説明

移載装置用の軌道

【課題】所謂「枕木」は全く使用しないでも、移載装置30用のレール、つまり軌道を簡単に敷設することがきて、しかも水平レベルの調整作業も簡単に行うことのできる軌道を提供すること。
【解決手段】ワークの棚に対する出し入れを行う移載装置のための軌道10を、床面上に固定される長尺ベース材11と、この長尺ベース材11上に少なくとも長手方向の両端部において高さ調整自在に配置されるレールベース12と、このレールベース12上に配置されるレール13とにより構成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの棚に対する出し入れを行う移載装置のための軌道に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図1に示すような移載装置30は、移載機31を有していて、この移載機31が有しているフォーク32を棚側に伸ばして、ワークの棚に対する出し入れを行うものである。近年では、棚そのものを大型化かつ大量収納可能なものとして大量の製品や部品を収納できるようにし、この種の移載装置30が内部を動き回る所謂「自動倉庫」とすることがなされてきている。
【0003】
また、この種の移載装置30について、もし、全体が床面20上に対して正しい位置、すなわち、移載装置30の車輪33が水平位置にないと、棚側に伸ばされ切ったフォーク32の先端が棚やその上にある製品や部品等に衝突する可能性が高くなり、しかも、棚に対するフォーク32の位置を正確に算出できないことになって、非常に問題となり得る。
【0004】
そこで、この種の移載装置30は、図1にも示すように、床面20上に敷設したレール上にて移動するようになされてきているのであるが、このレールは床面20上に対して完全な水平状態で敷設されていることが条件となっている。
【0005】
出願人も、この種の移載装置30用のレールとして、例えば、特許文献1にて提案してきている。
【特許文献1】実開平6−14110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1にて提案している技術は、「自動倉庫のスタッカークレーンのガイドレールの枕木」であり、「スタッカークレーンの走行に伴う振動を吸収する」ことを目的としてなされたものである。
【0007】
また、この特許文献1にて提案している「自動倉庫のスタッカークレーンのガイドレールの枕木」は、図7にも示すように、「ガイドレールが載る金属製等の基板と、この基板の下面に重ねられる合成樹脂製等の弾性板とを有している自動倉庫のスタッカークレーンのガイドレールの枕木」という構成を有していて、「弾性板19がスタッカークレーン11の走行に伴う振動を吸収するので、スタッカークレーン11の走行に伴うびびり振動や騒音を防止することが出来る」といった作用あるいは効果を発揮するものとなっている。
【0008】
しかしながら、この特許文献1の「枕木」では、レールの水平状態を維持あるいは保持するために、レール下の全ての「枕木」に対して位置調整作業を行わなければならないから、敷設作業が相当困難なものになっている。何故なら、床面20上の水平レベルは、場所によってまた施工業者によって様々であり、本発明者の実際の検討によると、場合によっては±25mm程度の誤差が発生していた。
【0009】
そこで、本発明者等は、床面20上の水平レベルは±25mm程度の誤差はあることを前提として、レールの敷設を簡単に行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0010】
すなわち、本発明の目的とするところは、所謂「枕木」は全く使用しないでも、移載装置30用のレール、つまり軌道を簡単に敷設することがきて、しかも水平レベルの調整作業も簡単に行うことのできる軌道を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「ワークの棚に対する出し入れを行う移載装置30のための軌道10であって、
この軌道10を、床面20上に固定される長尺ベース材11と、この長尺ベース材11上に少なくとも長手方向の両端部において高さ調整自在に配置されるレールベース12と、このレールベース12上に配置されるレール13とにより構成したことを特徴とする移載装置30用の軌道10」
である。
【0012】
すなわち、この請求項1に係る軌道10は、図3〜図6に示すように、床面20上に固定される長尺ベース材11と、この長尺ベース材11上に配置されるレールベース12と、このレールベース12上に配置されるレール13とにより構成したものであり、所謂「枕木」を全く使用しないものである。勿論、この軌道10に対しては、図1及び図2に示すように、ワークの棚に対する出し入れを行う移載装置30がその上を移動することになるものである。
【0013】
