説明

積層セラミック電子部品

【課題】本発明は積層セラミック電子部品に関する。
【解決手段】本発明は、平均厚さが0.6μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、上記セラミック本体内に形成された第1及び第2内部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品を提供する。
本発明によると、静電容量の大容量化を図るとともに、内部電極層の連結性を向上させることにより、加速寿命の延長及び信頼性に優れた大容量の積層セラミック電子部品を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性に優れた大容量の積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子製品の小型化に伴い、積層セラミック電子部品においても小型化及び大容量化が求められている。
【0003】
これにより、誘電体と内部電極の薄膜化、多層化が様々な方法で試されており、最近では誘電体層の厚さは薄く、積層数が多い積層セラミック電子部品が製造されている。
【0004】
しかし、このような大容量化を図るために誘電体層の厚さと内部電極の厚さを薄くすると、内部電極の厚さが不均一になり、内部電極が連続的に連結されず、部分的に途切れて連結性が低下する。
【0005】
また、電極の途切れによって、誘電体層の平均厚さは同一であるが、部分的に厚くなったり薄くなる部分が発生し、誘電体層が薄くなった部分で絶縁特性が低下し信頼性が低下するという問題もあった。
【0006】
一方、内部電極ペースト内に含まれた微粒の共材粉末が、焼成過程において誘電体層に移動することによって、内部電極と接触する誘電体グレイン(grain)の異常粒成長を引き起こし、積層セラミック電子部品の信頼性が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、信頼性に優れた大容量の積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、平均厚さが0.6μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、上記セラミック本体内に形成された第1及び第2内部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び上記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品を提供する。
【0009】
上記非接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.25をさらに満たすことができる。
【0010】
また、上記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径をD、上記誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径をDとしたとき、0.1<D/D<1を満たすことができる。
【0011】
また、上記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末と上記誘電体として使用されるセラミック粉末との組成は同一であることができる。
【0012】
また、上記第1又は第2内部電極の全長に対して実際に電極が形成された部分の長さの比である連結性は80%以上であることができる。
【0013】
本発明の他の実施形態は、平均厚さが0.6μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、上記セラミック本体内に形成され、電極の全長に対して実際に電極が形成された部分の長さの比である連結性が80%以上の第1及び第2内部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び上記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品を提供する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、平均厚さが0.6μm以下の複数の誘電体層が積層されたセラミック本体と、上記セラミック本体内に形成された複数の第1及び第2内部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び上記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品を提供する。
【0015】
本発明の他の実施形態は、平均厚さが0.6μm以下の複数の誘電体層が積層されたセラミック本体と、上記セラミック本体内に形成され、電極の全長に対して実際に電極が形成された部分の長さの比である連結性が80%以上の複数の第1及び第2内部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び上記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、静電容量の大容量化を図るとともに、内部電極の連結性を向上させ、誘電体グレインの平均粒径を調節することによって、加速寿命の延長及び信頼性に優れた大容量の積層セラミック電子部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のB−B'線に沿って切断した断面図、及び内部電極の連結性を示す拡大図である。
【図3】図1のB−B'線に沿って切断した断面図、及び接触誘電体グレインと非接触誘電体グレインを示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態のみに限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野において通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における構成要素の形状及びサイズなどは、より明確な説明のために誇張することもあり、図面上において同一の符号で示される構成要素は同一の構成要素である。
【0019】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを概略的に示す斜視図である。
【0021】
図2は、図1のB−B'線に沿って切断した断面図、及び内部電極の連結性を示す拡大図である。
【0022】
図3は、図1のB−B'線に沿って切断した断面図、及び接触誘電体グレインと非接触誘電体グレインを示す拡大図である。
【0023】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、平均厚さが0.6μm以下の誘電体層1を含むセラミック本体10と、上記セラミック本体10内に形成された第1及び第2内部電極21、22と、を含み、上記誘電体層1は、上記第1又は第2内部電極21、22と接触する接触誘電体グレイン、及び接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層1の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たすことができる。
【0024】
