説明

積層型電子部品および積層型電子部品の製造方法

【課題】積層型電子部品を構成する磁性体層と非磁性体層との間にデラミネーションが生じる可能性がある。
【解決手段】複数の非磁性体層を積層してなる積層体と、積層体に埋設されたコイル状の内部導体と、内部導体の中心軸方向から内部導体を平面透視した場合に内部導体と重なり合うように、積層体の内部または表面に配設された磁性体層と、を備え、磁性体層が、少なくとも内部導体と対向する主面および側面において非磁性体層に接合されている積層型電子部品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状の導体パターンが内部に埋設された積層型電子部品に関するものである。このような電子部品は、産業用電子機器および民生用電気製品に代表される多種多様な電子機器において、例えばインダクタ、トランス、コイル部品、LC部品または貫通コンデンサを備えたモジュールの部品として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コイル状の導体パターンを備えた電子部品としては、たとえば、特許文献1に記載の積層型電子部品が知られている。特許文献1に記載の積層型電子部品は、コイル導体が内蔵された非磁性体層と、この非磁性体層を間に挟むように位置する2つの磁性体層とを備えている。そして、非磁性体層が、Znを含むフォルステライト系セラミックを含有していることによって、磁性体層と非磁性体層との間にデラミネーションが生じる可能性を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の積層型電子部品においては、非磁性体層が、Znを含むフォルステライト系セラミックを含有している。そのため、磁性体層と非磁性体層との熱膨張収縮の差が抑制されて、磁性体層と非磁性体層との間にデラミネーションが生じる可能性が低減されている。
【0005】
しかしながら、磁性体層と非磁性体層との熱膨張収縮の差が抑制されているものの、磁性体層および非磁性体層として互いに異なる材料を用いていることから、デラミネーションが生じる可能性が依然として存在している。また、特許文献1に記載の積層型電子部品においては、非磁性体層がZnを含むフォルステライト系セラミックを含有しなければならないことから材料の選択肢が限定される、という問題点がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、容易に磁性体層と非磁性体層との間にデラミネーションが生じる可能性を低減することのできる積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる積層型電子部品は、複数の非磁性体層を積層してなる積層体と、該積層体に埋設されたコイル状の内部導体と、該内部導体の中心軸方向から前記内部導体を平面透視した場合に前記内部導体と重なり合うように、前記積層体の内部または表面に配設された磁性体層と、を備えている。そして、前記磁性体層が、少なくとも前記内部導体と対向する主面および側面において前記非磁性体層に接合されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様に基づく積層型電子部品においては、磁性体層が、内部導体と対向する主面だけでなく、側面においても非磁性体層と接合しているが、磁性体層と非磁性体層の接合面積を平面部同士の接合部では小さくできると同時に、磁性体部と非磁性体部の端面部の
厚み方向での接合部を設けることができる。従って、磁性体層と非磁性体層との間にデラミネーションが生じる可能性を容易に低減することができる。
【0009】
しかも、単に磁性体層と非磁性体層の接合面積を大きくすることができるだけでなく、主面および側面という互いに異なる複数の方向において磁性体層が非磁性体層と接合していることから、より安定して磁性体層と非磁性体層とを接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の積層型電子部品を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の積層型電子部品であって、内部導体を平面透視した平面透視図である。
【図3】図2に示す実施形態の積層型電子部品のA−A断面図である。
【図4】図2に示す実施形態の積層型電子部品の第1の変形例を示す断面図である。
【図5】図3に示す実施形態の積層型電子部品の第2の変形例を示す断面図である。
【図6】図3に示す実施形態の積層型電子部品の第3の変形例を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態の積層型電子部品を示す断面図である。
【図8】第3の実施形態の積層型電子部品を示す断面図である。
