説明

積層素子

【課題】絶縁シートの表裏両面に効率良くコイルを配置することで、巻回数の多い回路素子を構成する場合でも積層の厚みを薄くでき、小型軽量化が可能な積層素子を提供する。
【解決手段】折りたたんで積層される少なくとも2つ以上の折りたたみ部を有する絶縁シート1と、それぞれの折りたたみ部について、片面側に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体2を含み、他面側に1ターン以上の第1のコイルと巻き方向を同じとする第2のコイルを形成する導体2を含み、第1のコイルと第2のコイルの片端同士が絶縁シート1を貫通する貫通穴3にて導通し、隣り合う折りたたみ部において、導体の片端が折りたたむ際の折れ線部を介して隣の折りたたみ部の導体の片端と接続され、それぞれの折りたたみ部のコイルの巻き方向を反対方向としてインダクタを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導体コイルを備える絶縁シートを積層した積層素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14に導体コイルを備える絶縁シートを積層した積層素子の構成を示す。図中、1は絶縁シート、2は導体である。絶縁シート1はフレキシブルプリント基板のようなものであり、折りたたみ可能となっている。導体2はフレキシブルプリント基板の銅箔のようなものであり、コイル状に形成されて、これを積層することにより、所望のインダクタンス値を得られるようになっている。
【0003】
図15は導体コイルを備える絶縁シートの構成を示しており、(a)は正面図、(b)は背面図である。正面図は図14のa面から見た構成、背面図は図14のb面から見た構成を示している。この例では、図14のa面側に導体2をコイル状に形成した銅箔パターンを備えている。
【0004】
なお、特許文献1には、上述のような薄型の可撓性絶縁基板上に渦巻き状の第1、第2コイルを設け、これを折り曲げて、重ね合わせて薄型トランスを構成することが提案されている。
【特許文献1】特開平5−243057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、可撓性絶縁基板の片方の面に渦巻き状の第1、第2コイルを設けてあり、巻数の大きいトランスを構成するには、多数枚の可撓性絶縁基板を重ね合わせる必要があり、積層トランスの厚みが増加するという問題があった。
【0006】
本発明は上述の問題を解決するものであり、絶縁シートの表裏両面に効率良くコイルを配置することで、巻回数の多い回路素子を構成する場合でも積層の厚みを薄くでき、小型軽量化が可能な積層素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の課題を解決するために、図1に示すように、折りたたんで積層される少なくとも2つ以上の折りたたみ部を有する絶縁シート1と、それぞれの折りたたみ部について、片面側に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体2を含み、他面側に1ターン以上の第1のコイルと巻き方向を同じとする第2のコイルを形成する導体2を含み、第1のコイルと第2のコイルの片端同士が絶縁シート1を貫通する貫通穴3にて導通し、隣り合う折りたたみ部において、導体の片端が折りたたむ際の折れ線部を介して隣の折りたたみ部の導体の片端と接続され、それぞれの折りたたみ部のコイルの巻き方向を反対方向としてインダクタを形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶縁シートの各折りたたみ部について、片面側に第1のコイルを、他面側に第1のコイルと巻き方向を同じとする第2のコイルを形成し、第1のコイルと第2のコイルの片端同士が絶縁シートを貫通する貫通穴にて導通するようにしたので、巻回数の多い回路素子を構成する場合でも多数層の積層が不要であり、全体の積層の厚みを薄くできるから、小型化・薄型化が可能な積層素子を実現できる効果がある。また、従来と同じ大きさであれば、従来よりも巻回数が多くなる分、従来よりも大きなインダクタンス値を得ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の積層素子に用いる絶縁シート1上の導体2のパターンを示している。図1において、(イ)は表面のパターン、(ロ)は裏面のパターンである。ただし、裏面のパターンは表面のパターンと同じ側から透視した場合のパターンとして描いてある。図中の太線が導体2のパターンである。
