説明

穀物および果実油

本発明は、穀物油および果実油の混合物を含む植物油に関する。これらは以下から選択される:トウモロコシ油、こめ油、小麦胚芽油、大麦油、カラスムギ油、ライ麦油、モロコシ油および雑穀油、ならびにクルミ油、クロフサスグリ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、杏子油、桃油、アボガド油、サクランボ油、スイカ油、メロン油、ブルーベリー油およびオレンジ油。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食餌用途の油に関する。
【背景技術】
【0002】
多価不飽和脂肪酸(ビタミンF)、特に必須脂肪酸、いわゆるオメガ3(例えばリノレン酸)およびオメガ6(例えばリノール酸)脂肪酸は、人体では合成されないので、食餌により摂取しなければならない。特に、リノレン酸およびリノール酸は、人体において以下のような重要な役割を有するエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸などの必須多価不飽和脂肪酸の前駆体である:例えば、血漿中脂質濃度を調節し、細胞膜の流動性を維持して動脈壁に弾力を与えることにより、動脈圧を調節し、心臓血管系を保護する役割、中枢神経系の細胞の活性を促進するとともに抗うつ的に作用する役割、免疫性防御を促進し、炎症反応を減弱する役割。
【0003】
身体の健康のために非常に重要な別の物質にはビタミンEがあり、ビタミンEは抗酸化活性を有することから、細胞膜の脂質層を損傷する可能性がある脂質過酸化物の形成から細胞膜を保護することが示唆される。ビタミンEはまた、ミトコンドリアレベルで細胞呼吸に関与しているので、細胞のタンパク質合成のためのエネルギー生成に不可欠である。従って、できる限り自然な方法で得ることが出来るにもかかわらず、そのような有益な物質に富み、栄養上有効な油として提供可能な油を供給する必要がある。
【0004】
さらに、そのような油は、前記の有益な物質が分解され結果としてその特性が部分的または全体的に失われることがないように、とりわけ生のドレッシングとしても使用可能であるべきである。この理由から、そのような油は、とりわけオリーブオイルを用いる伝統のない地中海地域以外の国において、喜んで受け入れられる味である必要がある。
【発明の開示】
【0005】
そこで、本発明の目的は添付の特許請求の範囲に定義する油である。
【0006】
本発明の油は、上記物質が天然に豊富な油の混合により得られる、穀物および果実油である。
【0007】
人体の健康に非常に重要なさらなる物質に、ガンマオリザノールがあることが認められている。ガンマオリザノールはステロール、フェルラ酸およびテルペンアルコールなどの物質の混合物である。こめ油に非常に多く見られるガンマオリザノールは、血中トリグリセリド濃度の低下を助け、ホルモンLHと相互作用することにより閉経の影響の調節を助け、エンドルフィン、テストステロンおよび成長ホルモンの濃度を上昇させる。従って、下記に詳細に示すように、栄養上有効な油は、一定量のこめ油を用いて得られることが認められている。
【0008】
穀物および果実油は、多価不飽和脂肪酸、ガンマオリザノールおよびビタミンEの優良な供給源である。特に、果実油の多価不飽和脂肪酸含量は80%を超えることがあり、また穀物の胚芽油におけるビタミンE量は0.2%を超えることがある。栄養上の観点でより豊かな製品を得るために、上記の必須物質を添加した栄養補助食品または固体および液体の食品が、市場には数多くある。しかしそのような油には、植物油のみが持ち得る栄養的に重要な物質の「芳香」が含まれない。
【0009】
