空気−メタ重亜硫酸処理を用いた黄鉄鉱からの銅鉱物の分離
本発明の実施形態は、酸化ガスによるエアレーション、およびスルホキシ試薬による接触に従う硫化物含有物質の浮選に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して金属回収に関し、特に、広範な緩衝能を有するかまたは塩分を有する水に浮遊選鉱(浮選)することによる銅、モリブデンおよび/または金鉱物の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
黄鉄鉱からの有用鉱物および他の脈石鉱物の質を高めるための浮選の利用は、一般にアルカリ性pHで実施される。アルカリ度は石灰または他のアルカリ性化合物の添加によって制御される。通常は、比較的安価な試薬である石灰が用いられるが、浮選回路に利用可能な水が高い緩衝能を有する場合には、石灰および他の試薬が大量に必要とされる。換言すると、最適な操作条件でpHを変化させ維持するためには、大量の石灰が必要である。石灰の添加はまた、金属表面上におけるカルシウムの沈着のために、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、輝水鉛鉱、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、並びに金および他の貴金属のような鉱物の浮選を阻害し得る。
【0003】
一般に、硫化物浮選において、浮選試薬の効力は浮選供給物におけるアルカリ性または酸性のレベルによって制御されるか、または、石灰、ソーダ灰、もしくはそれほど多くはないがカセイソーダのようなパルプpH調節剤がpH制御剤として多くの場合用いられる。コスト、入手のし易さおよびpH10.5以上のpH値を維持する能力のために、石灰が最も一般に使用されている薬剤である。pH11.0までのパルプ(鉱液)のpHの調節は、黄鉄鉱および磁硫鉄鉱のような鉄の脈石硫化物鉱物を抑制するために必要とされる。石灰の添加に関連する費用は膨大となり得、抑制剤としての石灰の効力は、高濃度の溶解した塩を含有したり、または高度に緩衝されていたりする水においては、低減されることが本願において示された。
【0004】
黄鉄鉱を抑制するためには、シアン化物または硫化水素ナトリウムのような他の硫化物抑制剤がpH調整と共に用いられてきた。それらの抑制剤は広いpH範囲に対して用いることができず、また高いpH値を必要とするため、高い石灰消費量は問題のままである。さらに、これらの抑制剤は、経済的な投与量において十分に精選されたものではない場合がある。硫化物鉱物の回収率を向上するためのスルホキシ化合物の使用は、ハントに付与された米国特許第2,154,092号(特許文献1)に遡って記載されていた。この特許は、脈石成分に関連した炭素質物質または黒鉛物質を含有する鉱石を処理するためのプロセスを記載している。これらの炭素質物質は浮選の間に有用な鉱石鉱物に残存し、品位を低下させたり、または有用鉱物を被覆したりすることによって、浮選による有用鉱物の回収を低減し得る。これを防止するために、二酸化硫黄または他の還元ガスを、空気と混合することなく、パルプに添加して、有害な脈石および炭素で被覆された鉱物の浮選を抑制する。
【0005】
二酸化硫黄気体が添加される場合、ハントは、パルプ水の結果として生じるpHは、通常、酸性側(<pH7)にあると述べている。一部の例では、鉱石およびボールミル処理水(milling water)の双方の生来のアルカリ度に依存して、パルプはアルカリ性のままであることもある。前記プロセスは、パルプが酸性またはアルカリ性のいずれである場合でも行われ得る。
【0006】
ハントは、前記還元ガスはまた、1つ以上の適当な化学物質の作用によって鉱石パルプ自体の内部で生成されてもよいことを教示している。例えば、硫酸と、アルカリ(塩基)またはアルカリ土類の亜硫酸塩、重亜硫酸塩、またはチオ硫酸塩とが、鉱石パルプに添加される場合には、その相互作用から生じる生成物のうちの1つは二酸化硫黄であろう。
【0007】
多くの他の特許は硫化物浮選回路にスルホキシ化合物を用いてきた。
ビーティーらに付与された米国特許第5,171,428号(特許文献2)は、黄鉄鉱を含む混合物から、該混合物をHSO3−イオンを提供する亜硫酸剤(sulfitic agent)と接触させることによって、硫砒鉄鉱を分離するプロセスを記載している。前記プロセスは、高温かつ約pH8よりも低いpHにおいて、硫砒鉄鉱の選択的な抑制を与えるのに十分な期間にわたって、実施される。
【0008】
クラークらに付与された米国特許第6,032,805号および第6,092,666号(特許文献3および4)は、スルホキシラジカル含有試薬を用いることにより、アルカリ性pH調整剤(pH modifiers)の消費を低減する方法を開示している。スルホキシラジカル含有試薬の導入前、または導入と同時に、非酸化ガス(不活性ガスまたは還元ガスなど)が、鉱物の浮選分離を促す化学的環境を達成するのに十分な量で添加される。捕集剤および起泡剤添加前だが、非酸化ガスとの接触後に、スラリーは、必要な場合のみ、浮選に適した特定の溶存酸素濃度または電気化学電位まで、酸化ガスによってエアレーションされる。
【0009】
ニューエルらに付与された米国特許第6,041,941号(特許文献5)は、浮選回路において試薬の消費および無機スケールの生成を低減する目的で、クラークらに類似したプロセスを提示している。クラークらのプロセスでは、スルホキシラジカルの酸化を防止するために非酸化ガスが添加される。前記非酸化ガスは試薬コンディショニングおよび浮選段階の最中に導入される。これらの段階において、スラリー中の溶存酸素は、スルホキシ化合物を分解し、かつスケール生成を生じる可能性が最も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2,154,092号
【特許文献2】米国特許第5,171,428号
【特許文献3】米国特許第6,032,805号
【特許文献4】米国特許第6,092,666号
【特許文献5】米国特許第6,041,941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
有意な範囲の緩衝能および/または塩度を有する水における試薬消費のレベルを制御しながら、石灰または他のpH調整剤を添加することなく、他の硫化物鉱物から、特に硫化物含有脈石鉱物(sulfidic gangue minerals)から、有価金属含有硫化物鉱物を分離することができるプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらおよび他の要求は本発明の様々な実施形態および構成によって対処される。本発明は、概して、他の硫化物、特に黄鉄鉱、白鉄鉱、磁硫鉄鉱、硫砒鉄鉱および他の脈石鉱物からの有価金属硫化物鉱物のスルホキシ試薬によって支援された浮選分離に関する。
【0013】
実施形態において、スルホキシ試薬、好ましくはアンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩は、浮選の前に、エアレーションされたスラリー状の有価金属含有硫化物供給材料に添加される。そのプロセスは、一方では輝銅鉱(Cu2S)、斑銅鉱(Cu5FeS4)、黄銅鉱(CuFeS2)、銅藍(CuS)、四面銅鉱(Cu12Sb4S13)、テンナンタイト(Cu12As4S13)および硫砒銅鉱(Cu3AsS4)のような硫化銅、および/または硫化モリブデン(例えば輝水鉛鉱(MoS2)として)の浮選分離に、他方では黄鉄鉱(FeS2)、白鉄鉱(FeS2)、磁硫鉄鉱(Fe1−xS)、硫砒鉄鉱(FeAsS)からの浮選分離に特に適用可能である。スルホキシ試薬は脈石硫化物鉱物の抑制剤として作用する。このように、様々な硫化物鉱物の高度に選択的な浮選分離が実現され得る。
【0014】
スルホキシ試薬添加前にスラリーから分子状酸素を奪う従来の浮選プロセスと異なり、スルホキシ試薬はエアレーションされた有価金属含有供給材料に添加される。エアレーション工程は、捕集剤の吸着、従って銅鉱物の浮選を促進するために、硫化銅鉱物上に表面酸化の薄層が形成される程度に行われる。この層の形成を促進するために、スラリー状有価金属含有供給材料は、好ましくは、浮選工程の前に、溶存分子状酸素含有量を低下させるために、外部で生成された非酸化ガスとは接触させられない。
【0015】
いくつかの実施形態において、スルホキシ試薬は、エアレーション後でかつ捕集剤および起泡剤によるパルプコンディショニングの前に導入される。
いくつかの実施形態において、スルホキシ試薬は、エアレーション後だけでなく、一次および/または二次細砕回路においても付加的に導入される。何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、これは、スルホキシ試薬を新たに露出した未酸化の無機硫化物表面に接触させることによって、該試薬の効力を高めることができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、浮選プロセスは、自然pH(natural pH)において、実質的にpH調整を行わないで実施される。換言すると、スルホキシ試薬投与量を低減するため、任意の腐食効果を低減するため、および/または高いスルホキシ試薬投与量が必要な場合に低pH状態を避けるためのような経済的理由のためにpH調整が実施される場合を除いて、粉砕および浮選の回路におけるいかなる段階においても、スラリー状供給材料のpHを調節するために、酸も塩基も添加されない。しかしながら、pH調整は有価金属回収または精鉱品位に悪影響を与えないようにするために慎重に制御されなければならない。
【0017】
前記プロセスは、パルプ形成において、淡水、半塩水、または塩水であるか、または緩衝の程度に関わらず、いかなる水質を用いることもできる。
スルホキシ試薬添加段階が後続するエアレーション段階とpH調節を行わないこととの組み合わせは、硫化銅鉱物浮選の速度および回収率の増大、および硫化銅鉱物の精鉱品位の向上をもたらし得る。
【0018】
エアレーションによって生じた溶存分子状酸素濃度は、特定の状況において、スルホキシ試薬の消費を増大させ得るが、動態における実質的な改善および石灰試薬の必要をなくすことは、スルホキシ試薬コストの増大を補って余りあるものとなり得る。このプロセスは、浮選パルプを形成するのに使用可能な水が有意な緩衝能を有している場合に特に有用であり、広いパルプpH範囲にわたって有効である。実際、前記プロセスは、石灰添加およびシアン化物を用いる従来のプロセスよりも、回収率および試薬消費量の点から、費用効率がより高くなり得る。前記プロセスは、些少からかなりの緩衝能または塩分を含む水において用いられた場合に優れた能力を示した。従って、前記プロセスは、唯一の利用可能な水源が海水または塩分を含む地下水(brackish ground water)である選鉱機の稼働に特に有用である。
【0019】
これらおよび他の利点は本願に含まれる本発明の開示から明らかになるであろう。
「一つの(a)」または「一つの(an)」要素という語は、その要素の1つ以上を指す。そのため、用語「a」(または「an」)「1つ以上(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」は本願において区別なく用いられ得る。また、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語も区別なく用いられ得ることにも注意すべきである。
【0020】
「少なくとも1つ(at least one)」、「1つ以上(one or more)」および「および/または(and/or)」という句は、作用において接続語および離接語の双方である制限がない表現(open−ended expressions)である。例えば、「A,B、及びCのうち少なくとも1つ(at least one of A, B and C)」、「A,B、またはCのうち少なくとも1つ(at least one of A, B, or C)」、「A,B、およびCのうち1つ以上(one or more of A, B, and C)」、「A,B、またはCのうち1つ以上(one or more of A, B, or C)」、及び「A,B、及び/またはC(A, B, and/or C)」という記載のそれぞれは、A単独、B単独、C単独、A及びB共、A及びC共、B及びC共、またはA,B、及びC共を意味する。
【0021】
上記の表現においてA、BおよびCの各々が、X,YおよびZのような要素、またはX1〜Xn、Y1〜YmおよびZ1〜Zoのような要素のクラスを指す場合、前記句は、X,YおよびZから選択される単一要素、および同一のクラスから選択される要素の組み合わせ(例えばX1およびX2)、並びに2つ以上のクラスから選択される要素の組み合わせ(例えばY1およびZo)を指すように意図される。
【0022】
用語「半塩水(brackish water)」は、淡水より多くの塩分を有するが、塩水ほどではない水を指す。典型的には、半塩水は、約0.1ppt(parts per thousand)(0.01%)〜約25ppt(2.5%)に及ぶ塩分を有する。
【0023】
「緩衝能」という用語は、外部pH調整剤が添加される場合に、溶液がそのpHの変化に抵抗することができる程度を指す。
「溶解する」という用語およびその変化形は、固体または液体がその水相(溶液)に入るプロセスである。
【0024】
「メタ重亜硫酸塩(またはイオン)(metabisulfite)」という用語は、硫黄のオキシアニオンS2O52−、またはこのイオンを含む任意の塩を指す。メタ重亜硫酸塩(またはイオン)は、通常、金属およびメタ重亜硫酸アニオン(S2O5)の形にあり、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩の形にある。
【0025】
「鉱物」という用語およびその変化形は、有限の化学組成および特有の結晶構造を有する任意の自然に形成された化学物質を指す。
「自然pH」という用語は、実質的に意図的なpH調整(pH modification)が行われていない溶液のpHを指す。意図的なpH調整は、酸または塩基がpHを調節する目的で溶液に添加される場合に生じる。意図的でないpH調整の一例は、エアレーション、浮選剤(捕集剤、起泡剤、活性剤、抑制剤、分散剤などのような)によるパルプコンディショニング、またはスルホキシ試薬の添加によってpHが調節される場合である。
【0026】
「貴金属」という用語は一般に金および銀を指す。
「それから誘導される溶液」という用語は、その溶液が直接的または間接的に誘導される源溶液との、少なくとも1つの共通成分を有する溶液を指す。例えば、浸出剤、汚染物質または源溶液中に見られる有価金属を有する溶液は、そこから誘導されると考えられる。したがって、抽残液または貧液は、浸出貴液(pregnant leach solution)から誘導された溶液であると考えられる。同様に、有価金属を含有する担持抽出剤または電解質(loaded extractant or electrolyte)、またはストリップ溶液は、浸出貴液から直接的または間接的に誘導されると考えられる。同様に、スラリー状精鉱または廃石は供給材料から浮選段階へ誘導されると考えられる。
【0027】
用語「硫化物鉱物」は、カチオンとして金属と、主要アニオンとしてスルフィド(S2−)を含有する鉱物を指す。
用語「スルホキシ試薬」は、S=0、S03X、S04などのように酸素がSに直接結合されている成分、またはスルホキシラジカルの供給源として作用する成分を含有する組成物を指す。
【0028】
「塩水」という用語は、典型的には大洋水または海水といった、約25ppt(2.5%)以上、より典型的には約30ppt(3.0%)以上、さらにより典型的には約35ppt(3.5%)以上の塩分を有する水を指す。塩水は、典型的には、約10,000mg/L以上、より好ましくは約20,000mg/L以上、さらにより好ましくは約25,000mg/L以上の全溶解固形物を有する。海水は70を超える元素を含有するが、6つの主要元素のイオン、すなわち、塩化物、ナトリウムイオン、硫酸イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびカリウムイオンが海水塩のほとんどである。