【0010】
図1において、破線は絶縁シート1の折りたたみ部であり、この破線の部分で左右の絶縁シートが折り曲げられて重ね合わされる。重ね合わされた絶縁シート1の間には、必要に応じて導体2の表面を覆うように他の絶縁シートを挿入しても良いし、重ね合わされる面の導体2の上に薄い絶縁膜を予め塗布しておいても良い。
【0011】
図1(イ)において、左上隅のaは外部回路との接続端子である。この接続端子aから反時計回りの渦巻き状の導体2のパターンよりなるコイルが巻回されており、その中心部bの貫通穴3から裏面の導体パターンの中心部cに接続されている。図1(ロ)において、中心部cから反時計回りに拡がる渦巻き状の導体パターンよりなるコイルが巻回されており、その外周端は、破線で示す折りたたみ部を越えて、絶縁シート1の右側の区画に入り、今度は時計回りに収束する渦巻き状の導体パターンよりなるコイルが巻回されており、その中心部dの貫通穴から表面の導体パターンの中心部eに接続されている。再び図1(イ)に戻って、中心部eから時計回りに拡がる渦巻き状の導体パターンよりなるコイルが巻回されており、その外周端は、右上隅の接続端子fにつながっている。
【0012】
図1に示す絶縁シート1を破線で示す部分で折り曲げて重ね合わせると、4個のコイルが同じ方向に巻回された積層コイルとなる。したがって、インダクタンス素子として使用することができる。
【0013】
(実施形態2)
図2は本発明の実施形態2の積層素子に用いる絶縁シート1上の導体2のパターンを示している。図2において、(イ)は表面のパターン、(ロ)は裏面のパターンである。ただし、裏面のパターンは表面のパターンと同じ側から透視した場合のパターンとして描いてある。図中の太線が導体2のパターンである。
【0014】
図2において、破線は絶縁シート1の折りたたみ部であり、この破線の部分で左右の絶縁シートが折り曲げられて重ね合わされる。重ね合わされた絶縁シート1の間には、それぞれ必要に応じて導体2の表面を覆うように他の絶縁シートを挿入しても良いし、重ね合わされる面の導体2の上に薄い絶縁膜を予め塗布しておいても良い。
【0015】
図2(イ)において、左上隅のaは一方の接続端子であり、右上隅のjは他方の接続端子である。図2の符号f,g,h,j,jを図1の符号b,c,d,e,fにそれぞれ対応させれば、同じパターンが2区画ごとに連続していることが分かる。
【0016】
図2においても、絶縁シート1を破線で示す部分で折り曲げて重ね合わせると、8個のコイルが同じ方向に巻回された積層コイルとなる。したがって、インダクタンス素子として使用することができる。図2のパターンは図1に示すパターンを2つ直列に接続したことになり、図1の構成に比べると、インダクタンス値が2倍のインダクタンス素子として使用することができる。
【0017】
(実施形態3)
図3は本発明の実施形態3の積層素子に用いる絶縁シート1上の導体2のパターンを示している。図3において、(イ)は表面のパターン、(ロ)は裏面のパターンである。ただし、裏面のパターンは表面のパターンと同じ側から透視した場合のパターンとして描いてある。図中の太線が導体2のパターンである。
【0018】
本実施形態は2巻線のトランスとして構成したものであり、絶縁シート1の左側の区画が第1の巻線で、接続端子a−d間に第1のコイルが構成されており、絶縁シート1の右側の区画が第2の巻線で、接続端子e−h間に第2のコイルが構成されている。
【0019】
図3において、絶縁シート1を破線で示す部分で折り曲げて重ね合わせると、2個のコイル(a−b),(c−d)が同じ方向に巻回された第1のコイルと、別の2個のコイル(e−f),(g−h)が同じ方向に巻回された第2のコイルとが磁気結合したトランスとなる。
【0020】
