説明

稚魚生産水の温度制御方法及び温度制御装置

【課題】耳石温度標識の付与,成長抑制,成長促進のための稚魚生産水の温度制御において、健全な稚魚を生産することができ、装置の所要能力を低くしてエネルギー消費の少ない制御を行うことができる。
【解決手段】原水の供給される供給流路10を2つに分岐し、その一つの供給流路10Aをヒートポンプ20の蒸発器21側に連通する共に、他の供給流路10Bをヒートポンプ20の凝縮器22側に連通し、ヒートポンプ20の熱交換作用によって、蒸発器21側を通過した調温水を原水の温度より設定温度差Δt1だけ冷却し、凝縮器22側を通過した調温水を原水の温度より設定温度差Δt2だけ加熱し、設定温度差Δt1とΔt2の絶対値の和によって耳石温度標識に必要な温度差を得て、蒸発器21側を通過した調温水と凝縮器22側を通過した調温水とを設定時間隔毎に切り替えて出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さけ・ます等の放流魚の稚魚を生産する稚魚生産水の温度制御方法及び温度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
稚魚生産水の温度制御に関しては、本出願人は下記特許文献1に示す技術を提案している。この提案は、河川や海などの給水源から採取した原水を魚類のふ化飼養池へ供給するに際して、この原水をふ化飼養池へ供給する前に水温調整手段で冷却又は加熱して、原水の温度変化に対して一定の温度差が生じるように温度変化する温調水を作成し、これら原水と温調水を、予め設定された水温変化パターンで一定時間毎に交互に魚類の孵化飼養池へ供給して、魚類の耳石にバーコード状模様の標識を形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3542337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耳石温度標識の付与には、4℃程度の温度差が必要であるとされており、この温度差で生産水を周期的に温度変化させることで、耳石にバーコード状模様の標識を形成することが可能になる。この耳石温度標識は、放流箇所にどの程度回帰するかを示す回帰率の調査等に活用されている。
【0005】
そして、従来技術では、成長抑制を行う場合には、原水の水温からマイナス側に4℃の温度変化を生じさせ、成長促進を行う場合は、原水の水温からプラス側に4℃の温度変化を生じさせていた。これによると原水からの温度変化が大きくならざるを得ないので、成長抑制又は成長促進の効果は高いが、温度変化が大きいことによって各種の弊害が生じる懸念があった。
【0006】
例えば、成長抑制を行う場合には、受精後の卵を一気に低温水帯に入れる為、成長曲線にゆがみが発生し、稚魚が健全に成長しないという懸念があり、成長促進を行う場合には、卵期を過ぎて、養魚期に入った時に、一気に高温帯に入れる為、急速に成長が進み、さいのう(栄養の素)の吸収が早まり、それぞれの内臓器官の成長バランスが悪くなることの懸念があった。
【0007】
また、装置本体としては、原水を4℃程度上下変動させるので、その温度の上げ下げに大きな電力が必要になる。例えば、毎分50リットルの原水を4℃下げるためには、60分間で12000カロリーが必要になり、ヒートポンプの駆動源には約4Kwの能力が必要になる。稚魚生産時には大量の生産水が必要になるので、省エネルギーの観点からも改善の必要性があった。
【0008】
更に、原水に対して、+4℃又は−4℃の温度差を付けていたので、温度制御装置が何らかのトラブルで停止した場合には、制御時の温度から制御前の温度に戻ると+4℃又は−4℃の温度差が稚魚に与えられることになる。このようなトラブルが生じると稚魚は急激な温度ショックを受けることになり、稚魚の健康が損なわれる問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、耳石温度標識を付与するための稚魚生産水の温度制御において、健全な稚魚を生産することができ、装置の所要能力を低くしてエネルギー消費の少ない制御を行うことができること、温度制御装置にトラブルが生じた場合にも稚魚に急激な温度ショックを与えないようにすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、一つには、稚魚を生産する生産水の温度を制御する方法であって、原水の供給される供給流路を2つに分岐して、その一つの供給流路を流れる原水を原水の温度より設定温度差Δt1だけ冷却し、他の供給流路を流れる原水を原水の温度より設定温度差Δt2だけ加熱し、前記設定温度Δt1だけ冷却された調温水と前記設定温度Δt2だけ加熱された調温水を出力することにより、前記設定温度差Δt1と前記設定温度差Δt2の絶対値の和によって所要温度差を得ることを特徴とする。ここでのΔt1,Δt2は任意の温度差であり、Δt1=Δt2であっても、Δt1≠Δt2であってもよい。
【0011】