【0029】
「塩分」という用語は、水の溶解塩分含量を指す。前記用語は、塩化ナトリウム、マグネシウムおよび硫酸カルシウムおよび重炭酸塩のような様々な塩の濃度を記述している。
「亜硫酸〜(sulfite)」という用語は、亜硫酸イオンSOを含有する化合物である(付加IUPAC名称:トリオキシドスルファート(2−))。亜硫酸イオンは亜硫酸の共役塩基である。
【0030】
「有価金属」という用語は、銀、金、非鉄卑金属(ニッケル、鉛、銅、および亜鉛)、コバルト、モリブデンおよびそれらの混合物を指し、銅は硫化物マトリックス中における共通金属である。
【0031】
上記は、本発明のいくつかの態様についての理解を提供するための本発明の簡単な要約である。この要約は、本発明およびその様々な実施形態の広範囲な概要でもなく、網羅的な概要でもない。前記要約は、本発明の鍵または重要な要素を明らかにしたり、または本発明の範囲を記述したりするのではなく、本発明の選択された概念を、下記に示す詳細な説明に対する導入部として簡略化した形で示すことを意図されている。認識されるように、本発明の他の実施形態は、上述の特徴または以下に詳述される特徴のうちの1つ以上を単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0032】
添付図面は本発明のいくつかの実施例を示すために本明細書に組み込まれ、その一部を形成する。これらの図面は、説明と共に、本発明の原理について説明する。前記図面は、どのように本発明をなし、また用いることができるかの好ましい例および代替例を示しているに過ぎず、本発明を例示され説明された例のみに限定するとは解釈されない。さらに特徴および利点は、下記に参照される図面によって示されるように、以下の本発明の様々な実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図2A】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図2B】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図3】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図4】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図5】水道水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図6】塩水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図7】水道水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図8】塩水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図9】MBS添加有り、エアレーション有りおよび無しの、塩水および水道水における銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。および、
【図10】MBS添加有り、エアレーション有りおよび無しの、塩分を含んだ現場の水および水道水における銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本願に記載するプロセスは、浮選回路における1つ以上の時点へのスルホキシ試薬、好ましくはメタ重亜硫酸塩(またはイオン)の添加を用いる。1つのプロセス構成において、前記スルホキシ試薬の添加は、一定期間の、典型的には強い、エアレーションによって先行される。前記エアレーションでは、酸化雰囲気および溶存分子状酸素が、妨げられたり抑制されたりするのではなく、活発に促進される。石灰、カセイソーダまたはソーダ灰のような塩基または硫酸のような酸によって結果として生じたパルプのpHを調節することなく、かつシアン化物または水硫化物のような硫化物抑制剤が存在しない状態における、エアレーションとスルホキシ試薬の添加との組み合わせは、エアレーション工程を有さないか、または同工程が存在しない場合のスルホキシ試薬の添加に対して著しい改善を示すことができ、かつ塩基および/または硫化物抑制剤の添加を用いる従来のプロセスより回収率および試薬消費量の点からより費用効率が高くなり得る。さらに、前記プロセスは、些少から相当量の塩分を含有する水において用いられた場合に優れた能力を有し得る。このプロセスは、その唯一利用可能な水源が海水または塩分を含む地下水(brackish ground water)である選鉱機の稼働に特に有用であり得る。他の実施形態において、スルホキシ試薬は、エアレーション後だけでなく、細砕回路、特に二次細砕回路においても付加的に導入される。
【0035】
図1を参照すると、有価金属含有供給材料100は、任意の適当な銅含有および/またはモリブデン含有物質、特に採掘された鉱石、廃石、精鉱または金属回収過程の他の残渣であり得る。供給材料100は、1種以上の硫化銅鉱物および/または硫化モリブデン鉱物だけでなく、有価金属硫化物鉱物から分離されるべき1種以上の他の硫化物鉱物(特に硫化物含有脈石鉱物)も含有する。典型的には、供給材料100は多金属性であり、金属の一部またはすべては硫化物として存在する。一般的な供給材料100は、有価金属硫化物鉱物として、黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、テンナンタイト、硫砒銅鉱および四面銅鉱の1つ以上の形態にある銅、および/または輝水鉛鉱の形態にあるモリブデンと、硫化物含有脈石鉱物として、黄鉄鉱、白鉄鉱、硫砒鉄鉱および磁硫鉄鉱の1つ以上である硫化鉄鉱物とを含む。典型的には金または銀が存在する。多くの応用において、硫化鉄は、供給材料100中の主要な(例えば、50%超の)硫化物含有脈石鉱物である。
【0036】
工程104において、材料100は開放または閉鎖粉砕回路においてスラリーにされ、粉砕される。粉砕された供給材料108は、スルホキシ試薬添加工程114の前に、エアレーション工程112へ送られる。
【0037】
材料100のスラリーを形成するのに用いられる水は、淡水、塩分を含む地下水、海水、またはそれらの任意の混合物であり得る。前記プロセスは、驚いたことに、前記水が塩性であり溶解固形分を含んでいても、または淡水であっても、有価金属硫化物鉱物を浮選するのに有効である。1つのプロセス構成において、例えば、前記水は、0.1ppt(0.01%)以上の塩分を有する。
【0038】
材料100の最適の単体分離サイズは、鉱石の種類、鉱石単体分離および鉱石の溶液化学の理解、および動力費および媒体費に依存する。
粉砕された供給材料108は、好ましくは約20〜約45重量%に及ぶ原液パルプ濃度を有するスラリーの形態にある。
【0039】
粉砕された供給材料108は、適当な槽内で、工程112のエアレーションを受けて、エアレーションされた供給材料132を形成する。エアレーションは、典型的には、供給材料108を通して、酸化ガス、好ましくは分子状酸素含有ガス(空気、実質的に純粋な分子状酸素、および分子状酸素富化空気など)を、撹拌しながら散布することによって実施される。酸化ガスは、好ましくは少なくとも約20体積%の分子状酸素を含有する。エアレーションは、硫化銅および/または硫化モリブデン鉱物108の表面上に表面酸化薄層が形成することを可能にするのに十分な時間にわたって実施される。所望の酸化膜を生成するために必要とされる滞留時間は、好ましくは約15〜約120分間、より好ましくは約30〜約60分間にわたる。ほとんどの応用において、エアレーション中またはエアレーションの後に続く任意の工程の間にpHは調節されない。
【0040】
何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、硫化銅および/または硫化モリブデン鉱物上の表面酸化薄層は、鉱物によるより良好な捕集剤吸着を可能にする。これは、エアレーションが、硫化銅および硫化モリブデン鉱物の酸化を招き、スルホキシ化合物の浮遊度の低下および安定性の低下をもたらすと考える当業者にとって驚きである。
【0041】
工程114では、エアレーションされた供給材料132にスルホキシ試薬118が添加されて、処理された供給材料122を形成する。スルホキシ試薬118は任意の適当な方法で添加することができる。従来のプロセスとは異なり、スルホキシ試薬118は、エアレーションされた供給材料132が酸素化される間に添加される。換言すると、スルホキシ試薬118の添加の前に、粉砕された供給材料から溶存分子状酸素は除去されない。コンディショニング中におけるエアレーションされた供給材料132中の溶存分子状酸素濃度は、好ましくは少なくとも約3ppmであり、より好ましくは少なくとも約5ppmであり、さらにより好ましくは少なくとも約10ppmである。
【0042】
スルホキシ試薬118は、任意のスルホキシ化合物、例えば、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩や、重亜硫酸塩や、メタ重亜硫酸塩や、硫化物や、多硫化物や、チオ硫酸塩や、ポリチオン酸塩や、二硫化物や、二酸化硫黄、並びにそれらの混合物および誘導体であり得る。好ましいスルホキシ試薬118は、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩、および/または二酸化硫黄のうちの1つ以上であり、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩がさらにより好ましい。何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、スルホキシ試薬118は、他の硫化物鉱物(例えば硫化鉄脈石鉱物、特に黄鉄鉱)の抑制剤として作用すると考えられる。当業者には分かるように、亜硫酸イオンは、亜硫酸イオン前駆体間における適当な化学反応により、インサイチューで添加または形成され得る。
【0043】
スルホキシ試薬118の添加のために多くの様々なプロセス構成が存在する。1つのプロセス構成において、スルホキシ試薬118の一部は、任意で細砕の間に、一段階で添加され、エアレーションの後で、かつ洗浄、再洗浄、清掃浮選段階の各々の前に追加量が追加される。別のプロセス構成では、大部分のスルホキシ試薬118はエアレーション後に1つ以上の段階において添加され、精選(cleaning)、再精選(recleaning)、または清掃浮選(scavenging flotation)段階の各々の前に追加の少量が任意で追加される。別のプロセス構成では、スルホキシ試薬118は、任意の細砕段階中であるが、エアレーション後のみに添加される。典型的な漸増的なスルホキシ試薬118添加速度は、すべての添加時点に対して、少なくとも約50g/tであり、より典型的には少なくとも約100g/t、より典型的には200g/t超、さらにより典型的には200g/t超〜約1,000g/tである。
【0044】
何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、スルホキシ試薬および酸化ガスは相乗的に作用して、特に高度に緩衝された水および/または塩性水において、実質的に選択的な分離および有効性を高める。エアレーションは硫化物鉱物表面を酸化させ、これは有価金属硫化物鉱物の浮遊度を増大させると考えられ、一方、エアレーション後のスルホキシ試薬の添加は、廃石として除去される他の硫化物鉱物の抑制を最適に制御すると考えられる。例えば、スルホキシ試薬により黄鉄鉱を抑制している間におけるエアレーションによる硫化銅鉱物の浮遊度の増大は、エアレーションがない状態において可能であるよりも遥かに改善された浮選選択性を可能にすることができる。この相乗効果は、エアレーションおよびスルホキシ試薬添加が連続して行われ、エアレーションがスルホキシ試薬添加に先行する場合に、最良に実現される。
【0045】
工程116では、処理された供給材料122はコンディショニングされて、エアレーションおよびコンディショニングされた供給材料134を形成する。コンディショニングは、浮選の前に、適当な槽、すなわちパルプコンディショニングタンク内で実施される。浮選において、コンディショニング中の撹拌および結果として生じる分散の程度は、物理的および化学的反応が起こるのに必要とされる時間に密接に関係する。
【0046】
コンディショニングの間に、捕集剤120、起泡剤124および他の試薬128を含む多くの試薬が添加され得る。任意の適当な捕集剤120および起泡剤124が用いられ得る。他の試薬128は、活性剤、抑制剤(炭素質および/または黒鉛材料の浮選を抑制する炭素抑制剤など)、粘土分散剤、調整剤、石灰(例として、低コスト分散剤または粘性調整剤として限定された状況において)、および電位(Eh)および/またはpHを制御する試薬が挙げられる。コンディショニング中の撹拌の種類に依存して、酸素添加のレベルは増大し得る。ダウンフロー撹拌機については、恐らく付加的な分子状酸素がスラリー中に混入させられるであろう。コンディショニングは、典型的には0.5〜約60分間、さらに典型的には約2〜約30分間の時間にわたって行われる。
【0047】
エアレーションおよびコンディショニングされた供給材料134は、工程136において、好ましくは散布空気の存在下において、浮選されて、一般に約25%以上、より一般には約40%以上、さらにより一般的には約50%超の有価金属硫化物鉱物を含有する精鉱画分(concentrate fraction)144と、一般には約25%以上、より一般には約40%以上、さらにより一般には約50%超の廃石として除去されるべき硫化物鉱物を含有する廃石画分140とを形成する。浮選回路において、エアレーションおよびコンディショニングされた供給材料134は、一揃いの、または一連の浮選機において浮選される。前記浮選機はエアレーションされた浮選セルであってもよい。
【0048】
浮選は用途に応じて、1段以上の段階を含み得る。粗選(roughing)、清掃選(scavenging)および精選(cleaning)段階の数および構成は当業者には公知の基準に基づいて決定される。
【0049】
特定の供給材料に対する捕集剤120、起泡剤124、および他の試薬128の選択、並びにパルプ濃度、試薬の添加速度、試薬添加の順序、浮選中の空気添加の速度、Eh、および他の浮選条件およびパラメーターもまた当業者には周知である。
【0050】
1つのプロセス構成において、粉砕工程104、エアレーション工程112、コンディショニング工程116および浮選工程136は、酸または塩基によるpH調節を実質的に行わないか、または完全に行わないで(例えば、酸または塩基(例えば石灰、ソーダ灰、および/またはカセイソーダ)の添加を行わないで)実施される。換言すると、前記工程は自然pHで実施される。多くの鉱石および補給水については、自然pHは、約pH11以下のアルカリ性のpHであり、より典型的にはpH8.5未満のpHであり、より典型的にはpH8以下のpHであり、さらにより典型的には約pH3〜約pH8の範囲にわたるpHである。Ehは、典型的には約5mVより高く、約155mV未満であり、より典型的には約10〜約120mVにわたる。
【0051】
1つのプロセス構成において、粉砕工程104、エアレーション工程112、コンディショニング工程116および浮選工程136は、スラリー状供給材料に非酸化ガスを散布することによる溶存分子状酸素の低減を実質的に行わないか、または完全に行わないで実施される。非酸化ガスは、存在する場合には、酸化体含有量をほとんど有さず、完全にとまではいかなくても、主として、不活性ガス(例えば窒素およびアルゴン)、還元ガス(例えば二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エタン、および/またはプロパンのような二酸化硫黄以外の還元ガス)またはそれらの混合物である。1つのプロセス構成において、添加されるスルホキシ試薬118は、実質的に二酸化硫黄ガスを含まない。非酸化ガスによる散布を排除することによって、エアレーション前後のスラリー中において比較的高濃度の溶存分子状酸素が維持され得る。
