説明

積層樹脂シート及びその製造方法

【課題】下地の微細な凹凸面を有する樹脂シートの意匠効果を高めることができ、比較的安価な素材で高級感を得ることができる積層樹脂シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】表面側の透明樹脂フィルム11が下地の微細な凹凸面を有する樹脂シ−ト12を覆うように重なり、樹脂シ−ト12と透明樹脂フィルム11とを溶着した接合部13を形成し、接合部13の周囲を樹脂シ−ト11と透明樹脂フィルム12とが溶着していない非溶着部とし、この非溶着部を下地の凹凸面の模様の透過部分とし、この透過部分を透明樹脂フィルム11に分散形成したことを特徴とする積層樹脂シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブックカバー、バッグ、財布等に使用するシート素材、または、手帳や種々のケースなどの小物類の化粧シートとして使用可能な積層樹脂シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブックカバー、バッグ等のシート素材には、皮革、布、樹脂シート等の種々の素材が使用されている。従来、樹脂シート素材では高級感を得るために種々の加工がなされている。例えば、樹脂シートに絵柄を印刷した樹脂シートと透明樹脂シートとを接着剤にてラミネートし意匠効果を高める加工がなされたり、樹脂シートの表面にシボ加工(細かい凹凸加工)を行うことによって、深みのある質感が得られるようにしている。
【0003】
さらに、従来、高級感を醸し出す加工方法としては樹脂シート表面に形成した凹凸面に透明樹脂層をラミネートする方法がある。例えば、図6(a)を参照し、建築材の化粧板に使用する樹脂製の化粧シートを例示して説明する。この化粧シートは、凹凸模様のあるロール溶融押出して凹凸面2を有する樹脂シート1を形成し、この樹脂シート1の凹凸面2に透明樹脂を溶融押出して透明樹脂層3を形成し、多層の樹脂シート4を形成して表面が平滑で内面に凹凸を有するものとし、樹脂シートの内面に深い凹凸感を有し、立体的な印象を与える化粧シートとしている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の化粧シートは、凹凸面に溶融した透明樹脂が凹部に充填されて密着した透明樹脂層が形成されるために、化粧シートの光沢が全面一様なものとなり、凹凸面の光屈折から生じる奥行き感や煌めき感が得にくいといった問題点があり、この問題点を改善するために、図6(b)の化粧シートでは、微細凹凸6が形成された樹脂フィルム5と、この微細凹凸6内に光沢顔料を含む接着剤が入り込むように押し出しラミネートして樹脂フィルム7を形成し化粧シートとしている。このように接着剤に光沢顔料を含ませることにより、より深い凹凸感を有し、立体的な印象を与える化粧シートとしている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−278261号
【特許文献2】特願2005−119021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の特許文献1,2の化粧シートは、熱可塑性樹脂を凹凸面に押し出しラミネートして深みや立体感といった意匠効果を得ようとしたものであるが、接着剤に光沢顔料を含ませたとしても、高級感を得ようとして形成した凹凸内に接着剤が入り込んで平坦なものとなり、凹凸面による光の反射が均一になって、光屈折から生じる奥行き感や煌めき感といった意匠効果を損なうものとなっていた。
【0007】
また、ブックカバー、バッグ等のシート素材における樹脂シートでは、微細なしぼ加工が施されたものを使用して高級感を得ている。また、トートバッグ等では絵柄を印刷した樹脂シートと透明樹脂シートとをラミネートした素材のもの等を使用して高級化を得ているが、表面に光沢があり、絵柄を保護できるといった効果を有するものの高級感を得る程度に意匠効果を高めることができず、樹脂シートが適用できる範囲に限界があった。