より具体的には、稚魚を生産する生産水の温度を制御する方法であって、原水の供給される供給流路を2つに分岐し、その一つの供給流路をヒートポンプの蒸発器側に連通する共に、他の供給流路を前記ヒートポンプの凝縮器側に連通し、前記ヒートポンプの熱交換作用によって、前記蒸発器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt1だけ冷却し、前記凝縮器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt2だけ加熱し、前記設定温度差Δt1と前記設定温度差Δt2の絶対値の和によって耳石温度標識に必要な温度差を得て、前記蒸発器側を通過した調温水と前記凝縮器側を通過した調温水とを設定時間毎に切り替えて出力することを特徴とする。
【0012】
また一つには、稚魚を生産する生産水の温度を制御する装置であって、供給された原水を2つの流路に分岐する供給流路と、分岐された1つの流路を流れる原水を冷却する冷却手段と、分岐された他の流路を流れる原水を加熱する加熱手段と、前記冷却手段によって冷却された調温水と前記加熱手段によって加熱された調温水を出力する出力流路とを備えることを特徴とする。
【0013】
より具体的には、稚魚を生産する生産水の温度を制御する装置であって、原水が供給される供給流路と、供給された原水に温度変化を付与するヒートポンプと、該ヒートポンプからの調温水を出力する出力流路を備え、前記供給流路を2つに分岐し、その一つの供給流路を前記ヒートポンプの蒸発器側に連通する共に、他の供給流路を前記ヒートポンプの凝縮器側に連通し、前記ヒートポンプの熱交換作用によって、前記蒸発器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt1だけ冷却し、前記凝縮器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt2だけ加熱し、前記設定温度差Δt1と前記設定温度差Δt2の絶対値の和によって耳石温度標識に必要な温度差を得て、前記出力流路は、前記蒸発器側を通過した調温水と前記凝縮器側を通過した調温水とを設定時間毎に切り替えて出力する流路切り替え手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような特徴によると、耳石温度標識を付与する際に、作業の始まりと終わりの段階で原水との温度差を小さくすることができる。これによって、魚が受ける温度差のショックを抑えることができ、健全な稚魚生産を行いながら耳石温度標識の付与を行うことができる。
【0015】
また、耳石温度標識付与を行っている段階の平均温度を原水の温度に近づけることができるので、自然環境に沿った飼育環境下で耳石温度標識の付与を行うことができ、稚魚生産をより天然の生育に近づけることができる。
【0016】
温度制御装置に何らかのトラブルが生じて制御が停止した場合にも、実際に原水に加えている温度差は所要温度差の半分程度であるから、このようなトラブル時にも稚魚に急激な温度ショックを与えなくて済む利点が得られる。
【0017】
稚魚の成長状態の確認を行う際に、温度積算方式を採用することができるが、温度変化を付けても積算温度は原水温度の積算と変わりがないので、温度制御を考慮すること無く温度積算を行うことができる。
【0018】
1台のヒートポンプで、原水から2種類の調温水を生成し、必要な温度幅を有する調温水を同時に生成することができる。これによって、原水からの温度変化は、原水からプラス側又はマイナス側の片側に所望の温度差を付ける場合と比較して低く抑えることができ、所要電量を低減すると共に、能力の低いヒートポンプで対応することが可能になる。これによると消費電力を大幅に削減することができると共に、管理レベルの低い低能力のヒートポンプにより手軽に調整管理することができる。
【0019】
また、原水を冷却した調温水と加熱した調温水を同時に生成できるので、これらの調温水を別に使うか切り替えて使うかによって、少ない電力で、成長促進,成長抑制,耳石温度標識付与の作業を同時に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る稚魚生産水の温度制御装置及び温度制御方法を説明する説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る稚魚生産水の温度制御装置及び温度制御方法による稚魚生産水の制御例を示した説明図である。
【図3】本発明に係る稚魚生産水の温度制御装置及び温度制御方法の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る稚魚生産水の温度制御装置及び温度制御方法を説明する説明図である。ここで言う原水とは、自然環境下にある河川や海又は井戸等の給水源から採取されるものである。したがって、原水は一定の温度ではなく、気温や日中の時間、或いは季節によって随時温度が変化するものである。本発明の実施形態に係る稚魚生産水の温度制御装置は、供給された原水を2つの流路に分岐する供給流路10と、分岐された1つの流路を流れる原水を冷却する冷却手段21と、分岐された他の流路を流れる原水を加熱する加熱手段22と、冷却手段21によって冷却された調温水と加熱手段22によって加熱された調温水とを出力する出力流路30とを備えている。
