説明

空圧緩衝器

【課題】潤滑油を多量に注入しなくてもシリンダの内周とピストンの外周との摺動部に効率良く潤滑油を供給でき、経済性の向上を図れる空圧緩衝器を提供することである。
【解決手段】空圧緩衝器1のロッドガイド12のロッド側室40に対向する面に、接続路20から流出する潤滑油O及びピストンロッド6と上記ロッドガイドとの隙間から洩れる潤滑油Oをシリンダ3の内周面に導く案内部材24を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業車両等の車両のサスペンション装置に使用可能な空圧緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空圧緩衝器としては、種々の構造のものを例示することができるが、車両のサスペンション装置に使用される空圧緩衝器としては、特許文献1に示すものを例示することができる。
【0003】
即ち、図3に示すように、筒状に形成されたシリンダ42の上下端は、それぞれヘッド部材(本願発明のロッドガイドに相当)43とボトム部材44とによって閉塞されると共に、シリンダ42内に摺動自在に挿入されるピストン45によってこのシリンダ42内がロッド側室40とピストン側室50とに区画されている。
【0004】
上記ヘッド部材43は環状に形成され、その内周にはピストンロッド51を軸支する軸受46を備えると共に、上端側から開口する貯留凹部47が設けられている。
【0005】
上記シリンダ42はシリンダ42の外方に配置される有底筒状の外筒41によって覆われており、この外筒41の図中の上端である開口端部には、内周側で環状シール48を保持する封止部材49が上記ヘッド部材43に積層された状態で固定されている。
【0006】
そして、上記封止部材49から突出している環状シール48の下端は、ヘッド部材43の貯留凹部47内に配置されており、この貯留凹部47、封止部材49、及びピストンロッド51で貯油室Sが画成されている。
【0007】
上記環状シール48の内周側にはシリンダ42から突出する上記ピストンロッド51が、ヘッド部材43の上記軸受46内に摺動自在に挿入され、この環状シール48は所定の緊迫力でピストンロッド51の外周面に圧接されている。
【0008】
従って、上記ピストンロッド51は貯油室Sを貫いており、この貯油室Sはピストンロッド51と環状シール48との摺動部に臨むようになっている。
【0009】
更に、貯油室Sは、ヘッド部材43に設けた接続路52によってロッド側室40に連通されると共に、他の接続路53によって循環通路R内に連通されている。
【0010】
上記ピストン45には、ロッド側室40とピストン側室50とを連通する圧側連通路45a及び伸側連通路45bが夫々穿設されている。
【0011】
上記圧側連通路45aには圧側減衰弁56と、ピストン側室50からロッド側室40へのみガスGの流れを許容する圧側逆止弁56aとが設けられており、同じく上記伸側連通路45bには伸側減衰弁57と、ロッド側室40からピストン側室50へのみガスG及び潤滑油Oの流れを許容する伸側逆止弁57aとが設けられている。この場合、上記各減衰弁56、57及び逆止弁56a、57aはリーフバルブで構成されている。
【0012】
上記ボトム部材44には、ピストン側室50と循環通路Rとを連通する通路54が設けられ、この通路54の途中には、ピストン側室50から循環通路Rへのみ流体の流れを許容する逆止弁55が設けられている。
【0013】
上記循環通路Rと接続路52、53及び通路54の少なくとも一箇所に絞りを設け、又は流路断面を細くして流体の流れに抵抗を与え、圧側減衰弁56で減衰力を発生できるようにしている。
【0014】
そして、シリンダ42内には作動気体としてのガスGが封入されると共に、貯油室S内及び循環通路R内には潤滑油Oが充填されるが、貯油室S内の油面が、貯油室S内のガスGのガス圧力と、循環通路R内のガスGのガス圧力とのバランスによって環状シール48の最下端より下方に下がらないような配慮のもと、循環通路R内には充分な量の潤滑油Oが充填されている。
【0015】
又、ロッド側室40及びピストン側室50内にも少量の潤滑油Oが注入されるが、ロッド側室40内に注入される潤滑油Oは、空圧緩衝器が伸縮作動を初めて行うときに、シリンダ42とピストン45との間を潤滑するためであり、ピストン側室50内の潤滑油Oは空圧緩衝器の圧側行程時、循環通路R内にガスGより先んじて潤滑油Oを供給して貯油室S内の油面の下降を防止するためである。
【0016】
このように構成された空圧緩衝器では、ピストンロッド51がシリンダ42内から退出する、即ち、空圧緩衝器の伸側行程において、ロッド側室40内に封入されたガスGがピストン45に設けた伸側連通路45bを通過してピストン側室50に流入すると共に、この伸側連通路45bに設けた伸側減衰弁57によって伸側減衰力を発生する。