【図9】一実施形態にかかる電子部品モジュールを示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態の積層型電子部品(以下、単に電子部品とも言う。)について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態の電子部品は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0012】
図1〜3に示すように、本実施形態の電子部品1は、複数の非磁性体層3を積層してなる積層体5と、積層体5に埋設されたコイル状の内部導体7と、内部導体7の中心軸方向から内部導体7を平面透視した場合に内部導体7と重なり合うように、積層体5の内部または表面に配設された磁性体層9と、を備えている。そして、磁性体層9が、少なくとも内部導体7と対向する主面および側面において非磁性体層3に接合されていることを特徴としている。
【0013】
このように、磁性体層9が、内部導体7と対向する主面だけでなく、側面においても非磁性体層3と接合しているが、各々の磁性体層と非磁性体層の平面対向接合部の接合面積を小さくできる。従って、磁性体層9と非磁性体層3との間にデラミネーションが生じる可能性を容易に低減することができる。
【0014】
しかも、単に磁性体層9と非磁性体層3の接合面積を小さくすることができるだけでなく、磁性体部と非磁性体部の端面部厚み方向での対向する接合部を設けることができることにより主面および側面という互いに異なる複数の方向において磁性体層9が非磁性体層3と接合していることから、より安定して磁性体層9と非磁性体層3とを接合させることができる。
【0015】
本実施形態の電子部品1は、複数の非磁性体層3を積層してなる積層体5を備えている。非磁性体層3の積層数としては、特に限定されるものでなく、内部に埋設されるコイル状の内部導体7の巻数に応じて積層すればよい。
【0016】
非磁性体層3としては、絶縁性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、ア
ルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化硼素(B)およびガラスセラミックスを用いることができる。
【0017】
なお、本実施形態における積層体5は、平面視した場合の外周形状が矩形状となっているが特にこれに限られるものではない。たとえば、平面視した場合の外周形状が、六角形または八角形のような多角形状、或いは、楕円形状または円形状のような曲面形状であってもよい。
【0018】
本実施形態の電子部品1は、積層体5に埋設されたコイル状の内部導体7を備えている。本実施形態における内部導体7は、積層体5の積層方向に向かって巻回するように形成されている。そのため、積層体5の積層方向と内部導体7の中心軸方向が同じ方向となっている。このように内部導体7がコイル状に巻回されていることによって内部導体7をインダクタとして作用させることができる。
【0019】
コイル状の内部導体7は、非磁性体層3の積層方向に垂直な方向に延設された複数のコイル導体部11および積層方向に隣り合うコイル導体部11を接続するビア導体部13を有している。ビア導体部13としては、非磁性体層3に貫通孔を設けるとともに、この貫通孔に埋設することによって配設すればよい。また、コイル導体部11は複数の非磁性体層3の間に配設してもよいが、例えば、コイル導体部11の形状に対応するように非磁性体層3に貫通孔を形成して、この貫通孔にコイル導体部11を配設しても何ら問題ない。
【0020】
特に、コイル導体部11の厚みを大きくした場合、コイル導体部11を複数の非磁性体層3の間に配設すると、これらの非磁性体層3の間に隙間が生じやすくなる。そのため、コイル導体部11の厚みを大きくする場合には、コイル導体部11の形状に対応するように非磁性体層3に貫通孔を形成して、この貫通孔にコイル導体部11を配設することが好ましい。
【0021】
積層方向に隣り合うコイル導体部11が電気的に接続されることによってコイル状の内部導体7を形成していることから、それぞれのコイル導体部11がコイル形状であることを意味するものに限られない。それぞれのコイル導体部11が、1つの線分からなる直線形状、2つの線分からなるL形状、3つの線分からなるコ字形状、あるいは、複数の線分からなる略四角形や、複数の線分からなる多角形状であってもよい。また、コイル導体部11として、平面視した場合の形状が線分形状の部位のみからなる構成ではなく、部分的に曲線形状の部位を有していてもよい。
【0022】
