説明

積層ラベル

【課題】偽造又は剥離、再使用による偽装が困難な積層ラベルの提供。
【解決手段】複数の層で構成した積層ラベルであって、被着物に貼着する下シートは、上面に剥離層、背面に接着剤層を有し、該下シートに重ね合わされた上シートは、背面に接着剤層を有し、下シートに剥離可能に接着されており、少なくとも該上シートにはレーザー加工による脆弱部が設けられている積層ラベル。好ましくは、上シートと下シートの間に少なくとも一層の中間シートを設け、該中間シートは、レーザー加工による脆弱部を有し、上面に剥離層、背面に接着剤層を備え、該接着剤層により下層のシートに剥離可能に接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造、再使用、改ざん等の偽装行為を防止するための脆弱部を有する積層ラベル、特に層毎に剥離可能な積層ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、正規品であることを保証するために、商品に貼着するセキュリティラベルが用いられている。しかしながら、セキュリティラベルを偽造して模造品に貼付したり、正規のセキュリティ防止ラベルを剥がして再使用したりするなどの偽装行為が後を絶たない。
【0003】
このような偽装問題に対処するための技術手段としては、ラベルに透過層を設けるなどして偽造を困難とすること、剥がそうとすると形状が破壊されるラベルを用いることが知られている。前者の態様として、例えば、特許文献1には、透かし入りフィルムを用いてラベルを作製し、透かしの有無によりラベルの真贋判定を可能とする技術が開示される。しかし、通常の透かしは偽造され易い。また特殊な透かしは、その真贋を判定する専用の検知機を要し、結果的にコスト高になる。
【0004】
後者の態様として、例えば、特許文献2には、レーザー加工により脆弱化された偽装防止用の検知部を設けたラベルが開示される。また、特許文献3には、クリアラベルの透明な基材シート1には、その周縁においてレーザーにより切り抜かれたノッチとノッチの内側の一部においてレーザーにより切り抜かれた破線からなる脆弱部を設けたクリアラベルが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−311634号公報
【特許文献2】国際公開台2010/101037号パンフレット
【特許文献3】実用新案登録第3164301号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2および3に開示されるラベルによっても偽装を一定程度防止できるが、より確実に偽装を防止するためには、偽装検出手段を複数かつ多面的に設けることが好ましいと考えられる。
【0007】
本発明は、偽造又は剥離、再使用による偽装が困難な積層ラベルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成した本発明の積層ラベルは、下記の項を特徴としている。
[1]複数の層で構成した積層ラベルであって、被着物に貼着する下シートは、上面に剥離層、背面に接着剤層を有し、該下シートに重ね合わされた上シートは、背面に接着剤層を有し、下シートに剥離可能に接着されており、少なくとも該上シートにはレーザー加工による脆弱部が設けられている積層ラベル。
[2]上シートと下シートの間に少なくとも一層の中間シートを設け、該中間シートは、レーザー加工による脆弱部を有し、上面に剥離層、背面に接着剤層を備え、該接着剤層により下層のシートに剥離可能に接着されている[1]の積層ラベル。
[3]上シート及び中間シートが切り込み線により区切られた分離片を備え、分離片が被着物固有の識別情報を有する[1]又は[2]の積層ラベル。
[4]脆弱部が、分離片上の識別情報に形成されている[3]の積層ラベル。
[5]脆弱部が、閉じた描画のアンカット架橋部に形成されている[1]〜[4]のいずれかに記載の積層ラベル。
[6]下シートにはレーザー加工による脆弱部が設けられている[1]〜[5]のいずれかに記載の積層ラベル。
【0009】
本発明の積層ラベルを、別の観点から説明すると、次のとおりである。
