説明

積層複合材の取付け構造

【課題】表面美観が保たれかつ十分な接続強度も確保できるとともに、効率の良い接合作業が行える積層複合材の取付け構造を提供すること。
【解決手段】樹脂シートの表裏面に金属シートを固着してなる積層複合材を、建築物の躯体面に下地材を介して取り付けて建築物の壁面又は天井パネルを構成してなる積層複合材の取付け構造において、中央部にボルト孔を有する三角形状の金属プレート1を、前記複合材5の裏面側金属シート6に設けた前記金属プレートの外形に対応する三角形状の開口部に挿入し、金属プレートを一定角度回転することにより裏面側金属シートに重合させ、金属プレートのボルト孔にボルトを挿入して積層複合材を取付けて金属プレートを裏面側金属シートに圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層複合材の取付け構造、特に、建築物の内壁パネルや天井パネルとして用いられる積層複合材を効率良くかつパネルの美観を損なうことなく接合することができる取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートを表裏面側から金属板にて挟持し接着して形成した金属樹脂複合板は、建築物の外壁や内装材の壁面パネル、天井パネルとして広く用いられている。この金属樹脂複合板は、芯材となる樹脂シート(厚み3〜6mm程度)を、不燃性の無機フィラーを充填したポリオレフィン系樹脂で、表裏の金属板(厚み0.3〜0.5mm程度)はアルミニウム、ステンレス鋼或いはチタンなどで構成されており、軽量かつ高剛性であって優れた加工性や意匠性を具えている。特に、金属板としてチタンやステンレス鋼を使用する場合には、優れた耐食性をも発揮する。なお、金属樹脂複合板自体の改良技術に関しては、特許文献1を挙げることができる。
【0003】
このような金属樹脂複合板(以下、積層複合材という)を、実際に壁面パネルもしくは天井パネルとして使用する場合には、パネル部を建築物の壁面や天井部に保持固定することが必要である。従来、積層複合材からなるパネル部を保持固定する手段としては、種々の接続工法が提案されており、図7に代表的な方式を示す。
図7において、20は建造物の躯体壁面に取付けるZ形状のパネル保持用下地材、21は該下地材20に保持固定される積層複合材製の壁面パネル或いは天井パネルである。(a)は下地材20に対しパネル21をボルトナット22により固定した例、(b)は下地材20に対しパネル21をビス23により固定した例、(c)は下地材20に対しパネル21をジョイナー24により固定した例、(d)は下地材20に対しパネル21の裏面側金属板をリベット25により固定した例、をそれぞれ示すものである。なお、壁面パネルの取付け構造の先行技術として、補強リブによる補強効果とコスト低減を目的とした特許文献2を挙げることができる。
【特許文献1】特開2005−335091号公報
【特許文献2】特開2004−92020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の代表的な接続工法のうち、図7(a)のボルト22、(b)のビス23及び(c)のジョイナー24により固定する例では、ある程度の接続強度は期待できるが、固定具がパネルを貫通して表側に現れているためパネルの美観の点で問題があり、また、(d)のリベット25による方式は美観は損なわれないものの、接続強度の面で問題があった。
本発明の課題は、上述した従来の接続手段の問題点を解決することにあり、積層複合材の表面側には全く接続用の金具類は現れないため、表面美観が保たれかつ十分な接続強度も確保できるとともに、効率の良い接合作業が行える積層複合材の取付け構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明に係る積層複合材の取付け構造は、樹脂シートの表裏面に金属シートを固着してなる積層複合材を、建築物の躯体面に下地材を介して取り付けて建築物の壁面又は天井パネルを構成してなる積層複合材の取付け構造において、中央部にボルト孔を有する三角形状等の金属プレートを、前記複合材の裏面側金属シートに設けた前記金属プレートの外形に対応する三角形状等の開口部に挿入し、金属プレートを一定角度回転することにより裏面側金属シートに重合させ、金属プレートのボルト孔にボルトを挿入して積層複合材を取付けることを特徴とする。
上記において、金属プレートのボルト孔にねじを切り、ボルトの回転によって金属プレートを裏面側金属シートに圧着することで、荷重に対し十分な強度を発揮させ、また、積層複合材の裏面側金属シートの三角形状等の開口部に位置する樹脂シートを、裏面側金属シートの開口部を包含するように円形状に切り欠き、この切欠き部の金属プレート及びボルトを入れた残りの空間に樹脂材を注入充填することで、プレートの移動を防止し安定した接合状態が得られる。
また、本発明に係る他の積層複合材の接合取付け構造は、樹脂シートの表裏面に金属シートを固着してなる積層複合材を、建築物の躯体面に下地材を介して取り付けて建築物の壁面又は天井パネルを構成してなる積層複合材の取付け構造において、共通のボルト孔を有しかつ重合状態と開放状態で外形サイズの異なる2個の扇形プレートを、前記複合材の裏面側金属シートに設けた開口部に重合状態で入れてから開放状態にした後、ボルト及び座金により裏面側金属シートを接合したことを特徴とする。
