説明

積層シートおよび包装体

【課題】
環状オレフィン系樹脂を用いることにより得られる透明性、防湿等の諸特性を維持しつつ、包装体に加工された際プレススルーまたはイージーピールのいずれの方式であっても好適な開封性を有する積層シートを提供する。
【解決手段】
A層と、その両側に積層された外層としてのB層を含む積層シートであって、前記A層は、(a)環状オレフィン系樹脂を主成分とし、前記B層は、(b)ポリプロピレン系樹脂と(c)ポリエチレン系樹脂とを含み、前記(c)成分であるポリエチレン系樹脂の密度が0.860g/cm以下0.928g/cm以上であることを特徴とする積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種熱成形等に用いられる樹脂積層シートおよびこれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装分野においては、カプセルや錠剤等の固形剤、粒状の食品等を包装するためにPTP(プレススルーパッケージ)包装が用いられている。また、食品等の包装分野においては、食品等を包装するためにPTP包装によく似たブリスターパッケージが用いられることも多い。
【0003】
PTP包装とは、例えば、透明のシートを圧空成形、真空成形等によりカプセル等の固形剤を収納するポケット部を形成し、ポケット部にカプセル等を収納した後、アルミ箔のような容易に引裂きや開封が可能な材質の箔やフィルムを積層して一体化した形態の包装をいう。PTP包装によれば、透明なシートのポケットに収納された固形剤や食品等を開封前に目視にて確認でき、開封する際にはポケット部の固形剤等を指で押し、箔等を破ることにより、内容物を容易に取出すことができる。
【0004】
ブリスターパッケージとは、シートを真空成形等して食品等の形態に応じた凹部(ポケット部)を形成し、この凹部に食品等の内容物を収納した後、ヒートシール性コート紙やフィルム等で封をする形態の包装をいう。凹部成形シートを底材、ヒートシール性コート紙やフィルムなどを蓋材と呼ばれることが多い。
【0005】
例えば、医薬品包装の分野では、固形剤包装用として一般に用いられているPTP包装用シートには、従来ポリ塩化ビニル(以下、PVCと略記する)樹脂が用いられている。PVC樹脂シートはその特性上PTP包装に適したシートである。しかしながら防湿特性が劣るため、防湿を必要とする薬剤の包装用途には適さない場合がある。この様な場合には、PTP包装をした後、さらにアルミ箔を含む構成のフィルムによるピロー包装や、PVC樹脂シートにポリ塩化ビニリデン(以下、PVDCと略記する)樹脂をコーティングした複合シートを用いることで防湿特性を補う方法がとられてきた。
【0006】
しかし、これらの方法は、工数の増加につながるものとなる。また最近の脱PVCの動向により他の材料への切り替えが求められる場合もある。これらの点についてはポリプロピレン系樹脂シートを用いた検討もなされているが、ポリプロピレン系樹脂はPVCに比べ成形性が悪いという欠点があり、また製剤用途としての防湿性も充分なものとはいえない。
【0007】
これらの問題に対し、PVCおよびポリプレピレン系樹脂に替わるものとして下記特許文献1〜3のように環状オレフィン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とを積層したシートの検討が進められている。しかしながら環状ポリオレフィン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とは接着性が悪く、シート内の層間剥離が起こりやすいため、包装容器に加工した際の開封性や薬剤の保存性については充分なものとはいえない。
【0008】
特許文献1には、環状オレフィン系樹脂に高密度ポリエチレンを配合し、外層の樹脂との接着強度を向上させたポリオレフィン系多層積層体が開示されている。しかし、この場合、高密度ポリエチレンを配合することで、環状オレフィンが有する防湿性や透明性を低下させるという問題がある。
【0009】
特許文献2には環状オレフィン樹脂と熱可塑性樹脂とを接着剤を介してラミネートすることを特長とする熱成形性複合フィルムが開示されている。しかしこの場合は、環状オレフィン系樹脂の高機能性を保持しつつ短所を補える発明であるが、ラミネート工数の増加する問題がある。
【0010】
特許文献3には、環状オレフィン系樹脂とポリプロピレン樹脂の接着強度を向上させるため、ポリプロピレン樹脂へ密度が0.930g/cm以上のポリエチレン樹脂を添加する発明が開示されている。しかし、密度の高いポリエチレンを使用した場合、接着強度が十分なものではなく、シート内のデラミの発生により開封が困難になる場合がある。また、成形時に透明性が悪化する問題がある。
【0011】
また、PTP薬品包装に関しては、病院や調剤薬局などで、大量に薬剤を取出す必要がある場合に、一錠ずつプレススルーして取出すのに手間がかかるという点について改善の要求がある。
【0012】
