説明

穀類加工品の製造方法

【課題】米、麦、雑穀などの穀類、その加工品などを単体または2種以上混合して容器に充填して煮炊きし、煮炊きする際に発生する容器中での穀類粒子の結着や潰れを防止して、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を得ることができる穀類加工品の製造方法の提供。
【解決手段】容器に充填した米、麦、雑穀などの穀類を単体または2種以上混合して煮炊きする穀類加工品の製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする穀類加工品の製造方法により課題を解決できる。
(1)前記穀類を水で洗浄および/または水に浸漬して水を含浸もしくは付着させる。(2)水切り後、計量して前記容器に充填した前記穀類の集合体の表面から鉛 直方向に、単独または複数の穴を設ける。(3)炊き水および/または調味液を添加するか、あるいは添加せずに、前記穴を維持しつつ煮炊きする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀類加工品の製造方法に関するものであり、更に詳細には、米、麦、雑穀などの穀類、その加工品などを容器に充填して煮炊きして製造する穀類加工品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、米を加熱殺菌してから炊き水を加えて炊飯する無菌包装米飯の製造方法がある(特許文献1〜4参照)。
しかし、米の自重や、澱粉のアルファー化による米粒子同士の結着力、あるいは加熱殺菌処理の際の澱粉のアルファー化による米粒子同士の強い結着などにより、その後行われる炊飯において、米粒子同士がお互いを、押しあったり、結着により引っ張り合うため、膨潤によるふくらみが不足したり、米粒子間の隙間が少なくなり、米粒子が潰れたような米飯しか得られなかったという問題があった。
【0003】
これは、深い炊飯容器で炊飯する際に顕著に見られる現象であり、特に炊飯容器中の米飯の表面部以外の、下方の米粒子が潰れてしまう傾向があった。
また、米粒子間の隙間が少なく、米粒子が結着していると、炊飯時において炊き水の上下の対流が妨げられ、品質に上下差が発生するという問題があった。
【0004】
一方、炊飯釜に計量、洗米された米および炊き水を加え、加熱して前炊飯した後、消火して、蓋をしたまま所要時間蒸らした後、蓋を開けて、炊飯釜中の飯内に穴開け具を差し込んだ後、穴開け具を引き上げて飯に多数の通気穴を設け、蓋を再度閉めて、その後再加熱して後炊飯すると、蒸らし工程における熱伝導の効率化と均一化が図られ炊きむらのない炊飯ができるという提案がある(特許文献5参照)。
しかし、この技術は、蒸らし工程における熱伝導の効率化と均一化を図るものであり、炊飯加熱時の上記問題を解決するものではなく、また蓋の開閉操作が煩雑で手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2912876号公報
【特許文献2】特許第2826088号公報
【特許文献3】特許第2949275号公報
【特許文献4】特公平7−100004号公報
【特許文献5】特開2001−204406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、米、麦、雑穀などの穀類、その加工品などを容器に充填して煮炊きする際に発生する容器中での穀類粒子の結着や潰れを防止して、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を得ることができる穀類加工品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、前記穀類を洗浄および/または水に浸漬して水を含浸もしくは付着させた前記穀類を、水切り後、計量した後、前記容器に充填した前記穀類の集合体の表面から鉛直方向に、所定の大きさの単独または複数の穴を設けた後に煮炊きすると、前記穴を崩壊せずに維持しながら煮炊きすることができ、
穀類粒子が膨らむ空間が確保されるので、穀類粒子同士の結着による多少の引っ張り合いがあっても、容器中での穀類粒子の実質的な結着および潰れを防止して、均一な品質を有するしっかりと膨潤したふっくらとした穀類加工品を蓋の開閉操作などすることなく得ることができることを見いだして、本発明を成すに至った。
【0008】
前記課題を解決するための本発明の請求項1は、容器に充填した米、麦、雑穀などの穀類を単体または2種以上混合して煮炊きする穀類加工品の製造方法であって、
下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする穀類加工品の製造方法である。
(1)前記穀類を水で洗浄および/または水に浸漬して水を含浸もしくは付着させる。
(2)水切り後、計量して前記容器に充填した前記穀類の集合体の表面から鉛直方向に、単独または複数の穴を設ける。
(3)炊き水および/または調味液を添加するか、あるいは添加せずに、前記穴を維持しつつ煮炊きする。
【0009】
本発明の請求項2は、請求項1記載の穀類加工品の製造方法において、前記穀類の集合体の表面の面積(S1)に対する、前記表面における穴の合計面積(S2)の下記式(1)で表される割合(W)が、0.1%〜30%となるように穴を設けることを特徴とする。
【0010】
W(%)=[(S2)/(S1)]×100 式(1)
【0011】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2記載の穀類加工品の製造方法において、前記煮炊き工程(3)を煮炊き予備工程(3−1)と煮炊き本工程(3−2)の2段階とし、
