説明

積層型圧電素子

【課題】アクチュエータ部での変位応答性をより均一にすることができる積層型圧電素子を提供する。
【解決手段】積層型圧電素子1は、積層体2と、第1,第2及び第3の内部電極と、第1,第2,第3及び第4の外部電極3〜6とを備えている。第1の外部電極3は、第1の側面に設けられ、第1の内部電極と接続される。第2の外部電極4は、第2の側面に設けられ、第2及び第3の内部電極に接続される。第3の外部電極5a,5bは、第1の側面に設けられ、第3の内部電極に接続される。第4の外部電極6は、第2の主面2dに設けられ、第3の外部電極5a,5bに接続される。積層体2には、第2の側面と第2の主面2dとの角部分に切欠面2gが形成されており、切欠面2g上に設けられる連結電極7によって第2及び第4の外部電極4,6が互いに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載された積層型圧電素子が知られている。この積層型圧電素子は、圧電体層と第1及び第2の駆動用内部電極とが交互に積層された駆動部、及び圧電体層と接続用内部電極とが積層された接続部とを有する積層体と、当該積層体の一方の側面に形成され第1の駆動用内部電極と導通する駆動用外部電極と、積層体の一方の側面に形成され接続用内部電極と導通する接続用外部電極と、積層体の他方の側面に形成され第2の駆動用内部電極及び接続用内部電極と導通する共通外部電極とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−037307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した積層型圧電素子では、接続用内部電極によって接続用外部電極と共通外部電極とが電気的に接続されている。このような積層型圧電素子から構成される圧電アクチュエータでは、この圧電アクチュエータが実装された際、接続用外部電極から共通外部電極に至る導通経路が長い位置に配置されたアクチュエータ部(駆動部)の共通外部電極の抵抗値が、導通経路が短い位置に配置されたアクチュエータ部に比べて大きくなる。これにより、導通経路が長い位置に配置されたアクチュエータの立ち上がりが、導通経路が短い位置のアクチュエータ部よりも遅くなるため、アクチュエータ部において応答にばらつきが生じるといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アクチュエータ部での変位応答性をより均一にすることができる積層型圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層型圧電素子は、積層体と、第1,第2及び第3の内部電極と、第1,第2,第3及び第4の外部電極とを備えている。積層体は、複数の圧電体層が積層されると共に、互いに対向する第1及び第2の端面と、第1及び第2の端面を連結するように伸び且つ複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する第1及び第2の主面と、第1及び第2の主面を連結するように伸び且つ互いに対向する第1及び第2の側面とを有する。第1及び第2の内部電極は、積層体の第1及び第2の端面の間に位置する第1の部分に、複数の圧電体層のうち少なくとも一の圧電体層を介して交互に配置される。第3の内部電極は、積層体の第1の端面側に位置する第2の部分に配置される。
【0007】
第1の外部電極は、第1の側面に設けられ、第1の内部電極と接続される。第2の外部電極は、第2の側面に設けられ、第2及び第3の内部電極に接続される。第3の外部電極は、第1の外部電極と電気的に絶縁するように第1の側面に設けられ、第3の内部電極に接続される。第4の外部電極は、第1の外部電極と電気的に絶縁するように第2の主面に設けられ、第3の外部電極に接続される。積層体には、第2の側面と第2の主面との角部分に第1の切欠部が形成されており、第1の切欠部上に設けられる連結電極によって第2及び第4の外部電極が互いに接続されている。
【0008】
本発明に係る積層型圧電素子では、第1の切欠部上に設けられる連結電極によって第2及び第4の外部電極が互いに接続されている。即ち、第2及び第4の外部電極が、切欠部上に形成された連結電極により、非直角な状態で接続される。この場合、第2及び第4の外部電極間における抵抗が低下し、第2の外部電極から第4の外部電極への電流の流れ込みを多くし、長手方向に伸びる第2及び第4の外部電極の両電極を効率的に用いることができる。このように両外部電極を用いることにより、第2の外部電極に接続される第2の内部電極と、第4の外部電極に接続される第3の外部電極との間での抵抗を、その距離にかかわらず、より均一なものとすることができ、低抵抗化できる。そして、低抵抗化により、アクチュエータ部での変位応答性をより均一にすることが可能となる。