すなわち、図3の積層素子は、折りたたんで積層される少なくとも2つ以上の折りたたみ部を有する絶縁シート1と、それぞれの折りたたみ部について、片面側に1ターン以上の第1のコイル(a−b),(c−d)を形成する導体2を含み、他面側に第1のコイルと巻き方向を同じとする1ターン以上の第2のコイル(e−f),(g−h)を形成する導体2を含み、第1のコイルと第2のコイルの片端同士が絶縁シートを貫通する貫通穴3、つまり(b−c)と(f−g)にてそれぞれ導通してインダクタを形成し、少なくとも2つ以上のインダクタが磁気的に結合してトランスを形成する積層素子である。
【0021】
(実施形態4)
図4は本発明の実施形態4の積層素子に用いる絶縁シート1上の導体2のパターンを示している。図4において、(イ)は表面のパターン、(ロ)は裏面のパターンである。ただし、裏面のパターンは表面のパターンと同じ側から透視した場合のパターンとして描いてある。図中の太線が導体2のパターンである。
【0022】
本実施形態は表面の導体2のパターンの真裏に同じパターンで裏面の導体2のパターンが形成されているので、表面と裏面の導体2の間にコンデンサが形成されている。
【0023】
また、絶縁シート1の表裏面のパターンはいずれも、左側の区画の中心部の接続端子から時計周りに拡大してゆく渦巻きパターンであり、その外周端は、折りたたみ部となる破線部を通って、右側の区画の外周部に入り、今度は反時計回りに収束してゆく渦巻きパターンとなり、右側の区画の中心部の接続端子につながる構成である。したがって、絶縁シート1を破線で示す部分で折り曲げて重ね合わせると、2個のコイルが同じ方向に巻回されたコイルとなり、図4(イ)のパターンによる第1のコイルと、図4(ロ)のパターンによる第2のコイルの間に並列的に分布定数的にキャパシタが接続された構成となる。
【0024】
すなわち、図4の積層素子は、折りたたんで積層される2つの折りたたみ部を有する絶縁シート1と、それぞれの折りたたみ部について、片面側に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体2を含み、他面側に第1のコイルにほぼ対向に位置する1ターン以上の第2のコイルを形成する導体2’を含み、それぞれの折りたたみ部の同一面上の導体の片端同士が折りたたむ際の折れ線部を介して接続され、それぞれの折りたたみ部のコイルの巻き方向を反対方向とし、インダクタならびに2本の導体2−2’間に分布定数的にキャパシタを形成する積層素子である。
【0025】
(実施形態5)
図5は本発明の実施形態5の積層素子に用いる絶縁シート1上の導体2のパターンを示している。図5において、(イ)は第1の絶縁シート1aの表面のパターン、(ロ)は第2の絶縁シート1bの表面のパターン、(ハ)は第1の絶縁シート1aの裏面のパターン、(ニ)は第2の絶縁シート1bの裏面のパターンである。ただし、裏面のパターンは表面のパターンと同じ側から透視した場合のパターンとして描いてある。図中の太線が導体2のパターンである。
【0026】
第1の絶縁シート1aの表面のパターンと第2の絶縁シート1bの表面のパターンは、中心部b−c間、d−e間、f−g間、h−i間で立体的に接続されており、その間に、図6に示すように、第3の絶縁シート1cが介在している。
【0027】
また、第1の絶縁シート1aの裏面のパターンと第2の絶縁シート1bの裏面のパターンは、中心部l−m間、n−o間、p−q間、r−s間で立体的に接続されており、その間に、図6に示すように、第3の絶縁シート1cが介在している。
【0028】
図6では、絶縁シート1a,1bの最も左端の区画について、第1の絶縁シート1aの中心部bが貫通穴3にて第2の絶縁シート1bの中心部cに接続される様子と、その近傍で、第1の絶縁シート1aの中心部lが貫通穴3’にて第2の絶縁シート1bの中心部mに接続される様子を示している。
【0029】