第1態様は、複数の層で構成した積層ラベルであって、被着物に貼着する下シートは上面に剥離層、背面に接着剤層を有し、該下シートに重ね合わされた上シートは背面に接着剤層を有し、下シートに剥離可能に接着されており、少なくとも該上シートには切り込み溝により区切られた分離片を設けるとともに、該分離片にレーザー加工による脆弱部が設けられている積層ラベルである。
第2態様は、第1態様において、該上シートと該下シートの間に少なくとも一層の中間シートを設け、該中間シートは、レーザー加工による脆弱部を有し、上面に剥離層、背面に接着剤層を備え、該接着剤層により下層のシートに剥離可能に接着されており、各中間層には切り込み溝により区切られた分離片を設けるとともに、該分離片にレーザー加工による脆弱部が設けられていることを特徴とする。
第3態様は、第1または2態様において、脆弱部が、分離片上の識別情報に形成されていることを特徴とする。
第4態様は、第1〜3態様において、脆弱部が、閉じた描画のアンカット架橋部に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の積層ラベルの偽装行為判定システムは、例えば次の技術手段により構成される。
すなわち、本発明の積層ラベルの偽装行為判定システムは、入力装置を有するレーザー制御用端末と、入力装置、表示装置およびデータベースを有するラベル管理用端末と、を備え、表面に剥離層を有し、裏面に接着剤層を有する下シートと、裏面に接着剤層を有し、下シートに剥離可能に積層される上シートとを備える積層ラベルの偽装行為判定システムであって、レーザー制御用端末は、入力装置から入力された加工情報に基づき、上シートおよび下シートに、レーザー加工によりカット部を形成してなる脆弱部を指定の位置または形状で設ける手段を備え、データベース端末は、識別情報と脆弱部の位置または形状を記憶装置に関連付けてデータベースに記憶する手段と、入力装置から入力された識別情報に基づき、識別情報に対応する脆弱部の位置または形状を表示する手段とを備えることを特徴とする。前記システムにおいて、好ましくは、レーザー制御用端末が、入力装置から入力された加工情報に基づき、上シートに、レーザー加工により形成した切り込み線により分離可能な分離片を設ける手段と、入力装置から入力された加工情報に基づき、下シートに、上シートの切り込み線と重なる位置に、レーザー加工により形成したカット部および脆弱部を構成するアンカット部からなる分離線により分離可能な分離片を設ける手段とを備えるようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層ラベルによれば、下記の効果又は利点がある。
(1)本発明の積層ラベルでは、下シートのみが被着物に剥離困難に強固に接着されており、この下シートの上層を構成するシートは、より下層のシートに剥離層を介して剥離可能に接着積層されているので、ラベルを剥がそうとすると、脆弱部が破壊されてその一部がより下層に残り、ラベル全体の一体性を保持できなくなる。したがって、元のラベルを再利用して偽装することは不可能に近い。
(2)本発明の積層ラベルでは、レーザー加工による細密な脆弱部を備えているので、ラベルを偽造することは極めて困難である。
(3)本発明の積層ラベルでは、剥離した各シート、特に下シートの上層を構成するシートは、必要に応じて分離片を備え、この分離片等に被着物固有の識別情報を印刷又は刻字してあるので、被着物の流通段階あるいは末端顧客がこれらを剥がしてはがき等に添付し、製造元あるいは売主に返送するようにすれば、製造元あるいは売主は、被着物製品の流通管理、顧客管理、販促手段等として活用できる。
(4)本発明の積層ラベルは、脆弱部、特に識別情報の異同、変位を光学的、又は電磁的に検出できるので、ネットワークシステムを介して、パソコン端末、携帯端末等により容易に履歴管理、流通管理に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の典型的な積層ラベルを示す平面図である。
【図2】本発明の典型的な積層ラベルを示す断面図で、(A)は分離片切り込みを上シートを貫通する深さとした態様、(B)は分離片切り込みを下シートを貫通する深さとした態様を示す。
【図3】上シートの外枠を剥がした状態の積層ラベルの平面図である。