【0009】
また、上述した積層型圧電素子では、アクチュエータ部の構成要素の1つとなる第2の内部電極に接続される第2の外部電極と、FPC等に接続される第3の外部電極とが第3の内部電極によって接続されている。この場合、第2及び第3の外部電極が第3の内部電極によっても接続されており、第2の外部電極に接続される第2の内部電極と、第3の外部電極との間での抵抗を、その距離にかかわらず、より均一なものとすることができる。
【0010】
上述した積層型圧電素子において、第4の外部電極の厚みが第2の外部電極の厚みよりも厚いほうが好ましい。この場合、第4の外部電極を流れる電流の抵抗を更に小さくすることができ、第2の内部電極と第3の外部電極との間での抵抗を更に低抵抗化させることができる。
【0011】
上述した積層型圧電素子において、連結電極の厚みが第2の外部電極の厚みよりも厚いほうが好ましい。この場合、第2の外部電極から第4の外部電極に流れ込む電流を更に多くすることができ、第2及び第4の外部電極の両電極を更に効率的に用いることができる。
【0012】
上述した積層型圧電素子において、積層体には、第1の部分における第1の側面と第2の主面との角部分に第2の切欠部が形成されており、第1の内部電極と第4の外部電極とは、第2の切欠部によって互いに電気的に絶縁されていることが好ましい。この場合、第1の外部電極を第2の主面側に十分に広げると共に第4の外部電極を第1の側面側に十分に広げることができ、これにより、それぞれの抵抗値を低下させることができる。また、第1及び第4の外部電極を形成する際、両電極が電気的に確実に絶縁されるようにマスキングを行うといった作業を省略することができる。これにより、積層型圧電素子を容易に作製することが可能となる。
【0013】
上述した積層型圧電素子において、積層方向における第1の切欠部の切欠き高さh1は、積層方向における第2の切欠部の切欠き高さh2よりも小さくなるようにしてもよい。また、第1の切欠部が、第2の内部電極の最下層よりも積層方向において第2の主面側に形成されていてもよい。この場合、第2の内部電極を確実に配置させることができる。
【0014】
上述した積層型圧電素子において、第2の内部電極は、第2の主面に対向していることが好ましい。この場合、第2の主面と第2の内部電極との間に層が確実に不活性となり、省電力とすることができる。
【0015】
上述した積層型圧電素子において、積層体には、第1の側面において、第1及び第3の外部電極の間に溝が形成されており、第1及び第3の外部電極は、溝によって互いに電気的に絶縁されていることが好ましい。この場合、第1及び第3の外部電極を、マスキングを行うことなしに、確実に、物理的且つ電気的に絶縁させることができる。これにより、積層型圧電素子を容易に作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アクチュエータ部での変位応答性をより均一にすることができる積層型圧電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る積層型圧電素子の斜視図である。
【図2】(a)は、図1におけるIIa―IIa線断面図であり、(b)は、図1におけるIIb―IIb線断面図である。
【図3】図1に示す積層型圧電素子から構成された圧電アクチュエータの斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る積層型圧電素子の斜視図である。
【図5】図4におけるV−V線断面図である。
【図6】図5に示す積層型圧電素子から構成された圧電アクチュエータの斜視図である。
【図7】図6に示す圧電アクチュエータを矢印VIIから見た際の斜視図である。
【図8】図6に示す圧電アクチュエータを矢印VIIIから見た際の斜視図である。
【図9】圧電素子の外部電極の厚みを変えた例を示す断面図であり、(a)は、第2実施形態を示し、(b)は、外部電極の厚みが同一の例を示し、(c)は、外部電極の底面厚みが他よりも厚い例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
[第1実施形態]
