積層体およびその製造方法
【課題】 目ずれを起こさず取り扱いが容易な積層体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の積層体1は、複数の炭素繊維開繊織物からなる繊維層2と、マトリックス樹脂となる樹脂で構成されたフィルムまたは不織布などの樹脂層3とが交互に積層される。繊維層2と樹脂層3とは、樹脂層3の一部を溶融し、溶融した樹脂によって積層方向に部分的に接着している。溶融する樹脂層3の一部は図1(b)の平面図に示すように、平面方向に所定のパターン形状で配置した複数の微小スポット2aからなる。
【解決手段】 本発明の積層体1は、複数の炭素繊維開繊織物からなる繊維層2と、マトリックス樹脂となる樹脂で構成されたフィルムまたは不織布などの樹脂層3とが交互に積層される。繊維層2と樹脂層3とは、樹脂層3の一部を溶融し、溶融した樹脂によって積層方向に部分的に接着している。溶融する樹脂層3の一部は図1(b)の平面図に示すように、平面方向に所定のパターン形状で配置した複数の微小スポット2aからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体およびその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
工業用に主に用いられる樹脂成型物は、軽量ではあるが、弾性率が低く構造用材料としては適していない。そこで、ガラスファイバのように弾性率の高い強化材と樹脂との複合材料として、軽量で強度の高い繊維強化樹脂材料が開発されている。
【0003】
ガラスファイバを強化材として用いたものは、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)とも呼ばれ、実現されているが、更なる高強度化を実現するために炭素繊維を強化材として用いたCFRP(Carbons Fiber Reinforced Plastics)が開発されている。
【0004】
特許文献1記載の繊維強化樹脂材料は、炭素繊維のチョップドストランドを、ウレタン系樹脂などの熱可塑性マトリックス樹脂に混入させて成型することで、繊維強化樹脂材料を得ている。
【0005】
特許文献2記載の繊維強化樹脂材料は、炭素繊維表面に硫酸アンモニウムなどの電解質化合物を5〜100ppm付着させて、熱可塑性のマトリックス樹脂に混入させて、射出成型用のペレットを得ている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−197230号公報
【特許文献2】特開2002−212876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらなる機械特性の向上を実現するために、炭素繊維織物を強化材として用いることが考えられるが、炭素繊維織物に樹脂を含浸させることが非常に困難である。
【0008】
また、炭素繊維開繊織物を強化材として用いる場合は、炭素繊維開繊織物を複数層重ね合わせた積層体を予め形成することが必要であるが、積層する際に炭素繊維開繊織物の目ずれが起こってしまい、積層体自体の取り扱いが非常に困難である。
【0009】
本発明の目的は、目ずれを起こさず取り扱いが容易な積層体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体であって、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分が積層方向に接着されていることを特徴とする積層体である。
【0011】
また本発明は、前記樹脂層の一部分は、所定の形状を有する微小スポットであり、この微小スポットが所定のパターンで平面方向にわたって分布していることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記炭素繊維開繊織物は、目付けが30〜600g/m2であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを重ね合わせ、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分を積層方向に接着することを特徴とする積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体である。超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分が溶融されており、この溶融部分において、各層が積層方向に接着されている。
【0015】
超音波溶融加工によって熱可塑性樹脂の一部分を溶融させることで、積層方向に接着する部分を局所的に形成することができる。
これにより、目ずれを起こさず取り扱いが容易な積層体を実現することができる。
【0016】
また本発明によれば、前記樹脂層の一部分は、所定の形状を有する微小スポットであり、この微小スポットが所定のパターンで平面方向にわたって分布している。
【0017】
これにより、積層体の層構成などに応じて最適な接着部分が形成された積層体を実現することができる。
【0018】
また本発明によれば、目付けが30〜600g/m2の炭素繊維開繊織物を繊維層として用いることができる。
【0019】
また本発明によれば、まず、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを重ね合わせ、次に、超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分を積層方向に接着する。