【0017】
又、ピストンロッド51がシリンダ42内へ侵入する、即ち、空圧緩衝器の圧側行程において、ピストン側室50内に封入されたガスGがピストン45に設けた圧側連通路45aを通過してロッド側室40に流入すると共に、この圧側連通路45aに設けた圧側減衰弁56よって圧側減衰力を発生する。
【0018】
このとき、ピストン側室50内の圧力上昇によって、ピストン側室50内の潤滑油Oは上記逆止弁55付きの通路54を介して循環通路R内に流入する。
【0019】
すると、循環通路R及び貯油室Sは、ピストン側室50と同様に加圧されることになるので、循環通路R内の潤滑油Oは貯油室S内に流入し、貯油室S内の圧力及び油面を上昇させる。
【0020】
この油面の上昇及び貯油室Sの圧力上昇によって、上記潤滑油Oは、上記接続路52を通過してロッド側室40内に流入し、空圧緩衝器内で潤滑油Oが循環することになる。
【特許文献1】特開2007−16880号公報(図2及び段落番号〜)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
このように構成された空圧緩衝器においては、上述したように潤滑油Oをロッド側室40とピストン側室50とに行き来させることで、上記ピストン45の外周とシリンダ42の内周との間の摺動部の潤滑と、シリンダ42上端に設けた上記封止部材49の内周とピストンロッド51の外周との間の摺動部の潤滑とを行って空圧緩衝器の作動の円滑化を図っているので、特に問題がある訳ではないが、次のような不具合の改善が望まれている。
【0022】
即ち、上記接続路52、ピストンロッド51と軸受46との間の隙間を流れる潤滑油の全量がシリンダ42の内周とピストン45の外周との間に供給されるわけでは無く、一部はピストン45bに設けた伸側減衰弁57、伸側逆止弁57aを介してそのままピストン側室50に流出してしまう場合がある。
【0023】
そのため、ピストン45の外周に十分な潤滑油を供給させるには潤滑油の注入量を多くすればよいが、この場合に経済性において不利となる。
【0024】
本発明の目的は、潤滑油を多量に注入しなくてもシリンダの内周とピストンの外周との摺動部に効率良く潤滑油を供給でき、経済性の向上を図れる空圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するため、本発明の基本的な手段は、シリンダと、このシリンダの端部に設けられてピストンロッドを案内するロッドガイドと、このロッドガイドの上面に配置されると共に、上記ピストンロッドに摺接してこれらの間をシールする内周リップを備えたメインシールと、上記シリンダの外部に形成した循環通路と、上記ピストンロッドを介してシリンダ内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ内をロッド側室及びピストン側室に区画するピストンと、これらロッド側室及びピストン側室を連通するために上記ピストンに設けた通路と、この通路に設けた減衰力発生部と、上記ピストン側室及び循環通路を連通する連通路と、上記循環通路及びロッド側室を接続する接続路と、上記循環通路と連通路と接続路のいずれかに少なくとも一つ設けられてピストン側室からロッド側室へのみ流体の流れを許容する逆止弁とを備え、上記シリンダ内に作動気体を封入し、上記循環通路内に常に潤滑油を残留させている空圧緩衝器において、ロッドガイドのロッド側室に対向する面に、上記接続路から流出する潤滑油及び上記ピストンロッドと上記ロッドガイドとの隙間から洩れる潤滑油をシリンダの内周面に導く案内部材を設けたことを特徴とする。
【0026】
同じく、他の手段は、 有底筒状の外筒と、この外筒の内側に同芯に配置されたシリンダと、上記外筒の上端部内周となるシリンダの端部に設けられてピストンロッドを案内するロッドガイドと、このロッドガイドの上面に配置されると共に、上記ピストンロッドに摺接してこれらの間をシールする内周リップを備えたメインシールと、上記シリンダと外筒との間に形成した循環通路と、上記ピストンロッドを介してシリンダ内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ内をロッド側室及びピストン側室に区画するピストンと、これらロッド側室及びピストン側室を連通するために上記ピストンに設けた通路と、この通路に設けた減衰力発生部と、上記ピストン側室及び循環通路を連通する連通路と、上記循環通路及びロッド側室を接続する接続路と、上記循環通路と連通路と接続路のいずれかに少なくとも一つ設けられてピストン側室からロッド側室へのみ流体の流れを許容する逆止弁とを備え、上記シリンダ3内に作動気体を封入し、上記循環通路内に常に潤滑油を残留させている空圧緩衝器において、ロッドガイドのロッド側室に対向する面に、上記接続路から流出する潤滑油及び上記ピストンロッドと上記ロッドガイドとの隙間から洩れる潤滑油をシリンダの内周面に導く案内部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の空圧緩衝器によれば、ロッドガイドのロッド側室に対向する面に上記接続路から流出する潤滑油又はピストンロッドの外周から洩れる潤滑油をシリンダの内周面に導くための案内部材を設けたので、接続路やピストンロッド外周から洩れる潤滑油をシリンダの内周とピストンの外周との間の摺動部に効率よく案内することができる。