上記のような開封時の問題を解決するには、蓋材を剥離して収納物を取出すイージーピール方式にすることが有効であるが、蓋材がアルミ箔単体である場合には、アルミ箔の引裂き強度が極端に低いため、剥離しようとしてもアルミ箔が途中で裂けてしまい、うまく剥離できない。これに対し、底材とアルミ箔の蓋材の貼り合わせ強度(シール強度)を極端に低くすれば途中で裂けることなく剥離することも可能であるが、それでは薬品や食品の包装体として必要な密閉性を維持できない。また、蓋材をある程度の力で剥離しても引き裂けることなく剥離できるように、ある程度の引裂き強度をもつ材質構成のものにすれば上述の問題は解決できるが、前述したようにプレススルーで一錠ずつ簡単に取り出せるという機能も錠剤やカプセル剤包装の大きなメリットであるので、この機能は維持する必要もあり、上述のような蓋材強度の強化はプレススルー機能が発揮できなくなるというような問題を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開1995-186348号公報
【0014】
【特許文献2】特開2000-037817号公報
【0015】
【特許文献3】特開平6−226934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、環状オレフィン系樹脂を用いることにより得られる好適な外観を初めとする諸特性を維持しつつ、包装体に加工された際プレススルーまたはイージーピールのいずれの方式であっても好適な開封性を有する積層シートを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[1]本発明に係る積層シートは、A層と、その両側に積層された外層としてのB層を含む積層シートであって、前記A層は、(a)環状オレフィン系樹脂を主成分とし、前記B層は、(b)ポリプロピレン系樹脂、(c)ポリエチレン系樹脂とを含み、前記(c)成分であるポリエチレン系樹脂の密度が0.860g/cm以下0.928g/cm以上であることを特徴とする。
【0018】
[2]本発明に係る積層シートは、前記B層に含有される(b)ポリプロピレン系樹脂と(c)ポリエチレン系樹脂の比率が、(b)/(c)=70〜30/30〜70質量%であるものとすることができる。
【0019】
[3]本発明に係る積層シートは、前記(a)環状オレフィン系樹脂が環状オレフィンとエチレンとの共重合体であるものとすることができる。
【0020】
[4] 本発明に係る積層シートは、前記A層と前記B層とが隣接しているものとすることができる。
【0021】
[5]本発明に係る積層シートは、中間層を構成するA層と、アルミ箔接着面に積層された外層B層との層間強度が所定の剥離試験において0.4N/mm以上、1.0 N/mm以下であるとすることができる。
【0022】
[6]本発明に係る包装容器は、樹脂シートに複数のポケットを形成した包装容器であって、前記包樹脂シートが前記[5]記載の積層シートであるとすることができる。
【0023】
[7]本発明に係る包装体は、複数のポケットを形成した包装容器とアルミ箔とを貼りあわせて得られる包装体であって、前記包装容器が前記[6]記載の包装容器であるとすることができる。
【0024】
[8]本発明に係る包装体は前記包装容器とアルミ箔とがイージーピール剥離可能なものとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に従うと、環状オレフィン系樹脂を用いることにより得られる透明性、防湿等の諸特性を維持しつつ、包装体に加工された際プレススルーまたはイージーピールのいずれの方式であっても好適な開封性を有する積層シートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
【0027】
本発明に係る積層シートは、中間層としてのA層が、(a)環状オレフィン系樹脂を主成分とし、A層の両側に外層として積層されたB層が、(b)ポリプロピレン系樹脂および(c)0.860g/cm以上0.928g/cm以下であるポリエチレン系樹脂を含むとを特徴とし、当該特徴により前記発明の効果を奏するものとなる。
【0028】
(A層)
本発明に係る積層シートのA層の主成分である(a)環状オレフィン系樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以上120℃以下であることが好ましく、更に60℃以上、110℃以下、特に65℃以上、105℃で以下であればより好ましい。ガラス転移温度が前記下限値以上であれば、シートの耐熱性が維持され、PTP成形を行った凹部(ポケット部)が室温より高い温度で保管された際に変形する等の不具合が生じにくい。またガラス転移温度(Tg)が前記上限値以下であれば、PTP成形の際に表裏層の粘着トラブル等の不具合が発生しにくく、また、良好な厚み精度で成形することができる。
【0029】
また(a)環状オレフィン系樹脂(重合体)の結合形態は、特に制限はないが、具体的な例としては、下記一般式(1)で表される環状オレフィンとエチレンとのランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体、環状オレフィン開環(共)重合体の水素化物、及びこれらの(共)重合体のグラフト変成物等が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
