説明

穴加工作業または座ぐり作業用の切削インサート

上面(2)と底面(3)との間に2つの長手方向側面(4)および2つの狭い側面(5)を含む、特に座ぐり作業および/または皿座ぐり作業用の切削インサート(1)であって、一方の長手方向側面(4)と一方の狭い側面(5)との間に切れ刃(6)が、底面(3)に対して斜めに延び、かつ少なくともほぼ切削体の厚み全体(d)に延びるように形成される。上面(2)と底面(3)との間に延びるすくい面(7)が、切れ刃(6)に対面する長手方向側面(4)に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴加工作業および/または座ぐり作業用の、少なくとも1つの切れ刃を有する切削体を含む切削インサートに関する。本発明はまた、このタイプの少なくとも1つの切削インサートを収容するためのインサートホルダにも関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2004/056518A2号パンフレット(PCT/DE2003/004274号明細書)からインサートホルダを有する深穴用ドリルが公知であり、前記深穴用ドリルを、予め定められた公称直径範囲に使用する。深穴用ドリルには、交換可能な切削インサートおよび少なくとも1つの交換可能な案内ストリップが割り当てられる。実際の切削作業は、インサートホルダにねじで留められた切削インサートの切れ刃によって行うが、穴あけ作業中、工具は、対応する案内ストリップによってその周囲にわたるドリル穴に支持される。公知の深穴用ドリルは、直径16mm〜約40mmまでの値に好適である。公知の深穴用ドリルは、穴をあける直径が比較的小さい場合にはふさわしくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、特に穴加工作業および/または座ぐり作業用に特に好適な切削インサートを特定することにある。切削インサートおよび具体的には前記切削インサートを収容するインサートホルダも、比較的小さい穴加工直径に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明に従い請求項1の特徴を有する切削インサートに関して達成される。有利な構成および発展形態は下位請求項の主題である。
【0005】
このために、切削インサートまたはその母体または切削体は、上面と、ある距離をおいて前記上面に対向する底面とを有する。使用中、切削インサートの上面を、穴の壁に割り当てる一方、底面の方は、穴あけまたは穴加工工具の一体部分であるインサートホルダ上への位置決め面としての役割を果たす。
【0006】
切削インサートは、2つの対向する狭い側面および2つの対向する長手方向側面を有する。長手方向側面と狭い側面との間に、実質的にほぼ切削体の厚み全体にわたって延在する切れ刃を形成する。切れ刃は上面から底面に向かって斜めに延びる。切削体の厚みが延在するz方向、切削インサートの長手方向側面に沿って延在するx方向、および狭い側面に沿って延在するy方向に関して、切れ刃は、x方向およびz方向によって規定される平面に対して、切削体の対向する各長手方向側面に向かって、ある傾斜角度で斜めに延びている。この傾斜角度は10°〜30°、好ましくは約20°であることが好適である。
【0007】
切れ刃はまた、y方向およびz方向によって規定される平面に対して傾斜して延びていることが好ましい。切削インサートは、互いに対角線上に対向して配置された2つの切れ刃を有することが好適である。この場合、好ましくは各狭い側面と底面との間に鋭角が形成され、前記角度は50°にほぼ等しいと好都合である。あるいはまた、座ぐりの場合、具体的には90°の座ぐりの場合、各狭い側面と底面との間に例えば95°の鈍角が形成されてもよい。
【0008】
特に好ましい発展形態では、切削インサートは少なくとも1つの支持面を有し、その支持面は切れ刃に割り当てられ、かつ、切削インサートによる被加工物の機械加工中、切削インサート自体によって作製された穴の壁に対面する。切削インサートまたは前記切削インサートを保持するインサートホルダを、この支持面によって穴の壁に支持し、その支持面は、切削インサートの切削円の内側に入っている。支持面を、切削インサートまたは切削体に組み込むことによって、追加的な案内要素を備える必要なく所望の支持機能を可能とする。この支持機能を切削体自体に組み込むため、切削インサートおよび切削インサートを収容するインサートホルダを、とりわけ小型な形状を備えつつも高機能とすることが可能となる。切削インサートのこの変形例では、切れ刃は、傾斜した支持面から、再び残りの切削体の厚み全体に沿って延びている。
【0009】
切れ刃に対向する長手方向側面にはすくい面が設けられる。切削体に凹んだ溝として設計することが好都合である前記すくい面は、切削体または切削インサートの上面と底面との間に延在する切れ刃に沿って延びている。支持面が一体化された切削インサートの変形例では、切れ刃は再び、傾斜した支持面から、残りの切削体の厚み全体に沿って延びている。
【0010】