コイル状の内部導体7としては、導電性の良好な部材を用いることが好ましい。例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体を内部導体7として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0023】
なお、本実施形態におけるコイル状の内部導体7として、複数のコイル導体部11および複数のビア導体部13を有する構成を例示したが、特にこれに限られるものではない。コイル形状の導体であればよく、例えば、渦巻状のコイル形状となるように一本の導線を積層体5に埋設してもよい。
【0024】
本実施形態の電子部品1は、積層体5の表面(本実施形態においては側面)に位置して、コイル状の内部導体7に接続導体16を介して電気的に接続された一対の外部電極15を備えている。外部電極15は、内部導体7と後述する電子部品モジュール101の配線回路17とを電気的に接続するための部材である。そのため、本実施形態における外部電
極15は積層体5の側面に配設されているが、特にこれに限られるものではない。例えば、積層体5の上面および下面に一対の外部電極15が配設されていてもよい。
【0025】
外部電極15としては、コイル状の内部導体7と同様に導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料の粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体を外部電極15として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0026】
また、外部電極15の積層体5から露出する表面には、メッキを形成することが好ましい。外部に露出する外部電極15が劣化することを抑制できるからである。また、外部電極15と配線回路17とを電気的に接続する場合には、外部電極15と配線回路17との接合性を高めることができる。メッキとしては、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、金メッキまたは錫めっきを用いることができる。一例として、外部電極15の積層体5から露出する表面にニッケルメッキを形成した後、さらにニッケルメッキの表面に金メッキを形成すればよい。
【0027】
また、本実施形態の電子部品1は、内部導体7の中心軸方向から内部導体7を平面透視した場合に内部導体7と重なり合うように、積層体5の表面に配設された磁性体層9を備えている。具体的には、本実施形態における積層体5は上面および下面にそれぞれ凹部5aを有している。凹部5aは、積層体5を平面透視した場合に、内部導体7と重なり合い、内部導体7を囲むように位置している。この凹部5aに磁性体層9が配設されており、磁性体層9の内部導体7と対向する主面(図3における下面または上面)および側面において凹部5aの表面に位置する非磁性体層3と接合している。
【0028】
このように、磁性体層9が、内部導体7と対向する主面だけでなく、側面においても非磁性体層3と接合している。そのため、主面および側面という互いに異なる複数の方向において磁性体層9が非磁性体層3と接合していることから、より安定して磁性体層9と非磁性体層3とを接合させることができる。磁性体層9としては、例えば、Ni−Cu−Zn系フェライトのようなフェライトから成る材料やフェライト等の磁性材料を含有した部材を用いることができる。
【0029】
また、本実施形態の電子部品1は、磁性体層9を複数備えており、上述の通り、積層体5の上面および下面にそれぞれ形成された凹部5aに配設されている。そして、内部導体7が、これら一対の磁性体層9によって挟まれるように位置している。このように磁性体層9が配設されている場合には、内部導体7から電子部品1の外部へ磁束の漏れを小さくすることができる。特に、この磁束の漏れをさらに小さくするためには、積層体5を平面透視した場合に、一対の磁性体層9が互いに重なり合うように位置していることが好ましい。
【0030】
本実施形態における磁性体層9は平面視した場合の形状が矩形状であるが、特にこれに限られるものではない。少なくともコイル形状の内部導体7における中心軸方向の上方に位置していれば良い。すなわち、コイル形状の内部導体7を平面透視した場合の形状が円周形状である場合には、平面視した場合の磁性体層9の形状が円形状であってもよい。また、図4に示すように、平面視した場合の磁性体層9の形状として、中央に開口部を有する形状であってもよい。
【0031】
また、図5に示すように、本実施形態の電子部品1は、内部導体7の中心軸方向から内部導体7を平面透視した場合に、内部導体7を囲むように位置する磁性体部材19をさらに備えていることが好ましい。言い換えれば、内部導体7の側方であって内部導体7を囲
むように位置する磁性体部材19をさらに備えていることが好ましい。このような場合、内部導体7は、一対の磁性体層9および磁性体部材19によって囲まれている。