【0052】
今度は別のプロセス構成について図2A〜図2Bを参照して検討する。この例では、有価金属硫化物鉱物は硫化銅であり、他の硫化物鉱物(または硫化物含有脈石鉱物)は黄鉄鉱、白鉄鉱、磁硫鉄鉱および硫砒鉄鉱のうちの1つ以上である。
【0053】
有価金属含有供給材料100は、工程104において粉砕されて、粉砕供給材料108を形成する。
粉砕供給材料108は、工程116においてコンディショニングされ、コンディショニングされた供給材料132を形成する。コンディショニング中に添加される試薬は捕集剤120、起泡剤124および他の試薬128である。スルホキシ試薬118は添加されない。
【0054】
コンディショニングされた供給材料132は、工程200において粗選浮選に供されて、粗選廃石(rougher tailings)204および粗選精鉱(rougher concentrate)208を形成する。大部分の有価金属硫化物鉱物は粗選精鉱208に残存しており、粗選廃石204は硫化物脈石鉱物の相当部分を含む。図2Aから分かるように、スルホキシ試薬118は粗選浮選前には添加されていない。
【0055】
工程228では、粗選精鉱および清掃選精鉱(scavenger concentrate)208,220はそれぞれ、合わせられて、パルプ濃度を調整され、閉鎖または開放粉砕回路において再粉砕されて、再粉砕精鉱232を形成する。認識されるように、精鉱画分208中の浮上硫化鉄鉱物は分離するのがより困難であり、効率的な単体分離を実現するためには、さらなる粉砕を必要とする。
【0056】
スルホキシ試薬118は、二次粉砕中に、かつエアレーションの後に、任意で添加され得る。粉砕機におけるスルホキシ試薬の添加は、新たな未酸化の硫化物鉱物表面上におけるスルホキシラジカルの即時の吸着を可能にすることができる。一構成において、さらなるスルホキシ試薬118は、前記プロセス中の他の任意の時点においてではなく、精選浮選の前に添加される。
【0057】
工程212において、粗選廃石204は、捕集剤120の添加によってさらにコンディショニングされ、工程216では、コンディショニングされた粗選廃石が清掃浮選(scavenger flotation)216に供されて、清掃選精鉱220および清掃選廃石224を生成する。より遅く浮上する硫化銅鉱物は、清掃浮選中に浮選される。清掃選精鉱220は粗選精鉱208と合わせられて、二次粉砕に供される。
【0058】
二次粉砕工程228に続いて、再粉砕された精鉱232は、工程112においてエアレーションを受けて、エアレーションされた精鉱236を形成する。
任意の工程114では、スルホキシ試薬118が添加されて処理された粗選精鉱238を形成する。
【0059】
工程116では、エアレーションまたは処理された粗選精鉱236が(必要に応じて)コンディショニングされて、コンディショニングされた精鉱240を形成する。コンディショニング中に添加される試薬は捕集剤120、起泡剤124および他の試薬128である。典型的には、エアレーション、スルホキシ試薬の添加、およびコンディショニングは、異なる槽で行われ、エアレーション後の溶存分子状酸素は、スルホキシ試薬の添加の前に、非酸化ガスの導入によって低減されていない。
【0060】
工程248では、コンディショニングされた精鉱240が精選浮選に供されて、精選廃石(cleaner tailings)252と、精選精鉱(cleaner concentrate)250とを形成する。コンディショニングされた精鉱240中の有価金属硫化物鉱物の大部分は精選精鉱250中に残存するが、精選廃石252はコンディショニングされた精鉱240中の有価硫化物鉱物の一部を含有する。精選廃石は相当量の脈石硫化物鉱物を含有する。
【0061】
任意の工程114では、前記精選廃石にスルホキシ試薬118が添加されて、処理された精選廃石262を形成する。
工程256では、精選廃石252または処理された精選廃石262(場合に応じて)が、捕集剤120の添加によってコンディショニングされて、コンディショニングされた精選廃石260を形成する。コンディショニングされた精選廃石260は、工程264において、精選清掃浮選(cleaner scavenger flotation)に供されて、精選清掃選廃石268および精選清掃選精鉱272を形成する。精選廃石252中の有価金属硫化物鉱物の大部分は、精選清掃選精鉱272中に残存しており、一方、精選清掃選廃石268は精選廃石252中の硫化物脈石鉱物の相当部分を含んでいる。精選清掃選精鉱272は二次粉砕工程228に戻される。
【0062】
精選精鉱250に戻ると、工程114において、スルホキシ試薬118が精選精鉱に任意で添加され、処理された精選精鉱252を形成する。
精選精鉱250または処理された精選精鉱252は、工程274において(適宜)コンディショニングされ、コンディショニングされた精選精鉱276を形成する。コンディショニング中、捕集剤120が添加される。
【0063】
コンディショニングされた精選精鉱276は、工程278において、第1再精選浮選(First Recleaner Flotation)に供されて、第1再精選廃石282および第1再精選精鉱280を形成する。第1再精選廃石282は二次粉砕工程228に戻される。
【0064】
任意の工程114では、第1再精選精鉱280にスルホキシ試薬118が添加されて、処理された再精選精鉱281を形成する。
第1再精選精鉱280または処理された再精選精鉱281は(場合に応じて)、工程284において、コンディショニングされて、コンディショニングされた第1再精選精鉱286を形成する。コンディショニングの間に、第1再精選精鉱280捕集剤120が添加される。
【0065】
工程288において、コンディショニングされた第1再精選精鉱286は第2再精選浮選288に供されて、有価金属含有供給材料100中の、好ましくは少なくとも大部分の、より好ましくは約70%以上の硫化物含有脈石鉱物を含有する第2再精選廃石290と、有価金属含有供給材料100中の、好ましくは少なくとも大部分の、好ましくは約70%以上の有価金属硫化物鉱物を含有する第2再精選精鉱292とを形成する。
【0066】
上記のプロセスにおいて、精選浮選、精選清掃選、並びに、第1および第2再精選浮選工程244,264,278,288は、それぞれ、自然pHおよび周囲温度において実施される。
【0067】
上記のプロセスにおいて、粗選浮選の下流で実施される1つ以上のスルホキシ試薬の添加工程に先行して、付加的なエアレーション工程を実施することが望ましいことがある。付加的なエアレーション工程が実施されるかは、さらなるスルホキシ試薬および捕集剤の添加前におけるスラリーの酸化電位に依存する。先のコンディショニング、エアレーション、および浮選工程は、様々なスラリー流に付加的な溶存分子状酸素を導入するであろう。
【0068】
認識されるように、供給材料の種類および鉱物学的特徴によって、他のプロセス構成が用いられてもよい。
実験
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を示すために提供され、添付された請求項に述べられるような、本発明に対する限定として解釈されるものではない。部およびパーセンテージはすべて別段の定めがない限り重量による。
【0069】
実施例1−従来の浮選法
この実施例は、様々な試薬が黄鉄鉱を抑制し、銅を選鉱するために用いられる場合、浮選パルプ中に用いられる水の組成が銅の回収率に対して有する影響を示す。表1に示すように、用いた塩水は、水道水よりも相当に高い全溶解固形物および導電率を有する。
【0070】
【表1】
図3は、この実施例において行なわれる動態試験の簡単な流れ図である。前記流れ図は、コンディショニングされた供給材料304を形成する粉砕された供給材料のコンディショニング300と、粗選廃石312および粗選精鉱316を形成するコンディショニングされた供給材料304の(5つの浮選機を用いた)粗選浮選308と、再粉砕粗選廃石324を形成する粗選精鉱316の二次粉砕320と、第1精選精鉱332および第1精選廃石336を形成する再粉砕粗選廃石324の第1精選浮選328と、第2精選精鉱1,2 348および第2精選廃石352を形成する第1精選精鉱332の第2精選浮選344と、精選清掃選精鉱356および精選清掃選廃石360を形成する第1精選廃石336の精選清掃浮選340とを含む。
【0071】
下記に述べる動態試験のための5つの粗選段階は、2つの水源、すなわち、水道水と、高度の全溶解固形物(TDS)を有する水(塩水)とを用いて、同様の方法で実施した。すべての試験は、粗選段階についてはP80212ミクロンに粉砕された鉱石、および精選清掃選についてはP8020〜25ミクロンに再粉砕された鉱石について実施された。試薬の添加以外は、前記試験は同一の条件を用いて行なった。
【0072】
硫化物抑制に対する様々な試薬添加の効果および関連する銅品位/回収率について調査した。用いた試薬は、試薬なし、石灰、石灰およびシアン化ナトリウム、並びに、石灰、シアン化物およびアミルキサントゲン酸カリウム(PAX)であった。
【0073】
すべての試験で用いた供給物(鉱石)材料の組成を表2に示す。初期の供給物パルプ濃度は34%であった。実験条件を下記で表3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
上記の図5および図6は、水道水および塩水のそれぞれについて、4つの試薬スキームに対する品位回収曲線を示している。試験した試薬スキームのすべてについて、低TDSの水道水に対する品位回収曲線は塩水で得られたそれよりも良好であった。石灰、シアン化物およびPAXを有する水道水は最良の品位回収曲線を有する。
【0076】
黄鉄鉱抑制のために用いられた従来の技術は、水道水と比較して、塩水中においては同様に機能しない。
実施例2−エアレーション/スルホキシ試薬法
精選浮選の第1段階の前に300g/t、および二次細砕中にさらに300g/tのメタ重亜硫酸塩(またはイオン)(MBS)(スルホキシ試薬)を添加したこと以外は、実施例1で用いたのと同様の浮選回路を用いて付加的な試験を行なった。換言すると、下記の表4に示すように、合計600g/tのMBSを浮選回路中に添加した。
【0077】
浮選回路は図4の流れ図に示されている。前記流れ図は、コンディショニングされた供給材料404を形成する粉砕された供給材料のコンディショニング400と、粗選精鉱画分および粗選廃石画分412,416をそれぞれ形成する(5つの浮選機または段階を用いた)粗選浮選408と、再粉砕粗選精鉱412を形成するスルホキシ試薬118の存在下における粗選精鉱412の二次粉砕420と、エアレーションされた再粉砕粗選精鉱428を形成する再粉砕粗選精鉱412の(0分間(エアレーションが実施されなかったことを意味する)または30分間にわたる)エアレーション112と、精選浮選432前におけるスルホキシ試薬118の添加と、精選精鉱1〜6および精選廃石436,440をそれぞれ形成するエアレーションされた再粉砕粗選精鉱428の精選浮選432とを含む。
【0078】
再度、同一の2種類の水、すなわち、水道水および高度のTDSを含む塩水(塩水)を用いた。すべての試験は、5つの粗選段階についてはP80212ミクロンに粉砕された供給(鉱石)材料、および精選清掃選についてはP8020〜25ミクロンに再粉砕された供給(鉱石)材料について実施された。試薬の添加以外は、前記試験は同一の条件を用いて行なった。初期の供給物パルプ濃度は約34%であり、供給物(鉱石)材料は実施例1において用いたそれと同一であった。実験条件を下記で表4に示す。前記試験は、二次粉砕工程、または二次細砕の後に、かつ精選浮選回路の前に、30分間のエアレーション工程を有するか、または有さないで行なった。硫化物抑制および銅品位/回収率に対するMBSの添加前におけるエアレーションの効果について調査した。参考として、石灰、シアン化物およびPAXによる品位回収曲線を示す。
【0079】
【表4】
図7〜図8の品位回収曲線から観察することができるように、MBSの使用は、双方の水の種類において銅品位回収曲線を向上させる。前記効果は、塩水中において最も顕著である。しかしながら、エアレーションが用いられて初めて、塩水において得られた品位回収率は水道水中で観察されたそれに近づき始める。エアレーション有り、および無しの銅品位回収率をより明らかに比較するグラフを図9に示す。塩水では、MBSの添加により、32%の同一の銅品位における銅回収率が50%から75%に向上する。
【0080】
実施例3−エアレーション/スルホキシ試薬法
半塩水現場の水(brackish site water)が用いられたこと以外は、実施例2に用いたのと同一の図4の浮選回路を用いて付加的な試験を行なった。現場水の分析は表5に示す。前記試験は、二次細砕の後に、かつ洗浄浮選回路の前に、30分間のエアレーション工程を有するか、または有さないで行なった。硫化物抑制および銅品位/回収率に対するMBSの添加後におけるエアレーションの効果について調査した。参考に、水道水による品位回収曲線を図10に示す。
【0081】
【表5】
実施例4−ロックドサイクル試験
異なる鉱石タイプおよび塩性水および緩衝された現場水を用いてロックドサイクル試験を実施し、スルホキシ試薬添加を用いて実施した浮選を、抑制剤としてシアン化物を用いてエアレーションおよびスルホキシ試薬の添加を行わないで実施された浮選と比較した。様々な鉱石は相当レベルの硫化鉄を含有する硫化銅鉱石であった。現場水を用いた実際のロッキングサイクル試験は、一般的に、オープン・クリーナ試験よりも有益な情報を提供すると見なされている。ロックドサイクル試験の概要を表6〜表7に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
表6、7は共に、メタ重亜硫酸アンモニウムの添加が後続するエアレーションを有する浮選が、硫化鉄抑制剤としてシアン化物を用いた浮選よりも著しく良好な結果をもたらしたことを示している。平均では、メタ重亜硫酸アンモニウム添加が後続するエアレーションを有して実施された浮選について、銅回収率は約6%高く、約3%高い銅精鉱品位を有した。
【0084】
本発明の多数の変化例および変更例を用いることができる。本発明の一部の特徴を、他を提供することなく、提供することが可能であろう。
例えば、前記スルホキシ試薬は、関連する鉱物学的特徴およびスラリー条件(例えばEhおよびpH)によって様々な作用モードを有する。前記スルホキシ試薬は、例えば、異なるスラリー条件下において同一の硫化物鉱物に対して抑制剤および/または活性剤として作用したり、または共通の一連の条件下において、ある硫化物鉱物に対しては抑制剤として作用し、かつ/または異なる硫化物鉱物に対しては活性剤として作用したりすることができる。例えば、前記スルホキシ試薬は、ある一連の条件下では、硫化銅、硫化鉛および硫化亜鉛の浮選を活性化し、かつ異なる一連の条件下では硫化銅のみ浮選を活性化し、硫化鉛および硫化亜鉛は活性化しない。別の実施例において、前記スルホキシ試薬は、硫化亜鉛の浮選を抑制するが、硫化鉛の浮選は抑制しない。
【0085】
他の実施例において、精鉱および廃石は、各々、様々な有価金属硫化物鉱物を含有し得る。廃石中の有価金属は、後続の浮選段階によって任意の脈石硫化物鉱物から後に分離され得る。本願で検討したプロセスに適用可能な卑金属混入硫化鉱(base metal mixed sulfide ore)の例は、銅−金(例えばカラベライト(AuTe2)またはシルバナイト(Au,Ag)Te2として)、銅−金−銀(例えば硫銀鉱(Ag2S)、シルバナイト(Au、Ag)Te2)、濃紅銀鉱(Ag3SbS3)およびプルースタイト(Ag3AsS3)として)、鉛(例えば方鉛鉱(PbS)、テルル鉛鉱(PbTe)、車骨鉱(PbCuSbS3)、毛鉱(Pb4FeSb6S14)および円柱錫鉱(Pb3Sn4FeSb2S14)として))−亜鉛(例えば閃亜鉛鉱(ZnS)として)−銅、銅−亜鉛および銅−モリブデンを含む。塊状硫化鉱は、例えば、通常、3つ以上の有価金属、並びに黄鉄鉱のような脈石硫化物鉱物を含有する。