前記煮炊き予備工程(3−1)後に、炊き水および/または調味液を添加することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4は、請求項3記載の穀類加工品の製造方法において、
前記煮炊き予備工程(3−1)が水蒸気を用いた殺菌工程であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の穀類加工品の製造方法において、
前記容器として、製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器を用い、前記煮炊き工程(3)後、容器から穀類加工品を排出せずに、工程(4)で容器を密封包装することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の穀類加工品の製造方法において、
前記煮炊き工程(3)から、容器を密封包装する工程(4)までを無菌空間で行って無菌穀類加工品を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1は、容器に充填した米、麦、雑穀などの穀類を単体または2種以上混合して煮炊きする穀類加工品の製造方法であって、前記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする穀類加工品の製造方法であり、
前記容器に充填した前記穀類の集合体の表面から鉛直方向に、単独または複数の穴を設けた後に煮炊きすると、
煮炊き工程において、前記穴を経て水蒸気などの加熱気体を効率よく前記穀類の集合体内へ供給できるため、穀類粒子の隙間に存在する空気の除去や水蒸気などの加熱気体の穀類粒子の隙間への流入の効率が向上し、
また、炊き水および/または調味液を添加する場合には、それらの容器内の上下における滞留などがなくなり、穴を通じて対流が均一に行われ、いずれの場合にも、熱伝導の効率が向上し、効率のよい煮炊きができ、
さらに、穀類粒子が膨らむ空間が確保されるので、穀類粒子同士の結着による多少の引っ張り合いがあっても、容器中での穀類粒子の実質的な結着や潰れを防止して、均一な品質を有するしっかりと膨潤したふっくらとした穀類加工品を蓋の開閉操作などすることなく容易に経済的に得ることができるという顕著な効果を奏する。
【0016】
また、前記穀類を洗浄および/または水に浸漬して水を含浸もしくは付着させると、穀類粒子表面の摩擦力の変化、あるいは米粒子の表面に存在する水の表面張力により、設けた穴が煮炊き中に崩れにくくなるという顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項2は、請求項1記載の穀類加工品の製造方法において、前記穀類の集合体の表面の面積(S1)に対する、前記表面における穴の合計面積(S2)の前記式(1)で表される割合(W)が、0.1%〜30%となるように穴を設けることを特徴とするものであり、前記割合(W)が、0.1%〜30%となるように穴を設けると、穀類粒子が膨らむ空間が確保出来、効率のよい均一な煮炊きができ、さらに、穴を設ける際に穀類の潰れや割れが生じたり、穴により押しのけられた穀類の容積に相当する、より大きな容積の容器が必要となり、製造工程が大型化したりする恐れがなく、より熱伝導の効率が向上し、効率のよい均一炊飯ができ、穀類粒子の結着や潰れを防止して、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を容易に得ることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0018】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2に記載の穀類加工品の製造方法において、前記煮炊き工程(3)を煮炊き予備工程(3−1)と煮炊き本工程(3−2)の2段階とし、前記煮炊き予備工程(3−1)後に、炊き水および/または調味液を添加することを特徴とするものであり、
煮炊き工程(3)を煮炊き予備工程(3−1)と煮炊き本工程(3−2)の2段階とすることにより、煮炊き予備工程(3−1)における加熱により、穀類の表面付近がアルファー化し結着が始まるために、炊き水および/または調味液を添加しても前記穴の形状が維持されやすく、さらにその後の煮炊き本工程(3−2)における前記穴の崩れを防止するというさらなる顕著な効果を奏する。
【0019】
穴が維持されることにより、炊き水および/または調味液の容器内の上下における滞留などがなくなり、穴を通じて対流が均一に行われ、より熱伝導の効率が向上し、穀類粒子の膨潤に偏りがなくなり、効率のよい均一な煮炊きができるというさらなる顕著な効果を奏する。
また、表皮の有無、表皮の厚み、大きさなどが全く異なる穀類を均一に煮炊きするための、きめ細かな条件設定が可能となり、手軽に均一な煮炊きができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0020】
本発明の請求項4は、請求項3記載の穀類加工品の製造方法において、前記煮炊き予備工程(3−1)が水蒸気を用いた殺菌工程であることを特徴とするものであり、
煮炊き予備工程(3−1)を殺菌工程とすることにより、穀類表皮などに残存する微生物をゼロとして、安全な商品を提供できるとともに、水蒸気を用いた殺菌を行うことにより、穀類の表面付近が、水蒸気の凝結により生じる水分を吸収しアルファー化しやすく、炊き水および/または調味液を添加しても前記穴の形状が維持されやすく、さらにその後の煮炊き本工程(3−2)における前記穴の崩れを確実に防止するというさらなる顕著な効果を奏する。