【0032】
このように、内部導体7が磁性体層9および磁性体部材19に囲まれていることによって、内部導体7から電子部品1の外部へ磁束が漏れることを抑制することができる。そのため、本実施形態の電子部品1を電子部品モジュール101の部品として用いた場合であっても、モジュール101を構成する配線回路17に与える影響を小さくすることができる。
【0033】
また、内部導体7は、図3に示すように非磁性体層3を介して磁性体層9と隣り合っていてもよいが、図6に示すように磁性体層9と直接に接していてもよい。特に、このような場合には、コイル状の内部導体7のインダクタンスを高めることができる。
【0034】
次に、第2の実施形態の積層型電子部品について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
上述の通り、第1の実施形態の電子部品1においては、積層体5が上面および下面にそれぞれ凹部5aを有しており、この凹部5aに磁性体層9が配設されている。磁性体層9は積層体5の表面に配設されており、電子部品1の外部に露出している。一方、本実施形態の電子部品1においては、図7に示すように、磁性体層9が積層体5に埋設された構成となっている。すなわち、本実施形態の電子部品1は、第1の実施形態の電子部品1における磁性体層9を覆うように積層体5の上面および下面にさらに非磁性体層3を積層したような構成となっている。
【0036】
そして、磁性体層9は、その上面、下面および側面においてそれぞれ、積層体5を構成する非磁性体層3と接合されている。磁性体層9は、少なくとも内部導体7と対向する主面および側面において非磁性体層3と接合していればよい。そのため、第1の実施形態の電子部品1のように磁性体層9が積層体5の表面に配設された構成に限定されるものではなく、本実施形態の電子部品1のように磁性体層9が積層体5に埋設されていてもよい。
【0037】
本実施形態の電子部品1においては、磁性体層9が非磁性体層3によって構成された積層体5に埋設されていることから、電子部品1としての絶縁耐力を高めることができる。
【0038】
なお、本実施形態の磁性体層9は、その上面、下面および側面においてそれぞれ、積層体5を構成する非磁性体層3と接合されているが、これに限られるものではない。磁性体層9が積層体5に埋設されていればよいことから、磁性体層9の下面および側面が積層体5を構成する非磁性体層3と接合されている一方で、磁性体層9の上面と非磁性体層3との間に空隙のような隙間があってもよい。このような隙間がある場合には、磁性体層9と非磁性体層3との熱膨張収縮の差に起因する応力をこの隙間に逃がすことができるので、磁性体層9と非磁性体層3との間にデラミネーションが生じる可能性をさらに低減することができる。
【0039】
次に、第3の実施形態の積層型電子部品について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、第3の実施形態の電子部品1は、第1の実施形態の電子部品1と比較して、コイル状の内部導体7の中心軸方向が異なっている。具体的には、第1の実施形態における内部導体7は、積層体5の積層方向に向かって巻回され、積層体5の積層方向
とコイル状の内部導体7の中心軸方向とが同じ方向となっている。一方、本実施形態における内部導体7は、積層体5の積層方向に垂直な方向に向かって巻回され、積層体5の積層方向とコイル状の内部導体7の中心軸方向とが垂直な方向となっている。
【0041】
第1の実施形態における積層体5は上面および下面にそれぞれ凹部5aを有して、この凹部5aに磁性体層9が配設されている。一方、本実施形態の電子部品1においては、積層体5が互いに反対側に位置する一対の側面にそれぞれ凹部5aを有している。これらの側面は、コイル状の内部導体7の中心軸方向に位置する側面である。
【0042】
本実施形態の電子部品1における凹部5aは、この側面方向から積層体5を平面透視した場合に、内部導体7と重なり合い、内部導体7を囲むように位置している。この凹部5aに磁性体層9が配設されており、磁性体層9の内部導体7と対向する主面(図8における積層体5側の側面)、上面および下面において凹部5aの表面に位置する非磁性体層3と接合している。
【0043】
このようにコイル状の内部導体7の中心軸方向は第1の実施形態における内部導体7の構成に限定されるものではなく、本実施形態の電子部品1のように、積層体5の積層方向とコイル状の内部導体7の中心軸方向とが垂直な方向となっていてもよい。そして、このように内部導体7が配設されている場合には、積層体5が内部導体7の中心軸方向に位置する一対の側面にそれぞれ凹部5aを有して、この凹部5aに磁性体層9が配設されていることによって、第1の実施形態の電子部品1と同様に、磁性体層9と非磁性体層3との間にデラミネーションが生じる可能性を容易に低減することができる。