【0022】
より具体的には、原水が供給される供給流路10と、前述した冷却手段21と加熱手段とを備え、供給された原水に温度変化を付与するヒートポンプ20と、ヒートポンプ20からの調温水を出力する出力流路30とを備えている。
【0023】
供給流路10は、2つの供給流路10A,10Bに分岐している。そしてその各供給流路10A,10Bにそれぞれ原水供給用のポンプ11,12が設けられている。供給流路10に流入した原水は、2つの供給流路10A,10Bに分流して、一方が冷却手段21に、他方が加熱手段22に供給される。
【0024】
ヒートポンプ20は、冷却手段(蒸発器)21,加熱手段(凝縮器)22,圧縮・膨張手段23を備えており、その熱交換作用によって、冷却手段(蒸発器)21側に供給される原水から熱を奪って加熱手段(凝縮器)22側に供給される原水を加熱するものである。このヒートポンプ20は、冷却手段(蒸発器)21側を通過して冷却される調温水を原水の温度t0より設定温度差Δt1だけ冷却し、加熱手段(凝縮器)22側を通過した調温水を原水の温度t0より設定温度差Δt2だけ加熱し、設定温度差Δt1と設定温度差Δt2の絶対値の和によって例えば耳石温度標識に必要な温度差(所要温度差)を得るように制御が行われる。より具体的には、Δt1=Δt2=2℃に設定し、Δt1+Δt2=4℃によるようにして、耳石温度標識の付与に必要となる温度差を得るようにしている。
【0025】
ヒートポンプ20によって温度変化が付加された調温水は、出力流路30を通って稚魚生産槽40に送水される。出力流路30は、冷却手段(蒸発器)21側を通過して冷却された調温水を出力する出力流路30Aと加熱手段(凝縮器)22側を通過して加熱された調温水を出力する出力流路30Bを備えており、この出力流路30A,30Bが切り替えバルブ(流路切り替え手段)31を介して一つの出力流路30Cに接続されている。切り替えバルブ31は出力流路30Aのみを出力流路30Cに接続する状態と出力流路30Bのみを出力流路30Cに接続する状態とを選択的に切り替えることができるものである。
【0026】
これによると、図2に示すような稚魚生産水の制御を行うことができる。図2(a)に示した例は、原水に耳石温度標識付与のために必要な温度変化を加える制御を行っている。この場合には、流路切り替え手段である切り替えバルブ31を設定された時間毎に切り替えることで、出力流路30Aが選択された場合には温度t0−Δt1の生産水となり、出力流路30Bが選択された場合には温度t0+Δt2の生産水となる。両者の温度差Δt1+Δt2が耳石温度標識の付与に必要となる温度差に設定されているので、この切り替え動作を付与標識の情報に応じて制御することで、必要な情報(標識)を耳石に付与することが可能になる。
【0027】
この際、原水の温度t0に付与される温度差は+Δt1(例えば+2℃)又は−Δt2(−2℃)であって、耳石温度標識付与に本来必要な温度差(例えば4℃)より小さくすることができるので、原水の温度状態から最初の温度変化で魚に与える温度差を小さくすることができ、温度差によるショックを和らげることができる。これによって、健全な生育状態を保ちながら耳石温度標識の付与を行うことができる。
【0028】
そして、このような温度変化を原水に付加したとしても、積算温度は原水の積算温度と変わらないので、稚魚の成長状態を確認するために積算方式を採用する場合にも、生産水の温度変化を考慮することなく原水温度の積算によって成長状態を把握することが可能にある。
【0029】
更に、原水に付与する温度変化は、Δt1であるから、従来技術のように原水の温度t0に対してプラス側又はマイナス側の一方に耳石温度標識付与に必要な温度差を付与する場合と比較して、消費電力を大幅に削減することができる。また、使用するヒートポンプ20の能力も大出力のものを用いる必要がないので、特に専門的な管理能力を有する管理者に頼ることなく手軽に管理することが可能になる。
【0030】
図2(b)は、成長促進を行うための稚魚生産水の温度制御を示した説明図である。これによると、温度変化は原水の温度t0に対してΔt1だけしか生産水を加温することができないので、急激な促進効果を得ることはできないが、その分促進期間を長くすることで対応すればよい。この場合には、温度変化のショックが無い成長促進を行うことができるので、穏やかな成長で、且つ内臓器官等の成長バランスがよくなる。
【0031】