【0021】
穴が維持されることにより、炊き水および/または調味液の容器内の上下における滞留などがなくなり、穴を通じて対流が均一に行われ、より熱伝導の効率が向上し、穀類粒子の膨潤に偏りがなくなり、炊き水および/または調味液の対流が均一に行われ、効率のよい均一な煮炊きができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0022】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の穀類加工品の製造方法において、
前記容器として、製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器を用い、前記煮炊き工程(3)後、容器から穀類加工品を排出せずに、工程(4)で容器を密封包装することを特徴とするものであり、
煮炊き用の炊飯容器から包装容器への移し替えが不要となり、工程が簡略化できるとともに、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を、その状態のまま製品にできるというさらなる効果を奏する。
【0023】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の穀類加工品の製造方法において、
前記煮炊き工程(3)から、容器を密封包装する工程(4)までを無菌空間で行って無菌穀類加工品を製造することを特徴とするものであり、
米、麦、雑穀などの穀類、その加工品などを容器に充填して煮炊きする際に発生する容器中での穀類粒子の結着や潰れを防止して、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を容易に経済的に得ることができるとともに、常温で長期間保存可能な無菌包装穀類加工品を容易に製造することができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(イ)は、穀類を水で洗浄して水切り後、その穀類を計量して容器に充填した状態を示す説明図であり、(ロ)は、容器に充填した穀類の集合体の表面から鉛直方向に、前記割合(W)が、0.1%〜30%となるように、複数の穴を設けた状態を示す説明図であり、(ハ)は、前記穴を維持しつつ煮炊きを開始した状態を示す説明図であり、(ニ)は、煮炊き後、前記穴が煮炊き中に穀類で塞がった状態を示す説明図である。
【図2】(イ)は、精白米を洗米した後、水に浸漬して水を含浸させ、水切り後、その米を計量して容器に充填した状態を示す説明図であり、(ロ)は、容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に、前記割合(W)が、0.1%〜30%となるように、複数の穴を設けた状態を示す説明図であり、(ハ)は、穴を維持しつつ加熱殺菌する状態を示す説明図であり、(ニ)は、加熱殺菌後、さらに前記穴を維持しつつ炊き水を加えて炊飯する状態を示す説明図であり、(ホ)は、炊飯後、前記穴が米飯で塞がった状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の第1実施態様につき、図1を用いて詳細に説明する。
図1(イ)に示したように、まず、穀類2´を水で洗浄して水切り後、その穀類2´を計量して容器1に所定量を充填する。
本発明においては、容器1に充填した穀類2´の全体を穀類の集合体3´と称す。
図1(イ)において、4は穴開け手段、5は集合体3´の表面、8は底部、9は開口部、10はフランジ状ヒートシール部を示す。
【0026】
本発明においては必要に応じて炊き水や調味液などを用いることができるが、本発明の第1実施態様においては炊き水や調味液などを使用せず、水蒸気を用いて煮炊きする場合について説明する。
【0027】
本発明で複数の穴6を形成するために使用する穴開け手段4は、特に限定されるものではなく、例えば、図1に示したような穴開け手段4が挙げられる。
また、図1に示したように予め穴開け手段4を容器1に設置しておき、水洗した穀類2´を容器1に充填した後、穴開け手段4を取り外して、穴開け手段4を用いて複数の穴6を設けることもできる。
この方法は、複数の穴6を開ける際に、穀類2´の潰れや割れの心配がなく、穴6の直径が大きい場合にも適している。
【0028】
容器1への穀類2´の充填量(容量)は特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、図1(イ)に示したように、容器1の全容量の30〜70%の例を挙げることができる。
【0029】
水で洗米や浸漬する前の穀類2´の含水率は約10〜20質量%であるが、この含水率のまま容器1に充填し、そして穀類2´の集合体3´に穴開け手段4を用いて米の集合体3´の表面5から鉛直方向に複数の穴6を設けると、煮炊きする間などに設けた複数の穴6が維持できず、崩れたりして穀類粒子で埋まってしまう恐れがあるため本発明の効果を期待できなくなる。
【0030】
そこで、水を吸収しにくい穀類2´の場合は、水で洗浄後、浸漬水に約1〜1.5時間程度浸漬し、穀類粒子に水を含浸させたり、穀類粒子の表面に付着させるなどして、穀類粒子の水分含量を20〜40質量%にする。
そして、この含水率の穀類2´を容器1に充填し、穀類2´の集合体3´に穴開け手段4を用いて穀類の集合体3´の表面5から鉛直方向に、複数の穴6を設けると穀類粒子の表面に水が存在するため穀類粒子同士が、例えば、濡れた砂のような性状を呈するために、煮炊きする間などにも穴6が崩れたりせず、複数の穴6が維持される。