【0044】
また、第2の実施形態の電子部品1のように磁性体層9が積層体5に埋設されていてもよい。
【0045】
次に、上記実施形態にかかる積層型電子部品の製造方法について説明する。
【0046】
まず、積層体5を構成する非磁性体層3となる非磁性体グリーンシートを複数準備する。具体的には、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤ならびにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、絶縁材料を用いることができ、例えば、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)および酸化硼素(B)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより非磁性体グリーンシートを作製することができる。
【0047】
また、磁性体層9となる磁性体グリーンシートを作製する。具体的には、Ni−Cu−Zn系フェライトのようなフェライトから成る材料またはフェライト等の磁性材料を含有する原料粉末、有機溶剤ならびにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。混合部材をシート状に成形することにより磁性体グリーンシートを作製することができる。
【0048】
次に、複数の非磁性体グリーンシートに、積層したときに互いに接続することによってコイル状となる導体ペーストをそれぞれ配置する。具体的には、非磁性体層3となる非磁性体グリーンシート間に内部導体7のコイル導体部11となる導体ペーストを配設する。また、非磁性体グリーンシートに貫通孔を形成して、積層方向に隣り合うコイル導体部11となる導体ペーストを接続するように、この貫通孔に内部導体7のビア導体部13となる導体ペーストを配設する。これにより、内部導体7となる導体ペーストを生積層体に埋設することができる。
【0049】
非磁性体グリーンシート間に導体ペーストを配設するためには、例えば、スクリーン印
刷法を用いて非磁性体グリーンシートの表面に導体ペーストを配設するとともに、この導体ペーストの上にさらに非磁性体グリーンシートを配設すればよい。また、上記の導体ペーストとしては、例えば、銅、銀および金のような金属材料からなる金属粉末に、有機溶剤並びにバインダを混ぜた金属ペーストを用いればよい。
【0050】
また、既に示したように、内部導体7のコイル導体部11となる金属ペーストを単にグリーンシートの上面に配設してもよいが、例えば、コイル導体部11の形状に対応するようにグリーンシートに貫通孔を形成して、この貫通孔に金属ペーストを配設することによってコイル導体部11を形成しても何ら問題ない。
【0051】
また、磁性体グリーンシートおよび非磁性体グリーンシートを用いて複合シートを形成する。具体的には、磁性体グリーンシートの側面を非磁性体グリーンシートの側面に接合させたシート形状とする。このとき、導体ペーストが配置された非磁性体グリーンシートに積層したときに少なくとも導体ペーストに磁性体グリーンシートの主面が対向するように磁性体グリーンシートを配置する。
【0052】
そして、導体ペーストが配置された複数の非磁性体グリーンシートを積層するとともに、コイル状の導体ペーストの中心軸方向から導体ペーストを平面透視した場合に磁性体グリーンシートの主面が導体ペーストと重なり合うように複合シートを積層して、生積層体を形成する。
【0053】
このとき、磁性体グリーンシートを、少なくとも導体ペーストと対向する主面および側面において非磁性体グリーンシートと接触させることによって、焼成後の電子部品1において、磁性体層9を、少なくとも内部導体7と対向する主面および側面において非磁性体層3により確実に接合させることができる。
【0054】
なお、このようにして生積層体に配設された磁性体グリーンシートの上に、磁性体グリーンシートを覆うように非磁性体グリーンシートを配設することによって、上記した第2の実施形態の電子部品1を作製することができる。
【0055】
また、生積層体の表面であって導体ペーストと接続されるように外部電極15となる金属ペーストを配設してもよい。金属ペーストとしては、導体ペーストと同様に、例えば、銅、銀、金、白金のような金属材料粉末、絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを用いることができる。
【0056】
