説明

空気入りタイヤ

【課題】高弾性且つ低発熱性で、耐摩耗性が改善された空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分に対して、シリカと、同一分子内に前記ゴム成分に対する反応基aを1個以上有し且つ前記シリカに対する吸着基bを2個以上有する化合物(Z)と、ヒドラゾン化合物とを配合してなり、前記ゴム成分が、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体を添加し、該単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムを含み、前記化合物(Z)の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、前記ヒドラゾン化合物の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とするゴム組成物をタイヤ部材に使用してなる空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、特に高弾性且つ低発熱性で、耐摩耗性が改善された空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、充填剤としてシリカを配合したゴム組成物をタイヤに適用することにより、タイヤが低発熱化し、また、シリカが、ゴム組成物のヒステリシスロスを高くするため、該ゴム組成物を用いることで、タイヤのヒステリシスロスが増大し、悪路走行での耐チッピング性が向上することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ゴム組成物に充填剤としてシリカを配合すると、ゴム組成物の弾性率及び耐摩耗性が低下したり、ゴム組成物の作業性が悪化するという問題があるため、工場でシリカを多量に配合することは困難である。また、充填剤としてシリカを配合したゴム組成物をタイヤに適用すると、長時間加硫での加硫戻りにより低発熱化の効果が低下するという問題があった。ここで、シリカを配合したゴム組成物の弾性率及び耐摩耗性が低下する原因としては、ゴム成分に対するシリカの親和性が充填剤として通常用いられるカーボンブラックよりも小さいため、シリカのゴム成分への分散性が悪く、充分な補強効果が得られないこと等が考えられる。
【0004】
また、従来、タイヤを高弾性化してその剛性を向上させるために、充填剤の配合量を増量したゴム組成物をタイヤに適用する方法も採られてきたが、この場合、充填剤の増量によりゴム組成物の未加硫粘度が上昇して混練時の作業性が悪化したり、発熱性が高くなるという問題があり、市場が要求する性能を満足できるゴム組成物を得ることができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−291706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、高弾性且つ低発熱性で、耐摩耗性が改善された空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の変性天然ゴムを含むゴム成分に対して、シリカと、ゴム成分との相溶性及びシリカとの親和性に優れた化合物と、ヒドラゾン化合物とを配合したゴム組成物をタイヤ部材に適用することにより、高弾性且つ低発熱性で、耐摩耗性が改善されたタイヤが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の空気入りタイヤは、ゴム成分に対して、シリカと、同一分子内に前記ゴム成分に対する反応基aを1個以上有し且つ前記シリカに対する吸着基bを2個以上有する化合物(Z)と、ヒドラゾン化合物とを配合してなり、前記ゴム成分が、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体を添加し、該単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムを含み、前記化合物(Z)の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、前記ヒドラゾン化合物の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とするゴム組成物をタイヤ部材に使用してなることを特徴とする。
【0009】
本発明の空気入りタイヤの好適例においては、前記極性基含有単量体の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0010】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記変性天然ゴムにおける前記単量体のグラフト量が、前記天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%である。
【0011】
本発明においては、前記化合物(Z)の吸着基bはカルボキシル基であることが好ましく、また、前記化合物(Z)の反応基aは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基であることが好ましく、更に、前記化合物(Z)が更にオキシアルキレン基を有することが好ましく、また更に、前記化合物(Z)が多塩基酸の部分エステルであることが好ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記化合物(Z)が、下記式(I)及び(II)の何れかで表される化合物である。
【化1】

[式中、R1、R2及びR3はこれらのうち一つが式−(R4O)n−CO−CR5=CR6−R7で表される基であり(ここで、R4は炭素数2〜4のアルキレン基で;R5、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基で;nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)、他は水素原子である。]
HOOC−CH=CH−COO−R8−CO−CH=CH−COOH ・・・ (II)
[式中、R8は、式−R9O−で示される基、式−(R10O)s−で示される基、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R11O−COR12−COO−)t11O−で示される基である。ここで、R9は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;R10は炭素数2〜4のアルキレン基で;sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数で;R11は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基,2価の芳香族炭化水素基又は−(R13O)u13−で示される基で(ここで、R13は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である);R12は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;tは平均値で1〜30の数である。]