煮炊き中に、複数の穴6が崩れたりせず、複数の穴6が維持されるのは、前記の理由の他に穀類粒子の表面がアルファー化して穀類粒子同士が粘着して結着するためと考えられる。
【0031】
次いで、図1(ロ)に示すように、穴開け手段4を降下させて、図1(ハ)に示すように、容器1に充填した穀類2´の集合体3´の表面5から鉛直方向に、下記式(1)で表される、前記穀類2´の集合体3´の表面5の面積(S1)に対する、前記表面5における複数の穴6、6、6・・・・の合計面積(S2)の割合(W)が、好ましくは0.1%〜30%、さらに好ましくは1%〜15%となるように複数の穴を設ける。
【0032】
W(%)=[(S2)/(S1)]×100 式(1)
【0033】
前記割合(W)は、容器1の大きさや穴6の直径などを考慮して0.1%〜30%の範囲で適宜決定される。
前記割合(W)が、0.1%〜30%となるように複数の穴6を設けると、煮炊きなどで穀類粒子が膨らむ空間を確保出来、複数の穴6を設ける際の穀類2´の潰れや割れも生じず、均一な品質を有する穀類加工品を得ることができる。
【0034】
前記割合(W)が、1%〜15%となるように複数の穴6を設けると、複数の穴6がより崩れにくくなり、煮炊きなどで穀類粒子が膨らむ空間が充分に確保され、より効率のよい均一な煮炊きができ、複数の穴6を設ける際に穀類2´の潰れや割れが生じず、より均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を容易に得ることができる。また、複数の穴6により押しのけられた穀類の容積の比率も小さく、特別に大きな容積の容器を必要とせず、製造工程が大型化する恐れもない。
【0035】
複数の穴6の直径は、特に限定されず、前述のように煮炊きする容器1の大きさや穀類2´の種類などを考慮し、適宜選択されるが、前記割合(W)が0.1%〜30%の範囲内において、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。
複数の穴6の直径を1mm以上とすると、煮炊きなどで穀類粒子が膨らむ空間を確保出来、複数の穴6を設ける際の穀類2´の潰れや割れも生じず、均一な品質を有する穀類加工品を得ることができる。
複数の穴6の直径を3mm以上とすると、穀類粒子が膨らむ空間が充分に確保され、より効率のよい均一な煮炊きができ、複数の穴6を設ける際の穀類2´の潰れや割れが生じず、より均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を容易に得ることができる。
【0036】
複数の穴6の直径の上限は、特に限定されず、煮炊きする容器1の形状・大きさや穴6の数などにより適宜選択されるが、前記割合(W)が0.1%〜30%の範囲内において、容器1が長方形の場合、穴6の直径が、前記穀類2´の集合体表面5の短辺の長さの70%以下となるように穴を設けることが好ましい。
容器1が長方形の場合、穴6の直径が、前記穀類2´の集合体表面5の短辺の長さの70%以下となるように穴6を設けると、穴6を設ける際の穀類2´の潰れや割れが生じず、穴6が崩れにくく、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を容易に得ることができる。
なお、容器1の形状は特に限定されず、長方形以外にも円、楕円、正方形、多角形など種々の形状の容器を使用できる。
以下いずれの場合も前記割合(W)が0.1%〜30%の範囲内において、容器1の形状が円の場合は、前記穀類2´の集合体表面5の直径の70%以下、楕円の場合は、前記穀類2´の集合体表面5の短径の70%以下、正方形の場合は、前記穀類2´の集合体表面5の一辺の長さの70%以下、多角形の場合は、前記穀類2´の集合体表面5の対角線の長さの70%以下となるように穴6をあけることが好ましい。
【0037】
穴あけ手段4の太さは、均一か先の方を細くすると、穴6をあける際や穴開け手段4を取り外す際の、穀類の潰れや割れを防ぐことができる。
【0038】
穴6の形状は、円形でなくても本発明の効果を期待できる。穴6の形状が三角形や四角形、五角形などをはじめ、種々の形状の穴でも、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を得ることができる。
【0039】
穴6の崩れ、空間の確保、均一な煮炊きなどの観点から、複数の穴6を設ける際は、穴6の大きさ、形状、間隔などを揃えて設けることが好ましいが、必ずしも揃っていなくても、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を得ることができる。
【0040】
複数の穴6の深さは、特に限定されず、前記穀類2´の潰れや割れ、あるいは、容器1の底面8と穴あけ手段4との接触による破損などを考慮し、適宜決定されるが、容器1の底面8および/または底面8付近まで達する深いものが好ましい。
穴6の深さが、容器1の底面8および/または底面8付近まで達する深いものであれば、さらに効率のよい均一炊飯ができ、穀類粒子の結着や潰れのない、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を得ることができる。
【0041】
複数の穴6は、表面から鉛直方向に開けるのが望ましいが、多少傾いていても同様の効果を期待できる。穴6の傾きが大きくなると、設けた穴6が維持できず、崩れたりして穀類粒子で埋まってしまう恐れがあるため本発明の効果を期待できなくなる。