穀物および果実油は、穀物および果実から直接得られ、さらなる活性物質(例えば、ビタミン類、オメガ3、オメガ6、ガンマオリザノールなど)を何ら加えずとも、それら活性成分が初期生成物自体に適量存在していることから、天然の栄養食材である。そのような穀物および果実油を混合することにより、栄養上優良な特性を有し、さらに、主に果実油から、および添加した天然香味料(flavouring)から得られる驚くほど好ましい特別な香味に恵まれた天然の生成物を得ることが可能である。
【0010】
本発明は、1以上の穀物油および1以上の果実油であることを特徴とする植物油の混合により得られる油に関する。好ましくは、該油は、数種の穀物油の混合物および数種の果実油の混合物を含む。
【0011】
該穀物油は以下から選択される:トウモロコシ(corn)油、こめ油、小麦胚芽油、大麦油、カラスムギ油、ライ麦油、モロコシ(sorgum)油および雑穀(millet)油。
【0012】
好ましくは、該油はトウモロコシ油、こめ油および小麦胚芽油である。
【0013】
該果実油は以下から選択される:クルミ油、クロフサスグリ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、杏子油、桃油、アボガド油、サクランボ油、スイカ油、メロン油、ブルーベリー油およびオレンジ油。好ましくは、ヘーゼルナッツ油、クロフサスグリ油、杏子油、サクランボ油およびオレンジ油である。さらに好ましくは、ヘーゼルナッツ油およびクロフサスグリ油である。
【0014】
該油は、穀物油および果実油に加えて、任意に1以上の香味料を含んでもよい。
【0015】
該香味料は以下である:天然香味料、天然物と同一の香味料、穀物精油および果実精油ならびにそれらの混合物。
【0016】
好ましくは、該穀物および果実香味料は以下である:大麦、カラスムギ、トウモロコシ、米、ライ麦、モロコシ、小麦、雑穀、クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クロフサスグリ、杏子、桃、アボガド、サクランボ、スイカ、メロン、ブルーベリー、オレンジおよびバニラの香味料。
【0017】
さらに好ましくは、該穀物及び果実香味料は以下である:トウモロコシ、米、小麦、クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クロフサスグリ、杏子および桃の香味料。より好ましくは、天然の穀物の香味料である。
【0018】
該穀物および果実油は、当分野に既知の技術、最も一般的には、天然の生の材料すなわち穀物および果実の種または胚芽の、抽出または圧搾により得られる。これら全ての油は、好ましくは、酸性度および過酸化物濃度を適切にしてあらゆる望ましくない匂いや香味を除くために、市場に出す前に精製する。生成過程において、それぞれの油に特徴的な香味を与える天然物質が部分的に除かれる可能性がある。天然香味料を加えることにより、残った天然の香味を増大させ、望ましい香味を有する最終生成物を得ることができる。
【0019】
本発明の対象を形成する油は、望ましい香味、色、粘度(consistency)、濃度および栄養価を得るために、1以上の穀物油および1以上の果実油の適切な量を混合することにより得られる。穀物油は70〜98重量%、好ましくは82〜97.5重量%、より好ましくは92〜97重量%の量を混合する。果実油は2〜30重量%、好ましくは2.5〜18重量%、より好ましくは3〜8重量%の量を混合する。
【0020】
本発明の生成物が上記から選択される単一の香味料を含む場合は、用いる量は、他の成分の重量に対して0.02〜0.1重量%、好ましくは0.03〜0.07重量%である。いくつかの香味料を含める場合は、加える量は、他の成分の重量に対して0.03〜0.2重量%、好ましくは0.05〜0.15重量%である。
【0021】
理想的には、本発明の油は、任意に天然香味料を加えた、トウモロコシ油、こめ油、小麦胚芽油、クルミ油およびクロフサスグリ油の混合物である。
【0022】
これらの油は以下の表1に示す量にて混合物内に存在する。
【表1】