【0013】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記ゴム組成物が、更に、前記ゴム成分100質量部に対して無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体との部分エステル0.1〜5.0質量部を含有する。
【0014】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)が150〜270m2/gである。
【0015】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記ゴム組成物のゴム成分が、前記変性天然ゴムを100質量部中20質量部以上含む。
【0016】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記ゴム組成物が、窒素吸着比表面積(N2SA)が30〜160m2/gで且つジブチルフタレート(DBP)吸油量が60〜150mL/100gであるカーボンブラックを前記ゴム成分100質量部に対して20〜80質量部を含有する。
【0017】
本発明の空気入りタイヤは、重荷重用空気入りタイヤとして好適であり、オフロードタイヤとして特に好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定の変性天然ゴムを含むゴム成分に対して、シリカと、ゴム成分との相溶性及びシリカとの親和性に優れたの化合物(Z)と、ヒドラゾン化合物とを配合したゴム組成物をタイヤ部材、特にトレッドに適用することにより、高弾性且つ低発熱性で、耐摩耗性が改善された空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の空気入りタイヤは、ゴム成分に対して、シリカと、同一分子内に前記ゴム成分に対する反応基aを1個以上有し且つ前記シリカに対する吸着基bを2個以上有する化合物(Z)と、ヒドラゾン化合物とを配合してなり、前記ゴム成分が、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体を添加し、該単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムを含み、前記化合物(Z)の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、前記ヒドラゾン化合物の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とするゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とする。ここで、タイヤ部材としては、トレッドが好ましい。
【0020】
上記極性基含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体をグラフト重合により天然ゴム分子に導入した変性天然ゴムは、未変性の天然ゴムに比べてシリカに対する親和性が大幅に向上している。そのため、該変性天然ゴムとシリカとを用いたゴム組成物は、ゴム組成物中のゴム成分とシリカとの親和性が高く、シリカの補強効果が十分に発揮されて耐摩耗性に優れると共に、低発熱性(低ロス性)も大幅に向上している。また、上記化合物(Z)は、ゴム成分に対する反応基aを1個以上有するため、ゴム成分との相溶性に優れ、また、シリカに対する吸着基bを2個以上有するため、シリカとの親和性にも優れる。そのため、ゴム成分に、シリカと共に化合物(Z)を配合することにより、シリカのゴム成分への分散性が改善され、シリカの補強効果が十分に発揮されてゴム組成物を大幅に高弾性化することができる。更に、上記ヒドラゾン化合物は、ゴム組成物の加硫戻りを抑制して、ゴム組成物の低発熱化の効果を十分に発現させることができる。従って、上記ゴム組成物は、高弾性で、低発熱性及び耐摩耗性に優れ、該ゴム組成物を用いた本発明のタイヤは、高弾性且つ低発熱性で、耐摩耗性が大幅に向上している。
【0021】
本発明の空気入りタイヤに用いるゴム組成物のゴム成分としては、後述する変性天然ゴムの他にも、未変性の天然ゴム(NR)や、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等のジエン系合成ゴムを用いることができる。
【0022】
本発明の空気入りタイヤに用いるゴム組成物は、ゴム成分として、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体を添加し、該単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムを含むことを要し、ゴム成分100質量部中20質量部以上が該変性天然ゴムであることが好ましい。ゴム成分100質量部中20質量部以上が変性天然ゴムであれば、ゴム成分とシリカとの親和性が大幅に向上し、シリカの補強効果が十分に発揮されて、ゴム組成物の耐摩耗性及び低ロス性を大幅に向上させることができる。
【0023】
上記変性天然ゴムラテックスに用いる天然ゴムラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱タンパク質ラテックス、及びこれらを組み合せたもの等を用いることができる。
【0024】
上記天然ゴムラテックスに添加される極性基含有単量体は、分子内に少なくとも一つの極性基を有し、天然ゴム分子とグラフト重合できる限り特に制限されるものでない。ここで、該極性基含有単量体は、天然ゴム分子とグラフト重合するために、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及び含酸素複素環基を好適に挙げることができる。これら極性基を含有する単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0025】
上記アミノ基を含有する単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有する重合性単量体が挙げられる。該アミノ基を有する重合性単量体の中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有単量体が特に好ましい。これらアミノ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0026】
ここで、第1級アミノ基含有単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4-ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
