説明

空気二次電池用正極触媒及びそれを用いた空気二次電池

【課題】酸素の還元活性と、水の酸化活性と、の両方に優れた空気二次電池用正極触媒を提供する。
【解決手段】1つの中心金属と、前記中心金属に配位結合する配位子と、を有する単核金属錯体を用いてなり、前記配位子が、下記(a)及び(b)の要件を満たす芳香族化合物である空気二次電池用正極触媒。
(a)前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造を、分子内に1つ以上有する(前記構造を2つ以上有する場合、該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
(b)前記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが含窒素複素六員環に含まれる窒素原子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気二次電池用正極触媒及びそれを用いた空気二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の酸素を活物質として使用する空気電池は、従来のリチウムイオン電池等、正極及び負極の活物質に固体(金属、グラファイト等)を用いる電池と比べ、エネルギー密度を高めることが可能である。そのため、電気自動車等の種々の用途への応用が期待されている。
【0003】
空気電池は、酸素還元能を有する正極触媒と、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素等を活物質とする負極活物質とを使用する電池である。
【0004】
このような空気電池の正極触媒として、二酸化マンガンを使用可能であることが開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Power Sources、Volume 91, 2000, P.83-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、充電することにより電気を蓄え、繰り返し使用することができる電池(二次電池、充電式電池、蓄電池)が知られており、上述の空気電池のような、空気中の酸素を活物質として使用する電池においても開発が進められている。以下の説明においては、空気中の酸素を活物質として使用し、充電及び放電が繰り返し可能な電池を、上述した空気電池と区別するために「空気二次電池」と称する。
【0007】
空気二次電池の正極触媒には、放電のみを行う空気電池(一次電池)の正極触媒に求められる酸素の還元活性に加え、充電時に水の酸化活性が求められる。この観点から従来の空気電池の正極触媒を見ると、上述の二酸化マンガンは、酸素の還元活性を有するが、水の酸化活性が低い。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、酸素の還元活性と、水の酸化活性と、の両方に優れた空気二次電池用正極触媒を提供することを目的とする。また、このような空気二次電池用正極触媒を用いた空気二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の空気二次電池用正極触媒は、1つの中心金属と、前記中心金属に配位結合する配位子と、を有する単核金属錯体を用いてなり、前記配位子が、下記(a)及び(b)の要件を満たす芳香族化合物である。
(a)前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造を、分子内に1つ以上有する(前記構造を2つ以上有する場合、該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
(b)前記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが含窒素複素六員環に含まれる窒素原子である。
【0011】
本発明においては、前記構造は、該構造を構成する窒素原子の数nと、前記空間の中心から該構造を構成する各窒素原子の中心までの平均距離r(Å)とが、下記式(A)で示される要件を満たすことが好ましい。
0<r/n≦0.7 …(A)
【0012】
更に本発明においては、前記窒素原子の数nと前記平均距離rとが、下記式(B)で示される要件を満たすことが好ましい。
0.4≦r/n≦0.6 …(B)
【0013】
本発明においては、前記構造は、該構造を構成する窒素原子の数nが4以上6以下であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、前記配位子を構成する全炭素原子の質量Wと、前記配位子を構成する全窒素原子の質量Wとが、下記式(C)で示される要件を満たすことが好ましい。
0<W/W≦1.1 …(C)
【0015】
本発明においては、中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造が、下記一般式(1)で表される芳香族化合物であることが好ましい。
【化1】

(式中、
mは1以上の整数である。
1a、Q1b及びQ1cは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、前記配位可能な4つ以上の窒素原子をそれぞれ含む。Q1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。但し、Q1a、Q1b及びQ1cのうち少なくとも1つは、含窒素芳香族複素六員環である。
1a及びZ1bは、それぞれ独立に、直接結合又は連結基であり、Z1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
1a及びQ1b、並びに、Q1b及びQ1cは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。
mが2以上の整数であり、かつ、Z1bが直接結合である場合、隣り合う2つのQ1bは、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q1a及びQ1cは直接結合して、又は、連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。)
【0016】
本発明においては、前記一般式(1)において、mが2又は4であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、前記Q1a、Q1b及びQ1cが、それぞれ独立にピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、及び、これらの環構造を有する多環式芳香族複素環からなる群から選ばれる環(当該環は置換基を有していてもよい。)であることが好ましい。
【0018】
本発明においては、2つの含窒素芳香族複素環であるQ1aとQ1b又は2つの含窒素芳香族複素環であるQ1bとQ1cと、該2つの含窒素芳香族複素環を互いに結合する直接結合又は連結基と、からなる有機基が、下記一般式(4−a)、(4−b)、(4−c)、(5−a)、(5−b)、(5−c)、(5−d)、(6−a)、(6−b)、(6−c)及び(6−d)(以下、「一般式(4−a)〜(6−d)」と表記する。)のいずれかで表される2価の有機基であることが好ましい。
【化2】

(式中、
Xは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−又は−Se−である。
Yは、−N(H)−又は=N−である。
4b、R4c、R5b、R5c、R5d、R6b、R6c、R6d、Rα及びRβは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、隣り合う置換基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
複数あるX、Y、R4b、R4c、R5b、R5c、R6b及びR6cは、各々、同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
本発明においては、2つの含窒素芳香族複素環であるQ1aとQ1b又は2つの含窒素芳香族複素環であるQ1bとQ1cと、該2つの含窒素芳香族複素環を互いに結合する直接結合又は連結基と、からなる有機基が、下記一般式(7−a)、(7−b)、(7−c)、(7−d)、(7−e)、(8−a)、(8−b)、(8−c)、(8−d)、(8−e)、(9−a)、(9−b)、(9−c)、(9−d)、(9−e)、(10−a)、(10−b)、(10−c)、(10−d)及び(10−e)(以下、「一般式(7−a)〜(10−e)」と表記する。)のいずれかで表される2価の有機基であることが好ましい。
【化3】

(式中、
7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、R10a、R10b、R10c、R10d及びR10e(以下、「R7a〜R10e」と表記する。)は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、隣り合う置換基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
複数あるR7a〜R10eは、各々、同一でも異なっていてもよい。)
【0020】
本発明においては、前記配位子は、前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造を、分子内に1つ有する芳香族化合物であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記中心金属が、周期表の第4周期から第6周期に属する遷移金属原子又はそのイオンであることが好ましい。
【0022】
本発明においては、前記単核金属錯体を、300℃以上1200℃以下の温度で加熱して得られる変性物を形成材料としてもよい。
【0023】
本発明においては、前記単核金属錯体と、カーボンと、を含む組成物を形成材料とすることもできる。
【0024】
本発明においては、前記組成物を、300℃以上1200℃以下の温度で加熱して得られる変性物を形成材料としてもよい。
【0025】
本発明の空気二次電池は、上述の空気二次電池用正極触媒を正極触媒層に含み、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素、及びこれらのイオンからなる群から選ばれる少なくとも1つを負極活物質とする。亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム及び水素からなる群から選ばれる少なくとも1つを負極活物質とするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の空気二次電池用正極触媒は、酸素の還元活性と水の酸化活性との両方に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の空気二次電池の一例に係る概略構成図である。
【図2】実施例の充放電サイクル試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態について、詳細に説明する。
【0029】
[空気二次電池用正極触媒]
本実施形態の空気二次電池用正極触媒は、1つの中心金属と、前記中心金属に配位結合する配位子と、を有する単核金属錯体を用いてなる。以下、本実施形態の単核金属錯体に用いられる配位子について説明した後に、当該配位子が中心金属に配位結合してなる単核金属錯体について説明する。
【0030】
<配位子>
本実施形態の単核金属錯体に用いられる配位子は、まず、下記(a)の要件を満たす芳香族化合物である。
(a)前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造を、分子内に1つ以上有する(前記構造を2つ以上有する場合、該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
【0031】
前記空間を囲む前記中心金属に配位可能な原子は、4〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。前記構造は分子内に、1〜3であることが好ましく、1又は2がより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0032】
要件(a)における「中心金属に配位可能」な窒素原子とは、1つの孤立電子対を有しており、中心金属(金属原子又は金属イオン)と配位結合を形成することができる窒素原子である。金属原子又は金属イオンへ配位する前の窒素原子は、孤立電子対をプロトンへ供与してN−H結合を形成していてもよい。
【0033】
中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子は、分子内に中心金属を収容可能とすることができる空間を形成している。このような空間に隣接し、当該空間の外縁を形成する分子構造が、要件(a)における「前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造」である。本実施形態の単核金属錯体に用いられる配位子は、分子内に当該構造を1つ以上有している。
【0034】
このような構造は、当該構造を含む化合物を配位子とする単核金属錯体を形成した後、再結晶等の通常知られた方法により得られた結晶についてX線結晶構造解析等の構造解析を行うことで確認することができる。
【0035】
更に、本実施形態の単核金属錯体に用いられる配位子は、下記(b)の要件を満たす芳香族化合物である。
(b)前記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが含窒素複素六員環に含まれる窒素原子である。
【0036】
含窒素複素六員環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環が例示され、好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環である。
【0037】
触媒活性をより向上させることができるので、配位子の分子内に含まれる全ての含窒素芳香族複素六員環には、ヘテロ原子としての窒素原子が1個又は2個のみ含まれることが好ましい。
【0038】
また、単核金属錯体に用いられる配位子は、中心金属を収容する空間が形成された「構造」が、線対称、点対称、回転対称のいずれかの対称性を有することが好ましい。ここでいう対称性とは、上述した「中心金属が収容される空間の外縁を形成する分子構造」にのみ着目した場合の対称性であり、当該分子構造を構成する芳香環等の置換基については考慮しないものとする。また、構造の対称性は、構造を形成する窒素原子から、当該窒素原子に結合する水素原子(プロトン)が脱離した分子構造について検討するものとする。
【0039】
「構造」が回転対称性を有する場合、2回対称(C対称)以上であり、好ましくは2〜12回対称であり、より好ましくは2〜6回対称である。
【0040】
このような対称性を有する構造を分子内に1つ有する芳香族化合物(配位子)として、下記一般式(a)〜(w)で表される化合物が例示できる。本実施形態の単核金属錯体に含まれる配位子は、このような構造を分子内に1つ以上有する。
【0041】
【化4】