この軌道10を、そのレール13が最終的に水平状態となるようにしながら床面20上に敷設するには、まず、長尺ベース材11をこの床面20上に固定するのであるが、この床面20の水平レベルは、完全でなくても十分である。その理由は、以下に順に述べていくが、本発明では、床面20上の水平レベルについては、±25mm程度の誤差があることを前提としているからである。
【0014】
この長尺ベース材11を床面20上に施工するにあたっては、上述したように、この床面20の水平状態は問題ではなく、単にこの長尺ベース材11を床面20上に固定ボルト11bによって固定していくのである。後述する最良形態の長尺ベース材11では、図3の(a)に示すように、その所々に取付フランジ11aが一体化してあるから、当該長尺ベース材11の床面20上に対する固定は、これらの取付フランジ11aを固定ボルト11bによって床面20上に固定することによりなされる。
【0015】
さて、以上のようにして床面20上に固定された長尺ベース材11上には、図4及び図5に示すように、レールベース12をジャッキボルト15によって高さ調整、つまり水平状態を調整しながら固定するのである。このレールベース12は、図4及び図5に示したように、内部が空洞12dになった長方形状の本体部12aと、この本体部12aの左右に直角に突出した2本の中央フランジ部12bとによって構成したものである。
【0016】
このレールベース12は、その各中央フランジ部12bに挿通したジャッキボルト15を長尺ベース材11上に螺着するとともに、このジャッキボルト15のダブルナットの位置を調整することによって、長尺ベース材11に対する高さ調整と全体の水平状態とが調整されるものである。具体的には、本体部12aの上面の水平状態をチェックしながら、長手方向の両端部に位置する各ジャッキボルト15におけるダブルナットの位置を調整していくのである。これによって、床面20上が平坦でも水平でもない場合であっても、各ジャッキボルト15の上下調整で、本体部12a、つまり当該レールベース12の上面は、「枕木」なしで完全な水平状態に調整されるのである。中間部に位置する各ジャッキボルト15にあっては、レールベース12を支持可能となるように、換言すれば下側のナットが中央フランジ部12bの下面に当接するように調整するのみでよい。
【0017】
レールベース12が水平状態になれば、その上にレール13を敷設していくのであるが、このレール13の上面は、レールベース12の上面が水平状態になっていることから、水平状態になることは言うまでもない。なお、このレール13のレールベース12に対する固定は、後述する最良形態の場合には、例えば図4〜図6に示すようなレールクランプ16と、ブラケット18とを採用して行っている。
【0018】
レールクランプ16は、図4及び図5に示すように、一端がレール13の側面に形成してあるクランプ溝13a内に係止され、他端がブラケット18側に固定されるもので、締着ボルト17によってブラケット18に共締めされるものである。また、ブラケット18は、図6にも示すように、端面「逆U字状」のものであって、レールベース12側に溶着等の手段によって固着したものであり、上記締着ボルト17が挿通されるとともに、そのナットが挿入される開口を有したものである。
【0019】
従って、この請求項1の軌道10は、所謂「枕木」は全く使用しないでも、簡単に敷設することがきて、しかも水平レベルの調整作業も簡単に行えるものとなっているのである。
【0020】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の移載装置30用の軌道10について、
「レールベース12とレール13との間に防振材14を介在させたこと」
である。
【0021】
すなわち、この請求項2の軌道10では、図4及び図5に示すように、レールベース12とレール13との間に防振材14を介在させたものであり、これにより、次のような作用を発揮するものである。
【0022】
レールベース12とレール13との間に防振材14が介在させてあれば、当該軌道10上を移載装置30が走行したとしても、その振動が防振材14によって吸収されて、移載装置30、ひいては搬送するワークの保護が行われるとともに、騒音の発生が抑制される。また、この防振材14が存在することによって、後述する最良形態の場合のように、レールクランプ16と、ブラケット18とを採用して、レール13のレールベース12に対する固定を行う際に、各締着ボルト17による締着を弾力的におこなえるため、移載装置30が通過するときの「キシミ」発生をも抑制することになる。
【0023】
従って、この請求項2の軌道10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、移載装置30の走行を安定した状態で行え、騒音発生をも抑制できるものとなっている。