また、第2級アミノ基含有単量体としては、(1)アニリノスチレン、β-フェニル-p-アニリノスチレン、β-シアノ-p-アニリノスチレン、β-シアノ-β-メチル-p-アニリノスチレン、β-クロロ-p-アニリノスチレン、β-カルボキシ-p-アニリノスチレン、β-メトキシカルボニル-p-アニリノスチレン、β-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-β-メチル-p-アニリノスチレン、α-カルボキシ-β-カルボキシ-β-フェニル-p-アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)アニリノフェニルブタジエン、1-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン、3-アニリノフェニル-2-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN-モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0028】
更に、第3級アミノ基含有単量体としては、N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられる。これらの中でも、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。
【0030】
また、上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が特に好ましい。
【0031】
上記ニトリル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0032】
上記ヒドロキシル基を含有する単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系単量体等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、m-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0033】
上記カルボキシル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0034】
上記エポキシ基を含有する単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0035】
上記含窒素複素環基を含有する単量体において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有する単量体としては、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらの中でも、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0036】
一方、上記天然ゴムラテックスに添加されるアルコキシシリル基含有単量体は、分子内にアルコキシシリル基を有し、天然ゴム分子とグラフト重合できる限り特に制限されるものでない。ここで、該アルコキシシリル基含有単量体は、天然ゴム分子とグラフト重合するために、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。該アルコキシシリル基含有単量体としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6-トリメトキシシリル-1,2-ヘキセン、p-トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0037】
本発明においては、上記極性基含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体の天然ゴム分子へのグラフト重合を、乳化重合で行う。ここで、該乳化重合においては、一般的に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記単量体を加え、更に重合開始剤を加えて、所定の温度で撹拌して単量体を重合させることが好ましい。なお、上記単量体の天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、単量体を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えてもよい。なお、天然ゴムラテックス及び/又は単量体の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0038】
上記重合開始剤としては、特に制限はなく、種々の乳化重合用の重合開始剤を用いることができ、その添加方法についても特に制限はない。一般に用いられる重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。なお、重合温度を低下させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いることが好ましい。かかるレドックス系重合開始剤において、過酸化物と組み合せる還元剤としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系重合開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組み合せとしては、tert-ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組み合せ等が挙げられる。
【0039】
上記変性天然ゴムにシリカやカーボンブラック等の充填剤を配合して、ゴム組成物の加工性を低下させることなく低ロス性及び耐摩耗性を向上させるには、各天然ゴム分子に上記単量体が少量且つ均一に導入されることが重要であるため、上記重合開始剤の添加量は、上記単量体に対し1〜100mol%の範囲が好ましく、10〜100mol%の範囲が更に好ましい。
【0040】
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜7時間反応させることで、天然ゴム分子に上記単量体がグラフト共重合した変性天然ゴムラテックスが得られる。また、該変性天然ゴムラテックスを凝固し、洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥することで変性天然ゴムが得られる。ここで、変性天然ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。
【0041】
上記変性天然ゴムラテックス及び変性天然ゴムにおいて、上記単量体のグラフト量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%の範囲が好ましく、0.1〜3.0質量%の範囲が更に好ましく、0.2〜1.0質量%の範囲がより一層好ましい。単量体のグラフト量が0.01質量%未満では、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を十分に改良できないことがある。また、単量体のグラフト量が5.0質量%を超えると、粘弾性、S−S特性(引張試験機における応力−歪曲線)等の天然ゴム本来の物理特性を大きく変えてしまい、天然ゴム本来の優れた物理特性が損なわれると共に、ゴム組成物の加工性が大幅に悪化するおそれがある。
