説明

積層体製造方法及び積層体製造装置

【課題】薄板から切断され薄板部材セグメントから分離されたスクラップ部材を効率的に排出することができる積層体製造方法及び積層体製造装置を提供すること。
【解決手段】積層体製造装置100は、上型110a及び下型110bを備えたプレス装置110によって薄板(板部材32)から切断された薄板部材セグメント(分割コアプレート12)を積層することにより積層体(ステータコア10)を製造する装置である。積層体製造装置100の積層体製造方法は、薄板が下型110bに載置された状態で下型110bによって薄板から薄板部材セグメント及びチップ状のスクラップ部材S1、S2を切り出す切断工程と、スクラップ部材S1、S2が下型110bに載置された状態で、下型110bを回転させて、スクラップ部材S1、S2に作用する外向きの力により、スクラップ部材S1、S2を下型110bの外部に排出する排出工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板から切断された薄板部材セグメントを積層することにより積層体を製造するための積層体製造方法及び積層体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動機のロータコアは、リング状に成形された電磁鋼板からなるプレートを積層することにより、リング状(円筒状)に構成されている。このようなロータコアとして、周方向に分割された複数の扇状のプレートからなる分割コアプレートから構成されたロータコアが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
本出願人は、特許文献1において、分割コアプレートの積層時間をより短縮すると共に、より高精度に分割コアプレートを積層するロータコアの積層体製造装置を提案している。このロータコアの積層体製造装置によれば、複数の分割ロータプレートをリング状に配置しながら積層してロータコアを成形する場合に、分割ロータプレートをより迅速にかつ効率的に、さらにより高精度に積層することが可能となる。
【0004】
このような積層体製造装置において、複数の分割ロータプレートを切断して切り出した時にスクラップ部材が発生する。特許文献1に記載の積層体製造装置は、発生したスクラップ部材を連結した状態で積層体製造装置の外部に排出させてから所定の大きさに切断している。
【0005】
ところで、プレートの厚さよりも薄くした薄板(例えば0.2mmの厚さ以下のプレート)を採用するステータコアの製造が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/065830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ステータコアのようなプレートの厚さが薄い薄板を用いると、プレス装置によってプレートから切り出されたスクラップ部材が積層体製造装置の外部に排出されるまでの間に、スクラップ部材が撓みやすく、積層体製造装置から排出しにくいという問題がある。
【0008】
本発明は、薄板から切断され薄板部材セグメントから分離されたスクラップ部材を効率的に排出することができる積層体製造方法及び積層体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上型(例えば、後述する上型110a)及び下型(例えば、後述する下型110b)を備えたプレス装置(例えば、後述するプレス装置110)によって薄板(例えば、後述する板部材32)から切断された薄板部材セグメント(例えば、後述する分割コアプレート12)を積層することにより積層体(例えば、後述するステータコア10)を製造するための積層体製造方法であって、前記薄板が前記下型に載置された状態で前記下型によって前記薄板から前記薄板部材セグメント及びチップ状のスクラップ部材(例えば、後述するスクラップ部材S1、S2)を切り出す切断工程と、前記スクラップ部材が前記下型に載置された状態で、前記下型を回転させて、前記スクラップ部材に作用する外向きの力により、前記スクラップ部材を前記下型の外部に排出する排出工程と、を含む積層体製造方法。
【0010】
(1)に記載の発明によれば、切断工程により薄板から切り出されたチップ状のスクラップ部材が下型に載置された状態で、下型を回転させて、スクラップ部材に作用する外向きの力により、スクラップ部材を下型の外部に排出する。
【0011】
このため、切断工程が実行される毎に、薄板からチップ状のスクラップ部材が切り出され、スクラップ部材が下型から外部に排出されるので、スクラップ部材が撓みスクラップ部材が下型から排出されないという虞はほとんどない。
【0012】
また、チップ状のスクラップ部材は、下型の回転により外部に排出されるので、薄板から切断され薄板部材セグメントから分離されたスクラップ部材を下型の外部に効率的に排出できる。
【0013】
(2)前記排出工程は、前記下型に設けられたスクラップ部材保持装置(例えば、後述する下パイロットピン130)が前記スクラップ部材を保持した状態で前記下型を回転させる工程と、前記スクラップ部材を保持した状態で前記下型が回転しているときに、排出しようとするタイミングで、前記スクラップ部材保持装置が前記スクラップ部材の保持を解除する工程と、を含む。
【0014】
(2)に記載の発明によれば、スクラップ部材はスクラップ部材保持装置によって下型に保持され、下型が回転し、排出しようとするタイミングにおいてスクラップ部材保持装置がスクラップ部材の保持を解除するため、より確実にスクラップ部材を下型の外部に排出できる。排出しようとするタイミングは、例えば、下型の回転角度によって設定されてもよい。
【0015】