すなわち、図5、図6の積層素子は、折りたたんで積層される少なくとも2つ以上の折りたたみ部を有する第1の絶縁シート1aおよび第2の絶縁シート1bと、それぞれの折りたたみ部について、第1の絶縁シート1aの片面側(図5(イ))に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体を含み、第1の絶縁シート1aの他面側(図5(ハ))に第1のコイルにほぼ対向に位置する1ターン以上の第2のコイルを形成する導体を含み、第2の絶縁シート1bの片面側(図5(ロ))に1ターン以上の第3のコイルを形成する導体を含み、第2の絶縁シート1bの他面側(図5(ニ))に第3のコイルにほぼ対向に位置する1ターン以上の第4のコイルを形成する導体を含み、第1のコイルと第3のコイルが巻き方向を同一にし、片端同士が第1および第2の絶縁シート1a,1bを貫通する第1の貫通穴3にて導通してインダクタを形成し、上記第1の貫通穴3の近傍にて、第2のコイルと第4のコイルの片端同士が第1および第2の絶縁シート1a,1bを貫通する第2の貫通穴3’にて導通し、隣り合う折りたたみ部において、第3のコイルの第1のコイルとの接続端の反対側の端同士が折りたたむ際の折れ線部を介して接続され、それぞれの折りたたみ部のコイルの巻き方向を反対方向として直列にインダクタを形成し、第4のコイルの第2のコイルとの接続端の反対側の端同士が折りたたむ際の折れ線部を介して接続され、第1のコイルと第3のコイルによる導体と第2のコイルと第4のコイルによる導体の2つの導体との間に、分布定数的にキャパシタを形成する積層素子であり、図6に示すように、それぞれ両側に導体を持つ第1の絶縁シート1aと第2の絶縁シート1bの間に第3の絶縁シート1cを挿入して積層し、第1の貫通穴3および第2の貫通穴3’がともに第3の絶縁シート1cをも貫通していることを特徴とする。
【0030】
このように、図5、図6の積層素子によれば、第1の絶縁シート1aの表裏両面のコイルパターンがほぼ対向する位置に形成されており、第2の絶縁シート1bについても表裏両面のコイルパターンがほぼ対向する位置に形成されているので、分布定数的に構成されるキャパシタの容量を大きく確保することができる。
【0031】
(実施形態6)
図7は本発明の実施形態6の断面図である。本実施形態では、上述の図5、図6の実施形態5において、連なった折りたたみ部のうち、少なくとも1つ以上の折りたたみ部において、第3の絶縁シート1cの一部が第1および第2の絶縁シート1a,1bの間からはみ出しており、第2のコイルを形成する導体(第1の絶縁シート1aの裏面側(図5(ハ))のパターン)が上記はみ出ている第3の絶縁シート1c上で露出していることを特徴とする。
【0032】
図8は本実施形態の斜視図であり、第1の絶縁シート1aの表面側のパターンと裏面側のパターンが接続端子4として露出している様子を示している。第1の絶縁シート1aの表面側のパターンは図5(イ)のパターンであって接続端子a(またはj)を有しており、これらは図8の接続端子4として露出している。一方、第1の絶縁シート1aの裏面側のパターンは図5(ハ)のパターンであって、接続端子k(またはt)を有しているが、これらは絶縁シート1aの裏側に隠れるので、外部回路との接続が困難となる。そこで、本実施形態では、図7、図8に示すように、第1の絶縁シート1aの表面側の接続端子a(またはj)のみならず、裏面側の接続端子k(またはt)についても外部回路との接続が容易となるように、第3の絶縁シート1cの一部が第1および第2の絶縁シート1a,1bの間からはみ出すように構成し、裏面側の接続端子k(またはt)が上記はみ出ている第3の絶縁シート1c上で接続端子4として露出するようにしたものである。これにより外部回路との接続が容易となる。
【0033】
(実施形態7)
図9は本発明の実施形態7の要部構成を示す斜視図である。本実施形態では、第1の絶縁層1aおよび/もしくは第2の絶縁層1bが折りたたみ部ごとに分割されたリジッド基板であり、第3の絶縁層1cが折りたたむことのできるフレキシブル基板にて形成され、隣り合う折りたたみ部間のコイルの接続を第3の絶縁層1cの両面あるいは片面側に配される導体を介して行うようにしたものである。すなわち、第1の絶縁層1aおよび/もしくは第2の絶縁層1bとして折りたたみ部ごとに分割されたリジッド基板を用いると、その分割された部分でコイルが途切れてしまうが、第3の絶縁層1cの両面あるいは片面側に配される導体を介してコイルの端部同士を接続すれば、図5の破線で示す折りたたみ部を跨ぐ配線を確保することができる。
【0034】
ここで、フレキシブル基板としては、ポリイミド、ポリエステルなどの基板素材が使用され、また、リジッド基板としては、ガラスエポキシ、紙フェノール、CEM3などが使用される。
【0035】
(実施形態8)