【0042】
本発明の空気入りタイヤに用いるゴム組成物に配合されるシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。ここで、該シリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が150〜270m2/gであることが好ましく、170〜270m2/gであることが更に好ましく、190〜270m2/gであることがより一層好ましい。配合するシリカのN2SAが150m2/g未満では、タイヤのヒステリシスロス向上による耐チッピング性の改良効果が小さく、270m2/gを超えると、ゴム組成物の粘度が上昇して混練時の作業性が著しく悪化してしまう。また、該シリカの配合量は、特に限定されるものではないが、上記ゴム成分100質量部に対し1〜40質量部の範囲が好ましい。
【0043】
上記ゴム組成物は、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、タイヤの耐摩耗性が更に向上し、tanδが更に低下する。ここで、シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量の1〜20質量%の範囲が好ましい。また、該シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロへキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド等が挙げられる。
【0044】
本発明の空気入りタイヤに用いるゴム組成物に添加される同一分子内に前記ゴム成分に対する反応基aを1個以上と前記シリカに対する吸着基bを2個以上有する化合物(Z)において、ゴム成分に対する反応基aは、二重結合を有する基であって、該二重結合を活性化する基が隣接するものが好ましく、特に非芳香族共役二重結合基又はカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種が隣接した二重結合基であることが好ましい。ここで、隣接とは二重結合の両端又は一方にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種を有することをいう。
【0045】
上記化合物(Z)としては、反応基aがマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基であることが好ましく、中でもマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸から誘導される基、特にはマレイン酸、アクリル酸から誘導される基であることが最も好ましい。吸着基bに関しては、カルボキシル基が好ましい。
【0046】
また、上記化合物(Z)は、更にオキシアルキレン基を有することが好ましい。化合物(Z)がオキシアルキレン基を有する場合、ゴム成分との相溶性が更に向上し、シリカとの親和性が更に良好となる。オキシアルキレン基の平均付加モル数は、ゴム成分に対する反応基aの個数1個当たり、1〜30モルの範囲であることが好ましく、更には1〜20モル、特には2〜15モルの範囲であることが好ましい。
【0047】
上記化合物(Z)の具体例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、クエン酸等のポリカルボン酸のモノ((メタ)アクリロイルオキシアルキル)エステル(ここで((メタ)アクリロイルは、メタクリロイル又はアクリロイルを示す);マレイン酸モノリンゴ酸エステル等の不飽和カルボン酸とオキシカルボン酸との(ポリ)エステル;エチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオールとマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸との両末端にカルボキシル基を有するエステル;N-(2-カルボキシエチル)マレアミド酸等のN-(カルボキシアルキル)マレアミド酸;上記式(I)又は式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
式(I)中、R1、R2及びR3はこれらのうち一つが式−(R4O)n−CO−CR5=CR6−R7で表される基であり、他は水素原子である。ここで、R4は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基である。また、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、好ましくはR5が水素原子又はメチル基、R6及びR7が水素原子である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、更には好ましくは2〜15の数である。
【0049】
また、式(II)中、R8は、式−R9O−で示される基、式−(R10O)s−で示される基、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R11O−COR12−COO−)t11O−で示される基である。ここで、R9は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基である。また、R10は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数であり、好ましくは2〜40、更に好ましくは4〜30の数である。R11は炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族炭化水素基又は−(R13O)u13−で示される基である(ここで、R13は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜15の数である)。R12は炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。tは平均値で1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15の数である。
【0050】
これらの化合物の中では、多塩基酸の部分エステルが好ましく、式(I)又は(II)で表される化合物が更に好ましい。式(I)で表される化合物の具体例としては、トリメリット酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)エステル、トリメリット酸モノ[2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチル]エステル、トリメリット酸モノ(ω-(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレン(10))エステル等のトリメリット酸モノ(ω-(メタ)アクリロイルオキシPOA(n))エステル(ここで(メタ)アクリロイルはメタクリロイル又はアクリロイルを示し、POA(n)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均して1〜30モル付加したポリオキシエチレン(以下「POE」と略記することがある)又はポリオキシプロピレン(以下「POP」と略記することがある)を示す。)が挙げられる。
