説明

稚貝の養殖方法、養殖装置

【課題】稚貝の成長を促進させ、短期に出荷が可能となる稚貝の養殖方法、養殖装置及び生産方法を提供する。
【解決手段】
飼育用海水を満たした飼育水槽7内で稚貝を飼育する。遮光手段8により、飼育水槽7を遮光率が80%から100%の範囲になるように遮光して、飼育用海水を稚貝の生育に適した温度とし、酸素ガス吹込手段4により、飼育用海水中の溶存酸素量が9mg/lから15mg/lの範囲となるように飼育水槽7外で調整する。この飼育用海水を飼育水槽7の水面下に供給する一方、飼育水槽7から排水をして稚貝の養殖領域の静寂を保持する。稚貝に餌を継続的に与え、稚貝が常に餌を摂取可能な環境を作り出し、餌の摂取量を増大させることで成長を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は稚貝の養殖方法、養殖装置及び生産方法に係り、特にアワビ、クロアワビ、エゾアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ、トコブシ等のアワビ類の稚貝の成長を著しく促進させることができる稚貝の養殖方法、養殖装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アワビ、クロアワビ、エゾアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ、トコブシ等のアワビ類の貝は天然の海域においては潮通しがよくて、きれいな環境で生息している。
かかるアワビ類の貝を陸上で養殖する技術は、特許文献1ないし3等により開示されている。
【0003】
従来の養殖技術は、養殖環境を天然の環境に近づけることを主目的とする技術であった。そして、飼育水槽内をエアレーション、給水圧、水中ポンプ等を使用して、空気による曝気によって溶存酸素量を確保していた。しかし、そのような方法では糞、残餌などを混合攪拌して分離処理しなければならず、または換水率を高めて水槽内の流水量を高める必要があった。
【特許文献1】特開2002−119169号公報
【特許文献2】特開2003−125668号公報
【特許文献3】特開2004−135562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の養殖技術では、アワビ類の稚貝殻長3cmのものを9cmまでに成長させるには、4年程度の時間を要していた。この成長速度は、自然海に生息するアワビ類とほぼ同等である。
【0005】
一方、商品として好まれる大きさは9cm程度であるが、成長に4年もの長い飼育期間を必要とするため、このことが本格的なアワビ類の養殖の拡大を妨げる大きな要因であった。アワビ類の養殖を広く事業として実施できるようにするためには、多数の稚貝を効率よく飼育し、かつ、大幅に飼育期間を短縮することが望まれていた。
しかし、アワビ類の成長を促進させ短期間での出荷を可能にするため、生育環境をどのように改善すべきかについて、従来は全く知られていなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、稚貝の成長を促進させて、飼育開始から早期に出荷が可能となる稚貝の養殖方法、養殖装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はアワビ類の生態を詳しく研究し、どのような環境であればより多く餌を摂取するようになり、成長が促進され、また、身が大きくて軟らかいアワビ類を短期に飼育できるかについて追求した結果、いくつかの解決方法を見出すに至った。
【0008】
先ず、アワビの生育する環境に着目し、これらを分析した。自然海においてアワビ類の稚貝は岩の切断面、クサビ型のみぞ、天石の下等暗い場所に生息している。そして、動きが少なく外敵から身を守らなければならない自然環境では、アワビ類の稚貝は、餌を食べるのは暗闇であり、昼間は餌をほとんど食べない性質を有する。また、自然に生息するアワビ類は、水圧や外敵から身を守るために殻が厚くなる一方で、身は硬く小さくなる傾向
にある。そこで、本発明者は、まず、アワビ類の稚貝の飼育中は、これらを遮光状況下におくことにした。
【0009】
次に、過剰な海水の流れを作り出すことは、アワビ類を怯えさせて貝殻を厚くさせる傾向となり成長が遅れるので、成長促進のためには適切ではないことを見出した。上記の理由から、一般に広く採用されているエアレーション(曝気)はアワビ類を怯えさせ、摂餌量を大きく減少させてしまうため逆効果である。