【0020】
超音波溶融加工によって熱可塑性樹脂の一部分を溶融させることで、積層方向に接着する部分を局所的に形成することができる。
これにより、目ずれを起こさず取り扱いが容易な積層体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態である積層体1の構成を示す図である。図1(a)は積層体1の断面図であり、図1(b)は積層体1の平面図である。
【0022】
積装体1は、複数の炭素繊維開繊織物からなる繊維層2と、マトリックス樹脂となる樹脂で構成されたフィルムまたは不織布などの樹脂層3とが交互に積層されたものである。
【0023】
なお、本実施形態では、樹脂層3が3層、繊維層2が2層からなる全5層の積層体1について説明するが、積層体1の全総数、樹脂層3の数、繊維層2の数はこれに限らず、繊維体積含有率Vfなどが所望の値、たとえば50〜60%となるように適宜設定することができる。
【0024】
繊維層2と樹脂層3とは、樹脂層3の一部を溶融し、溶融した樹脂によって積層方向に部分的に接着している。ここで、溶融する樹脂層3の一部は図1(b)の平面図に示すように、平面方向に所定のパターン形状で配置した複数の微小スポット2aからなる。
【0025】
微小スポット2aは、超音波溶融加工によって形成される接着部分である。超音波溶融加工によって樹脂層3の熱可塑性樹脂の微小スポットに相当する部分を溶融させることで、積層方向に接着する部分を局所的に形成することができる。さらに、微小スポット2aのような局所的な接着部分を平面方向に分布させることで積層体1全体にわたって積層方向に接着固定することが可能となる。
【0026】
微小スポット2aの大きさおよび隣接する微小スポット同士の間隔を所定の値に設定するとともに、微小スポット2aの平面方向の分布パターンを設定することによって、積層方向に十分な接着強度を実現することが可能となる。
【0027】
微小スポット2aの形状としては、たとえば、真円形状、楕円形状、矩形状などが挙げられる。微小スポット2aの大きさは、真円形状の場合、直径は1〜5mmが好ましく、楕円形状の場合、長径は1〜50mm、短径は0.5〜10mmが好ましく、矩形状の場合、長辺は1〜50mm、短辺は0.5〜10mmが好ましい。
隣接する微小スポット2a同士の間隔は、たとえば0〜50mmが好ましい。
【0028】
微小スポット2aの平面方向の分布パターンは、主に3つのパターンからなる。
第1のパターンは、複数の微小スポット2aを直線または曲線配列し、さらに、この微小スポット配列を複数列設けるパターンであり、第2のパターンは、図2の平面図に示すように、全面にわたって一様に分布させるパターンであり、第3のパターンは、図3の平面図に示すように、複数の微小スポットによって形成された形状パターン、図3では、たとえば木の葉のような形状パターンを、全面にわたって複数個配置するパターンである。
【0029】
以下では各パターンについて、説明する。
(第1のパターン)
第1のパターンの典型的な例は、前述したように図1(b)に示すパターンである。
【0030】
図1(b)に示すパターンは、微小スポット2aの直線配列を格子状に配置したパターンである。微小スポット2aの形状は、楕円形状で、長径が2mm、短径が1mmであり、直線配列中の隣接スポット間隔は2mmである。また、格子点のピッチは25mmとしている。
【0031】
このような格子状配置の場合、微小スポット2aの大きさや、格子点のピッチを変えることで種々のパターンを実現することができる。
【0032】
たとえば、微小スポット2aを真円形状(直径1.5mm)とし、格子点ピッチを55mmとするパターンなども使用することができる。
【0033】
図4〜9は、微小スポットの第1のパターンの他の例を示す図である。
図4に示すパターンは、微小スポット2aの直線配列を等間隔で平行に配置したパターンである。
【0034】
図5に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を等間隔で平行に配置したパターンである。また、隣接する2つの波線同士は、周期を1/2ずらした波線を交互に配置している。
【0035】
図6に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を平行に配置したパターンである。3本の波線を重ね合わせた配列を1グループとして、複数のグループを50mm間隔で配置している。3本の波線を重ね合わせたグループ内では、3本のうち2本は、同じ周期で、波線間の間隔が5mmとなるように横方向に間隔を空けて配置し、残りの1本は周期をずらして、他の2本の波線と交差するように配置している。
【0036】
図7に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を平行に配置するとともに、配列方向を3つの異なる方向とすることで、3本の波線が特定箇所で交差するように配置したパターンである。交差点間のピッチは、たとえば66mmとなるように配置している。
【0037】
図8に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を平行に配置したパターンである。2本の波線を1グループとし、複数のグループを41.25mm間隔で配置している。グループ内の2本の波線は周期が同じであるが振幅が異なるので、周期に応じて2本の波線が交差するように配置されている。
【0038】
図9に示すパターンは、微小スポット2aの直線配列を格子状に配置し、各格子点において円形配置としたパターンである。格子点のピッチは46.67mmとしている。