【0051】
また、式(II)で表される化合物の具体例としては、グリセリンジマレエート、1,4-ブタンジオールジマレエート、1,6-ヘキサンジオールジマレエート等のアルキレンジオールのジマレエート;1,6-ヘキサンジオールジフマレート等のアルキレンジオールのジフマレート;PEG200ジマレエート,PEG600ジマレエート等のポリオキシアルキレングリコールのジマレエート(ここでPEG200、PEG600とは、それぞれ平均分子量200又は600のポリエチレングリコールを示す);両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)マレエート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/マレイン酸ポリエステル;両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンアジペートマレエート、PEG600ジフマレート等のポリオキシアルキレングリコールのジフマレート;両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)フマレート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/フマル酸ポリエステル等が挙げられる。
【0052】
上記化合物(Z)は、分子量250以上であることが好ましく、更には250〜5000の範囲であること、特には250〜3000の範囲であることが好ましい。この範囲であると引火点が高く、安全上望ましいばかりでなく、発煙が少なく作業環境上も好ましい。尚、上記化合物(Z)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0053】
上記化合物(Z)の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部の範囲であり、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。化合物(Z)の配合量が0.5質量部未満では、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤの弾性率を向上させる効果が小さく、20質量部を超えると、著しく弾性率が向上し、またコスト高となる。
【0054】
本発明の空気入りタイヤに用いるゴム組成物に添加されるヒドラゾン化合物は、ゴム組成物の加硫戻りを抑制して、ゴム組成物を低発熱化することができる。ここで、該ヒドラゾン化合物の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し0.1〜10.0質量部の範囲である。ヒドラゾン化合物の配合量が0.1質量部未満では、ゴム組成物の加硫戻りの抑制効果及び低発熱化の効果が小さく、10.0質量部を超えると、コスト高となり、また、効果も飽和する。
【0055】
上記ヒドラゾン化合物としては、下記式(III)〜(V)で表されるヒドラゾン化合物が好ましい。
【化2】

【化3】

【化4】

【0056】
上記式(III)〜(V)において、Aは、2価の芳香族環基(結合の位置は問わず、オルト位、メタ位、パラ位の何れでもよい)、ヒダントイン環基、又は炭素数0〜18の飽和若しくは不飽和の直鎖状炭化水素基(エチレン基、テトラメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、オクタデカメチレン基、7,11-オクタデカジエニレン基等)を表す。Bは、芳香族基(フェニル基、ナフチル基等)を表す。Xは、ヒドロキシ基又はアミノ基を表す。Yは、ピリジル基又はヒドラジノ基を表す。R14〜R17は、水素、及び炭素数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族環(置換基を有していてもよく、その場合の置換基の位置は問わない)であり、それぞれ互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
上記式(III)で表されるヒドラゾン化合物としては、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ヒドラジドの誘導体であるイソフタル酸ジ(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド等が挙げられる。また、これらの他、例えば、テレフタル酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、イコサノイックジカルボン酸ジヒドラジド等の誘導体も挙げられる。これらの中でも、発熱性を悪化させることなくムーニー粘度を低減させることができる点で、イソフタル酸ジヒドラジドの誘導体が好ましい。
【0058】
上記式(IV)で表されるヒドラゾン化合物としては、例えば、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体の他、N'-(1,3-ジメチルブチリデン)サリチル酸ヒドラジド(BMS)、4-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、アントラニル酸ヒドラジド、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジドの各誘導体等が挙げられる。3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体としては、例えば、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド等の3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。これらの中でも、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体や、N'-(1,3-ジメチルブチリデン)サリチル酸ヒドラジド(BMS)の誘導体は、発熱性を悪化させることなく、ムーニー粘度を低く抑えることができる点で好ましく、効果が顕著な点で、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)の誘導体である3-ヒドロキシ-N'-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド(BMH)が特に好ましい。
【0059】