(3)薄板(例えば、後述する板部材32)から切断された薄板部材セグメント(例えば、後述する分割コアプレート12)を積層することにより積層体(例えば、後述するステータコア10)を製造する積層体製造装置(例えば、後述する積層体製造装置100)であって、前記薄板が載置された状態で前記薄板から前記薄板部材セグメント及びチップ状のスクラップ部材(例えば、後述するスクラップ部材S1、S2)をプレスによって切断する上型(例えば、後述する上型110a)及び下型(例えば、後述する下型110b)を備えるプレス装置(例えば、後述するプレス装置110)と、前記スクラップ部材が前記下型に載置された状態で、前記下型を回転させて、前記スクラップ部材に作用する外向きの力により、前記スクラップ部材を前記下型の外部に排出する回転装置(例えば、後述する回転装置200)と、を含む積層体製造装置。
【0016】
(3)に記載の発明によれば、上型及び下型により薄板から切り出されたチップ状のスクラップ部材が下型に載置された状態で、回転装置で下型を回転させて、スクラップ部材に作用する外向きの力により、スクラップ部材を下型の外部に排出する。
【0017】
このため、上型及び下型によるプレス切断が実行される毎に、薄板からチップ状のスクラップ部材が切り出され、スクラップ部材が下型から外部に排出されるので、スクラップ部材が撓み、スクラップ部材が下型から排出されないという虞はほとんどない。
【0018】
また、チップ状のスクラップ部材は、下型の回転により下型の外部に排出されるので、薄板から切断され薄板部材セグメントから分離されたスクラップ部材を効率的に排出できる。
【0019】
(4)前記下型は、同期装置(例えば、後述するカム機構140)によって駆動されるスクラップ部材保持装置(例えば、後述する下パイロットピン130)を備え、前記スクラップ部材保持装置は、前記下型を回転させているとき前記スクラップ部材を保持し、前記スクラップ部材を保持している状態で前記下型が回転しているとき、排出しようとするタイミングで、前記スクラップ部材の保持を解除する。
【0020】
(4)に記載の発明によれば、スクラップ部材は一時的にスクラップ部材保持装置に保持され、排出しようとするタイミングにおいてスクラップ部材保持装置がスクラップ部材の保持を解除することによって、より確実にスクラップ部材を外部に排出することができる。排出しようとするタイミングは、例えば、下型の回転角度によって設定されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薄板から切断され薄板部材セグメントから分離されたスクラップ部材を効率的に排出することができる積層体製造方法及び積層体製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る積層体を製造する積層体製造装置及び積層体製造方法により製造された積層体の斜視図である。
【図2】図1に示す積層体の一部を分解した分解斜視図である。
【図3】図1に示す積層体の製造ラインの構成を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置における図3のa−a概略断面図である。
【図5】図3に示す積層体の製造ラインの積層体製造装置の概略平面図である。
【図6】図4に続く積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置における図3のa−a概略断面図である。
【図7】図6に続く積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置における図3のa−a概略断面図である。
【図8】図7に続く積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置における図3のa−a概略断面図である。
【図9】図8に続く積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置における図3のa−a概略断面図である。
【図10】図9に続く積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置における図3のb−b概略断面図である。
【図11】図10に続く積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置における図3のc−c概略断面図である。
【図12】図11に示す積層体の製造方法の工程を説明する積層体製造装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る積層体の積層体製造装置100、及びその積層体製造装置100を用いた製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、図1乃至図12に基づき説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層体の積層体製造装置100により製造された積層体(ステータコア10)の斜視図である。図2は、図1に示す積層体の一部を分解した分解斜視図である。ステータコア10は、例えば、図示しないロータ(回転子)と共に電動機(モータ)を構成する。
【0025】
ステータコア10は、薄板扇状の電磁鋼板からなる分割コアプレート(ステータコアピース)12を周方向に複数枚(本実施形態では3枚)配置してリング状に形成した第1コアプレート14と、薄板扇状の電磁鋼板からなる分割コアプレート(ステータコアピース)12を第1コアプレート14から所定の位相(本実施形態では60度)だけずらして周方向に複数枚(本実施形態では3枚)配置してリング状に形成した第2コアプレート18と、から構成される。該ステータコア10では、最下層を形成する第1コアプレート14上に第2コアプレート18が積層されている。そして、この第2コアプレート18上に、第1コアプレート14及び第2コアプレート18が交互に積層されている。