【0008】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、下地の微細な凹凸面を有する樹脂シートの意匠効果を高めることができ、比較的安価な素材で高級感を得ることができる積層樹脂シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決したものであって、請求項1の発明は、表面側の透明樹脂フィルムが下地の微細な凹凸面を有する樹脂シ−トを覆うように重なり、該樹脂シ−トと該透明樹脂フィルムとを溶着して該透明樹脂フィルム側に凹嵌した接合部が形成されているとともに、該接合部の周囲を該樹脂シ−トと該透明樹脂フィルムとが溶着していない非溶着部とし、該非溶着部を下地の前記凹凸面の模様の透過部分であって、該透過部分を前記透明樹脂フィルムに分散形成したことを特徴とする積層樹脂シートである。
【0010】
また、請求項2の発明は、前記接合部は高周波溶着による接合であり、該接合部がステッチ状であって網目状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層樹脂シートである。
【0011】
また、請求項3の発明は、前記凹凸面を有する樹脂シ−トが発泡塩化ビニルによることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層樹脂シートである。
【0012】
また、請求項4の発明は、凹凸面を有する樹脂シ−トを基台に載置し、該樹脂シ−トの凹凸面を覆うように透明樹脂フィルムを重ねて置く載置工程と、
前記載置工程に続いて、複数の突起状部が網目状に形成されたワーク部を前記透明樹脂フィルム側から前記凹凸面を有する樹脂シ−トとを押圧する押圧工程と、
前記押圧工程により、前記透明樹脂フィルムと前記樹脂シ−トとを押圧した状態で、該樹脂シ−トと該前記透明樹脂フィルムとを前記ワーク部の前記突起状部で加熱して接合する溶着工程とによることを特徴とする積層樹脂シートの製造方法である。
【0013】
また、請求項5の発明は、前記ワーク部が前記複数の突起状電極部を網目状に形成した上部電極部であり、前記基台が下部電極部であって、前記溶着工程を高周波溶着として、前記接合部をステッチ状の溶着部を形成したことを特徴とする請求項4に記載の積層樹脂シートの製造方法である。
【0014】
また、請求項6の発明は、前記凹凸面を有する樹脂シ−トが発泡塩化ビニルによることを特徴とする請求項4又は5に記載の積層樹脂シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、表面側の透明樹脂フィルムが下地の微細な凹凸面を有する樹脂シ−トを覆うように重なり、該樹脂シ−トと該透明樹脂フィルムとを溶着して該透明樹脂フィルム側に凹嵌した接合部が形成されているとともに、該接合部の周囲を該樹脂シ−トと該透明樹脂フィルムとが溶着していない非溶着部とし、該非溶着部を下地の前記凹凸面の模様の透過部分であって、該透過部分を前記透明樹脂フィルムに分散形成したことを特徴とする積層樹脂シートであるので、凹凸面を有する樹脂シ−トと凹凸面を覆う透明樹脂フィルムとの非溶着部が積層樹脂シートの全面に分散しており、この非溶着部は透明樹脂フィルム直下の樹脂シ−トの凹凸面による微細な空隙が形成され、積層樹脂シートの表面側から入射する入射光は透明樹脂フィルムの表面とその内側境界面で反射するとともに、凹凸面での反射光は透明樹脂フィルムと凹凸面とで乱反射する。透明樹脂フィルムの表面は平坦であるので、塗装したような艶やかさが得られるとともに、透過部分が分散して形成され、鱗や皮膚といったセル状の皮革模様を思わせ、また、透過部分からの凹凸面の複雑な光屈折による反射光により高級感が得られる。また、接合部は表面から湾曲して落ち込む凹嵌形状であるので、積層樹脂シートに肉厚感が付与されるとともに感触も良好であり、一層高級感を与えることができる。また、凹凸面を有する安価な樹脂シ−トを使用したとしても高級感を付与することができるし、凹凸面を有する樹脂シ−トの表面はキャラクターやロゴ等を印刷したり、ラメを施すことも可能であり、また、裏面に布や不織布等を貼付することも可能であり、樹脂シートの用途や意匠に多様性を与えることができる。
【0016】
また、請求項2の発明では、前記接合部が高周波溶着による接合であり、該接合部がステッチ状であって網目状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層樹脂シートであるので、透明樹脂シートが凹凸面を有する樹脂シ−トから浮いたり、撓んだりすることがなく、外観のみならず積層樹脂シートの表面を指で触った際に、接合部が積層樹脂シートに質感を与えて高級感を醸し出す効果を有する。