図10は本発明の実施形態8の積層素子に用いる絶縁シート1上の導体2のパターンを示している。本実施形態では、コイルの中心に磁性コアを配してインダクタンス値を増加させた積層素子について説明する。図10において、(イ)は表面のパターン、(ロ)は裏面のパターンである。ただし、裏面のパターンは表面のパターンと同じ側から透視した場合のパターンとして描いてある。図中の太線は導体のパターンであり、ここでは図2のパターンを縦方向に長くしたパターンを用いている。
【0036】
本実施形態では、渦巻き状に巻回した導体2のパターンの中心部にコア挿入穴5を設けてある。このコア挿入穴5は、図11に示すように、絶縁シート1を破線で示す部分で折り曲げて重ね合わせると、積層素子7の厚み方向に貫通する穴となる。断面形状がE型の磁性コア6bと断面形状がI型の磁性コア6bを突き合わせて断面形状が日の字型のコアを形成し、その中央部のコアを積層素子7のコア挿入穴5に挿入することで、積層素子7のインダクタンス値を増加させることができる。なお、上述の実施形態1〜7のいずれにおいてもコイルの中心に磁性コアを配してインダクタンス値を増加させることが可能であることは言うまでもない。磁性コアの材質としてはフェライトコアを想定しているが、その他の磁性体を用いても構わない。
【0037】
(実施形態9)
図12は本発明の積層素子を用いた高圧放電灯点灯装置の回路図である。交流電源Vsには、フィルタコイルLfとフィルタコンデンサCfを介して全波整流器DBの交流入力端子が接続されている。このフィルタコイルLfとフィルタコンデンサCfは本発明の積層素子を用いて構成することができ、これにより小型化・薄型化が可能となる。
【0038】
全波整流器DBの直流出力端には、コンデンサC1が並列に接続されている。このコンデンサC1は高周波をバイパスする程度の小容量のものであり、全波整流器DBの出力電圧は交流電源Vsの交流電圧を全波整流した脈流電圧となっている。インダクタL1とスイッチング素子Q1とダイオードD1は昇圧チョッパを構成し、電解コンデンサよりなる平滑コンデンサCeに安定した直流電圧を得ている。インダクタL1とコンデンサC1は本発明の積層素子を用いて構成することができ、これにより昇圧チョッパの小型化・薄型化が可能となる。なお、平滑コンデンサCeは電解コンデンサよりなり、本発明の積層素子には適していない。
【0039】
平滑コンデンサCeの両端には、スイッチング素子Q2とインダクタL2とダイオードD2よりなる降圧チョッパが接続されており、コンデンサC2にはランプ電圧に相当する直流電圧が得られる。この降圧チョッパは実質的に放電灯Laの安定器(バラスト)として作用する。インダクタL2とコンデンサC2は本発明の積層素子を用いて構成することができ、これにより降圧チョッパの小型化・薄型化が可能となる。
【0040】
コンデンサC2の両端には、スイッチング素子Q3,Q4の直列回路とスイッチング素子Q5,Q6の直列回路が並列に接続されている。スイッチング素子Q3,Q4の接続点とスイッチング素子Q5,Q6の接続点の間には、インダクタL3を介して放電灯Laが接続されている。インダクタL3の巻線の途中に設けたタップとグランド間にはコンデンサC3が接続されている。このインダクタL3とコンデンサC3は放電灯Laの始動時に絶縁破壊用の高電圧を発生させる共振回路として使用される。すなわち、放電灯Laの始動時にはスイッチング素子Q3,Q4を交互に高周波でON/OFFさせることにより、インダクタL3とコンデンサC3の直列共振回路には共振電圧が印加され、これにより放電灯Laを絶縁破壊させて始動させる。放電灯Laの始動後には、スイッチング素子Q3,Q6がON、スイッチング素子Q4,Q5がOFFの状態と、スイッチング素子Q3,Q6がOFF、スイッチング素子Q4,Q5がONの状態とを交互に低周波で交番させることにより、放電灯Laに矩形波電圧を供給する。これにより水銀ランプやメタルハライドランプのような高圧放電灯(HIDランプ)を点灯できる。
【0041】
ここで、インダクタL3とコンデンサC3は本発明の積層素子を用いて構成することができ、これによりイグナイタの小型化・薄型化が可能となる。
【0042】
(実施形態10)