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る積層型圧電素子1の構成について説明する。積層型圧電素子1は、積層体2と、第1の外部電極3と、第2の外部電極4と、第3の外部電極5a,5bと、第4の外部電極6と、連結電極7と、第1の内部電極31と、第2の内部電極32と、第3の内部電極33とを備えている。積層型圧電素子1は、例えば、X方向における長さが37mm程度に設定され、Y方向における幅が1.9mm程度に設定され、Z方向における厚みが1mm程度に設定されている。
【0020】
積層体2は、長尺の略直方体形状を呈しており、第1及び第2の端面2a,2bと、第1及び第2の主面2c,2dと、第1及び第2の側面2e,2fとを有している。第1及び第2の端面2a,2bは、積層体2の長手方向に向かい合って互いに平行をなしている。第1及び第2の主面2c,2dは、両端面2a,2b間を連結するように伸び且つ圧電体層30(後述する)の積層方向(Z方向)において互いに対向する。第1及び第2の側面2e,2fは、両主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する。
【0021】
積層体2は、複数の圧電体層30が積層されて形成されており、第1の部分20と、第2の部分21aと、第3の部分21bとを含んでいる。第1の部分20は、圧電的に活性な領域を含む部分であり、積層体2において、第1及び第2の端面2a,2bの間に位置している。具体的には、第1の部分20は、積層体2の中央部分に位置している。第1の部分20では、図2の(a)に示されるように、第1及び第2の内部電極31,32が圧電体層30を介して交互に積層されている。圧電体層30は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti1−x)O)を主成分とする圧電セラミックス材料から構成されており、その厚みは、例えば10μm〜50μm程度である。実際の積層型圧電素子1では、各圧電体層30は、視認できない程度に一体化されている。
【0022】
第1の内部電極31は、圧電体層30の積層方向において、所定の間隔をあけて複数(ここでは4層)配置されている。第1の内部電極31は、一端が第1の側面2eに引き出されており、第1の側面2eに露出している。第2の内部電極32は、圧電体層30の積層方向において、所定の間隔をあけて複数(ここでは5層)配置されている。第2の内部電極32は、一端が第2の側面2fに引き出されており、第2の側面2fに露出している。第1及び第2の内部電極31,32は、例えば銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を主成分とする導電材料から構成されており、その厚みは、例えば0.5μm〜3μm程度である。
【0023】
第1の内部電極31と第2の内部電極32とは、圧電体層30を挟んで互いに対向するように、圧電体層30の対向方向に沿って交互に配置されている。積層方向で見て、第1の主面2c側及び第2の主面2d側には、第2の内部電極32が位置しており、下方に位置する第2の内部電極32は、第2の主面2dに対向している。
【0024】
第2の部分21a及び第3の部分21bは、圧電的に不活性な領域を含む部分であり、積層体2の第1の端面2a側、第2の端面2b側にそれぞれ位置している。すなわち、第2の部分21a及び第3の部分21bは、積層体2の長手方向(第1及び第2の端面2a,2bの対向方向であるX方向)において、第1の部分20を挟むように設けられている。第2の部分21a及び第3の部分21bでは、図2の(b)に示されるように、圧電体層30と第3の内部電極33とが交互に積層されている。第2の部分21aと第3の部分21bとは、同様の構成を有している。
【0025】
第3の内部電極33は、圧電体層30の積層方向において、所定の間隔をあけて複数(ここでは9層)配置されている。第3の内部電極33は、一端が第1の側面2eに引き出されていると共に、他端が第2の側面2fに引き出されており、両側面2e,2fに露出している。第3の内部電極33は、第1及び第2の内部電極31,32と物理的且つ電気的に絶縁されている。第3の内部電極33は、第2の外部電極4と第3の外部電極5a,5bそれぞれとを接続する接続用の内部電極である。第3の内部電極33は、例えば銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を主成分とする導電材料から構成されており、その厚みは、例えば0.5μm〜3μm程度である。
【0026】