【0017】
また、請求項3の発明では、前記凹凸面を有する樹脂シ−トが発泡塩化ビニルによることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層樹脂シートであるので、既存の樹脂シートを利用することができ、高周波溶着が可能であり、接合部以外の部分に損傷を与えることがなく高級感を得ることができる。
【0018】
また、請求項4の発明では、凹凸面を有する樹脂シ−トを基台に載置し、該樹脂シ−トの凹凸面を覆うように透明樹脂フィルムを重ねて置く載置工程と、
前記載置工程に続いて、複数の突起状部が網目状に形成されたワーク部を前記透明樹脂フィルム側から前記凹凸面を有する樹脂シ−トとを押圧する押圧工程と、
前記押圧工程により、前記透明樹脂フィルムと前記樹脂シ−トとを押圧した状態で、該樹脂シ−トと該前記透明樹脂フィルムとを前記ワーク部の前記突起状部で加熱して接合する溶着工程とによることを特徴とする積層樹脂シートの製造方法であるので、既存のプラスチック溶着装置を使用し、比較的安価なプラスチク素材で高級感のある積層樹脂シートを製造することができ、新たな樹脂シート素材を提供できる利点がある。
【0019】
また、請求項5の発明では、前記ワーク部が前記複数の突起状電極部を網目状に形成した上部電極部であり、前記基台が下部電極部であって、前記溶着工程を高周波溶着として、前記接合部をステッチ状の溶着部を形成したことを特徴とする請求項4に記載の積層樹脂シートの製造方法であるので、ワーク部の平板状部分に多数形成された突起状電極部で、パルス状に電流を供給して多数の接合部を同時に高周波溶着することができ、また、接合部以外の他の部分に損傷を与えることがなく、外観の良好な積層樹脂シートを製造することができる利点がある。
【0020】
また、請求項6の発明では、前記凹凸面を有する樹脂シ−トが発泡塩化ビニルによることを特徴とする請求項4又は5に記載の積層樹脂シートの製造方法であるので、発泡塩化ビニルには表面に微細凹凸が形成され、安価に入手できる樹脂シートであり、この樹脂シートの微細凹凸による立体的な意匠を作成するのに好適であり、高周波溶着装置で内部加熱により溶着して接合することができるし、接合部以外の部分に損傷を与えることがなく積層樹脂シートに高級感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の積層樹脂シートの一実施例を示す斜視図であり、(b)はその一部を示す平面図である。
【図2】本実施例のX−X線に沿った矢視断面図とその要部拡大図である。
【図3】本実施例における入射光の光屈折を示す説明図である。
【図4】本発明における積層樹脂シートの製造方法の一実施例を示す概略側面図であり、(a)は載置工程を示し、(b)は押圧工程及び溶着工程を示す概略側面図である。(c)はワーク部(上部電極部材)の説明図であり、(d)は(c)のY−Y線に沿った矢視断面図である。
【図5】本発明に係る積層樹脂シートの製造方法の他の実施例を示す概略側面図である。
【図6】(a)は従来の樹脂シートの断面図であり、(b)は他の従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による積層樹脂シート及びその製造方法を図面を参照し説明する。図1(a),(b)及び図2を参照し、本実施例の積層樹脂シートについて説明する。図1(a)は、微細な凹凸面を有する樹脂シ−ト11と凹凸面を覆う透明樹脂フィルム12とが積層され、樹脂シ−ト11と透明樹脂フィルム12とを溶着した凹嵌状の接合部13で接合した積層樹脂シート10を模式的に示している。樹脂シ−ト11は、図2に示すように、その表面がしぼ加工等による微細な凹部11bと凸部11cが全面に形成された凹凸面11aを有する樹脂シ−トである。
【0023】
接合部13は、透明樹脂フィルム12と樹脂シ−ト11とを接合する部分B(図2参照)であり、透明樹脂フィルム12の表面には、45°傾斜した格子状に模様が形成され、接合部13で囲まれた部分(以下、透過部分と称する)12aは、その直下の樹脂シ−ト11と透明樹脂フィルム12とが溶着していない部分であり、この透過部分12aの直下を非溶着部と称するものとする。また、接合部13は、透明樹脂フィルム12の表側から凹んだ凹嵌形状であり、図1(b)に示すように、その接合跡はステッチ状であって、網目状に形成されている。無論、接合部13は網目状に限定するものではなく、渦状、波模様等の曲線状の接合部を形成してもよく、さらには、縦又は横方向に直線状に形成してもよいし、直線と曲線を混合したものであってもよい。これらの接合部13によって、透過部分12aが積層樹脂シート10の表面に方形状、多角形状、セル状、又は帯状に形成可能であり、種々の模様が実施可能である。