【0028】
即ち、シリンダの内周面に案内された潤滑油は、このシリンダ内周面に沿って下降し、ピストン外周面との摺動部に自動的に導かれるので、効率良く潤滑油の供給ができ、潤滑油の注入量を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明のバルブ構造を自動車のサスペンション装置に使用する空圧緩衝器に具体化した一実施の形態を図に基づいて説明する。
【0030】
図1は本発明の一実施の形態に係わり、図2は他の実施の形態に係わる空圧緩衝器の一部を示す。
【0031】
各実施の形態では、外筒2とシリンダ3を同芯に配置した複筒式の空圧緩衝器を示しているが、シリンダ3のみの単筒式の空圧緩衝器でも良い。
【0032】
この場合は循環通路を外部配管で形成することになる。
【0033】
図1の実施の形態と図2の実施の形態はピストン5とシリンダ3との間の摺動部の構造に違いがあるだけで他の基本構造は同じである。
【0034】
図1に示す空圧緩衝器1は、有底筒状の外筒2と、この外筒2の内側に同芯に配置されたシリンダ3と、上記外筒2の上端部内周となるシリンダ3の端部に設けられてピストンロッド6を案内するロッドガイド12と、このロッドガイド12の上面に配置されると共に、上記ピストンロッド6に摺接してこれらの間をシールする内周リップ15を備えたメインシール13と、上記シリンダ3と外筒2との間に形成した循環通路Rと、上記ピストンロッド6を介してシリンダ3内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ3内をロッド側室40及びピストン側室50に区画するピストン5と、これらロッド側室40及びピストン側室50を連通するために上記ピストン5に設けた通路21、22と、この通路21、22に設けた減衰力発生部21b、22bと、上記ピストン側室50及び循環通路Rを連通する連通路9と、上記循環通路R及びロッド側室40を接続する接続路19、20と、上記循環通路Rと連通路9と接続路19,20のいずれかに少なくとも一つ設けられてピストン側室50からロッド側室40へのみ流体の流れを許容する逆止弁20a、32とを備え、上記循環通路R内に常に潤滑油を残留させながら上記シリンダ3内に作動気体を封入したものである。
【0035】
そして、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する面に、上記接続路20から流出する潤滑油及び上記ピストンロッド6と上記ロッドガイド12の一部をなすベアリング12aとの隙間から洩れる潤滑油をシリンダ3の内周面に導く案内部材24を設けたことを特徴とする。
【0036】
上記案内部材24は、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する面に接合された円盤からなり、この円盤の下面にロッドガイド12の中心からシリンダ3の方向に向けて勾配を下向きにした傾斜面24aを形成し、この傾斜面24aに上記接続路20の開口部が設けられている。
【0037】
この場合、上記案内部材24は、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する部位に一体に形成した肉厚部(図示せず)からなり、この肉厚部の下面にロッドガイド12の中心からシリンダ3の方向に向けて勾配を下向きにした傾斜面24aを形成し、この傾斜面24aに上記接続路20の開口部が設けられるようにしても良い。
【0038】
上記ロッドガイド12の上面中央側に潤滑油を蓄える貯油室Sを画成すると共に、この貯油室Sを上記接続路19、20の途中に設けている。
【0039】
更に、上記ピストン5はその上面から立ち上がり、上記シリンダ3に対して隙間を介して対向する環状壁23を備えている。
【0040】
以下、更に詳しく説明する。
【0041】
外筒2の上端部内周となるシリンダ3の開口端部には、上記ピストンロッド6を案内するロッドガイド12が配置され、このロッドガイド12の上面には上記メインシール13が載置されている。
【0042】
そして、上記外筒2の上端を内側に折り曲げることでこの外筒2、メインシール13、ロッドガイド12及びシリンダ3が一体的に加締め固定されている。