上記において、2個の扇形プレートは、開放状態で裏面側金属シートに接触する部分が同一レベルとなるように、少なくとも一方のプレートに段部が設けられていること、また、座金の中心のボルト孔の内周にねじ部を設け、該座金を回転させることにより裏面側金属シートを座金とプレートにより挟持することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る取付け構造によれば、必要十分な接続強度を維持し得るとともに、複合材パネルの表面側には全く接続手段が現出しないため、美観を損なうこともなく、極めて実用性の高い接合手段を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて本発明に係る積層複合材の取付け構造の代表的な二つの実施形態例を説明する。
[第1形態例]
図1に示すものは、本発明の取付け構造に使用する接合金具の一例であり、正三角形状の金属プレート1と、該プレート1の中央に形成したボルト孔2に挿入するボルト3とからなる。金属プレート1は、十分な剛性を有するステンレス鋼、普通鋼或いはアルミ等の金属材料から構成され、1.0〜2.0mm程度の厚みをもち、各辺に凹状の切り欠き4を設けている。ボルト3には、全周にねじ部が形成されている。なお、金属プレート1の中央のボルト孔2はその内周にボルトねじ部に噛み合うねじ部を刻設しておくことが望ましい。
図2は、図1の接合金具の適用対象となる積層複合材側の加工と、該複合材に対する接合金具の使用と接合状態を順次示すものである。まず、(a)に示す如く、積層複合材5の裏面板6の所定位置(接合金具が取り付けられる位置)に、前記プレート1の外形と同一形状かつ僅かに大きいサイズの正三角形状の開口部7を切削するとともに、(b)に示すように、積層複合材5の芯材(樹脂シート)8部分についても、前記裏面板6の開口部7の各頂点を円周上に含む径に円形状に切り欠いて切欠き部9を設ける。次に、(c)の如く、ボルト3を挿入した金属プレート1を裏面板6の開口部7を通して芯材8の切欠き部9内に入れてから、(d)に示すように、金属プレート1をほぼ60度水平に回転させることで、プレート1が三角形の開口部7から抜け出ない位置に保持され、ボルトにかかる引張り荷重を裏面板とともに安定して受け持つこととなる。
【0008】
実際の取付け構造は、図3に示すように、積層複合材5を接合金具によって建築物の躯体壁面10に設けた形鋼製下地材11に取り付けたものである。金属プレート1及びボルト3の頭部は複合材5の内部に入った状態となり、このボルト3とナット12により複合材5は下地材11の下辺に保持固定される。ボルト3を回転させることにより、プレート1は裏面板6に圧着するが、裏面板6とプレート1の接触面積を増やすこととプレートの軽量化のために、プレートを単純な三角形とせずに、図示のようなプレートの各辺に凹状の切り欠き4を設けることが好ましい。
また、積層複合材5の芯材8に形成した円形切欠き部9には、上記の如くプレート1及びボルト頭部が入るが、プレート1及びボルト3による固定が完了した後は、円形切欠き部9の残った空間部に適宜な樹脂材を注入充填して固化させ、プレートの移動を防止するとともに接続強度を増大させることが望ましい。
【0009】
なお、第1形態例の例では、プレートとして三角形状のものを代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、三角形状のプレートと同等程度の機能(一定角度回転したとき、複合材の裏面板との接触面積が十分確保でき、満足すべき引張り荷重対応強度が得られること)が発揮できるものであれば、いかなる形状のものであっても適用可能である。例えば、一文字(長方形や楕円形などを含む)形状、十字形状、星型形状等のプレートを挙げることができる。従って、本発明の説明においては、これら同一の突状部が複数放射状にほぼ均等に張出した各種形状及び前記の三角形状を含めた形状を総称して単に「三角形状等」という。また、裏面板の開口部形状についても、上記プレートの形状に合致するように切り欠くことが必要である。
【0010】
[第2形態例]
図4は、本発明の取付け構造に使用する接合金具の他の例であり、(a)のねじ付きの座金13と、(b)のボルト孔を有する上プレート14及びこれに組み合う(c)の下プレート15と、(d)のボルト16とから構成される。なお、下プレート15にも同様にボルト孔が設けられている。
座金13の中心のボルト孔の周囲には一方側にリブ13aが張り出しており、該リブ13aの内周にねじ部(部分拡大図参照)が形成されている。また、上プレート14は全体を扇状に形成されており、中心側にボルト孔を有するとともに、外周側の円弧の一部を切り欠いている。下プレート15は、中心側にボルト孔を有し、外周側に段部を形成している。上下プレートを組み合わせる場合には、図4(e)に示す如く、ボルト孔を合わせるとともに上プレート14の切り欠きに、下プレート15の段部の下端側が入り込む形となり、下プレートの一部が露出した状態となる。
【0011】