さらに、餌を多く摂取させるためには、飼育用海水中の酸素量を自然の状況下よりも増大させ、活動を活発化させることが有効であることがわかった。上記のような知見に基づき、本発明では以下のような手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明は、飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育する養殖方法であって、
飼育中における前記飼育水槽の遮光率が100%になるように遮光し、
前記飼育用海水を稚貝の生育に適した温度とし、かつ、この飼育用海水中に酸素ガスを供給して、餌の摂取量を自然に生息する稚貝よりも増大させることで成長を促進させることを特徴とする。
前記飼育用海水中の溶存酸素量(溶存酸素濃度)が9mg/lから15mg/lの範囲となるように調整することが好ましい。
このようにして、稚貝に餌を継続的に与え、稚貝が常に餌を摂取可能な環境を積極的に作り出し、餌の摂取量を自然に生息する稚貝よりも大幅に増加させることで成長を促進させ、出荷までの飼育期間を短縮することができる。
【0011】
また本発明は、飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育する養殖方法であって、
前記飼育水槽を遮光率が80%から100%の範囲になるように遮光し、
前記飼育用海水を稚貝の生育に適した温度とし、かつ、この飼育用海水中の溶存酸素量が9mg/lから15mg/lの範囲となるように飼育水槽外で調整した後、飼育用海水が満たされた飼育水槽の水面下に少しずつ供給する一方、飼育水槽からの排水をして稚貝の養殖領域の静寂を保持し、
かつ、稚貝に餌を継続的に与えて、稚貝が常に餌を摂取可能な環境を積極的に作り出し、餌の摂取量を自然に生息する稚貝よりも増大させることで成長を促進させることを特徴とする。
【0012】
アワビ類の摂餌量を増大させる状況を複数実現し、これらを相乗的に作用させて、天然貝よりも著しく成長を早くすることができる。
まず、自然海よりも酸素溶存量を増大させた環境にすることにより、アワビ類の動きが活発化し、餌の摂取量が大幅に多くなり、かつ、アワビ類の飼育密度を高くできる、という効果が得られた。すなわち、稚貝の活動を活発化させて餌の摂取を促し、成長を促進させるためには、自然海よりも多い量の溶存酸素が必要であることが判明した。飼育用海水中の溶存酸素量が9mg/lから15mg/lの範囲では、摂餌量の増加により著しい成長促進効果を発揮するが、9mg/l未満の酸素量では、餌の摂取量を大幅に増やすことは難しいことがわかった。
【0013】
前記飼育用海水は、主に温度調整を目的として、海洋表層水と、海洋表層水より低い温度の海洋深層水を混合することができる。例えば、冬期は海洋表層水の温度が低く、飼育用海水としてそれを使用することが好ましい場合がある。しかし、夏期は、温度が高い海洋表層水に、それよりも温度が低い海洋深層水を混合させて適温にして使用することができる。
【0014】
本発明では、稚貝の生育に適した水温の飼育用海水中に、必要な酸素を補給する。また
、遮光により夜行性である稚貝の活動を活発にし、外敵がいない状況と相まって、餌を常に食べ続ける環境を人工的に創出する。その結果、稚貝の著しい成長促進が実現される。
【0015】
また、飼育用海水として使用する海洋表層水に対しては、それに含まれる雑菌を紫外線殺菌するようにしてもよい。なお、餌は、例えば、アワビ類であればワカメ、コンブ等の海草であり、従来から餌として用いられているものを用いる。
【0016】
さらに、上記の本発明に係る方法を実施するため、次のような装置を示すことができる。
すなわち、飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育する養殖装置であって、
遮光率が80%から100%の範囲になるように遮光され、前記飼育用海水の排出口を備えた飼育水槽と、
水面下に酸素ガスの吹出口を備え飼育用海水中の溶存酸素濃度を調整する調整槽と、
この調整槽から送られる飼育用海水を、飼育用海水が満たされた飼育水槽の水面下に設置した供給口から少しずつ送出する飼育用海水供給手段と、を含むことを特徴とする稚貝の養殖装置である。
【0017】
飼育水槽の水面下に設けられる前記供給口は、複数設けてもよい。供給口から多量の海水が噴出して飼育水槽内が波立ち、稚貝の養殖領域の静寂が損なわれることがない程度の量の飼育用海水を継続的に供給することが望ましい。
【0018】
前記調整槽は、海洋深層水の注入口と海洋表層水の注入口とを備えるようにすることができる。
前記飼育水槽は、内部の海水を排水する第1排水配管と、排水した海水を満たした貯水排水槽と、この貯水排水槽内の海水を外部に排水する第2排水配管と、を備え、
