説明

空気入りタイヤ

【課題】軽量化と操縦安定性の両立を実現することが可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、一対のビード部3に各々埋設されたビードコア13と、該ビードコア13間にトロイダルに延びるカーカス本体部9aおよび該カーカス本体部9bから延びビードコア13の周りに内側から外側に折り返されたカーカス折返し部9bからなるカーカス9と、を備え、ビードコア13が、断面平行四辺形のビードワイヤ22をタイヤ幅方向に2列以上、タイヤ径方向に2段以上積み重ねてなる。また、空気入りタイヤ1は、ビードコア13とカーカス9との間に、有機繊維コードをゴム被覆してなる繊維補強層28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードコアを、断面平行四辺形のビードワイヤをタイヤ幅方向に2列以上、タイヤ径方向に2段以上に積み重ねて構成することにより、所定の耐久性を確保しつつ、ビードコアの小型化による軽量化を図った空気入りタイヤにつき、軽量化と操縦安定性の両立を実現しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、市場での環境性能への関心の高まりから、転がり抵抗の低減が求められており、転がり抵抗を低減する手段の一つにタイヤの軽量化が挙げられる。そして、タイヤを構成する種々の部材うち、重量の比較的大きな部材はビードコアであるから、該ビードコアを小型化することがタイヤの軽量化を図る上で有効であるといえる。
【0003】
ところで、特許文献1には、ビードコアを構成するビードワイヤの形状の適正化を図ることによって、隣り合うビードワイヤ間の係合力を増大させてビードコアの回転剛性(空気充填時、荷重負荷時および経時変化時等にビードコアに加えられる回転応力に対抗する力)を増大させ、もって、ビード部の耐久性を大幅に向上させる発明が提案されており、この特許文献1の発明を利用すれば、所定の耐久性を確保しつつも、ビードコアをある程度小さくして軽量化を図ること可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/126875号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、特許文献1の発明を利用してビードコアの小型化を図った場合、ビード部の剛性が低下し、操縦安定性が低下するという問題が浮上する。
【0006】
それゆえ、本発明は、ビードコアを、断面平行四辺形のビードワイヤをタイヤ幅方向に2列以上、タイヤ径方向に2段以上に積み重ねて構成することにより、所定の耐久性を確保しつつ、ビードコアの小型化による軽量化を図った空気入りタイヤにつき、軽量化と操縦安定性の両立を実現することが可能な空気入りタイヤを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部に各々埋設されたビードコアと、該ビードコア間にトロイダルに延びるカーカス本体部および該カーカス本体部から延び前記ビードコアの周りに内側から外側に折り返されたカーカス折返し部からなるカーカスと、を備え、前記ビードコアが、断面平行四辺形のビードワイヤをタイヤ幅方向に2列以上、タイヤ径方向に2段以上積み重ねてなる空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアと前記カーカスとの間に、有機繊維コードをゴム被覆してなる繊維補強層を備えることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明の空気入りタイヤにあっては、空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、前記繊維補強層の、タイヤ幅方向でみて内側に位置する端部を、前記カーカスのタイヤ径方向最内側位置を基準に、該カーカスの高さの20〜70%の間に配置してなることが好ましい。ここで所定のリムとは、所定の産業規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または“Approved Rim”、“Recommended Rim”)のことであり、所定の内圧とは同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことである。かかる産業規格については、タイヤが生産もしくは使用される地域においてそれぞれ有効な規格が定められており、これらの規格は、例えば、アメリカ合衆国では“The Tire and Rim Association Inc. Year Book”(デザインガイドを含む)により、欧州では、“The European Tire and Rim Technical Organization Standards Manual”により、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA YEAR BOOK”によりそれぞれ規定されている。
【0009】
