説明

空席案内装置

【課題】映画館、電車などにおいて空席か否かを検知して、空席情報を提供する空席案内装置に関するものである。
【解決手段】座席1000の座面、背もたれ面にそれぞれひとつ以上の無線ICタグ100A〜Fが埋め込まれており、読取手段2で前記無線ICタグからデータを読み取り、処理手段3により前記データに応じて処理を行う。前記無線ICタグは、電池を必要としないパッシブ型であって、人体が近くにあると通信できなくなるという特性を持ち、全ての無線ICタグからデータを読み出せる時には座席に人が座っていないと判断して、いずれかの無線ICタグが読み出せなくなったときには座席に人が座っていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映画館、電車などの空席情報を案内する空席案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
映画館のような暗室における空席情報を来場者に案内することは非常に有用である。暗い通路を歩いて空席を探す行為は転倒などのトラブルも予想され、既に空いている席が何処にあるのかを事前に把握しておくことで無駄なく空席にたどり着けることになり、利点は多い。
【0003】
空席であるか否か、座席に着座しているかどうかの判断に関して既にいろいろな文献があり、特に非接触でかつ座席に電気的な配線を施さずに済む特許文献1のような焦電型赤外センサで人体検知するものがある。
【特許文献1】特開平7−244783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように焦電型赤外センサで人体検知するものは、人体以外に発熱物があると誤動作する恐れがあるので信頼性に欠ける。また、焦電型赤外センサは背景と人体の温度差を検出するという原理に基づいているので、背景である座席の温度や床温によって赤外検出感度が著しく変化する。
【0005】
すなわち、周囲が高温になり人体との温度差が少なくなると検出できない、あるいは著しく感度が低下することがある。あるいは逆に周囲が低温になると感度が異常に高くなり、検出範囲が広がり想定以外の場所の人体も検出してしまうという欠点があった。従って、この方法では座席ごとの確実な着座検出、空席状態検出は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、前記従来の課題を解決するために、本発明の空席案内装置は、座席にひとつ以上の無線ICタグが座面および背もたれ面に埋め込まれており、前記無線ICタグからデータを読み取る読取手段と、前記読取手段より前記データを受信して処理する処理手段、そしてその結果を空席情報として表示する表示手段とから構成されている。
【0007】
前記無線ICタグは、電池を必要としないパッシブ型であって、人体が近くにあると通信できなくなるという特性を持っている。この特性を用いて、全ての無線ICタグからデータを読み出せる時には座席に人が座っていないと判断して、いずれかの無線ICタグが読み出せなくなったときには座席に人が座っていると判断できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空席案内装置は座席そのものに無線ICタグを埋め込んでしまうので設置が極めて簡単であり、また電池などの電源を一切必要としないパッシブ型の無線ICタグであるので座席への特別な配線や電源供給は不要となる。構成要素としての読取手段や処理手段、表示手段は電池などの電源を必要とする電子回路であるが、無線ICタグから非接触でデータを読み出すので、座席から離れた天井、壁面、通路などに設置することが可能である。
【0009】
また、焦電型赤外センサのように発熱物で誤動作することもなく、環境温度によって影響されることもなく、非常に簡単な構成で着座しているかどうか、空席であるか否かの判定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、座面や背もたれ面にそれぞれひとつ以上の無線ICタグが埋め込まれており、読取手段で前記無線ICタグからデータを読み取り、処理手段により前記データに応じて処理を行うものである。前記無線ICタグは、電池を必要としないパッシブ型であって、水分の影響を受けやすく水分を含み人体に接するとデータが読み出せなくなるという特徴を持っている。このため、座席に人が座っていない時には全ての前記無線ICタグからデータを読み出すことが出来るが、人が座っている時には人の体に含まれる水分が影響していくつかの無線ICタグからデータが読み出せなくなる。これらにより、座席に人が着座しているかどうかを検知して、それに応じた処理を行う空席案内装置が提供できる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明の空席案内装置において、座面や背もたれ面にそれぞれひとつ以上の無線ICタグが埋め込まれており、読取手段で前記無線ICタグからデータを読み取り、処理手段により前記データに応じて処理を行い、人が着座しているか否かを検出して空き席情報として表示手段に表示するものである。たとえば、劇場の入り口に表示手段を配置しておき、来客が事前にこの表示を見て空席の位置を確認しておくことにより無駄なく速やかに座席にありつくことが出来る。