前記第1排水配管の排水下流側は、前記貯水排水槽の海水内に配置され、
前記第2排水配管は、前記貯水排水槽の周縁部に設けることができる。
前記飼育水槽は、その飼育水槽の底中央部が水槽周縁部に比して浅く形成され、
前記飼育水槽の周縁部には、海水を排水する排水配管が設けることができる。
【0019】
本発明の稚貝の養殖装置において、
前記海水温制御手段は、
前記海洋深層水より高い水温の海洋表層水と前記海洋深層水とを混合して前記水温範囲内に制御する海水混合手段と、
前記海洋表層水あるいは前記混合した海水を紫外線殺菌する紫外線殺菌手段と、
を有する構成も含まれる。
【0020】
本発明の養殖装置において、前記飼育水槽は、この飼育水槽内の海水を排水する第1排水配管と、排水した海水を満たした貯水排水槽と、この貯水排水槽内の海水を外部に排水する第2排水配管と、を備え、
前記第1排水配管の排水下流側は、前記貯水排水槽の海水内に配置され、
前記第2排水配管は、前記貯水排水槽の周縁部に設けられている構成も含まれる。すなわち、自然海において稚貝は音に敏感であり、音が発生する場所では餌を食べない性質を有することから、本発明者はこの性質に着目して人工的に防音状況下に稚貝をおくことで、稚貝が餌を食べなくなる状態を極力少なくして短期飼育を可能とした。
【0021】
本発明の養殖装置において、前記飼育水槽は、この飼育水槽の底中央部が水槽周縁部に比して浅く形成され、
前記飼育水槽の周縁部には、海水を排水する排水配管が設けられている構成も含まれる。すなわち、自然海においてアワビ類は振動に敏感であり、振動が発生する場所では餌を
ほとんど食べないことから、人工的に防振状況下に稚貝をおくことで、稚貝が餌を食べなくなる状態を排除した。
【0022】
また、本発明の稚貝の生産方法は、海洋深層水の水温を稚貝の生態に適した温度に制御する海水温制御手段と、
酸素ガスを前記海洋深層水中に吹き込む酸素ガス吹込手段と、
前記海洋深層水を満たした飼育水槽と、
前記飼育水槽を遮光する遮光手段と、
を備えた稚貝の養殖装置を用いて、前記稚貝を飼育し、
高い栄養素を含んだ稚貝を生産することを特徴とする。
【0023】
この生産方法により、タンパク質・脂質・無機質・ビタミン等の栄養素に関し、天然産の稚貝に比して高い栄養素を含む優れた特質を持った稚貝が生産できる。
また、上記の稚貝の養殖方法によって飼育した母貝に産卵させることにより、貝類の種苗を生産することができる。飼育開始から短期間に大量の産卵が期待できるので、短期に養殖用の種苗を生産をするのに適している。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、海洋深層水を用いて稚貝を飼育する際に、飼育に適した水温、酸素濃度、遮光状態等の環境を人工的に設けることで、餌を継続的に摂取することで餌の摂取量を増大させることができた。その結果、成長を著しく促進させることができ、養殖の効率が改善され早期出荷が可能になった。成長期間を、少なくとも従来の1/4程度に短縮できた。
また、餌の摂取量の増大により、自然のものよりも栄養価が高く、貝殻が薄く身が大きく軟らかな貝を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の稚貝養殖装置に係る実施形態を図1〜図3を用いて説明する。なお、この実施の形態では、アワビ、クロアワビ、エゾアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ等アワビ類の稚貝を養殖する場合で説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態におけるアワビ類稚貝を養殖する稚貝養殖装置を構成するブロック図、図2はこの稚貝養殖装置により養殖されたアワビ類稚貝と天然産のアワビ類稚貝との成分を比較する図である。
【0027】
この実施形態におけるアワビ類の稚貝養殖装置1は、図1及び図2に示すように、各手段により海洋深層水に各処理を施し飼育用海水を生成し、調整槽である貯蓄タンク(地下貯蓄タンク殺菌処理海水層)5に一次貯留し(図1参照)、この貯蓄タンク5から圧送手段6により前記飼育用海水を満たした飼育水槽7(図2参照)内でアワビ類の稚貝を飼育する養殖装置である。
【0028】
すなわち、飼育用海水を生成する各手段は、図1に示すように、海洋深層水の水温を制御する海水温制御手段2と、海洋深層水を紫外線殺菌する紫外線殺菌手段3と、酸素ガスを海洋深層水中に吹き込む酸素ガス吹込手段4と、飼育用海水を地下に貯蓄する貯蓄タンク5と、から構成される。
【0029】
[海水温制御手段2]