一方、本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品は、平均厚さが0.6μm以下の誘電体層1を含むセラミック本体10と、上記セラミック本体10内に形成され、連結性が80%以上の第1及び第2内部電極21、22と、を含み、上記誘電体層1は、上記第1又は第2内部電極21、22と接触する接触誘電体グレイン、及び接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層1の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たすことができる。
【0025】
本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサは、平均厚さが0.6μm以下の誘電体層1を含むセラミック本体10と、上記セラミック本体10内に形成された第1及び第2内部電極21、22と、を含むことができる。
【0026】
上記第1及び第2内部電極21、22は特に制限されないが、例えば、パラジウム(Pd)、パラジウム−銀(Pd−Ag)合金のような貴金属材料、ニッケル(Ni)、銅(Cu)のうち1種以上の物質からなる導電性ペーストを使用して形成されることができる。
【0027】
静電容量を形成するためには、外部電極3を上記セラミック本体10の外側に形成することができ、外部電極3を上記第1及び第2内部電極21、22と電気的に接続することができる。
【0028】
上記外部電極3は、内部電極と同じ材質の導電性物質からなることができるが、これに制限されず、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)等で形成することができる。
【0029】
上記外部電極3は、上記材質のメタルパウダーにガラスフリットを添加して作られた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層1の平均厚さは0.6μm以下にすることができる。
【0031】
本発明の一実施形態において、上記誘電体層1の厚さは、第1又は第2内部電極21、22の間に配置される誘電体層1の平均厚さを意味することができる。
【0032】
上記誘電体層1の平均厚さは、図2のように、セラミック本体10の長さ方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM,Scanning Eletron Microscope)でイメージをスキャンすることで測定することができる。
【0033】
例えば、図2のように、セラミック本体10の幅方向Wの中央部で切断した長さ−厚さ方向L−Tの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージから抽出された任意の誘電体層において、長さ方向Lに等間隔の30個の地点での厚さを測定することで平均値を測定することができる。
【0034】
上記等間隔の30個の地点は、第1及び第2内部電極21、22が重畳される領域を意味する容量形成部において測定されることができる。
【0035】
また、このような平均値の測定を10個以上の誘電体層に対して行い平均値を求めると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0036】
上記第1又は第2内部電極21、22の焼成後に厚さは、静電容量を形成できれば特に制限されないが、例えば、1μm以下になることができる。
【0037】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、平均厚さが0.6μm以下の誘電体層1を含むセラミック本体10と、上記セラミック本体10内に形成され、連結性が80%以上の第1及び第2内部電極21、22と、を含むことができる。
【0038】
上記内部電極の連結性とは、上記第1又は第2内部電極21、22の電極全長に対して実際に電極が形成された部分の長さと定義することができる。
【0039】
例えば、上記内部電極の連結性は図2のように、積層本体10の長さ方向Lの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンすることで測定することができる。
【0040】
より具体的には、図2のように、積層本体10の幅方向Wの中央部で切断した長さ−厚さ方向L−Tの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージから抽出された任意の内部電極において、内部電極の断面全長に対して実際に内部電極が形成された部分の全長を測定して求めることができる。
【0041】
上記内部電極の連結性の測定は、第1及び第2内部電極21、22が重畳される領域を意味する容量形成部において測定されることができる。
【0042】
また、このような内部電極の連結性の測定において、上記長さ−厚さ方向L−Tの断面の中央部の10個以上の内部電極に対して行い平均値を求めると、内部電極の連結性をさらに一般化することができる。
【0043】
具体的には、図2に示したように、第1又は第2内部電極21、22のある一地点で測定される電極全長をAとし、実際に電極が形成された部分の長さをc1、c2、c3、・・・cnとすると、上記内部電極の連結性は(c1+c2+c3+・・・+cn)/Aと表現することができる。
【0044】
図2では実際に電極が形成された部分をc1、c2、c3及びc4と表現したが、実際に電極が形成された部分の数は特に制限されない。
【0045】
また、これは内部電極の塗布比率を意味するものであり、上記任意のある一地点における内部電極の全面積に対して実際に内部電極が形成された面積の比率と定義することもできる。
【0046】
第1又は第2内部電極21、22の連結性(c1+c2+c3+c4/A)は後述する方法によって多様に具現でき、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の第1又は第2内部電極21、22の連結性(c1+c2+c3+c4/A)は80%以上である。
【0047】
また、上記第1又は第2内部電極21、22が途切れた部分4は気孔あるいはセラミックであることができる。
【0048】
第1又は第2内部電極21、22の連結性(c1+c2+c3+c4/A)を80%以上とするためには、内部電極を形成する導電性ペーストにおけるメタルパウダーの粒子サイズを変えたり、添加する有機物とセラミックの量を調節したりする方法がある。
【0049】
また、焼成工程において昇温速度と焼成雰囲気を調節して内部電極の連結性を制御することができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、上記内部電極の連結性を実現するために、内部電極を形成する導電性ペーストに添加されるセラミック粒子のサイズ及び量を調節する方法を使用することができる。
【0051】
具体的には、上記導電性ペーストに添加されるセラミックは、誘電体層に使用されるセラミックと同種の物質であり、特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末であることができる。
【0052】