【0024】
接合部13は、図2に示すように、透明樹脂フィルム12側から凹嵌状に形成され、接合部13で囲まれた部分が非溶着部A(図2参照)であり、透明樹脂フィルム12の樹脂シート11の凹凸面が透過する透過部分12aである。この透過部分12aの周縁部には主に透明樹脂フィルム12による湾曲部12bが形成され、湾曲部12bにより肉厚感を与えることができる。また、透明樹脂フィルム12は、透過部分12aの周囲に湾曲部12bが形成されることによって、透明樹脂フィルム12、特にその表面に張力が働いて樹脂シ−ト11の凹凸面11aに密着し、弛みや皺が発生することがなく、良好な質感を与える。また、湾曲部12bは積層樹脂シート10に視覚的に肉厚感を与えることができるし、湾曲部12bの指の触接による肉厚感によって、高級感を与えることができる。また、樹脂シ−ト11の凹凸面11aと透明樹脂フィルム12の裏面とには微細空隙が形成され、これらの面によって、複雑な光の屈折が生じ、凹凸面11aに立体感が生じ、積層樹脂シート10に高級感を醸成することができる。
【0025】
さらに、本実施例の積層樹脂シートの意匠性について図3を参照し説明する。図3において、入射光L1は透明樹脂フィルム12に入射すると、その表面で反射した反射光Laと、透明樹脂フィルム12内に伝搬してその界面で反射した反射光Lbとが得られるとともに、透明樹脂フィルム12を透過した光は樹脂シ−ト11の凹凸面11aの凹部11bで反射して透明樹脂フィルム12を透過して出射したり、また、透明樹脂フィルム12の裏面で全反射して散乱する。また、入射光L2は、透明樹脂フィルム12を透過して凸部11cで反射し、その反射光が透明樹脂フィルム12の裏面側から外部へと出射する。また、入射光が透明樹脂フィルム12を通過する際に所定の屈折率で屈折する。本実施例の積層樹脂シートでは、入射光L1,L等2が複雑に反射することによって、凹凸面11aの模様が立体感のある意匠性に優れたものとなり、積層樹脂シート10に高級感を与えることができる。
【0026】
また、樹脂シ−ト11は、その凹凸面11aが、特殊な凹凸ではなく、一般に市販されている安価な樹脂シ−トに形成されているものでよく、本実施例の積層樹脂シートによれば、凹凸面11aに立体感や深み感を生み積層樹脂シート10に高級感を付与することができる。また、この実施例に限定するものではないが、樹脂シ−ト11は発泡塩化ビニルが好ましく、他には、しば加工をしたポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン等がある。透明樹脂フィルム12はポリ塩化ビニルが好ましいが、これに限定するものではない。また、樹脂シ−ト11の凹凸面11aはヘアーライン状の凹凸でもよく、また、凹凸面11aにキャラクターやロゴ等の印刷を施したものであってもよいし、ラメを散りばめたものであってもよい。さらには、積層樹脂シート10の裏面に布又は不織布等を接着することによって、縫製にも耐え得る樹脂シート素材とすることも可能である。このように、本実施例の積層樹脂シートは、種々の用途に対応できる意匠効果に優れた積層樹脂シートである。
【0027】
さらに、詳細に説明すると、接合部13で区画されたセル状の透過部分12aは、その直下が非溶着部A(図2参照)であり、本実施例では透過部分12aの形状が四角形であって、その一辺が8〜9mm程度である。たとえ、非溶着部Aが形成されているとしても積層樹脂シート10を撓ませたとしても透明樹脂フィルム12が浮いた状態になることはない。しかし、透過部分12aの面積を大きくした場合には曲げた際に浮いた状態になる可能性もあり、その場合、高級感が損なわれるおそれがある。そこで、透明樹脂フィルム12の厚さにも依存するが、透明樹脂フィルム12が浮いたり撓んだりしない程度の面積にするのが好ましく、概ね四角形の一辺が20mm以下の寸法に調整するとよい。無論、透過部分12aの形状は四角形に限定するものではなく、多角形でもよいし接合部13が交差することがない直線状の模様でシートを区画するものであってもよく、また、直線と曲線とを組み合わせたものであってもよい。