第1の外部電極3は、第1の側面2eに設けられている。第1の外部電極3は、第1の側面2eにおいて第1の部分20に対応する位置に形成されており、第1の内部電極31の一端に物理的且つ電気的に接続されている。第1の外部電極3は、Cr,Cu/Ni,Auの3層の金属膜からなる。以下で説明する各外部電極4〜6及び連結電極7も同様の材料から構成される。第1の外部電極3の厚みは、例えば0.3μm〜5.0μm程度である。
【0027】
第2の外部電極4は、第2の側面2fに設けられている。第2の外部電極4は、第2の側面2fの全面に亘って形成されており、第2の内部電極32及び第3の内部電極33の一端に物理的且つ電気的に接続されている。第2の外部電極4は、第2及び第3の内部電極32,33のいずれにも接続される共通外部電極である。第2の外部電極4の厚みは、第1の外部電極3と同様の厚みであり、例えば0.3μm〜5.0μm程度である。
【0028】
第3の外部電極5a,5bは、第1の側面2eに設けられている。第3の外部電極5a,5bは、第1の側面2eにおいて、第2の部分21a及び第3の部分21bに対応する位置、すなわち、第1の側面2eの長手方向の両端2a,2b側に形成されており、第3の内部電極33の一端に物理的且つ電気的に接続されている。第3の外部電極5a,5bと第1の外部電極3とは、第1の側面2e上において、互いに電気的に絶縁されている。第3の外部電極5a,5bの厚みは、第1及び第2の外部電極3,4と同様の厚みであり、例えば0.3μm〜5.0μm程度である。
【0029】
第4の外部電極6は、第2の主面2dに設けられている。第4の外部電極6は、第2の主面2dの全面に亘って形成されており、その両端において第3の外部電極5a,5bに物理的且つ電気的に接続されている。第4の外部電極6は、第1の外部電極3と電気的に絶縁されている。第4の外部電極6は、基板(支持体)等に絶縁性接着剤にて接続される際の接続面となる。第4の外部電極6の厚みは、他の外部電極3,4,5a,5bよりも2.5倍〜3.3倍程度厚くなるように形成されており、例えば0.75μm〜3.3μm程度である。
【0030】
連結電極7は、第2の側面2fと第2の主面2dとの角部分の切欠面2g(第1の切欠部)に設けられている。この切欠面2gは、積層体2の長手方向(X方向)全体に亘って形成されている。切欠面2gは、高さh1の切欠部であり、その上端が、最下層に位置する第2の内部電極32よりも積層方向において下になるように形成されている。すなわち、切欠面2gは、第2の内部電極32の最下層よりも積層方向において第2の主面2d側に形成されている。
【0031】
連結電極7は、このような切欠面2gの全面に亘って形成されており、第2の外部電極4と第4の外部電極6とをその長手方向全体に亘って連結している。連結電極7は、互いに直交する側面2f及び主面2dの角部において斜めになるように形成されているため、互いに直交する両外部電極4,6間の電流の流れをスムーズにし、両外部電極4,6が直交して直接接続される場合に比べ、低抵抗化を実現している。連結電極7の厚みは、他の外部電極3,4,5a,5bよりも1.2倍〜2.4倍程度厚くなるように形成されており、例えば0.36μm〜2.4μm程度である。なお、本実施形態では、連結電極7の厚みは、第4の外部電極6よりは薄く形成されているが、同等程度の厚みとしてもよい。
【0032】
第1外部電極3と第2外部電極5a,5bとの間には、溝34,35がそれぞれ形成されている。すなわち、溝34,35は、第1の部分20と第2の部分21a及び第3の部分21bとの境界部分に形成されている。溝34,35は、積層体2の第1の側面2eにおいて、圧電体層30の積層方向に沿って形成されている。この溝34,35により、第1の外部電極3と第3の外部電極5a,5bとは、物理的且つ電気的に絶縁されている。
【0033】
積層体2の第1の部分20において、第1の側面2eと第2の主面2dとの角部分には、切欠面2h(第2の切欠部)が設けられている。切欠面2hは、第1の側面2eと第2の主面2dとの角部分において積層体2の長手方向に沿って形成されており、溝34と溝35との間に設けられている。切欠面2hは、高さh2の切欠部であり、その上端が、最下層に位置する第1の内部電極31よりも積層方向において下になるように形成されている。切欠面2hは、側面2e及び主面2dに対して傾斜する傾斜面となっている。この切欠面2hにより、第1及び第4の外部電極3,6は、互いに物理的且つ電気的に絶縁される。なお、切欠面2gの切欠き高さh1は、この切欠面2hの切欠き高さh2よりも小さくなっている。
【0034】