【0026】
このようなステータコア10では、重なり合う層間、すなわち、奇数層(第1層、第3層等)と偶数層(第2層、第4層等)の間では、各層を構成する分割コアプレート同士は、互いに当接する端部(突き当て面)の位相が所定角度ずれた状態で積層されている。具体的には、図2に示すように、例えば、奇数層である第1層(最下層)を構成する第1コアプレート14では、分割コアプレート12同士が当接する端部の位置A1は、所定角度θ1(本実施形態では120度)刻みで合計3箇所に配置されている。一方、偶数層である第2層を構成する第2コアプレート18では、分割コアプレート12同士が当接する端部の位置A2は、位置A1から所定角度θ2(本実施形態では60度)ずれた位置とされ、所定角度θ3(本実施形態では120度)刻みで合計3箇所に配置されている。第1コアプレート14と第2コアプレート18とは、所定角度θ2の位相差を有する以外、同一形状を有する。
【0027】
図2に示すように、分割コアプレート12には、その外周側の円弧状縁部に略半円状の一対の凸部(突出部、プレート側凸部)24、24が形成されている。各凸部24は、分割コアプレート12が3枚配置された第1コアプレート14において等間隔に(60度間隔に)、6個配置される。凸部24の略中央部には、ピン22(図1参照)が嵌挿される孔部20が形成されている。各凸部24は、第2コアプレート18においても同様に、等間隔に(60度間隔に)6個配置されている。凸部24の略中央部には、ピン22(図1参照)が嵌挿される孔部20が形成されている。
【0028】
ここで、第1コアプレート14と第2コアプレート18との間の位相差は60度であり、孔部20の間隔も60度である。そのため、第1コアプレート14と第2コアプレート18の孔部20の位置は、一致する。
【0029】
また、分割コアプレート12には、その内周側の円弧状縁部に沿って略等間隔にかつその内周側の円弧状縁部に開放した複数のスリット28が形成されている。そのため、第1コアプレート14及び第2コアプレート18にも、同様に、その内周側の円弧状縁部に沿って略等間隔にかつその内周側の円弧状縁部に開放した複数のスリット28が形成される。
【0030】
ステータコア10では、積層された第1コアプレート14及び第2コアプレート18の各層に6個ずつ設けられた孔部(結合部、貫通孔)20に、ピン(結合部材)22が積層方向(軸方向)に沿って嵌挿され、各層間が結合されている。ステータコア10を形成する第1及び第2コアプレート14及び18の積層枚数は、その使用条件等に応じて適宜変更可能である。さらに、ステータコア10の各層間は、分割コアプレート12の上下面に塗布された接着剤23により、より強固に結合されている。このような接着剤23は、板部材32(図3参照)や分割コアプレート12等の表面に塗布されている状態では略薄膜状に構成されており、その接着力は発生しておらず、加熱処理及び冷却処理が施された際に接着力が発生するものであることが好ましい。
【0031】
次に、上記のように構成されるステータコア10を製造する製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
まず、ステータコア製造ライン30について説明する。
【0032】
図3に示すように、ステータコア10を製造するステータコア製造ライン30は、成形装置31と積層体製造装置100とを備える。このステータコア製造ライン30では、成形装置31に載置された薄板帯状の電磁鋼板からなる板部材32は、矢印X方向に1ピッチずつ(図3中の矢印1Pが1ピッチに相当する。)搬送され、成形装置31により所定の加工を行われ、積層体製造装置100によって分割コアプレート12に成形され、ステータコア10に形成される。
【0033】
成形装置31は、板部材32が搬送される上流側から下流側(矢印X方向)に向かって、パイロット孔成形金型34と、カシメカット成形金型36と、カシメベンドスロット成形金型38と、窓抜き孔形成金型40とを備える。これら各金型は、例えば、孔部や分割コアプレートを打ち抜くためのパンチを備える上型(図示せず)と、該上型に対向配置され、その上面を板部材32が搬送される下型(図示せず)と、から構成される。これらの動作については、後述する。
【0034】
図4は図3のa−a概略断面図である。図3に示すように、積層体製造装置100は、成形装置31において、矢印Xの方向(板部材32の搬送方向下流側)に配置されている。積層体製造装置100は、上型110a及び下型110bを備えたプレス装置110と、プレス装置110の下型110bを回転させる回転装置200(図5参照)と、を備える。
また、下型110bは回転中心Cを中心軸とした略円筒形状のアウターガイド122と、アウターガイド122の内側に配置された回転中心Cを中心軸とした円筒形状のインナーガイド121とを備える。アウターガイド122とインナーガイド121との間に、略リング状の空間123が形成されている。
【0035】
積層体製造装置100は、成形装置31によって所定の加工が行われた板部材32を上型110aと下型110bとによるプレス切断によって分割コアプレート12を成形し、第1コアプレート14及び第2コアプレート18を略リング状の空間123に順次積層するように構成されている。
【0036】
以下、積層体製造装置100の構成を説明する。
先ず、上型110aの構成につき説明する。
図4に示すように、上型110aは、図示しないプレス機構によって待機位置(上死点位置)から下死点位置に往復移動できるように構成されている。このプレス機構は、例えば、クランク機構を有する変位機構であってもよく、あるいは、プレス機構全体がステータコア製造ライン30のフレームMに固定されていてもよい。