また、本発明の空気入りタイヤにあっては、空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、前記繊維補強層の両端部をそれぞれ、前記カーカスの折り返し端部よりもタイヤ径方向内側に配置してなることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の空気入りタイヤにあっては、前記空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、前記ビードコアの中心を通りタイヤ幅方向に平行な直線とビード部表面との交点間の距離を、前記リムのビードシートと前記ビード部との接触領域のタイヤ幅方向長さ以下とすることが好ましい。
【0011】
しかも、本発明の空気入りタイヤにあっては、前記空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、前記ビード部の外表面が前記リムのリムフランジに接触する点から前記カーカス本体部に対して垂直に引いた直線と前記カーカスとの交点間の距離を、前記ビードコアの中心を通りタイヤ幅方向に平行な直線と前記カーカスとの交点間の距離に対して80%以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空気入りタイヤによれば、断面平行四辺形のビードワイヤをタイヤ幅方向に2列以上、タイヤ径方向に2段以上積み重ねてビードコアを構成したことから、隣り合うビードワイヤ間の係合力の増大によりビードコアの回転剛性を増大させることができるので、ビードコアを小型化しても所定のビード部耐久性を確保することができる。また、ビードコアとカーカスとの間に有機繊維コードをゴム被覆してなる繊維補強層を配置したことから、繊維補強層のコードとカーカスのコードとの箍効果によりビード部の剛性を向上させることができ、すなわちタイヤ負荷転動時のケースの変形を抑制することができ、操縦安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にしたがう実施形態の空気入りタイヤと適用リムとの組立体の半断面図である。
【図2】図1のタイヤの一方のビード部に埋設されたビードコアを示す断面図である。
【図3】図1のタイヤの一方のビード部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明にしたがう他の実施形態の空気入りタイヤと適用リムとの組立体における一方のビード部の拡大断面図である。
【図5】本発明にしたがうさらに他の実施形態の空気入りタイヤと適用リムとの組立体における一方のビード部の拡大断面図である。
【図6】本発明にしたがうさらに他の実施形態の空気入りタイヤと適用リムとの組立体における一方のビード部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部3と、その両側に連なる一対のサイドウォール部5およびビード部7とを有する。また、空気入りタイヤ1は、ラジアル配列の少なくとも一枚のカーカスプライからなるカーカス9と、カーカス9のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト11とを有する。なお、空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面Eの両側で同じ構成を有する。
【0016】
カーカス9は、一対のビード部7内に埋設されたビードコア13相互間でトロイダルに延び、トレッド部3、一対のサイドウォール部5および一対のビード部7を補強するカーカス本体部9aと、カーカス本体部9aから延びビードコア13の周りをタイヤ径方向の内側から外側へ折り返されたカーカス折返し部9bとを有する。
【0017】
ベルト11は、カーカス9の外周側に位置し、トレッド部3を強化する。図示例のベルト11は、各々スチールコードをゴム被覆してなり、互いにスチールコードが交錯するよう配置された2枚のベルト層15、16と、該ベルト層15、16の外周側に配置されたキャップ層17と、狭幅のレイヤー層18とを有してなる。キャップ層17およびレイヤー層18はそれぞれ、有機繊維コードをゴム被覆してなる。
【0018】
また、ビードコア13は、図2(a)に拡大して示すように、ビードワイヤ22をタイヤ幅方向に2列以上(ここでは8列)、タイヤ径方向に2段以上(ここでは6段)に積み重ねて構成されてなる。ビードワイヤ22のタイヤ幅方向の断面形状は、一対の鋭角隅部をなす第1鋭角隅部24aおよび第2鋭角隅部24bと、一対の鈍角隅部をなす第1鈍角隅部26aおよび第2鈍角隅部26bとを有する平行四辺形であり、第1鋭角隅部24aは、第2鋭角隅部24bのタイヤ幅方向外側(図2(a)では左方側)であってタイヤ径方向内側(図2(a)では下方側)にあり、第1鈍角隅部26aは、第1鋭角隅部24aのタイヤ幅方向内側(図2(a)では右方側)であってタイヤ径方向外側(図2(a)では上方側)にあり、第2鈍角隅部26bは、第1鋭角隅部24aのタイヤ幅方向内側であり、かつタイヤ径方向において第1鋭角隅部24aと同一位置またはこれより内側にある。したがって、ビードコア13のタイヤ幅方向の断面形状は略四角形に形成されている。ここでいう「ビードコア13のタイヤ幅方向の断面形状」とは、タイヤ幅方向最内側に位置するビードワイヤ22の第2鋭角隅部24bを通る直線n1と、タイヤ幅方向最外側に位置するビードワイヤ22の第1鋭角隅部24aを通る直線n2と、ビードコア13の上面(タイヤ径方向外側の面)に沿う直線n3と、ビードコア13の下面(タイヤ径方向内側の面)に沿う直線n4とで囲まれた形状を指すものとする。また、「略四角形」とは、ビードコア13の、タイヤ幅方向に対向する辺が直線状に延びるもののみならず、図2(a)に示すように、該辺が、積層されるビードワイヤ22間の段差によってジグザグ状に延びるものも含む意味である。このようにビードコア13の、タイヤ幅方向に対向する辺をジグザグ状に形成することで、該辺を直線状に形成する場合と比べて、周囲のゴムとの係合力が高まり、ビードコア13の回転を一層抑制することができる。なお、ビードワイヤ22は、図2(b)に示すように、タイヤ径方向に上下に隣接するビードワイヤ22の第1鋭角隅部24aと第1鈍角隅部26aとが互いに接触するように配置してもよい。