【0039】
図10は、第2のパターンの他の例を示す図である。
図10に示すパターンは、図2に示したパターンとは、微小スポット2pの大きさおよび配置間隔が異なっている。
【0040】
図11〜15は、第3のパターンの他の例を示す図である。
図11に示すパターンは、4つの半円が互いに外側に凸となるように組み合わせた形状パターンを、縦横方向に互いに接するように配置したパターンである。
【0041】
図12に示すパターンは、正六角形の形状パターンを、各辺で隣接するように配置したパターンである。正六角形の一辺は、20.2mmとしている。
【0042】
図13に示すパターンは、いわゆるジグソーパズルのような形状パターンを全面に配置したパターンである。
【0043】
図14に示すパターンは、向かい合う1周期分の波線2本と、向かい合う半周期分の波線2本とで囲まれた略矩形状の形状パターンを全面に配置したパターンである。
【0044】
図15に示すパターンは、いわゆる鳥の羽に似た形状パターンを全面に配置したパターンである。
【0045】
上記に示したパターンは、微小スポット2aの配置を示すパターン例であり、図示したパターンに限定されるものではない。
【0046】
また、上記のようなパターンに配置した微小スポット2aは、既存の超音波溶融加工装置、たとえばEVER GREEN ULTRASONIC社製、商品名EGQ-8830などを用いて加工することが可能である。本装置は、エンボス加工用の装置であり、加工ローラ表面のパターンを、未接着状態の積層体の樹脂層表面に転写することで積層方向に接着固定された積層体が得られる。
【0047】
次に繊維層2および樹脂層3について説明する。
繊維層2は、炭素繊維開繊織物からなる。炭素繊維開繊織物は、既存の開繊した炭素繊維を使用することができるが、たとえば、繊維径3〜10μmが好ましい。
【0048】
繊維層2の目付けは、積層体1に所望の特性に応じて選択可能であり、たとえば、30〜600g/m2であることが好ましい。
繊維層2の厚みは、積層体1に所望の特性に応じて選択可能であり、たとえば15〜350μmであることが好ましい。
【0049】
樹脂層3は、マトリックス樹脂となる樹脂で構成されたフィルムまたは不織布からなる。本発明の積層体に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好適に用いられ、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート,ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられ、特にポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレンが好ましい。
【0050】
樹脂層3の厚みは、積層体1に所望の特性に応じて選択可能であり、
たとえば15〜350μmであることが好ましい。
【0051】
フィルムを用いた場合は、取り扱いがより容易であり、不織布を用いた場合は、厚みがより薄いものを実現することができる。
【0052】
なお、本発明の積層体は、積層体そのものを各種工業用の構造体として使用することも可能であるが、積層体を任意の形状に加工した後、プレス成形などによって、樹脂層3を溶融して炭素繊維強化樹脂とすることが好ましい。
【0053】
積層体1は、微小スポット部分で溶融接着されているので、繊維層の目ずれなどが発生せず、形状加工に際して取り扱いが容易となる。
【0054】
(実施例)
本発明の積層体1を以下のような条件で作製した。
・実施例1
繊維層2には、1層当たり目付けが70g/m2、厚みが38μmの炭素繊維開繊織物を用いた。
【0055】
樹脂層3には、樹脂融点が110度、1層当たりの厚みが30μmのポリエチレンフィルムを用いた。
【0056】
層構成は、繊維層2を4層、樹脂層3を5層とし、樹脂層3が積層方向の最外層となるように交互に積層した。
【0057】
超音波溶融加工は、前述の加工装置を用いて、各層の送り速度を3.0m/min、ホーン圧を2.0kg/cm2、隙間を0.04mmとし、図1(a)に示した第1のパターンである格子状パターンとした。
【0058】
・実施例2
繊維層2には、1層当たり目付けが200g/m2、厚みが115μmの炭素繊維開繊織物を用いた。
【0059】
樹脂層3には、樹脂融点が240度、1層当たりの厚みが100μmのポリカーボネートフィルムを用いた。
【0060】
層構成は、繊維層2を4層、樹脂層3を5層とし、樹脂層3が積層方向の最外層となるように交互に積層した。
【0061】
超音波溶融加工は、前述の加工装置を用いて、各層の送り速度を3.0m/min、ホーン圧を3.0kg/cm2とし、図1(a)に示した第1のパターンである格子状パターンとした。
【0062】
・実施例3
繊維層2には、1層当たり目付けが70g/m2、厚みが38μmの炭素繊維開繊織物を用いた。
【0063】
樹脂層3には、樹脂融点が162度、1層当たりの厚みが20μmのポリプロピレン不織布を用いた。
【0064】
層構成は、繊維層2を4層、樹脂層3を5層とし、樹脂層3が積層方向の最外層となるように交互に積層した。
【0065】
超音波溶融加工は、前述の加工装置を用いて、各層の送り速度を3.0m/min、ホーン圧を3.0kg/cm2とし、図1(a)に示した第1のパターンである格子状パターンとした。
【0066】