上記の通り作製された生積層体を焼成することによって、上記の実施形態の電子部品1を作製することができる。非磁性体層3となる非磁性体グリーンシート、磁性体層9となる磁性体グリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0057】
また、本実施形態の電子部品1の製造方法として、上記する構成を有する生積層体が複数併設された生積層体の集合体を形成してもよい。このような生積層体の集合体を作製した後、それぞれの生積層体に分割するとともにそれぞれの生積層体を焼成することによって複数の電子部品1を同時に作製することができる。また、上記する生積層体の集合体を同時焼成した後に、それぞれの電子部品1に分割してもよい。
【0058】
また、外部電極15の積層体5から露出する表面にメッキを形成する場合には、焼成済みの積層体5の表面に配設された外部電極15にメッキを形成すればよい。具体的には、例えば、外部電極15の積層体5から露出する表面をニッケルメッキで被膜した後、さら
にニッケルメッキの表面を金メッキで被膜すればよい。
【0059】
このように、本実施形態の電子部品1の製造方法は、磁性体グリーンシートおよび複数の非磁性体グリーンシートを準備する工程と、複数の非磁性体グリーンシートに、積層したときに互いに接続することによってコイル状となる導体ペーストをそれぞれ配置する工程と、磁性体グリーンシートおよび非磁性体グリーンシートから、導体ペーストが配置された非磁性体グリーンシートに積層したときに少なくとも導体ペーストに主面が対向するように磁性体グリーンシートを配置するとともに磁性体グリーンシートの側面を非磁性体グリーンシートの側面に接合させて、複合シートを形成する工程と、導体ペーストが配置された複数の非磁性体グリーンシートを積層するとともに、コイル状の導体ペーストの中心軸方向から導体ペーストを平面透視した場合に磁性体グリーンシートの主面が導体ペーストと重なり合うように複合シートを積層して、生積層体を形成する工程と、生積層体を焼成する工程とを備えている。
【0060】
そのため、一体焼成した後において、内部導体7と対向する主面だけでなく、側面においても磁性体層9を非磁性体層3に接合させることができる。従って、磁性体層9と非磁性体層3の接合面積を小さくすることができるので、磁性体層9と非磁性体層3との間にデラミネーションが生じる可能性を容易に低減することができる。また、既に述べたように、主面および側面という互いに異なる複数の方向において磁性体層9が非磁性体層3と接合していることから、より安定して磁性体層9と非磁性体層3とを接合させることができる。
【0061】
なお、上記実施形態の電子部品1の製造方法においては、磁性体グリーンシートおよび非磁性体グリーンシートを用いて複合シートを形成するとともに、この複合シートを非磁性体グリーンシートに積層する方法を用いていたが、例えば、下記の通りとしてもよい。
【0062】
生積層体を形成する際に、複合シートを用いずに、導体ペーストが配置された平面矩形状の非磁性体グリーンシートを複数積層する。そして、生積層体には、導体ペーストの中心軸方向から平面透視した場合に、導体ペーストと重なり合う位置に凹部5aを形成する。
【0063】
凹部5aの形成方法としては、立方体形状の生積層体を形成した後に凹部5aが形成される部分にある非磁性体グリーンシートを取り除くことによって形成しても良いが、下記方法によって容易に形成することができる。
【0064】
生積層体を形成する際に、まず導体ペーストが配置された平面矩形状の非磁性体グリーンシートを複数積層する。そして、この積層された複数の非磁性体グリーンシートの上面および下面に、凹部5aとなる部分が開口する非磁性体セラミックグリーンシートをそれぞれ積層する。このようにして生積層体を形成することによって、生積層体の上面および下面に凹部5aを容易に形成することができる。
【0065】
このように凹部5aを形成した場合には、この凹部5aに磁性体グリーンシートを配設すればよい。
【0066】
次に、本発明の一実施形態にかかる電子部品モジュールについて説明する。
【0067】
本実施形態の電子部品モジュール101は、図9に示すように、絶縁基板21ならびにこの絶縁基板21の内部および表面の少なくとも一方に配設された配線回路17を有する回路基板23と、回路基板23上に配設されて、配線回路17に電気的に接続された上記の実施形態に代表される積層型電子部品1とを備えている。
【0068】
本実施形態の電子部品モジュール101における積層型電子部品1は、安定して磁性体層9と非磁性体層3とが接合されていることから、良好な耐久性を有している。そのため、本実施形態の電子部品モジュール101においても耐久性を良好なものとすることができる。
【0069】