図13は本発明の積層素子を用いた無電極放電灯点灯装置の回路図である。電解コンデンサよりなる平滑コンデンサCeまでの構成は、図12と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0043】
ここでも、フィルタコイルLfとフィルタコンデンサCfは本発明の積層素子を用いて構成することができ、これによりフィルタ回路の小型化・薄型化が可能となる。
【0044】
また、インダクタL1とコンデンサC1は本発明の積層素子を用いて構成することができ、これにより昇圧チョッパの小型化・薄型化が可能となる。なお、平滑コンデンサCeは電解コンデンサよりなり、本発明の積層素子には適していない。
【0045】
平滑コンデンサCeの両端にはスイッチング素子Q3,Q4の直列回路が接続されており、スイッチング素子Q4の両端にはインダクタL3とコンデンサC3の直列共振回路が接続されている。スイッチング素子Q3,Q4は高周波で交互にON/OFFされ、インダクタL3とコンデンサC3の直列共振作用により共振電圧が発生する。この共振電圧は直流カット用のコンデンサC4を介して無電極ランプLaの誘導コイルに供給され、無電極放電灯ランプLaが高周波点灯する。
【0046】
ここで、インダクタL3とコンデンサC3は本発明の積層素子を用いて構成することができ、これにより共振回路の小型化・薄型化が可能となる。
【0047】
上述の実施形態9,10では、放電灯点灯装置を例示したが、放電灯点灯装置以外の各種の電力変換回路についても本発明の積層素子を用いてインダクタやコンデンサを構成できることは明らかである。また、電力変換回路以外の一般的な発振回路の構成素子として本発明の積層素子を用いることも出来ることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態1の絶縁シートのパターンを示す図であり、(イ)は正面図、(ロ)は背面図である。
【図2】本発明の実施形態2の絶縁シートのパターンを示す図であり、(イ)は正面図、(ロ)は背面図である。
【図3】本発明の実施形態3の絶縁シートのパターンを示す図であり、(イ)は正面図、(ロ)は背面図である。
【図4】本発明の実施形態4の絶縁シートのパターンを示す図であり、(イ)は正面図、(ロ)は背面図である。
【図5】本発明の実施形態5の絶縁シートのパターンを示す図であり、(イ),(ロ)は正面図、(ハ),(ニ)は背面図である。
【図6】本発明の実施形態5の要部構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態6の要部構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態6の要部構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態7の要部構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態8の絶縁シートのパターンを示す図であり、(イ)は正面図、(ロ)は背面図である。
【図11】本発明の実施形態8の組み立て前の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態9の積層素子を用いた放電灯点灯装置の回路図である。
【図13】本発明の実施形態10の積層素子を用いた放電灯点灯装置の回路図である。
【図14】従来の積層素子の絶縁シートを展開した状態の斜視図である。
【図15】従来の積層素子の絶縁シートのパターンを示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 絶縁シート
2 導体
3 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたんで積層される少なくとも2つ以上の折りたたみ部を有する絶縁シートと、それぞれの折りたたみ部について、片面側に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体を含み、他面側に1ターン以上の第1のコイルと巻き方向を同じとする第2のコイルを形成する導体を含み、第1のコイルと第2のコイルの片端同士が絶縁シートを貫通する穴にて導通し、隣り合う折りたたみ部において、導体の片端が折りたたむ際の折れ線部を介して隣の折りたたみ部の導体の片端と接続され、それぞれの折りたたみ部のコイルの巻き方向を反対方向としてインダクタを形成した積層素子。