【0086】
本発明は、様々な実施形態、構成、または態様において、本願において描写され記載された構成要素、方法、工程、システムおよび/または装置を、それらの様々な実施形態、構成、態様、副結合および部分集合を含めて、実質的に包含する。当業者は、本開示を理解した後に、本発明を製造し用いる方法を理解するであろう。本発明は、様々な実施形態、構成、および態様において、例えば、性能を向上するため、容易にするため、および/または実施費用を低減するために、従来の装置またはプロセスにおいて用いられてきたことがあるそのような品目が欠如していることを含めて、本願またはその様々な実施形態、構成、または態様において描写および/または記載されていない品目が欠如した装置およびプロセスを提供することを包含する。
【0087】
本発明の上記の検討は例証および説明のために示されている。上記は、本発明を本願において開示した形態に限定するものではない。前述の詳細な説明において、例えば、本発明の様々な特徴は、開示を簡素化する目的で、1つ以上の実施形態、構成、または態様にグレープ化されている。本発明の実施形態、構成、または態様の特徴は、上記で検討したもの以外の代替の実施形態、構成、または態様に組み合わせられてもよい。本開示のこの方法は、権利請求する発明が、各請求項において明白に述べているよりも多くの特徴を必要とするという意図を表すものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が表すように、本発明の態様が先に開示した単一の実施形態、構成、または態様のすべての特徴に存するわけではない。したがって、以下の特許請求の範囲は、これによりこの詳細な説明に援用され、各請求項は、本発明の別個の好ましい実施形態として独立している。
【0088】
さらに本発明の説明は、1つ以上の実施形態、構成、または態様および一定の別例および改変例の説明を含んでいるが、例えば、本開示を理解した後に当業者の技能および知識の範囲内にあり得るような、他の別例、組み合わせ、および改変例は、本発明の範囲内にある。権利請求されたものに対する、代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程を含む別の実施形態、構成、または態様を包含する権利を許される範囲内で得るように意図される。上記は、そのような代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程が本願に開示されているか否かに係わらない。また、いかなる特許可能な主題も公に供する意図はない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して金属回収に関し、特に、広範な緩衝能を有するかまたは塩分を有する水に浮遊選鉱(浮選)することによる銅、モリブデンおよび/または金鉱物の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
黄鉄鉱からの有用鉱物および他の脈石鉱物の質を高めるための浮選の利用は、一般にアルカリ性pHで実施される。アルカリ度は石灰または他のアルカリ性化合物の添加によって制御される。通常は、比較的安価な試薬である石灰が用いられるが、浮選回路に利用可能な水が高い緩衝能を有する場合には、石灰および他の試薬が大量に必要とされる。換言すると、最適な操作条件でpHを変化させ維持するためには、大量の石灰が必要である。石灰の添加はまた、金属表面上におけるカルシウムの沈着のために、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、輝水鉛鉱、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、並びに金および他の貴金属のような鉱物の浮選を阻害し得る。
【0003】
一般に、硫化物浮選において、浮選試薬の効力は浮選供給物におけるアルカリ性または酸性のレベルによって制御されるか、または、石灰、ソーダ灰、もしくはそれほど多くはないがカセイソーダのようなパルプpH調節剤がpH制御剤として多くの場合用いられる。コスト、入手のし易さおよびpH10.5以上のpH値を維持する能力のために、石灰が最も一般に使用されている薬剤である。pH11.0までのパルプ(鉱液)のpHの調節は、黄鉄鉱および磁硫鉄鉱のような鉄の脈石硫化物鉱物を抑制するために必要とされる。石灰の添加に関連する費用は膨大となり得、抑制剤としての石灰の効力は、高濃度の溶解した塩を含有したり、または高度に緩衝されていたりする水においては、低減されることが本願において示された。
【0004】
黄鉄鉱を抑制するためには、シアン化物または硫化水素ナトリウムのような他の硫化物抑制剤がpH調整と共に用いられてきた。それらの抑制剤は広いpH範囲に対して用いることができず、また高いpH値を必要とするため、高い石灰消費量は問題のままである。さらに、これらの抑制剤は、経済的な投与量において十分に精選されたものではない場合がある。硫化物鉱物の回収率を向上するためのスルホキシ化合物の使用は、ハントに付与された米国特許第2,154,092号(特許文献1)に遡って記載されていた。この特許は、脈石成分に関連した炭素質物質または黒鉛物質を含有する鉱石を処理するためのプロセスを記載している。これらの炭素質物質は浮選の間に有用な鉱石鉱物に残存し、品位を低下させたり、または有用鉱物を被覆したりすることによって、浮選による有用鉱物の回収を低減し得る。これを防止するために、二酸化硫黄または他の還元ガスを、空気と混合することなく、パルプに添加して、有害な脈石および炭素で被覆された鉱物の浮選を抑制する。
【0005】
二酸化硫黄気体が添加される場合、ハントは、パルプ水の結果として生じるpHは、通常、酸性側(<pH7)にあると述べている。一部の例では、鉱石およびボールミル処理水(milling water)の双方の生来のアルカリ度に依存して、パルプはアルカリ性のままであることもある。前記プロセスは、パルプが酸性またはアルカリ性のいずれである場合でも行われ得る。
【0006】
ハントは、前記還元ガスはまた、1つ以上の適当な化学物質の作用によって鉱石パルプ自体の内部で生成されてもよいことを教示している。例えば、硫酸と、アルカリ(塩基)またはアルカリ土類の亜硫酸塩、重亜硫酸塩、またはチオ硫酸塩とが、鉱石パルプに添加される場合には、その相互作用から生じる生成物のうちの1つは二酸化硫黄であろう。
【0007】
多くの他の特許は硫化物浮選回路にスルホキシ化合物を用いてきた。
ビーティーらに付与された米国特許第5,171,428号(特許文献2)は、黄鉄鉱を含む混合物から、該混合物をHSO3−イオンを提供する亜硫酸剤(sulfitic agent)と接触させることによって、硫砒鉄鉱を分離するプロセスを記載している。前記プロセスは、高温かつ約pH8よりも低いpHにおいて、硫砒鉄鉱の選択的な抑制を与えるのに十分な期間にわたって、実施される。
【0008】
クラークらに付与された米国特許第6,032,805号および第6,092,666号(特許文献3および4)は、スルホキシラジカル含有試薬を用いることにより、アルカリ性pH調整剤(pH modifiers)の消費を低減する方法を開示している。スルホキシラジカル含有試薬の導入前、または導入と同時に、非酸化ガス(不活性ガスまたは還元ガスなど)が、鉱物の浮選分離を促す化学的環境を達成するのに十分な量で添加される。捕集剤および起泡剤添加前だが、非酸化ガスとの接触後に、スラリーは、必要な場合のみ、浮選に適した特定の溶存酸素濃度または電気化学電位まで、酸化ガスによってエアレーションされる。
【0009】
ニューエルらに付与された米国特許第6,041,941号(特許文献5)は、浮選回路において試薬の消費および無機スケールの生成を低減する目的で、クラークらに類似したプロセスを提示している。クラークらのプロセスでは、スルホキシラジカルの酸化を防止するために非酸化ガスが添加される。前記非酸化ガスは試薬コンディショニングおよび浮選段階の最中に導入される。これらの段階において、スラリー中の溶存酸素は、スルホキシ化合物を分解し、かつスケール生成を生じる可能性が最も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2,154,092号
【特許文献2】米国特許第5,171,428号
【特許文献3】米国特許第6,032,805号
【特許文献4】米国特許第6,092,666号
【特許文献5】米国特許第6,041,941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
有意な範囲の緩衝能および/または塩度を有する水における試薬消費のレベルを制御しながら、石灰または他のpH調整剤を添加することなく、他の硫化物鉱物から、特に硫化物含有脈石鉱物(sulfidic gangue minerals)から、有価金属含有硫化物鉱物を分離することができるプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらおよび他の要求は本発明の様々な実施形態および構成によって対処される。本発明は、概して、他の硫化物、特に黄鉄鉱、白鉄鉱、磁硫鉄鉱、硫砒鉄鉱および他の脈石鉱物からの有価金属硫化物鉱物のスルホキシ試薬によって支援された浮選分離に関する。
【0013】
実施形態において、スルホキシ試薬、好ましくはアンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩は、浮選の前に、エアレーションされたスラリー状の有価金属含有硫化物供給材料に添加される。そのプロセスは、一方では輝銅鉱(Cu2S)、斑銅鉱(Cu5FeS4)、黄銅鉱(CuFeS2)、銅藍(CuS)、四面銅鉱(Cu12Sb4S13)、テンナンタイト(Cu12As4S13)および硫砒銅鉱(Cu3AsS4)のような硫化銅、および/または硫化モリブデン(例えば輝水鉛鉱(MoS2)として)の浮選分離に、他方では黄鉄鉱(FeS2)、白鉄鉱(FeS2)、磁硫鉄鉱(Fe1−xS)、硫砒鉄鉱(FeAsS)からの浮選分離に特に適用可能である。スルホキシ試薬は脈石硫化物鉱物の抑制剤として作用する。このように、様々な硫化物鉱物の高度に選択的な浮選分離が実現され得る。
【0014】
スルホキシ試薬添加前にスラリーから分子状酸素を奪う従来の浮選プロセスと異なり、スルホキシ試薬はエアレーションされた有価金属含有供給材料に添加される。エアレーション工程は、捕集剤の吸着、従って銅鉱物の浮選を促進するために、硫化銅鉱物上に表面酸化の薄層が形成される程度に行われる。この層の形成を促進するために、スラリー状有価金属含有供給材料は、好ましくは、浮選工程の前に、溶存分子状酸素含有量を低下させるために、外部で生成された非酸化ガスとは接触させられない。
【0015】
いくつかの実施形態において、スルホキシ試薬は、エアレーション後でかつ捕集剤および起泡剤によるパルプコンディショニングの前に導入される。
いくつかの実施形態において、スルホキシ試薬は、エアレーション後だけでなく、一次および/または二次細砕回路においても付加的に導入される。何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、これは、スルホキシ試薬を新たに露出した未酸化の無機硫化物表面に接触させることによって、該試薬の効力を高めることができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、浮選プロセスは、自然pH(natural pH)において、実質的にpH調整を行わないで実施される。換言すると、スルホキシ試薬投与量を低減するため、任意の腐食効果を低減するため、および/または高いスルホキシ試薬投与量が必要な場合に低pH状態を避けるためのような経済的理由のためにpH調整が実施される場合を除いて、粉砕および浮選の回路におけるいかなる段階においても、スラリー状供給材料のpHを調節するために、酸も塩基も添加されない。しかしながら、pH調整は有価金属回収または精鉱品位に悪影響を与えないようにするために慎重に制御されなければならない。
【0017】
前記プロセスは、パルプ形成において、淡水、半塩水、または塩水であるか、または緩衝の程度に関わらず、いかなる水質を用いることもできる。
スルホキシ試薬添加段階が後続するエアレーション段階とpH調節を行わないこととの組み合わせは、硫化銅鉱物浮選の速度および回収率の増大、および硫化銅鉱物の精鉱品位の向上をもたらし得る。
【0018】
エアレーションによって生じた溶存分子状酸素濃度は、特定の状況において、スルホキシ試薬の消費を増大させ得るが、動態における実質的な改善および石灰試薬の必要をなくすことは、スルホキシ試薬コストの増大を補って余りあるものとなり得る。このプロセスは、浮選パルプを形成するのに使用可能な水が有意な緩衝能を有している場合に特に有用であり、広いパルプpH範囲にわたって有効である。実際、前記プロセスは、石灰添加およびシアン化物を用いる従来のプロセスよりも、回収率および試薬消費量の点から、費用効率がより高くなり得る。前記プロセスは、些少からかなりの緩衝能または塩分を含む水において用いられた場合に優れた能力を示した。従って、前記プロセスは、唯一の利用可能な水源が海水または塩分を含む地下水(brackish ground water)である選鉱機の稼働に特に有用である。
【0019】
これらおよび他の利点は本願に含まれる本発明の開示から明らかになるであろう。
「一つの(a)」または「一つの(an)」要素という語は、その要素の1つ以上を指す。そのため、用語「a」(または「an」)「1つ以上(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」は本願において区別なく用いられ得る。また、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語も区別なく用いられ得ることにも注意すべきである。
【0020】
「少なくとも1つ(at least one)」、「1つ以上(one or more)」および「および/または(and/or)」という句は、作用において接続語および離接語の双方である制限がない表現(open−ended expressions)である。例えば、「A,B、及びCのうち少なくとも1つ(at least one of A, B and C)」、「A,B、またはCのうち少なくとも1つ(at least one of A, B, or C)」、「A,B、およびCのうち1つ以上(one or more of A, B, and C)」、「A,B、またはCのうち1つ以上(one or more of A, B, or C)」、及び「A,B、及び/またはC(A, B, and/or C)」という記載のそれぞれは、A単独、B単独、C単独、A及びB共、A及びC共、B及びC共、またはA,B、及びC共を意味する。
【0021】
上記の表現においてA、BおよびCの各々が、X,YおよびZのような要素、またはX1〜Xn、Y1〜YmおよびZ1〜Zoのような要素のクラスを指す場合、前記句は、X,YおよびZから選択される単一要素、および同一のクラスから選択される要素の組み合わせ(例えばX1およびX2)、並びに2つ以上のクラスから選択される要素の組み合わせ(例えばY1およびZo)を指すように意図される。
【0022】
用語「半塩水(brackish water)」は、淡水より多くの塩分を有するが、塩水ほどではない水を指す。典型的には、半塩水は、約0.1ppt(parts per thousand)(0.01%)〜約25ppt(2.5%)に及ぶ塩分を有する。
【0023】
「緩衝能」という用語は、外部pH調整剤が添加される場合に、溶液がそのpHの変化に抵抗することができる程度を指す。
「溶解する」という用語およびその変化形は、固体または液体がその水相(溶液)に入るプロセスである。
【0024】