【0024】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の移載装置30用の軌道10について、
「レールベース12の継ぎ部分12cと、レール13の継ぎ部分13cとを、当該軌道10の別位置で行うようにしたこと」
である。
【0025】
すなわち、この請求項3の軌道10では、各レールベース12及びレール13を長手方向に連結して、長いものとする場合に、図3の(a)中の点線で示したレールベース12の継ぎ部分12cと、図3の(a)中の実線で示したレール13の継ぎ部分13cとを、当該軌道10の別位置で行うようにしたものである。そして、長尺ベース材11については、そのような限定をしなくてもよいようにしたのである。
【0026】
もし、レールベース12の継ぎ部分12cと、レール13の継ぎ部分13cとが、同一位置にあったとすると、各境界部分で微妙なズレが発生し易くなる。なぜなら、各継ぎ部分12c・13cにおいては、レールベース12及びレール13が連結されてはいないのであるから、この境界部分で、移載装置30が通過した際の騒音の原因となる位置ズレが発生し易いからである。
【0027】
そして、レールベース12の継ぎ部分12cと、レール13の継ぎ部分13cとを、当該軌道10の別位置で行うようにした結果、レールベース12の継ぎ部分12cは、その上に継ぎ部分13cがないレール13が存在することによってズレのない滑らかな接続がなされたものとなる。同様に、レール13の継ぎ部分13cは、その下に継ぎ部分12cがないレールベース12が存在することによってズレのない滑らかに接続されものとなるのである。
【0028】
従って、この請求項3の軌道10は、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、各継ぎ部分12c・13cにおいて滑らかなものとなっているのである。
【発明の効果】
【0029】
以上、説明した通り、本発明においては、
「ワークの棚に対する出し入れを行う移載装置30のための軌道10であって、
この軌道10を、床面20上に固定される長尺ベース材11と、この長尺ベース材11上に少なくとも長手方向の両端部において高さ調整自在に配置されるレールベース12と、このレールベース12上に配置されるレール13とにより構成したこと」
にその主たる特徴があり、これにより所謂「枕木」は全く使用しないでも、簡単に敷設することがきて、しかも水平レベルの調整作業も簡単に行える軌道10を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である軌道10について説明するが、この最良形態の軌道10は、上記各請求項に係る発明の全てを含むものである。
【0031】
図1には、自動倉庫内に形成されたコンクリート製の床面20上に、本発明に係る軌道10が敷設されていて、この軌道10上に、ワークの棚に対する出し入れを行う移載装置30を載置した状態の斜視図が示してある。この移載装置30は、その中程にワークの棚に対する移載を行う移載機31を有していて、当該移載装置30の作動によって、移載機31のフォーク32が図示しない棚に対して出入することになるものである。勿論、この移載装置30は、図1及び図2に示したように、軌道10上を走行するための車輪33を有していて、この車輪33の下側に対しては、図2に示したように、軌道10が敷設してあるのである。
【0032】
そして、本最良形態における軌道10は、図3〜図6に示すように、床面20上に固定される長尺ベース材11と、この長尺ベース材11上に配置されるレールベース12と、このレールベース12上に配置されるレール13とにより構成したものであり、所謂「枕木」を全く使用しないものとなっているものである。
【0033】
長尺ベース材11は、基本的には、金属材料によって長尺な板状のものとし形成したものであり、その側面には、図3〜図6に示したように、所定の間隔をおいて複数の取付フランジ11aが一体的に形成してある。これら各取付フランジ11aは、当該長尺ベース材11を床面20上に固定する際に使用されるものであり、図4及び図5にも示したように、これに形成してあるボルト挿通穴内に通した固定ボルト11bを床面20に固定するようにするものである。なお、この長尺ベース材11を連結する際にできる継ぎ部分12cは、図3の(a)中の点線にて示した位置になる。
【0034】
レールベース12は、図4及び図5に示したように、空洞12dを有した断面四角形状の本体部12aと、この本体部12aの左右に突出する2本の中央フランジ部12bとからなるものであり、全体を金属によって形成したものである。勿論、このレールベース12は、その断面形状が上下対象となっているものであり、裏表のないものとなっており、本体部12aの上面または下面は、完全な平面を形成しているものである。