【0043】
上記ロッドガイド12は、中心部に軸受としてのベアリング12aが取り付けられる案内孔17を備えた円柱状に形成されており、ベアリング12aの内周面がピストンロッドの外周面と摺接することで、このピストンロッド6を摺動自在に軸受支持すると共に、上面中央側には潤滑油Oを蓄える貯油室Sを画成している。
【0044】
尚、上記循環通路側接続路19と、上記ロッド室側接続路20とで本発明の接続路が構成されている。
【0045】
上記メインシール13は、環状のインサートメタル14と、このインサートメタル14の内周側に一体形成された環状シールとしての内周リップ15とを備えている。
【0046】
上記内周リップ15は、ピストンロッド6の外周面に摺接して大気側からのダストの侵入を防止するダストリップ15aと、同じくピストンロッド6の外周面に摺接して上記貯油室Sからの潤滑油Oがシリンダ3内に封入されたガスGと共に大気側へ漏れるのを防止するオイルリップ15bとから形成されている。
【0047】
又、上記貯油室S内には上記オイルリップ15bのリップ部が浸漬する位置まで潤滑油Oが蓄えられ、この貯油室S内に蓄えられた潤滑油Oによって内周リップ15とピストンロッド6との間の油膜切れを防止するようになっている。
【0048】
上記ロッドガイド12のロッド側室40に対向する下面には本発明の特徴的構成である案内部材24が設けられている。
【0049】
この案内部材24はロッドガイド12の下面に接合した円盤からなり、この円盤の下面にロッドガイド12の中心からシリンダ3方向に向けて勾配を下向きに形成した傾斜面24aを形成し、更に、この傾斜面24aに上記ロッド室側接続路20の開口部が設けられている。
【0050】
従って、ロッド室側接続路20から流出した潤滑油O又はピストンロッド6とベアリング12aとの間の隙間から流出した潤滑油Oは、この傾斜面24aに沿って流れることでシリンダ3の内周面に付着すると共に、付着後にはこのシリンダ3の内周面に沿って下降し、ピストン5の外周面との摺動部に導かれるようになっている。
【0051】
尚、上記案内部材24は、上記ロッドガイド12に対して溶接、接着剤等によって接合されていても良く、上記したようにロッドガイド12と一体的に形成されていても良い。
【0052】
上記ピストン5はピストンロッド6の下端に取付固定されており、ピストン5の外周にはシリンダ3の内周面に摺接するピストンリング(図示なし)が嵌挿されている。
【0053】
ピストン5にはロッド側室40とピストン側室50とを連通し、同一円周上に配置された上記通路としての複数の圧側連通路(図1には1個のみ図示する)21と、この圧側連通路21と同一円周上に互い違いに配置された同じく通路としての複数の伸側連通路(図1には1個のみ図示する)22が夫々下面に向かって穿設されている。
【0054】
上記伸側連通路22の途中にはロッド側40室からピストン側50室へ向かう流れのみを許容する伸側逆止弁22aが設けられ、この伸側逆止弁22aの上方には減衰力発生部としての伸側可変絞り22bが設けられている。
【0055】
同様に、上記圧側連通路21の途中にはピストン側室50からロッド側室40へ向かう流れのみを許容する圧側逆止弁21aが設けられ、この圧側逆止弁21aの下方には同じく減衰力発生部としての圧側可変絞り21bが設けられている。
【0056】
上記ピストン5の上面には、この上面から立ち上がると共に、シリンダ3に対して環状の隙間Pを介して対向する環状壁23が設けられており、上記シリンダ3内周面に沿って下降してきた潤滑油Oをこの隙間Pに貯めておくことができるようになっている。
【0057】
上記シリンダ3の下端にはバルブケース31が設けられており、このバルブケース31には上記循環通路Rとピストン側室50とを連通する上記連通路9が形成されている。
【0058】
そして、この連通路9にはピストン側室50から循環通路Rへと向かうガスG及び潤滑油Oの流れのみを許容するように上記連通路9を開閉可能に閉塞するボトム側チェック弁32が配置されている。
【0059】
なお、上記連通路9、循環通路R、循環通路側接続路20からなる循環回路のいずれか一つ又は全部に絞りを設け、あるいは流路断面を小さくして流動抵抗を発生させ、減衰力発生部たる上記圧側可変絞り21bで圧側減衰力を発生できるようにしている。
【0060】
このように構成された空圧緩衝器は、例えば、ピストンロッド6の先端に設けられた図示しないロッド側アイを車体側に取り付けると共に、シリンダ3の下端に設けられたシリンダ側アイ37を車軸側に取り付けることで自動車のサスペンション装置に組み込まれる。
【0061】