この種の少なくとも1つの切削インサートを収容する特に好ましいインサートホルダは、ホルダ長手方向において溝に隣接するかまたは2つの溝間に延びているホルダランドを有し、そこに切削体は着脱式に保持される。この場合、切削インサートを接線方向に配置し、機械加工のために使用中の各切れ刃は、インサートまたは工具ホルダの切削円に対してほぼ半径方向に延びている。この場合、切削インサートを好ましくは中心より上に配置する、すなわち、切削インサートの、x方向およびz方向によって規定されかつ側面の中心において狭い側面に交差する中心面が、少なくともわずかにインサートホルダの対応するxz中心面よりも上にある。それゆえ、各切れ刃に割り当てられる支持面は切削円からわずかに離れているので、インサートホルダの使用中、他方の切れ刃に割り当てられた対向する支持面よりも穴の壁からの距離は短くなる。支持面によって形成された負の角度のために、穴の壁(bore hole wall)へ切削インサートを確実に支持すると共にわずかであっても十分に自由な動きが保証される。
【0011】
インサートホルダへの切削インサートの保持および位置決めのために、インサートホルダは、切削インサートがその底面で載置される第1の座面を有する楔形の切削体受口を有する。切削インサートは、対応する長手方向側面とともに、使用中ではない切れ刃を形成する狭い側面によって楔形の切削体受口の第2の座面に当接する。切削インサートは、着脱式のネジ接続によってインサートホルダに固定されていることが好都合であり、そのために、切削インサートは、対応する締付ネジのための中心貫通穴を有する。
【0012】
本発明によって達成された利点は、特に、各長手方向側面と狭い側面との間に形成された切れ刃を有しかつ中心面に向かって対称的に傾斜した本発明の切削インサートの形状のため、まず、関連するインサートホルダへの切削インサートの接線方向の配置または位置決めが実現できるということからなる。その結果今度は、特に小さい、具体的には10mm未満、例えば8mm以上の穴径を作製するための穴加工作業および座ぐり作業を実現できる。切削円または機械加工される穴の壁に対する負の傾斜または向きでの、切削インサート自体への支持機能の組み込みにより、切削インサートの解放時における、および規定通りの接線方向の位置に切削インサートを切削体に固定するときにおける扱いが、特に簡単となり得る。
【0013】
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】長手方向側面と狭い側面との間に斜めに延びる切れ刃を有する本発明による切削インサートの斜視図を示す。
【図2】図1による切削インサートの平面図を示す。
【図3】切削インサートの長手方向側面の側面図を示す。
【図4】切削インサートの狭い側面の側面図を示す。
【図5】本発明による切削インサートを有する、穴あけ工具のインサートホルダの斜視図を示す。
【図6】切削インサートの切削円と共にインサートホルダの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
対応する部品には全ての図にわたって同じ符号を付す。
【0016】
図1〜4に示す切削体1は、図5および6にそれぞれ切欠図および断面図で示すインサートホルダと共に、穴加工作業および/または座ぐり作業用の、および具体的には例えば10mm未満の穴径を作製する切削インサートとしての機能を果たす。
【0017】
切削体1は、その上面2とその底面3との間に、2つの対向する長手方向側面4および2つの対向する狭い側面5を有する。長手方向側面4と狭い側面5との間には切れ刃6が形成される。図示の切削体1はそのような切れ刃6の2つを、対角線上に対向する側縁部に有する。各切れ刃6にはすくい面7が隣接する。すくい面7は、切れ刃6から始まり長手方向側面4の一部分に沿って延び、かつこの場合、すくい面ランド8を形成して、切削体1に凹んだほぼL字形の溝として設計される。
【0018】
切削体1の上面2には、それぞれ長手方向側面4に沿って延びかつ長手方向側面に向かって負の角度αで傾斜している2つの対向する支持面兼座面9が設けられている。この角度または傾斜角度αは約20°である。2つの支持面9間において、z方向に向けられた穴10が切削体1を貫通している。
【0019】
図1および3から特に分かるように、各支持面9から始まる各切れ刃6は、図示の座標系に関してz方向に延びる切削体の厚みd全体にわたって延在している。加えて、図4から比較的明白に分かるように、切れ刃6は、長手方向側面4に沿って延びるx方向およびz方向に規定されるxz面に対して斜めに延びる。それゆえ、各切れ刃6に隣接するすくい面7も同様に、実質的に切削体の厚みd全体わたって延在している。上面2から始まる各切れ刃6の傾斜角度βを伴う傾斜は、底面3と対向する長手方向側面4との間に形成される切削体縁部11に向かう。傾斜角度βは約20°であると好都合である。
【0020】
図3から比較的明白に分かるように、狭い側面5は、y方向およびz方向によって規定されるyz面に対して斜めに延びる。この場合、狭い側面5は、底面3と鋭角γをなす。この角度または傾斜角度γは、約50°であると好都合である。
【0021】
切削体1を、x方向およびy方向によって規定されたxy面において、すなわち上面2または底面3の方向から見て平行四辺形のような形に形成する。切削体1は、長手方向側面4の方向から見て、それゆえx方向およびz方向によって規定されたxz面においてほぼ台形の形をしている。
【0022】
図5に、接線方向に配置された切削インサートまたは切削体1を有するインサートホルダ12を示す。切削体を、インサートホルダ12のホルダランド13に配置し、このために、位置決め面としての働きをする底面3をホルダランド13に載置する。ホルダランド13自体を、インサートホルダ12の2つの螺旋状の溝14と15との間に形成する。このために、インサートホルダ12は、ホルダランド13に楔形凹部(切削体受口)16を有する。次に楔形凹部は、切削インサート1が底面3で載置される第1の座面17を形成する。使用中には使われない切れ刃6を形成する狭い側面5により、切削インサート1は、第1の座面17に対して斜めに延びる第2の座面18に当接する。