続いて、以上のように構成された積層型圧電素子1から構成される圧電アクチュエータについて説明する。図3は、図1に示す積層型圧電素子から構成された圧電アクチュエータを示す斜視図である。図3に示すように、圧電アクチュエータ50は、積層型圧電素子1の第1の部分20が、溝34,35と平行に伸びるスリットSにより、複数(ここでは8列)のアクチュエータ部51a〜51hに分割されている。圧電アクチュエータ50は、例えばインクジェットプリンタの液体吐出ヘッドとして用いられる。
【0035】
圧電アクチュエータ50では、第1の外部電極3と第2の外部電極4との間に電圧を印加すると、第1の内部電極31と第2の内部電極32との間にも電圧が印加される。そして、アクチュエータ部51a〜51hでは、圧電体層30において、第1の内部電極31と第2の内部電極32との間の領域に電界が生じ、当該領域が変位する。このとき、第2の部分21a及び第3の部分21bでは、圧電体層30において、第3の内部電極33の間に電界が生じないため、変位が生じない。
【0036】
続いて、積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
【0037】
まず、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電セラミックス材料に有機バインダや有機溶剤等を混合して基体ペーストを作製し、その基体ペーストを用いて圧電体層30となるグリーンシートをドクターブレード法により成形する。また、所定比率の銀とパラジウムとからなる金属材料に有機バインダや有機溶剤等を混合して、電極パターン形成用の導電性ペーストを作製する。
【0038】
次に、導電ペーストを用いて、第1〜第3の内部電極31〜33に対応する電極パターンのそれぞれをグリーンシート上にスクリーン印刷法により形成する。そして、第1の内部電極31及び第3の内部電極33に対応する電極パターンが形成されたグリーンシート、第2の内部電極32及び第3の内部電極33に対応する電極パターンが形成されたグリーンシート、及び、圧電体層30となるグリーンシートを積層して、積層体グリーンを作製する。
【0039】
続いて、積層体グリーンを所定の温度(例えば60℃程度)で加熱しながら、積層方向に所定の圧力でプレスした後、積層体グリーンを所定の大きさに切断する。その後、切欠面2gに対応する角部を長手方向に沿って切断する。そして、積層体グリーンを所定の温度(例えば400℃程度)で脱脂した後、所定の温度(例えば1100℃程度)で所定時間焼成して、積層体2を得る。
【0040】
続いて、積層体2の第2の主面2dを下にし、その下方から、Cr,Cu/Ni,Auの順に3層の金属膜をスパッタリング法により積層体2へ向けて飛ばす。飛ばされた材料は、第2の主面2dだけでなく、側面2e,2fや切欠面2gにも回り込んで付着し、これにより、外部電極3〜6及び連結電極7に対応する外部電極が形成される。第2の主面2dには、スパッタリングされた材料が最も多く付着するため、上述したように、第2の主面2dに形成される第4の外部電極6の厚みが他の外部電極3,4,5a,5bよりも厚くなる。また、切欠面2gにも、第2の主面2dに次いで多くの材料が付着するため、切欠面2gに形成される連結電極7の厚みも、外部電極3,4,5a,5bよりも厚くなる。
【0041】
そして、外部電極等が形成された積層体2において、側面2eに対応する面において積層方向に沿って溝34,35を形成することにより、外部電極を分断して、第1の外部電極3及び第3の外部電極5a,5bを形成する。また、積層体2の側面2eと主面2dとの角部分に切欠面2hを形成することにより、外部電極を分断して、第1の外部電極3と第4の外部電極とを形成する。以上により、積層型圧電素子1が得られる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る積層型圧電素子1では、切欠面2g上に設けられる連結電極7によって第2及び第4の外部電極4,6が互いに接続されている。即ち、第2及び第4の外部電極4,6が、切欠面2g上に形成された連結電極7により、互いに非直角な状態で接続される。このため、第2及び第4の外部電極4,6間における抵抗が低下し、第2の外部電極4から第4の外部電極6への電流の流れ込みを多くし、長手方向に伸びる第2及び第4の外部電極4,6の両電極を効率的に用いることができる。このように両外部電極4,6を用いることにより、第2の外部電極4に接続される第2の内部電極32と、第4の外部電極6に接続される第3の外部電極5a,5bとの間での抵抗を、その距離にかかわらず、低くすることができる。そして、このような低抵抗化により、アクチュエータ部51a〜51hでの変位応答性をより均一にすることが可能となる。