この実施の形態では、海水温制御手段2は、海洋深層水より高い水温の海洋表層水と前記海洋深層水とを混合することで、水温の低い海洋深層水を適水温範囲18℃〜21℃に調整する場合を示す。なお、海洋深層水は9℃程度と低温であり、かつ水温の変動が少な
い。一方、海洋表層水は季節、天候により水温の変動があり、例えば沖縄県の場合、海洋表層水は25℃〜30℃前後である。
【0030】
すなわち、海水温制御手段2は、海洋深層水を供給する海洋深層水供給系21と、海洋表層水を供給する海洋表層水供給系22と、海洋深層水供給系21と海洋表層水供給系22とを合流させるT管23と、海洋表層水と海洋深層水とを混合してなる飼育用海水を紫外線殺菌手段3側への供給を制御する電磁弁24と、を備えている。T管23の材質は可能な限り耐海水性の材料、例えばプラスチック、特にFRPあるいは塩化ビ二−ル樹脂等が好ましい。
【0031】
海洋深層水供給系21は、塩化ビ二−ル樹脂製配管(以下、塩ビ配管という)に設けられた給水ポンプ21cにより海洋深層水を下流側に供給もので、給水ポンプ21cの上流側に流量計21aと逆止弁21bが、下流側に制御弁(コントロールバルブ)21dが設けられている。
【0032】
海洋表層水供給系22は、塩ビ配管に設けられた給水ポンプ22cにより海洋表層水を下流側に供給するもので、給水ポンプ22cの上流側に流量計22aと逆止弁22bが、下流側に制御弁(コントロールバルブ)22dが設けられている。
【0033】
海水温制御手段2は、海洋表層水の水温が季節によって変化するため、混合してコントロール(制御)する事で飼育に適した水温を求める。すなわち、この制御は、図示しない海水温検出器が検出する各海水温に基づきコントロールバルブ21d,22dを作動させて夫れ夫れの流量を調節することにより行われる。なお、流量は流量計21a,22aにより表示される。前記適水温は、その水温範囲が18℃〜21℃であることが好ましい。なお、海洋深層水は、地上において適水温範囲の18℃〜21℃まで暖めコントロールすることが可能であれば、混合しなくても海洋深層水のみでもよい。
【0034】
混合された飼育用海水は、電磁弁24にてその流量を制御され、紫外線殺菌手段3側へ移送される。
【0035】
[紫外線殺菌手段3]
ところで、水温が比較的高い海洋表層水には雑菌類が発生することがあり、殺菌の必要性がある。そこで、この実施の形態では、混合した飼育用海水を紫外線にて殺菌する紫外線殺菌手段(紫外線殺菌装置)3を備えている。紫外線殺菌装置3は、飼育用海水を無菌に近い状態に殺菌する。なお、予め海洋表層水のみを紫外線にて殺菌した後に、海洋深層水と混合してもよい。
【0036】
紫外線殺菌装置3にて殺菌された飼育用海水は、調整槽である貯蓄タンク(地下貯蓄タンク殺菌処理海水槽)5に一次貯留される。貯蓄タンク5内に貯留される海水量は海水面に設けたフロート検出器により検出され、そのフロート信号により電磁弁24が開閉し海水量が所定の容量を保つように制御される。
【0037】
[酸素ガス吹込手段4]
酸素ガス吹込手段(酸素ガス発生装置)4は、貯水タンク内の溶存酸素量を高めるため、貯蓄タンク5に酸素ガスを吹き込み溶解させる。溶存酸素量をいたずらに増大させることは、過剰酸素供給による弊害(いわゆるガス病の発生)があるので限界がある一方、稚貝の活動を活発化させて餌の摂取を促し、成長を促進させるためには、自然海よりも多い量の酸素供給が必要であることがわかった。すなわち、9mg/lから15mg/lの範囲では、摂餌量の増加により著しい成長促進効果を発揮するが、9mg/l未満の溶存酸素量では、餌の摂取量を大幅に増やすことは難しい。
【0038】
図7は、沖縄県久米島で、水深15mの地点から採取された海洋表層水及び海洋深層水の溶存酸素量の月変化を計測したものである。これによれば、溶存酸素量の多い海洋表層水で、しかも海草類や植物性プランクトンによる光合成が盛んな時期であっても、通常の自然海では、溶存酸素量は9mg/lに達しないことがわかる。自然海では、波打ち際等のみ溶存酸素量が9mg/lになることがあるが、曝気によって飼育水槽内の海水中の溶存酸素量を9mg/lにするには、激しく海水を攪拌して泡立てる必要がある。
【0039】
しかし、このような状況下では、アワビ類は怯えて餌を食べないので、いかにしてアワビ類の養殖領域の静寂を保持しながら自然海よりも多くの酸素を供給するかが課題となる。適切な方法の一つは、できるだけ純度の高い酸素ガスを海水中に吹き込むことである。