【0028】
また、本実施例では、透明樹脂フィルム12の厚さを、例えば0.2mmとし、樹脂シ−ト11を0.9mmとした。なお、通常、透明樹脂フィルムを樹脂シートとをラミネートする場合の厚みは0.1mm以下のもであり、それと比較して厚みのある透明樹脂フィルムを使用する。無論、透明樹脂フィルム12と樹脂シ−ト11の厚さはこの実施例に限定するものではなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。
【0029】
また、接合部13の個々の形状は、本実施例ではステッチ状であるが、この実施例に限定することなく、ドット状、円形、三角形、四角形、ハート形、十字状、星形等といった種々の形状にすることができ、これらの形状を連続して形成することによって、線状に形成されて積層樹脂シートに接合部13による絵柄を形成することができるし、これらの変形形状であってもよい。
【0030】
次に、本実施例に係る積層樹脂シートの製造方法の一実施例について説明する。先ず、上記実施例の積層樹脂シートを高周波溶着装置により製造する製造方法について説明する。図4(a)に示すように、基台(下部電極部)15に凹凸面11aを有する樹脂シ−ト11を載置し、樹脂シ−ト11の凹凸面11aを覆うように透明樹脂フィルム12を重ねて置き(載置工程)、続いて、ワーク部(上部電極部)14を矢印Aのように降下させてワーク部(上部電極部)14の網目状に突出する突起状電極部14aを透明樹脂フィルム12面に接触させて押圧して通電し、内部発熱により樹脂シ−ト11と透明樹脂フィルム12とを部分的を高周波溶着により溶着し(溶着工程)、その後、冷却して接合部13を形成し、ロール部20に巻き取る。接合部13以外は非溶着部となる。本実施例では高周波溶着を枚葉方式で行って、積層樹脂シート10を製造する。
【0031】
ワーク部(上部電極部)14は上下方向に可動し、図4(c)に示すように、平板状電極部であり、接合部13を形成するために、その押圧面に複数の突起状電極部14aが形成されている。突起状電極部部14aは、網目状の接合部13に対応して形成される。このワーク部(上部電極部)14で接合部13を形成することによって、突起状電極部部14aで囲まれる部分が透過部分12aとなる。この透過部分12aの直下が樹脂シ−ト11と透明樹脂フィルム12との非溶着部である。
【0032】
ワーク部(上電極部)14の押圧面には、図4(d)に示すように、突起状電極部14aが形成されており、突起状電極部14aの突出寸法は、樹脂シート11と透明樹脂フィルム12との厚さに応じて定められ、例えば、樹脂シート11が0.9mmであり、透明樹脂フィルム12が0.2mmであるとすると、0.5〜1.0mm程度に設定される。ワーク部(上電極部)14の突起状電極部14aは、基台(下部電極部)15に重ねられた樹脂シ−ト11と透明樹脂フィルム12とを押圧すると、突起状電極部14aが接合部13が形成される部分に嵌入し(押圧工程)、突起状電極部14aが0.2〜0.3mm程度嵌入した状態で、溶着工程へと進み、高周波溶着装置により電極部にパルス状の電流を供給することによって、内部発熱により溶着部13が溶着される。ワーク部(上部電極部)14の突起状電極部14a以外のワーク部(上部電極部)14の平面部分は透明樹脂フィルム12には接触していないので、透過部分12aの直下は接合されることはない。
【0033】
また、ワーク部14は、複数の突起状電極部14aが網目状に形成され、透明樹脂シート12にはステッチ状溶着痕が形成される。また、突起状電極部14aは、上述のように種々の形態が実施可能であり、上記形状に合わせて種々の形状に形成することができる。また、樹脂シ−ト11には、例えば、発泡塩化ビニルが用いられ、透明樹脂フィルム12には塩化ビニルが用いられる。
【0034】
また、既存の高周波溶着装置を使用し、比較的安価のプラスチック素材であっても高級感を得ることができる新たな素材シートを提供できる利点がある。また、溶着工程が高周波溶着であり、上下電極部にパルス状に電流を供給することによって、接合部13を素材内部の発熱により溶着することができるし、短い時間で溶融溶着することができ、他の部分に損傷を与えることなく製造することができる利点があり、積層樹脂シートに高級感を与えることができる。