【図4】上シートと下シートを完全に分離し、さらに上シートの分離片を外枠から分離した状態の平面図である。
【図5】くり抜き文字の拡大図である。
【図6】下シートの背面図である。
【図7】本発明の積層ラベルの剥離層の別の態様を模式的に示す平面図で、(A)は剥離層を部分的に設けた態様、(B)は網掛け剥離層を部分的に設けた態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、レーザー加工により形成された脆弱部を有する積層ラベルに関する。この積層ラベルは、シートを複数枚積層して構成され、未使用時においては剥離紙に剥離可能に貼着されている。本発明の積層ラベルには、3層以上の多層ラベルも含まれるが、以下では上シートと下シートからなる2層ラベルの例で説明する。
【0014】
以下に例示する本発明の積層ラベルは、下シートに上シートを剥離層を介して剥離可能に積層して作製したラベル本体に、レーザー加工により脆弱部を形成して構成される。ここで脆弱部とは、レーザーによりカット又はハーフカットされた描画またはアンカット架橋部であって、下シートの剥離層に対する上シートの剥離強度より破壊強度が弱い部分を意味する。以下、「カット部」とは、ハーフカットを含むレーザーカットされた部分を言う。上シートおよび/または下シートには、製造番号等の識別情報が表示されている。この識別情報はレーザー加工により上シートにカット部を設け、くり抜き文字(以下「インラインカット文字」という場合がある)または縁取り文字(以下「アウトラインカット文字」という場合がある)により描画して形成される。上シートを貫通するカット部を設けることにより、下シートの表面が表出される。下シートに識別情報を表示しない態様においては、上シートを剥がすと上シートにカット部で表示された識別情報が視認不能となる。
【0015】
これとは逆に、下シートにもレーザー加工により識別情報を描画して形成してもよい。すなわち、上シートの識別情報と下シートの識別情報は同じ文字、記号、図形等からなり、上シートを貫通するカット部を通して下シートの識別情報を視認可能に構成してなる検知部を設ける。この検知部により、上シートの識別情報と下シートの識別情報にずれが生じている場合には、当該ラベルが剥がされて再貼着されたものであることが判別可能となる。レーザーによる下シートへの描画は上シート表面にレーザーを照射し、上シートと下シートに同時に描画をしてもよいし、上シートにカット部を設けた後、上シートのカット部を通して下シートに描画をするようにしてもよい。後者の場合、例えば図5に示すように、インラインカット文字の内周とほぼ同じ大きさの外周を有するアウトラインカット文字を組み合わせた検知部を構成することができる。
【0016】
さらに、上シートおよび下シートには、製造番号等の識別情報が表示され、各々外枠で囲まれた、分離可能な分離片を設けることが好ましい。上シートに形成された外枠または分離片に販促情報(例えば、クーポン、景品情報、応募情報等)を表示し、応募用紙や葉書等に貼付するキャンペーンラベルないしは応募券などとして利用してもよい。
下シートには上シートに隠れる態様で真贋判定情報(コバート)や広告等情報を描画または印刷し、上シートを剥離した際に管理情報や広告等情報を表示させることができる。
【0017】
識別情報を構成する文字にはレーザー加工により微細幅に形成された架橋部が設けられている。この架橋部は容易に破壊されうる脆弱部を構成し、貼着されたラベルを剥がした場合は架橋部が破壊されたことが目視でも判別可能となる。架橋部のアンカット幅は、例えば、「レーザー加工幅又は架橋部のアンカット幅 < 各シートの接着強度 < 各シートの破断強度」となるように狭小設計して脆弱化する。具体的な架橋部のアンカット幅は、表示体の種類、貼着する商品の種類、包装材料、形態、その他さまざまな要因に支配されるので一概に特定できないが400μm未満とするのが好ましく、例えば、20〜200μmの範囲内で設定される。
【0018】
このような微細幅の架橋部を形成するためには、レーザー加工は、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気中で行う必要がある。例えば、厚さ200μm以下の薄いシートに加工幅200μm以下の細密加工を短波長の9.3μm程度のレーザビームにより行う場合、レーザーの熱傷痕が残る高度の蓋然性があるためである。この際、風圧を抑制しながら不活性ガスを付与することが好ましい。