上記式(V)で表されるヒドラゾン化合物としては、例えば、イソニコチン酸(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド等のイソニコチン酸ヒドラジドの誘導体の他、炭酸ジヒドラジドの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、イソニコチン酸ヒドラジドの誘導体は、発熱性を悪化させることなく、ムーニー粘度を低減させることができる点で好ましい。
【0060】
上記式(III)〜(V)で表されるヒドラゾン化合物は、ゴム組成物の加硫戻りの抑制効果に優れ、前記ゴム成分として天然ゴムを含むゴム組成物に好適であり、高温加硫条件下でもその性能の低下が少ない。該ヒドラゾン化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記式(III)〜(V)で表されるヒドラゾン化合物は、Pant, U. C.; Ramchandran, Reena; Joshi, B. C. Rev. Roum. Chim. (1979) 24 (3), 471-82の文献に記載された方法に基いて製造することができる。
【0061】
上記ゴム組成物は、更に、無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体との部分エステルを含有することが好ましい。ゴム組成物に無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体との部分エステルを配合することにより、ゴム組成物の未加硫時の粘度を低下させることができる。ここで、無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体との部分エステルの配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し0.1〜5.0質量部の範囲が好ましく、0.2〜2.0質量部の範囲が更に好ましい。無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体との部分エステルの配合量が0.1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度の低減効果が小さく、5.0質量部を超えると、未加硫ゴム組成物の粘度を低減する効果が飽和する一方、コスト高となる。
【0062】
上記無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体との部分エステルとしては、下記式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

[式中、mは平均重合度を表わす1以上の数であり、R18はアルキレン基、R19はアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアシル基である。]
【0063】
式(VI)において、mは1〜10であることが好ましい。また、R18は、炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基又はプロピレン基であることが更に好ましく、プロピレン基であることが特に好ましい。更に、R19は、炭素数2〜28のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基であることが更に好ましい。
【0064】
式(VI)で表される化合物は、無水マレイン酸と、(ポリ)オキシアルキレン誘導体とを反応させることで得られる。ここで、(ポリ)オキシアルキレン誘導体としては、例えば、1個以上の水酸基を持った平均重合度1以上の(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物が挙げられ、好ましくは1〜2個の水酸基を持った(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物であり、特に好ましくは1個の水酸基を持った(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物である。(ポリ)オキシアルキレン誘導体としては、(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸モノエステル等のエステル型;(ポリ)オキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸アミド、(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン等の含窒素型等が挙げられるが、これらの中でもエーテル型とエステル型が好ましく、エーテル型が特に好ましい。
【0065】
上記エーテル型の(ポリ)オキシアルキレン誘導体としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレン脂肪族エーテル;ポリオキシエチレンベンジルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン芳香族エーテル等が挙げられるが、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルが好ましい。更には、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、及びポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルエーテルが好ましく、特にポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンの平均重合度が1〜10で、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜18であることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンをPOE(q)、ポリオキシプロピレンをPOP(r)と略し、q,rを各々平均重合度とすれば、POE(3)オクチルエーテル、POE(4)2-エチルヘキシルエーテル、POE(3)デシルエーテル、POE(5)デシルエーテル、POE(3)ラウリルエーテル、POE(8)ラウリルエーテル、POE(1)ステアリルエーテル、POP(3)ラウリルエーテル、POP(5)ラウリルエーテル、POP(5)ミリスチルエーテル等が挙げられる。上記(ポリ)オキシアルキレン誘導体は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0066】
