説明

空気ばね

【課題】ダストカバーの抜けを抑制すると共に、ダストカバーとダイヤフラムとの干渉も抑制する。
【解決手段】被連結部20Bの外周の凹溝26に対応する位置で、ダイヤフラム40の一端部42の外側には、第1リング60が外挿されている。第1リング60は、環状とされ、外周に各々外径を異にする小径部62及び大径部64が構成されている。小径部62は、チャンバ室48側に配置され、外径が大径部64よりも小径とされている。小径部62は、第1リング60のチャンバ室48側端辺部の段部で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧を利用して入力荷重に対して弾性的な反力を発生させ、この反力により入力荷重を支持する空気ばねに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサスペンション等に用いられる空気ばねとしては、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1記載の空気ばねは、チャンバと、ピストンと、ダイヤフラムを備えている。ダイヤフラムは、略円筒状に形成されると共に中間部が内外反転状態とされ、一端部及び他端部がそれぞれチャンバ及びピストンに連結され、内部にチャンバ室が形成されている。
【0003】
上記の構成の空気ばねを車両に適用する場合、チャンバが車体側に固定されると共に、ピストンがサスペンションアームに連結固定され、車体とサスペンションアームとの間にダイヤフラムが揺動方向に沿って伸縮可能な状態で配置される。これにより、路面側からの荷重によりサスペンションアームが車体側(バウンド方向)へ揺動すると、ダイヤフラム内のチャンバ室内の空気が圧縮されて空気圧が上昇すると共に、この空気圧によりサスペンションアームを介して路面側から入力する荷重を支持する。このとき、チャンバ室内に充填する空気の圧力を調整することにより、中立位置にあるサスペンションアームの位置を調整することが可能になる。
【0004】
特許文献1に開示された空気ばねは、オゾン、酸素等の反応性ガスを含む大気や土砂、石等の異物からダイヤフラムを保護するために、ダストカバーを備えている。このダストカバーは、カシメリングによってチャンバに取り付けられたダイヤフラムの外側に、締結バンドによって取り付けられている。
【0005】
ところで、特許文献1の空気ばねにおいて、チャンバ室内の空気圧が上昇すると、ダイヤフラムの肩部(カシメリングの下側部分)が外側に膨らみ、ダストカバーとの干渉により、ダイヤフラムの耐久性が低下することも考えられる。
【特許文献1】特開2007−218310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、簡易な構成でダイヤフラムとダストカバーとの干渉を抑制することの可能な空気ばねを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る空気ばねは、互いに相対移動する第1移動体及び第2移動体の間に配置される空気ばねであって、前記第1移動体側に取り付けられるピストン部材と、前記第2移動体側に取り付けられるチャンバ部材と、前記ピストン部材よりも大径の筒状とされ、一端が前記チャンバ部材に外挿されると共に、他端が前記ピストン部材に外挿されて、内部にチャンバ室が構成されたダイヤフラムと、環状とされて前記チャンバ部材に外挿され、外周の前記ピストン部材側に、他部分よりも外径が小径とされた小径部が構成され、前記チャンバ部材との間で前記ダイヤフラムを挟持するリング部材と、筒状とされて、筒中に前記ダイヤフラムが配置され、一端部に前記チャンバ部材の外周側に固定される連結筒部が設けられ、この連結筒部の内周面に前記リング部材の前記小径部よりも前記ピストン部材と逆側部分が嵌め込まれる凹溝が構成され、前記ピストン部材及び前記チャンバ部材の相対移動方向に沿って伸縮可能とされたダストカバーと、を備えている。
【0008】
本発明の空気ばねは、ダイヤフラムを筒中に配置してダイヤフラムを覆うダストカバーを備えている。ダストカバーの一端部には、チャンバ部材の外周側に固定される連結筒部が設けられており、連結筒部の内周面には、凹溝が構成されている。
【0009】
一方、ダイヤフラムは、リング部材によってチャンバ部材に固定されており、リング部材の外周には、小径部が構成されている。そして、リング部材の小径部よりもピストン部材と逆側部分が凹溝に嵌め込まれる。このように嵌め込まれることにより、リング部材とダイヤフラムとが係合され、ダイヤフラムが外れにくくなっている。
【0010】
