説明

種なし3倍体ナス

本発明は、第一の4倍体ナス親植物を提供する工程; 2倍体である第二のナス親植物を提供する工程; 第一および第二の親植物を交配して子孫植物の集団を得る工程;および、子孫植物の集団から3倍体植物を種なしナスとして選択する工程を含む、種なしナスを生産する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種なしナスおよびかかる植物を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナスまたはナスビ(Solanum melongena)は、料理において野菜として一般に用いられる同じ名称の果実を有するナス科植物である。それはトマトおよびジャガイモと密接に関係している。その大きな、ぶら下がった、紫または白の果実のために、ナスは重要な食用作物である。それは先史時代から南および東アジア諸国において栽培されてきたが、現在では西欧諸国においても生育されている。果実は非常に多くの小さく軟らかい種子を含んでいる。すぐに収穫できる(ready-to-harvest)果実における種子の存在は負の品質であるとみなされる。これはとりわけ種子は果肉の望ましくない褐色化を導きうるからである。
【0003】
商業的観点からは種なしであること(seedlessness)はナスなどの食用果実および野菜において非常に望ましい形質である。いつくかの種においては、種なし(seedlessness)は単為結実の結果であり、この場合、果実は受精なしにできる。特定の種においては、単為結実の(parthenocarpic)果実ができるためには授粉またはその他の刺激が必要であり、特に、植物成長調節因子、例えば、ジベレリン、オーキシンおよびサイトカイニンの花への噴霧が必要である。これは人工単為結実と称される。
【0004】
単為結実のナス品種は知られている(例えば、タリナ(Talina)、ガリネ(Galine))。しかし、かかるナス品種の冬期栽培の間は、果実生産は最適ではない環境条件によって妨げられ得る。それらの影響は通常、花芽の植物成長調節因子による処理によって弱められる。しかし、植物ホルモン(phytohormonal)処理は化学物質および労働の両方の費用により生産プロセスをより高価にする。さらに、ホルモンの使用は国によっては議論中であるかまたは禁止されている。
【0005】
単為結実は、DefH9-iaaM 遺伝子を用いることによってナスにおいても遺伝子操作されている。iaaM 遺伝子はトリプトファンモノオキシゲナーゼ(monoxygenase)をコードし、オーキシン合成をもたらす一方、DefH9 制御領域が胚珠および胎座において特異的に遺伝子の発現を駆動する。これが果実生産における顕著な上昇をもたらすと同時に栽培経費の削減をもたらした。しかし、多くの国においては遺伝子組換え作物は良好には受け入れられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ本発明の目的は上記の欠点を有さない種なしナスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは以下の工程を含む種なしナスを生産する方法によって、本発明によって達成される:
a)第一の4倍体ナス親植物を提供する工程;
b)2倍体である第二のナス親植物を提供する工程;
c)第一および第二の親植物を交配して子孫植物の集団を得る工程;および、
d)子孫植物の集団から3倍体植物を種なしナスとして選択する工程。
【0008】
4倍体親植物は好適には2倍体実生(seedling)または外植片の染色体の倍加(doubling)によって生産される。
【0009】
好ましい態様において、染色体はコルヒチンによる処理によって倍加される。
【0010】
コルヒチン倍加の好適な方法は、ナス種子からの実生を生育させることおよびそれから2倍体切断片(cutting)を調製することからなる。切断片を次いで、好ましくは人工培地上で発根させる。根が発達した後、頂部およびほとんど、好ましくは1つを残してすべての葉を切断片から除去する。外植片の残っている葉をコルヒチン溶液と一定の時間接触させて染色体を倍加させる。処理の後、切断片を芽(shoot)が発達するまで生育させる。これらの芽を4倍体であるかについて試験する。2倍体の芽を除去する。
【0011】
このようにして生産された4倍体植物は3倍体ナスの生産における親植物として用いることができる。好ましくは、4倍体親が母植物(mother plant)であり、2倍体親が父植物(father plant)である。
【0012】
本発明の好ましい態様において、4倍体親植物は受託番号 NCIMB 41516としてAberdeenのNCIMBに2007年11月13日に寄託されたAB5123-テトラシーズ(tetra seeds)から生育した植物である。
【0013】
本発明はさらに、上記方法を実施することによって得られ得る3倍体種なしナスに関する。好ましい態様において、かかる種なしナスは以下の工程によって得られ得る:
a)AB5123-テトラシーズから第一の親植物を生育させる工程;
b)第一の親植物と第二の2倍体ナス親植物とを交配して子孫植物の集団を得る工程;
c)子孫植物の集団から3倍体植物を種なしナスとして選択する工程。
【0014】
本発明のナスは、授粉または植物成長調節因子による処理無しで果実を生産する。
【0015】
本願において用いられる「種なし」とは、生存能力のある種子が完全にまたはほぼ完全に存在しないことを意味する。果実は依然として種子の名残り、例えば、外皮または皮を含みうる。
【0016】
本発明をさらに以下の実施例において説明するがいかなる意味においても本発明を限定する意図のものではない。実施例において染色体倍加のための外植片の調製を示す図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】染色体倍加のための外植片の調製を示す図である。
【実施例】
【0018】
実施例 1
4倍体親ナスの生産
1.コルヒチンによる染色体倍加
2倍体ナスの種子を0.5% 塩素中で30分間滅菌し、次いで泡がすべて消えるまで脱塩水ですすいだ。種子 (各プレート上に10個の種子)を1/2MS10 培地上に播いた。種子を25℃で16時間の明条件下で発芽させた。2週間後、切断片を胚軸を実生からとることにより調製した。これらをMS20 培地に植えた。
【0019】
3週間後、切断片をコルヒチンにより処理した。切断片の頂部および1枚をのぞくすべての葉を図に示すようにして除き外植片を得た。コルヒチン溶液を5 gのコルヒチン (Sigma C-9754)を 1000 mlの水に溶解し、フィルター滅菌することにより調製した。外植片を溶液中に逆さまにして2時間入れた。根はコルヒチン溶液に触れなかった。
【0020】
2時間後、外植片を滅菌脱塩水ですすぎ、MS20 培地上に置いた。成長しはじめた後、植物を土壌中にポットに植えた。芽をそれらの倍数性についてDe Laat et al.、Plant Breeding 99(4)、303-307 (1987)に記載の方法によって試験した。
【0021】
2倍体芽を除いた。
【0022】
結果
異なる親植物を用いた様々な実験の結果を表1に示す。
【0023】
表 1
【表1】