【0012】
第3の発明は、特に第1の発明の空席案内装置において、座面や背もたれ面に埋め込んだ無線ICタグのいずれかひとつ以上の前記無線ICタグからデータが読み出せない場合、人が着座していると判断するものである。つまり、人体が覆い隠せていない無線ICタグが存在した場合でも、より確実に着座検出することが出来る。特に小柄な子供などの場合に効果的である。
【0013】
第4の発明は、特に第1の発明の空席案内装置において、一つ以上の読取手段を具備し、前記読取手段から得られた情報を集計するものである。これにより、広範囲の座席をそれぞれ分割して分担する読取手段を配置して、これらの読取手段から得られた結果を処理手段で集計処理して、館内全体の空席情報を得ることが可能となる。
【0014】
第5の発明は、特に第2の発明の空席案内装置において、座席の配置情報、方角、入り口番号、階段などの建物に関する情報を含めて表示するものである。これにより空席の場所が明確になりより効率よく観客を空席に誘導することが可能となる。
【0015】
第6の発明は、特に第1の発明の空席案内装置において、2.45GHz付近の周波数帯を用いる無線ICタグを使用したものであり、他の周波数帯を用いた無線ICタグよりもより顕著に人体の影響を受けるため、より確実な着座検出が可能となる。
【0016】
第7の発明は、第1〜6の発明の空席案内装置において、少なくともひとつの機能をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、CPU、RAM、ROM、記憶装置、I/Oなどを備えた電気情報機器、コンピュータ等のハードリソースを協働させて本発明の一部あるいは全てをプログラムとして容易に実現することができる。また記録媒体に記録あるいは、通信回線を用いてプログラム配信することにより、プログラム配布が他の手段に比べて極めて簡単に実現できる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて一実施形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の空席案内装置のシステム構成一例を示す図であり、座席1000の座面および背もたれ面に、ひとつ以上の無線ICタグ100A〜100Fを埋め込む。この無線ICタグのデータを読取手段1が読み出し、読み込んだデータは処理手段2にて処理する。
【0019】
なお、無線ICタグ100A〜100Fはいずれも互いに異なる独自のIDをデータとして持っている。後ほど詳しく述べるが、人体が近くにあると通信できなくなるという無線ICタグの特性を利用して、処理手段2にて処理した結果、着座しているか否かの検出が可能となる。
【0020】
読取手段1、あるいは、処理手段2は前記無線ICタグ100A〜100Fから非接触でデータを読み出すので、天井、床面、壁面といった設置しやすい場所に設置することが可能である。
【0021】
図2は本発明の空席案内装置の処理手段2にて行う処理のフローを示している。S21で無線ICタグのデータを一括読み出して、予め記憶してあるデータと比較していく。すなわちS22A〜S22Fで記憶したデータと比較していき、人体が近くにあると通信できなくなるという無線ICタグの特性を利用して、ひとつでも読めないデータが存在した場合は、S24にて着座を検出したものとする。逆にすべての無線ICタグからデータが正しく読み出せた場合はS22にて着座未検出とする。
【0022】
上で述べた処理は座席1席分に対する処理であり、その場所に存在する座席全てについてそれぞれ同様の処理を繰り返し行っていく必要がある。それぞれの座席に設置されている無線ICタグにはそれぞれユニークなID情報が含まれており、どの座席が空席であるか否かを容易に判断することが可能である。
【0023】
図3は本発明の空席案内装置のシステム構成全体を示す図であり、座席1000〜1002、座席2000〜2002、座席3000〜3002は、それぞれグループとしてまとまっており、それぞれに読取装置1A、1B、1Cが設置される。図には記述していないが座席1000以外の座席もすべて座席1000と同様に一つ以上の無線ICタグが同じように設置されている。
【0024】
読取装置1Aは座席1000〜1002のデータを一括でデータを読み出し、処理手段2に送る。同様にそれぞれの読取装置からのデータはすべて処理手段2に送られて順次処理される。その処理結果、つまりどの座席に人が着座していて、その座席には人が着座していないかどうかを表示手段3にて表示する。
