説明

積層体及びその製造方法

【課題】高い非吸着性、熱接着性を有しつつも製造コスト的に優れた積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、基材フィルム1と、基材フィルム1上に形成された非吸着性を有する層2と、非吸着性を有する層2上に形成された熱接着性層3とから構成される。熱接着性を有する層3はパターンコートにより非吸着性を有する層2の上に形成される。非吸着性を有する層2は、ポリビニルアルコール、金属アルコキシド及びその加水分解物、並びに、水/アルコール混合溶液を主剤として含有する溶液を基材フィルム1に塗布し、加熱乾燥して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物の有効成分に対する非吸着性に優れた包装材料として金属箔を含む積層体や、金属の蒸着層を形成したプラスチックフィルムを含む積層体が広く使用されており、袋状の容器に成形(製袋)されて使用されている。そして上記金属としてはアルミニウム箔が性能、コスト、加工性の点から一般的に使用されている。
包装袋に透明性を付与したい場合には、ポリエステルやエチレンービニルアルコール共重合体、アクリロニトリル共重合体を成形したフィルム、ポリエステルやポリプロピレンに酸化アルミニウムや酸化ケイ素を蒸着したフィルムなどが用いられている。特にアクリロニトリル共重合体は、熱接着性を有し、非吸着性に優れることから、非吸着性包装材料の最内層に使用されている。また、アクリロニトリル共重合体は香気成分を透過させない保香性材料としても知られている。
【0003】
このアクリロニトリル共重合体は、例えば20〜30μmの厚みのフィルムとして提供されており、接着剤を用いたドライラミネート、あるいは溶融した接着性樹脂の層を介するサンドラミネートにより、他のフィルム(例えば基材フィルム)と積層され、包装材料の一部を構成するのが一般的である。
また、アクリロニトリル共重合体は、量産適性のある一般的な溶媒には溶解しないため、コーティングして薄い層を形成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8‐143452号公報
【特許文献2】特開平8‐143453号公報
【特許文献3】国際公開WO2005/072675公報
【特許文献4】国際公開WO2005/072716公報
【特許文献5】特開2005‐328928号公報
【特許文献6】特開2006‐44793号公報
【特許文献7】特開2008‐506556号公報
【特許文献8】特開2009‐160388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記アクリロニトリル共重合体は、前述のようにフィルム状態で使用されることが一般的であり、包装材料とするにはドライラミネートなどの積層工程が必須となる。また、材料がフィルム状態で供給されるため、厚さの下限があり、通常は30μm程度が下限である。さらに、アクリロニトリル共重合体樹脂自体は高価であり、結果として包装材料自体が高価なものになってしまう。
【0006】
また、包装材料の非吸着性は、これらの樹脂の厚さが一定以上であれば実現できるため、要求される非吸着性に対し、アクリロニトリル共重合体フィルムの使用がオーバースペックであり、コスト高でもあり、不経済であった。
そこで、本発明の目的は、高い非吸着性、熱接着性を有しつつも製造コスト的に優れた積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材と、前記基材上に形成された第1の層と、前記第1の層上にパターンコートにより形成された熱接着層である第2の層と、を備え、前記第1の層は、ポリビニルアルコール、金属アルコキシド及びその加水分解物、並びに水/アルコール混合溶液を含有するコーティング剤を前記基材上に塗布し乾燥して形成したポリビニルアルコールを含有する層である、積層体である。
【0008】
この場合に、前記第1の層は、その厚みが0.01μm以上10μm以下のいずれかの値であるようにしてもよい。
また、前記基材は、ポリエステル、ポリプロピレンフィルム、又はポリアミドからなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の層は溶液コーティング法により形成するため、容易に厚みを調整することができ、より薄い層を形成することで、より製造コストを低減することができる。また、第1の層の上に熱接着性を有する第2の層を形成するため、非吸着性を維持しながら熱接着性を付与することができる。したがって、高い非吸着性、熱接着性を有しつつも製造コスト的に優れた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態である積層体の拡大縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例である積層体と、比較例1、比較例2の積層体とを評価した結果について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態の積層体の拡大縦断面図である。この積層体は、基材フィルム1(基材)と、この基材フィルム1上に形成された非吸着性を有する層2(第1の層)と、非吸着性を有する層2上に形成された熱接着性層3(第2の層)とから構成され、例えば、非吸着性に優れた包装材料などとして使用される。
【0012】
基材フィルム1は、非吸着性包装材料の主たる層であり、包装材料に機械的強度、テアー性、スリップ性、耐熱性、印刷適性などの性質を付与する。基材フィルム1を形成するのに好ましい材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、6‐ナイロン;6,6‐ナイロン等のポリアミドフィルム、あるいはポリプロピレンフィルムなどの、機械的強度に優れた材料を挙げることができる。特に、これらの1軸または2軸延伸フィルムを使用することが好ましい。また、これらのフィルムには、必要に応じて周知の添加剤、例えば、静電防止剤やスリップ剤、防曇剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。また、必要に応じて周知の処理、例えば、コロナ放電処理やオゾン処理、フレーム処理等を施すことができる。この基材フィルム1の厚さは特に限定するものではないが、経済性や消費者にとっての使いやすさの点から12μm以上40μm以下とすることが望ましい。
【0013】