このように、リング部材に小径部を構成することにより、凹溝よりもピストン部材側において、ダイヤフラムとダストカバーとの干渉を抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る空気ばねは、前記小径部が、前記ピストン部材側の端辺部の段部で構成されていること、を特徴としている。
【0012】
このように、リング部材の端辺部を切り欠くことにより、容易に小径部を構成することができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る空気ばねは、前記ダストカバーに、前記凹溝よりも前記ピストン部材側から、径方向外側に広がる拡径部が構成されていること、を特徴としている。
【0014】
このように、拡径部を構成することにより、ダストカバーとダイヤフラムとの干渉を、効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明の請求項4に係る空気ばねは、前記連結筒部の外周側に巻き付けられて、前記連結筒部を前記チャンバ部材の外周面上へ締付け固定する結束バンド、を有することを特徴としている。
【0016】
このように、結束バンドを用いて、ダストカバーをチャンバ部材に固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明に係る空気ばねによれば、ダイヤフラムとダストカバーとの干渉を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る空気ばねについて図面を参照して説明する。
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係る空気ばねが適用されたサスペンションが模式的に示されている。本実施形態の空気ばねは、第1移動体としての車体と第2移動体としてのサスペンションアームとの間に配置されるものである。図1は空気ばねに内圧が充填されている状態である。
【0020】
図1に示されるように、サスペンション12は、全体としてドラム状に形成された空気ばね10及び梁状に形成されたサスペンションアーム14を備えている。サスペンションアーム14には、その長手方向に沿った基端部及び先端部にそれぞれ円筒状のブッシュホルダ16、18が配置されている。図1では、サスペンションアーム14は、中立位置に配置されている。
【0021】
サスペンションアーム14は、基端側のブッシュホルダ16がゴムブッシュ(図示省略)を介して車体15側に揺動可能に連結され、先端側のブッシュホルダ18は、ゴムブッシュを介してホイールハブ(図示省略)側に回転可能に連結される。これにより、サスペンションアーム14は、基端側のブッシュホルダ16を中心として車体15により上下方向に沿って揺動可能に支持される。
【0022】
空気ばね10は、チャンバ部材20、ピストン部材30、ダイヤフラム40及び、ダストカバー50を備えている。
【0023】
ピストン部材30は、サスペンションアーム14側に取り付けられ、チャンバ部材20は、車体15側に取り付けられている。チャンバ部材20は、車体15側のピストン部材30に対向する位置に固定されている。これにより、空気ばね10は、サスペンションアーム14と車体15との間に介装される。
【0024】
チャンバ部材20の頂板部には圧力配管19の一端部が接続されている。圧力配管19は、その他端部が車体15側に搭載されたエアポンプ、アキュームレータ等の圧縮空気の供給源(図示省略)に接続されており、圧縮空気の供給源を後述するチャンバ室48内へ連通させている。圧力空気の供給源は、圧力配管19を通して車両の走行状況や積載荷重に応じた空気圧を有する圧縮空気をチャンバ室48内へ供給する。
【0025】
ピストン部材30は、有底略円筒状に形成され、その上端部に下端側に対して内外径が縮径された円筒状の被連結部32が一体的に形成されている。サスペンションアーム14上には、マウント部材13が取り付けられており、このマウント部材13を介して、ピストン部材30は、底板下面側でサスペンションアーム14に固定されている。
【0026】
チャンバ部材20は、有底円筒状とされ底部20Aが上面になるようにして車体15に固定されている。チャンバ部材20には、底部20Aの外周端部から下方へ突出するように円筒状の被連結部20Bが屈曲形成されている。
【0027】
被連結部20Bの外周面には、図2に示されるように、凹溝26が構成されている。凹溝26は、各々異なる深さの溝を構成する第1外径部22及び第2外径部24で構成されている。
【0028】