待機位置は、クランク機構のカムが上死点位置に配置されているときの上型110aの位置であり、上型110aが最も上に移動した位置である(図4参照)。下死点位置は、クランク機構のカムが下死点位置に配置されているときの上型110aの位置であり、上型110aが最も下に移動した位置である(図8参照)。
【0037】
上型110aは、「上押さえ部材115」と、「上パイロットピン111」と、「第1パンチ112」と、第1パンチ112を下型11bの方向に付勢する「圧縮コイル113」と、「第2パンチ114」とを1組として、これらを2組備えている。
「圧縮コイル113」によって下型110bの方向に付勢された「第1パンチ112」及び「第2パンチ114」は、プレス機構によって上下動するフレームMaに取り付けられている。
また、「上押さえ部材115」及び「上パイロットピン111」は、フレームMaの矢印Xの反対方向(板部材32の搬送方向上流側)に、弾性部材(図示しない)を介してフレームMaに対して相対的に上下動可能に配置されたフレームMbに取り付けられている。
【0038】
2個の上押さえ部材115は、板部材32の両端に1ピッチ毎に形成される2個のパイロット孔47のそれぞれの周囲を押さえることができるように形成されている。
2個の上パイロットピン111は、それぞれ、上押さえ部材115の中央を貫通するように形成され、パイロット孔47に挿通可能な外径を有する。上パイロットピン111は、板部材32から切り出される切断部材32a(図7参照)に対して、残りの板部材32の側から位置決めを行うものである。
【0039】
図4に示すように、2個の第1パンチ112は、板部材32から切り出される切断部材32a(分割コアプレート12とスクラップ部材S1、S2とが繋がっている状態の部材)を、板部材32から切り出すように構成される(図7参照)。2個の第1パンチ112の下面(下型110bに対向する面)には、板部材32から切り出した切断部材32aのうち、スクラップ部材S1、S2となる部分を保持するための押さえ面112aが形成されている。それぞれの押さえ面112aの矢印Xの反対方向(板部材32の搬送方向上流側)のエッジ部112bには、板部材32から切断部材32aを切り出す切断刃が形成されている。2個の第1パンチ112のそれぞれの略中央には、下側が開口している挿通孔112cが形成されている。それぞれの挿通孔112cは、板部材32に形成されたパイロット孔47に挿通可能な外径を有する2個の下パイロットピン130の先端部がそれぞれ挿通可能なように、下パイロットピン130の先端部の外径と略同じ大きさを有する孔である。
【0040】
ここで、上パイロットピン111の中心軸と下パイロットピン130の中心軸との間の距離は、板部材32の搬送における1ピッチに対応している。
【0041】
フレームMaと第1パンチ112との間にそれぞれ配置されている2個の圧縮コイル113は、所定の弾性値に設定されている。所定の弾性値は、板部材32を切断可能な下向きの付勢力を第1パンチ112に付与するだけの「剛性」を確保しながら(図7参照)、下死点位置において板部材32から切り出した切断部材32aが下治具125に突き当たった後、さらにフレームMaが下型110bの方向に移動するときフレームMaの動きに対抗して第1パンチ112が切断部材32aを下治具125に突き当てた状態で停止できるような弾性値である(図8参照)。
【0042】
図4に示すように、フレームMaに取り付けられた2個の第2パンチのそれぞれの下面(下型110bに対向する面)の矢印Xの反対方向(板部材32の搬送方向上流側)のエッジ部114aには、第1パンチ112によって切り出された切断部材32a(分割コアプレート12とスクラップ部材S1、S2とがつながっている状態の部材)を、分割コアプレート12とスクラップ部材S1、S2とにプレス切断する切断刃が形成されている(図8参照)。
【0043】
次に、下型110bの構成につき説明する。
下型110bは、前述のとおり、略円筒形状のアウターガイド122とアウターガイド122の内側に配置された円筒形状のインナーガイド121とを備える。下型110におけるアウターガイド122とインナーガイド121との間には、略リング状の空間123が形成されている。下型110bは、回転装置200によって回転される回転テーブル204に載置されている。
【0044】
図5は、積層体製造装置100の平面図である。
第1コアプレート14を構成する3つの分割コアプレート12は、それぞれ、下型110bに形成された空間123を3等分した範囲α1、範囲α2及び範囲α3に収容される。また、第2コアプレート18を構成する3つの分割コアプレート12は、それぞれ、空間123を3等分した範囲β1、範囲β2及び範囲β3に収容される。
【0045】
アウターガイド122は、範囲α1、範囲α2及び範囲α3のそれぞれに対応するアウターガイド122の領域、並びに範囲β1、範囲β2及び範囲β3のそれぞれに対応するアウターガイド122の領域(計6つの領域)のそれぞれに、「下押さえ部材124」と、「下治具125」と、下治具125に上下方向に移動可能に収容された「プッシャー126」と、プッシャー126を上側(上型110aの方向)に付勢する「圧縮コイル128」と、切断部材32aの位置決め及び切断部材32aの保持のための「下パイロットピン130」と、下パイロットピン130が切断部材32aから切り出されたスクラップ部材S1、S2の保持を解除する「カム機構140」と、を1組として、それらを2組備えている。従って、アウターガイド122は、これらを12組備えている。
【0046】
ここで、図5には、プッシャー126及び下パイロットピン130のみを示しているが、範囲α1、範囲α2及び範囲α3に関するプッシャー126及び下パイロットピン130には、その符号の後ろに「◎」を付している。また、範囲β1、範囲β2及び範囲β3に関するプッシャー126及び下パイロットピン130には、その符号の後ろに「*」を付している。
