説明

積層板

【課題】比較的容易な加工でありながら、比較的短時間で端部等の折り曲げ加工が容易に行える積層板を提供する。
【解決手段】芯材1と、芯材1の表面に貼着された金属板2とを備えた積層板Pであって、前記芯材1には、芯材1の裏面側から前記金属板2に向けてV字状の折り曲げ溝4が形成され、前記折り曲げ溝4のV字状を構成する2個の傾斜面42、43のなす角度が90度を超える角度となされていると共に前記折り曲げ溝4に沿って金属板2が芯材1側に折り曲げられるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材に金属板が貼着された積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂シートや木質シートを芯材として、その一方の面に化粧板として金属シート等からなる金属板を貼着した積層板が広く利用されている。これらの積層板は、建物の壁面材や家具や棚に用いられる板材等に広く用いられているが、積層板の端部は芯材がむき出しになるため、端部の破損防止や意匠性を高めるために端部を隠した形態が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、表面に化粧材を貼着した基材の端縁部において前記化粧材の裏面側を切削して薄肉の湾曲処理領域と厚肉の貼着領域を形成したのち、前記湾曲処理領域に合成樹脂を塗布すると共に前記貼着領域に接着剤を塗布し、前記湾曲処理領域を湾曲させ、貼着領域を基材側端面に貼着することにより、端縁部に湾曲面を形成した積層板の製造方法が提案されている。
【0004】
また本出願人においても、芯材と、芯材の表面に貼着された化粧板と、該芯材の裏面に貼着された裏面板とを備えた積層板であって、裏面板側に化粧板に向かってV字状の溝部を形成すると共に該溝部の底部を裏面板の方向に折り曲げ、溝部の相対する内壁面を接合した積層板を提案している(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−324376号公報
【特許文献1】特開2008−6753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の積層板の製造方法においては、湾曲処理領域を湾曲させると、一般に材料を曲げ加工したとき工具を離すと材料に施した変形が若干もとに戻る、いわゆるスプリングバックが生じる。特に厚めの金属板を貼着した積層板にあっては、当該スプリングバックは顕著に現れる。そのため貼着領域を基材側端面に貼着させるには、スプリングバックを抑えなければならず、貼着に用いる接着剤等が硬化するまで、その状態を保持させる必要がある。また基材の切削には比較的高い加工精度が必要であり、加工時間が比較的長い点を合わせて、その点が問題であった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、比較的容易な加工でありながら、比較的短時間で端部等の折り曲げ加工が容易に行える積層板を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
【0009】
すなわちこの発明に係る積層板は、芯材と、芯材の表面に貼着された金属板とを備えた積層板であって、前記芯材には、芯材の裏面側から前記金属板に向けてV字状の折り曲げ溝が形成され、前記折り曲げ溝のV字状を構成する2個の傾斜面のなす角度が90度を超える角度となされていると共に前記折り曲げ溝に沿って金属板が芯材側に折り曲げられたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る積層板において、前記折り曲げ溝の底部には芯材が残存しておらず、金属板が露出されていてもよいが、前記折り曲げ溝の底部と金属板との間には、芯材の一部が残存されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積層板は、芯材の表面に貼着された金属板が折り曲げられているにもかかわらず、2個の傾斜面のなす角度が90度を超える角度となされたV字状の折り曲げ溝に沿って折り曲げられているので、折り曲げ加工が短時間且つ容易に行える。例えば金属板を90度に折り曲げる際に、該金属板のスプリングバックを想定して、90度よりやや深く折り曲げることにより、スプリングバックにより金属板の折り曲げ角度を90度にすることができる。
【0012】
本発明に係る積層板において、前記折り曲げ溝の底部と金属板との間に、芯材の一部を残存させておけば、折り曲げ溝作成時に金属板の表面を傷つけることなく、折り曲げ後も金属板の折り曲げ部の内隅を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る積層板において、第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の説明図である。
【図3】本発明に係る積層板において、第二の実施形態を示す断面図である。
【図4】図3の説明図である。
【図5】本発明に係る積層板において、第三の実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5のA−A拡大断面図である。
【図7】図5のB−B拡大断面図である。
【図8】本発明に係る積層板において、第四の実施形態を示す斜視図である。
【図9】図8のC−C拡大断面図である。
【図10】本発明に係る積層板において、第五の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