一般式(1)中、R1乃至R12は水素原子又は炭化水素基であって、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R5とR10、又はR11とR12とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。また、R3又はR10と、R11又はR12は互いに環を形成してもよい。nは0又は正の整数であって、R5〜R8が複数回繰り返される場合には、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
ここで、一般式(1)で表される環状オレフィンの例としては、下記式(2)のビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)及びその誘導体、例えば、ノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、6−n−ブチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン等を挙げることができる。
【0033】
また、下記式(3)のテトラシクロ−3−ドデセン及びその誘導体としては、例えば、8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−ヘキシルテトラシクロ−3−ドデセン、10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等を挙げることができる。
【0034】
【化2】

【0035】
【化3】

【0036】
本発明に係る積層シートのA層の主成分である環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体の水素化物等が挙げられる。例えば、上記一般式(1)で表される環状オレフィンを30〜50モル%程度有するエチレンとの共重合体を例示することができ、環状オレフィンとエチレンの共重合体を用いることは加工性改善という観点で好ましい。また、エチレン以外のα−オレフィンを含むものや、第3成分としてブタジエン、イソプレン等を含有するものであってもよい。環状オレフィンの含有量により各種のガラス転移温度を有するものがある。環状オレフィンとエチレンとの共重合体の具体的な例としては、三井化学(株)製の商品名「アペル」やポリプラスチックス(株)製の商品名「TOPAS」が挙げられる。なお環状オレフィンポリマーの具体的な例としては日本ゼオン(株)製の商品名「ゼオノア」等を例示することができる。
【0037】
さらに、本発明において、環状オレフィン系樹脂としては、上記のような環状オレフィン系ランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体あるいは環状オレフィン開環(共)重合体の水添物(水素化物) を、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその無水物等の変性剤で変性したグラフト重合体も使用することができる。これらの変性剤は単独で、あるいは組合せて使用することができる。
【0038】
本発明に係る上記の熱可塑性ノルボルネン重合体の開環(共)重合体の変性物を水素化する方法としては、特に制限はなく、一般的には、開環(共)重合体を、水素化触媒を失活させない溶媒(例えばベンゼン、トルエン、酢酸エチル、クロルベンゼン等)に溶解後、水素化触媒によって重合体中の炭素−炭素結合(不飽和結合)が水素化される。この際、水素化触媒としては、例えば、金属触媒(パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム等)をカーボン、シリカ、アルミナ等の担体に担持された不均一触媒、叉はナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセテート/トリエチルアルミニウム、酢酸ロジウム等のロジウム触媒等からなる均一系触媒が例示できる。
【0039】
(B層)
本発明に係る積層シートのB層に含まれる(b)ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体叉はプロピレン含有量90モル%以上のプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体(例えばエチレンープロピレン共重合体、ピロピレン−1−ブテン共重合体等)であり、メルトフローレート(230℃)が0.05g/10min以上、100g/10min以下、好ましくは0.5g/min以上50g/10min以下である。前記下限値以上とすることにより、良好な吐出量を確保でき安定した生産性を得ることができる。前記上限値以下とすることにより共押出法において他の樹脂との積層が容易なものとなる。
【0040】