このようにすれば、遮光された飼育水槽中の静寂が保持されつつ、多量の酸素を供給できるようになるので、アワビ類が餌を食べ続けること可能な環境となり、摂餌量が通常よりも大きく増加する。この場合、飼育用水槽とは別の場所(タンク等)で飼育用海水の温度や溶存酸素量を調整し、これを飼育水槽の水中に少量ずつ供給することが好適である。すなわち、飼育水槽外の調整槽(タンク)中において、酸素ガスを海水中に吹き込み所定濃度に調整後、これを複数の飼育水槽に供給すれば、各飼育水槽中の飼育用海水の管理が容易である。
貯蓄タンクに貯留された飼育用海水は、圧送手段(圧送ポンプ)6により、飼育水槽7側に圧送される。
【0040】
[飼育水槽7]
飼育水槽7は、略直方体型の水槽であり、水槽の底面が、水槽の中央部が浅く端部が深くなるように所定角度傾斜した構造を有する。また、底面の傾斜の最下部近傍に少なくとも1ケの汚濁海水排出口が設けられた構造を有する。更に、飼育水槽7は、水槽内に内挿可能な籠が設けられ、二重構造になっている。なお、飼育水槽7の海水接触部分は可能な限り耐海水性の材料、例えばプラスチック、特にFRPあるいは塩化ビ二−ル樹脂等が好ましい。
【0041】
ところで、自然海においてアワビ類は岩の切断面、クサビ型のみぞ、天石の下等暗く、潮の流れが穏やかで静かな環境に生息している。そして、餌を食べる時は暗闇がほとんどである。また、潮の流れが急でうるさい環境では怯えて餌を食べないことに着目した。
本発明者は、ほぼ完全な遮光状況下にアワビ類稚貝をおくことで、アワビ類の稚貝が餌を食べ続けることを見出した。従来の養殖装置でも、アワビ類が暗闇を好むことは知られているため、遮光された部分を飼育水槽中に設けていたが、飼育水槽全体を、飼育中、完全遮光状態におくことは、アワビ類にどのような影響があるのか知られていないため実施されていなかった。
【0042】
一方、潮の流れが穏やかで(防振)静かな(防音)環境下に稚貝をおくことが、怯えずに餌を食べ続けさせるためには重要であることもわかった。音がうるさく、また波による振動が生じる環境では摂餌量が減少することが認められる。このことは、従来、飼育水槽に普通に設けられるエアレーション装置の採用は、音や振動が発生するため不適であることを示している。
【0043】
[遮光手段8]
飼育水槽7は、飼育水槽7全体を遮光率100〜90%あるいは50〜0ルックスに遮光して覆う飼育棟内に設けられている。しかし、飼育中は、飼育水槽7は完全に遮光されることが好ましい。
【0044】
この実施の形態では、飼育棟それ自体が遮光手段8となっている。飼育棟には、通常は
閉じている窓明かりが設けられており、稚貝の生育状況の確認作業や、清掃等の保守作業等を行うときのみ、この窓明かりを開いて用いる。
そして、この窓明かりを開いたときであっても、遮光率90%あるいは50ルックスに遮光していることが望ましい。また、飼育水槽7の外周壁を遮光部材により遮光してもよく、その場合、遮光部材としては、水槽上面にベニヤ板等を敷き詰め、その上よりアルミ製シートを張ることができる。更に、飼育水槽7の周囲に遮光ネットを張り巡らせて遮光構造とすることが望ましい。
【0045】
[防音手段]
飼育水槽7において発生する音の一つとして、飼育水槽7の排水音が挙げられる。そこで、この実施の形態において飼育水槽7は、排水音が静かな排水構造を設けている。この排水構造は、図2に示すように、飼育水槽7内の海水を排水する第1排水配管71と、排水した海水を満たした貯水排水槽72と、貯水排水槽72内の海水を外部に排水する第2排水配管73と、を備えている。そして、第1排水配管71の排水下流側は、貯水排水槽72の海水内に配置されている。また、第2排水配管73は、飼育水槽7より遠く離れた貯水排水槽72の端部に設けられている。
【0046】
この排水構造は、飼育水槽7から排出される海水が第1排水配管71を介して貯水排水槽72内に流れる際、第1排水配管71の排水下流側が貯水排水槽72の海水内に配置されているために、排水音は極力抑えられる。また、第2排水配管73が飼育水槽7より遠く離れた貯水排水槽72の端部に設けられているために、排水音が飼育水槽7側にはほとんど伝わらない。
【0047】
[防振手段]
飼育水槽7において発生する振動の主たるものは、飼育水槽7の排水時の海水の揺れが挙げられる。そこで、この実施の形態において飼育水槽7は、排水時の揺れを抑える防振構造に形成されている。この防振構造は、図3に示すように、飼育水槽7の底中央部7aが水槽周縁部7bに比して浅く形成している。そして、アワビ類稚貝を飼育する籠70は、飼育水槽7の中央部に配置されている。また、排水配管71a,71bは、水槽周縁部7bに設けられている。
【0048】
この防振構造は、飼育水槽7から排出される海水を水槽周縁部7bより排水配管71a,71bを介して排出することで、排水時に発生する海水の揺れが飼育水槽7側にはほとんど伝わらない。