すなわち、図1は、本発明に係る塀において第一の実施形態を示す断面図である。図面において、1は芯材、2は芯材1の表面に貼着された金属板であり、本形態に係る積層板Pは芯材1、金属板2から主に構成されたものである。
【0016】
芯材1は、本実施形態では、ポリエチレンを用いて押出機で薄板状に成型したものを適宜大きさに切断したものである。芯材1は、一般には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性合成樹脂から作製されるものであり、これら合成樹脂を単独で用いたもの、あるいはこれらを適宜混練したものを用いてもよく、これらに木粉や、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機材料を混練したものを用いてもよい。また発泡剤を利用して発泡させたものを利用してもよい。芯材1の厚さは、成型性、強度、取り扱い性等を考慮すると1〜10mmが好ましく、更には1〜3mmが更に好ましい。
【0017】
金属板2は、本実施形態では、アルミニウム合金板であり、その表面には耐食性を向上させるプライマーが塗布され、更に装飾性を高めるために塗装が施されている。金属板2は、鋼、ステンレス鋼、銅等からなる他の金属板を用いてもよいが、比較的軽量である点、耐食性の点からするとアルミニウム合金板が好ましい。金属板2の厚さは、重量、加工性、取り扱い等を考慮すると0.05〜1mmが好ましく、更には0.1〜0.5mmが好ましい。
【0018】
芯材1に金属板2を貼着させる方法は特に限定されるものではないが、本実施形態では、芯材1の成型時に接着樹脂層を合わせて形成し、その後、金属板2を貼着させたものであるである。接着性樹脂は、芯材1と金属板2との接着性が優れたものであればよく、例えば、エチレンに、酢酸ビニル、メタクリル酸又はそのエステル、アクリル酸又はそのエステルと共重合させたもの、エチレンと無水マレイン酸を共重合させたもの、ポリエチレン末端を無水マレイン酸等で修飾したもの等が用いられる。なお、芯材1に接着剤を塗布し、その後金属板2を貼着させたものを用いてもよい。この場合も、接着剤としては、芯材1、金属板3との接着性が優れたものであればよく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等からなる熱可塑性接着剤や熱硬化性接着剤等を挙げることができる。
【0019】
金属板2は、芯材1の表面側に貼着されていればよいが、図1に示すように、芯材2の裏面側に金属板2と同様な裏面板3を前記の貼着方法を用いて貼着してもよい。
【0020】
図1に示すように、積層板Pは、芯材1の裏面側から金属板2に向けて幅狭となるV字状の折り曲げ溝4が該芯材1の端部の長手方向に形成され、前記折り曲げ溝4の底部41を軸として金属板2が芯材1側に略90度に折り曲げられている。なお、前記金属板2が90度に折り曲げられた状態において、折り曲げ溝4の相対する2個の傾斜面42、43に間に隙間が設けられるように、前記折り曲げ溝のV字状を構成する2個の傾斜面のなす角度は90度を超える角度となされている。
【0021】
図2は、図1に示す積層板Pの加工方法の一形態を示す説明図である。先ず(a)に示すように、積層板Pの端部に、V字状の折り曲げ溝4を形成し、折り曲げ溝4の底部41を軸として、金属板2を芯材1側に向けて押圧して折り曲げる。なお本形態において、折り曲げ溝4の傾斜面42,43がなす角度αは110度である。
【0022】
一般に、金属板を折り曲げ等により変形させると、その変形が若干もとに戻るスプリングバックが生じる。そこで、(b)に示すように、スプリングバックを考慮して、金属板2を90度より大きく折り曲げ、その後、前記押圧を解除すれば、図1に示すように、スプリンバックにより、金属板2の折り曲げが略90度の角度にまで戻る。これにより、折り曲げ溝4の傾斜面42、43同士を接着剤により貼着する処理等を実施しなくても、金属板2の端部が90度に折り曲げられた状態を維持することが可能となる。なお折り曲げられた後に、スプリングバックにより戻る金属板2のなす略90度の角度とは、金属板2の中央側の平坦部21に対して、折り曲げられた金属板2の先端側の平坦部22が目視上90度と認識されればよい。具体的には、前記2個の平坦部21、22がなす角度は、85〜95度であればよい。
【0023】
折り曲げ溝4の傾斜面42,43がなす角度αは、90度を超えるものであればよいが、金属板2のスプリングバックを考慮すれば、100度を超えるものが好ましい。また折り曲げ溝4の形状は、本形態のようにV字状とすれば、折り曲げ溝4の底部41を軸として金属板2を折り曲げやすく好ましい。更に、折り曲げ溝4の傾斜面42、43は、平坦面の方が加工しやすく好ましいが、金属板2のスプリンバックを考慮して金属板2を折り曲げる際に、その途中で傾斜面42、43同士が接触しなければ、円弧状等でもよい。
【0024】
前記折り曲げ溝4の底部41は、本形態では、V字状であるため角部を軸として金属板2を折り曲げやすく、折り曲げ位置がずれにくくなり好ましいが、例えば、下方に突出する湾曲状とした形態や、傾斜面42、43が交差せず、底部41に平坦面が形成された形態とすれば、金属板2を緩やかに折り曲げることができる。
【0025】
図3は、本発明に係る積層板Pの第二の実施形態を示す断面図である。本形態の積層板Pは、図1〜2に示された積層板Pと比べて、芯材1に形成された折り曲げ溝4の形態が異なるものであって、他の主要部の形態は、図1〜2に示されたものと同様である。