いずれの実施例においても、積層方向に十分な強度で接着され、繊維層の目ずれも発生しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の一形態である積層体1の構成を示す図である。
【図2】微小スポットの分布の第2のパターンを示す積層体1の平面図である。
【図3】微小スポットの分布の第3のパターンを示す積層体1の平面図である。
【図4】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図5】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図6】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図7】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図8】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図9】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図10】第2のパターンの他の例を示す図である。
【図11】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図12】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図13】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図14】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図15】第3のパターンの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 積層体
2 繊維層
2a 微小スポット
3 樹脂層
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体およびその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
工業用に主に用いられる樹脂成型物は、軽量ではあるが、弾性率が低く構造用材料としては適していない。そこで、ガラスファイバのように弾性率の高い強化材と樹脂との複合材料として、軽量で強度の高い繊維強化樹脂材料が開発されている。
【0003】
ガラスファイバを強化材として用いたものは、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)とも呼ばれ、実現されているが、更なる高強度化を実現するために炭素繊維を強化材として用いたCFRP(Carbons Fiber Reinforced Plastics)が開発されている。
【0004】
特許文献1記載の繊維強化樹脂材料は、炭素繊維のチョップドストランドを、ウレタン系樹脂などの熱可塑性マトリックス樹脂に混入させて成型することで、繊維強化樹脂材料を得ている。
【0005】
特許文献2記載の繊維強化樹脂材料は、炭素繊維表面に硫酸アンモニウムなどの電解質化合物を5〜100ppm付着させて、熱可塑性のマトリックス樹脂に混入させて、射出成型用のペレットを得ている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−197230号公報
【特許文献2】特開2002−212876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらなる機械特性の向上を実現するために、炭素繊維織物を強化材として用いることが考えられるが、炭素繊維織物に樹脂を含浸させることが非常に困難である。
【0008】
また、炭素繊維開繊織物を強化材として用いる場合は、炭素繊維開繊織物を複数層重ね合わせた積層体を予め形成することが必要であるが、積層する際に炭素繊維開繊織物の目ずれが起こってしまい、積層体自体の取り扱いが非常に困難である。
【0009】
本発明の目的は、目ずれを起こさず取り扱いが容易な積層体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体であって、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分が積層方向に接着されていることを特徴とする積層体である。
【0011】
また本発明は、前記樹脂層の一部分は、所定の形状を有する微小スポットであり、この微小スポットが所定のパターンで平面方向にわたって分布していることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記炭素繊維開繊織物は、目付けが30〜600g/m2であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを重ね合わせ、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分を積層方向に接着することを特徴とする積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体である。超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分が溶融されており、この溶融部分において、各層が積層方向に接着されている。
【0015】
超音波溶融加工によって熱可塑性樹脂の一部分を溶融させることで、積層方向に接着する部分を局所的に形成することができる。