【0047】
なお、上型110aは、上型110aの上下往復移動に同期して下型110bが回転することによって、下型110bの範囲α1、範囲α2及び範囲α3、並びに範囲β1、範囲β2及び範囲β3(計6つの範囲)に順番に対応する。
【0048】
以下、下型110bのアウターガイド122に設けられている「下押さえ部材124」と、「下治具125」と、下治具125に上下方向に移動可能に収容された「プッシャー126」と、プッシャー126を上側(上型110aの方向)に付勢する「圧縮コイル128」と、切断部材32aの位置決め及び切断部材32aの保持のための「下パイロットピン130」と、下パイロットピン130が切断部材32aから切り出されたスクラップ部材S1、S2の保持を解除する「カム機構140」と、について説明する。
【0049】
図4に示すように、下押さえ部材124は、上型110aの上押さえ部材115に対向してアウターガイド122に設けられている。下押さえ部材124の上面124aには、上パイロットピン111の先端が挿通可能な挿入孔124bが形成されている。下押さえ部材124の側面(アウターガイド122の外側面)には、カム機構140のピン141が挿通される凹部124cが形成されている。
【0050】
下治具125は、上型110aの第1パンチ112に対向して設けられている。下治具125の上面には、所定の深さを有する凹形状の段差部125bが形成されている。下治具125の段差部125bの矢印Xの反対方向(板部材32の搬送方向上流側)の端部125eには、切断刃が形成されている。下治具125は、端部125eと第1パンチ112のエッジ部112bとが協働して板部材32を切断して切断部材32aを切り出すように構成されている。下治具125の段差部125bの反対側、すなわち矢印Xの方向(板部材32の搬送方向下流側)の端部125gには、切断刃が形成されている。下治具125は、端部125gと第2パンチ114のエッジ部114aとが協働して切断部材32aを切断して、分割コアプレート12とスクラップ部材S1、S2とを分離するように構成されている。
【0051】
プッシャー126は、円筒部126aと、円筒部126aの一端に形成された鍔部126bとを有する。プッシャー126は、プッシャー126を円筒部126aの軸方向に貫通する貫通孔126cを有する。
【0052】
下治具125は、その略中央に、プッシャー126の円筒部126aが挿通可能な、上下方向に伸びる挿通孔125aを備え、挿通孔125aの下方には、プッシャー126の鍔部126bを収容する収容部125cを備えている。プッシャー126は、円筒部126aが挿通孔125aに挿入され、鍔部126bが収容部125cの内壁に当接するように、下治具125に配置されている。
また、下治具125の挿通孔125aの中央には、下方からプッシャー126の貫通孔126cを貫通して上に伸びる下パイロットピン130が配置されている。下パイロットピン130の先端は、プッシャー126の円筒部126aの先端から上方に突出しており、第1パンチ112の挿通孔112cに挿通可能である。
【0053】
プッシャー126の鍔部126bの下側には、プッシャー126を上側(上型110a)に付勢する圧縮コイル128が設けられている。プッシャー126においては、圧縮コイル128の上方(上型110aの側)への付勢力によって、円筒部126aの先端が下治具125の上面の段差部125bより上方に突出している。円筒部126aの先端の下治具125の上面の段差部125bからの突出量は、上述の「段差部125bの所定の深さ」であることが好ましい。円筒部126aの先端は、切断部材32aを介した第1パンチ112の押圧力が圧縮コイル128の付勢力を上回ると、段差部125bまで後退する。
圧縮コイル128の付勢力は、第1パンチ112の圧縮コイル113の付勢力よりも小さくなるように設定されている。
【0054】
カム機構140は、ピン141と、ピン141をプッシャー126から遠ざかる方向に付勢する圧縮コイルバネ142と、ピン141の基端に弾性体143を介して配置された摺動部材144と、を備える。弾性体143は、摺動部材144がプッシャー126に近づく方向に押されたとき、ピン141をプッシャー126に近づく方向に所定の力で付勢する。
【0055】
図4に示すように、ピン141は、水平方向に移動可能に下押さえ部材124に挿通されている。ピン141は、先端が尖った棒状のピン本体141aと、ピン本体141aの中央に形成され、凹部124cの内周面を摺動する鍔部141bと、を有する。ピン本体141aは、下押さえ部材124の水平方向に形成された凹部124cの底面をプッシャー126に向けて、貫通して配置されている。
【0056】
プッシャー126の円筒部126aの先端が下治具125の上面の段差部125bより突出している場合、ピン141の先端がプッシャー126の鍔部126bに当接し、また、プッシャー126の円筒部126aの先端が下治具125の上面の段差部125bまで後退している場合、ピン141の先端がプッシャー126の鍔部126bの上側(上型110aの側)に位置するように、ピン141は構成されている。
【0057】
圧縮コイルバネ142は、ピン141の鍔部141bと凹部124cの底面との間に、圧縮状態で配置されている。したがって、圧縮コイルバネ142は、ピン141をプッシャー126から遠ざかる方向に付勢している。プッシャー126の円筒部126aの先端が下治具125の上面の段差部125bまで後退している場合、ピン141は、圧縮コイルバネ142に抗してプッシャー126に向かって前進することができる。ピン141の先端が鍔部126bの上側(上型110aの側)に位置する場合(図7参照)、ピン141は、プッシャー126が上方向(上型110aの方向)に移動しないように規制できる。
【0058】