【0025】
図4は本発明の空席案内装置の表示手段3にて表示する図の一例である。空席であるところは明るく表示し、着座しているところはグレーアウトして一目瞭然で空席が把握できる。
【0026】
この図では一覧表で表示しているが、実際の劇場ではその劇場内の座席配置情報に加えて、位置情報、ドア番号、方角、階段位置など建物に関する情報も加えて表示することにより、その空席がどのあたりに存在するかどうかということも合わせて知らせることが出来るようになり、観客を効率よく空席に誘導することが可能となる。
【0027】
また、無線ICタグにはいろいろな周波数帯のものがあるが、その中でも2.45GHz帯の周波数帯を使ったものが最も人体の影響を受けやすいので、本発明のような使い方には最適である。
【0028】
また、人体に近いほど影響を受けやすいので、座席の座面、あるいは背もたれ面の人体に最も近い位置に無線ICタグを埋め込むことが望ましい。埋め込む座席の素材としては電磁波透過物質で出来ていることが要求される。
【0029】
なお、本実施の形態で説明した手段は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録、もしくはインターネットなどの通信回線を用いて配信することで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0030】
また、本実施例では非常に限られた用途だけを例として用いているが、着座しているかどうかが人体に非接触かつ容易に検知できるので、映画館などの劇場だけでなく電車の座席、教室の座席、講堂の座席など集団で利用する座席に対しても適用可能であり、いずれの場合にも効果を発揮するものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる空席案内装置は、無線ICタグと、そのタグからデータを読み取る読取手段と、前記読取手段より前記データを受信する処理手段から構成され、前記無線ICタグは電池を必要としないパッシブ型であって、人体の近くあるいは、人体で覆うとデータが読み出せないという特性を利用して、非常に簡単な構成で空席案内装置を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の空席案内装置のシステム構成一例図
【図2】本発明の空席案内装置の処理手段にて行う処理のフロー図
【図3】本発明の空席案内装置のシステム構成全体を示す図
【図4】本発明の空席案内装置の表示手段にて表示する図
【符号の説明】
【0033】
1 読取手段
2 処理手段
3 表示手段
100A〜F 無線ICタグ
1000〜3002 座席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面や背もたれ面にそれぞれひとつ以上の無線ICタグが埋め込まれており、読取手段で前記無線ICタグからデータを読み取り、処理手段により前記データに応じて処理を行うことを特徴とする空席案内装置。
【請求項2】
処理手段は読み取ったデータに応じて処理を行い、人が着座しているか否かを検出して空席情報として表示手段に表示することを特徴とする請求項1記載の空席案内装置。
【請求項3】
座面や背もたれ面に埋め込んだ無線ICタグのいずれかひとつ以上の前記無線ICタグからデータが読み出せない場合、人が着座していると判断することを特徴とする請求項1または2記載の空席案内装置。
【請求項4】
ひとつ以上の読取手段を具備し、前記読取手段から得られた情報を集計することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の空席案内装置。
【請求項5】
表示手段に空席情報を表示する際に、座席の配置情報、方角、入り口番号、階段などの建物に関する情報を含めて表示することを特徴とする請求項2記載の空席案内装置。
【請求項6】
2.45GHz付近の周波数帯を用いる無線ICタグを使用したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の空席案内装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の空席案内装置において少なくともひとつの機能をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−92267(P2006−92267A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276844(P2004−276844)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】