説明

積層した板状体の分離方法および装置

【課題】縦姿勢でパレットに積層された複数枚のフラットなガラス板等の板状体を最前列より1枚ずつ取出すための作業効率を向上させた分離方法および装置を提供する。
【解決手段】
縦姿勢で積層した複数枚の板状体を最前列の板状体から順次1枚ずつ分離するための分離装置において、前記複数枚の板状体の上方に設けられた前記複数の板状体の積層方向に移動可能な板状体分離位置補正手段と、前記板状体分離位置補正手段に備えられた板状体上辺押付手段とエア噴出手段とからなり前記板状体上辺押付手段は、前記板状体上辺に押付けられる押付部材と前記押付部材を昇降させるための昇降手段を備えており、前記エア噴出手段は、そのエア噴出口が下方を向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦姿勢で積層された複数枚のフラットなガラス板等の板状体を、最前列の板状体より順次1枚ずつ取出す際に積層された板状体を分離するための分離方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フラットなガラス板や樹脂板等の板状体を切断、あるいは周縁部の研磨、または孔開け等の加工処理を行うために、パレット等に積層された複数枚の板状体より1枚ずつ取出し、搬送ライン上に移載する方法や装置が数多く提案されている。
【0003】
例えば、本出願人による特開2004−168460号公報には、パレットに縦姿勢で積層された複数枚のフラットな板状体から最前面の板状体を取出す際に、最前列の板状体を2枚目の板状体から引離すときに板状体の間が負圧状態になり、最前列の板状体に引っ張られて2枚目の板状体も引っ張られるブロッキング現象を確実に抑えるために、最前列の板状体と2枚目の板状体の間にエアーを送り込んで、板状体の間を正圧にするとともに、板状体の間に突出片を挿入して板状体同士の分離を促進するとともに、最前列の板状体が分離されていることを確認した上で最前列の板状体を持ち上げる分離装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−168460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明は、パレットに積層された板状体を分離する際に、前記板状体を積層しているパレットの背板の固定がゆるみ傾斜しているなどの現象によって斜めに積層されていると、突出片が最前列の板状体と2列目の板状体の間に挿入されないことがあり、この現象がエラーと見なされて分離装置が停止したり、前記突出片の板状体間への挿入が不十分で板状体同士のブロッキングの解除が不十分なまま、前記パレットからの移載用のロボットアームが最前列の板状体を吸着し持ち上げようとして、最前列の板状体に引っ張られた2列目の板状体が転倒し破損したりするという問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みて、パレットに縦姿勢で積層されている板状体が、本来の設計よりも傾斜して積層されているような設計通りに積層されていない場合であっても、前記分離装置がエラーを発生させたり、ブロッキングが解除されず最前列の板状体が持ち上げられた際に引っ張られた2列目の板状体が落下して破損したりすることで生産が停止し、作業効率が低下することを防ぐことを目的としている。
【0007】
すなわち本発明は、縦姿勢で積層した複数枚の板状体を最前列の板状体から順次1枚ずつ分離するための分離装置において、前記複数枚の板状体の上方に設けられた前記複数の板状体の積層方向に移動可能な板状体分離位置補正手段と、前記板状体分離位置補正手段に備えられた板状体上辺押付手段とエア噴出手段とからなり、前記板状体上辺押付手段は、前記板状体上辺に押付けられる押付部材と前記押付部材を昇降させるための昇降手段を備えており、前記エア噴出手段は、そのエア噴出口が下方を向いていることを特徴とする積層した板状体の分離装置である。
【0008】
あるいはまた、本発明は前記板状体分離位置補正手段が、積層された複数の板状体の最前列の板状体の前面位置を検出する板状体検出手段を備えており、前記板状体検出手段の検出結果に基づいて、前記板状体分離位置補正手段を移動させることを特徴とする上述の積層した板状体の分離装置である。
【0009】
あるいはまた、本発明は前記エア噴出手段のエア噴出口から噴出されるエアの噴出される方向が下方向でありかつ前記積層された板状体の表面に平行となっており、前記エア噴出口が前記押付部材の近傍に設置されていることを特徴とする上述の積層した板状体の分離装置である。
【0010】
あるいはまた、本発明は前記押付部材が、弾性体であることを特徴とする上述の積層した板状体の分離装置である。
【0011】