図5は、図4の接合金具の適用対象となる積層複合材側の加工と、該複合材に対する接合金具の使用状態を順次示すものである。まず、(a)に示す如く、複合材5の裏面板6の所定位置(接合金具が取り付けられる位置)に、円形状の開口部17を切削する。該開口部17の大きさは、図4に示す上下プレートの組み合わせたものが丁度収まる径とする。また、(b)のように、裏面板の開口部17と同心円状に、複合材の芯材8を円形状に切り欠いて切欠き部18を形成する。次に、(c)に示すように、開口部17に折り重ねた状態の上下プレートを入れるが、ボルト孔には予めボルト16を挿入しておく。次いで、ボルト16を開口部17の中心に移動してから、上プレート14だけを一定角度(大体135度程度)水平方向に回転させると、裏面板6と上プレート14及び下プレート15の外周側が重合することになり、プレートが抜け出ない位置となる。この状態で(e)に示す如く、座金13をボルト16に差し込み、座金をねじ部に沿って回転させて裏面板6に圧着させることにより、プレートが固定されるとともに、裏面板が上下からプレートと座金により挟持される構造となるため、裏面板の局部座屈を防止し強度が増大する。
【0012】
図6は上記した第2形態例の接合金具を適用して積層複合板を建築物の躯体壁面10に設けた形鋼製下地材11に取り付け状態を示す。ナット12による締付により積層複合材5の裏面板は下方から上下プレート14,15、上方から座金13及び下地材11が圧着することで強固に挟持されることとなる。なお、任意の段階で芯材8の円形切欠き部18の残った空間部に、接合金具の移動防止と接続強度の補強のために、適宜な樹脂材を注入充填して固化させることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる取付け構造において使用する接合金具の一例を示すもので、(a)が金属プレート、(b)がボルトを示す。
【図2】(a)〜(d)は、図1に示す接合金具を用いて本発明に係る積層複合材の取付け構造の構築過程を順次示す平面図と断面図である。
【図3】図1に示す接合金具を用いて複合材を実際の躯体壁面に取り付けた態様を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる取付け構造において使用する接合金具の他の例を示すもので、(a)が座金、(b)が上プレート、(c)が下プレート、(d)がボルト、(e)が上プレート及び下プレートを重ねた状態をそれぞれ示す。
【図5】図4に示す接合金具を用いて本発明に係る積層複合材の取付け構造の構築過程を順次示す平面図と断面図である。
【図6】(a)〜(e)は、図4に示す接合金具を用いて複合材を実際の躯体壁面に取り付けた別の態様を示す断面図である。
【図7】従来の各種の接続手段を示す断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 金属プレート 2 ボルト孔
3 ボルト 4 プレート切り欠き
5 積層複合板 6 裏面板
7 裏面板の開口部 8 芯材
9 芯材切欠き部 10 躯体壁面
11 下地材 12 ナット
13 座金 14 上プレート
15 下プレート 16 ボルト
17 裏面板開口部 18 芯材切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの表裏面に金属シートを固着してなる積層複合材を、建築物の躯体面に下地材を介して取り付けて建築物の壁面又は天井パネルを構成してなる積層複合材の取付け構造において、中央部にボルト孔を有する三角形状等の金属プレートを、前記複合材の裏面側金属シートに設けた前記金属プレートの外形に対応する三角形状等の開口部に挿入し、金属プレートを一定角度回転することにより裏面側金属シートに重合させ、金属プレートのボルト孔にボルトを挿入して積層複合材を取付けることを特徴とする積層複合材の取付け構造。
【請求項2】
金属プレートのボルト孔にねじを切り、ボルトの回転によって金属プレートを裏面側金属シートに圧着することを特徴とする請求項1記載の積層複合材の取付け構造。
【請求項3】
積層複合材の裏面側金属シートの三角形状等の開口部に位置する樹脂シートを、裏面側金属シートの開口部を包含するように円形状に切り欠き、この切欠き部の金属プレート及びボルトを入れた残りの空間に樹脂材を注入充填することを特徴とする請求項1又は2記載の積層複合材の取付け構造。
【請求項4】
樹脂シートの表裏面に金属シートを固着してなる積層複合材を、建築物の躯体面に下地材を介して取り付けて建築物の壁面又は天井パネルを構成してなる積層複合材の取付け構造において、共通のボルト孔を有しかつ重合状態と開放状態で外形サイズの異なる2個の扇形プレートを、前記複合材の裏面側金属シートに設けた開口部に重合状態で入れてから開放状態にした後、ボルト及び座金により裏面側金属シートを接合したことを特徴とする積層複合材の接合取付け構造。
【請求項5】
2個の扇形プレートは、開放状態で裏面側金属シートに接触する部分が同一レベルとなるように、少なくとも一方のプレートに段部が設けられていることを特徴とする請求項4記載の積層複合材の取付け構造。
【請求項6】
座金の中心のボルト孔にねじ部を設け、該座金を回転させることにより裏面側金属シートを座金とプレートにより挟持することを特徴とする請求項4又は5記載の積層複合材の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−332539(P2007−332539A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161916(P2006−161916)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(506200083)
【Fターム(参考)】