不活性ガスを用いたレーザー加工は、カット部の深さをレーザー強度を変化させて高精度に制御する場合にも有効である。すなわち、後述するグラデーション表示をする場合には、不活性ガス雰囲気中でレーザー加工を行う。
【0019】
本発明では、カット文字列のフォントサイズの上限に制限はない。カット文字列の作成に不活性雰囲気下でレーザー加工することにより、原理的には脆弱部の下限は、ラベルシ一トの材質や用途の点から、フォントサイズ換算で、2〜12ポイントが実用範囲である。文字列のフォントサイズが大きい場合には、この脆弱部をアンカット架橋部に設ければよい。
ここで、文字の打ち抜き加工において、一般に文字列の視認判読性の閾値は5ポイントとされている。5ポイント未満では視認判読は困難であるため、視認性が要求される識別情報は略5ポイント以上とし、脆弱部を設けることが好ましい
文字サイズ換算値が5ポイント未満の文字の打ち抜き加工では、その描像、特に文字まで判読することは困難であることから、逆にラベル偽装防止の意図を第三者に隠すコバートとしての利用に適している。コバートを上シートまたは下シートに描画または印刷してもよい。
【0020】
下シートの分離片と外枠は、カット部とアンカット部からなる囲み線を境界とするのが好ましい。アンカット部を脆弱化するべく、そこにミシン線やハーフカット線を形成してもよい。
【0021】
脆弱部またはアンカット部の位置や形状と識別情報を関連付け、データベースにより管理することにより偽装行為を判定することが可能である。すなわち、積層ラベルに表示されている識別情報をラベル管理用端末に入力した際にその表示装置に表示された脆弱部またはアンカット部の位置や形状と、実際の積層ラベルの脆弱部またはアンカット部の位置や形状が異なる場合には、偽装行為が行われたことを検出することができる。
一例を示すと、1000番台の管理番号(識別情報)では上シートに幅20μmの脆弱部を図5の如く上下に対向して設け、2000番台の管理番号では上シートに幅100μmの脆弱部を左右に対向して設けた場合において、1000番台の管理番号において脆弱部の位置が左右対向方向にあったり、幅が100μmであったりした場合には偽装行為がなされたと判定することが開示される。
別の態様としては、1000番台の管理番号では下シートのアンカット部を右上と左下に設け、2000番台の管理番号ではアンカット部を左上と右下に設けた場合において、1000番台の管理番号においてアンカット部の位置が左上と右下にあることが分かった場合には偽装行為がなされたと判定することが開示される。
本発明の範囲には、識別情報と脆弱部またはアンカット部の位置や形状を管理付けてなるデータベースが記憶された記憶装置およびデータベースに登録された情報に基づき偽装行為を判定する処理部を具備するラベル管理用端末と、ラベルを加工するためのレーザー装置を制御するレーザー制御用端末と、を備えた偽装行為判定システムも含まれる。
【0022】
上シートと下シートの色は異なる色とすることが好ましく、例えば、上シートの色を下シートと比べ明度を低くすると、上シートのカット部を通して見える下シートの識別情報の視認性が向上する。この場合、カット部の深さは上シートを貫通し、下シートの表面を削らない程度するか、下シートの削られた表面の明度が上シートと比べ高くなるようにするのが好ましい。
また、カット部の深さを階段状に可変させ、上シートまたは下シートに表示する情報をグラデーション表示としてもよい。すなわち、異なる色層を有するシートのカット部の深さを左右対称な階段状に可変させることにより、紙(シート)に形成した情報を異なる色で縁取り表示されるようにしてもよい。このような描画態様は偽造防止模様となるだけでなく、下シートの識別情報が強調表示され視覚的にも美しく、また印刷ではなくカット部であることを視認判別することも可能となる。さらには、グラデーション表示の色調変化を画像処理することにより、ラベル製造段階におけるエラー製品の検出も容易となる。
【0023】