【0023】
特に、本発明は、脂肪酸、オメガ3多価不飽和脂肪酸およびビタミンF(多価不飽和脂肪酸)からなる脂質画分、さらにビタミンEおよびγ-オリザノールを、以下の表2に示す量にて含む生成物に関する。
【表2】

【0024】
通常、脂肪酸は、飽和、一価不飽和および多価不飽和脂肪酸(ビタミンF)を以下の表3に示す量にて含む。
【表3】

【0025】
好ましくは、該脂肪酸は以下の表4に示す組成を有する。
【表4】

【0026】
本発明の対象を形成する生成物は、標準的平均密度約0.920g/mlを有する。
【0027】
該穀物および果実油を混合することにより、栄養上優良な特性を有し、さらに、主に果実油から、および添加した天然香味料から得られる驚くほど好ましい特別な香味に恵まれた天然の生成物を得ることが可能である。
【0028】
本発明の生成物を調製するために用いる穀物および果実油は、高栄養価の成分を含む天然の生成物であることに加え、あまり強い香味を持たないというさらなる利点がある。
【0029】
この生成物は、主に生の使用においては、サラダ、野菜、肉のグリルなどのドレッシングであると考えられる。あらゆる他の食材、例えばケーキ、揚げ物、ソースなどの調製にも用いることができる。
【実施例】
【0030】
本発明の油は、以下の表5に示す百分率組成を有するトウモロコシ油、こめ油、小麦胚芽油、クルミ油、クロフサスグリ油および天然香味料を混合することにより得られる。
【表5】

【0031】
上記の油は天然穀物香味料とともに表6に示す量にて混合する。
【表6】

【0032】
該混合物は全成分の混合を完全に行うために攪拌する。
【0033】
このようにして、以下の表7に示す百分率組成および油100mlに対する栄養価を有する生成物が得られる。
【表7】