これにより、目ずれを起こさず取り扱いが容易な積層体を実現することができる。
【0016】
また本発明によれば、前記樹脂層の一部分は、所定の形状を有する微小スポットであり、この微小スポットが所定のパターンで平面方向にわたって分布している。
【0017】
これにより、積層体の層構成などに応じて最適な接着部分が形成された積層体を実現することができる。
【0018】
また本発明によれば、目付けが30〜600g/m2の炭素繊維開繊織物を繊維層として用いることができる。
【0019】
また本発明によれば、まず、炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを重ね合わせ、次に、超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分を積層方向に接着する。
【0020】
超音波溶融加工によって熱可塑性樹脂の一部分を溶融させることで、積層方向に接着する部分を局所的に形成することができる。
これにより、目ずれを起こさず取り扱いが容易な積層体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態である積層体1の構成を示す図である。図1(a)は積層体1の断面図であり、図1(b)は積層体1の平面図である。
【0022】
積装体1は、複数の炭素繊維開繊織物からなる繊維層2と、マトリックス樹脂となる樹脂で構成されたフィルムまたは不織布などの樹脂層3とが交互に積層されたものである。
【0023】
なお、本実施形態では、樹脂層3が3層、繊維層2が2層からなる全5層の積層体1について説明するが、積層体1の全総数、樹脂層3の数、繊維層2の数はこれに限らず、繊維体積含有率Vfなどが所望の値、たとえば50〜60%となるように適宜設定することができる。
【0024】
繊維層2と樹脂層3とは、樹脂層3の一部を溶融し、溶融した樹脂によって積層方向に部分的に接着している。ここで、溶融する樹脂層3の一部は図1(b)の平面図に示すように、平面方向に所定のパターン形状で配置した複数の微小スポット2aからなる。
【0025】
微小スポット2aは、超音波溶融加工によって形成される接着部分である。超音波溶融加工によって樹脂層3の熱可塑性樹脂の微小スポットに相当する部分を溶融させることで、積層方向に接着する部分を局所的に形成することができる。さらに、微小スポット2aのような局所的な接着部分を平面方向に分布させることで積層体1全体にわたって積層方向に接着固定することが可能となる。
【0026】
微小スポット2aの大きさおよび隣接する微小スポット同士の間隔を所定の値に設定するとともに、微小スポット2aの平面方向の分布パターンを設定することによって、積層方向に十分な接着強度を実現することが可能となる。
【0027】
微小スポット2aの形状としては、たとえば、真円形状、楕円形状、矩形状などが挙げられる。微小スポット2aの大きさは、真円形状の場合、直径は1〜5mmが好ましく、楕円形状の場合、長径は1〜50mm、短径は0.5〜10mmが好ましく、矩形状の場合、長辺は1〜50mm、短辺は0.5〜10mmが好ましい。
隣接する微小スポット2a同士の間隔は、たとえば0〜50mmが好ましい。
【0028】
微小スポット2aの平面方向の分布パターンは、主に3つのパターンからなる。
第1のパターンは、複数の微小スポット2aを直線または曲線配列し、さらに、この微小スポット配列を複数列設けるパターンであり、第2のパターンは、図2の平面図に示すように、全面にわたって一様に分布させるパターンであり、第3のパターンは、図3の平面図に示すように、複数の微小スポットによって形成された形状パターン、図3では、たとえば木の葉のような形状パターンを、全面にわたって複数個配置するパターンである。
【0029】
以下では各パターンについて、説明する。
(第1のパターン)
第1のパターンの典型的な例は、前述したように図1(b)に示すパターンである。
【0030】
図1(b)に示すパターンは、微小スポット2aの直線配列を格子状に配置したパターンである。微小スポット2aの形状は、楕円形状で、長径が2mm、短径が1mmであり、直線配列中の隣接スポット間隔は2mmである。また、格子点のピッチは25mmとしている。
【0031】
このような格子状配置の場合、微小スポット2aの大きさや、格子点のピッチを変えることで種々のパターンを実現することができる。
【0032】
たとえば、微小スポット2aを真円形状(直径1.5mm)とし、格子点ピッチを55mmとするパターンなども使用することができる。
【0033】
図4〜9は、微小スポットの第1のパターンの他の例を示す図である。
図4に示すパターンは、微小スポット2aの直線配列を等間隔で平行に配置したパターンである。
【0034】
図5に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を等間隔で平行に配置したパターンである。また、隣接する2つの波線同士は、周期を1/2ずらした波線を交互に配置している。
【0035】
図6に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を平行に配置したパターンである。3本の波線を重ね合わせた配列を1グループとして、複数のグループを50mm間隔で配置している。3本の波線を重ね合わせたグループ内では、3本のうち2本は、同じ周期で、波線間の間隔が5mmとなるように横方向に間隔を空けて配置し、残りの1本は周期をずらして、他の2本の波線と交差するように配置している。
【0036】