また(b)ポリプロピレン系樹脂は、密度が0.890g/cm以上0.930g/cm以下のものが好ましく 、0.900g/cm以上0.920g/cm以下のものが特に好ましい。前記下限値以上とすることにより、良好な水蒸気バリア性が得られる。前記上限値以下とすることにより、他樹脂との積層の際良好な接着性を得ることができる。
【0041】
本発明に係るB層に含まれる(c)ポリエチレン系樹脂は、密度が0.860g/cm以上0.928g/cm以下のものであることが好ましい。前記下限値以上とすることにより更にポリエチレン系樹脂の密度を前記上限値以下とすることによりプッシュスルーにより薬剤を取出すために好適な層間強度を得ることができる。また、包装容器成形時に生じるポケット天部の白濁しを防止することにより高い透明性を維持することができる。なお、シートの透明性を向上させるためには、分子量分布が狭く高透明な特性を有する、均一系触媒(メタロセン系触媒等)を使用して重合されたポリエチレン系樹脂を使用することが特に好ましい。
【0042】
また、本発明における(c)成分であるポリエチレン系樹脂は、結晶融解ピーク温度(Tm)が85℃以上135℃以下であり、結晶融解ピーク温度が前記下限値以上であれば、PTP成形時にシート加熱部にシートが粘着することなく、好適な成形性を得ることができる。一方、前記上限値以下であれば、従来用いられていたPVC系シートと同様に比較的低温であっても安定したPTP成形が可能となる。
【0043】
本発明に係る積層シートの両外層を構成するB層は、前記(b)、(c)成分の混合質量比が、(b)/(c)=70/30〜30/70質量%であることが好ましく、更に(b)/(c)=70/40〜30/60質量%であることが好ましい。(b)成分の混合質量比が前記上限値以下であれば、A層との接着強度が好適なものとなり、錠剤取出しの際にポケット周りにデラミを防止することができる。一方、(b)成分の含有量が前記下限値以上であれば、成形時にシートの熱板に取られることを防止し、充分な成形温度幅を得ることができる。なお、両外層を構成するB層の組成は、表層と裏層とで同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが寸法安定性(カール防止等)などの点から好ましい。
【0044】
本発明に係る積層シートの、中間層を構成するA層と、アルミ箔接着面に積層された外層B層との層間強度は、0.4以上、1.0N/mm以下であることが好ましく、0.45以上0.95N/mm以下であることがさらに好ましい。層間強度を前記範囲下限値以上とすることにより、プッシュスルーによる開封の際に生じるポケット周りのデラミを防止することができ、内容物を安定して保存することができる。また、前記上限値以下とすることにより、イージーピール方式による開封の際のアルミ箔が破断を低減することがでる。
【0045】
(層間強度の測定方法)
上記層間強度は、積層シートとアルミ箔(厚み20μm)とを重ねアルミ箔側から加熱し融着(融着条件:圧力2kgf/cm2、温度180℃、加熱時間3秒×2回)して得られたアルミ箔付き樹脂シートを用い、樹脂シート中のA層とB層の剥離試験(測定条件:引張試験機 設備名 、引張速度 300mm/分、剥離角度90度剥離)を行うことにより測定することができる。
【0046】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂積層シートの中間層(A層)の厚さは、シートの全厚みに対する厚み比が60%以上95%と以下することが好ましい。シートの全厚みに対してA層の厚み比が60%以上95%以下であれば、防湿性を確保しつつ、透明性、熱成形性、が良好なものとなる。
【0047】
本発明に係る積層シートの全厚みは、特に制限はないが、20〜1000μm程度とすることが好ましい。例えば、PTP包装体に用いられる場合には、一般的に200以上350μm以下である。また、両外層(B層)の厚さは同一でも異なっていてもよい。
【0048】
本発明に係る積層シートの透明性は、特に制限されるものではないが、通常、全ヘーズで35%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。ここで、全ヘーズが35%以下であれば、医薬品包装用途に用いた場合、薬剤の視認性が良好なものとなる。
【0049】
本発に係る積層シートは、PTP包装体として好適に用いられるが、本用途に用いる場合は、シートの全厚みが350μm以下で、JIS K7129(A法)に準拠して測定した透湿度が、0.50g/m・day以下であることが好まく、0.49g/m・day以下であることが更に好ましく、0.48g/m・day以下であることが特に好ましい。透湿度が前記上限値以下であれば、特に防湿性を必要とする薬品の包装用として好適に用いることができる。
【0050】
本発明に係る積層シートは、中間層を構成するA層と、表裏両側に積層された外層としてのB層との3層構成が最も好適に用いられるが、この構成に限定されるものではなく、中間層はA層以外の層を含んでも構わない。例えば、(B層)/(A層)/(B層)/(A層)/(B層)の5層構成が挙げられる。