【0035】
さらに、本発明の他の実施例としては、図5に示すように、連続的に積層樹脂シート12を製造することができる。この製造装置では、透明樹脂フィルム12と樹脂シート11とがロール部16,17にそれぞれ巻回されており、これらのロール部16,17から透明樹脂フィルム12と樹脂シート11とがそれぞれ引き出され、重ねられた状態で溶着部18に送り込まれる。この溶着部18による溶着工程では、上記実施例と同様な枚葉式で高周波溶着が行われ、透明樹脂フィルム12と樹脂シート11とが接合部13で接合される。溶着後、冷却部19に搬送されて冷却し積層樹脂シート10がロール部20に巻き取られる。このような製造工程で積層樹脂シート10を量産化することができる。
【0036】
なお、上記実施例では、高周波溶融装置を用いたが、熱可塑性樹脂を使用する場合には、インパルス式溶着による熱溶着によって接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の利用分野は、ブックカバー、バッグ、キ−ケース、財布等に使用する樹脂シート素材、または、種々のケースなどの小物類に貼付して使用する化粧シートとして利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 積層樹脂シート
11 樹脂シ−ト
11a 凹凸面
11b 凹部
11c 凸部
12 透明樹脂フィルム
12a 透過部分
12b 湾曲部
13 接合部
14 ワーク部(上部電極)
14a 突起状電極部部
15 下部電極
16,17,20 ロール部
18 溶着部
19 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側の透明樹脂フィルムが下地の微細な凹凸面を有する樹脂シ−トを覆うように重なり、該樹脂シ−トと該透明樹脂フィルムとを溶着して該透明樹脂フィルム側に凹嵌した接合部が形成されているとともに、該接合部の周囲を該樹脂シ−トと該透明樹脂フィルムとが溶着していない非溶着部とし、該非溶着部を下地の前記凹凸面の模様の透過部分であって、該透過部分を前記透明樹脂フィルムに分散形成したことを特徴とする積層樹脂シート。
【請求項2】
前記接合部は高周波溶着による接合であり、該接合部がステッチ状であって網目状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層樹脂シート。
【請求項3】
前記凹凸面を有する樹脂シ−トが発泡塩化ビニルによることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層樹脂シート。
【請求項4】
前記凹凸面を有する樹脂シ−トを基台に載置し、該樹脂シ−トの凹凸面を覆うように透明樹脂フィルムを重ねて置く載置工程と、
前記載置工程に続いて、複数の突起状部が網目状に形成されたワーク部を前記透明樹脂フィルム側から前記凹凸面を有する樹脂シ−トとを押圧する押圧工程と、
前記押圧工程により、前記透明樹脂フィルムと前記樹脂シ−トとを押圧した状態で、該樹脂シ−トと該前記透明樹脂フィルムとを前記ワーク部の前記突起状部で加熱して接合する溶着工程とによることを特徴とする積層樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記ワーク部が前記複数の突起状電極部を網目状に形成した上部電極部であり、前記基台が下部電極部であって、前記溶着工程を高周波溶着として、前記接合部をステッチ状の溶着部を形成したことを特徴とする請求項4に記載の積層樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
前記凹凸面を有する樹脂シ−トが発泡塩化ビニルによることを特徴とする請求項4又は5に記載の積層樹脂シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−37063(P2011−37063A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184544(P2009−184544)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(593154609)大比良工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】