回路基板23を構成する絶縁基板21としては、非磁性体層3と同様に絶縁性の良好な部材を用いることができる。また、絶縁基板21の内部および表面には配線回路17が配設されている。配線回路17は、電子部品1と外部配線(不図示)とを電気的に接続して、外部配線と電子部品1との間で信号の入出力を行うための部材である。配線回路17としては、コイル状の内部導体7と同様に導電性の良好な部材を用いることができる。
【0070】
このような回路基板23の主面上に配線回路17と電気的に接続されるように上記実施形態に代表される電子部品1を搭載することによって本実施形態の電子部品モジュール101とすることができる。なお、本実施形態の電子部品モジュール101においては、回路基板23上に電子部品1が搭載されているが、例えば、電子部品1を回路基板23に埋設させた電子部品モジュール101としてもよい。
【0071】
上述の通り、本実施形態の積層型電子部品について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変さらや実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0072】
1・・・積層型電子部品
101・・・電子部品モジュール
3・・・非磁性体層
5・・・積層体
5a・・・凹部
7・・・内部導体
9・・・磁性体層
11・・・コイル導体部
13・・・ビア導体部
15・・・外部電極
16・・・接続導体
17・・・配線回路
19・・・磁性体部材
21・・・絶縁基板
23・・・回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非磁性体層を積層してなる積層体と、
該積層体に埋設されたコイル状の内部導体と、
該内部導体の中心軸方向から前記内部導体を平面透視した場合に前記内部導体と重なり合うように、前記積層体の内部または表面に配設された磁性体層とを備え、
該磁性体層は、少なくとも前記内部導体と対向する主面および側面において前記非磁性体層に接合されていることを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記磁性体層を複数備え、
前記内部導体は、一対の前記磁性体層によって挟まれるように位置していることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
該内部導体の中心軸方向から前記内部導体を平面透視した場合に、前記内部導体を囲むように位置する磁性体部材をさらに備え、
前記内部導体は、前記一対の磁性体層および前記磁性体部材によって囲まれていることを特徴とする請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記内部導体は、前記磁性体層と接していることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
絶縁基板ならびに該絶縁基板の内部および表面の少なくとも一方に配設された配線回路を有する回路基板と、
該回路基板上に配設されて、前記配線回路に電気的に接続された請求項1に記載の積層型電子部品とを備えた電子部品モジュール。
【請求項6】
磁性体グリーンシートおよび複数の非磁性体グリーンシートを準備する工程と、
複数の前記非磁性体グリーンシートに、積層したときに互いに接続することによってコイル状となる導体ペーストをそれぞれ配置する工程と、
前記磁性体グリーンシートおよび前記非磁性体グリーンシートから、前記導体ペーストが配置された前記非磁性体グリーンシートに積層したときに少なくとも前記導体ペーストに主面が対向するように前記磁性体グリーンシートを配置するとともに該磁性体グリーンシートの側面を前記非磁性体グリーンシートの側面に接合させて、複合シートを形成する工程と、
前記導体ペーストが配置された複数の前記非磁性体グリーンシートを積層するとともに、コイル状の前記導体ペーストの中心軸方向から前記導体ペーストを平面透視した場合に前記磁性体グリーンシートの主面が前記導体ペーストと重なり合うように前記複合シートを積層して、生積層体を形成する工程と、
前記生積層体を焼成する工程とを備えることを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記生積層体を形成する工程と前記生積層体を焼成する工程との間に、前記複合シートの前記磁性体グリーンシートを覆うように前記非磁性体グリーンシートを積層する工程をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−160496(P2012−160496A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17364(P2011−17364)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】