【0043】
また、上述した積層型圧電素子1では、アクチュエータ部51a〜51hの構成要素の1つとなる第2の内部電極32に接続される第2の外部電極4と、FPC等に接続される第3の外部電極5a,5bとが第3の内部電極33によって接続されている。このため、第2及び第3の外部電極4,5a,5bが第3の内部電極33によっても接続されており、第2の外部電極4に接続される第2の内部電極32と、第3の外部電極5a,5bとの間での抵抗を、その距離にかかわらず、より低くさせることができる。
【0044】
また、積層型圧電素子1において、第4の外部電極6の厚みが第2の外部電極4の厚みよりも厚くなっている。このため、第4の外部電極6を流れる電流の抵抗を更に小さくすることができ、第2の内部電極32と第3の外部電極5a,5bとの間での抵抗を更に低くさせることができる。
【0045】
また、積層型圧電素子1において、連結電極7の厚みが第2の外部電極4の厚みよりも厚くなっている。このため、第2の外部電極4から第4の外部電極6に流れ込む電流を更に多くすることができ、第2及び第4の外部電極4,6の両電極を更に効率的に用いることができる。
【0046】
また、積層型圧電素子1において、積層体2には、第1の部分20における第1の側面2eと第2の主面2dとの角部分に切欠面2hが形成されており、第1の内部電極31と第4の外部電極6とは、切欠面2hによって互いに電気的に絶縁されている。このため、第1の外部電極3を第2の主面2d側に十分に広げると共に第4の外部電極6を第1の側面2e側に十分に広げることができ、これにより、それぞれの抵抗値を低下させることができる。また、第1及び第4の外部電極3,6を形成する際、両電極が電気的に確実に絶縁されるようにマスキングを行うといった作業を省略することができる。これにより、積層型圧電素子1を容易に作製することが可能となる。
【0047】
また、積層型圧電素子1において、第2の内部電極32は、第2の主面2dに対向するようになっている。このため、第2の主面2dと第2の内部電極32との間に層が確実に不活性となり、省電力とすることができる。
【0048】
また、積層型圧電素子1において、積層体2には、第1の側面2eにおいて、第1及び第3の外部電極3,5a,5bの間に溝34,35が形成されており、第1及び第3の外部電極3,5a,5bは、溝34,35によって互いに電気的に絶縁されている。このため、第1及び第3の外部電極3,5a,5bを、マスキングを行うことなしに、確実に、物理的且つ電気的に絶縁させることができる。これにより、積層型圧電素子1を容易に作製することが可能となる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、図4及び図5を参照して、第2実施形態に係る積層型圧電素子60について説明する。本実施形態に係る積層型圧電素子60では、第1の部分20に加え、第2の部分71a及び第3の部分71bにおいても、積層体62の第1の側面2eと第2の主面2dとの角部分を切り欠いて、切欠面2iを形成している。積層型圧電素子60では、切欠面2iにより、第3の外部電極65a,65bと第4の外部電極66とを分断しており、両者が直接接続されない構成となっている。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0050】
積層型圧電素子60は、積層体62と、第1の外部電極3と、第2の外部電極4と、第3の外部電極65a,65bと、第4の外部電極66と、連結電極7と、第1の内部電極31と、第2の内部電極32と、第3の内部電極33とを備えている。積層体62は、第1実施形態と同様に、第1及び第2の端面2a,2bと、第1及び第2の主面2c,2dと、第1及び第2の側面2e,2fとを有する。また、積層体62は、第1の部分20と、第2の部分71aと、第3の部分71bとを含んでいる。
【0051】
第2の部分71a及び第3の部分71bは、圧電的に不活性な領域を含む部分であり、積層体62の第1の端面2a側、第2の端面2b側にそれぞれ位置している。第3の外部電極65a,65bは、第1の側面2eにおいて、第2の部分71a及び第3の部分71bに対応する位置、すなわち、第1の側面2eの長手方向の両端2a,2b側に形成されており、第3の内部電極33の一端に物理的且つ電気的に接続されている。第3の外部電極65a,65bと第1の外部電極3とは、第1の側面2e上において、互いに電気的に絶縁されている。また、第3の外部電極65a,65bは、切欠面2iにより、第4の外部電極66と直接接続されない構成になっており、第3の内部電極33を介して、第2の外部電極4と接続されるようになっている。