ダイヤフラム40は、弾性膜で構成され、ピストン部材30よりも大径の薄肉円筒状とされている。ダイヤフラム40は、一端部42がチャンバ部材20の被連結部20Bに連結され、他端部44がピストン部材30の被連結部32に連結されている。ダイヤフラム40は、ゴム膜等の弾性変形可能な材料で構成することができる。ダイヤフラム40は、一端部42が他端部44よりも大径とされ、他端部44側がダイヤフラム40の筒内へ入るように折り返されており、内周面と外周面とが反転されている。ダイヤフラム40の一端部42は、チャンバ部材20の被連結部20Bに外挿されている。
【0029】
被連結部20Bの外周の凹溝26に対応する位置で、ダイヤフラム40の一端部42の外側には、第1リング60が外挿されている。
【0030】
第1リング60は、環状とされ、外周に各々外径を異にする小径部62及び大径部64が構成されている。小径部62は、チャンバ室48側に配置され、外径が大径部64よりも小径とされている。小径部62は、第1リング60のチャンバ室48側端辺部の段部で構成されている。
【0031】
第1リング60は、チャンバ部材20の凹溝26に対応する位置に配置され、ダイヤフラム40の一端部42を凹溝26においてチャンバ部材20との間で挟持するようにかしめ締結されている。これにより、チャンバ部材20とダイヤフラム40の一端部42とは気密状態となるように連結されている。
【0032】
ダイヤフラム40の他端部44は、ピストン部材30の被連結部32の外周を覆うように被連結部32に外挿されている。他端部44の外周側には、第2リング66が外挿され、ダイヤフラム40の他端部44をピストン部材30との間で挟持するようにかしめ締結されている。これにより、ピストン部材30とダイヤフラム40の他端部44とは気密状態となるように連結されている。
【0033】
上記のようにダイヤフラム40をチャンバ部材20及びピストン部材30に連結することにより、ダイヤフラム40の筒内には、気密状態とされた略円柱状のチャンバ室48が構成される。チャンバ室48内へは、圧力配管19を通して車両の走行状況や積載荷重に応じた空気圧を有する圧縮空気が供給される。
【0034】
ダストカバー50は、略円筒状に形成され、筒内にダイヤフラム40が収納されている。ダストカバー50の一端部には、チャンバ部材20に連結される連結筒部52が一体的に形成されている。連結筒部52の内周面には、第1リング60の大径部64を嵌め込み可能な凹溝52Aが構成されている。凹溝52Aに対応する連結筒部52の外周側は、凸状とされている。凹溝52Aには、大径部64が嵌め込まれている。
【0035】
連結筒部52の凹溝52A以外の部分の内径は、第1リング60の小径部62の外径と略同径とされている。ダストカバー50には、連結筒部52の凹溝52Aよりも下側、すなわち、ピストン部材30側から、径方向外側に広がる拡径部54が一体的に構成されている。ダストカバー50には、拡径部54の下端部から下方へ延出する円筒状の蛇腹部56が一体的に設けられている。蛇腹部56は、略一定ピッチで内周側及び外周側へ交互に屈曲された蛇腹形状とされており、サスペンションアーム14の揺動方向に沿って伸縮可能とされている。蛇腹部56の内径は、ダイヤフラム40の外径よりも大きいものとされている。
【0036】
ここで、ダストカバー50は、例えば、比較的柔軟性に富んだ樹脂材料であるポリオレフィンエラストマーを素材として、ブローモールディング成形(ブロー成形)されている。なお、ダストカバー50の成形素材は、ポリオレフィンエラストマー以外であっても柔軟性に富み、かつブロー成形可能なものならば他の樹脂材料、ゴム組成物等も使用可能である。
【0037】
ダストカバー50の一端部は、結束バンド66によって、凹溝52Aに対応する位置の外周側から締め付け固定されている。
【0038】
ダストカバー50の他端部には、アーム連結筒部58が一体的に形成されている。サスペンションアーム14のピストン部材30が配置されている外側には、円筒状のブラケット金具17が取り付けられており。アーム連結筒部58は、ブラケット金具17の外周側に嵌挿されている。ダストカバー50の他端部は、結束バンド68によって、ブラケット金具17に対応する位置の外周側から締め付け固定されている。
【0039】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る空気ばね10の作用について説明する。
【0040】