(式中のTは、−C(H)=又は−N=を示す)
【0042】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物において、芳香族化合物を構成する全炭素原子の質量Wに対する全窒素原子の質量Wの比(W/W)が、0より大きく1.1以下である(0<W/W≦1.1)と好ましい。W/Wの値は、より好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.07以上である。また、より好ましくは0.5以下であり、更に好ましくは0.2以下である。
【0043】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物において、各々の上記構造を構成する窒素原子の数nと、各々の上記構造において、構造が形成する空間の中心から各窒素原子の中心までの平均距離r(Å)との関係は、r/nの値が0より大きく0.7以下である(0<r/n≦0.7)と好ましい。r/nの値は、より好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.4以上である。また、より好ましくは0.65以下であり、更に好ましくは0.6以下である。
【0044】
配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間の中心は、以下のように定義される。
即ち、上記構造が線対称性を有する場合、上記中心は、対称軸上にあり、各窒素原子からの平均距離が最も短くなる点である。
上記構造が点対称性を有する場合、上記中心は対称点である。
上記構造が回転対称性を有する場合、上記中心は、回転対称軸上にあり、各窒素原子の中心からの平均距離が最も短くなる点である。
【0045】
上記nは、好ましくは4〜10であり、より好ましくは4〜8であり、特に好ましくは4〜6であり、とりわけ好ましくは4である。
【0046】
上記rの下限値は、好ましくは1.5Åであり、より好ましくは1.7Åであり、更に好ましくは1.9Åであり、上限値は、好ましくは3.5Åであり、より好ましくは3.3Åであり、更に好ましくは3.1Åである。
【0047】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、より触媒活性を向上させることができるので、多環式芳香族複素環を有することが好ましい。
【0048】
以下、本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物について、分子構造を示しながら説明する。
【0049】
本実施形態において、中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造が、下記一般式(1)で表されることが好ましい。前記空間を囲む前記中心金属に配位可能な窒素原子は、4〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。
【0050】
【化5】

(式中、
mは1以上の整数である。
1a、Q1b及びQ1cは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、前記配位可能な4つ以上の窒素原子をそれぞれ含む。Q1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。但し、Q1a、Q1b及びQ1cのうち少なくとも1つは、含窒素芳香族複素六員環である。
1a及びZ1bは、それぞれ独立に、直接結合又は連結基であり、Z1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
1a及びQ1b、並びに、Q1b及びQ1cは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。mが2以上の整数であり、かつ、Z1bが直接結合である場合、隣り合う2つのQ1bは、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q1a及びQ1cは直接結合して、又は、連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。)
【0051】
一般式(1)中のmは、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは2〜4の整数であり、更に好ましくは2又は4である。
【0052】
一般式(1)におけるQ1a、Q1b及びQ1cは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、及び、これらの環を有する多環式芳香族複素環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、及び、これらの環を有する多環式芳香族複素環であり、特に好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、及び、これらの環構造を有する多環式芳香複素環である。
【0053】
1a及びZ1bは、それぞれ独立に、直接結合又は連結基である。直接結合は、単結合又は二重結合である。連結基は、例えば、2価又は3価の連結基である。Z1a及びZ1bは、単結合、二重結合、及び−C(Rγ−、=C(Rδ)−、=N(Rε)−又は=N−で表される連結基(下記一般式(B−1−a)〜(B−1−d)で表される連結基)であると好ましく、単結合、二重結合、−C(Rγ−又は=C(Rδ)−で表される連結基であると特に好ましい。
【0054】
【化6】

(式中、Rγ、Rδ及びRεは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。置換基が複数ある場合、隣接する置換基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。)
【0055】
上記置換基としては、例えば、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、ホスホン酸基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシリル基、炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜50の環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数7〜50のアラルキル基、1価の複素環基が挙げられ、好ましくは、ハロゲノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜20の環状のアルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、1価の複素環基である。なお、本明細書における置換基は、特記しない限り、上記と同様の基を示す。
【0056】
上記ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
【0057】
上記炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基が挙げられる。
【0058】
上記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基が挙げられる。
【0059】
上記環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0060】
上記アルケニル基としては、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基において、いずれか1つの炭素原子間の単結合(C−C)が、二重結合に置換されたものが例示でき、二重結合の位置は限定されない。上記アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等が好ましい。
【0061】
上記アルキニル基としては、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基において、いずれか1つの炭素原子間の単結合(C−C)が、三重結合に置換されたものが例示でき、三重結合の位置は限定されない。前記アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基が好ましく、エチニル基がより好ましい。
【0062】
上記アルコキシ基としては、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は前記環状のアルキル基が酸素原子に結合した1価の基が例示できる。上記アルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が酸素原子に結合した1価の基が好ましい。
【0063】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−テトラセニル基、2−テトラセニル基、5−テトラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、1−ビフェニレニル基、2−ビフェニレニル基、2−フェナンスレニル基、9−フェナンスレニル基、6−クリセニル基、1−コロネニル基が挙げられる。前記アリール基における水素原子は、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、ホスホン酸基、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、上記アルコキシ基、上記アリール基、上記アラルキル基等で置換されていてもよい。
【0064】
上記1価の複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基が挙げられる。なお、1価の複素環基とは、複素環式化合物から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団を意味する。1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0065】
上記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニル−1−プロピル基が挙げられる。
【0066】
上記Rγ、Rδ及びRεで表される置換基は互いに結合して、又は当該置換基の結合する炭素原子若しくは窒素原子における他の結合と一緒になって環を形成してもよい。ここで、環としては、例えば、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環が挙げられる。これらの環を構成する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよく、また、それら置換基同士が結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに更に環を形成してもよい。
【0067】
本実施形態の中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造が、上述したように、上記一般式(1)においてmが2又は4である芳香族化合物、即ち、下記一般式(2)(一般式(1)においてm=2)、又は一般式(3)(一般式(1)においてm=4)で表される芳香族化合物であると、好ましい。
【0068】
【化7】

(式中、
2a、Q2b、Q2c及びQ2dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、前記配位可能な4つ以上の窒素原子をそれぞれ含む。但し、Q2a、Q2b、Q2c及びQ2dのうち少なくとも1つは、含窒素芳香族複素六員環である。
2a、Z2b及びZ2cは、それぞれ独立に、直接結合又は連結基である。
2a及びQ2b、Q2b及びQ2c、並びに、Q2c及びQ2dは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q2a及びQ2dは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。)
【0069】
【化8】