「メタ重亜硫酸塩(またはイオン)(metabisulfite)」という用語は、硫黄のオキシアニオンS2O52−、またはこのイオンを含む任意の塩を指す。メタ重亜硫酸塩(またはイオン)は、通常、金属およびメタ重亜硫酸アニオン(S2O5)の形にあり、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩の形にある。
【0025】
「鉱物」という用語およびその変化形は、有限の化学組成および特有の結晶構造を有する任意の自然に形成された化学物質を指す。
「自然pH」という用語は、実質的に意図的なpH調整(pH modification)が行われていない溶液のpHを指す。意図的なpH調整は、酸または塩基がpHを調節する目的で溶液に添加される場合に生じる。意図的でないpH調整の一例は、エアレーション、浮選剤(捕集剤、起泡剤、活性剤、抑制剤、分散剤などのような)によるパルプコンディショニング、またはスルホキシ試薬の添加によってpHが調節される場合である。
【0026】
「貴金属」という用語は一般に金および銀を指す。
「それから誘導される溶液」という用語は、その溶液が直接的または間接的に誘導される源溶液との、少なくとも1つの共通成分を有する溶液を指す。例えば、浸出剤、汚染物質または源溶液中に見られる有価金属を有する溶液は、そこから誘導されると考えられる。したがって、抽残液または貧液は、浸出貴液(pregnant leach solution)から誘導された溶液であると考えられる。同様に、有価金属を含有する担持抽出剤または電解質(loaded extractant or electrolyte)、またはストリップ溶液は、浸出貴液から直接的または間接的に誘導されると考えられる。同様に、スラリー状精鉱または廃石は供給材料から浮選段階へ誘導されると考えられる。
【0027】
用語「硫化物鉱物」は、カチオンとして金属と、主要アニオンとしてスルフィド(S2−)を含有する鉱物を指す。
用語「スルホキシ試薬」は、S=0、S03X、S04などのように酸素がSに直接結合されている成分、またはスルホキシラジカルの供給源として作用する成分を含有する組成物を指す。
【0028】
「塩水」という用語は、典型的には大洋水または海水といった、約25ppt(2.5%)以上、より典型的には約30ppt(3.0%)以上、さらにより典型的には約35ppt(3.5%)以上の塩分を有する水を指す。塩水は、典型的には、約10,000mg/L以上、より好ましくは約20,000mg/L以上、さらにより好ましくは約25,000mg/L以上の全溶解固形物を有する。海水は70を超える元素を含有するが、6つの主要元素のイオン、すなわち、塩化物、ナトリウムイオン、硫酸イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびカリウムイオンが海水塩のほとんどである。
【0029】
「塩分」という用語は、水の溶解塩分含量を指す。前記用語は、塩化ナトリウム、マグネシウムおよび硫酸カルシウムおよび重炭酸塩のような様々な塩の濃度を記述している。
「亜硫酸〜(sulfite)」という用語は、亜硫酸イオンSOを含有する化合物である(付加IUPAC名称:トリオキシドスルファート(2−))。亜硫酸イオンは亜硫酸の共役塩基である。
【0030】
「有価金属」という用語は、銀、金、非鉄卑金属(ニッケル、鉛、銅、および亜鉛)、コバルト、モリブデンおよびそれらの混合物を指し、銅は硫化物マトリックス中における共通金属である。
【0031】
上記は、本発明のいくつかの態様についての理解を提供するための本発明の簡単な要約である。この要約は、本発明およびその様々な実施形態の広範囲な概要でもなく、網羅的な概要でもない。前記要約は、本発明の鍵または重要な要素を明らかにしたり、または本発明の範囲を記述したりするのではなく、本発明の選択された概念を、下記に示す詳細な説明に対する導入部として簡略化した形で示すことを意図されている。認識されるように、本発明の他の実施形態は、上述の特徴または以下に詳述される特徴のうちの1つ以上を単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0032】
添付図面は本発明のいくつかの実施例を示すために本明細書に組み込まれ、その一部を形成する。これらの図面は、説明と共に、本発明の原理について説明する。前記図面は、どのように本発明をなし、また用いることができるかの好ましい例および代替例を示しているに過ぎず、本発明を例示され説明された例のみに限定するとは解釈されない。さらに特徴および利点は、下記に参照される図面によって示されるように、以下の本発明の様々な実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図2A】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図2B】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図3】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図4】実施形態に従ったプロセスの流れ図。
【図5】水道水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図6】塩水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図7】水道水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図8】塩水における様々な浮選剤スキームの銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【図9】MBS添加有り、エアレーション有りおよび無しの、塩水および水道水における銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。および、
【図10】MBS添加有り、エアレーション有りおよび無しの、塩分を含んだ現場の水および水道水における銅回収曲線および銅回収率(%)に対する銅品位(%)のプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本願に記載するプロセスは、浮選回路における1つ以上の時点へのスルホキシ試薬、好ましくはメタ重亜硫酸塩(またはイオン)の添加を用いる。1つのプロセス構成において、前記スルホキシ試薬の添加は、一定期間の、典型的には強い、エアレーションによって先行される。前記エアレーションでは、酸化雰囲気および溶存分子状酸素が、妨げられたり抑制されたりするのではなく、活発に促進される。石灰、カセイソーダまたはソーダ灰のような塩基または硫酸のような酸によって結果として生じたパルプのpHを調節することなく、かつシアン化物または水硫化物のような硫化物抑制剤が存在しない状態における、エアレーションとスルホキシ試薬の添加との組み合わせは、エアレーション工程を有さないか、または同工程が存在しない場合のスルホキシ試薬の添加に対して著しい改善を示すことができ、かつ塩基および/または硫化物抑制剤の添加を用いる従来のプロセスより回収率および試薬消費量の点からより費用効率が高くなり得る。さらに、前記プロセスは、些少から相当量の塩分を含有する水において用いられた場合に優れた能力を有し得る。このプロセスは、その唯一利用可能な水源が海水または塩分を含む地下水(brackish ground water)である選鉱機の稼働に特に有用であり得る。他の実施形態において、スルホキシ試薬は、エアレーション後だけでなく、細砕回路、特に二次細砕回路においても付加的に導入される。
【0035】
図1を参照すると、有価金属含有供給材料100は、任意の適当な銅含有および/またはモリブデン含有物質、特に採掘された鉱石、廃石、精鉱または金属回収過程の他の残渣であり得る。供給材料100は、1種以上の硫化銅鉱物および/または硫化モリブデン鉱物だけでなく、有価金属硫化物鉱物から分離されるべき1種以上の他の硫化物鉱物(特に硫化物含有脈石鉱物)も含有する。典型的には、供給材料100は多金属性であり、金属の一部またはすべては硫化物として存在する。一般的な供給材料100は、有価金属硫化物鉱物として、黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、テンナンタイト、硫砒銅鉱および四面銅鉱の1つ以上の形態にある銅、および/または輝水鉛鉱の形態にあるモリブデンと、硫化物含有脈石鉱物として、黄鉄鉱、白鉄鉱、硫砒鉄鉱および磁硫鉄鉱の1つ以上である硫化鉄鉱物とを含む。典型的には金または銀が存在する。多くの応用において、硫化鉄は、供給材料100中の主要な(例えば、50%超の)硫化物含有脈石鉱物である。
【0036】
工程104において、材料100は開放または閉鎖粉砕回路においてスラリーにされ、粉砕される。粉砕された供給材料108は、スルホキシ試薬添加工程114の前に、エアレーション工程112へ送られる。
【0037】
材料100のスラリーを形成するのに用いられる水は、淡水、塩分を含む地下水、海水、またはそれらの任意の混合物であり得る。前記プロセスは、驚いたことに、前記水が塩性であり溶解固形分を含んでいても、または淡水であっても、有価金属硫化物鉱物を浮選するのに有効である。1つのプロセス構成において、例えば、前記水は、0.1ppt(0.01%)以上の塩分を有する。
【0038】
材料100の最適の単体分離サイズは、鉱石の種類、鉱石単体分離および鉱石の溶液化学の理解、および動力費および媒体費に依存する。
粉砕された供給材料108は、好ましくは約20〜約45重量%に及ぶ原液パルプ濃度を有するスラリーの形態にある。
【0039】
粉砕された供給材料108は、適当な槽内で、工程112のエアレーションを受けて、エアレーションされた供給材料132を形成する。エアレーションは、典型的には、供給材料108を通して、酸化ガス、好ましくは分子状酸素含有ガス(空気、実質的に純粋な分子状酸素、および分子状酸素富化空気など)を、撹拌しながら散布することによって実施される。酸化ガスは、好ましくは少なくとも約20体積%の分子状酸素を含有する。エアレーションは、硫化銅および/または硫化モリブデン鉱物108の表面上に表面酸化薄層が形成することを可能にするのに十分な時間にわたって実施される。所望の酸化膜を生成するために必要とされる滞留時間は、好ましくは約15〜約120分間、より好ましくは約30〜約60分間にわたる。ほとんどの応用において、エアレーション中またはエアレーションの後に続く任意の工程の間にpHは調節されない。
【0040】
何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、硫化銅および/または硫化モリブデン鉱物上の表面酸化薄層は、鉱物によるより良好な捕集剤吸着を可能にする。これは、エアレーションが、硫化銅および硫化モリブデン鉱物の酸化を招き、スルホキシ化合物の浮遊度の低下および安定性の低下をもたらすと考える当業者にとって驚きである。
【0041】
工程114では、エアレーションされた供給材料132にスルホキシ試薬118が添加されて、処理された供給材料122を形成する。スルホキシ試薬118は任意の適当な方法で添加することができる。従来のプロセスとは異なり、スルホキシ試薬118は、エアレーションされた供給材料132が酸素化される間に添加される。換言すると、スルホキシ試薬118の添加の前に、粉砕された供給材料から溶存分子状酸素は除去されない。コンディショニング中におけるエアレーションされた供給材料132中の溶存分子状酸素濃度は、好ましくは少なくとも約3ppmであり、より好ましくは少なくとも約5ppmであり、さらにより好ましくは少なくとも約10ppmである。
【0042】
スルホキシ試薬118は、任意のスルホキシ化合物、例えば、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩や、重亜硫酸塩や、メタ重亜硫酸塩や、硫化物や、多硫化物や、チオ硫酸塩や、ポリチオン酸塩や、二硫化物や、二酸化硫黄、並びにそれらの混合物および誘導体であり得る。好ましいスルホキシ試薬118は、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩、および/または二酸化硫黄のうちの1つ以上であり、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩がさらにより好ましい。何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、スルホキシ試薬118は、他の硫化物鉱物(例えば硫化鉄脈石鉱物、特に黄鉄鉱)の抑制剤として作用すると考えられる。当業者には分かるように、亜硫酸イオンは、亜硫酸イオン前駆体間における適当な化学反応により、インサイチューで添加または形成され得る。
【0043】
スルホキシ試薬118の添加のために多くの様々なプロセス構成が存在する。1つのプロセス構成において、スルホキシ試薬118の一部は、任意で細砕の間に、一段階で添加され、エアレーションの後で、かつ洗浄、再洗浄、清掃浮選段階の各々の前に追加量が追加される。別のプロセス構成では、大部分のスルホキシ試薬118はエアレーション後に1つ以上の段階において添加され、精選(cleaning)、再精選(recleaning)、または清掃浮選(scavenging flotation)段階の各々の前に追加の少量が任意で追加される。別のプロセス構成では、スルホキシ試薬118は、任意の細砕段階中であるが、エアレーション後のみに添加される。典型的な漸増的なスルホキシ試薬118添加速度は、すべての添加時点に対して、少なくとも約50g/tであり、より典型的には少なくとも約100g/t、より典型的には200g/t超、さらにより典型的には200g/t超〜約1,000g/tである。
【0044】
何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、スルホキシ試薬および酸化ガスは相乗的に作用して、特に高度に緩衝された水および/または塩性水において、実質的に選択的な分離および有効性を高める。エアレーションは硫化物鉱物表面を酸化させ、これは有価金属硫化物鉱物の浮遊度を増大させると考えられ、一方、エアレーション後のスルホキシ試薬の添加は、廃石として除去される他の硫化物鉱物の抑制を最適に制御すると考えられる。例えば、スルホキシ試薬により黄鉄鉱を抑制している間におけるエアレーションによる硫化銅鉱物の浮遊度の増大は、エアレーションがない状態において可能であるよりも遥かに改善された浮選選択性を可能にすることができる。この相乗効果は、エアレーションおよびスルホキシ試薬添加が連続して行われ、エアレーションがスルホキシ試薬添加に先行する場合に、最良に実現される。
【0045】
工程116では、処理された供給材料122はコンディショニングされて、エアレーションおよびコンディショニングされた供給材料134を形成する。コンディショニングは、浮選の前に、適当な槽、すなわちパルプコンディショニングタンク内で実施される。浮選において、コンディショニング中の撹拌および結果として生じる分散の程度は、物理的および化学的反応が起こるのに必要とされる時間に密接に関係する。
【0046】
コンディショニングの間に、捕集剤120、起泡剤124および他の試薬128を含む多くの試薬が添加され得る。任意の適当な捕集剤120および起泡剤124が用いられ得る。他の試薬128は、活性剤、抑制剤(炭素質および/または黒鉛材料の浮選を抑制する炭素抑制剤など)、粘土分散剤、調整剤、石灰(例として、低コスト分散剤または粘性調整剤として限定された状況において)、および電位(Eh)および/またはpHを制御する試薬が挙げられる。コンディショニング中の撹拌の種類に依存して、酸素添加のレベルは増大し得る。ダウンフロー撹拌機については、恐らく付加的な分子状酸素がスラリー中に混入させられるであろう。コンディショニングは、典型的には0.5〜約60分間、さらに典型的には約2〜約30分間の時間にわたって行われる。
【0047】