上記セラミック粒子の平均粒径Diは通常のサイズであり、特に制限されないが、後述する本発明の一実施形態によって第1又は第2内部電極21、22と接触する接触誘電体グレインの平均粒径を調節するために決定されることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、第1又は第2内部電極21、22の連結性(c1+c2+c3+c4/A)を80%以上とすることで、静電容量が増加し、信頼性に優れた高容量の積層セラミックコンデンサの製造が可能になる。
【0054】
図3を参照すると、本発明の一実施形態である積層セラミック電子部品は、誘電体層1の焼成後に平均厚さtが0.6μm以下になることができる。
【0055】
また、上記誘電体層1は、上記第1又は第2内部電極21、22と接触する接触誘電体グレイン及び第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たすことができる。
【0056】
一実施例において、上記接触誘電体グレインの平均粒径Dは走査型電子顕微鏡(SEM)で抽出された誘電体層の断面写真を分析することによって測定することができる。例えば、ASTM(American Society for Testing and Materials)E112で規定する平均グレインサイズの標準測定方法を支援するグレインサイズ測定ソフトウェアを用いて誘電体層の平均グレインサイズを測定することができる。
【0057】
上記接触誘電体グレインの平均粒径Dの調節は、誘電体層1を形成するのに使用されるセラミック粉末の平均粒径、及び第1又は第2内部電極21、22を形成する導電性ペーストに添加されるセラミック粉末の平均粒径を調節することにより行うことができる。
【0058】
上記誘電体層1を形成するのに使用されるセラミック粉末の平均粒径は、特に制限されず、本発明の目的を達成するために調節することができるが、例えば、300nm以下に調節することができる。
【0059】
上記接触誘電体グレインの平均粒径Dと0.6μm以下の厚さを有する誘電体層1の平均厚さtとの比D/tが0.35以下の場合には、信頼性に優れた高容量の積層セラミックコンデンサを実現することができる。
【0060】
上記接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層の平均厚さtとの比D/tが0.35を超過すると、接触誘電体グレインの平均粒径Dが大きくなるため、積層セラミック電子部品に薄膜の誘電体層が適用される場合に信頼性が低下する恐れがある。
【0061】
また、上記非接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.25をさらに満たすことができる。
【0062】
上記非接触誘電体グレインの平均粒径Dは、誘電体の積層方向に切断し、図3に示された走査型電子顕微鏡(SEM)で抽出された誘電体層の断面写真を分析することによって測定することができる。例えば、ASTM E112で規定する平均グレインサイズの標準測定方法を支援するグレインサイズ測定ソフトウェアを用いて誘電体層の平均グレインサイズを測定することができる。
【0063】
具体的には、上記非接触誘電体グレインの平均粒径Dと0.6μm以下の厚さを有する誘電体層1の厚さtとの比D/tが0.25以下の場合には、信頼性に優れた高容量の積層セラミックコンデンサを実現することができる。
【0064】
また、上記非接触誘電体グレインの平均粒径Dも、誘電体層1を形成するのに使用されるセラミック粉末の平均粒径を調節することにより、本発明の目的に応じた調節ができる。
【0065】
上記非接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層の平均厚さtとの比D/tが0.25を超過すると、非接触誘電体グレインの平均粒径Dが大きくなるため、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の信頼性が低下する恐れがある。
【0066】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層1を形成する原料としては、十分な静電容量を得ることができるものであれば特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末であることができる。
【0067】
上記誘電体層1を形成する材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO)等のパウダーに本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤等を添加することができる。
【0068】
本発明の一実施形態によると、誘電体層1の平均厚さtが0.6μm以下であり、第1又は第2内部電極21、22の連結性(c1+c2+c3+c4+・・・cn/A)を80%以上実現し、上記接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の厚さtとの比D/tが0.35以下であり、上記非接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の厚さtとの比D/tが0.25以下を満たすことで、信頼性に優れた高容量の積層セラミックコンデンサを実現することができる。
【0069】
一方、上記内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径をD、上記誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径をDとしたとき、0.1<D/D<1を満たすことができる。
【0070】
上記範囲において、D/Dが0.1以下であると、内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径と、誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径との差が非常に大きくなるため、内部電極の焼結収縮を効率よく抑制できず、内部電極の連結性の低下により、静電容量を形成するのに問題があり、電極途切れ部の末端における電極が厚くなって内部電極間の距離が短くなり、絶縁破壊電圧が低くなるなど、信頼性の低下を招く恐れがある。
【0071】
また、D/Dが1を超過すると、誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径Dよりも内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径Dが大きくなるため、内部電極の焼結収縮を効率よく抑制できず、焼結過程において誘電体層に移動し、誘電体層の厚さが非常に厚くなり、容量形成及び信頼性に問題を招く恐れがある。
【0072】
上記内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径Dと上記誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径Dとの間に0.1<D/D<1を満たすことによって、信頼性がさらに向上した高容量の積層セラミック電子部品を実現することができる。
【0073】
また、誘電体として使用されるセラミック粉末と上記内部電極に添加されるセラミック粉末の組成は特に制限されないが、同一組成の場合、信頼性がさらに向上する効果が得られる。
【0074】