【0051】
本発明に係る積層シートには、本発明の主旨を損なわない範囲でその他の成分を適宜添加しても構わない。ここで、その他の成分は、A層あるいはB層のみに添加しても、A層及びB層の両層に添加してもよい。その他の成分としては、改良剤、添加剤等が挙げられ、例えば、ポリオレフィン系やポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等の耐衝撃性改良剤や、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑り剤等の添加剤、また、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂(通常、中間層を構成するA層に添加される)等が挙げられる。
【0052】
(本願発明に係る積層シートの使用方法)
本願発明に係る積層シートは例えば、圧空成形、真空成形等によりポケット部を形成し、前記ポケット部に固形薬剤やタブレット状食品等の目的物を収納した上で更にアルミ箔等によりポケット部分をシールするような包装体として使用可能である。更に本願発明に係る積層シートを用いた包装体はプッシュスルー、イージーピールいずれの方式であっても好適に開封することが可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
下記原料を表1及び表2に示す配合比率に従い試験用シートを作製し、下記の項目について評価を行った。
原料a1 ;TOPAS 8007F−04[APO;ガラス転移温度(Tg)78℃(ISO11357−1、−2、−3) ポリプラスチックス(株)製]
原料b1 ;プライムポリプロ J106G[ポリプロピレン;メルトフローレート 15.0g/10min(JIS K7210)、密度 0.910g/cm(JIS K7112、230℃) (株)プライムポリマー製]
原料b2 ;ノバテックPP FX4E[ポリプロピレン;メルトフローレート 5.3g/10min(JIS K7210、230℃)、密度 0.900g/cm(JIS K7112) 日本ポリプロ(株)製]
原料c1 ; ユメリット 613A[ポリエチレン;密度0.913g/cm (JIS K7112)融点97、113℃ 宇部丸善ポリエチレン(株)製]
原料c2 ;ユメリット 2515HF[ポリエチレン;密度0.925g/cm (JIS K7112)融点121℃ 宇部丸善ポリエチレン(株)製]
原料c3 ;ユメリット 0540F[ポリエチレン;密度0.904g/cm (JIS K7112)融点87、111℃ 宇部丸善ポリエチレン(株)製]
原料c4 ;ノバテックHD HF111[ポリエチレン;密度0.945g/cm (JIS K7112)融点130℃(JIS K7121) 日本ポリエチレン(株)製]
原料c5 ;ノバテックHD HE481[ポリエチレン;密度0.956g/cm (JIS K7112)融点133℃(JIS K7121)日本ポリエチレン(株)製]
【0055】
(実施例1)
層Aには環状オレフィン系樹脂として原料a1を使用した。また層Bには、ポリプロピレン系樹脂として原料b 1と、ポリエチレン系樹脂として原料c1とを用いて、(b1)/(c1)=50/50質量%となる混合物を使用した。これらの原料をそれぞれ別個の単軸押出機に投入し、設定温度230℃で溶融混練後、各層の厚みが、外層(B層)/中間層(A層)/外層(B層)=30μm/240μm/30μmとなるように3層ダイスより共押出し、30℃のキャストロールで引取り冷却固化させて厚さ300μmの積層シートを作製した。
【0056】
(実施例2)
表1に示すように、B層に(b 1)/(c2)=50/50重量%となる混合物を使用した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0057】
(実施例3)
表1に示すように、B層に(b 1)/(c3)=50/50重量%となる混合物を使用した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0058】
(実施例4)
表1に示すように、B層に(b 1)/(c1)=40/60重量%となる混合物を使用した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0059】
(実施例5)
表1に示すように、B層に(b 1)/(c 1)=60/40重量%となる混合物を使用した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0060】
(実施例6)
表1に示すように、B層を(b2)/(c1)=50/50重量%となる混合物を使用した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1)
表1に示すように、B層に(b1)/(c4)=50/50重量%となる混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0062】
(比較例2)