(式中、
3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、前記配位可能な4つ以上の窒素原子をそれぞれ含む。但し、Q3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fのうち少なくとも1つは、含窒素芳香族複素六員環である。
3a、Z3b、Z3c、Z3d及びZ3eは、それぞれ独立に、直接結合又は連結基である。
3a及びQ3b、Q3b及びQ3c、Q3c及びQ3d、Q3d及びQ3e、並びに、Q3e及びQ3fは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q3a及びQ3fは直接結合又は連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。)
【0070】
一般式(2)のQ2aは、一般式(1)のQ1aに対応し、一般式(2)のQ2b及びQ2cは、一般式(1)のQ1bに対応し、一般式(2)のQ2dは、一般式(1)のQ1cに対応する。また、一般式(2)のZ2aは、一般式(1)のZ1aに対応し、一般式(2)のZ2b及びZ2cは、一般式(1)のZ1bに対応する。
【0071】
同様に、一般式(3)のQ3aは、一般式(1)のQ1aに対応し、一般式(3)のQ3b〜Q3eは、一般式(1)のQ1bに対応し、一般式(3)のQ3fは、一般式(1)のQ1cに対応する。また、一般式(3)のZ3aは、一般式(1)のZ1aに対応し、一般式(3)のZ3b〜Z3eは、一般式(1)のZ1bに対応する。
【0072】
一般式(2)のQ2a、Q2b、Q2c及びQ2d、並びに一般式(3)のQ3a、Q3b、Q3c、Q3d、Q3e及びQ3fは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族環であり、好ましい例は、上述の一般式(1)のQ1a、Q1b及びQ1cと同じである。
【0073】
2つの含窒素芳香族複素環であるQ1aとQ1b、2つの含窒素芳香族複素環であるQ1bとQ1c、2つの含窒素芳香族複素環であるQ2aとQ2b、2つの含窒素芳香族複素環であるQ2bとQ2c、2つの含窒素芳香族複素環であるQ2cとQ2d、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3aとQ3b、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3bとQ3c、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3cとQ3d、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3dとQ3e又は2つの含窒素芳香族複素環であるQ3eとQ3fと、該2つの含窒素芳香族複素環を互いに結合する直接結合又は連結基と、からなる有機基は、下記一般式(4−a)〜(6−d)のいずれかで表される2価の有機基であると好ましい。
【0074】
【化9】

(式中、
Xは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−又は−Se−であり、好ましくは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−であり、より好ましくは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−である。
複数あるX、R4b、R4c、R5b、R5c、R6b及びR6cは、各々、同一でも異なっていてもよい。
Yは、−N(H)−又は=N−である。複数あるYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、式中の直線の点線は、該点線部分で上述した一般式(1)、(2)又は(3)におけるZ1a等と結合していることを示す。)
【0075】
上記式中のR4b、R4c、R5b、R5c、R5d、R6b、R6c、R6d、Rα及びRβは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。置換基は、上述の置換基と同義である。また、隣り合う置換基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
【0076】
更に、2つの含窒素芳香族複素環であるQ1aとQ1b、2つの含窒素芳香族複素環であるQ1bとQ1c、2つの含窒素芳香族複素環であるQ2aとQ2b、2つの含窒素芳香族複素環であるQ2bとQ2c、2つの含窒素芳香族複素環であるQ2cとQ2d、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3aとQ3b、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3bとQ3c、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3cとQ3d、2つの含窒素芳香族複素環であるQ3dとQ3e又は2つの含窒素芳香族複素環であるQ3eとQ3fと、該2つの含窒素芳香族複素環を互いに結合する直接結合又は連結基と、からなる有機基は、下記一般式(7−a)〜(10−e)のいずれかで表される2価の有機基であるとより好ましい。
【0077】
【化10】

(式中、
7a〜R10eは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、隣り合う置換基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。複数あるR7a〜R10eは、各々、同一でも異なっていてもよい。置換基は上述の置換基と同義である。
なお、式中の直線の点線は、該点線部分で上述した一般式(1)、(2)又は(3)におけるZ1a等と結合していることを示す。)
【0078】
本実施形態の単核金属錯体の配位子としては、以下の一般式(I−1)〜(I−57)で表される化合物が例示される。式中の水素原子は、上述の置換基で置換されていてもよい。
【0079】
【化11】

【0080】
【化12】

【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

【0083】
【化15】

【0084】
【化16】

【0085】
【化17】

【0086】
【化18】

【0087】
【化19】

【0088】
【化20】

【0089】
【化21】

【0090】
【化22】

【0091】
【化23】

【0092】
【化24】

【0093】
【化25】

【0094】
【化26】

【0095】
<単核金属錯体>
本実施形態の空気二次電池用正極触媒としては、上述の配位子(芳香族化合物)を中心金属(金属原子又は金属イオン)に配位させて得られる単核金属錯体を用いることができる。
【0096】
中心金属として用いることができる金属原子又は金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属のいずれかの金属原子又はそのイオンが挙げられるが、好ましくは、周期表第4周期から第6周期の遷移金属又はそのイオンである。
【0097】
具体的には、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀の原子及びそのイオンが挙げられ、好ましくは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金の原子及びそのイオンであり、より好ましくは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀等の原子及びそのイオンであり、特に好ましくは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛の原子及びそのイオンである。金属原子又は金属イオンの種類は1種類であってもよいし、複数種の金属原子又は金属イオンを組み合わせて用いてもよい。
【0098】
中心金属が金属イオンである場合、金属イオンの価数は、好ましくは1〜4価、より好ましくは2〜4価、特に好ましくは2価又は3価である。
【0099】
通常、金属イオンは、正の電荷を有するので、本実施形態の単核金属錯体は、当該単核金属錯体を全体として電気的に中性にする陰イオンを含んでいてもよい。対イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン等の無機イオン、トリフルオロ酢酸イオン、チオシアン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、フェノレート、ピコリン酸及びそれらの誘導体のイオン等の有機酸イオンが挙げられ、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフェニルホウ酸イオンである。対イオンが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0100】
本実施形態の単核金属錯体としては、以下の一般式(II−1)〜(II−57)で表される単核金属錯体が例示される。式中の水素原子は、上述の置換基で置換されていてもよい。これらの単核金属錯体において、式中のMは金属原子を表す。Mで表される金属原子は、上述の金属原子と同じである。式中の単核金属錯体の電荷は省略してある。
【0101】
【化27】

【0102】
【化28】

【0103】
【化29】

【0104】
【化30】

【0105】
【化31】

【0106】
【化32】

【0107】
【化33】

【0108】
【化34】

【0109】
【化35】

【0110】
【化36】

【0111】
【化37】

【0112】
【化38】

【0113】
【化39】

【0114】
【化40】

【0115】
【化41】

【0116】
【化42】

【0117】
本発明の単核金属錯体は、配位子が、中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、空間に中心金属を収容可能とする構造を、分子内に1つ有する芳香族化合物であると、より好ましい。
【0118】
本実施形態の単核金属錯体を製造する時、前記芳香族化合物と反応させる金属原子又は金属イオンの量を調節することで、目的とする単核金属錯体を得ることができる。具体的には、配位子に対し、金属原子又は金属イオンを等量(モル比で1:1)で反応させることにより、単核金属錯体を得ることができる。
【0119】
本実施形態の単核金属錯体は単独で用いてもよいし、複数の単核金属錯体と併用してもよい。また、本実施形態の単核金属錯体は、その他の成分と併用して組成物として用いてもよい。ここで、その他の成分としては、例えば、カーボンが挙げられ、その他の成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0120】
前記カーボンとしては、例えば、ノーリット(NORIT社製)、ケッチェンブラック(Lion社製)、バルカン(Cabot社製)、ブラックパールズ(Cabot社製)、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)(いずれも商品名)等のカーボンブラック、C60やC70等のフラーレン、カーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、シングルウォールカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボン繊維、グラフェン、グラフェンオキシドが挙げられ、カーボンブラックが好ましい。
前記カーボンは、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子と組み合わせて用いてもよい。
【0121】
上記単核金属錯体とカーボンとを含む組成物を調製する際、単核金属錯体の合計量は、組成物全体の量を100質量部としたとき、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。また、前記合計量の上限は、70質量部が好ましく、60質量部がより好ましく、50質量部が特に好ましい。
【0122】
本発明の好ましい実施態様として、前記単核金属錯体、前記単核金属錯体とカーボンとを含む組成物、前記単核金属錯体の残基を有するポリマーとカーボンとを含む組成物、をそのまま正極触媒とすることができるし、上記単核金属錯体、又は前記組成物を加熱処理したものを正極触媒とすることもできる。
【0123】
(加熱処理)
次に、本実施形態における加熱処理について詳述する。加熱処理は、例えば、対象物を加熱することで行う。
加熱処理に用いる金属錯体、又は組成物は、1種単独でもよいし、2種以上の混合物でもよい。
【0124】
加熱処理の前処理として、前記単核金属錯体を、15℃以上200℃以下の温度、10Torr以下の減圧下において6時間以上乾燥させておくと特に好ましい。前処理には、真空乾燥機等を用いることができる。
【0125】
加熱処理する際の雰囲気は、水素、一酸化炭素等の還元雰囲気;酸素、炭酸ガス、水蒸気等の酸化雰囲気;窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガス雰囲気;アンモニア、アセトニトリル等の含窒素化合物のガス又は蒸気、並びにこれらの混合雰囲気であることが好ましい。より好ましくは、還元雰囲気であれば、水素、及び水素と前記不活性ガスとの混合雰囲気、酸化雰囲気であれば、酸素、及び酸素と前記不活性ガスとの混合雰囲気、また、不活性ガス雰囲気であれば、窒素、ネオン、アルゴン、並びにこれらのガスの混合雰囲気である。
加熱処理に係る圧力は、限定されないが、0.5〜1.5気圧程度の常圧付近であると好ましい。
【0126】
加熱処理する際の温度は、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは300℃以上、更に好ましくは400℃以上、特に好ましくは500℃以上である。
加熱処理する際の温度の上限は、好ましくは1500℃以下であり、より好ましくは1200℃以下、特に好ましくは1000℃以下である。
【0127】
加熱処理にかかる時間は、前記の使用ガス、温度等による。
加熱処理の際は、上記ガスの密閉又は通気させた状態において、室温から徐々に温度を上昇させ目的温度到達後、すぐに降温してもよいが、耐久性をより向上させることができるので、目的温度に到達後、温度を維持することで、徐々に加熱することが好ましい。目的とする温度到達後の保持時間は、好ましくは1時間以上100時間以下であり、より好ましくは1時間以上40時間以下であり、更に好ましくは2時間以上10時間以下であり、特に好ましくは2時間以上3時間以下である。
【0128】
加熱処理する装置としては、オーブン、ファーネス(管状炉等)、IHホットプレートが例示される。
【0129】
前記加熱処理は、沸点若しくは融点が250℃以上である有機化合物、又は熱重合開始温度が250℃以下である有機化合物を添加して、行ってもよい。
【0130】
沸点若しくは融点が250℃以上である前記有機化合物としては、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、二無水ピロメリット酸等の、芳香族系化合物のカルボン酸誘導体が例示できる。以下(11−1)〜(11−14)に、このような化合物を例示する。
【0131】
【化43】