【0026】
すなわち、図1〜2に示された積層板Pは、折り曲げ溝4の底部41が金属板2にほぼ接し、すなわち底部41において金属板2が露出しているのに対して、本形態の積層板Pは、折り曲げ溝4の底部41において、金属板2との間に芯材1の一部が薄皮で残存されて緩衝部11となされたものである。
【0027】
この構造により、折り曲げ溝4を形成する際に、加工誤差等が生じても、芯材1の緩衝部11の厚さの範囲で吸収することが可能となり、金属板2を傷つけたりすることがなくなる。また、この緩衝部11によって金属板2の折り曲げ部の内隅を保護することができ、雨水等による錆の発生等を抑制することができる。
【0028】
図4に示すように、本形態の積層板Pにおいて、図2と同様な形態で加工する際は、(a)に示すように、積層板Pの端部の長手方向に折り曲げ溝4を形成し、続いて(b)に示すように、金属板2と芯材1の緩衝部11とのスプリングバックを考慮して、金属板2を90度より大きく折り曲げ、その後、前記押圧を解除すれば、図3に示すように、スプリンバックにより、金属板2の折り曲げがほぼ90度まで戻る。
【0029】
図5は、本発明に係る積層板Pの第三の実施形態を示す正面図である。本形態に係る積層板Pは、矩形状に形成され、リベットやビス等の取付金具(図示せず)を介して壁や天井面に取付けられたものである。そして、積層板Pは、その端部4辺それぞれにおいて、金属板2の端部が芯材1側に垂直に折り曲げられている。この構造により、積層板Pの正面と端面が金属板Pに覆われるので、積層板Pの装飾性を高めることができる。
【0030】
図6〜7は、図5のA−A及びB−B拡大断面図である。すなわち、本形態の積層板Pのそれぞれの端部が図3に示す積層板Pの端部の形態と同様となされたものであり、芯材1の裏面側から金属板2に向けて幅狭となるV字状の折り曲げ溝4が該芯材1の端部の長手方向に形成され、前記折り曲げ溝4の底部41を軸として金属板2が芯材1側に90度に折り曲げられている。なお、本形態の積層板Pの端部の形態は、図1〜2に示す積層板Pの端部の形態と同様なものでもよい。
【0031】
図8は、本発明に係る積層板Pの第四の実施形態を示す正面図である。本形態に係る積層板Pは、図5に示す積層板Pが長手方向に配置され、リベットやビス等の取付金具(図示せず)を介して壁や天井面に取付けられたものである。
【0032】
図9は、図8のC−C拡大断面図である。積層板Pの端部において、金属板2のスプリングバック後の折り曲げ角度が90度より小さい場合でも、折り曲げ溝4を構成する2個の傾斜面42、43に間に隙間が設けられ、隣合う積層板Pの折り曲げられた金属板2の先端側は芯材1側に弾性変形可能であるため、金属板2の先端側の平坦部22が当接して、表面側から該平坦部22が見えない状態となりうる。したがって、積層板Pを長手方向に隙間なく連続して配置することができる。
【0033】
上記図1〜9に示された形態は、いずれも積層板の端部に沿って、金属板を折り曲げて、該積層板の端面の仕上げを行うものであるが、折り曲げ位置は端部に限定されず、任意の位置に2個の傾斜面のなす角度が90度を超える角度となされたV字状の折り曲げ溝4を形成し、該折り曲げ溝4に沿って折り曲げても良い。図10の(a)〜(c)は、積層板の端部以外の位置に形成したV字状の折り曲げ溝4に沿って90度に折り曲げられたものであり、この形態においては、折り曲げ位置が上記図1〜9に示された形態と異なる点を除いて、上記した説明がほぼ該当するので、詳細な説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、比較的容易な加工でありながら、比較的短時間で端部から芯材が露出せずに金属板で覆うことができる積層板を提供することができるので、壁面や天井面等に間隔をおいて配置した場合、その間隔に目地材を用いずとも、端部の強度や装飾性を高め、またその間隔を利用して寸法調整も可能であることがら、装飾用板材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 芯材
11 緩衝部
2 金属板
21、22 平坦部
3 裏面板
4 折り曲げ溝
41 底部
42、43 傾斜面
P 積層板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、芯材の表面に貼着された金属板とを備えた積層板であって、前記芯材には、芯材の裏面側から前記金属板に向けてV字状の折り曲げ溝が形成され、前記折り曲げ溝のV字状を構成する2個の傾斜面のなす角度が90度を超える角度となされていると共に前記折り曲げ溝に沿って金属板が芯材側に折り曲げられたことを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記折り曲げ溝の底部と金属板との間には、芯材の一部が残存されていることを特徴とする請求項1に記載の積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−256607(P2011−256607A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132158(P2010−132158)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(399071775)積水樹脂プラメタル株式会社 (8)
【Fターム(参考)】