続いて、その作用を説明すると、ピストンロッド6がシリンダ3内から退出する、即ち、空圧緩衝器1の伸長行程では、ロッド側室40内に封入されたガスGがピストン5に設けた伸側連通路22を通過してピストン側室50に流入すると共に、この伸側連通路22の途中に設けた伸側可変絞り22bによって伸側減衰力が発生する。
【0062】
又、ピストンロッド6がシリンダ3内へ侵入する、即ち、空圧緩衝器1の圧側行程では、ピストン側室50内に封入されたガスGがピストン5に設けた圧側連通路21を通過してロッド側室40に流入すると共に、この圧側連通路21の途中に設けた圧側可変絞り21bによって圧側減衰力が発生する。
【0063】
このとき、ピストン側室50の潤滑油O及びガスGは上記連通路9を通過して循環通路Rに流れ込み、その後、上記ロッドガイド12に設けた循環通路側接続路19を介して上記貯油室Sへ導かれる。
【0064】
そして、貯油室S内に溜まった余剰な潤滑油Oは、ロッド室側接続路20を介してロッド側室40へ流出する。
【0065】
このとき、上記ロッド室側接続路20の開口部は、ロッドガイド12のロッド側室40面に設けられた案内部材24の傾斜面24aに設けられているので、開口部から流出した潤滑油O及び上記ピストンロッド6と上記ベアリング12aとの隙間から洩れる潤滑油Oは、この傾斜面24aに沿って流れてシリンダ3の内周面に付着すると共に、付着後はこのシリンダ3の内周面に沿って下降し、ピストン5の外周面との摺動部に導かれて上記環状の隙間Pに貯えられる。
【0066】
従って、環状の隙間Pに貯えられた潤滑油Oによってシリンダ3の内周面と、ピストン5の外周面との摺動部が潤滑される。
【0067】
しかも、本発明では潤滑油の大部分が隙間Pに導かれ、しかもここに常に貯えられているので必要以上の潤滑油を注入しておく必要が無く、経済性にも優れている。
【0068】
図2に示す他の実施の形態では、ピストン5の上端外周に環状の切欠部5Aを形成してシリンダ3との間に環状溝P1を形成し、この環状溝P1内に潤滑油を貯えるようにしたものである。
【0069】
この場合の作用効果は上記の隙間Pの場合と同じである。
【0070】
以上、詳述したように本実施の形態の空圧緩衝器1においては、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する面に潤滑油を積極的にシリンダ3の内周方向に導く案内部材24を設けたので、ピストンロッド6の外周やロッド室側接続路20から流出した潤滑油Oをこの傾斜面24aに沿ってシリンダ3の内周面に案内することができる。
【0071】
そして、このシリンダ3の内周面に案内された潤滑油Oは、このシリンダ3の内周面に沿って下降し、ピストン5の外周面との間の摺動部に自動的に導かれるので、効率良く潤滑油の供給ができる。
【0072】
又、本実施の形態では、ピストン5の上端外周側に隙間Pや環状溝P1を設けることで、この隙間Pや環状溝P1に積極的に潤滑油Oを貯めるようにしたので、潤滑油Oの供給もより効率的に行うことができ、必要以上の潤滑油を注入しておく必要がなく、経済性にも優れている。
【0073】
又、本実施の形態では、ロッド室側接続路20から流出する潤滑油Oをシリンダ3内周面に導くための案内部材24として傾斜面24aを備えた円盤や、ロッドガイド12の下面に一体に形成した傾斜面を備えた肉厚部を使用したが、この構成に限定されるものではなく、ロッドガイド12側から潤滑油Oがシリンダ3の内周面に導かれるものであれば、任意の形状を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施の形態を示す空圧緩衝器の断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る空圧緩衝器の一部切り欠き断面図である。
【図3】従来構造を示す空圧緩衝器の断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 空圧緩衝器
2 外筒
3 シリンダ
5 ピストン
6 ピストンロッド
9 連通路
12 ロッドガイド
13 メインシール(封止部材)
15 内周リップ(環状シール)
18 貯留凹部
19 循環通路側接続路(接続路)
20 ロッド室側接続路(接続路)
20a チェック弁(ヘッド側逆止弁)
21 圧側連通路(通路)
21b 圧側可変絞り(減衰力発生部)
22 伸側連通路(通路)
22b 伸側可変絞り(減衰力発生部)
23 環状壁
24 案内部材
24a 傾斜面
32 ボトム側逆止弁
40 ロッド側室
50 ピストン側室
O 潤滑油
P 隙間
P1 環状溝
R 循環通路
S 貯油室