【請求項2】
折りたたんで積層される少なくとも2つ以上の折りたたみ部を有する絶縁シートと、それぞれの折りたたみ部について、片面側に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体を含み、他面側に第1のコイルと巻き方向を同じとする1ターン以上の第2のコイルを形成する導体を含み、第1のコイルと第2のコイルの片端同士が絶縁シートを貫通する穴にて導通してインダクタを形成し、少なくとも2つ以上のインダクタが磁気的に結合してトランスを形成する積層素子。
【請求項3】
折りたたんで積層される少なくとも2つの折りたたみ部を有する絶縁シートと、それぞれの折りたたみ部について、片面側に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体を含み、他面側に第1のコイルにほぼ対向に位置する1ターン以上の第2のコイルを形成する導体を含み、それぞれの折りたたみ部の同一面上の導体の片端同士が折りたたむ際の折れ線部を介して接続され、それぞれの折りたたみ部のコイルの巻き方向を反対方向とし、インダクタならびに2本の導体間に分布定数的にキャパシタを形成する積層素子。
【請求項4】
折りたたんで積層される少なくとも2つ以上の折りたたみ部を有する第1の絶縁シートおよび第2の絶縁シートと、それぞれの折りたたみ部について、第1の絶縁シートの片面側に1ターン以上の第1のコイルを形成する導体を含み、第1の絶縁シートの他面側に第1のコイルにほぼ対向に位置する1ターン以上の第2のコイルを形成する導体を含み、第2の絶縁シートの片面側に1ターン以上の第3のコイルを形成する導体を含み、第2の絶縁シートの他面側に第3のコイルにほぼ対向に位置する1ターン以上の第4のコイルを形成する導体を含み、第1のコイルと第3のコイルが巻き方向を同一にし、片端同士が第1および第2の絶縁シートを貫通する第1の貫通穴にて導通してインダクタを形成し、上記第1の貫通穴の近傍にて、第2のコイルと第4のコイルの片端同士が第1および第2の絶縁シートを貫通する第2の貫通穴にて導通し、隣り合う折りたたみ部において、第3のコイルの第1のコイルとの接続端の反対側の端同士が折りたたむ際の折れ線部を介して接続され、それぞれの折りたたみ部のコイルの巻き方向を反対方向として直列にインダクタを形成し、第4のコイルの第2のコイルとの接続端の反対側の端同士が折りたたむ際の折れ線部を介して接続され、第1のコイルと第3のコイルによる導体と第2のコイルと第4のコイルによる導体の2つの導体との間に、分布定数的にキャパシタを形成する積層素子。
【請求項5】
それぞれ両側に導体を持つ第1の絶縁シートと第2の絶縁シートの間に第3の絶縁シートを挿入して積層し、第1の貫通穴および第2の貫通穴がともに第3の絶縁シートをも貫通している請求項4記載の積層素子。
【請求項6】
連なった折りたたみ部のうち、少なくとも1つ以上の折りたたみ部において、第3の絶縁シートの一部が第1および第2の絶縁シートの間からはみ出しており、第2のコイルを形成する導体が上記はみ出ている第3の絶縁シート上で露出している請求項5記載の積層素子。
【請求項7】
第1の絶縁層および/もしくは第2の絶縁層が折りたたみ部ごとに分割されたリジッド基板であり、第3の絶縁層が折りたたむことのできるフレキシブル基板にて形成され、隣り合う折りたたみ部間のコイルの接続を第3の絶縁層の両面あるいは片面側に配される導体を介して行う請求項5または6記載の積層素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、コイルの中心に磁性コアを配してインダクタンス値を増加させた積層素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2008−186848(P2008−186848A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16737(P2007−16737)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】