包装材料には、通常、印刷層が形成されるが、基材フィルム1の非吸着性を有する層2の形成側とは反対側の面に印刷層を積層することが可能であり、また、印刷用基材フィルムを用意して印刷し、基材フィルム1と接着剤を用いてラミネートすることも可能である。
また、基材フィルム1は、風合いの付与や剛度付与の目的のために上記フィルムの外面側又は内面側に紙又は不織布(例えば坪量15g/m以上90g/m以下)を積層する2層構成や、必要性や内容物の化学的反応性に応じてアルミニウム箔を積層する2層構成を用いることができる。ただし、本実施形態の積層体においては、透明性、環境性の観点から、構成中にアルミニウム箔層を含まないことが望ましい。
【0014】
基材フィルム1には、非吸着性を有する層2を積層する。非吸着性を有する層2は、厚さ0.01μm以上1μm以下でポリビニルアルコールを主成分とする。
この非吸着性を有する層2は、ポリビニルアルコール、金属アルコキシド及びその加水分解物、並びに、水/アルコール混合溶液を主剤として含有する溶液を基材フィルム1に塗布し、加熱乾燥して形成する。このようにして形成された非吸着性を有する層2は、反応性に富む無機成分を含有し、水溶性高分子との複合により皮膜が非吸着性を発揮し、かつ、基材フィルム1との密着性にも優れるものである。
【0015】
非吸着性を有する層2の厚みは0.01μm以上10μm以下とするのが望ましい。厚みが0.01μmより薄いと、非吸着性が十分に発揮されず、10μm以上では材料使用量が増え、製造コストが高くなる。非吸着性能と製造コストの両面から0.01μm以上2μm以下の範囲内の厚みであることが望ましい。
さらに、基材フィルム1へ熱接着性を付与するために、非吸着性を有する層2の上にパターンコートにより熱接着性を有する層3を積層する。熱接着性を有する層3の材料として使用する熱接着性を有する化合物としては、酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系、エチレン系、変性ポリオレフィン系などが利用できる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明にかかる積層体の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
[実施例]
まず、(1)ポリビニルアルコールの3.0wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)と、(2)テトラエトキシシラン[Si(OC]を10.4gに0.1N塩酸89.6gを加え、30分間攪拌して加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液と、を用意し、この(1)と(2)を60:40の比率にて混合した。
【0017】
そして、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、当該混合液をグラビアコート法によって塗布することによって、非吸着性を有する層2が上面に形成された基材フィルム1が得られた。そして、その非吸着性を有する層2に、さらに酢酸ビニル共重合体を主成分とするヒートシール剤をパターン状に塗工して、熱接着性層3とした。
【0018】
[比較例1]
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、ポリウレタン系樹脂を主成分とする接着剤を塗布し、シーラント層として厚さ30μmのアクリロニトリル共重合体フィルム(タマポリ(株)の“ハイトロン”を使用)を貼り合わせたラミネートフィルムを得た。
【0019】
[比較例2]
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、ポリウレタン系樹脂を主成分とする接着剤を塗布し、シーラント層として厚さ30μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(二村化学(株)の“XMTN”を使用)を貼り合わせたラミネートフィルムを得た。
【0020】
以上のようにして製造した実施例、比較例1、比較例2の各積層体を、次のようにして評価した。すなわち、実施例、比較例1、比較例2の各積層体をそれぞれ製袋した袋に内容物を包装した後、非吸着性を目的とした実包、保存テストを実施した。
具体的には、実施例、比較例1、比較例2の各積層体でそれぞれ所定の大きさの袋を作製し、その各袋の中に内容物としてフルルビプロフェン20mgを含ませた不織布を封入し、密封シールした包装袋を作製し、それらを40℃にて1週間保存し、袋の単位面積あたりのフルルビプロフェン吸着量をHP‐LC(高速液体クロマトグラフィー)により測定した。
【0021】
その結果を図2に示す。図2に明らかなように、実施例及び比較例1は吸着量が極めて少なく、非吸着性に優れていた。また、実施例と比較例1の非吸着性の程度には差がない。以上のことから、本実施例の積層体は、従来のアクリロニトリル共重合体フィルムと同等の非吸着性を有することがわかる。また、本実施例の積層体は、コートする非吸着性材料の塗工量を容易に調整でき、低コストで製造できるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 基材フィルム
2 非吸着性を有する層
3 熱接着性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された第1の層と、
前記第1の層上にパターンコートにより形成された熱接着層である第2の層と、
を備え、
前記第1の層は、ポリビニルアルコール、金属アルコキシド及びその加水分解物、並びに水/アルコール混合溶液を含有するコーティング剤を前記基材上に塗布し乾燥して形成したポリビニルアルコールを含有する層である、
積層体。
【請求項2】
前記第1の層は、その厚みが0.01μm以上10μm以下のいずれかの値である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材は、ポリエステル、ポリプロピレンフィルム、又はポリアミドからなる、請求項1に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71430(P2013−71430A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214400(P2011−214400)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】