G ガス(作動気体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ3と、このシリンダ3の端部に設けられてピストンロッド6を案内するロッドガイド12と、このロッドガイド12の上面に配置されると共に、上記ピストンロッド6に摺接してこれらの間をシールする内周リップ15を備えたメインシール13と、上記シリンダ3の外部に形成した循環通路Rと、上記ピストンロッド6を介してシリンダ3内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ3内をロッド側室40及びピストン側室50に区画するピストン5と、これらロッド側室40及びピストン側室50を連通するために上記ピストン5に設けた通路21、22と、この通路21、22に設けた減衰力発生部21b、22bと、上記ピストン側室50及び循環通路Rを連通する連通路9と、上記循環通路R及びロッド側室40を接続する接続路19、20と、上記循環通路Rと連通路9と接続路19、20のいずれかに少なくとも一つ設けられてピストン側室50からロッド側室40へのみ流体の流れを許容する逆止弁20a、32とを備え、上記シリンダ3内に作動気体を封入し、上記循環通路R内に常に潤滑油Oを残留させている空圧緩衝器において、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する面に、上記接続路20から流出する潤滑油及び上記ピストンロッド6と上記ロッドガイド12との隙間から洩れる潤滑油をシリンダ3の内周面に導く案内部材24を設けたことを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項2】
有底筒状の外筒2と、この外筒2の内側に同芯に配置されたシリンダ3と、上記外筒2の上端部内周となるシリンダ3の端部に設けられてピストンロッド6を案内するロッドガイド12と、このロッドガイド12の上面に配置されると共に、上記ピストンロッド6に摺接してこれらの間をシールする内周リップ15を備えたメインシール13と、上記シリンダ3と外筒2との間に形成した循環通路Rと、上記ピストンロッド6を介してシリンダ3内に移動自在に挿入されると共に、このシリンダ3内をロッド側室40及びピストン側室50に区画するピストン5と、これらロッド側室40及びピストン側室50を連通するために上記ピストン5に設けた通路21、22と、この通路21、22に設けた減衰力発生部21b、22bと、上記ピストン側室50及び循環通路Rを連通する連通路9と、上記循環通路R及びロッド側室40を接続する接続路19、20と、上記循環通路Rと連通路9と接続路19,20のいずれかに少なくとも一つ設けられてピストン側室50からロッド側室40へのみ流体の流れを許容する逆止弁20a、32とを備え、上記シリンダ3内に作動気体を封入し上記シリンダ3内に作動気体を封入し、上記循環通路R内に常に潤滑油を残留させている空圧緩衝器において、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する面に、上記接続路20から流出する潤滑油潤滑油及び上記ピストンロッド6と上記ロッドガイド12との隙間から洩れる潤滑油をシリンダ3の内周面に導く案内部材24を設けたことを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項3】
上記案内部材24は、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する面に接合された円盤からなり、この円盤の下面にロッドガイド12の中心からシリンダ3方向に向けて勾配を下向きにした傾斜面24aを形成し、この傾斜面24aに上記接続路20の開口部が設けられている請求項1又は2に記載の空圧緩衝器。
【請求項4】
上記案内部材24は、ロッドガイド12のロッド側室40に対向する部位に一体に形成した肉厚部からなり、この肉厚部の下面にロッドガイド12の中心からシリンダ3方向に向けて勾配を下向きにした傾斜面24aを形成し、この傾斜面24aに上記接続路20の開口部が設けられている請求項1又は2に記載の空圧緩衝器。
【請求項5】
上記ロッドガイド12の上面中央側に潤滑油を蓄える貯油室Sを画成すると共に、この貯油室Sを上記接続路19、20の途中に設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の空圧緩衝器。
【請求項6】
上記ピストン5はその上面から立ち上がり、上記シリンダ3に対して隙間を介して対向する環状壁23を備えている請求項1、2、3、4又は5に記載の空圧緩衝器。
【請求項7】
上記ピストン5の上端外周に環状の切欠部5Aを形成してシリンダ3との間に環状溝P1を形成している請求項1、2、3、4、又は5に記載の空圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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