図2(c)は、成長抑制を行うための稚魚生産水の温度制御を示した説明図である。これによると、温度変化は原水の温度t0に対してΔt2だけしか生産水を冷却することができないので、急激な抑制効果を得ることはできないが、その分促進期間を長くすることで対応すればよい。この場合には、温度変化のショックが無い成長抑制を行うことができるので、成長曲線にゆがみが生じるような不具合が生じない。
【0032】
図2(d)は、原水温度変化に対する生産水の温度変化を時間経過に沿って示した説明図である。図示から明らかなように、前述のように制御される生産水は、原水の温度変化に追従するように時間経過に応じて変化することになる。これによって、生産水にも自然環境が本来持っている時系列的な温度変化が付与されることになり、天然の稚魚の生育と同等の自然な生育環境を与えることができる。
【0033】
図3は、本発明に係る稚魚生産水の温度制御装置及び温度制御方法の他の実施形態を示している。本発明の実施形態によると、原水の供給される供給流路10を2つに分岐して、その一つの供給流路10Aを流れる原水を原水の温度t0より設定温度差Δt1だけ冷却し、他の供給流路10Bを流れる原水を原水の温度t0より設定温度差Δt2だけ加熱し、設定温度Δt1だけ冷却された調温水(温度:t0−Δt1)と設定温度Δt2だけ加熱された調温水(温度:t0+Δt2)を出力することにより、設定温度差Δt1と設定温度差Δt2の絶対値の和によって所要温度差を得ている。
【0034】
そこで、この所要温度差のある調温水を利用して、前述した実施形態と同様に、切り替えバルブ(流路切り替え手段)31を介して出力流路30A,30Bを一つの出力流路30Cに接続し、この出力流路30Cから出力される生産水を稚魚生産槽40Aに溜めることで、ここではt0+Δt2からt0−Δt1に至る温度差を周期的に与える耳石温度標識付与作業を行うことができる。また同時に、原水をΔt1だけ冷却した調温水を出力流路30Aから別の稚魚生産槽40Bに出力することで、ここでは、t0−Δt1の冷却された調温水によって成長抑制作業を行うことができる。さらに同時に、原水をΔt2だけ加熱した調温水を出力流路30Bから別の稚魚生産槽40Cに出力することで、ここでは、t0+Δt2の加熱された調温水によって成長促進作業を行うことができる。
【0035】
つまり、本発明の実施形態によると、一つの温度制御装置(ヒートポンプ20)を活用することで、成長抑制,成長促進,耳石温度標識付与の異なる作業を同時に行うことができる。しかも、この際の温度制御をヒートポンプ20の熱交換作用によって行うことで、3種類の作業に必要な異なる温度制御を極めて少ない消費電力で行うことが可能になる。また、この場合に、何らかのトラブルで温度制御装置が停止してしまった場合を考えると、各槽内の温度は制御前の原水温度t0に戻ることになるが、その際の温度差はそれぞれΔt1又はΔt2でしかないので、稚魚に大きな温度差ショックを与えることがない。
【0036】
更に、出力流路30A,30Bから出力される温度差Δt1+Δt2の調温水は、これを適宜調合することで、その温度範囲内で任意の温度の生産水を得ることができる。これを活用することで、温度変化を時間経過に沿って徐々に変化させる曲線温度生産方式(図2(d)参照)や時間経過に沿って一定温度にする一定温度生産方式を共に行うことが可能になる。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る稚魚生産水の温度制御方法及び温度制御装置によると、耳石温度標識を付与するための稚魚生産水の温度制御等において、健全な稚魚を生産することができ、装置の所要能力を低くしてエネルギー消費の少ない制御を行うことが可能になる。また、この耳石温度標識付与だけでなく、成長抑制や成長促進を含めた各種の温度制御を少ない消費エネルギーで行うことができる。更に、温度変化を付与した調温水を無駄なく稚魚生産に活用できるので、エネルギー利用効率の高い稚魚生産を行うことができる。
【0038】
更には、原水からの温度変化を必要最小限に抑えているので、天然の稚魚成長に近い自然な生産が可能になり、稚魚の健全性を確保し、回帰率の向上が見込める稚魚生産を行うことができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の稚魚生産水の温度制御方法又は温度制御装置によって成長抑制(生産水加熱)又は成長促進(生産水冷却)を行う場合の実施例を示す。生産水放出口1カランは、1つの稚魚生産槽で1卵期に約30〜45日間使用するため、放流時期の期間が制限されることを考えると、1カランを2回使用することはできない。
【0040】
<実施条件>
生産水放出流量:50リットル/分(=1カラン)
処理卵数:約200万粒/1カラン
使用温度:比較例 原水+4℃(成長促進時)
原水−4℃(成長抑制時)
実施例 原水+2℃(成長促進時)
原水−2℃(成長抑制時)
使用期間:比較例 1ヶ月(孵化期のみ)
実施例 2ヶ月(孵化期+養魚期)
<消費熱量/所要電力>
比較例
消費熱量:50リットル×4℃×60分=12,000カロリー/時間
所要電力:4KW
実施例