ピン141の基端には、弾性体143を介して摺動部材144が配置されている。弾性体143の付勢力は、圧縮コイルバネ142の付勢力よりも大きい。プッシャー126の円筒部126aの先端が下治具125の上面の段差部125bより突出している場合、ピン141の先端はプッシャー126の鍔部126bに位置する(図4、図6参照)。
【0059】
摺動部材144は、プッシャー126の反対側に、フレームMの摺動面Msa及び摺動面Msb(図3参照)と係合する摺動面144aを有する。摺動面144aは、下型110b(回転テーブル204)の回転に伴って摺動部材144が摺動面Msa及び摺動面Msbの周方向に移動しても、弾性体143の付勢力及び圧縮コイルバネ142の付勢力によって、摺動面Msa及び摺動面Msbから離れないように構成されている。
【0060】
図3に示すように、1つの分割コアプレート12の両端部の角度は120度であるため、下型110b(回転テーブル204)が120度回転する間に、1つの分割コアプレート12が形成される。前述のとおり、下型110bのアウターガイド122は、「下押さえ部材124」と、「下治具125」と、「プッシャー126」と、「圧縮コイル128」と、「下パイロットピン130」と、「カム機構140」とを1組として備えている。1組の要素が1サイクルの動作を行う間に、カム機構140の摺動部材144は、Aの位置からBの位置まで120度移動する。Aの位置からBの位置までの摺動面においては、摺動面Msaが120度のうちの最初の3/4程度であり、続いて摺動面Msbがそれに連続している。
【0061】
摺動面Msbと回転中心Cとの間の距離Rbは、摺動面Msaと回転中心Cとの間の距離Raよりも距離δだけ大きい(図3参照)。すなわち、摺動部材144が、位置Bに向かって移動すると、摺動面Msaから摺動面Msbに切り替わる所定のタイミングにおいて、摺動部材144は、距離δだけプッシャー126から遠ざかる方向に移動し、ピン141は、プッシャー126から遠ざかる方向に移動する。
【0062】
摺動部材144と摺動する面が摺動面Msaから摺動面Msbに切り替わるタイミングにおいては、プッシャー126の円筒部126aの先端は下治具125の上面の段差部125bまで後退しており、ピン141の先端はプッシャー126の鍔部126bの上側(上型110a)に位置している。そのため、ピン141がプッシャー126から遠ざかるように移動することにより、ピン141の先端の鍔部126bに対する上方向(上型110aの方向)への移動の規制がなくなる。したがって、プッシャー126は、圧縮コイル128の付勢力により、上方向に移動し、プッシャー126の円筒部126aの先端は、下治具125の上面の段差部125bより突出する。このとき、プッシャー126は、下パイロットピン130に差し込まれていたスクラップ部材S1、S2を下パイロットピン130から外れるように押し上げる。
【0063】
次に、図3から図12を参照して、ステータコア製造ライン30によるステータコア10の製造方法を説明する。
まず、成形装置31によるステータコア10の製造方法を説明する。この製造方法において、各工程は板部材32を1ピッチ搬送する毎に実施される。
【0064】
図3に示すように、先ず、図示しない搬送手段により搬送された板部材32に対し、成形装置31のパイロット孔成形金型34により、パイロット孔47、47を開ける。これらパイロット孔47は、工程毎に、各金型やステータコア製造ライン30上に設けられたパイロットピン(図示せず)と係合され、以後の各工程において、板部材32を所定位置に位置決めする機能を果たす。
【0065】
板部材32にパイロット孔47を開けた後、板部材32を1ピッチ搬送し(矢印Xの方向)、パイロット孔47をパイロットピンに係合させて、板部材32を位置決めする。パイロット孔47とパイロットピンとによる位置決め作業は、各工程とも同様に実施されるため、以下では説明を省略する。
【0066】
成形装置31のカシメカット成形金型36により、板部材32にカシメ用の凸部48を成形する。凸部48の裏側は、凹んでいる。
【0067】
その後、搬送手段によって板部材32を3ピッチ搬送し(矢印Xの方向)、カシメベンドスロット成形金型38により、板部材32に複数の長孔49を開ける。
【0068】
その後、搬送手段によって、板部材32を2ピッチ搬送し(矢印Xの方向)、窓抜き孔形成金型40により、板部材32に三日月状の窓抜き孔50を開ける。
【0069】
次に、積層体製造装置100によるステータコア10の製造方法を説明する。この製造方法においても、各工程は板部材32を1ピッチ搬送する毎に実施される。
【0070】
積層体製造装置100は、板部材32を1ピッチ搬送する間に、板部材32から分割コアプレート12を1個成形し、プレス装置110の下型110bを、回転中心Cを中心に120度回転させ、下型110b空間123の所定の位置に配置し、第1コアプレート14及び第2コアプレート18を交互に形成する。
第1コアプレート14と第2コアプレート18との間の位相角度は、60度であるので、回転装置200は、3枚の分割コアプレート12が空間123に収容されて第1コアプレート14が形成された後、その第1コアプレート14の上に第2コアプレート18を形成するとき、下型110bを180度回転させる。第2コアプレート18が形成された後、その第2コアプレート18の上に第1コアプレート14を形成するときも同様に、下型110bを180度回転させる。
【0071】
図4に示すように、板部材32が1ピッチ矢印Xの方向に搬送されると、板部材32の搬送方向で最も下流のパイロット孔47、47は、下パイロットピン130の位置に配置され、また、搬送方向で1つ上流のパイロット孔47、47は、上パイロットピン111の位置に配置される。
【0072】