エアレーションおよびコンディショニングされた供給材料134は、工程136において、好ましくは散布空気の存在下において、浮選されて、一般に約25%以上、より一般には約40%以上、さらにより一般的には約50%超の有価金属硫化物鉱物を含有する精鉱画分(concentrate fraction)144と、一般には約25%以上、より一般には約40%以上、さらにより一般には約50%超の廃石として除去されるべき硫化物鉱物を含有する廃石画分140とを形成する。浮選回路において、エアレーションおよびコンディショニングされた供給材料134は、一揃いの、または一連の浮選機において浮選される。前記浮選機はエアレーションされた浮選セルであってもよい。
【0048】
浮選は用途に応じて、1段以上の段階を含み得る。粗選(roughing)、清掃選(scavenging)および精選(cleaning)段階の数および構成は当業者には公知の基準に基づいて決定される。
【0049】
特定の供給材料に対する捕集剤120、起泡剤124、および他の試薬128の選択、並びにパルプ濃度、試薬の添加速度、試薬添加の順序、浮選中の空気添加の速度、Eh、および他の浮選条件およびパラメーターもまた当業者には周知である。
【0050】
1つのプロセス構成において、粉砕工程104、エアレーション工程112、コンディショニング工程116および浮選工程136は、酸または塩基によるpH調節を実質的に行わないか、または完全に行わないで(例えば、酸または塩基(例えば石灰、ソーダ灰、および/またはカセイソーダ)の添加を行わないで)実施される。換言すると、前記工程は自然pHで実施される。多くの鉱石および補給水については、自然pHは、約pH11以下のアルカリ性のpHであり、より典型的にはpH8.5未満のpHであり、より典型的にはpH8以下のpHであり、さらにより典型的には約pH3〜約pH8の範囲にわたるpHである。Ehは、典型的には約5mVより高く、約155mV未満であり、より典型的には約10〜約120mVにわたる。
【0051】
1つのプロセス構成において、粉砕工程104、エアレーション工程112、コンディショニング工程116および浮選工程136は、スラリー状供給材料に非酸化ガスを散布することによる溶存分子状酸素の低減を実質的に行わないか、または完全に行わないで実施される。非酸化ガスは、存在する場合には、酸化体含有量をほとんど有さず、完全にとまではいかなくても、主として、不活性ガス(例えば窒素およびアルゴン)、還元ガス(例えば二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エタン、および/またはプロパンのような二酸化硫黄以外の還元ガス)またはそれらの混合物である。1つのプロセス構成において、添加されるスルホキシ試薬118は、実質的に二酸化硫黄ガスを含まない。非酸化ガスによる散布を排除することによって、エアレーション前後のスラリー中において比較的高濃度の溶存分子状酸素が維持され得る。
【0052】
今度は別のプロセス構成について図2A〜図2Bを参照して検討する。この例では、有価金属硫化物鉱物は硫化銅であり、他の硫化物鉱物(または硫化物含有脈石鉱物)は黄鉄鉱、白鉄鉱、磁硫鉄鉱および硫砒鉄鉱のうちの1つ以上である。
【0053】
有価金属含有供給材料100は、工程104において粉砕されて、粉砕供給材料108を形成する。
粉砕供給材料108は、工程116においてコンディショニングされ、コンディショニングされた供給材料132を形成する。コンディショニング中に添加される試薬は捕集剤120、起泡剤124および他の試薬128である。スルホキシ試薬118は添加されない。
【0054】
コンディショニングされた供給材料132は、工程200において粗選浮選に供されて、粗選廃石(rougher tailings)204および粗選精鉱(rougher concentrate)208を形成する。大部分の有価金属硫化物鉱物は粗選精鉱208に残存しており、粗選廃石204は硫化物脈石鉱物の相当部分を含む。図2Aから分かるように、スルホキシ試薬118は粗選浮選前には添加されていない。
【0055】
工程228では、粗選精鉱および清掃選精鉱(scavenger concentrate)208,220はそれぞれ、合わせられて、パルプ濃度を調整され、閉鎖または開放粉砕回路において再粉砕されて、再粉砕精鉱232を形成する。認識されるように、精鉱画分208中の浮上硫化鉄鉱物は分離するのがより困難であり、効率的な単体分離を実現するためには、さらなる粉砕を必要とする。
【0056】
スルホキシ試薬118は、二次粉砕中に、かつエアレーションの後に、任意で添加され得る。粉砕機におけるスルホキシ試薬の添加は、新たな未酸化の硫化物鉱物表面上におけるスルホキシラジカルの即時の吸着を可能にすることができる。一構成において、さらなるスルホキシ試薬118は、前記プロセス中の他の任意の時点においてではなく、精選浮選の前に添加される。
【0057】
工程212において、粗選廃石204は、捕集剤120の添加によってさらにコンディショニングされ、工程216では、コンディショニングされた粗選廃石が清掃浮選(scavenger flotation)216に供されて、清掃選精鉱220および清掃選廃石224を生成する。より遅く浮上する硫化銅鉱物は、清掃浮選中に浮選される。清掃選精鉱220は粗選精鉱208と合わせられて、二次粉砕に供される。
【0058】
二次粉砕工程228に続いて、再粉砕された精鉱232は、工程112においてエアレーションを受けて、エアレーションされた精鉱236を形成する。
任意の工程114では、スルホキシ試薬118が添加されて処理された粗選精鉱238を形成する。
【0059】
工程116では、エアレーションまたは処理された粗選精鉱236が(必要に応じて)コンディショニングされて、コンディショニングされた精鉱240を形成する。コンディショニング中に添加される試薬は捕集剤120、起泡剤124および他の試薬128である。典型的には、エアレーション、スルホキシ試薬の添加、およびコンディショニングは、異なる槽で行われ、エアレーション後の溶存分子状酸素は、スルホキシ試薬の添加の前に、非酸化ガスの導入によって低減されていない。
【0060】
工程248では、コンディショニングされた精鉱240が精選浮選に供されて、精選廃石(cleaner tailings)252と、精選精鉱(cleaner concentrate)250とを形成する。コンディショニングされた精鉱240中の有価金属硫化物鉱物の大部分は精選精鉱250中に残存するが、精選廃石252はコンディショニングされた精鉱240中の有価硫化物鉱物の一部を含有する。精選廃石は相当量の脈石硫化物鉱物を含有する。
【0061】
任意の工程114では、前記精選廃石にスルホキシ試薬118が添加されて、処理された精選廃石262を形成する。
工程256では、精選廃石252または処理された精選廃石262(場合に応じて)が、捕集剤120の添加によってコンディショニングされて、コンディショニングされた精選廃石260を形成する。コンディショニングされた精選廃石260は、工程264において、精選清掃浮選(cleaner scavenger flotation)に供されて、精選清掃選廃石268および精選清掃選精鉱272を形成する。精選廃石252中の有価金属硫化物鉱物の大部分は、精選清掃選精鉱272中に残存しており、一方、精選清掃選廃石268は精選廃石252中の硫化物脈石鉱物の相当部分を含んでいる。精選清掃選精鉱272は二次粉砕工程228に戻される。
【0062】
精選精鉱250に戻ると、工程114において、スルホキシ試薬118が精選精鉱に任意で添加され、処理された精選精鉱252を形成する。
精選精鉱250または処理された精選精鉱252は、工程274において(適宜)コンディショニングされ、コンディショニングされた精選精鉱276を形成する。コンディショニング中、捕集剤120が添加される。
【0063】
コンディショニングされた精選精鉱276は、工程278において、第1再精選浮選(First Recleaner Flotation)に供されて、第1再精選廃石282および第1再精選精鉱280を形成する。第1再精選廃石282は二次粉砕工程228に戻される。
【0064】
任意の工程114では、第1再精選精鉱280にスルホキシ試薬118が添加されて、処理された再精選精鉱281を形成する。
第1再精選精鉱280または処理された再精選精鉱281は(場合に応じて)、工程284において、コンディショニングされて、コンディショニングされた第1再精選精鉱286を形成する。コンディショニングの間に、第1再精選精鉱280捕集剤120が添加される。
【0065】
工程288において、コンディショニングされた第1再精選精鉱286は第2再精選浮選288に供されて、有価金属含有供給材料100中の、好ましくは少なくとも大部分の、より好ましくは約70%以上の硫化物含有脈石鉱物を含有する第2再精選廃石290と、有価金属含有供給材料100中の、好ましくは少なくとも大部分の、好ましくは約70%以上の有価金属硫化物鉱物を含有する第2再精選精鉱292とを形成する。
【0066】
上記のプロセスにおいて、精選浮選、精選清掃選、並びに、第1および第2再精選浮選工程244,264,278,288は、それぞれ、自然pHおよび周囲温度において実施される。
【0067】
上記のプロセスにおいて、粗選浮選の下流で実施される1つ以上のスルホキシ試薬の添加工程に先行して、付加的なエアレーション工程を実施することが望ましいことがある。付加的なエアレーション工程が実施されるかは、さらなるスルホキシ試薬および捕集剤の添加前におけるスラリーの酸化電位に依存する。先のコンディショニング、エアレーション、および浮選工程は、様々なスラリー流に付加的な溶存分子状酸素を導入するであろう。
【0068】
認識されるように、供給材料の種類および鉱物学的特徴によって、他のプロセス構成が用いられてもよい。
実験
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を示すために提供され、添付された請求項に述べられるような、本発明に対する限定として解釈されるものではない。部およびパーセンテージはすべて別段の定めがない限り重量による。
【0069】
実施例1−従来の浮選法
この実施例は、様々な試薬が黄鉄鉱を抑制し、銅を選鉱するために用いられる場合、浮選パルプ中に用いられる水の組成が銅の回収率に対して有する影響を示す。表1に示すように、用いた塩水は、水道水よりも相当に高い全溶解固形物および導電率を有する。
【0070】
【表1】
図3は、この実施例において行なわれる動態試験の簡単な流れ図である。前記流れ図は、コンディショニングされた供給材料304を形成する粉砕された供給材料のコンディショニング300と、粗選廃石312および粗選精鉱316を形成するコンディショニングされた供給材料304の(5つの浮選機を用いた)粗選浮選308と、再粉砕粗選廃石324を形成する粗選精鉱316の二次粉砕320と、第1精選精鉱332および第1精選廃石336を形成する再粉砕粗選廃石324の第1精選浮選328と、第2精選精鉱1,2 348および第2精選廃石352を形成する第1精選精鉱332の第2精選浮選344と、精選清掃選精鉱356および精選清掃選廃石360を形成する第1精選廃石336の精選清掃浮選340とを含む。
【0071】
下記に述べる動態試験のための5つの粗選段階は、2つの水源、すなわち、水道水と、高度の全溶解固形物(TDS)を有する水(塩水)とを用いて、同様の方法で実施した。すべての試験は、粗選段階についてはP80212ミクロンに粉砕された鉱石、および精選清掃選についてはP8020〜25ミクロンに再粉砕された鉱石について実施された。試薬の添加以外は、前記試験は同一の条件を用いて行なった。
【0072】
硫化物抑制に対する様々な試薬添加の効果および関連する銅品位/回収率について調査した。用いた試薬は、試薬なし、石灰、石灰およびシアン化ナトリウム、並びに、石灰、シアン化物およびアミルキサントゲン酸カリウム(PAX)であった。
【0073】
すべての試験で用いた供給物(鉱石)材料の組成を表2に示す。初期の供給物パルプ濃度は34%であった。実験条件を下記で表3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
上記の図5および図6は、水道水および塩水のそれぞれについて、4つの試薬スキームに対する品位回収曲線を示している。試験した試薬スキームのすべてについて、低TDSの水道水に対する品位回収曲線は塩水で得られたそれよりも良好であった。石灰、シアン化物およびPAXを有する水道水は最良の品位回収曲線を有する。
【0076】
黄鉄鉱抑制のために用いられた従来の技術は、水道水と比較して、塩水中においては同様に機能しない。
実施例2−エアレーション/スルホキシ試薬法
精選浮選の第1段階の前に300g/t、および二次細砕中にさらに300g/tのメタ重亜硫酸塩(またはイオン)(MBS)(スルホキシ試薬)を添加したこと以外は、実施例1で用いたのと同様の浮選回路を用いて付加的な試験を行なった。換言すると、下記の表4に示すように、合計600g/tのMBSを浮選回路中に添加した。
【0077】
浮選回路は図4の流れ図に示されている。前記流れ図は、コンディショニングされた供給材料404を形成する粉砕された供給材料のコンディショニング400と、粗選精鉱画分および粗選廃石画分412,416をそれぞれ形成する(5つの浮選機または段階を用いた)粗選浮選408と、再粉砕粗選精鉱412を形成するスルホキシ試薬118の存在下における粗選精鉱412の二次粉砕420と、エアレーションされた再粉砕粗選精鉱428を形成する再粉砕粗選精鉱412の(0分間(エアレーションが実施されなかったことを意味する)または30分間にわたる)エアレーション112と、精選浮選432前におけるスルホキシ試薬118の添加と、精選精鉱1〜6および精選廃石436,440をそれぞれ形成するエアレーションされた再粉砕粗選精鉱428の精選浮選432とを含む。
【0078】
再度、同一の2種類の水、すなわち、水道水および高度のTDSを含む塩水(塩水)を用いた。すべての試験は、5つの粗選段階についてはP80212ミクロンに粉砕された供給(鉱石)材料、および精選清掃選についてはP8020〜25ミクロンに再粉砕された供給(鉱石)材料について実施された。試薬の添加以外は、前記試験は同一の条件を用いて行なった。初期の供給物パルプ濃度は約34%であり、供給物(鉱石)材料は実施例1において用いたそれと同一であった。実験条件を下記で表4に示す。前記試験は、二次粉砕工程、または二次細砕の後に、かつ精選浮選回路の前に、30分間のエアレーション工程を有するか、または有さないで行なった。硫化物抑制および銅品位/回収率に対するMBSの添加前におけるエアレーションの効果について調査した。参考として、石灰、シアン化物およびPAXによる品位回収曲線を示す。
【0079】
【表4】
図7〜図8の品位回収曲線から観察することができるように、MBSの使用は、双方の水の種類において銅品位回収曲線を向上させる。前記効果は、塩水中において最も顕著である。しかしながら、エアレーションが用いられて初めて、塩水において得られた品位回収率は水道水中で観察されたそれに近づき始める。エアレーション有り、および無しの銅品位回収率をより明らかに比較するグラフを図9に示す。塩水では、MBSの添加により、32%の同一の銅品位における銅回収率が50%から75%に向上する。
【0080】
実施例3−エアレーション/スルホキシ試薬法
半塩水現場の水(brackish site water)が用いられたこと以外は、実施例2に用いたのと同一の図4の浮選回路を用いて付加的な試験を行なった。現場水の分析は表5に示す。前記試験は、二次細砕の後に、かつ洗浄浮選回路の前に、30分間のエアレーション工程を有するか、または有さないで行なった。硫化物抑制および銅品位/回収率に対するMBSの添加後におけるエアレーションの効果について調査した。参考に、水道水による品位回収曲線を図10に示す。
【0081】
【表5】
実施例4−ロックドサイクル試験