消費熱量:50リットル×2℃×60分=6,000カロリー/時間
所要電力:2KW
【0041】
上記の比較から明らかなように、比較例のように原水から4℃の温度差で成長抑制又は成長促進を行う場合と、実施例のように原水から2℃の温度差で成長抑制又は成長促進を行う場合を比較すると、実施例は使用期間が比較例の2倍になるので両者は使用期間での消費熱量に違いはないが、実施例は比較例と比べて所要電力を低く抑えることができる。これによって、装置の小型化,低価格化が可能になると共に、契約電力(ワット数)を低く抑えることができるので、初期投資及びランニングコストを共に低減することができる。
【符号の説明】
【0042】
10,10A,10B:供給流路,
11,12:ポンプ,
20:ヒートポンプ,21:蒸発器,22:凝縮器,23:圧縮・膨張手段,
30,30A,30B,30C:出力流路,
31:切り替えバルブ(切り替え手段),
40,40A,40B,40C:稚魚生産槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稚魚を生産する生産水の温度を制御する方法であって、
原水の供給される供給流路を2つに分岐して、その一つの供給流路を流れる原水を原水の温度より設定温度差Δt1だけ冷却し、他の供給流路を流れる原水を原水の温度より設定温度差Δt2だけ加熱し、
前記設定温度Δt1だけ冷却された調温水と前記設定温度Δt2だけ加熱された調温水を出力することにより、前記設定温度差Δt1と前記設定温度差Δt2の絶対値の和によって所要温度差を得ることを特徴とする稚魚生産水の温度制御方法。
【請求項2】
稚魚を生産する生産水の温度を制御する方法であって、
原水の供給される供給流路を2つに分岐し、その一つの供給流路をヒートポンプの蒸発器側に連通する共に、他の供給流路を前記ヒートポンプの凝縮器側に連通し、
前記ヒートポンプの熱交換作用によって、前記蒸発器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt1だけ冷却し、前記凝縮器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt2だけ加熱し、前記設定温度差Δt1と前記設定温度差Δt2の絶対値の和によって耳石温度標識に必要な温度差を得て、前記蒸発器側を通過した調温水と前記凝縮器側を通過した調温水とを設定時間毎に切り替えて出力することを特徴とする稚魚生産水の温度制御方法。
【請求項3】
前記設定温度差Δt1と前記設定温度差Δt2を共に2℃として、前記耳石温度標識に必要な温度差4℃を得ること特徴とする請求項2記載の稚魚生産水の温度制御方法。
【請求項4】
稚魚を生産する生産水の温度を制御する装置であって、
供給された原水を2つの流路に分岐する供給流路と、
分岐された1つの流路を流れる原水を冷却する冷却手段と、
分岐された他の流路を流れる原水を加熱する加熱手段と、
前記冷却手段によって冷却された調温水と前記加熱手段によって加熱された調温水を出力する出力流路とを備えることを特徴とする稚魚生産水の温度制御装置。
【請求項5】
前記出力流路は、前記冷却手段によって冷却された調温水と前記加熱手段によって加熱された調温水を切り替えて出力する切り替え手段を備えることを特徴とする請求項4に記載された稚魚生産水の温度制御装置。
【請求項6】
前記出力流路は、前記冷却手段によって冷却された調温水と前記加熱手段によって加熱された調温水を別の槽に出力することを特徴とする請求項4に記載された稚魚生産水の温度制御装置。
【請求項7】
稚魚を生産する生産水の温度を制御する装置であって、
原水が供給される供給流路と、
供給された原水に温度変化を付与するヒートポンプと、
該ヒートポンプからの調温水を出力する出力流路を備え、
前記供給流路を2つに分岐し、その一つの供給流路を前記ヒートポンプの蒸発器側に連通する共に、他の供給流路を前記ヒートポンプの凝縮器側に連通し、
前記ヒートポンプの熱交換作用によって、前記蒸発器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt1だけ冷却し、前記凝縮器側を通過した調温水を前記原水の温度より設定温度差Δt2だけ加熱し、前記設定温度差Δt1と前記設定温度差Δt2の絶対値の和によって耳石温度標識に必要な温度差を得て、
前記出力流路は、前記蒸発器側を通過した調温水と前記凝縮器側を通過した調温水とを設定時間毎に切り替えて出力する切り替え手段を備えることを特徴とする稚魚生産水の温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207121(P2010−207121A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55076(P2009−55076)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(594095246)
【Fターム(参考)】