【0042】
穴6が崩れやすい場合は、煮炊き開始後に穴開け手段4を取り外すとよい。
前記煮炊き工程(3)を煮炊き予備工程(3−1)と煮炊き本工程(3−2)の2段階としたときは、煮炊き予備工程(3−1)終了後に穴開け手段4を取り外すとよい。
その後、必要に応じ炊き水などを加えて炊飯すると、穴が崩れたりせず、煮炊き中に複数の穴6が維持されるので、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を得ることができる。
また、穴あけ手段4に加熱手段を組み込み、複数の穴6を開ける際にそのまま穴あけ手段4の表面を加熱し、複数の穴6の表面付近の穀類2´をアルファー化した後に穴あけ手段4を取り外し、必要に応じ炊き水などを加えて炊飯すると、複数の穴6が崩れたりせず、炊飯中に複数の穴6が維持されるので、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を得ることができる。
【0043】
次いで図1(ハ)に示すように、水蒸気炊飯に用いる公知の方法や装置を用いて、複数の穴6を維持しつつ煮炊きを開始する。
煮炊きの対象となる穀類加工品により、所定の温度、所定の圧力下で、所定の時間などを適宜選択し、煮炊きする。
煮炊きの方法は、前記説明では水蒸気炊飯の例を示したが、特に限定されず、具体的には、例えば、ガス直火炊き、高周波誘導加熱(IH)、マイクロ波加熱などの公知の方法や装置あるいはこれらの2つ以上の組合わせを挙げることができる。
煮炊きの際は、必要に応じて蓋をしてもよい。
【0044】
図1(ハ)に示す煮炊き工程において、前記複数の穴6が維持されると、複数の穴6を経て水蒸気を効率よく穀類2´の集合体3´へ供給できるため、穀類粒子の隙間に存在する空気の除去や、水蒸気の穀類粒子の隙間への流入の効率が向上し、熱伝導の効率が向上し、効率のよい均一な煮炊きができる。
前記複数の穴6を設けて煮炊きを行うと、穀類粒子が膨らむ空間が確保されるので、穀類粒子同士の結着による多少の引っ張り合いがあっても、容器1中での穀類粒子の実質的な結着および潰れを防止できる。
図1(ニ)に示すように、煮炊き終了後は、前記穴6が煮炊き中に穀類で塞がった状態となる。
【0045】
次に本発明の第2実施態様につき、図2を用いて詳細に説明する。
図2(イ)に示したように、まず、精白米を洗米した後、水に浸漬して水を含浸させ、水切り後、その米2を計量して炊飯容器1に所定量を充填する。
本発明においては、炊飯容器1に充填した米2の全体を米の集合体3と称す。図中、4は米の集合体3の表面5から鉛直方向に、複数の穴6を設けるための穴開け手段を示す。
図2(イ)において、5は集合体3の表面、8は底部、9は開口部、10はフランジ状ヒートシール部を示す。
【0046】
炊飯容器1への米2の充填量(容量)も特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、図2(イ)に示したように、炊飯容器1の全容量の30〜70%の例を挙げることができる。
【0047】
前記のように、精白米を洗米した後、水に浸漬して水を含浸させ、水切り後、その米2を計量して炊飯容器1に所定量を充填する理由を次に説明する。
精白米の含水率は約10〜20質量%であるが、この含水率のまま炊飯容器1に充填した米2の集合体3に穴開け手段4を用いて米の集合体3の表面5から鉛直方向に複数の穴6を設けても、設けた複数の穴6が加熱殺菌中や煮炊き中に維持できず、崩れたりして米粒子で埋まってしまう恐れがあるため本発明の効果を期待できなくなる。
【0048】
そこで、精白米を洗米および/または浸漬水に約1〜1.5時間程度浸漬し、米粒子の表面に水を付着および/または含浸させて米粒子の水分含量を20〜40質量%にすると、この含水率の米2を炊飯容器1に充填し、米2の集合体3に穴開け手段4を用いて米の集合体3の表面5から鉛直方向に複数の穴6を設けると、米粒子の表面に水が存在するため米粒子同士が、例えば、濡れた砂のような性状を呈するために、穴6が崩れたりせず、加熱殺菌中や煮炊き中に複数の穴6が維持される。
加熱殺菌中や煮炊き中に、複数の穴6が崩れたりせず、穴6が維持されるのは、前記の理由の他に、米粒子の表面がアルファー化して米粒子同士が粘着して結着するためと考えられる。
【0049】
そして、このような状態で、加熱殺菌した後、炊き水を加えて炊飯すると、複数の穴6が崩れたりせず、炊飯中に複数の穴6が維持されるので、本発明の効果を期待できる。
【0050】
次いで、図2(ロ)に示すように、穴開け手段4を降下させて、図2(ハ)に示すように、炊飯容器1に充填した米2の集合体3の表面5から鉛直方向に、前記式(1)で表される、前記米2の集合体3の表面5の面積(S1)に対する、前記表面5における複数の穴6、6、6・・・・の合計面積(S2)の割合(W)が、好ましくは0.1%〜30%、さらに好ましくは1%〜15%となるように複数の穴6を設ける。
【0051】
次いで、図2(ハ)に示すように、複数の穴6を維持しつつ加熱殺菌する。すなわち、複数の穴6を設けた炊飯容器1を例えば、図示しない市販の水蒸気殺菌装置中に収容して、水蒸気殺菌装置中に水蒸気を供給して、所定の温度、所定の圧力下で、所定の時間、加熱殺菌する。
加熱殺菌に市販の水蒸気殺菌装置を用いた例を示したが、過熱水蒸気を用いた加圧・加熱殺菌やマイクロ波を用いた加熱殺菌など公知の方法や装置を用いることができる。
【0052】
