求項2】
処理ディスク(17)にボス部(33)を一体的に形成し、該ボス部(33)に整地ロータ(16)を回転駆動させるロータ軸(14)を挿通させ、隣接する整地ロータ(16)の端部でボス部(33)を挟持することにより、前記ロータ軸(14)に対して処理ディスク(17)を取付固定した請求項1の移植機。
【請求項3】
隣接する整地ロータ(16)の端部で処理ディスク(17)を挟持することにより、整地ロータ(16)を回転駆動させるロータ軸(14)に対して処理ディスク(17)を取付固定した請求項1の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−159919(P2009−159919A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2787(P2008−2787)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】