一方、本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品は、平均厚さが0.6μm以下の複数の誘電体層1が積層されたセラミック本体10と、上記セラミック本体10内に形成された複数の第1及び第2内部電極21、22と、を含み、上記誘電体層1は、上記第1又は第2内部電極21、22と接触する接触誘電体グレイン、及び接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層1の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たすことができる。
【0075】
また、本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品は、平均厚さが0.6μm以下の複数の誘電体層1が積層されたセラミック本体10と、上記セラミック本体10内に形成され、連結性が80%以上の複数の第1及び第2内部電極21、22と、を含み、上記誘電体層1は、上記第1又は第2内部電極21、22と接触する接触誘電体グレイン、及び接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、上記誘電体層1の平均厚さをt、上記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たすことができる。
【0076】
ここで、上記の実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層、第1及び第2内部電極がそれぞれ複数積層された以外は、上述した一実施形態による積層セラミック電子部品と同様であるため重複した説明は省略する。
【0077】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明が実施例によって限定されるものではない。
【0078】
本実施例は、0.6μm以下の平均厚さを有する誘電体層1を適用した積層セラミックコンデンサに対して、内部電極に投入されるチタン酸バリウムの投入率による第1又は第2内部電極21、22の連結性、及び接触誘電体グレインと非接触誘電体グレインの様々な平均粒径による信頼性の向上度合いを試すために行われた。
【0079】
本実施例による積層セラミックコンデンサの製造段階は以下の通りである。
【0080】
先ず、チタン酸バリウム(BaTiO)等のパウダーを含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥し、1.05μm及び0.95μmの厚さで製造された複数のセラミックグリーンシートを準備して誘電体層1を形成する。
【0081】
次いで、ニッケル粒子の平均粒径が0.05μm〜0.2μmで、0.1<D/D<1を満たすよう、内部電極に添加されるチタン酸バリウム粉末の平均粒径を調節し、上記チタン酸バリウム粉末の投入量をニッケル重量に合わせて5%〜10%変えながら内部電極用導電性ペーストを準備した。
【0082】
上記グリーンシート上に上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷工法で塗布して内部電極を形成した後、200層〜250層を積層して積層体を製造した。
【0083】
その後、圧着、切断して0603規格サイズのチップを製造し、上記チップをH 0.1%以下の還元雰囲気下、温度1050℃〜1200℃で焼成した。
【0084】
次いで、外部電極3、めっき等の工程を経て積層セラミックコンデンサとして製作した。
【0085】
上記積層セラミックコンデンサの試料は誘電体層1の平均厚さによって多様に製作され、それぞれの積層セラミックコンデンサの断面を観察したところ、内部電極の平均厚さは0.4μm〜0.9μm水準であり、誘電体層の平均厚さは0.5μm〜0.8μmであった。
【0086】
また、内部電極の連結性は、積層本体10の幅方向Wの中央部で切断した長さ−厚さ方向L−Tの断面の中央部の10個の内部電極に対して、容量形成部で連結性を測定した。上記内部電極の連結性を測定するために、上記10個の内部電極に対して走査型電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージから内部電極の断面全長に対して実際に内部電極が形成された部分の全長を測定した。
【0087】
下記の表1は、内部電極に投入されるチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の投入率による内部電極の連結性、誘電体層の厚さ、接触誘電体グレインの平均粒径D及び非接触誘電体グレインの平均粒径Dによる高温加速寿命を比較した表である。
【0088】
【表1】

【0089】
上記の表1を参照すると、試料1〜2は、誘電体層の平均厚さが0.6μmを超える場合であって、接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の平均厚さtとの比D/t、及び非接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の平均厚さtとの比D/tが本発明の数値範囲を超えても高温加速寿命試験で良好な結果が得られた。
【0090】
これに対し、試料3〜8は、誘電体層の平均厚さが0.6μm以下の場合であって、内部電極の連結性、接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の平均厚さtとの比D/t、及び非接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の平均厚さtとの比D/tが本発明の数値範囲を超えると高温加速寿命及び信頼性試験で問題を生じ得ることが分かる。
【0091】
つまり、後述するように、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層1の焼成後の平均厚さtが0.6μm以下であるときに高温加速寿命及び信頼性の向上に効果的であることが分かった。
【0092】
下記の表2は、誘電体層の平均厚さtが0.6μm以下である場合、内部電極に投入されるチタン酸バリウム(BaTiO)粉末の投入率による内部電極の連結性、接触誘電体グレインの平均粒径D及び非接触誘電体グレインの平均粒径Dによる高温加速寿命を比較した表である。
【0093】
【表2】


【0094】
上記の表2から分かるように、内部電極の連結性(B/A)が0.8以上と高くなるほど、加速寿命が増加し信頼性も向上する。
【0095】
また、内部電極の連結性(B/A)が0.8以上であり、接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の厚さtとの比D/tが0.35以下であると、加速寿命が増加し、信頼性も向上することが分かる。
【0096】
さらに、内部電極の連結性(B/A)が0.8以上で、接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の厚さtとの比D/tが0.35以下であり、上記非接触誘電体グレインの平均粒径Dと誘電体層1の厚さtとの比D/tが0.25以下であると、加速寿命が増加し、信頼性が向上することが分かる。
【0097】