【0132】
熱重合開始温度が250℃以下である前記有機化合物は、芳香環と二重結合又は三重結合とを有する有機化合物であり、アセナフチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体が例示でき、アセナフチレン及びビニルナフタレンが好ましい。
【0133】
次に、本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物の製造方法を説明する。該芳香族化合物は、如何なる方法で製造してもよいが、例えば、下記反応式(100)に示すジアミン化合物とヘキサケトシクロヘキサンとの酢酸中における縮合反応により、製造することができる。
【0134】
【化44】

【0135】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物の製造方法として、下記反応式(101)のように、あらかじめブロモ基等のハロゲノ基を導入しておき、その後、環化させてもよい。環化反応には、山本カップリング、ウルマンカップリング等の反応を用いることができる。
【0136】
【化45】

【0137】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることができる芳香族化合物は、下記反応式(102)のように、鈴木・宮浦カップリング反応を用いて製造することもできる。
【0138】
【化46】

【0139】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、下記反応式(103)のように、ジケトン化合物とアンモニウム塩との反応を用いて製造することもできる。または、下記反応式(104)のように、ジケトン化合物と1,2−ジアミノ−1,2−ジシアノエチレンを反応させた後、環化反応させて製造することもできる。
【0140】
【化47】

【0141】
【化48】

【0142】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、下記反応式(105)に示すようにブロモ基等のハロゲノ基を有するジアミン化合物とヘキサケトシクロヘキサンとの縮合反応生成物に、ピロール等の含窒素芳香族化合物のボロン酸体を、カップリング反応等により導入することで製造することもできる。
【0143】
【化49】

【0144】
下記反応式(106)に示すように、上記反応式(105)で得られる化合物をアルデヒドと反応させて、閉環させてもよい。
【0145】
【化50】

【0146】
上記のような構造を有する芳香族化合物は、下記反応式(107)に示すように、適切な酸化剤を用いて酸化させることができる。酸化剤としては、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)、酸素が挙げられる。酸化剤の加える量、反応時間等を調節することで、反応段階を調節することができる。
【0147】
【化51】

【0148】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物が、エチニル基等の反応性基を有していてもよい。反応性基の導入は、単核金属錯体の触媒活性をより向上することができるので好ましい。例えば、下記反応式(108)に示すように、前記芳香族化合物の前駆体と、反応性基を有するアルデヒドと反応させて反応性基を導入することができる。
【0149】
【化52】

【0150】
上記反応でエチニル基を導入する際、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、tert−ブチルジメチルシリル(TBS又はTBDMS)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基等の保護基でエチニル基を保護しておき、含窒素芳香族化合物に導入後、酸性条件とすることにより、又は、フッ化物イオンを反応させることにより、脱保護してもよい。
【0151】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、下記反応式(109)のように製造することもできる。
【0152】
【化53】

【0153】
金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を形成する構造を1つ有し、かつ、該窒素原子の少なくとも1つが含窒素複素六員環に含まれる窒素原子である芳香族化合物を原料として、本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物を製造してもよい。
【0154】
本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物の製造方法において、一般式(11)〜(20)、(22)又は(23)で表される化合物は、本実施形態の単核金属錯体の配位子となる芳香族化合物の原料として用いることができる。また、該芳香族化合物は、一般式(11)〜(20)、(22)又は(23)で表される構造式中の水素原子又は置換基の1つ又は複数を取り去り連結させることで製造することもできる。連結させる方法としては、一般的に用いられているカップリング反応を用いることができ、パラジウムを触媒として用いる鈴木・宮浦カップリングや溝呂木・ヘック反応、ニッケルを触媒として用いる山本カップリングや熊田・玉尾カップリング、銅を触媒として用いるウルマン反応が例示される。
【0155】
【化54】

【0156】
【化55】

【0157】
【化56】

【0158】
【化57】

(一般式(11)〜(20)、(22)、(23)中、
11〜R20、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、隣り合う置換基は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
11は、含窒素芳香族複素環である。
12は、ブロモ基、クロロ基又はヨード基である。
13、E20及びE22は、それぞれ独立に、水素原子又は保護基である。
16及びX17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲノ基、又は、2つのX16同士若しくは2つのX17同士が互いに結合した直接結合である。
複数あるR11〜R20、R22、R23、Q11、T12、E13、E20、E22、X16及びX17は、各々、同一でも異なっていてもよい。)
【0159】
11〜R20、R22及びR23で表される置換基は、上述の置換基の説明及び例と同様である。
【0160】
11は、含窒素芳香族複素環であり、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環及びこれらの環を有する多環式芳香族複素環が好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環がより好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1H−ピロール環が特に好ましい。
【0161】
12は、好ましくは、ブロモ基又はクロロ基であり、より好ましくは、ブロモ基である。
【0162】
13、E20及びE22は、それぞれ独立に、水素原子又は保護基である。
前記保護基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基等のアルコキシカルボニル基;ビニルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;ベンジル基、4−メトキシベンジル基等の置換されていてもよいアラルキル基;ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;p−トルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等のアリールスルホニル基;メタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基が挙げられ、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0163】
一般式(11)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(111)に示すように、o−ジアミノベンゼン誘導体とヘキサケトシクロヘキサンとを酢酸中で反応させることにより製造することができる。
【0164】
【化58】

【0165】
一般式(12)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(112)に示すように、o−ジアミノベンゼン誘導体とヘキサケトシクロヘキサンとを酢酸中で反応させることにより製造することができる。
【0166】
【化59】

【0167】
一般式(13)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(113)に示すように、一般式(12)で表される化合物と6分子のピロールホウ酸体とを、それぞれ連結することにより製造することができる。連結方法としては、例えば、一般的なクロスカップリング反応が挙げられ、鈴木カップリングが好ましい。
【0168】
【化60】

【0169】
一般式(14)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(114)に示すように、3分子の2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリンを環状に連結することで製造することができる。連結方法としては、ニッケルを触媒として用いる山本カップリングや熊田・玉尾カップリング、銅を触媒として用いるウルマン反応が例示される。
【0170】
【化61】

【0171】
一般式(15)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(115)に示すように、3分子の2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリン−5,6−ジオンを環状に連結することで製造することができる。連結方法としては、ニッケルを触媒として用いる山本カップリングや熊田・玉尾カップリング、銅を触媒として用いるウルマン反応が例示される。
【0172】
【化62】

【0173】
一般式(16)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(116)に示すように、2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリンと2分子のキノリンホウ酸体を連結することで製造することができる。連結方法としては、例えば、一般的なクロスカップリング反応が挙げられ、鈴木カップリングが好ましい。
【0174】
【化63】

【0175】
一般式(17)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(117)に示すように、2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリンと2分子のインドールホウ酸体とを連結することで製造することができる。連結方法としては、例えば、一般的なクロスカップリング反応が挙げられ、鈴木カップリングが好ましい。
【0176】
【化64】

【0177】
一般式(18)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(118)に示すように、一般式(17)で表される化合物の誘導体とアルデヒド又はケトンとを反応させることで製造することができる。
【0178】
【化65】