【0052】
第4の外部電極66は、第2の主面2dに設けられている。第4の外部電極66は、第2の主面2dの全面に亘って形成されており、連結電極7によって、その長手方向全体に亘って、第2の外部電極4に連結されている。第4の外部電極66の厚みは、第1実施形態と同様に、他の外部電極3,4,65a,65bよりも2.5倍〜3.3倍程度厚くなるように形成されており、例えば0.75μm〜3.3μm程度である。なお、切欠面2iは、切欠面2hと共に切り欠き加工されるため、同一の傾斜角からなる傾斜面となっているが、切欠面2iの傾斜角を切欠面2hと異ならせてもよい。また、他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0053】
続いて、以上のように構成された積層型圧電素子60から構成される圧電アクチュエータについて説明する。図6〜図8は、図4に示す積層型圧電素子から構成された圧電アクチュエータを示す斜視図である。図6〜図8に示すように、圧電アクチュエータ80は、積層型圧電素子60の第1の部分20が、溝34,35と平行に伸びるスリットSにより、複数(ここでは8列)のアクチュエータ部81a〜81hに分割されている。
【0054】
圧電アクチュエータ80では、第1の外部電極3と第2の外部電極4との間に電圧を印加すると、第1の内部電極31と第2の内部電極32との間にも電圧が印加される。そして、アクチュエータ部81a〜81hでは、圧電体層30において、第1の内部電極31と第2の内部電極32との間の領域に電界が生じ、当該領域が変位する。このとき、第2の部分71a及び第3の部分71bでは、圧電体層30において、第3の内部電極33の間に電界が生じないため、変位が生じない。
【0055】
ここで、積層型圧電素子60から構成された圧電アクチュエータ80のアクチュエータ部81a〜81hでの変位応答性の均一性について説明する。図6〜図8に示されるように、圧電アクチュエータ80では、第1実施形態と同様に、長手方向に伸びる第2の外部電極4が、傾斜状に形成された連結電極7によって第4の外部電極66に接続されており、第2の外部電極4から厚みの厚い第4の外部電極66へ電流が流れ込むやすくなっており、両外部電極4,66を有効に使うことができている。このため、例えば、内側のアクチュエータ部81eと第3の外部電極65a,65b間の抵抗と、外側のアクチュエータ部81hと第3の外部電極65a,65b間の抵抗とを略同程度、つまり低抵抗化することができる。
【0056】
各アクチュエータ81a〜81hと第3の外部電極65a,65bとの間の抵抗がより低くなる点について、従来のアクチュエータ構成と本実施形態の構成とを比較した例を以下に示す。図9の(a)に示されるように、本実施形態に係るアクチュエータ80の外部電極構成においては、例えば膜厚比率(第2の外部電極:第4の外部電極)を1:2.5として第3の外部電極65a,65b間の合成抵抗を算出してみると、例えば2.26Ωとなる。これに対し、図9の(b)に示されるように、連結電極7を有さず且つ膜厚比率(第2の外部電極:第4の外部電極)を1:1として第3の外部電極65a,65b間の合成抵抗を算出してみると、例えば2.91Ωとなる。また、図9の(c)に示されるように、連結電極7を有さず且つ膜厚比率(第2の外部電極:第4の外部電極)を1:2.5として第3の外部電極65a,65b間の合成抵抗を算出してみると、例えば2.41Ωとなる。
【0057】
このように、第2実施形態においても、両外部電極4,66及び連結電極7を用いることにより、第2の外部電極4に接続される第2の内部電極32と、第3の外部電極65a,65bとの間での抵抗を、その距離にかかわらず、より低くすることができる。そして、このような低抵抗化により、アクチュエータ部81a〜81hでの変位応答性をより均一にすることが可能となる。なお、本実施形態では、第1実施形態における他の効果も同様に奏することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、圧電アクチュエータ50,80が8列のアクチュエータ部51a〜51h,81a〜81hを備えた場合を例として説明したが、アクチュエータ部の数はこれらに限られる必要はなく、例えば300列のアクチュエータ部を備えるアクチュエータであってもよい。この場合、第3の外部電極5a,5b等と第2の内部電極32との間の抵抗値による応答性への影響が大きいので、上述した構成を備えることにより、アクチュエータ部での変位応答性をより均一にすることが可能となる。