異なる鉱石タイプおよび塩性水および緩衝された現場水を用いてロックドサイクル試験を実施し、スルホキシ試薬添加を用いて実施した浮選を、抑制剤としてシアン化物を用いてエアレーションおよびスルホキシ試薬の添加を行わないで実施された浮選と比較した。様々な鉱石は相当レベルの硫化鉄を含有する硫化銅鉱石であった。現場水を用いた実際のロッキングサイクル試験は、一般的に、オープン・クリーナ試験よりも有益な情報を提供すると見なされている。ロックドサイクル試験の概要を表6〜表7に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
表6、7は共に、メタ重亜硫酸アンモニウムの添加が後続するエアレーションを有する浮選が、硫化鉄抑制剤としてシアン化物を用いた浮選よりも著しく良好な結果をもたらしたことを示している。平均では、メタ重亜硫酸アンモニウム添加が後続するエアレーションを有して実施された浮選について、銅回収率は約6%高く、約3%高い銅精鉱品位を有した。
【0084】
本発明の多数の変化例および変更例を用いることができる。本発明の一部の特徴を、他を提供することなく、提供することが可能であろう。
例えば、前記スルホキシ試薬は、関連する鉱物学的特徴およびスラリー条件(例えばEhおよびpH)によって様々な作用モードを有する。前記スルホキシ試薬は、例えば、異なるスラリー条件下において同一の硫化物鉱物に対して抑制剤および/または活性剤として作用したり、または共通の一連の条件下において、ある硫化物鉱物に対しては抑制剤として作用し、かつ/または異なる硫化物鉱物に対しては活性剤として作用したりすることができる。例えば、前記スルホキシ試薬は、ある一連の条件下では、硫化銅、硫化鉛および硫化亜鉛の浮選を活性化し、かつ異なる一連の条件下では硫化銅のみ浮選を活性化し、硫化鉛および硫化亜鉛は活性化しない。別の実施例において、前記スルホキシ試薬は、硫化亜鉛の浮選を抑制するが、硫化鉛の浮選は抑制しない。
【0085】
他の実施例において、精鉱および廃石は、各々、様々な有価金属硫化物鉱物を含有し得る。廃石中の有価金属は、後続の浮選段階によって任意の脈石硫化物鉱物から後に分離され得る。本願で検討したプロセスに適用可能な卑金属混入硫化鉱(base metal mixed sulfide ore)の例は、銅−金(例えばカラベライト(AuTe2)またはシルバナイト(Au,Ag)Te2として)、銅−金−銀(例えば硫銀鉱(Ag2S)、シルバナイト(Au、Ag)Te2)、濃紅銀鉱(Ag3SbS3)およびプルースタイト(Ag3AsS3)として)、鉛(例えば方鉛鉱(PbS)、テルル鉛鉱(PbTe)、車骨鉱(PbCuSbS3)、毛鉱(Pb4FeSb6S14)および円柱錫鉱(Pb3Sn4FeSb2S14)として))−亜鉛(例えば閃亜鉛鉱(ZnS)として)−銅、銅−亜鉛および銅−モリブデンを含む。塊状硫化鉱は、例えば、通常、3つ以上の有価金属、並びに黄鉄鉱のような脈石硫化物鉱物を含有する。
【0086】
本発明は、様々な実施形態、構成、または態様において、本願において描写され記載された構成要素、方法、工程、システムおよび/または装置を、それらの様々な実施形態、構成、態様、副結合および部分集合を含めて、実質的に包含する。当業者は、本開示を理解した後に、本発明を製造し用いる方法を理解するであろう。本発明は、様々な実施形態、構成、および態様において、例えば、性能を向上するため、容易にするため、および/または実施費用を低減するために、従来の装置またはプロセスにおいて用いられてきたことがあるそのような品目が欠如していることを含めて、本願またはその様々な実施形態、構成、または態様において描写および/または記載されていない品目が欠如した装置およびプロセスを提供することを包含する。
【0087】
本発明の上記の検討は例証および説明のために示されている。上記は、本発明を本願において開示した形態に限定するものではない。前述の詳細な説明において、例えば、本発明の様々な特徴は、開示を簡素化する目的で、1つ以上の実施形態、構成、または態様にグレープ化されている。本発明の実施形態、構成、または態様の特徴は、上記で検討したもの以外の代替の実施形態、構成、または態様に組み合わせられてもよい。本開示のこの方法は、権利請求する発明が、各請求項において明白に述べているよりも多くの特徴を必要とするという意図を表すものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が表すように、本発明の態様が先に開示した単一の実施形態、構成、または態様のすべての特徴に存するわけではない。したがって、以下の特許請求の範囲は、これによりこの詳細な説明に援用され、各請求項は、本発明の別個の好ましい実施形態として独立している。
【0088】
さらに本発明の説明は、1つ以上の実施形態、構成、または態様および一定の別例および改変例の説明を含んでいるが、例えば、本開示を理解した後に当業者の技能および知識の範囲内にあり得るような、他の別例、組み合わせ、および改変例は、本発明の範囲内にある。権利請求されたものに対する、代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程を含む別の実施形態、構成、または態様を包含する権利を許される範囲内で得るように意図される。上記は、そのような代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程が本願に開示されているか否かに係わらない。また、いかなる特許可能な主題も公に供する意図はない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価金属硫化物鉱物として硫化銅鉱物および硫化モリブデン鉱物の少なくとも一方と、脈石硫化物鉱物として硫化鉄鉱物と、淡水、半塩水および塩水のうちの1つ以上とを含有する、スラリー状有価金属含有供給材料を準備し、
前記スラリー状有価金属含有供給材料を分子状酸素含有ガスによってエアレーションして、エアレーションされた供給材料を形成し、
その後、前記エアレーションされた供給材料をスルホキシ試薬と接触させて、処理された供給材料を形成し、
前記処理された供給材料を浮選して、前記エアレーションされた供給材料中の硫化銅鉱物および硫化モリブデン鉱物の少なくとも一方の少なくとも大部分を含有する精鉱と、前記エアレーションされた供給材料中の少なくとも約40%の硫化鉄鉱物を含有する廃石とを形成することを備えるプロセス。
【請求項2】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は緩衝化された水と塩性水の一方又は両方を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記浮選工程の前に、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、該スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量を低下させるために外部で生成された非酸化ガスと接触させられない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記有価金属含有供給材料には、少なくとも約50g/tのスルホキシ試薬が添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記浮選工程は精選浮選であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選の粗選精鉱であり、前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選前にスルホキシ試薬との接触を有さない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粗選精鉱は、前記浮選工程の前に二次粉砕に供され、前記処理された供給材料はpH8未満のpHを有し、前記スルホキシ試薬は、エアレーション後、二次粉砕中に、前記有価金属含有供給材料と接触させられる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記エアレーションされた供給材料は、その後の接触工程において、2ppm超の溶存分子状酸素含有量を有し、前記スルホキシ試薬は、アンモニウムの水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩のうちの1つ以上である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は、浮選前および浮選中に、実質的にpH調節を行われていない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水は、約0.01%以上の塩分、および少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物の少なくとも一方を有し、浮選は前記処理された供給材料の自然pHで実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
有価金属硫化物鉱物と、前記有価金属硫化物鉱物から分離されるべき第2硫化物鉱物とを含有するスラリー状有価金属含有供給材料を準備する工程であって、前記有価金属硫化物鉱物は硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方であり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、約0.01%以上の塩分または少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物の少なくとも一方を有する水を含有する、工程と、
前記スラリー状有価金属含有供給材料を分子状酸素含有ガスによってエアレーションして、エアレーションされた供給材料を形成する工程と、
前記スラリー状有価金属含有供給材料の少なくとも一部をスルホキシ試薬と接触させる工程と、
前記エアレーションされたスルホキシ試薬含有スラリーを浮選して、エアレーションされたスルホキシ試薬含有スラリー中の、少なくとも約40%の有価金属硫化物鉱物を含む精鉱と、少なくとも約40%の他の硫化物鉱物を含有する廃石とを形成する工程とを有するプロセス。
【請求項11】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、第2硫化物は硫化鉄鉱物であり、前記硫化鉄鉱物は、黄鉄鉱、白鉄鉱、硫砒鉄鉱および磁硫鉄鉱のうちの少なくとも1つであり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物を含有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記浮選工程の前に、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、該スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量を低下させるために、外部で生成された非酸化ガスと接触させられない、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記第2硫化物鉱物は銅およびモリブデン以外の有価金属を含み、前記エアレーションされた供給材料は、前記スラリー状有価金属含有供給材料の少なくとも一部であり、前記有価金属含有供給材料には、少なくとも約100g/tのスルホキシ試薬が添加される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記水は約0.01%以上の塩分を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は塩水および半塩水の少なくとも一方を含み、前記接触工程中の前記スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量は2ppm超である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は塩水および半塩水の少なくとも一方を含み、前記エアレーションされた材料の溶存分子状酸素含有量は少なくとも約5ppmである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項17】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記浮選工程は精選浮選であり、前記粉砕機は再粉砕回路にあり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選の粗選精鉱であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選前にスルホキシ試薬との接触を有さず、前記有価金属含有供給材料には200g/t超のスルホキシ試薬が添加される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項18】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記スルホキシ試薬は、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩のうちの1つ以上であり、前記有価金属含有供給材料には少なくとも50g/tのスルホキシ試薬が添加される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項19】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は、浮選の前および浮選の間に、実質的にpH調節を行われていない、請求項10に記載のプロセス。
【請求項20】
有価金属硫化物鉱物と、前記有価金属硫化物鉱物から分離されるべき第2硫化物鉱物とを含有するスラリー状有価金属含有供給材料を準備する工程であって、前記有価金属硫化物鉱物は硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方であり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は淡水、半塩水および塩水のうちの1つ以上を含有する、工程と、
前記スラリー状有価金属含有供給材料を分子状酸素含有ガスによってエアレーションして、エアレーションされた供給材料を形成する工程と、
前記エアレーションされた供給材料をスルホキシ試薬と接触させて、処理された供給材料を形成する工程と、
前記エアレーションされた供給材料を浮選して、少なくとも約40%の有価金属硫化物鉱物を含む精鉱と、少なくとも約40%の第2硫化物鉱物を含有する廃石とを形成する工程であって、前記有価金属硫化物および第2硫化物鉱物は、前記浮選工程の前にpH調整を実質的に行われていない、工程とを有するプロセス。
【請求項21】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記第2硫化物は硫化物含有脈石鉱物であり、前記硫化物含有脈石鉱物は、黄鉄鉱、白鉄鉱、硫砒鉄鉱および磁硫鉄鉱のうちの少なくとも1つであり、前記エアレーションされた供給材料はpH8.5未満のpHを有する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記有価金属硫化物および第2硫化物のpHは自然pHであり、前記浮選工程の前に、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、該スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量を低下させるために、外部で生成された非酸化ガスと接触させられておらず、前記エアレーションされた供給材料はpH8.5未満のpHを有する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項23】
前記水は塩水および半塩水の少なくとも一方であり、前記接触工程中の前記エアレーションされた供給材料の溶存分子状酸素含有量は2ppm超である、請求項20に記載のプロセス。