あるいはまた、本発明は縦姿勢で積層した複数枚の板状体を最前列の板状体から順次1枚ずつ分離するための分離方法において、前記押付部材が2列目の板状体の上方に当接される位置に配置するように前記板状体分離位置補正手段を移動させる第1工程と、前記エア噴出手段から最前列の板状体と2列目の板状体間にエアを噴出しながら、前記昇降手段によって前記押付部材を下降させ2列目もしくは2列目と2列目以降の板状体の上辺を前記押付部材で押付ける第2工程と、前記最前列の板状体を板状体移載用ロボットアームの吸着パッドで吸着し、前記2列目の板状体から引離す第3工程とからなることを特徴とする上述の分離装置による積層した板状体の分離方法である。
【発明の効果】
【0012】
パレットに縦姿勢で積層された板状体を最前列の板状体から順次1枚ずつを分離する際に、前記押付部材により2列目又は2列目を含む2列目以降の板状体の上辺を押付けるようにしたため、前記パレットに積層されている板状体が設計よりも傾斜している場合であっても、確実に板状体を押さえることができるようになり、前記突出片を前記板状体間に挿入する場合に比べて大幅にエラーによる前記分離装置の停止を減少させることが可能となった。
【0013】
また、ブロッキングの解除が不十分な場合であっても、前記2列目の板状体が前記押付部材によって押えられているため、前記最前列の板状体を持ち上げたときに、前記2列目の板状体が一緒に持ち上げられることがなく、前記2列目の板状体が、前記最前列の板状体に引っ張られて落下し破損することによる前記分離装置の停止をなくすことができた。
【0014】
このように、本発明により、パレットに縦姿勢で積層されている板状体を搬送ラインに移載させる工程において、エラーや板状体の破損による前記分離装置の停止を防ぐことができ、作業効率を大幅に向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係わる分離装置の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係わる分離装置の動作(a)〜(d)を説明する側面図。
【図3】従来技術の実施形態に係わる正常な動作を示す側面図(a)及び問題のあるときの動作を示す側面図(b)並びに本発明における改善点を示す側面図(c)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の分離装置1は、図1に示すように、パレット3に縦姿勢で積層された複数枚のガラス板等の板状体2の上部に設置されており、分離装置1の板状体分離位置補正手段10は、板状体2の積層される方向に延伸されている図示されていない走行レールに接続され、前記走行レールに沿って分離装置1を走行させることができる。
【0017】
板状体分離位置補正手段10には、板状体検出手段20、板状体上辺押付手段40および、1対のエア噴出手段30が設けられている。
【0018】
板状体検出手段20は、アーム22とパレット3に積層された最前列の板状体2を検出するための検出センサー21とアーム22を旋回させるためのアクチュエーター23から構成されている。アーム22の先端には検出センサー21が取付けられており、アーム22のもう一方の先端にはアクチュエーター23が取付けられている。そしてアクチュエーター23は、板状体分離位置補正手段10に取付けられている。検出センサー21は、アーム22がアクチュエーターの回転軸を中心にして旋回し、アーム22が降ろされたときには、先端に取り付けられている検出センサー21が最前列の板状体2の前面部と対向するとともに、検出センサー21の高さが板状体2の上辺よりも低い位置になるように、アーム22の長さが調整されている。
【0019】
検出センサー21としては、接触式のリミットスイッチ、または光電式の近接センサーが用いられる。
【0020】
エア噴出手段30は、板状体2の積層されている方向に対して、板状体上辺押付手段40を左右から挟むように配置されている。エア噴出手段30は、それぞれエアノズル31を備えており、エアノズル31が板状体上辺押付手段40の近傍の下方向に向けてエアを噴出させるように配置されている。
【0021】
板状体上辺押付手段40は、板状体2の上辺に押付ける押付部材42と押付部材42を先端に取付けており、押付部材42を昇降させ、押付部材42を板状体2に押付ける昇降手段41とから構成されている。また、押付部材は、ゴム、スポンジなどの弾性部材で製作されていることが望ましい。
【0022】
押付部材42を弾性部材で製作することによって、板状体2に傷をつけることなく押付けることができるとともに、押付部材42が押付けられたときに弾性変形をするため、板状材2の上辺への接触面積を大きくすることができ、押付部材が弾性変形をしない場合に比べてより大きな押圧力で押付けることができるようになる。
【0023】
板状体分離位置補正手段10の位置決めは、検出センサー21の検出結果に基づいて行われる。すなわち、板状体分離位置補正手段10を位置決めさせるときには、検出センサー21の検出面を最前列の板状体2の前面に対向させるように向け、板状体分離位置補正手段10を図示されていない走行レールに沿って移動させ、検出センサー21が最前列の板状体2に近づき、板状体を検出すると、その移動を停止させる。