【0179】
一般式(19)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(119)に示すように、一般式(17)で表される化合物の誘導体とアルデヒドとを、酸化剤存在下で反応させることで製造することができる。一般式(19)で表される化合物は、一般式(18)で表される化合物の誘導体を酸化剤で酸化することでも製造することができる。
【0180】
【化66】

【0181】
一般式(20)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(120)に示すように、2,9−ジハロゲノ−1,10−フェナントロリン2分子と、ピロールボロン酸2分子とを環状に連結することで製造することができる。連結方法としては、例えば、クロスカップリング反応が挙げられ、鈴木カップリングが好ましい。
【0182】
【化67】

【0183】
一般式(22)で表される化合物は、例えば、以下の反応式(121)に示すように、カルバゾール誘導体2分子と、ピロール誘導体2分子とを、環状に連結することで製造することができる。連結方法としては、例えば、クロスカップリング反応が挙げられ、鈴木カップリングが好ましい。
【0184】
【化68】

【0185】
一般式(11)で表される化合物を原料とした場合には、例えば、以下の反応式(122)に示すように、一般式(11)で表される化合物とヘキサケトシクロヘキサンとを酢酸中で反応させることにより、前記本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物を製造することができる。
【0186】
【化69】

【0187】
一般式(12)で表される化合物を原料とした場合には、例えば、以下の反応式(123)に示すように、一般式(12)で表される化合物に6つの含窒素芳香族複素環を結合させることで、前記本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物を製造することができる。結合方法としては、例えば、クロスカップリング反応が挙げられる。
【0188】
【化70】

(式中、Qは含窒素芳香族複素環であり、Yはボリル基やスタニル基等のクロスカップリングに適した基である。)
【0189】
一般式(13)で表される化合物を原料とした場合には、例えば、以下の反応式(124)に示すように、一般式(13)で表される化合物の窒素原子に結合している保護基を脱保護することで、前記本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物を製造することができる。脱保護の方法としては、例えば、一般的な脱保護の操作、加熱、マイクロ波照射を用いることができる。
【0190】
【化71】

【0191】
一般式(17)で表される化合物を原料とした場合には、例えば、以下の反応式(125)に示すように、一般式(17−a)で表される化合物を合成し、トリフルオロ酢酸でオキソ体とした後、酢酸アンモニウムと共に2分子を反応させることで、前本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる記芳香族化合物を製造することができる。
【0192】
【化72】

【0193】
前記本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、以下の反応式(126)のように、更に反応させて閉環構造としてもよい。
【0194】
【化73】

【0195】
前記本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、例えば、以下の反応式(127)のように、一般式(18−a)で表される化合物を経由して製造することもできる。
【0196】
【化74】

【0197】
上記本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、以下の反応式(128)のように、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)等の酸化剤を用いて酸化体としてもよい。
【0198】
【化75】

【0199】
前記本実施形態の単核金属錯体の配位子として用いることのできる芳香族化合物は、例えば、以下の反応式(129)に示すように、化合物(18−b)を合成した後、加熱縮合により製造することができる。
【0200】
【化76】

【0201】
次に、本実施形態の単核金属錯体の製造方法を説明する。
本実施形態の単核金属錯体は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0202】
単核金属錯体の配位子となる芳香族化合物と、金属原子を付与する反応剤(以下、「金属付与剤」という。)とを、溶媒の存在下で反応させることによって、本実施形態の単核金属錯体が得られる。なお、金属付与剤とは金属原子を有する化合物であり、通常、該金属原子を陽イオンとして有する塩が用いられる。金属付与剤としては、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩が好ましい。
【0203】
反応で用いられる溶媒(反応溶媒)としては、水;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アンモニア水、トリエチルアミン等のアミン類;メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、1−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と言う。)、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デュレン、デカリン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と言う。)、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、ピラジン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等が挙げられる。なお、これらの反応溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、前記溶媒としては、配位子となる芳香族化合物及び金属付与剤が溶解し得る溶媒が好ましい。
【0204】
反応の反応温度は、好ましくは−10℃以上250℃以下であり、より好ましくは0℃以上200℃以下、特に好ましくは0℃以上150℃以下である。
【0205】
反応の反応時間は、好ましくは1分以上1週間以下であり、より好ましくは5分以上24時間以下、特に好ましくは1時間以上12時間以下である。
【0206】
反応で得られた反応溶液から、目的とする単核金属錯体を単離精製する手段としては、公知の再結晶法、再沈殿法若しくはクロマトグラフィー法、又はこれらの組み合わせを用いることができる。なお、溶媒の種類によっては、目的とする単核金属錯体が前記反応溶液中に析出する場合がある。その場合には、析出した単核金属錯体を濾別し、洗浄や乾燥を行うことにより、単核金属錯体を単離精製してもよい。
【0207】
本実施形態の芳香族化合物から合成した単核金属錯体を触媒として用いる場合、単核金属錯体を単離する必要はなく、芳香族化合物と前記金属付与剤をカーボン等と共に前記溶液中で反応させた後、溶媒を留去することで触媒を調製することができる。
【0208】
本実施形態の空気二次電池用正極触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0209】
以上の空気二次電池用正極触媒は、酸素還元活性と水の酸化活性との両方に優れたものである。
【0210】
[空気二次電池]
続いて、本実施形態の空気二次電池について説明する。
【0211】
図1は、本発明の空気二次電池の一例に係る概略構成図である。空気二次電池1は、本実施形態の空気二次電池用正極触媒を含む正極2、及び正極2と対になる負極3と、正極2及び負極3に挟持された電解質4とを有し、不図示の容器に収容されている。
【0212】
(正極)
正極2は、本実施形態の空気二次電池用正極触媒を用いてなり、電解質4に接する正極触媒層5と、正極触媒層5に接触した正極集電体6と、正極集電体6に接続された外部接続端子(正極端子)7と、を有している。
【0213】
正極触媒層5は、上述した本実施形態の空気二次電池用正極触媒を有するが、空気二次電池用正極触媒に加え、導電材や、これらを正極集電体6に接着する結着材を含むことが好ましい。
【0214】
導電材としては、正極触媒層5の導線性を向上させることができる材料であればよい。導電材としては、例えば、ノーリット(NORIT社製)、ケッチェンブラック(Lion社製)、バルカン(Cabot社製)、ブラックパールズ(Cabot社製)、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)(いずれも商品名)等のカーボンブラック、C60やC70等のフラーレン、カーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、シングルウォールカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボン繊維、グラフェン、グラフェンオキシドが挙げられ、カーボンブラックが好ましい。
前記導電材は、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子と組み合わせて用いてもよい。
【0215】
結着材としては、使用する電解液に溶解しないものであればよく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素樹脂が好ましい。
【0216】
正極触媒層5中の、空気二次電池用正極触媒、導電材及び結着材の配合量は、限定されない。
空気二次電池用正極触媒の1質量部に対する導電材の配合量は、より触媒活性が高まるので、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下が特に好ましい。
空気二次電池用正極触媒の1質量部に対する結着材の配合量は、より触媒活性が高まるので、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上5質量部以下が、より好ましく、0.5質量部以上3質量部以下が特に好ましい。
【0217】
正極集電体6は導電材料であればよく、例えば、金属メッシュ、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロスを用いることができる。金属メッシュ又は金属焼結体の金属としては、例えば、ニッケル、クロム、鉄、チタンからなる金属及びこれらの合金が挙げられ、好ましくは、ニッケル、ステンレス(鉄−ニッケル−クロム合金)である。
【0218】
(電解質)
電解質4は、通常、水系溶媒、非水系溶媒に溶解し、電解液として使用され、正極触媒層、及び負極と接触している。
水系溶媒が使用される場合、電解質として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化アンモニウムが溶解した水溶液が好ましい。この場合、水溶液中の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は塩化アンモニウムの濃度は、1質量%以上99質量%以下が好ましく、5質量%以上60質量%以下がより好ましく、5質量%以上40質量%以下が更に好ましい。
【0219】
(酸素拡散膜)
更に、本実施形態の空気二次電池1においては、別途、酸素拡散膜を設けてもよい。酸素拡散膜は、正極集電体6の外側(正極触媒層5の反対側)に設けることが好ましい。
【0220】
酸素拡散膜は、酸素(空気)を好適に透過できる膜であればよく、ポリオレフィン、フッ素樹脂等の樹脂からなる不織布又は多孔質膜を用いることができる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。この酸素拡散膜を介して正極触媒層に酸素(空気)が供給される。
【0221】
(セパレータ)
本実施形態の空気二次電池1においては、正極と負極が接触して短絡することを防ぐために、正極と負極の間にセパレータを有していてもよい。
【0222】
セパレータとしては、電解質の移動が可能な絶縁材料であればよく、例えば、ポリオレフィン、フッ素樹脂等の樹脂からなる不織布又は多孔質膜を用いることができる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。電解質が水溶液である場合は、これらの樹脂は、親水性化されていてもよい。
【0223】
(負極)
負極3は、電解質4に接する負極活物質層8と、負極活物質層8に接触した負極集電体9と、負極集電体9に接続された外部接続端子(負極端子)10と、を有している。
【0224】
負極活物質層8は、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素、又はこれらのイオンを活物質として用いることが好ましく、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム及び水素を活物質として用いることがより好ましい。活物質としては、亜鉛、鉄、水素が更に好ましく、亜鉛が特に好ましい。
【0225】
亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム又はリチウムを活物質とする負極については、従来の亜鉛−空気電池、鉄−空気電池、アルミニウム−空気電池、マグネシウム−空気電池、リチウム−空気電池等に用いられている負極を用いることができる。また、水素を活物質とする負極については、水素の吸蔵放出が可能な水素吸蔵合金等を用いることができる。
【0226】
(容器)
容器は、正極2、負極3、及び電解質(電解液)4を収容するものである。容器の材質としては、例えば、ポリスチレン;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ塩化ビニル、ABS等の樹脂;正極2、負極3及び電解質4と反応しない金属、セラミックス;が挙げられる。
【0227】
本実施形態の空気二次電池1は、例えば、自動車用電源、家庭用電源、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源として有用である。
【実施例】
【0228】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
【0229】
<合成例1:単核金属錯体MC1>
(化合物1の合成)
以下の反応式(200)に従って、化合物1を合成した。
【0230】
【化77】