加熱殺菌工程において、前記複数の穴6が維持されると穴6を経て水蒸気などの加熱気体を効率よく米2の集合体3内へ供給できるため、米粒子の隙間に存在する空気の除去や水蒸気などの加熱気体の米粒子の隙間への流入の効率が向上し、熱伝導の効率が向上し、効率のよい均一殺菌ができる。
前記複数の穴6を設けて殺菌を行うと、米粒子が膨らむ空間が確保されるので、米粒子同士の結着による多少の引っ張り合いがあっても、炊飯容器1中での米粒子の実質的な結着および潰れを防止できる。
【0053】
次いで、図2(ニ)に示すように、複数の穴6を維持しつつ炊き水7を加えて煮炊きを開始する。
炊き水7は特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、水の他にも調味液やソース類など各種液体を用いることができ、各種味付き穀類加工品を煮炊きすることも可能である。
煮炊きの方法は、特に限定されず、具体的には、例えば、ガス直火炊き、高周波誘導加熱(IH)、水蒸気炊飯、マイクロ波加熱などの公知の方法や装置あるいはこれらの2つ以上の組合わせを挙げることができる。煮炊きの対象となる穀類加工品により、所定の温度、所定の圧力下で、所定の時間などを適宜選択し、煮炊きする。
煮炊きの際は、必要に応じて蓋をしてもよい。
【0054】
炊飯工程において、前記複数の穴6が維持されると複数の穴6を経て効率よく米2の集合体3内へ炊き水7が供給でき、さらに炊き水7の炊飯容器1の上下における滞留などがなくなり、対流が均一に行われ、熱伝導の効率が向上し、効率のよい均一炊飯ができる。
前記複数の穴6を設けて炊飯を行うと、米粒子が膨らむ空間が確保されるので、米粒子同士の結着による多少の引っ張り合いがあっても、炊飯容器1中での米粒子の実質的な結着および潰れを防止できる。
【0055】
図2(ホ)に示すように、煮炊き終了後は、前記穴6が煮炊き中に米飯で塞がった状態となる。
煮炊き完了後は、煮炊きした容器1から米飯を排出し、製品として販売可能な図示しない包装容器となる耐熱性容器に充填したり、さらなる加工工程に投入したりする。
【0056】
製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器に充填後は、容器内の空気を不活性ガスで置換するなどした後、例えばヒートシール機で完全にシールして密封包装する。
また、脱酸素剤を封入してもよい。
そして、密封包装後は、そのままあるいは所定数ダンボール箱に梱包するなどして適温に維持された貯蔵庫内で貯蔵したり、搬送・輸送に供する。
【0057】
本発明で用いる炊飯容器1は、上部が開口し、形状は丸、多角形、楕円、トレー状形状、円筒状形状、深い形状など特に限定されず、材質はプラスチック、ガラス、セラミックス、金属あるいはこれらの組合わせなどいずれでもよい。
【0058】
本発明で用いる炊飯容器1として、製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器を用いることができる。
炊飯容器1として、製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器を用いると、炊飯容器から包装容器への移し替えが不要となり、工程が簡略化できるとともに、均一な品質を有するふっくらとした穀類加工品を、その状態のまま密封包装して製品にできる。
【0059】
炊飯容器1として、製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器は、上部が開口し、開口部9の周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部10を備えているものであれば、形状は丸、多角形、楕円、トレー状形状、円筒状形状、深い形状など特に限定されるものではない。
また、耐熱性および耐水性があればよく、材質はプラスチック、ガラス、紙、セラミックス、金属あるいはこれらの組合わせなどいずれでもよく、例えばガスバリヤー性耐熱容器包装体、耐熱性合成樹脂フィルム及び/又は金属箔のラミネート材からなるプラスチック容器などを挙げることができる。
【0060】
本発明で用いる図示しない蓋材フィルムは、包装容器とのシール適性などを考慮し適宜選択される。
例えば、製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器は、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を中間層とし、上下層には、ポリプロピレンを積層しこれを容器に成形したもの、また、蓋材フィルムとしては、「PET/Kナイロン/ポリエチレン系シーラント」などが使用できる。
【0061】
本発明においては、前記煮炊き工程から容器を密封包装する工程までを、例えば、米国航空宇宙局(NASA)の規格でクラス100〜クラス10000のクリーンルームやクリーンブース内等で無菌的に行なうなど、無菌環境で行なうことが好ましい。無菌環境で行なう際には使用する設備・包材・容器、ならびに添加する炊き水および/または調味液等は充分に殺菌されたものを使用する。
【0062】
本発明で用いる穀類は、米、麦、豆類を含む雑穀類、およびその加工品など特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、赤飯を作るために、もち米に小豆や栗などの具材を混ぜたものでもよい。また、精白米には、無洗米を用いてもよい。
穀類は、単体または2種以上混合して使用できるが、煮炊きによるアルファー化で穀類粒子同士の結着が生じやすい米を中心とした混合穀類の場合に好ましい効果を発揮する。
【0063】