上記ゴム組成物には、カーボンブラックを配合することもできる。この場合、該カーボンブラックの配合量は、前記ゴム成分100質量部に対して20〜80質量部の範囲が好ましく、30〜60質量部の範囲が更に好ましい。カーボンブラックの配合量が20質量部未満では、タイヤの低発熱化に優れるものの耐摩耗性が著しく低下し、80質量部を超えると、タイヤの発熱性が著しく上昇し、且つゴム組成物の混練時の作業性が著しく低下してしまう。該カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が30〜160m2/gで且つジブチルフタレート(DBP)吸油量が60〜150mL/100gであることが好ましい。カーボンブラックのN2SAが30m2/g未満又はDBP吸油量が60mL/100g未満では、タイヤの低発熱化に優れるものの耐摩耗性等の破壊特性が著しく低下し、N2SAが160m2/g超又はDBP吸油量が150mL/100g超では、ゴム組成物の混練時の作業性が著しく低下してしまう。
【0067】
上記ゴム組成物には、上記ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、化合物(Z)、ヒドラゾン化合物、無水マレイン酸の部分エステル、カーボンブラックの他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。上記ゴム組成物は、少なくとも上記変性天然ゴムを含むゴム成分に、シリカと、化合物(Z)と、ヒドラゾン化合物と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0068】
本発明の空気入りタイヤは、上述のように高弾性且つ低発熱性で耐摩耗性が改善されたゴム組成物をタイヤ部材に適用してなるため、重荷重用空気入りタイヤとして好適である。また、該タイヤは、悪路走行用のオフロードタイヤとして特に好適である。なお、本発明の空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0069】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
<変性天然ゴムの製造例1>
(天然ゴムラテックスの変性反応工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、重合開始剤としてtert-ブチルハイドロパーオキサイド 1.2gとテトラエチレンペンタミン 1.2gとを加え、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
【0071】
(凝固及び乾燥工程)
上記変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴム−1を得た。このようにして得られた変性天然ゴム−1の質量から、単量体として加えたN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が100%であることが確認された。また、該変性天然ゴム−1を石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたが、抽出物を分析したところホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、得られた変性天然ゴム−1における単量体のグラフト量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.5質量%である。
【0072】
<変性天然ゴムの製造例2>
単量体としてN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gの代わりに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート 2.1gを加える以外は、上記製造例1と同様にして変性天然ゴム−2を得た。また、変性天然ゴム−1と同様にして、変性天然ゴム−2を分析したところ、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、得られた変性天然ゴム−2における単量体のグラフト量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.35質量%である。
【0073】
<変性天然ゴムの製造例3>
単量体としてN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gの代わりに、4-ビニルピリジン 1.7gを加える以外は、上記製造例1と同様にして変性天然ゴム−3を得た。また、変性天然ゴム−1と同様にして、変性天然ゴム−3を分析したところ、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、得られた変性天然ゴム−3における単量体のグラフト量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.28質量%である。
【0074】
次に、表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、その弾性率を以下の方法で評価した。また、該ゴム組成物をトレッドに用い、通常の加硫条件で加硫して、サイズ3700R57のタイヤ(オフロードタイヤ)を試作し、下記に示す方法で発熱性及び耐摩耗性を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
(1)弾性率
上記ゴム組成物を加硫したサンプルについて、東洋精機社製スペクトロメーターを用い、歪1%、50Hz、測定温度25℃にて動的貯蔵弾性率(E')を測定し、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きい程、弾性率が高く、剛性が高いことを示す。
【0076】
(2)発熱性
上記供試タイヤに対し、一定速度・ステップロード条件のドラムテストを実施し、タイヤトレッド内部の一定深さ位置の温度を測定し、比較例1の値を100として指数表示した。指数値が大きい程、温度が低く、低発熱化の効果が大きいことを示す。
【0077】
(3)耐摩耗性
上記供試タイヤをオフロードカーの4輪に装着して2000時間走行した後、
走行距離/(トレッドの走行前溝深さ−走行後溝深さ)
を算出し、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きい程、耐摩耗性が高く良好であることを示す。
【0078】
【表1】

【0079】
*1〜*3 上記方法で合成した変性天然ゴム.
*4 JSR(株)製, #1500.
*5 モノ[POP(5)ラウリルエーテル]マレイン酸エステル.
*6 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン, 大内新興化学(株)製, ノクラック6C.
*7 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド, 大内新興化学工業(株)製, ノクセラーCZ.
*8 ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド, デグッサ製, Si69.
*9 3-ヒドロキシ-N'-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド.