【0059】
また、本発明に係る積層型圧電素子から構成される圧電アクチュエータは、上述したように、第2の主面2d側の面が絶縁性の接着剤で台座等に接着される場合に有効であるが、導電性の接着剤で導電性を有する台座等に接着される場合に用いてももちろんよい。
【符号の説明】
【0060】
1,60…積層型圧電素子、2,62…積層体、2g…切欠面、2h…切欠面、3…第1の外部電極、4…第2の外部電極、5a,5b,65a,65b…第3の外部電極、6,66…第4の外部電極、7…連結電極、20…第1の部分、21a,71a…第2の部分、21b,71b…第3の部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電体層が積層されると共に、互いに対向する第1及び第2の端面と、前記第1及び第2の端面を連結するように伸び且つ前記複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する第1及び第2の主面と、前記第1及び第2の主面を連結するように伸び且つ互いに対向する第1及び第2の側面とを有する積層体と、
前記積層体の前記第1及び第2の端面の間に位置する第1の部分に前記複数の圧電体層のうち少なくとも一の圧電体層を介して交互に配置される第1及び第2の内部電極と、
前記積層体の前記第1の端面側に位置する第2の部分に配置される第3の内部電極と、
前記第1の側面に設けられ、前記第1の内部電極と接続される第1の外部電極と、
前記第2の側面に設けられ、前記第2及び第3の内部電極に接続される第2の外部電極と、
前記第1の外部電極と電気的に絶縁するように前記第1の側面に設けられ、前記第3の内部電極に接続される第3の外部電極と、
前記第1の外部電極と電気的に絶縁するように前記第2の主面に設けられ、前記第3の外部電極に接続される第4の外部電極と、を備え、
前記積層体には、前記第2の側面と前記第2の主面との角部分に第1の切欠部が形成されており、前記第1の切欠部上に設けられる連結電極によって前記第2及び第4の外部電極が互いに接続されていることを特徴とする積層型圧電素子。
【請求項2】
前記第4の外部電極の厚みが前記第2の外部電極の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
【請求項3】
前記連結電極の厚みが前記第2の外部電極の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型圧電素子。
【請求項4】
前記積層体には、前記第1の部分における前記第1の側面と前記第2の主面との角部分に第2の切欠部が形成されており、
前記第1の内部電極と前記第4の外部電極とは、前記第2の切欠部によって互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の積層型圧電素子。
【請求項5】
前記積層方向における前記第1の切欠部の切欠き高さh1は、前記積層方向における前記第2の切欠部の切欠き高さh2よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の積層型圧電素子。
【請求項6】
前記第1の切欠部は、前記第2の内部電極の最下層よりも前記積層方向において前記第2の主面側に形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の積層型圧電素子。
【請求項7】
前記第2の内部電極は、前記第2の主面に対向していることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の積層型圧電素子。
【請求項8】
前記積層体には、前記第1の側面において、前記第1及び第3の外部電極の間に溝が形成されており、
前記第1及び第3の外部電極は、前記溝によって互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の積層型圧電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−98426(P2013−98426A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241410(P2011−241410)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)