【0231】
まず、2.5g(8.95mmol)の3,6−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾールを300mLの酢酸に溶解し90℃に加熱した。前記溶液に0.95mL(18.80mmol)の臭素を加え、20分間攪拌した後、1mLの飽和チオ硫酸ナトリウム溶液を加えた。エバポレーターにて溶媒を留去した後、得られた粗生成物についてシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することで、3.93gの1,8−ジブロモ−3,6−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾールを得た。上記操作を再度行い、次の工程に必要な1,8−ジブロモ−3,6−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾールを得た。
(1,8−ジブロモ−3,6−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾールのNMR分析の結果)
H−NMR(CDCl,300MHz,25℃):δ(ppm)=1.44(s,18H),7.67(d,2H),8.04(d,2H),8.26(s,1H).
13C−NMR(CDCl,75MHz,25℃):δ(ppm)=32.0,35.2,104.2,116.5,125.2,127.1,136.7,145.3.
【0232】
次に、5gの1,8−ジブロモ3,6−ジ−tert−ブチル−9H−カルバゾール(11.5mmol)を250mLの脱気されたTHFに溶解させた溶液へ、0℃で、7.8mLのn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液、12.5mmol)を加えた。1時間攪拌した後、二酸化炭素ガスを通気しながら、反応液を室温まで温めた。反応液から溶媒を留去した後、得られた残渣を脱気した250mLのTHFに溶解させた。29.4mLのtert−ブチルリチウム(1.7Mペンタン溶液、49.9mmol)を−78℃にてゆっくりと加えた後、0℃にて3時間攪拌した。溶液を再び−78℃に冷却した後、11.6mLの2−イソプロピルオキシテトラメチルジオキサボロラン(57.5 mmol)を加え、反応液をゆっくりと室温まで温めた。反応液を0℃に冷却し、1M塩酸水溶液を加え、加水分解した後、酢酸エチルを加えた。得られた有機層を1M水酸化ナトリウム溶液及び1M炭酸水素ナトリウム溶液で順番に洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒をエバポレーターで留去した後、温めたヘキサンで再結晶することで、3,6−ジ−tert−ブチル−1,8−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾールを得た。収量は2.7gであり、収率は50%であった。
(3,6−ジ−tert−ブチル−1,8−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾールのNMR分析の結果)
H−NMR(CDCl,300MHz,25℃):δ(ppm)=1.47(s,42H),7.85(d,2H),8.24(d,2H),9.99(s,1H).
13C−NMR(CDCl,75MHz,25℃):δ(ppm)=24.9,31.8,34.5,83.76,119.9,121.7,129.8,140.9,143.6.
【0233】
次に、フラスコ内において、132.8mg(0.25mmol)の3,6−ジ−tert−ブチル−1,8−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール、58.7mg(0.25mmol)の2,6−ジブロモピリジン、及び6mg(0.005mmol)のPd(PPh3)4を500mLのトルエンに溶解させ、そこに、200mLのエタノール、及び、2M炭酸カリウム水溶液30mLを加えた後、該フラスコ内の気体をアルゴンガスで3回置換した。その後、反応物を、85℃で17時間攪拌した。その後、反応物から溶媒をエバポレーターで留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物についてシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することで、化合物1を得た。収量は30mgであり、収率は15%であった。
(化合物1のNMR分析及び質量分析の結果)
H−NMR(CDCl,300MHz,25℃):δ(ppm)=1.52(s,36H,−CH),7.61(d,4H,J=1.85Hz),7.68(d,4H,J=7.83Hz),8.22(t,4H,J=7.57Hz),8.24(d,4H,J=1.69Hz),9.66(s,2H,−NH).
13C−NMR(CDCl,75MHz,25℃):δ(ppm)=32.1(−CH),35.0(−C(CH),117.2,122.6,124.1,124.7,125.9,136.1,138.8,143.4,159.7.
MS(Maldi−Tof)実測値(m/z):708.23、理論値:708.42
【0234】
上記合成した化合物1について、上述した各パラメーターの値は、以下の通りである。
r/n=0.528、n=4、W/W=0.0932、m=2。
【0235】
(単核金属錯体MC1の合成)
以下の反応式(201)に従って、単核金属錯体MC1を合成した。
【0236】
【化78】

【0237】
25mg(0.035mmol)の化合物1と8mg(0.046mmol)の酢酸コバルト(II)4水和物を2mLの無水DMFに溶解した後、得られた溶液をマイクロウェーブ反応装置に入れ、170℃、300Wで4時間反応させた。室温まで放冷した後、反応後の溶液を氷水へ注ぐことで沈殿物を生成させた。得られた沈殿物をろ取後、乾燥させることで、24mg(0.031mmol)の単核金属錯体MC1を91%の収率で得た。
(単核金属錯体MC1の質量分析の結果)
MS(Maldi−Tof)実測値(m/z):764.8、理論値:765.34
【0238】
<合成例2:単核金属錯体MC2の合成>
(化合物2の合成)
以下の反応式(202)に従って、化合物2を合成した。
【0239】
【化79】

【0240】
まず、原料となる7−ブロモ−3−メチル−1H−インドールは、文献(J.Org.Chem.2001,66,638)記載の方法に従い合成した。
次に、500mgの7−ブロモ−3−メチル−1H−インドール(2.38mmol)、22mgのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、78mgの2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、604mgのビス(ピナコラト)ジボラン、及び467mgの酢酸カリウムを50mLのシュレンク管に入れ、アルゴンガス雰囲気下において、20mLの無水DMFを加え、80℃で一晩攪拌した。溶液を室温まで放冷した後、ジクロロメタンを加え、有機層を水で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで、3−メチル−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インドールを得た。
(3−メチル−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インドールのNMR分析結果)
H−NMR(250MHz,CDCl):δ(ppm)=9.20(brs,1H),7.63(d,1H),7.46(d,1H),7.02(t,1H),6.44(s,1H),2.40(s,3H),1.42(s,12H).
【0241】
次に、2,9−ジクロロ−1,10−フェナントロリンを文献(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1990,63,2710)記載の方法に従い合成した。186mgの2,9−ジクロロ−1,10−フェナントロリン(0.748mmol)と500mgの3−メチル−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インドール(1.944mmol)を20mLのDMFに溶解させた後、2M炭酸ナトリウム水溶液6mLを加えた。アルゴンガス気流下においてPd(PPh3)4を加え、溶液を80℃で一晩攪拌を行った。室温まで放冷した後、ジクロロメタンを加え、有機層を水で洗浄後、溶媒を留去して、シリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製することで、化合物2を得た。
(化合物2のNMR分析及び質量分析の結果)
H−NMR(250MHz,CDCl):δ(ppm)=12.10(s,2H),8.73(d,2H),8.56(d,2H),8.15(s,2H),8.09(d,2H),7.80(d,2H),7.36(t,2H),6.85(s,2H),2.42(s,3H).
MS(FD)実測値(m/z):439.0、理論値:438.18.
【0242】
(化合物3の合成)
以下の反応式(203)に従って、化合物3を合成した。
【0243】
【化80】