本発明で用いる水は特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水など公知の水を用いることができる。
【0064】
上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
精白米を洗米した後、常温の水に1時間浸漬して水を含浸させ、水切り後、その米(水分含量30質量%)を110g計量して、炊飯後そのまま製品として使用できる上部が開放した耐熱性プラスチック製炊飯容器に充填した。
【0067】
炊き水を加える前に、前記炊飯容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に直径1mmの大きさで、炊飯容器の底面まで達する穴を、米の集合体の表面の面積(S1)200cm2 当たり32個(前記表面における穴の合計面積S2≒0.25cm2 。W=(S2/S1)×100=0.13%となるように設けた。
そして、穴あけ手段を取り外し、市販の水蒸気殺菌機に前記炊飯容器を収容して130℃で60秒間、前記複数の穴を維持しつつ、殺菌した。
そして、殺菌後、炊き水90gを前記炊飯容器に供給し、水蒸気を用いて30分間、前記複数の穴を維持しつつ、炊飯し、炊飯した後は、前記複数の穴が塞がって前記炊飯容器内が米飯で満たされた状態となった。
【0068】
炊飯容器内の米飯の高さは28mmであった。
その後、10分間放冷した後、炊飯後の米飯を検査した。
目視試験および官能試験を行った20個全てにつき、得られた米飯は、ふっくらとしており、容器内の表面部も底面部もよく炊けていた。
穴の直径、穴の個数、S2(cm2 )、S1(cm2 )、W(%)とともに試験結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
浸漬米(水分含量30質量%)を110g計量して、炊き水90gを加える前に、前記炊飯容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に直径3mmの大きさで、炊飯容器の底面まで達する穴を、炊飯容器上断面の表面積200cm2 当たり32個となるよう(W=(S2/S1)×100=1.1%)、一定の間隔をあけて設けた以外は、実施例1と同様にして、炊飯し、10分間放冷した後、炊飯後の米飯を検査した。
炊飯容器内の米飯の高さは30mmであった。
目視試験および官能試験を行った20個全てにつき、得られた米飯は、大変良好にふっくらとしており、容器内の表面部も底面部もよく炊けていた。
穴の直径、穴の個数、S2(cm2 )、S1(cm2 )、W(%)とともに試験結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
浸漬米(水分含量30質量%)を110g計量して、炊き水90gを加える前に、前記炊飯容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に直径30mmの大きさで、炊飯容器の底面まで達する穴を、炊飯容器上断面の表面積200cm2当たり4個となるよう(W=(S2/S1)×100=14.2%)、一定の間隔をあけて設けた以外は、実施例1と同様にして、炊飯し、10分間放冷した後、炊飯後の米飯を検査した。
炊飯容器内の米飯の高さは32mmであった。
目視試験および官能試験した20個全てにつき、得られた米飯は、大変良好にふっくらとしており、容器内の表面部も底面部もよく炊けていた。
穴の直径、穴の個数、S2(cm2 )、S1(cm2 )、W(%)とともに試験結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
浸漬米(水分含量30質量%)を2200g計量して、炊き水1800gを加える前に、金属製(アルミニウム製)の炊飯用容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に直径100mmの大きさで、炊飯容器の底面まで達する穴を、炊飯容器上断面の表面積1200cm2 当たり2個となるよう(W=(S2/S1)×100=13.1%)、一定の間隔をあけて設けた以外は、実施例1と同様にして、炊飯し、20分間放冷した後、炊飯後の米飯を検査した。
炊飯容器内の米飯の高さは106mmであった。
目視試験および官能試験した20個全てにつき、得られた米飯は、大変良好にふっくらとしており、容器内の表面部も底面部もよく炊けていた。
穴の直径、穴の個数、S2(cm2 )、S1(cm2 )、W(%)とともに試験結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
浸漬米(水分含量30質量%)を2200g計量して、炊き水1800gを加える前に、金属製(アルミニウム製)の炊飯用容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に直径200mmの大きさで、炊飯容器の底面まで達する穴を、炊飯容器上断面の表面積1200cm2 当たり1個となるよう(W=(S2/S1)×100=24.2%)、一定の間隔をあけて設けた以外は、実施例1と同様にして、炊飯し、20分間放冷した後、炊飯後の米飯を検査した。
炊飯容器内の米飯の高さは107mmであった。
目視試験および官能試験した20個全てにつき、得られた米飯は、ふっくらとしており、容器内の表面部も底面部もよく炊けていた。
なお、穴を開けた部分に若干の窪みが残った。
穴の直径、穴の個数、S2(cm2 )、S1(cm2 )、W(%)とともに試験結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