表1に示すように、B層に(b 1)/(c5)=50/50重量%となる混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0063】
(比較例3)
表1に示すように、B層として原料c1のみを使用した以外は、実施例1 と同様にして積層シートを作製した。得られた積層シートを評価した結果を表1に示す。
【0064】
(評価項目)
(シート透明性)
得られた積層シートの透明性評価としてJIS K7105に準拠し曇度を測定した。全ヘーズが、35%以下であるものを「○」、35%より大きいものを「×」と表記した。
【0065】
(層間剥離強度)
実施例・比較例にて得られたポリオレフィン系樹脂シートにPTP用アルミ箔(日本製箔製 アルミ厚み20μm)を重ねアルミ箔側から加熱し両材料を熱融着させた。熱融着条件としては、圧力2kgf/cm2、温度180℃、時間3秒の2回加熱とした。引張試験機を用いて、引張速度を300mm/分として、90度剥離を行った場合の最大強度を測定した。
【0066】
(成形時の熱板取られ)
PTP成型機(シー・ケー・ディー社製 FBP−M2)を用い成形テストを行い、成形温度126℃にて、熱板への取られが発生するものについて「×」とした。取られが発生しないものについて「○」とした。
【0067】
(プッシュスルー開封性)
実施例、比較例のシートサンプルをPTP成型機(シー・ケー・ディー社製 FBP−M2)にて成形し試験用包装容器を作製した。試験用包装容器に8mm□の錠剤を充填し、PTP用アルミ箔(日本製箔製 アルミ厚み20μm)を重ねアルミ箔側から加熱し両材料を熱融着させた(融着条件:圧力 2kgf/cm2、温度 180℃、時間 3秒×2回)。作業者によりプッシュスルー方式にて開封試験を行った。ポケット周りのアルミが、ポケット淵から2mm以上剥れたものを「×」、1mm以上2mm未満のものを「△」、1mm未満だったものを「○」とした。
【0068】
(イージーピール開封性)
実施例、比較例のシートサンプルをPTP成型機(シー・ケー・ディー社製 FBP−M2)にて成形し試験用包装容器を作製した。試験用包装容器にPTP用アルミ箔(日本製箔製 アルミ厚み20μm)を重ねアルミ箔側から加熱し両材料を熱融着させた(融着条件:圧力 2kgf/cm2、温度 180℃、時間 3秒×2回)。融着したアルミ箔を作業者によりイージーピール方式による開封試験を行った。試験サンプル数をn=5として、アルミ箔に破れが生じなかったものを「○」、破れが生じたものを「×」とした。
【0069】
(総合評価)
上記評価結果についての総合評価も行い、すべての評価が良好であり、実用上問題のないものを「〇」、何れか一項目でも不良となったものを「×」とした。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層と、その両側に積層された外層としてのB層とを含む積層シートであって、
前記A層は、(a)環状オレフィン系樹脂を主成分とし、
前記B層は、(b)ポリプロピレン系樹脂と、(c)ポリエチレン系樹脂とを含み、
前記(c)ポリエチレン系樹脂の密度が0.860g/cm以上0.928g/cm以下である積層シート。
【請求項2】
前記B層に含まれる(b)ポリプロピレン系樹脂と(c)ポリエチレン系樹脂との比率が、(b)/(c)=70/30〜30/70質量%である請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記(a)環状オレフィン系樹脂が環状オレフィンとエチレンとの共重合体である請求項1または2記載の積層シート。
【請求項4】
前記A層と、B層との下記層間剥離強度試験1における層間剥離強度が0.4N/mm以上1.0 N/mm以下である請求項1〜2のいずれか一項に記載の積層シート。
[層間剥離強度試験1:積層シートとアルミ箔(厚み20μm)とを重ねアルミ箔側から加熱し、融着(融着条件:圧力2kgf/cm2、温度180℃、加熱時間3秒×2回)後、前記積層シート中のA層とB層との層間剥離強度を側定する。(測定条件:引張速度 300mm/分、剥離角度90度剥離)]
【請求項5】
前記A層と前記B層とが隣接している請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項6】
樹脂シートに複数のポケットを形成した包装容器であって、前記樹脂シートが請求項1乃至5記載の積層シートである包装容器。
【請求項7】
複数のポケットを形成した包装容器とアルミ箔とを貼りあわせて得られる包装体であって前記包装容器が請求項6記載の包装容器である包装体。
【請求項8】
前記包装容器とアルミ箔とがイージーピール方式による剥離が可能なものである請求項7記載の包装体。

【公開番号】特開2010−194751(P2010−194751A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39733(P2009−39733)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】