【請求項24】
前記水は塩水および半塩水の少なくとも一方を含み、前記エアレーションされた供給材料の溶存分子状酸素含有量は少なくとも約5ppmである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項25】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記浮選工程は精選浮選であり、前記スルホキシ試薬は、粉砕機内において前記供給材料から誘導された溶液に添加され、前記粉砕機は再粉砕回路にあり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選の粗選精鉱であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選前にスルホキシ試薬との接触を有さない、請求項20に記載のプロセス。
【請求項26】
前記スルホキシ試薬は、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩のうちの1つ以上であり、前記有価金属含有供給材料には100g/t超のスルホキシ試薬が添加される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項27】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は、浮選前および浮選中に、実質的にpH調節を行われていない、請求項20に記載のプロセス。
【請求項28】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記第2硫化物鉱物は銅およびモリブデン以外の有価金属を含み、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、約0.01%以上の塩分または少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物の少なくとも一方を有する水を含有する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項1】
有価金属硫化物鉱物として硫化銅鉱物および硫化モリブデン鉱物の少なくとも一方と、脈石硫化物鉱物として硫化鉄鉱物と、淡水、半塩水および塩水のうちの1つ以上とを含有する、スラリー状有価金属含有供給材料を準備し、
前記スラリー状有価金属含有供給材料を分子状酸素含有ガスによってエアレーションして、エアレーションされた供給材料を形成し、
その後、前記エアレーションされた供給材料をスルホキシ試薬と接触させて、処理された供給材料を形成し、
前記処理された供給材料を浮選して、前記エアレーションされた供給材料中の硫化銅鉱物および硫化モリブデン鉱物の少なくとも一方の少なくとも大部分を含有する精鉱と、前記エアレーションされた供給材料中の少なくとも約40%の硫化鉄鉱物を含有する廃石とを形成することを備えるプロセス。
【請求項2】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は緩衝化された水と塩性水の一方又は両方を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記浮選工程の前に、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、該スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量を低下させるために外部で生成された非酸化ガスと接触させられない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記有価金属含有供給材料には、少なくとも約50g/tのスルホキシ試薬が添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記浮選工程は精選浮選であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選の粗選精鉱であり、前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選前にスルホキシ試薬との接触を有さない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粗選精鉱は、前記浮選工程の前に二次粉砕に供され、前記処理された供給材料はpH8未満のpHを有し、前記スルホキシ試薬は、エアレーション後、二次粉砕中に、前記有価金属含有供給材料と接触させられる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記エアレーションされた供給材料は、その後の接触工程において、2ppm超の溶存分子状酸素含有量を有し、前記スルホキシ試薬は、アンモニウムの水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩のうちの1つ以上である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は、浮選前および浮選中に、実質的にpH調節を行われていない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水は、約0.01%以上の塩分、および少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物の少なくとも一方を有し、浮選は前記処理された供給材料の自然pHで実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
有価金属硫化物鉱物と、前記有価金属硫化物鉱物から分離されるべき第2硫化物鉱物とを含有するスラリー状有価金属含有供給材料を準備する工程であって、前記有価金属硫化物鉱物は硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方であり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、約0.01%以上の塩分または少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物の少なくとも一方を有する水を含有する、工程と、
前記スラリー状有価金属含有供給材料を分子状酸素含有ガスによってエアレーションして、エアレーションされた供給材料を形成する工程と、
前記スラリー状有価金属含有供給材料の少なくとも一部をスルホキシ試薬と接触させる工程と、
前記エアレーションされたスルホキシ試薬含有スラリーを浮選して、エアレーションされたスルホキシ試薬含有スラリー中の、少なくとも約40%の有価金属硫化物鉱物を含む精鉱と、少なくとも約40%の他の硫化物鉱物を含有する廃石とを形成する工程とを有するプロセス。
【請求項11】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、第2硫化物は硫化鉄鉱物であり、前記硫化鉄鉱物は、黄鉄鉱、白鉄鉱、硫砒鉄鉱および磁硫鉄鉱のうちの少なくとも1つであり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物を含有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記浮選工程の前に、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、該スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量を低下させるために、外部で生成された非酸化ガスと接触させられない、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記第2硫化物鉱物は銅およびモリブデン以外の有価金属を含み、前記エアレーションされた供給材料は、前記スラリー状有価金属含有供給材料の少なくとも一部であり、前記有価金属含有供給材料には、少なくとも約100g/tのスルホキシ試薬が添加される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記水は約0.01%以上の塩分を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は塩水および半塩水の少なくとも一方を含み、前記接触工程中の前記スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量は2ppm超である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は塩水および半塩水の少なくとも一方を含み、前記エアレーションされた材料の溶存分子状酸素含有量は少なくとも約5ppmである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項17】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記浮選工程は精選浮選であり、前記粉砕機は再粉砕回路にあり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選の粗選精鉱であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選前にスルホキシ試薬との接触を有さず、前記有価金属含有供給材料には200g/t超のスルホキシ試薬が添加される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項18】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記スルホキシ試薬は、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩のうちの1つ以上であり、前記有価金属含有供給材料には少なくとも50g/tのスルホキシ試薬が添加される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項19】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は、浮選の前および浮選の間に、実質的にpH調節を行われていない、請求項10に記載のプロセス。
【請求項20】
有価金属硫化物鉱物と、前記有価金属硫化物鉱物から分離されるべき第2硫化物鉱物とを含有するスラリー状有価金属含有供給材料を準備する工程であって、前記有価金属硫化物鉱物は硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方であり、前記スラリー状有価金属含有供給材料は淡水、半塩水および塩水のうちの1つ以上を含有する、工程と、
前記スラリー状有価金属含有供給材料を分子状酸素含有ガスによってエアレーションして、エアレーションされた供給材料を形成する工程と、
前記エアレーションされた供給材料をスルホキシ試薬と接触させて、処理された供給材料を形成する工程と、
前記エアレーションされた供給材料を浮選して、少なくとも約40%の有価金属硫化物鉱物を含む精鉱と、少なくとも約40%の第2硫化物鉱物を含有する廃石とを形成する工程であって、前記有価金属硫化物および第2硫化物鉱物は、前記浮選工程の前にpH調整を実質的に行われていない、工程とを有するプロセス。
【請求項21】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記第2硫化物は硫化物含有脈石鉱物であり、前記硫化物含有脈石鉱物は、黄鉄鉱、白鉄鉱、硫砒鉄鉱および磁硫鉄鉱のうちの少なくとも1つであり、前記エアレーションされた供給材料はpH8.5未満のpHを有する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記有価金属硫化物および第2硫化物のpHは自然pHであり、前記浮選工程の前に、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、該スラリー状有価金属含有供給材料の溶存分子状酸素含有量を低下させるために、外部で生成された非酸化ガスと接触させられておらず、前記エアレーションされた供給材料はpH8.5未満のpHを有する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項23】
前記水は塩水および半塩水の少なくとも一方であり、前記接触工程中の前記エアレーションされた供給材料の溶存分子状酸素含有量は2ppm超である、請求項20に記載のプロセス。
【請求項24】
前記水は塩水および半塩水の少なくとも一方を含み、前記エアレーションされた供給材料の溶存分子状酸素含有量は少なくとも約5ppmである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項25】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記浮選工程は精選浮選であり、前記スルホキシ試薬は、粉砕機内において前記供給材料から誘導された溶液に添加され、前記粉砕機は再粉砕回路にあり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選の粗選精鉱であり、前記有価金属含有供給材料は粗選浮選前にスルホキシ試薬との接触を有さない、請求項20に記載のプロセス。
【請求項26】
前記スルホキシ試薬は、アンモニウムの、水素の、アルカリのまたはアルカリ土類金属の、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩のうちの1つ以上であり、前記有価金属含有供給材料には100g/t超のスルホキシ試薬が添加される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項27】
前記スラリー状有価金属含有供給材料は、浮選前および浮選中に、実質的にpH調節を行われていない、請求項20に記載のプロセス。
【請求項28】
前記硫化銅および硫化モリブデンの少なくとも一方は硫化銅であり、前記第2硫化物鉱物は銅およびモリブデン以外の有価金属を含み、前記スラリー状有価金属含有供給材料は、約0.01%以上の塩分または少なくとも約10,000mg/Lの全溶解固形物の少なくとも一方を有する水を含有する、請求項20に記載のプロセス。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−513025(P2013−513025A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541598(P2012−541598)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003538
【国際公開番号】WO2011/067680
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(503215136)バリック・ゴールド・コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】BARRICK GOLD CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003538
【国際公開番号】WO2011/067680
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(503215136)バリック・ゴールド・コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】BARRICK GOLD CORPORATION
【Fターム(参考)】
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