空気ばね10は、車体15とサスペンションアーム14との間に介装されることにより、サスペンションアーム14に対してチャンバ室48内の空気圧に対応するばね反力を作用させる。そして、このばね反力により、路面側からサスペンションアーム14に入力される荷重を支持する。すなわち、図3に示すように、路面側からの荷重によりサスペンションアーム14が車体側(バウンド方向X)へ揺動すると、ピストン部材30によりチャンバ室48内の空気が圧縮されて空気圧が上昇し、この空気圧によりサスペンションアーム14を介して路面側から入力する荷重が支持される。
【0041】
このように動作する本実施形態の空気ばね10においては、ダストカバー50の連結筒部52に構成された凹溝52Aに、第1リング60の大径部64が嵌め込まれているので、ダストカバー50の筒軸方向の抜けが抑制される。
【0042】
また、第1リング60の小径部62に連結筒部52の凹溝52Aよりも下側内周面が当接されているので、小径部62が構成されていない場合と比較して、ダイヤフラム40とダストカバー50との干渉を抑制することができる。特に、チャンバ室48内の空気圧が高くなると、ダイヤフラム40の肩部K(第1リング60に挟持された一端部42の下方側)は径方向外側へ押されて膨出する。この場合でも、本実施形態によれば、拡径部54によってダイヤフラム40が径方向に拡径されているので、有効にダイヤフラム40とダストカバー50との干渉を抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、第1リング60の小径部62が、第1リング60の端辺部の段部で構成された例について説明したが、図4に示すように、小径部を凹部63として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る空気ばねが適用されたサスペンションの構成を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空気ばねのチャンバ部材とダイヤフラムの取付部分の拡大断面図である。
【図3】サスペンションアームがバウンド方向へ揺動された時の、本発明の実施形態に係る空気ばねの側断面図である。
【図4】本実施形態に係る空気ばねの変形例のチャンバ部材とダイヤフラムの取付部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0045】
14 サスペンションアーム
15 車体
20 チャンバ部材
20A 底部
20B 被連結部
30 ピストン部材
32 被連結部
40 ダイヤフラム
42 一端部
44 他端部
48 チャンバ室
50 ダストカバー
52A 凹溝
52 連結筒部
54 拡径部
56 蛇腹部
60 第1リング
62 小径部
63 凹部
64 大径部
66 結束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対移動する第1移動体及び第2移動体の間に配置される空気ばねであって、
前記第1移動体側に取り付けられるピストン部材と、
前記第2移動体側に取り付けられるチャンバ部材と、
前記ピストン部材よりも大径の筒状とされ、一端が前記チャンバ部材に外挿されると共に、他端が前記ピストン部材に外挿されて、内部にチャンバ室が構成されたダイヤフラムと、
環状とされて前記チャンバ部材に外挿され、外周の前記ピストン部材側に、他部分よりも外径が小径とされた小径部が構成され、前記チャンバ部材との間で前記ダイヤフラムを挟持するリング部材と、
筒状とされて、筒中に前記ダイヤフラムが配置され、一端部に前記チャンバ部材の外周側に固定される連結筒部が設けられ、この連結筒部の内周面に前記リング部材の前記小径部よりも前記ピストン部材と逆側部分が嵌め込まれる凹溝が構成され、前記ピストン部材及び前記チャンバ部材の相対移動方向に沿って伸縮可能とされたダストカバーと、
を備えた空気ばね。
【請求項2】
前記小径部は、前記ピストン部材側の端辺部の段部で構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の空気ばね。
【請求項3】
前記ダストカバーには、前記凹溝よりも前記ピストン部材側から、径方向外側に広がる拡径部が構成されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気ばね。
【請求項4】
前記連結筒部の外周側に巻き付けられて、前記連結筒部を前記チャンバ部材の外周面上へ締付け固定する結束バンド、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気ばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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