上シートおよび下シートは、レーザー加工可能であればその材質に制限は無く、パルプ紙、合成紙、各種プラスチックフィルム、各種の化学処理や塗工処理された合成樹脂フィルムシートを用いることができる。どのような素材を用いるかは、その用途に応じて、加工性、耐薬品性、耐久性、取扱性、汎用性等の観点から、最適なものを選択する。合成紙としては、例えば、ユポ(登録商標)を用いることができる。合成樹脂フィルムシート素材としては、塩素含有素材を除くほとんどの素材を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、フッ化炭素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ポリイミド、ポリアミド等のフィルムシートを用いることができる。また、これらのフィルムに、トップコートとして、金属を含む特殊な着色あるいは保護コートを付与したもの、あるいは柔軟で弾性のある被覆層、例えばフレキソ印刷用被覆があってもよい。これらの素材では、レーザー加工をトップコートやフレキソ被覆層に止めたレーザーマーク加工を適用することができる。
【0024】
上シートの厚さは、レーザー加工性から、例えば20〜500μmの範囲から適宜選択することができるが、加工の容易性観点からは80〜300μmの範囲が好ましい。上シートの裏面には、糊剤(例えば、アクリル系接着剤、澱粉糊、ラテックス)を塗布してなる接着剤層が設けられている。
【0025】
下シートは上シートと比べ脆弱な素材、具体的には破断点荷重及び破断伸度に劣る素材を用いることが好ましい。下シートの裏面には、糊剤(例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤)を塗布してなる接着剤層が設けられている。
【0026】
剥離紙は、一般的には基材となる紙と、接着剤層に接触する剥離層と、剥離剤が基剤に浸透するのを防止する目止め層からなる。基材には、用途により半晒紙、上質紙、グラシン紙などを用いる。目止め層にはポリエチレン系が多く用いられ、厚みは数〜数十μmである。浸透性の低いグラシン紙などの基材については、目止め層がなくてもよい。また浸透性の高い基材では、目止め層をクレーコート剤やポリビニルアルコールなどで被覆する。剥離層には離形剤として知られるシリコーン樹脂を使用することが一般的である。接着強度が素材シートの形状と相まって破壊を引き起こす程度の強度のものを用いる。本発明の積層ラベルでは、貼って剥がしやすい接着剤を使った場合でも、脆弱部を備えているので、再使用防止できる。接着剤の選択は、積層ラベルが利用される目的、態様、環境等に応じて適宜選択する。
【0027】
本発明におけるラベルのレーザー加工手順の一例について説明する。
レーザーカット文字列の作成に用いる文字フォントに特に制限はない。パソコン等で読み込み可能な任意のフォント、あるいは必要に応じて記号、図形等の描像の組み合わせでもよい。
第1ステップとして、文字列に必要なフォントをフォント加工用パソコンのグラフィックソフトに読み込み、フォントの輪郭で囲まれた島部が打ち抜きより脱落しないように、図5に示すようにフォントの文字幅の一部を消しゴム機能により消去し、アンカット架橋部16に相当する部分を形成する。
第2ステップとして、フォントの輪郭を抽出し、得られた加工フォントをレーザー制御用パソコンに転送する。
第3ステップとして、レーザーによりフォントの文字構成部(袋地)を打ち抜いてインラインカット文字を作成したり、フォントの文字構成部から抽出された輪郭のみをカットしてアウトライン文字を作成したりする。この時、ラベルシートのレーザー光照射側にレーザーによる熱変性が生じ膨出痕が残ったり、レーザー照射によりラベルシートの飛散破片が、その照射側表面に付着し、汚染したりすることもある。そこで、これらを防止すべく、ラベルシートの照射面に水又は界面活性剤の希釈液、あるいは澱粉糊液を塗布しておき、レーザー加工後に洗浄することもできる。界面活性剤の希釈には水の使用が好適で、希釈濃度は10%程度でよい。
【0028】