【0024】
アーム22を降ろしているときの検出センサー21と押付部材42およびエアノズル31とのそれぞれの板状体2の積層方向における間隔は、パレット3に積層されている板状体2の厚さに応じて決定する。
【0025】
続いて、本発明の分離装置の動作について説明する。
【0026】
分離装置1は、パレット3に積層された板状体2を1枚ずつ取出し、板状体2を図示されていない搬送ライン上に移載するロボットアーム5とともに使用される。このときの分離装置1とロボットアーム5とは図2に示されているような順序で動作する。
【0027】
まず、図2(a)に示すようにパレット3上に板状体2が複数枚縦姿勢で積層されており、板状体分離位置補正手段10が走行レール11に沿って最前列の板状体2に向かって走行してくる。この際、アーム22は、下方向に向けられており、アーム22の先端に取付けられている検出センサー21の検出面は、板状体2に対向している。また、エアノズル31からは常にエアが噴出するように設定している。
【0028】
板状体分離位置補正手段10が走行レール11に沿って移動し、最前列の板状体2との間隔が予め定めた距離に達したら、図2(b)に示すように板状体分離位置補正手段10は停止する。
【0029】
板状体分離位置補正手段10が停止すると、板状体上辺押付手段40の昇降手段41が下降し、押付部材42が2列目の板状体2の上辺を押さえ付ける。このとき、押付部材42としては、2列目の板状体2のみを押付けるものを用いてよいが、3列目、4列目といった2列目の板状体2より後方の板状体2も2列目の板状体とともに押付けてしまうような大きさのものを用いても構わない。
【0030】
このとき、板状体上辺押付手段40の左右に設置されているエア噴出手段30のエアノズル31は、板状体上辺押付手段40の近傍で、かつ板状体2の上辺近傍の上方に配置されている。
【0031】
エアノズル31は、板状体上辺押付手段40の近傍に配置されているだけでも十分に最前列の板状体2と2列目の板状体2との間のブロッキング解除の効果が得られるが、押付部材42が2列目の板状体2を押付けているときに、エアノズル31が最前列の板状体2と2列目の板状体2との間に位置し、かつエアノズル31からのエアが板状体2の表面に平行になるように噴出されるようにエア噴出手段30と押付部材42との配置が考慮され、かつエアノズル31の向きが調整されているとさらに確実なブロッキング解除効果が得られる。
【0032】
なお、検出センサー21とエアノズル31と押付部材42との相対的な位置関係は、板状体2の厚さに応じて予め調整をしておく必要がある。
【0033】
図2(b)に示されるように分離装置1が配置されると、エアノズルからのエアが最前列の板状体2と2列目の板状体2との間に噴きつけ続けられるため、この2枚の板状体間のブロッキングが解除され、図2(c)に示されるように最前列の板状体2と2列目の板状体2との間に隙間が生じる。また、アーム22が上方へ旋回し、最前列の板状体の手前に配置されていた検出センサー21を最前列の板状体を移載するロボットアーム5の稼動エリアから退避させる。
【0034】
次に、図2(d)に示されるように、ロボットアーム5が積層された板状体2の前面から近づきロボットアーム5の先端に設置された吸着パッドが最前列の板状体2の表面を吸着し、前記板状体2を図示されていない搬送ラインに移載する。
【0035】
従来技術では、図3(a)に示されるように、最前列の板状体2と2列目の板状体2との間に突出片50を挿入することによって、前記板状体間のブロッキング解除を促すと同時に、突出片50が挿入されたときにブロッキングが解除されたとみなしており、突出片50の挿入動作を複数回繰り返し、前記板状体2間に突出片50が挿入されない場合には、エラーとし、板状体2を前記搬送ラインに移載させるロボットアーム5が停止するように一連の工程が設定されていた。そのため、突出片50が前記板状体2間に挿入されない場合にはエラーとなりロボットアーム5が停止し、人手によって不具合を解消してからでなければロボットアーム5の運転を再開できなかったため、作業効率の低下につながっていた。
【0036】
突出片50が板状体間2に挿入されない理由としては、例えば、図3(b)に示されるようにパレット背板4の固定が緩んでおり、積層された板状体2が設計された状態よりも傾いてしまっている場合が挙げられる。
【0037】
すなわち、検出センサー21と突出片50との間隔は、検出センサーが最前列の板状体2の前面を検出して停止したときに突出片50が、最前列の板状体2と最前列から2列目の板状体2の間に挿入されるように予め設定しているが、前記間隔は、板状体2は設計通りに縦置きに積層されているとの前提で設定される。
【0038】