図7に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を平行に配置するとともに、配列方向を3つの異なる方向とすることで、3本の波線が特定箇所で交差するように配置したパターンである。交差点間のピッチは、たとえば66mmとなるように配置している。
【0037】
図8に示すパターンは、微小スポット2aの波線配列を平行に配置したパターンである。2本の波線を1グループとし、複数のグループを41.25mm間隔で配置している。グループ内の2本の波線は周期が同じであるが振幅が異なるので、周期に応じて2本の波線が交差するように配置されている。
【0038】
図9に示すパターンは、微小スポット2aの直線配列を格子状に配置し、各格子点において円形配置としたパターンである。格子点のピッチは46.67mmとしている。
【0039】
図10は、第2のパターンの他の例を示す図である。
図10に示すパターンは、図2に示したパターンとは、微小スポット2pの大きさおよび配置間隔が異なっている。
【0040】
図11〜15は、第3のパターンの他の例を示す図である。
図11に示すパターンは、4つの半円が互いに外側に凸となるように組み合わせた形状パターンを、縦横方向に互いに接するように配置したパターンである。
【0041】
図12に示すパターンは、正六角形の形状パターンを、各辺で隣接するように配置したパターンである。正六角形の一辺は、20.2mmとしている。
【0042】
図13に示すパターンは、いわゆるジグソーパズルのような形状パターンを全面に配置したパターンである。
【0043】
図14に示すパターンは、向かい合う1周期分の波線2本と、向かい合う半周期分の波線2本とで囲まれた略矩形状の形状パターンを全面に配置したパターンである。
【0044】
図15に示すパターンは、いわゆる鳥の羽に似た形状パターンを全面に配置したパターンである。
【0045】
上記に示したパターンは、微小スポット2aの配置を示すパターン例であり、図示したパターンに限定されるものではない。
【0046】
また、上記のようなパターンに配置した微小スポット2aは、既存の超音波溶融加工装置、たとえばEVER GREEN ULTRASONIC社製、商品名EGQ-8830などを用いて加工することが可能である。本装置は、エンボス加工用の装置であり、加工ローラ表面のパターンを、未接着状態の積層体の樹脂層表面に転写することで積層方向に接着固定された積層体が得られる。
【0047】
次に繊維層2および樹脂層3について説明する。
繊維層2は、炭素繊維開繊織物からなる。炭素繊維開繊織物は、既存の開繊した炭素繊維を使用することができるが、たとえば、繊維径3〜10μmが好ましい。
【0048】
繊維層2の目付けは、積層体1に所望の特性に応じて選択可能であり、たとえば、30〜600g/m2であることが好ましい。
繊維層2の厚みは、積層体1に所望の特性に応じて選択可能であり、たとえば15〜350μmであることが好ましい。
【0049】
樹脂層3は、マトリックス樹脂となる樹脂で構成されたフィルムまたは不織布からなる。本発明の積層体に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好適に用いられ、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート,ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられ、特にポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレンが好ましい。
【0050】
樹脂層3の厚みは、積層体1に所望の特性に応じて選択可能であり、
たとえば15〜350μmであることが好ましい。
【0051】
フィルムを用いた場合は、取り扱いがより容易であり、不織布を用いた場合は、厚みがより薄いものを実現することができる。
【0052】
なお、本発明の積層体は、積層体そのものを各種工業用の構造体として使用することも可能であるが、積層体を任意の形状に加工した後、プレス成形などによって、樹脂層3を溶融して炭素繊維強化樹脂とすることが好ましい。
【0053】
積層体1は、微小スポット部分で溶融接着されているので、繊維層の目ずれなどが発生せず、形状加工に際して取り扱いが容易となる。
【0054】
(実施例)
本発明の積層体1を以下のような条件で作製した。
・実施例1
繊維層2には、1層当たり目付けが70g/m2、厚みが38μmの炭素繊維開繊織物を用いた。
【0055】
樹脂層3には、樹脂融点が110度、1層当たりの厚みが30μmのポリエチレンフィルムを用いた。
【0056】
層構成は、繊維層2を4層、樹脂層3を5層とし、樹脂層3が積層方向の最外層となるように交互に積層した。
【0057】
超音波溶融加工は、前述の加工装置を用いて、各層の送り速度を3.0m/min、ホーン圧を2.0kg/cm2、隙間を0.04mmとし、図1(a)に示した第1のパターンである格子状パターンとした。
【0058】
・実施例2
繊維層2には、1層当たり目付けが200g/m2、厚みが115μmの炭素繊維開繊織物を用いた。
【0059】
樹脂層3には、樹脂融点が240度、1層当たりの厚みが100μmのポリカーボネートフィルムを用いた。
【0060】
層構成は、繊維層2を4層、樹脂層3を5層とし、樹脂層3が積層方向の最外層となるように交互に積層した。
【0061】
超音波溶融加工は、前述の加工装置を用いて、各層の送り速度を3.0m/min、ホーン圧を3.0kg/cm2とし、図1(a)に示した第1のパターンである格子状パターンとした。