【0049】
更にまた、飼育水槽7は、籠70内に設けられた付着セルター(餌投与手段)を有し、この付着セルターにより、例えば所定時間毎に所定量の海藻を投与する。
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0050】
[アワビ類の稚貝養殖装置の作用]
まず、飼育用海水を生成し、貯留タンク5に貯留する。
すなわち、海洋深層水供給系21において給水ポンプ21cにより海洋深層水が供給され、海洋表層水供給系22において給水ポンプ22cにより海洋表層水が供給され、T管23にて合流し混合される。そして、制御弁21d,22dは、海洋深層水と海洋表層水との混合率を調節することで、結果的に飼育用海水を適水温範囲18℃〜21℃に制御する。
【0051】
混合された飼育用海水は、電磁弁24にてその流量を制御され、紫外線殺菌手段3側へ移送される。紫外線殺菌装置3は、混合した飼育用海水を無菌に近い状態に殺菌する。なお、予め海洋表層水のみを紫外線にて殺菌した後に、海洋深層水と混合してもよい。
【0052】
紫外線殺菌装置3にて殺菌された飼育用海水は、貯蓄タンク(地下貯蓄タンク殺菌処理海水層)5に一次貯留される。貯蓄タンク5内に貯留される海水量は海水面に設けたフロート検出器により検出され、そのフロート信号により電磁弁24が開閉し海水量が所定の容量を保つように制御される。
【0053】
酸素ガス吹込手段(酸素ガス発生装置)4は、貯水タンク内の溶存酸素を高めるため、貯蓄タンク5に酸素ガスを吹き込み溶解させる。すなわち、海洋深層水は溶存酸素が少なく、かなりの量の酸素の補給が必要である。そこで水槽外で酸素補給することを容易にしておけば、稚貝の養殖という観点から、また海洋深層水の利用という観点からも効果的に両立する。このように、酸素濃度の高い飼育用海水を提供することで、アワビ類の摂餌・運動時に酸素消費が多くなる場合や、アワビ類の収容密度が高い環境でも養殖することが可能となる。
【0054】
貯蓄タンクに貯留された飼育用海水は、圧送手段6により、飼育水槽7側に圧送される。飼育水槽7は、水槽の底面が所定角度傾斜しているので、落下蓄積するアワビ類稚貝の糞を底面の傾斜に沿って底面最下部に落下させ、汚濁海水排出口から水槽外へ排出する。また、水槽内を清掃する場合は、竹籠内の稚貝を竹籠ごと持ち上げて清掃することもできる。
【0055】
このように、稚貝が排出する糞が蓄積する部分と貝が配置される部分と混合することなく水槽外へ排出される。すなわち、きれいな養殖用海水の流れと糞で汚れた汚濁海水の流れを実質的に分離させ、常に清潔な環境を保つことができる。
【0056】
飼育水槽7は、遮光手段8により遮光率100〜90%あるいは50〜0ルックスに遮光されており、夜行性のアワビ類稚貝を考慮した飼育環境を提供でき、自然海には生息しない特質を持ったアワビ類の稚貝が飼育できる。
【実施例】
【0057】
(養殖装置及び方法)
図1に示す装置を用い、飼育用海水の水温を18℃から20℃に制御し、アワビ類の稚貝殻長3cmを飼育水槽7内において、飼育中は、ほぼ完全遮光状況下において8ヶ月間飼育した。この間、飼育用海水中の酸素濃度は9.5から10mg/lに調整した。長さ80cm×幅80cm×高さ30cmの籠に殻長8cmから9cmのアワビを150個入れて飼育した。
【0058】
餌は、主にワカメ、コンブを用い、籠中にこれらを適宜切断して投入した。餌は、昼夜を問わず常に与えた。
また、飼育用海水は、海洋深層水と海洋表層水を混合したものを用いたが、海洋表層水の温度が高いときは、海洋深層水の量を増やして水温の調節を行った。
【0059】
(飼育状況)
飼育期間中、遮光、高い酸素濃度、静寂性の保持、外敵がいない等の環境によってアワビのストレスが減少し、いつでも摂餌できる状況となった。これらの環境要因が相乗的に作用して、自然海に生息する場合に比べて餌の摂取量が大幅に増大したと考えられる。
また、充分な酸素の供給によって、長さ80cm×幅80cm×高さ30cmの籠に殻長8cmから9cmのアワビを150個収容する、という高密度での飼育が可能となった。また、完全な遮光によって、アワビ類は暗い場所を求めて重なり合うことなく養殖領域の全体に散るように分布するので、飼育密度を高くすることができた。これは従来の養殖方法では、長さ80cm×幅80cm×高さ30cmの籠に殻長8cmから9cmのアワビを70個程度収容す
るのが限界であったことに比較して、養殖の効率が二倍以上となった。
【0060】
また、養殖されているアワビを観察すると、次のような点において自然に生息するものとの顕著な差異が見られた。