第4ステップとして、レーザー制御用パソコンにより、レーザー照射装置の照射条件を設定する。主なレーザー照射条件は、例えば炭酸ガスレーザの場合、出カパワー、画素濃度、集光サイズ、焦点距離、焦点深度などである。本発明のインラインカット文字のレーザー加工においては、ラベルシートの材質、カット文字及び架橋部のサイズ等により異なるが、実用的にはレーザー出力20〜50W、画素濃度250〜600ppi、集光サイズ25〜50μm、焦点距離37.5〜50mm、焦点深度760μm程度が好適である。設定が終わると、設定値に基づきレーザビームを照射し、加工フォントのアウトラインにそって、ラベルシートからインラインカット文字列を打ち抜く。
【0029】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例に係る積層ラベル1は、飲料用瓶を密封するためのスクリューキャップの天面(上面)に貼着されるものである。この積層ラベル1は、上シート10と下シート20を積層して構成され、未使用時においては剥離紙30に剥離可能に貼着されている(図2参照)。上シート10は外枠11と分離片12とから構成されており、上シート10と積層される下シート20も同様に、外枠21と分離片22とから構成される(図4参照)。
【0031】
実施例に係る積層ラベル1は、図2に示す構造を有している。
上シート10は、トップコート101と、上シート本体層102と、接着剤層103とから構成され、図2に示す上シート剥離位置で剥離可能である。トップコート101は、例えばPETフィルムである。上シート本体層102は、乳白PETにより形成され、約50μmの厚さである。PETを用いたのはPP(ポリプロピレン)と比べ耐熱性に優れるからである。接着剤層103は、アクリル系接着剤により形成され、約20μmの厚さである。
下シート20は、下シート分離層201と、下シート本体層202と、下シート接着剤層203とから構成され、図2に示す下シート剥離位置で剥離可能である。下シート分離層201は、シリコーンにより形成された剥離層であり、約4〜6μmの厚さである。下シート本体層202は、ユポ(登録商標)のラベルシートにより形成され、約80μmの厚さである。下シート接着剤層203は、約20μmの厚さである。
剥離紙30は、グラシン紙にシリコーンをコーティングしたものであり、約65μmの厚さである。
【0032】
図1は、未使用時ないし貼付時の積層ラベル1を示している。この状態では、上シート10と、くり抜き文字13を通して下シート20の縁取り文字23が視認可能である。切り込み線2に囲まれた分離片12には、商品名と製造番号が表示されている。商品名は予め印刷されており、製造番号はくり抜き文字13で表示している。
切り込み線2は、上シート10を貫通する切り込み枠である。切り込み線2を略方形状の枠とするのではなく、小片を分離する直線ないし曲線からなるものとしてもよい。また、上シート10の裏面に設けられた接着剤層103は、下シート20の裏面に設けられた接着剤層203と比べ相対的に接着力が弱く構成されている。これにより、外枠11と分離片12のそれぞれを微弱な力で分離することを可能としている。
上シート10の下シート20に対する接着力は、下シート20の被着物に対する接着力と比べ弱くなるように構成することが好ましい。上シート10と下シート20の各接着力は、用いる接着剤の種類を変えて調整してもよいし、架橋型接着剤を用いる場合は架橋密度を変えて調整してもよいし、剥離層の形状により調整してもよい。剥離層の形状による場合、最も接着強度が強いのは、下シート20に下シート分離層201を設けない態様である。次に接着強度が強いのは、図7Aに示すように、下シート分離層201の中央部分(外縁部分でもよい)に剥離層を設ける態様である。この際、図7Bに示すように、下シート分離層201を網掛け状ないしドット状に形成することにより、接着強度を調整してもよい。同様に、接着剤層を一部に設けたり、網掛け状ないしドット状に形成したりするようにしてもよい。
【0033】
図3に示すように、上シート10の外枠11を下シート20から分離すると、下シート20の外枠21が露出し、下シート本体層202に印刷された「SECURITY」の文字が顕出される。本実施例では設けていないが、下シート20の外枠22にコバートを設けてもよい。上シート10外枠11の分離は微弱な力で行うことができるため、積層ラベル1を再使用等の目的で剥がした場合には、外枠11が先に剥がれ、積層ラベルの形状が崩れ、再貼付の際には上シート10と下シート20の位置がずれるように作用する。なお、分離した外枠11、分離片12、外枠21若しくは分離片22またはそれらの組み合わせをキャンペーン応募用紙に貼付する用途に用いる運用としてもよい。