しかし、図3(b)に示されるようにパレット背板4の固定が緩み、積層された板状体2が設計された状態よりも傾いてしまうと、検出センサーが最前列の板状体2を検出して停止する位置から最前列の板状体2と2列目の板状体2との間までの間隔が、図3(a)に示されるようにパレット背板4が確実に固定されており、設計通りに板状体2が積層されている場合の間隔に比べて大きくなってしまう。
【0039】
そのため、パレット背板4の固定が緩み、背板が傾斜してしまい積層された板状体2も傾斜してしまうと、突出片50が最前列の板状体2と2列目の板状体2間に挿入できなくなる。
【0040】
従来技術のように、突出片50を前記板状体2間に挿入する場合には、前記板状体2間の間隔が狭いため、積層された板状体2が少し傾斜するだけでも、最前列の板状体2と2列目の板状体2との間の位置が突出片50の下降位置からずれてしまう。それに対して、本発明の分離装置1においては、2列目の板状体の上辺を押付部材42で押付けることになる。板状体2の上辺の厚さは約3mmであり、板状体2間に形成される隙間に比べて大きな値であるため、図3(c)に示されているように積層された板状体2が設計されている状態より多少傾いていても押付部材42が2列目の板状体2の上辺を押付けることができる。
【0041】
本発明の分離装置1では、押付部材42により確実に板状体2の上辺を押付けることができるため、従来技術のように突出片50が板状体間に挿入されないというエラーを生じることがなく、また、最前列の板状体2と2列目の板状体2との間のブロッキングの解除が仮に不十分であったとしても、ロボットアーム5が最前列の板状体2を持ち上げる際に、2列目の板状体2は押付部材42によって押付られているため、最前列の板状体2に引っ張られることがなく、2列目の板状体2の落下による破損を防ぐことができる。
【0042】
以上好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 分離装置
2 板状体
3 パレット
4 パレット背板
5 ロボットアーム
10 板状体分離位置補正手段
11 走行レール
20 板状体検出手段
21 検出センサー
22 アーム
23 アクチュエーター
30 エア噴出手段
31 エアノズル
40 板状体上辺押付手段
41 昇降手段
42 押付部材
50 突出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦姿勢で積層した複数枚の板状体を最前列の板状体から順次1枚ずつ分離するための分離装置において、
前記複数枚の板状体の上方に設けられた前記複数の板状体の積層方向に移動可能な板状体分離位置補正手段と、
前記板状体分離位置補正手段に備えられた板状体上辺押付手段とエア噴出手段とからなり
前記板状体上辺押付手段は、前記板状体上辺に押付けられる押付部材と前記押付部材を昇降させるための昇降手段を備えており、
前記エア噴出手段は、そのエア噴出口が下方を向いていることを特徴とする積層した板状体の分離装置。
【請求項2】
前記板状体分離位置補正手段が、積層された複数の板状体の最前列の板状体の前面位置を検出する板状体検出手段を備えており、
前記板状体検出手段の検出結果に基づいて、前記板状体分離位置補正手段を移動させることを特徴とする請求項1に記載の積層した板状体の分離装置。
【請求項3】
前記エア噴出手段のエア噴出口から噴出されるエアの噴出される方向が下方向でありかつ前記積層された板状体の表面に平行となっており、
前記エア噴出口が前記押付部材の近傍に設置されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の積層した板状体の分離装置。
【請求項4】
前記押付部材は、弾性体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の積層した板状体の分離装置。
【請求項5】
縦姿勢で積層した複数枚の板状体を最前列の板状体から順次1枚ずつ分離するための分離方法において、
前記押付部材が最前列から2列目の板状体の上方に当接される位置に配置するように前記板状体分離位置補正手段を移動させる第1工程と、
前記エア噴出手段から最前列の板状体と2列目の板状体間にエアを噴出しながら、前記昇降手段によって前記押付部材を下降させ最前列から2列目又は最前列から2列目と2列目以降の板状体の上辺を前記押付部材で押付ける第2工程と、
前記最前列の板状体を板状体移載用ロボットアームの吸着パッドで吸着し、前記2列目の板状体から引離す第3工程とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の分離装置による積層した板状体の分離方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−136328(P2012−136328A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289521(P2010−289521)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】