飼育開始から6ヶ月から8ヶ月では最もアワビの成長が著しかった。この時期には、貝殻組成が結成している部分に色素の変化が現れ、貝殻層脈色の急激な変色結成が見られた。すなわち、アワビの身体の著しい発達に伴い、身体の成長に合わせるようにして貝殻に薄緑色の肉薄の部分が最初に生じ、身と貝殻が同時に大きくなった。その後、肉薄の部分の厚みが形成されるという現象が見られた。これは自然に生息するアワビが、成長の過程では貝殻の厚みを含めた貝殻全体が成長してゆくのと大きく異なるものである。
【0061】
また、図6に示すようにアワビの持つ触覚が著しく発達し、その長さは自然のものに比べて三倍から四倍にも達した。常に餌を求めて動き回る必要から、そのような現象が生じたと思われる。自然海では、アワビは岩陰等に隠れ、近くに流れてきた海草を食べ、身を外敵から守るためにも積極的に餌を求めて動き回ることはない。そのため触角は短く、あまり目立たない。
さらに、餌が不足すると共食いをする現象も確認された。従来、アワビは草食であることが常識であり、肉食をすることは全く知られていない。このようなことは環境の変化により、常時、摂餌する習性に変化したため生じたものと考えられる。
【0062】
本実施例では、飼育開始から8ヶ月目にはアワビの大量の産卵が見られた。このことは、飼育環境がアワビの稚貝養殖にきわめて適したものであることを示している。また、実施例の方法は、短期に養殖用の母貝生産をするのにも適していることがわかった。
【0063】
(飼育結果)
この実施例では、約11ヶ月の期間でアワビ類の稚貝殻長3cmを最長8cmに成長させることができた。天然産アワビは、稚貝殻長3cmを最長8cmに成長させるまでに3年から4年程かかるので、大幅な短期生産が達成できた。
また、図4、図5の成分比較表に示すように、本実施例の方法で得たアワビは、自然海には生息しない特質を備えている。ここで比較に用いた「天然産のアワビ」の成分は「五訂日本食品標準分類表」に基づいている。また、本実施例のアワビの栄養分析は、日本食品分析センターによるものである。なお、これらは可食部100g当たりの数値(重量換算)である。
【0064】
この比較では、タンパク質・脂質・無機質・ビタミン等の栄養素に関して、本実施例のアワビは、天然産アワビよりも高い栄養素を含んでいることがわかる。特にマグネシウム、鉄、ビタミンB群については、その差が著しい。
最も注目すべきことは、自然のアワビよりも身が大きくて、全体として可食部が多く、さらには自然のものに比べて身が軟らかいことである。そして、このように成長したアワビを、従来の1/4程度の11ヶ月の期間で得ることができた。
【0065】
以上のように、本実施例の方法で生産されるアワビ類は、自然海に生息するアワビ類に比して成長が早くかつ栄養価も豊富であった。また、溶存酸素量を多くすることで養殖密度を高くすることが可能であり、上述した成長促進と相まって養殖の効率が格段に上昇する。
【0066】
なお、本発明は、アワビ類の稚貝の養殖に限定されるものではなく、暗闇で餌を食べる性質を有する夜行性の稚貝の養殖方法、装置及び生産方法も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態におけるアワビ類稚貝の養殖装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における防音手段の説明図である。
【図3】本発明の実施形態における防振手段の説明図である。
【図4】本発明に係る方法で養殖されたアワビ類と天然産のアワビ類との成分を比較する図である。
【図5】本発明に係る方法で養殖されたアワビ類と天然産のアワビ類との成分を比較する棒状グラフ図である。
【図6】本発明に係る養殖方法で飼育させたアワビを示す図である。
【図7】自然海水中の溶存酸素量を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 養殖装置
2 海水温制御手段
3 紫外線殺菌手段(紫外線殺菌装置)
4 酸素ガス吹込手段(酸素ガス発生装置)
5 貯蓄タンク(地下貯蓄タンク殺菌処理海水槽)
6 圧送手段(圧送ポンプ)
7 飼育水槽
7a 底中央部
7b 水槽周縁部
8 遮光手段
21 海洋深層水供給系
21d 制御弁
22 海洋表層水供給系
22d 制御弁
70 籠
71 第1排水配管
72 貯水排水槽
73 第2排水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育する養殖方法であって、
飼育中における前記飼育水槽の遮光率が100%になるように遮光し、