【0034】
図4は、上シート10と下シート20を完全に分離し、さらに分離片12を外枠11から分離した状態を示している。なお、図4では、後述のアンカット部4を図示省略している。分離片12に形成されたくり抜き文字13は、文字の輪郭部分を残して内側をくり抜いた文字である。くり抜き文字13は、例えばコンピュータで使用可能な抜き文字を構成する文字カット部15をレーザーによる焼き抜きで作成する。この場合、くり抜き文字13の線部分を全て焼き抜くと、島部14が脱落するため、上シート10と島部を繋ぐアンカット架橋部16を形成する(図5参照)。くり抜き文字13の深さは、上シート10を貫通する深さである(図2参照)。従って、くり抜き文字13を通して、下シート20の表面が視認可能である。
【0035】
下シート20の分離片22に形成された縁取り文字23は、文字の輪郭(外周)をくり抜いて縁取りした文字である。縁取り文字23は、レーザーにより上シート10を貫通し、下シート20を貫通しないカット部を形成して描画する。縁取り文字23はくり抜き文字13と同じ文字であり、同様に島部の脱落を防止する架橋部が設けられている。縁取り文字23の大きさは、くり抜き文字13の貫通孔から、縁取り文字23の全部が視認できる大きさとする。具体的には、図5の点線部分が、くり抜き文字13を通して見える縁取り文字23の縁取りとなる。このくり抜き文字13を通して視認される縁取り文字23の描画は難しいため、偽造防止模様となる。下シート20は上シート10と比べ明度が高く、文字カット部15の段差もあるため、下シート20の縁取り文字23は強調して表示される。
【0036】
縁取り文字23に設けた架橋部は、目的物に貼付した積層ラベル1を剥離する際に破壊される脆弱部を構成する。このため、架橋部を幅狭に形成することが好ましく、さらに架橋部を脆弱化するべく、架橋部にミシン線やハーフカット線を形成してもよい。極細の架橋部を形成するために、不活性ガス雰囲気中でレーザー微細加工を行っている。
【0037】
図6に示すように、下シート20には、分離片22を囲む貫通する切り込み線カット部3と切り込み線アンカット部4が設けられている。カット部3とアンカット部4からなる分離線は切り込み線2と重なる位置に形成される。すなわち、カット部3と切り込み線2の位置関係は図2Bの符号301のようになり、アンカット部4と切り込み線2の位置関係は図2Aの符号401のようになる。なお、図6では、カット部3とアンカット部4を、説明の便宜上強調して表示している。アンカット部4は、複数箇所設けることが好ましい。図6では、アンカット部4を点対称または線対称となる位置に設けているが、これに限定されない。アンカット部は任意の位置に形成することができ、シリアル番号等の管理番号と関連付けたデータベースで管理することにより、アンカット部の位置と管理番号の対応による真贋判定も可能となる。
【0038】
下シート20の裏面には接着剤層203が形成されており、未使用時には剥離紙30に貼着されている。下シート20を剥離紙30から剥がし、下シート20の裏面を被着体に当接させることにより積層ラベル1は貼着される。下シート20の接着剤層203は、上シート10の接着剤層103よりも充分に強力な接着剤で構成されている。そのため、特別の意図を持たずに積層ラベル1を被着体から剥がそうとすると、図3に示す如く下シート20から上シート10のみが剥離されることとなる。積層ラベル1を下シート20から剥がすためには、カミソリ等の器具を用いることが必要となるが、器具を用いた場合には、接着剤層203の接着力と相まって脆弱なアンカット部4が破壊されることとなる。すなわち、出荷者は、下シート20のアンカット部4が残っているかどうかにより、当該ラベルが再貼着されたものであるかを判別することが可能である。
【0039】
[上シートの試験]
レーザー加工による10ポイントのくり抜き文字13を、架橋部幅を20μm、100μm、200μm、400μm、500μmの5種類を各20枚作成し、うち各10枚で貼り替え、残り各10枚で貼り替えずに倍率20倍の立体顕微鏡で観察したところ、20〜400μmでは形状崩れの有無により良好な判定結果を得ることができた。