【0035】
レール13は、図4及び図5にも示したように、左右両側の下部に、後述するレールクランプ16の先端を挿入するためのクランプ溝13aを形成し、左右両側の上部に、後述する連結材19を挿入して当該レール13を連結するための接続溝13bを形成したものである。なお、このレール13を連結する際にできる継ぎ部分13cは、図3の(a)中の実線にて示した位置になり、この継ぎ部分13cは、上述したレールベース12側の継ぎ部分12cとは異なる位置になるように設定される。
【0036】
このレール13の連結は、図3の(b)に示すように、接続溝13b内に収納した連結材19を、図3の(a)及び図4等に示したように、ボルトを使用して各レール13側に固定することによってなされる。勿論、この連結材19の接続溝13b内への収納は、その中間部分が継ぎ部分13cに位置するようにするものである。
【0037】
本最良形態の軌道10では、図4等に示したように、上述したレールベース12とレール13との間に防振材14が介在されるのであり、この防振材14は、レールベース12とレール13との間の緩衝作用を発揮する他、移載装置30の通過による振動をある程度吸収するものでもある。
【0038】
さて、床面20上に取り付けられた長尺ベース材11上に対しては、レールベース12が取り付けられるのであるが、その際に使用されるのが、図4にも示したジャッキボルト15である。このジャッキボルト15は、レールベース12の各中央フランジ部12bに上方から挿通された後、その下端を長尺ベース材11に形成したネジ穴内に螺合するとともに、上下のダブルナットの螺着位置の調整を行うことにより、レールベース12の長尺ベース材11に対する連結と、レールベース12の長尺ベース材11に対する高さ調整を行うものである。
【0039】
レールクランプ16は、その先端をレール13に形成したクランプ溝13a内に係合させて、締着ボルト17によって全体をレールベース12側に固定することにより、レール13のレールベース12上に対する固定を実際に行うものである。本最良形態では、締着ボルト17は、その下方部分がレールベース12側に固定したブラケット18に挿通されるものであり、図4及び図6に示したように、ブラケット18内に係合させた下側ナットを締着することにより、レール13のレールベース12上に対する固定が行われるのである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る軌道上を移載装置が走行する様子を示した斜視図である。
【図2】図1中の1−1線部のからみた各軌道の拡大縦断面図である。
【図3】同軌道を示すもので、(a)はその部分平面図、(b)は部分側面図である。
【図4】図3の(a)中の2−2線に沿ってみた軌道の拡大断面図である。
【図5】図3の(a)中の3−3線に沿ってみた軌道の拡大断面図である。
【図6】図3の(b)に示した右方部分を拡大して示した軌道の部分側面図である。
【図7】従来の技術を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 軌道
11 長尺ベース材
11a 取付フランジ
11b 固定ボルト
12 レールベース
12a 本体部
12b 中央フランジ部
12c 継ぎ部分
12d 空洞
13 レール
13a クランプ溝
13b 接続溝
13c 継ぎ部分
14 防振材
15 ジャッキボルト
16 レールクランプ
17 締着ボルト
18 ブラケット
19 連結材
20 床面
30 移載装置
31 移載機
32 フォーク
33 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの棚に対する出し入れを行う移載装置のための軌道であって、
この軌道を、床面上に固定される長尺ベース材と、この長尺ベース材上に少なくとも長手方向の両端部において高さ調整自在に配置されるレールベースと、このレールベース上に配置されるレールとにより構成したことを特徴とする移載装置用の軌道。
【請求項2】
前記レールベースとレールとの間に防振材を介在させたことを特徴とする請求項1に記載の移載装置用の軌道。
【請求項3】
前記レールベースの継ぎ部分と、前記レールの継ぎ部分とを、当該軌道の別位置で行うようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移載装置用の軌道。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−74546(P2008−74546A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255203(P2006−255203)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】