前記飼育用海水を稚貝の生育に適した温度とし、かつ、この飼育用海水中に酸素を供給して、餌の摂取量を自然に生息する稚貝よりも増大させることで成長を促進させることを特徴とする稚貝の養殖方法。
【請求項2】
飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育する養殖方法であって、
前記飼育水槽を遮光率が80%から100%の範囲になるように遮光し、
前記飼育用海水を稚貝の生育に適した温度とし、かつ、この飼育用海水中の溶存酸素量が9mg/lから15mg/lの範囲となるように調整し、
かつ、稚貝に餌を継続的に与えて、稚貝が常に餌を摂取可能な環境を作り出し、餌の摂取量を自然に生息する稚貝よりも増大させることで成長を促進させることを特徴とする稚貝の養殖方法。
【請求項3】
飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育する養殖方法であって、
前記飼育水槽を遮光率が80%から100%の範囲になるように遮光し、
前記飼育用海水を稚貝の生育に適した温度とし、かつ、この飼育用海水中の溶存酸素量が9mg/lから15mg/lの範囲となるように飼育水槽外で調整した後、飼育用海水が満たされた飼育水槽の水面下に供給する一方、飼育水槽から排水をして稚貝の養殖領域の静寂を保持し、
かつ、稚貝に餌を継続的に与えて、稚貝が常に餌を摂取可能な環境を作り出し、餌の摂取量を自然に生息する稚貝よりも増大させることで成長を促進させることを特徴とする稚貝の養殖方法。
【請求項4】
飼育水槽外の調整槽中において酸素ガスを海水中に吹き込むことを特徴とする請求項3に記載の稚貝の養殖方法。
【請求項5】
飼育用海水は、海洋表層水と、海洋表層水より低い温度の海洋深層水を混合したものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の稚貝の養殖方法。
【請求項6】
飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育する養殖装置であって、
遮光率が80%から100%の範囲になるように遮光され、前記飼育用海水の排出口を備えた飼育水槽と、
水面下に酸素ガスの吹出口を備え飼育用海水中の溶存酸素濃度を調整する調整槽と、
この調整槽から送られる飼育用海水を、飼育用海水が満たされた飼育水槽の水面下に設置した供給口から少しずつ送出する飼育用海水供給手段と、を含むことを特徴とする稚貝の養殖装置。
【請求項7】
前記調整槽は、海洋深層水の注入口と海洋表層水の注入口とを備えていることを特徴とする請求項6に記載の稚貝の養殖装置。
【請求項8】
前記飼育水槽は、この水槽内の海水を排水する第1排水配管と、排水した海水を満たした貯水排水槽と、この貯水排水槽内の海水を外部に排水する第2排水配管と、を備え、
前記第1排水配管の排水下流側は、前記貯水排水槽の海水内に配置され、
前記第2排水配管は、前記貯水排水槽の周縁部に設けたことを特徴とする請求項6または7に記載の稚貝の養殖装置。
【請求項9】
前記飼育水槽は、この水槽底部の中央部が水槽周縁部に比して浅く形成され、
前記飼育水槽の周縁部には、海水を排水する排水配管が設けたことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の稚貝の養殖装置。
【請求項10】
飼育用海水を満たした飼育水槽内で稚貝を生産する方法であって、
前記飼育水槽を遮光率が80%から100%の範囲になるように遮光し、
前記飼育用海水を稚貝の生育に適した温度とし、かつ、この飼育用海水中の溶存酸素量が9mg/lから15mg/lの範囲となるように調整し、
かつ、稚貝に餌を継続的に与えて、稚貝が常に餌を摂取可能な環境を積極的に作り出し、餌の摂取量を自然に生息する稚貝よりも増大させることで成長を促進させることを特徴とする稚貝の生産方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかに記載の稚貝の養殖方法によって飼育した母貝に産卵させることによる貝類の種苗生産方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−190014(P2007−190014A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341315(P2006−341315)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(504227291)
【出願人】(504227305)
【Fターム(参考)】