*10 トリメリット酸モノアクリレート, 式(I)において、R1及びR2がHで;R3が−(C24O)10−CO−CH=CH2(即ち、R4がC24で, R5、R6及びR7がH)である化合物.
*11 ポリブタンジオールマレートポリエステル, 式(II)において、R8が−(R11O−COR12−COO−)t11O−で示される基であり;R11がブチレン基で、R12が−CH=CH−で;t=4の化合物.
*12 ポリPEG200マレートポリエステル, 式(II)において、R8が−(R11O−COR12−COO−)t11O−で示される基であり;R11が−(R13O)u13−(R13がエチレン基, u=3.5)で;R12が−CH=CH−で;t=4の化合物.
【0080】
表1中、充填剤の種類及び配合量が同じ実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、並びに実施例4と比較例3の比較から、天然ゴムに代えて変性天然ゴムを使用し、更に、化合物(Z)及びヒドラゾン化合物を配合することで、ゴム組成物の弾性率が大幅に向上することが分る。また、実施例2〜4及び実施例5〜7から、化合物(Z)を増量するに従い、ゴム組成物の弾性率が向上することが分る。そして、これら実施例のゴム組成物をトレッドに用いた各実施例のタイヤは、発熱性が低く、耐摩耗性も向上していた。更に、実施例8から、SBRを増量することで、発熱性が上昇するものの、ゴム組成物の弾性率を上昇させることができ、該ゴム組成物を用いることで、タイヤの耐摩耗性を改善できることが分る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分に対して、シリカと、同一分子内に前記ゴム成分に対する反応基aを1個以上有し且つ前記シリカに対する吸着基bを2個以上有する化合物(Z)と、ヒドラゾン化合物とを配合してなり、
前記ゴム成分が、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体を添加し、該単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムを含み、
前記化合物(Z)の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、
前記ヒドラゾン化合物の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とするゴム組成物をタイヤ部材に使用してなる空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記極性基含有単量体の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記変性天然ゴムにおける前記単量体のグラフト量が、前記天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記化合物(Z)の吸着基bがカルボキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記化合物(Z)の反応基aが、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基であることを特徴とする請求項1又は4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記化合物(Z)が、更にオキシアルキレン基を有することを特徴とする請求項1、4及び5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記化合物(Z)が多塩基酸の部分エステルであることを特徴とする請求項1及び4〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記化合物(Z)が、下記式(I)及び(II)の何れかで表される化合物であることを特徴とする請求項1及び4〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【化1】

[式中、R1、R2及びR3はこれらのうち一つが式−(R4O)n−CO−CR5=CR6−R7で表される基であり(ここで、R4は炭素数2〜4のアルキレン基で;R5、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基で;nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)、他は水素原子である。]
HOOC−CH=CH−COO−R8−CO−CH=CH−COOH ・・・ (II)
[式中、R8は、式−R9O−で示される基、式−(R10O)s−で示される基、式−CH2CH(OH)CH2O−で示される基又は式−(R11O−COR12−COO−)t11O−で示される基である。ここで、R9は炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;R10は炭素数2〜4のアルキレン基で;sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数で;R11は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基,2価の芳香族炭化水素基又は−(R13O)u13−で示される基で(ここで、R13は炭素数2〜4のアルキレン基で;uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である);R12は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基で;tは平均値で1〜30の数である。]
【請求項9】
前記ゴム組成物が、更に、前記ゴム成分100質量部に対して無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体との部分エステル0.1〜5.0質量部を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記シリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が150〜270m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記ゴム組成物のゴム成分が、前記変性天然ゴムを100質量部中20質量部以上含むことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ゴム組成物が、窒素吸着比表面積(N2SA)が30〜160m2/gで且つジブチルフタレート(DBP)吸油量が60〜150mL/100gであるカーボンブラックを前記ゴム成分100質量部に対して20〜80質量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記空気入りタイヤが重荷重用空気入りタイヤであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記重荷重用空気入りタイヤがオフロードタイヤであることを特徴とする請求項13に記載の空気入りタイヤ。



【公開番号】特開2006−143830(P2006−143830A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334196(P2004−334196)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】