次に、上型110aが下方向に移動すると、図6に示すように、上パイロットピン111がパイロット孔47を貫通して下押さえ部材124の挿入孔124bに挿通され、板部材32を、プレス装置110(下型110b)に対して位置決めする。次に、その位置決めした位置において板部材32を、上押さえ部材115と下押さえ部材124とにより挟んで保持する。
【0073】
また、第1パンチ112の押さえ面112aは、板部材32の上側面に接触して、板部材32を、第1パンチ112の押さえ面112aと、下治具125の上面と下治具125の上面の段差部125bより突出しているプッシャー126の円筒部126aの先端との間で挟む。
【0074】
図7に示すように、更に、圧縮コイル113は、板部材32を切断可能な下向きの付勢力を第1パンチ112に付与するだけの「剛性」を有している。そのため、上型110aが下方向(下型110bの方向)に移動すると、第1パンチ112は、板部材32を第1パンチ112のエッジ部112bに形成された切断刃と下治具125の端部125eに形成された切断刃とによりプレス切断し、板部材32から分割コアプレート12とスクラップ部材S1、S2とが繋がっている状態の切断部材32aを切り出す。
【0075】
このとき、切り出された切断部材32aを介した第1パンチ112の押圧力によって、プッシャー126の円筒部126aの先端は、下治具125の上面の段差部125bまで後退する。また、前述の「搬送方向で最も下流のパイロット孔47、47」は、切り出された切断部材32aのパイロット孔47、47になる。この切断部材32aのパイロット孔47、47に下パイロットピン130が挿通され、これにより、切り出された切断部材32aは、下パイロットピン130により位置決めされる。
【0076】
第1パンチ112は、切断部材32aを切り出した後も、圧縮コイル113の付勢力により、第1パンチ112の押さえ面112aと、下治具125の上面の段差部125b及び下治具125の上面の段差部125bまで後退したプッシャー126の円筒部126aの先端との間で、切断部材32aを強く挟んでいる。
【0077】
切り出された切断部材32aを介した第1パンチ112の押圧力によって、プッシャー126の円筒部126aの先端が下治具125の上面の段差部125bまで後退すると、プッシャー126の鍔部126bは下方に移動する。
切断部材32aを切り出すタイミングでは、ピン141に連結されている摺動部材144は、小径の摺動面Msaと摺動するように構成されている。そのため、ピン141は、弾性体143の膨張力によって(弾性体143は、寸法R1(図6参照)から寸法R2(図7参照)に膨張)、プッシャー126に近づく方向に移動する。従って、ピン141の先端が鍔部126bの上側に配置され、プッシャー126は、上方向(上型110a方向)への移動が規制され、プッシャー126の円筒部126aの先端が下治具125の上面の段差部125bまで後退している状態に保持される。
【0078】
図8に示すように、更に、上型110aが下死点位置に向けて下方向に移動すると、第2パンチ114は、下側のエッジ部114aに形成された切断刃と段差部125bの他方の端部125gに形成された切断刃とによって、切断部材32aをプレス切断し、分割コアプレート12とスクラップ部材S1、S2とを切り出す。
切断された分割コアプレート12は、第2パンチ114によって、インナーガイド121と、アウターガイド122との間の空間123に押し込まれ、第1コアプレート14と第2コアプレート18を形成する。この際、分割コアプレート12(板部材32)に設けられたカシメ用の凸部48を、分割コアプレート12を重ね合わせたときに積層方向で一致させ、凸部48を嵌合させることで、分割コアプレート12を結合させることができる。
【0079】
図9に示すように、上型110aが下死点位置を過ぎて逆に上方向に移動すると、第1パンチ112は、スクラップ部材S1、S2の把持を解除する。このとき、スクラップ部材S1のパイロット孔47には、下パイロットピン130が挿通されているので、スクラップ部材S1は段差部125bに配置された状態を維持する。
更に、上型110aが上方向に移動すると、上押さえ部材115は、板部材32の把持を解除し、上パイロットピン111は、切断部材32aのパイロット孔47、47から抜かれる。尚、この切断部材32aのパイロット孔47、47は、次のサイクルにおける「搬送方向で最も下流のパイロット孔47、47」になる。
【0080】
上パイロットピン111が切断部材32aのパイロット孔47、47から抜かれると、上型110aと下型110bとの係合が解除され、下型110bは回転可能になる。
【0081】
図10は、図3のb−b概略断面図である。この状態は、下型110bが回転可能になってから、下型110bのスクラップ部材S1が載置されている段差部125bの位置が、位置A(a−a線)から、位置B(c−c線)に向けて回転する途中のb−b線の位置まで回転した状態である。
このとき、スクラップ部材S1には、下型110bの回転により、外向きの力としての遠心力が作用する。しかし、スクラップ部材S1においてはパイロット孔47に下パイロットピン130が挿通されているので、スクラップ部材S1は、依然として下パイロットピン130から外れない。
【0082】
図11は、図3のc−c概略断面図である。この状態は、下型110bの回転により、摺動部材144と摺動する面が摺動面Msaから摺動面Msbに切り替わっている。摺動部材144と回転中心Cとの間の距離は、フレームMの摺動面Msaと回転中心Cとの間の距離Raから、フレームMの摺動面Msbと回転中心Cとの距離Rbに広がる。ここで、この摺動面Msaから摺動面Msbに移行する位置が、スクラップ部材S1を排出しようとするタイミングとなる。このタイミングにおいて、ピン141はプッシャー126から遠ざかる方向に移動する。
【0083】