【0040】
[下シートの試験]
レーザー加工によるアンカット部4の幅を20μm、100μm、200μm、400μm、500μmの5種類を各20枚作成し、うち各10枚で貼り替え、残り各10枚で貼り替えずに倍率20倍の立体顕微鏡で観察したところ、20〜400μmではアンカット部4の破壊の有無により良好な判定結果を得ることができた。
【0041】
以上に説明した本実施例の積層ラベルによれば、分離片に形成された文字のずれの有無によるチェック、脆弱部の破損の有無によるチェックにより偽装行為を容易に検出することが可能である。また、本実施例の積層ラベルは、レーザーによる微細加工により、くり抜き文字と縁取り文字を重ねて形成しているため、偽造ラベルを作製することが極めて困難である。
なお、本実施例ではスクリューキャップの天面に貼付したが貼付態様はこれに限定されず、例えばキャップと容器の継ぎ目に貼付するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の積層ラベルは、飲食物や化粧料の容器を含め、種々の製品、商品、部品のセキュリティラベルとして広く利用可能である。例えば、飲料、化粧料のボトルや蓋部材(王冠、スクリューキャップ、マキシキャップ等)に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 積層ラベル
2 切り込み線
3 切り込み線カット部
4 切り込み線アンカット部
10 上シート
11 上シートの外枠
12 上シートの分離片
13 くり抜き文字(インラインカット文字)
14 島部
15 文字カット部
16 アンカット架橋部
20 下シート
21 下シートの外枠
22 下シートの分離片
23 縁取り文字(アウトラインカット文字)
30 剥離紙
101 トップコート
102 上シート本体層
103 上シート接着剤層
201 下シート分離層
202 下シート本体層
203 下シート接着剤層
301 分離片切り込みカット部
401 分離片切り込みアンカット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層で構成した積層ラベルであって、
被着物に貼着する下シートは、上面に剥離層、背面に接着剤層を有し、
該下シートに重ね合わされた上シートは、背面に接着剤層を有し、下シートに剥離可能に接着されており、
少なくとも該上シートにはレーザー加工による脆弱部が設けられている積層ラベル。
【請求項2】
上シートと下シートの間に少なくとも一層の中間シートを設け、該中間シートは、レーザー加工による脆弱部を有し、上面に剥離層、背面に接着剤層を備え、該接着剤層により下層のシートに剥離可能に接着されている請求項1の積層ラベル。
【請求項3】
上シート及び中間シートが切り込み線により区切られた分離片を備え、分離片が被着物固有の識別情報を有する請求項1又は2の積層ラベル。
【請求項4】
脆弱部が、分離片上の識別情報に形成されている請求項3の積層ラベル。
【請求項5】
脆弱部が、閉じた描画のアンカット架橋部に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の積層ラベル。
【請求項6】
下シートにはレーザー加工による脆弱部が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の積層ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−203022(P2012−203022A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64579(P2011−64579)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(510183774)株式会社ラクテル (1)
【出願人】(000177508)三和酒類株式会社 (11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(591186888)株式会社トッパンTDKレーベル (46)