本発明は上述した実施形態及び添付された図面により限定されるものではなく、添付された請求範囲により限定される。従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で多様な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは当技術分野の通常の知識を有した者に自明であり、これも請求範囲に記載された技術的事項に属する。
【符号の説明】
【0098】
1:誘電体層
21、22:第1及び第2内部電極
3:外部電極
4:気孔又はセラミック
A:内部電極の断面全長(又は、全面積)
c1+c2+c3+c4:内部電極が実際に形成された断面の全長(又は、塗布された面積)
:誘電体層の平均厚さ
:接触誘電体グレインの平均粒径
:非接触誘電体グレインの平均粒径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均厚さが0.6μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体内において前記誘電体層を挟んで対向配置される第1及び第2内部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び前記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、前記誘電体層の平均厚さをt、前記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記非接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.25をさらに満たす請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径をD、前記誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径をDとしたとき、0.1<D/D<1を満たす請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末と前記誘電体として使用されるセラミック粉末との組成が同一である請求項1から3のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記第1又は第2内部電極の全長に対して実際に電極が形成された部分の長さの比である連結性が80%以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
平均厚さが0.6μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体内に形成され、電極の全長に対して実際に電極が形成された部分の長さの比である連結性が80%以上の第1及び第2内部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び前記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、前記誘電体層の平均厚さをt、前記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記非接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.25をさらに満たす請求項6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径をD、前記誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径をDとしたとき、0.1<D/D<1を満たす請求項6または7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末と前記誘電体として使用されるセラミック粉末との組成が同一である請求項6から8のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
平均厚さが0.6μm以下の複数の誘電体層が積層されたセラミック本体と、
前記セラミック本体内に形成された複数の第1及び第2内部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び前記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、前記誘電体層の平均厚さをt、前記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記非接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.25をさらに満たす請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径をD、前記誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径をDとしたとき、0.1<D/D<1を満たす請求項10または11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末と前記誘電体として使用されるセラミック粉末との組成が同一である請求項10から12のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記第1又は第2内部電極の全長に対して実際に電極が形成された部分の長さの比である連結性が80%以上である請求項10から13のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項15】
平均厚さが0.6μm以下の複数の誘電体層が積層されたセラミック本体と、
前記セラミック本体内に形成され、電極の全長に対して実際に電極が形成された部分の長さの比である連結性が80%以上の複数の第1及び第2内部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記第1又は第2内部電極と接触する接触誘電体グレイン、及び前記第1及び第2内部電極のいずれとも接触しない非接触誘電体グレインで構成されており、前記誘電体層の平均厚さをt、前記接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.35を満たす積層セラミック電子部品。
【請求項16】
前記非接触誘電体グレインの平均粒径をDとしたとき、D/t≦0.25をさらに満たす請求項15に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項17】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末の平均粒径をD、前記誘電体として使用されるセラミック粉末の平均粒径をDとしたとき、0.1<D/D<1を満たす請求項15または16に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項18】
前記第1又は第2内部電極に添加されるセラミック粉末と前記誘電体として使用されるセラミック粉末との組成が同一である請求項15から17のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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