このとき、プッシャー126の円筒部126aの先端は、下治具125の上面の段差部125bまで後退しており、ピン141の先端は、プッシャー126の鍔部126bの上側(上型110a)に位置している。そのため、ピン141がプッシャー126から遠ざかるように移動することにより、ピン141の先端の鍔部126bに対する上方向(上型110aの方向)への移動の規制がなくなる。このため、プッシャー126は、圧縮コイル128の付勢力により、上方向に移動する。そして、プッシャー126の円筒部126aの先端は、下治具125の上面の段差部125bより突出する。このとき、プッシャー126は、下パイロットピン130に差し込まれていたスクラップ部材S1、S2を下パイロットピン130から外れるように押し上げる。
従って、図12に示すように、スクラップ部材S1は、外向きの力としての遠心力により、プレス装置110(下型110b)の外部に排出される。スクラップ部材S2も、所定のタイミングで同様に外部に排出される。
【0084】
このように、本実施形態によれば、図4及び図6乃至図8に示す切断工程により薄板から切り出されたチップ状のスクラップ部材がプレス装置110に載置された状態で、図9乃至図11に示すように、下型110bを回転させて、スクラップ部材S1、S2に作用する遠心力により、スクラップ部材S1、S2をプレス装置110の外部に排出する。
【0085】
このため、切断工程が実行される毎に、薄板からチップ状のスクラップ部材が切り出されるので、スクラップ部材がプレス装置の下型から下型の外部に排出される排出工程において、スクラップ部材が撓んでしまうという虞はほとんどない。
【0086】
また、チップ状のスクラップ部材は、回転装置による回転によりプレス装置の下型の外部に排出されるので、薄板から切断され薄板部材セグメントから分離されたスクラップ部材を効率的に排出することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。
例えば、上記実施形態においては、外向きの力として遠心力を利用しているが、これに制限されない。外向きの力は、例えば、エアーによる吸引力、磁石による磁力でもよい。
また、上記実施形態においては、積層体における各層間の結合は、接着剤による結合であるが、これに制限されない。例えば、各層間の結合は、カシメによる結合でもよい。この場合、プレス装置によって薄板から薄板部材セグメントを成形する際に、薄板部材セグメントにカシメダボを形成しておき、第2パンチによって薄板部材セグメントを押し込む際にカシメダボ同士を結合させればよい。
上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を加えた形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0088】
C 回転中心
Msa 摺動面
Msb 摺動面
S1 スクラップ部材
S2 スクラップ部材
10 ステータコア
12 分割コアプレート
30 ステータコア製造ライン
31 成形装置
32 板部材(薄板)
100 積層体製造装置
110 プレス装置
110a 上型
110b 下型
111 上パイロットピン
112 第1パンチ
113 圧縮コイル
114 第2パンチ
115 上押さえ部材
124 下押さえ部材
125 下治具
126 プッシャー
128 圧縮コイル
130 下パイロットピン
143 弾性体
144 摺動部材
144a 摺動面
200 回転装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を備えたプレス装置によって薄板から切断された薄板部材セグメントを積層することにより積層体を製造するための積層体製造方法であって、
前記薄板が前記下型に載置された状態で前記下型によって前記薄板から前記薄板部材セグメント及びチップ状のスクラップ部材を切り出す切断工程と、
前記スクラップ部材が前記下型に載置された状態で、前記下型を回転させて、前記スクラップ部材に作用する外向きの力により、前記スクラップ部材を前記下型の外部に排出する排出工程と、を含む積層体製造方法。
【請求項2】
前記排出工程は、前記下型に設けられたスクラップ部材保持装置が前記スクラップ部材を保持した状態で前記下型を回転させる工程と、前記スクラップ部材を保持した状態で前記下型が回転しているときに、排出しようとするタイミングで、前記スクラップ部材保持装置が前記スクラップ部材の保持を解除する工程と、を含む請求項1に記載の積層体製造方法。
【請求項3】
薄板から切断された薄板部材セグメントを積層することにより積層体を製造する積層体製造装置であって、
前記薄板が載置された状態で前記薄板から前記薄板部材セグメント及びチップ状のスクラップ部材をプレスによって切断する上型及び下型を備えるプレス装置と、
前記スクラップ部材が前記下型に載置された状態で、前記下型を回転させて、前記スクラップ部材に作用する外向きの力により、前記スクラップ部材を前記下型の外部に排出する回転装置と、を含む積層体製造装置。
【請求項4】
前記下型は、同期装置によって駆動されるスクラップ部材保持装置を備え、
前記スクラップ部材保持装置は、前記下型を回転させているとき前記スクラップ部材を保持し、前記スクラップ部材を保持している状態で前記下型が回転しているとき、排出しようとするタイミングで、前記スクラップ部材の保持を解除する、請求項3に記載の積層体製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−75284(P2012−75284A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219674(P2010−219674)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】