【0024】
実施例 2
3倍体ナス種子の生産
実施例 1から得た種子を商業的植物栽培者によって用いられている条件下で播いた。得られた植物の倍数性レベルをDNA 分析により確認した。
【0025】
このようにして得た4倍体植物を種子生産のための母系統として用い、元の2倍体雑種(hybrid)を3倍体として再構成するために2倍体父系統と交配した。この交配から得られた種子を回収し、得られた植物をフローサイトメトリーによって倍数性レベルについて確認した。結果を表 2に示す。すべての種子が3倍体であることが判明した。
【0026】
表 2
【表2−1】

【表2−2】

【0027】
実施例 3
3倍体ナス雑種およびその親の分析
実施例 2から得た3倍体雑種種子を、商業的植物栽培者により用いられている条件下で播き、秋にスペイン、アルメリアにおける雑種試験圃場に植えた。得られた雑種植物の倍数性レベルをDNA 分析により確認した。すべての雑種植物が3倍体であることが判明した。果実が実り、3倍体雑種植物である Fantastic3nおよびMonarca3nの果実の品質を分析し、元の2倍体雑種植物であるFantasticおよびMonarcaと比較した(表2)。結果を表3に示す。表4は、2倍体親である 401および403ならびにそれらに由来する4倍体親である402および404の間の同じ比較を示す。
【0028】
表から、3倍体雑種の果実は元の2倍体母の果実に匹敵することが判明する。同じことが4倍体母植物についてもいえる。
【0029】
表3
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【0030】
表 4
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【表4−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む種なしナスの生産方法:
a)第一の4倍体ナス親植物を提供する工程;
b)2倍体である第二のナス親植物を提供する工程;
c)第一および第二の親植物を交配して子孫植物の集団を得る工程;および、
d)子孫植物の集団から3倍体植物を種なしナスとして選択する工程。
【請求項2】
4倍体ナス親植物が2倍体実生または外植片の染色体の倍加によって生産される請求項 1の方法。
【請求項3】
コルヒチンによる処理によって染色体が倍加される請求項 2の方法。
【請求項4】
4倍体親が母植物であり、2倍体親が父植物である請求項1-3のいずれかの方法。
【請求項5】
4倍体親植物がAB5123-テトラシーズ (NCIMB41516)から生育した植物である請求項 1の方法。
【請求項6】
請求項1-5のいずれかの方法の実施により得られ得る種なしナス。
【請求項7】
以下の工程:
a)第一の親植物をAB5123-テトラシーズから生育させる工程;
b)第一の親植物と第二の2倍体ナス親植物とを交配して子孫植物の集団を得る工程;
c)子孫植物の集団から3倍体植物を種なしナスとして選択する工程;
によって得られ得る種なしナス。
【請求項8】
ナスが雑種である請求項 6または7の種なしナス。

【図1】
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【公表番号】特表2011−511629(P2011−511629A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544643(P2010−544643)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000636
【国際公開番号】WO2009/095266
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(500502222)ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップ (19)
【Fターム(参考)】