【0062】
・実施例3
繊維層2には、1層当たり目付けが70g/m2、厚みが38μmの炭素繊維開繊織物を用いた。
【0063】
樹脂層3には、樹脂融点が162度、1層当たりの厚みが20μmのポリプロピレン不織布を用いた。
【0064】
層構成は、繊維層2を4層、樹脂層3を5層とし、樹脂層3が積層方向の最外層となるように交互に積層した。
【0065】
超音波溶融加工は、前述の加工装置を用いて、各層の送り速度を3.0m/min、ホーン圧を3.0kg/cm2とし、図1(a)に示した第1のパターンである格子状パターンとした。
【0066】
いずれの実施例においても、積層方向に十分な強度で接着され、繊維層の目ずれも発生しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の一形態である積層体1の構成を示す図である。
【図2】微小スポットの分布の第2のパターンを示す積層体1の平面図である。
【図3】微小スポットの分布の第3のパターンを示す積層体1の平面図である。
【図4】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図5】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図6】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図7】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図8】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図9】第1のパターンの他の例を示す図である。
【図10】第2のパターンの他の例を示す図である。
【図11】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図12】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図13】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図14】第3のパターンの他の例を示す図である。
【図15】第3のパターンの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 積層体
2 繊維層
2a 微小スポット
3 樹脂層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体であって、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分が積層方向に接着されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記樹脂層の一部分は、所定の形状を有する微小スポットであり、この微小スポットが所定のパターンで平面方向にわたって分布していることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記炭素繊維開繊織物は、目付けが30〜600g/m2であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを重ね合わせ、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分を積層方向に接着することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項1】
炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを積層した積層体であって、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分が積層方向に接着されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記樹脂層の一部分は、所定の形状を有する微小スポットであり、この微小スポットが所定のパターンで平面方向にわたって分布していることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記炭素繊維開繊織物は、目付けが30〜600g/m2であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
炭素繊維開繊織物からなる繊維層と、熱可塑性樹脂からなる樹脂層とを重ね合わせ、
超音波溶融加工によって前記樹脂層の平面方向一部分を積層方向に接着することを特徴とする積層体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−201006(P2008−201006A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40088(P2007−40088)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000182247)サカイオーベックス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000182247)サカイオーベックス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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