【0244】
100mgの化合物2(0.228mmol)の入った100mL二口フラスコへ、40mLの脱水テトラクロロエチレン、0.0258mLのベンズアルデヒド(0.251mmol)を加えた後、0.15mLのトリフルオロボラン/ジエチルエーテル錯体(5当量)を加えた。該混合物を攪拌しながら128℃にて一晩反応させた後、塩化アンモニウム溶液を加えることで反応を停止させた。エバポレーターにて溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製することで、淡黄色の固体を得た。収量は90mgであり、収率は75%であった。
(化合物3のNMR分析及び質量分析の結果)
H−NMR(250MHz,CDCl):δ(ppm)=13.92(bs,2H),10.35(dd,4H),9.92(t,4H),9.70(d,2H),9.26(t,2H),9.07(m,3H),8.97(d,2H),8.10(s,1H),4.56(s,6H).
MS(Maldi−Tof)実測値(m/z):526.
【0245】
上記合成した化合物3について、上述した各パラメーターの値は、以下の通りである。
r/n=0.50、n=4、W/W=0.126、m=2。
【0246】
(単核金属錯体MC2の合成)
以下の反応式(204)に従って、単核金属錯体MC2を合成した。
【0247】
【化81】

【0248】
50mgの化合物3(0.035mmol)と35mgの酢酸コバルト(II)4水和物(0.142mmol)とを、アルゴンガスで脱気した5mLの脱水DMFに溶解した後、得られた溶液をマイクロウェーブ反応装置に入れ、170℃、300ワットで6時間反応させた。室温まで放冷した後、反応液を氷水へ注ぐことで沈殿物を生成させた。得られた沈殿物をろ取後、乾燥させることで、50mgの単核金属錯体MC2を90%の収率で得た。
【0249】
<合成例3:単核金属錯体MC3の合成>
(化合物4の合成)
上記で合成した2,9−ジクロロ−1,10−フェナントロリンを用いて、以下の反応式(205)に従い化合物4を合成した。
【0250】
【化82】

【0251】
100mg(0.40mmol)の2,9−ジクロロ−1,10−フェナントロリンと278mgの8−キノリンボロン酸(1.61mmol、アルドリッチ社製)を3mlのトルエンと5mlのDMFの混合溶媒に加え、アルゴンガスで置換した。37mgのPd(PPh(0.0321mmol)と333mgのKCO(2.41mmol)を加え、100℃で18時間攪拌を行った。カラム精製により、65mgの化合物4を収率37%で得た。
(化合物4の質量分析の結果)
MS(FD,8kV)実測値(m/z):435.4(M)、理論値:434.15
【0252】
以下の反応式(206)に従って、単核金属錯体MC3を合成した。
【0253】
【化83】

【0254】
具体的には、化合物4と酢酸コバルト4水和物をエタノール中で3時間還流させることで、単核金属錯体MC3を得た。
【0255】
<合成例4:単核金属錯体MC4の合成>
以下の反応式(207)に従って、化合物5を合成した。
【0256】
【化84】

【0257】
原料となる2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランー2−イル)−1H−ピロール(以下、「化合物A」と称する)は、Tetrahedron Letters,2002,43,5649に記載の方法従って合成した。
続いて5,6−ビス(ドデカシロキシ)−2,9−ジヨード−1,10−フェナントロリン(以下、「化合物B」と称する)を、以下の操作により合成した。
【0258】
1.36gの2,9−ジクロロ−5,6−ビス(ドデカシロキシ)−1,10−フェナントロリン(2.21mmol)と1.33gのヨウ化ナトリウム(8.84mmol)を入れたフラスコへ、57%のヨウ化水素酸4.4mlと0.12mlの次亜りん酸(50%)を攪拌しながら加えた後、80℃で一晩加熱を行った。0℃に冷却した後、溶液がアルカリ性となるまでアンモニア水を加えた。得られた沈殿物を濾取し、水で数回洗浄した後に減圧下で乾燥させた。カラム(ジクロロメタン:ヘプタン)で精製を行い、58%の収率で化合物Bを得た。
(化合物BのNMR分析と質量分析の結果)
H−NMR(250MHz,CDCl):δ(ppm)=8.15(d,J=8.51Hz,2H),7.97(d,J=8.51Hz,2H),4.21(t,J=6.61,4H),1.92−1.80(m,4H),1.58−1.47(m,4H),1.4−1.27(m,32H),0.88(t,J=6.32,6H)
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=144.4,143.2,134.8,132.3,126.6,118.0,74.6,32.3,30.7,30.1,30.0,29.9,29.8,29.7,26.5,23.1,14.3.
MS(MALDI−TOF)実測値:801.264、理論値:801.235
【0259】
次に、124.4mgの化合物B(0.155mmol)、24.8mgの化合物A(0.078mmol)、5.7mgの酢酸パラジウム(0.025mmol)、及び13.6mgのトリフェニルホスフィン(0.052mmol)を含んだ150mlのDMFと40mlのTHFの混合溶液を調製した。該混合溶液へ45.3mgの炭酸カリウムを溶解させた10mlの水溶液を加え、脱気操作を行った後、アルゴンガス雰囲気下、80℃で4時間攪拌を行った。溶液を室温まで放冷し、溶媒を留去後、得られた残渣をジクロロメタンに溶解させ、フィルターを通した後、精製することで、化合物5を収率16%で得た。
(化合物5のNMR分析及び質量分析の結果)
H−NMR(500MHz,THF−d,60℃):δ(ppm)=12.54(s,2H),8.39(d,J=8.52Hz,4H),7.83(d,J=8.51Hz,4H),6.86(s,4H),4.25(t,J=6.27,8H),1.95−1.89(m,8H),1.63−1.45(m,8H),1.46−1.31(m,64H),0.89(t,J=6.27,12H).
13C−NMR(THF−d,60℃):δ(ppm)=149.2,144.9,143.3,135.6,131.4,125.7,118.8,110.4,74.7,32.9,31.4,30.7,30.6,30.5,30.3,27.3,25.9,23.5,14.4.
MS(MALDI−TOF)実測値:1222.884、理論値:1222.890
【0260】
以下の反応式(208)に従って、単核金属錯体MC4を合成した。
【0261】
【化85】

【0262】
具体的には、化合物5と酢酸コバルト4水和物をエタノール中で3時間還流させることで、単核金属錯体MC4を得た。
【0263】
<合成例5:単核金属錯体MC5の合成>
以下の反応式(209)に従って、化合物6を合成した。合成は、Tetrahedron Letters、2000,41,8565−8568に記載の方法に従って行った。
【0264】
【化86】

【0265】
以下の反応式(210)に従って、単核金属錯体MC5を合成した。
【0266】
【化87】

【0267】
100mgの化合物5(0.22mmol)と62mgの酢酸コバルト(II)4水和物(0.25mmol)とを、アルゴンガスで脱気した20mlのクロロホルム/メタノール混合溶液(1:1)に溶解した後、34mgの炭酸カリウム(0.25mmol)を加え、3h還流した。室温まで放冷した後、沈殿物をろ取し、水で洗浄、乾燥させることで、91mgの単核金属錯体MC5を94%の収率で得た。
MS(TLC−MS)実測値:443.93.884、理論値:443.05
【0268】
<空気二次電池用正極触媒の製造>
[実施例1]
(正極触媒1の製造)
単核金属錯体MC1及びカーボン(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン社製)を質量比1:4で混合し、メタノール中、室温にて15分間攪拌した後、室温にて200Paの減圧下で12時間乾燥させて正極触媒1を得た。
【0269】
[実施例2〜7]
(正極触媒2〜5の製造)
実施例1において、単核金属錯体MC1を、それぞれ、単核金属錯体MC2(実施例2)、単核金属錯体MC3(実施例3)、単核金属錯体MC4(実施例4)、単核金属錯体MC5(実施例5)、に変更した以外は、実施例1と同様にして、正極触媒2、正極触媒3、正極触媒4、正極触媒5、を調製し、電極を作製し、酸素還元活性の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0270】
[比較例1]
二酸化マンガン(アルドリッチ社製、製品コード:203750)及びカーボン(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン社製)を質量比1:4で混合し、エタノール中、室温にて15分間攪拌後、室温にて200Paの減圧下で12時間乾燥させて正極触媒R1を得た。
【0271】
<空気二次電池用正極触媒の評価>
(酸素還元活性の評価)
上記で得られた正極触媒(正極触媒1〜5及び正極触媒R1)について、回転ディスク電極により、酸素還元活性を評価した。具体的には、以下の通りである。
電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径6.0mm)であるディスク電極を用いた。
【0272】
正極触媒が1mg入ったサンプル瓶へ、0.5質量%のナフィオン(登録商標)溶液(5質量%ナフィオン(登録商標)溶液をエタノールにて10倍希釈した溶液)を1mL加えた後、超音波を照射して15分間分散させた。得られた懸濁液7.2μLを前記電極のディスク部に滴下して乾燥させた後、80℃に加熱した乾燥機にて3時間乾燥させることで、測定用電極を得た。
【0273】
この測定用電極を用いて、下記測定装置及び測定条件において、酸素還元反応の電流値を測定した。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態(窒素雰囲気下)、酸素を飽和させた状態(酸素雰囲気下)でそれぞれ行い、酸素雰囲気下での測定で得られた電流値から、窒素雰囲気下での測定で得られた電流値を引いた値を酸素還元反応の電流値とした。この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。結果を表1に示す。
なお、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して−0.8Vのときの値である。
【0274】
(測定装置)
日厚計測社製RRDE−1回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
(測定条件)
セル溶液:0.1mol/L水酸化カリウム水溶液(酸素飽和又は窒素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:10mV/秒
電極回転速度:1600rpm
【0275】
(水の酸化活性の評価)
上記で得られた正極触媒(正極触媒1〜5及び正極触媒R1)について、酸素還元活性の評価の場合と同様の測定用電極を作製し、これを用いて、下記測定装置及び測定条件において、水の酸化反応の電流値を測定した。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態で行い、この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。結果を表1に示す。なお、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して1Vのときの値である。
【0276】
(測定装置)
日厚計測社製RRDE−1回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
(測定条件)
セル溶液:1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(窒素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:10mV/秒
電極回転速度:900rpm
【0277】
【表1】

