説明

積層剥離容器

【課題】吹込成形によるデラミ容器の底部に形成されるピンチオフは、内層が外層底部から剥離する際に割れることがあるため、これを防止する。
【解決手段】容器本体1を外層5と、該外層内面に剥離可能に積層した内層6とで形成すると共に、該内外層間に空気を導入可能な空気導入部を外層5に設け、容器本体下部に、内層6と外層5とを共に屈曲して内層6の屈曲部を外層5の屈曲部に挟持させることにより形成された剥離規制部9を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層に内層が剥離可能に積層された積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
外層内面に内層を剥離可能に積層すると共に、空気を内外層間に導入するための空気導入孔を外層に設けて、空気を内層内に導入することなく、内外層間に導入させることで、空気が内層内の内容物に直接触れないようにしたいわゆるデラミ容器が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−193284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
吹込成形によって成形される容器の底部には、成形時に、内外層が重合接着されるピンチオフが形成されるが、このピンチオフは、内層が外層底部から剥離する際に、重合接着部が剥がれて割れる等するおそれがあった。
【0004】
本発明の目的は、内層が外層底部から剥離してもピンチオフが破損するおそれのない積層剥離容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器本体1を外層5と、該外層内面に剥離可能に積層した内層6とで形成すると共に、該内外層間に空気を導入可能な空気導入部8を外層5に設けた吹込成形による積層剥離容器において、
容器本体下部に、外層からの内層の剥離を規制する剥離規制部9を外方へ膨出させて設けたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記剥離規制部は、前記内層と外層とを共に屈曲して、内層の屈曲部を外層の屈曲部に挟持させることにより形成されていることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明は、前記屈曲部の成形後に、該屈曲部に上下方向の力を加えて圧潰させることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記剥離規制部は容器本体下部の周方向全周に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、容器本体の下部に、剥離規制部を設けたので、内層内の内容物が減少することにより、内層が収縮して外層から剥離しても、その剥離は剥離規制部で規制されるため、剥離が外層底部にまで及ぶことがなく、したがって、ピンチオフの破損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照しながら説明する。
【0011】
図1および図2において、1は容器本体で、胴部2上端から肩部を介して口頸部3を起立している。この口頸部には、例えば、液体噴出ポンプ等の種々の吸上げ機構が装着可能である。液体噴出ポンプを装着する場合には、後述するようにシリンダを胴部2内に挿入する。
【0012】
容器本体1は、外層5と、外層5に剥離可能に積層された内層6とから形成されていて、内外層の底部には、吹込成形による成形時に発生するピンチオフ7が形成されている。さらに、胴部2の肩部または口頸部3の外層5部分には空気導入孔8が形成されている。
【0013】
容器本体1の底部に近い下端部には外方へ張り出す屈曲部9が周方向全周に形成されている。屈曲部9は内外層6、5を共に外方へ屈曲させて形成したもので、内層6の屈曲された部分は外層5の屈曲された部分に挟持されている。なお、屈曲部9の位置としては容器本体底部に近い下端部に限らず、容器本体1の下部であれば特にその位置に限定はない。
【0014】
次に、屈曲部9の成形方法について簡単に説明する。屈曲部9を形成するには、成形金型に溝を形成して、空気吹込み時に、該溝内へ内外層からなるパリソンの一部が押し込まれるようにする。成形後、成形金型から積層品を取り出し、図3に示すように、屈曲された部分を治具Aにクランプしてプレス加工により圧潰する。
【0015】
あるいは成形金型を上下に二分割して下型を上動可能に設けておき、空気吹き込み時に、パリソンの一部を溝内へ押し込むと同時に下型を上動させて溝内のパリソンを圧潰させることによっても成形可能である。
【0016】
次に作用について説明する。
【0017】
本発明は、上記のように、液体噴出ポンプ等の種々の吸上げ機構を備えた注出容器に適用できるが、ここでは液体噴出ポンプが装着された注出容器への適用例について説明する。
【0018】
この適用例を示すのが図4で、まず、構成について簡単に説明すると、口頸部2に嵌合された装着筒を介して内層6内へシリンダ10が垂下されていて、該シリンダ10内面には摺動自在に筒状ピストン11が嵌合されている。該筒状ピントン11から起立する作動部材12の上端にはノズル付き押下げヘッド13が装着されている。
【0019】
液体を噴出させるには、押下げヘッド13を押し下げればよく、すると筒状ピストン11が下降し、シリンダ10内の液体が作動部材12を介してノズルから噴出する。噴出後、押下げヘッド13から手を離すと、図示しないばねの付勢力を受けて作動部材12が上昇する。
【0020】
するとシリンダ11に設けられた図示しない吸上げ弁を介してシリンダ11内へ内層6内の液体が吸上げられる。こうして内層6内の液体が減少すると、内層6内が負圧化して内層6が収縮し、外層5から剥離する。内層6が外層5から剥離すると、この内外層間に空気導入孔8を介して空気が導入される。
【0021】
この外層5からの内層6の剥離は内層6の上部から始まって下部へと進行する。ある程度剥離が下方へ進行して、屈曲部9に達すると、屈曲部9では内層6の屈曲された部分が外層5の屈曲された部分に挟持されているため、図5および図6に示すように、内層6は外層5から剥離することができず、屈曲部9より下方の内層6部分は剥離不能となる。
【0022】
このため容器本体1の底部では剥離が生じることがなく、したがって、ピンチオフ7の接合部に割れが生じて破損することがない。仮に、内層6の剥離が容器本体1の底部にまで及ぶとすると、図7に示すようにピンチオフ7の接合部が、図面において左右に割れることになる。
【0023】
なお、上記では、屈曲部9を圧潰させた例について説明したが、必ずしも圧潰させる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る積層剥離容器の右半部を示す正面図である。
【図2】積層剥離容器の下部を示す縦断面図である。
【図3】剥離規制部の形成時の状態を示す説明図である。
【図4】本発明を液体噴出ポンプの付きの注出容器に適用した例を示す一部断面図である。
【図5】内層の剥離状態を示す図2相当図である。
【図6】内層の剥離状態を示す作用説明図である。
【図7】内層がすべて剥離した場合のピンチオフ破損状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 容器本体
5 外層
6 内層
8 空気導入部
9 剥離規制部(屈曲部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体1を外層5と、該外層内面に剥離可能に積層した内層6とで形成すると共に、該内外層間に空気を導入可能な空気導入部8を外層5に設けた吹込成形による積層剥離容器において、
容器本体下部に、外層からの内層の剥離を規制する剥離規制部9を外方へ膨出させて設けたことを特徴とする積層剥離容器。
【請求項2】
前記剥離規制部9は、前記内層6と外層5とを共に屈曲して、内層6の屈曲部を外層5の屈曲部に挟持させることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記屈曲部の成形後に、該屈曲部に上下方向の力を加えて圧潰させることを特徴とする請求項2に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記剥離規制部9は容器本体下部の周方向全周に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の積層剥離容器。





























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−12786(P2009−12786A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173504(P2007−173504)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】