【0034】
特に記載のない限り、本明細書を通して示した重量百分率は最終混合生成物の重量百分率を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の果実油と混合した1以上の穀物油であることを特徴とする植物油の混合物を含む植物油。
【請求項2】
穀物油および果実油が以下から選択される、請求項1に記載の油:トウモロコシ油、こめ油、小麦胚芽油、大麦油、カラスムギ油、ライ麦油、モロコシ油および雑穀油、ならびにクルミ油、クロフサスグリ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、杏子油、桃油、アボガド油、サクランボ油、スイカ油、メロン油、ブルーベリー油およびオレンジ油。
【請求項3】
穀物油および果実油が以下から選択される、請求項1または2に記載の油:トウモロコシ油、こめ油、小麦胚芽油、ならびにクルミ油およびクロフサスグリ油。
【請求項4】
1以上の香味料を含む、請求項1から3のいずれかに記載の油。
【請求項5】
香味料が以下である、請求項4に記載の油:天然香味料、天然と同一の香味料、穀物精油および果実精油、ならびにそれらの混合物。
【請求項6】
穀物および果実香味料が以下の香味料から選択される、請求項5に記載の油:大麦、カラスムギ、トウモロコシ、米、ライ麦、モロコシ、小麦、雑穀、クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クロフサスグリ、杏子、桃、アボガド、サクランボ、スイカ、メロン、ブルーベリー、オレンジおよびバニラ。
【請求項7】
穀物および果実香味料が以下の香味料から選択される、請求項5または6に記載の油:トウモロコシ、米、小麦、クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クロフサスグリ、杏子および桃。
【請求項8】
前記1以上の穀物油が最終混合物の70〜98重量%の量にて混合される、請求項1から7のいずれかに記載の油。
【請求項9】
前記1以上の穀物油が82〜97.5重量%、好ましくは92〜97重量%の量にて混合される、請求項1から8のいずれかに記載の油。
【請求項10】
前記1以上の果実油が2〜30重量%の量にて混合される、請求項1から9のいずれかに記載の油。
【請求項11】
前記1以上の果実油が2.5〜18重量%、好ましくは3〜8重量%の量にて混合される、請求項1から10のいずれかに記載の油。
【請求項12】
単一の香味料を用いる場合、生成物に加える香味料の量が、他の成分の重量に対して0.02〜0.1重量%、好ましくは0.03〜0.07重量%である、請求項4から11のいずれかに記載の油。
【請求項13】
数種の香味料を用いる場合、生成物に加える香味料の量が、他の成分の重量に対して0.03〜0.2重量%、好ましくは0.05〜0.15重量%である、請求項4から12のいずれかに記載の油。
【請求項14】
トウモロコシ油が84〜92重量%、好ましくは85〜88重量%の量にて混合される、請求項2から13のいずれかに記載の油。
【請求項15】
こめ油が8〜13重量%、好ましくは9〜12重量%の量にて混合される、請求項2から14のいずれかに記載の油。
【請求項16】
小麦胚芽油が0.05〜2重量%、好ましくは0.07〜1.5重量%の量にて混合される、請求項2から15のいずれかに記載の油。
【請求項17】
クルミ油が1〜4重量%、好ましくは2〜3重量%の量にて混合される、請求項2から16のいずれかに記載の油。
【請求項18】
クロフサスグリ油が0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%の量にて混合される、請求項1から17のいずれかに記載の油。
【請求項19】
以下を含む、請求項1から18のいずれかに記載の油:90〜100重量%、好ましくは95〜100重量%の濃度の脂肪酸を含む脂質画分;45〜60重量%、好ましくは46〜54重量%の濃度のビタミンF;0.5〜2重量%、好ましくは0.8〜1.8重量%の濃度のオメガ3;および、脂質画分の総重量に対して0.01〜0.10重量%、好ましくは0.02〜0.04重量%の濃度のγ-オリザノール;脂質画分の重量に対して0.01〜0.40重量%、好ましくは0.018〜0.025重量%の濃度のビタミンE。
【請求項20】
脂肪酸が以下である、請求項19に記載の油:10〜20重量%、好ましくは14〜18重量%の濃度の飽和脂肪酸;25〜36重量%、好ましくは28〜34重量%の濃度の一価不飽和脂肪酸;45〜60重量%、好ましくは46〜54重量%の濃度の多価不飽和脂肪酸。
【請求項21】
脂肪酸が以下を含む、請求項19または20に記載の油:7〜18重量%、好ましくは10〜15重量%の濃度のC16:0;0〜2重量%、好ましくは0.01〜0.15重量%の濃度のC16:1;0.5〜3.5重量%、好ましくは1.5〜3重量%の濃度のC18:0;25〜37重量%、好ましくは28〜35重量%の濃度のC18:1;44〜56重量%、好ましくは47〜52重量%の濃度のC18:2;0.5〜2重量%、好ましくは0.8〜1.8重量%の濃度のC18:3(オメガ3);0〜0.05重量%、好ましくは0.005〜0.02重量%の濃度のC18:4;0〜1重量%、好ましくは0.3〜0.8重量%の濃度のC20:0;0〜0.3重量%、好ましくは0.04〜0.2重量%の濃度のC20:1;0.05〜0.3重量%、好ましくは0.08〜0.2重量%の濃度のC22:0;0.05〜0.4重量%、好ましくは0.08〜0.3重量%の濃度のC24:0。
【請求項22】
86重量%のトウモロコシ油、10重量%のこめ油、1重量%の小麦胚芽油、2.8重量%のクルミ油および0.2重量%のクロフサスグリ油を含む植物油。
【請求項23】
15.6重量%の飽和脂肪酸、32.1重量%の一価不飽和脂肪酸、52.2重量%の多価不飽和脂肪酸(ビタミンF)(うち1.1重量%はオメガ3)を含む脂質画分、および脂質画分の総重量に対して0.021重量%のビタミンEおよび脂質画分の総重量に対して0.04重量%のγ-オリザノールを含む植物油。
【請求項24】
飽和、一価不飽和および多価不飽和脂肪酸が以下を含む、請求項23に記載の油:12.7%のC16:0;0.1%のC16:1;2.0%のC18:0;31.9%のC18:1;51.1%のC18:2;1.1%のC18:3(オメガ3);0.007%のC18:4;0.6%のC20:0;0.1%のC20:1;0.2%のC22:0および0.2%のC24:0。

【公表番号】特表2008−502783(P2008−502783A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526709(P2007−526709)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000345
【国際公開番号】WO2005/120242
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(504292048)カラペッリ フィレンツェ ソチエタ ペル アツィオニ (1)
【Fターム(参考)】