【0278】
[空気二次電池での充放電試験]
(評価5)
・正極触媒層の作製
正極触媒としての単核金属錯体MC1と、導電材としてのアセチレンブラックと、結着材としてのPTFE粉末とを、単核金属錯体MC1:アセチレンブラック:PTFE=1:10:1(質量比)で混合し、そこにエタノールをピペットで5滴加え、これらをメノー乳鉢で混合した後、薄膜化し、正極触媒層を得た。
【0279】
上記正極触媒層を、撥水性PTFEシートと、ステンレスメッシュとで両側から挟み、プレス機で圧着することで、空気二次電池用正極を得た。
【0280】
負極となる水素吸蔵合金を以下の方法で取り出した。単3形充電式ニッケル水素電池(エネループ(登録商標)、三洋電機株式会社製、HR−3UTGA)を充放電試験機(東洋システム社製、製品名TOSCAT−3000U)に接続し、電池電圧が1.0Vとなるまで放電した。前記ニッケル水素電池を解体し、水素吸蔵合金を取り出した。
該水素吸蔵合金を多孔質金属体(セルメット#8、富山住友電工株式会社製)で挟み、プレス機でプレスしたものを負極とし、充放電試験機(東洋システム社製、製品名:TOSCAT−3000U)に接続し、電解液として8.0M水酸化カリウム水溶液を用いて、充放電サイクル試験を行った。
充放電サイクル試験は、以下のステップ1〜4を10回繰り返して行った。
ステップ1:定電流3mAにて20分間充電
ステップ2:5分間休止
ステップ3:定電流3mAにて放電。電圧が0.5Vとなった時点でステップ4へ移る。
ステップ4:5分間休止
【0281】
図2は、充放電サイクル試験の結果を示すグラフである。図2から分かるように、本発明の単核金属錯体MC1を用いた空気二次電池では、充電及び放電を良好に繰り返すことができ、更に、充放電を繰り返した後にも、触媒活性の低下が見られなかった。
【符号の説明】
【0282】
1…空気二次電池、2…正極、3…負極、4…電解質、5…正極触媒層、6…正極集電体、7…正極端子、8…負極活物質層、9…負極集電体、10…負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの中心金属と、前記中心金属に配位結合する配位子と、を有する単核金属錯体を用いてなり、
前記配位子が、下記(a)及び(b)の要件を満たす芳香族化合物である空気二次電池用正極触媒。
(a)前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造を、分子内に1つ以上有する(前記構造を2つ以上有する場合、該構造は同一でも異なっていてもよい。)。
(b)前記構造を構成する窒素原子のうち少なくとも1つが含窒素複素六員環に含まれる窒素原子である。
【請求項2】
前記構造は、該構造を構成する窒素原子の数nと、前記空間の中心から該構造を構成する各窒素原子の中心までの平均距離r(Å)とが、下記式(A)で示される要件を満たす請求項1に記載の空気二次電池用正極触媒。
0<r/n≦0.7 …(A)
【請求項3】
前記窒素原子の数nと前記平均距離rとが、下記式(B)で示される要件を満たす請求項2に記載の空気二次電池用正極触媒。
0.4≦r/n≦0.6 …(B)
【請求項4】
前記構造は、該構造を構成する窒素原子の数nが4以上6以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項5】
前記配位子を構成する全炭素原子の質量Wと、前記配位子を構成する全窒素原子の質量Wとが、下記式(C)で示される要件を満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
0<W/W≦1.1 …(C)
【請求項6】
前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造が、下記一般式(1)で表される芳香族化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【化1】

(式中、
mは1以上の整数である。
1a、Q1b及びQ1cは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、前記配位可能な4つ以上の窒素原子をそれぞれ含む。Q1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。但し、Q1a、Q1b及びQ1cのうち少なくとも1つは、含窒素芳香族複素六員環である。
1a及びZ1bは、それぞれ独立に、直接結合又は連結基であり、Z1bが複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
1a及びQ1b、並びに、Q1b及びQ1cは、各々、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。
mが2以上の整数であり、かつ、Z1bが直接結合である場合、隣り合う2つのQ1bは、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。Q1a及びQ1cは直接結合して、又は、連結基を介して互いに結合していてもよく、一体となって多環式芳香族複素環を形成していてもよい。)
【請求項7】
前記一般式(1)において、mが2又は4である請求項6に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項8】
前記Q1a、Q1b及びQ1cが、それぞれ独立にピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、1H−ピロール環、2H−ピロール環、3H−ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、及び、これらの環構造を有する多環式芳香族複素環からなる群から選ばれる環(当該環は置換基を有していてもよい。)である請求項6又は7に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項9】
2つの含窒素芳香族複素環であるQ1aとQ1b又は2つの含窒素芳香族複素環であるQ1bとQ1cと、該2つの含窒素芳香族複素環を互いに結合する直接結合又は連結基と、からなる有機基が、下記一般式(4−a)、(4−b)、(4−c)、(5−a)、(5−b)、(5−c)、(5−d)、(6−a)、(6−b)、(6−c)及び(6−d)のいずれかで表される2価の有機基である請求項6〜8のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【化2】

(式中、
Xは、=C(Rα)−、−N(Rβ)−、=N−、−O−、−S−又は−Se−である。
Yは、−N(H)−又は=N−である。
4b、R4c、R5b、R5c、R5d、R6b、R6c、R6d、Rα及びRβは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、隣り合う置換基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
複数あるX、Y、R4b、R4c、R5b、R5c、R6b及びR6cは、各々、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項10】
2つの含窒素芳香族複素環であるQ1aとQ1b又は2つの含窒素芳香族複素環であるQ1bとQ1cと、該2つの含窒素芳香族複素環を互いに結合する直接結合又は連結基と、からなる有機基が、下記一般式(7−a)、(7−b)、(7−c)、(7−d)、(7−e)、(8−a)、(8−b)、(8−c)、(8−d)、(8−e)、(9−a)、(9−b)、(9−c)、(9−d)、(9−e)、(10−a)、(10−b)、(10−c)、(10−d)及び(10−e)のいずれかで表される2価の有機基である請求項9に記載の空気二次電池用正極触媒。
【化3】

(式中、
7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、R10a、R10b、R10c、R10d及びR10eは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、隣り合う置換基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
複数あるR7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、R10a、R10b、R10c、R10d及びR10eは、各々、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項11】
前記配位子は、前記中心金属に配位可能な4つ以上の窒素原子で囲まれた空間を有し、前記空間に前記中心金属を収容可能とする構造を、分子内に1つ有する芳香族化合物である請求項1〜10のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項12】
前記中心金属が、周期表の第4周期から第6周期に属する遷移金属原子又はそのイオンである請求項1〜11のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項13】
前記単核金属錯体を、300℃以上1200℃以下の温度で加熱して得られる変性物を形成材料とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項14】
前記単核金属錯体と、カーボンと、を含む組成物を形成材料とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項15】
前記組成物を、300℃以上1200℃以下の温度で加熱して得られる変性物を形成材料とする請求項14に記載の空気二次電池用正極触媒。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の空気二次電池用正極触媒を正極触媒層に含み、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、水素、及びこれらのイオンからなる群から選ばれる少なくとも1つを負極活物質とする空気二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−16475(P2013−16475A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129293(P2012−129293)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】