【0023】
図6に示すインサートホルダ12の断面図から分かるように、使用中の切れ刃6は、ホルダ中心の方向へまたはホルダ中心点19の方向へと半径方向に延びる。図示の切削インサート1の切削円20を参照して分かるように、切削インサート1は、使用中の切れ刃6に割り当てられるその支持面9によって、機械加工される被加工物の、切削円20によって示されている穴の壁に対して実質的に間隙なく当接する。その結果、切削インサート1および前記切削インサート1を収容するインサートホルダ12を、確実に穴の壁に対して支持する。
【0024】
対向する支持面9は、切削円20からの距離が比較的長いことが分かる。これは、インサートホルダ12に締付ネジ22によって着脱式に保持される切削インサート1、すなわちその中心線21をインサートホルダ12および切削円20の中心線23の上側に配置して、前記中心線23を切削インサート1の中心線21に平行して延在させているためである。その結果、好適な支持機能と共に切削インサート1に十分に自由な動きをもたらす。
【0025】
切削インサート1のとりわけ小型な形状のため、対応してその取付サイズも小さくなるが、インサートホルダ12への切削インサート1の接線方向への配置または位置決めにより取付けが可能となる。これにより、次に切削体の直径が小さくなり、16mm未満、特に8mm以上の穴径を単純かつ確実にもたらすことができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴加工作業および/または座ぐり作業用の切削インサート(1)であって、上面(2)と、z方向に延びる前記切削体の厚み(d)の距離をおいて前記上面(2)に対向する底面(3)と、少なくとも1つの切れ刃(6)とを含む一方、x方向に延びる2つの長手方向側面(4)およびy方向に延びる2つの狭い側面(5)が形成される切削インサート(1)において、
前記切れ刃(6)が長手方向側面(4)と狭い側面(5)との間に形成され、
前記切れ刃(6)が前記底面(3)に向かって斜めに延び、かつほぼ前記切削体の厚み(d)全体にわたって延在し、かつ
前記上面(2)と前記底面(3)との間に延びるすくい面(7)が、前記切れ刃(6)に対向する前記長手方向側面(4)に設けられる切削インサート。
【請求項2】
前記狭い側面(5)が、x方向およびz方向によって規定される平面に対してほぼ20°の傾斜角度(β)で斜めに延びることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート(1)。
【請求項3】
前記切れ刃(6)が、前記対向する長手方向側面(4)に向かって斜めに延びることを特徴とする請求項2に記載の切削インサート(1)。
【請求項4】
前記切れ刃(6)が、前記狭い側面(5)と前記底面(3)との間に鋭角(γ)を形成して傾斜し、前記傾斜角度(γ)が、ほぼ50°であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項5】
前記底面(3)に向かって傾斜した支持面(9)が前記上面(2)と前記各長手方向側面(4)との間に設けられ、傾斜角度(α)が約20°であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項6】
前記すくい面(7)が、前記切削体に凹んだ溝として設計されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項7】
締付ネジ(22)を収容するための、z方向において前記切削体に延在する貫通穴(10)を特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの接線方向に配置された切削インサート(1)を有する、穴あけ工具のインサートホルダ(12)。
【請求項9】
前記ホルダの長手方向(x)に延びるホルダランド(13)を有し、そこに前記切削体(1)が着脱式に保持される請求項8に記載のインサートホルダ(12)。
【請求項10】
前記切削インサート(1)がその底面(3)で載置される第1の座面(17)と、前記切削インサート(1)がその狭い側面(5)で当接する第2の座面(18)とを有する楔形の切削体受口(16)を含む請求項8または9に記載のインサートホルダ(12)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−513038(P2010−513038A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541783(P2009−541783)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006401
【国際公開番号】WO2008/083725
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(399031078)ケンナメタル インコーポレイテッド (182)
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
【住所又は居所原語表記】1600 Technology Way Latrobe PA 15650−0231, USA
【Fターム(参考)】