炊き水を加える前に、前記炊飯容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に穴を開けなかった(W=(S2/S1)×100=0%)以外は、実施例1と同様にして、炊飯し、10分間放冷した後、炊飯後の米飯を検査した。
炊飯容器内の米飯の高さは25mmであった。
目視試験および官能試験した20個全てにつき、得られた米飯は、ふっくらしておらず、米粒の形状が崩れているものが散見され、容器内の表面部の米飯が硬く、底面部の米飯はベチャッとしており、部位による品質のばらつきが大きく、品質不良であった。
穴の個数、S2(cm2 )、S1(cm2 )、W(%)とともに試験結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から、実施例1〜5においては、炊飯容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に、単独または複数の穴を設けた後に煮炊きしたので、得られた米飯は、ふっくらとしており、炊飯容器内の表面部も底面部もむらなくよく炊けていて風味良好であったのに対して、炊飯容器に充填した米の集合体の表面から鉛直方向に、単独または複数の穴を設けなかった比較例1においては、得られた米飯は、ふっくらしておらず、米粒の形状が崩れているものが散見され、容器内の表面部の米飯が硬く、底面部の米飯はベチャッとしており、部位による品質のばらつきが大きく、品質不良であったことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は穀類加工品の製造方法に関するものであり、容器に充填した前記穀類の集合体の表面から鉛直方向に、単独または複数の穴を設けた後に煮炊きすると、煮炊き工程において、前記穴を経て水蒸気などの加熱気体を効率よく前記穀類の集合体内へ供給できるため、穀類粒子の隙間に存在する空気の除去や水蒸気などの加熱気体の穀類粒子の隙間への流入の効率が向上し、また、炊き水および/または調味液を添加する場合には、それらの容器内の上下における滞留などがなくなり、穴を通じて対流が均一に行われ、いずれの場合にも、熱伝導の効率が向上し、効率のよい煮炊きができ、さらに、穀類粒子が膨らむ空間が確保されるので、穀類粒子同士の結着による多少の引っ張り合いがあっても、容器中での穀類粒子の実質的な結着や潰れを防止して、均一な品質を有するしっかりと膨潤したふっくらとした穀類加工品を蓋の開閉操作などすることなく容易に経済的に得ることができるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値は甚だ大きい。
【符号の説明】
【0077】
1 炊飯容器
2 2´ 米
3 3´ 米の集合体
4 穴開け手段
5 表面
6 穴
7 炊き水
8 底面
9 開口部
10 ヒートシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に充填した米、麦、雑穀などの穀類を単体または2種以上混合して煮炊きする穀類加工品の製造方法であって、
下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする穀類加工品の製造方法。
(1)前記穀類を水で洗浄および/または水に浸漬して水を含浸もしくは付着させる。
(2)水切り後、計量して前記容器に充填した前記穀類の集合体の表面から鉛直方向に、単独または複数の穴を設ける。
(3)炊き水および/または調味液を添加するか、あるいは添加せずに、前記穴を維持しつつ煮炊きする。
【請求項2】
前記穀類の集合体の表面の面積(S1)に対する、前記表面における穴の合計面積(S2)の下記式(1)で表される割合(W)が、0.1%〜30%となるように穴を設けることを特徴とする請求項1記載の穀類加工品の製造方法。
W(%)=[(S2)/(S1)]×100 式(1)
【請求項3】
前記煮炊き工程(3)を煮炊き予備工程(3−1)と煮炊き本工程(3−2)の2段階とし、
前記煮炊き予備工程(3−1)後に、炊き水および/または調味液を添加することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の穀類加工品の製造方法。
【請求項4】
前記煮炊き予備工程(3−1)が水蒸気を用いた殺菌工程であることを特徴とする請求項3記載の穀類加工品の製造方法。
【請求項5】
前記容器として、製品として販売可能な包装容器となる耐熱性容器を用い、前記煮炊き工程(3)後、容器から穀類加工品を排出せずに、工程(4)で容器を密封包装することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の穀類加工品の製造方法。
【請求項6】
前記煮炊き工程(3)から、容器を密封包装する工程(4)までを無菌空間で行って無菌穀類加工品を製造することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の穀類加工品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−167106(P2011−167106A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32529(P2010−32529)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000116297)ヱスビー食品株式会社 (40)
【Fターム(参考)】