【0019】
そして、空気入りタイヤ1は、図3に拡大して示すように、ビードコア13とカーカス9との間に、有機繊維コードをゴム被覆してなる少なくとも1枚(ここでは1枚)の繊維補強層28を備える。有機繊維コードとしては、特に限定されるものではなく、例えば、アラミド繊維、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等からなるコードを用いることができる。有機繊維コードは、カーカスプライを構成するコードに対して傾斜して配列されるものである。このような配列とすることで、繊維補強層28のコードとカーカス9のコードとの箍効果により、カーカス9の変形を抑制することができるからである。ここでは、繊維補強層28を構成する有機繊維コードは周方向に沿って配列されている。
【0020】
このようになる空気入りタイヤ1にあっては、ビードワイヤ22のタイヤ幅方向断面を平行四辺形断面とし、かつタイヤ幅方向に隣接するビードワイヤ22の隣接面を、所定方向に作用する応力(カーカスを引き抜こうとする方向に作用する応力)を伝達し易い方向に互いに向き合わせたことから、隣り合うビードワイヤ22間の係合力の増大によりビードコアの回転剛性を増大させることができるので、ビードコア13を小型化しても所定のビード部耐久性を確保することができる。また、ビードコア13とカーカス9との間に有機繊維コードをゴム被覆してなる繊維補強層28を配置したことから、繊維補強層28のコードとカーカス9のコードとの箍効果によりビード部7の剛性を向上させることができ、すなわちタイヤ負荷転動時のケースの変形を抑制することができ、操縦安定性を向上させることができる。
【0021】
なお、本実施形態においては、空気入りタイヤ1を所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した内圧充填状態において、繊維補強層28の、タイヤ幅方向でみて内側に位置する端部28aは、カーカス9のタイヤ径方向最内側位置を基準に、該カーカス9の高さH(図1参照)の20〜70%の間に配置している(0.2H≦h≦0.7H)。これによれば、荷重負荷時にプライコード間が開くのを補強層28の箍効果で抑えることができ、タイヤが変形(撓み変形)し難くなり、結果としてケースの剛性を高めることができる。
【0022】
また、上記内圧充填状態において、繊維補強層28の両端部28a、28bをそれぞれ、カーカス9の折り返し端部よりもタイヤ径方向内側に配置することで、軽量化を図ることができる。
【0023】
さらに、本実施形態においては、図3に示すように、上記内圧充填状態にて、ビードコア13の中心を通りタイヤ幅方向に平行な直線M1とビード部7の表面との交点P1、P2間の距離Aを、リムのビードシートとビード部7との接触領域のタイヤ幅方向長さPよりも小さくまたは同じ(A≦P)としても所望の操縦安定性を確保することができる。
【0024】
しかも、本実施形態においては、上記内圧充填状態において、ビード部7の外表面がリムのリムフランジに接触する点からカーカス本体部9aに対して垂直に引いた直線M2とカーカス9との交点Q1、Q2間の距離aを、ビードコア13の中心を通りタイヤ幅方向に平行な直線M1とカーカス9との交点S1、S2間の距離bに対して80%以下としている(a/b≦0.8)。a/bを0.8以下としても、a/bを0.8超とした場合と比べて操縦安定性が低下しないことから、このようにすることで、軽量化を図ることができる。
【0025】
次いで、本発明にしたがう他の複数の実施の形態について図面を参照して説明する。先の実施形態で示した空気入りタイヤ1と同様の部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0026】
図4〜6に示す実施形態の空気入りタイヤ1は、図1〜3に示した実施形態と同様にビードコア13とカーカス9との間に繊維補強層28を備えているが、この繊維補強層28に加えて他の補助的な繊維補強層を備えている点で図1〜3の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する補助繊維補強層を構成するコードは、カーカスプライのコードに対して傾斜して配列されるものである。
【0027】
すなわち、図4に示す実施形態では、カーカス本体部9aとタイヤ内面(インナーライナ)との間に有機繊維コードをゴム被覆してなる補助繊維補強層30を配置している。この場合、補助繊維補強層30のタイヤ径方向内側の端部30aと、繊維補強層28の、タイヤ幅方向の内側に位置する端部28aとは、タイヤ径方向に互いに重複させることが好ましい。かかる実施形態の空気入りタイヤ1によれば、繊維補強層28に加えて補助繊維補強層30がビード部7を補強するようになるので、ビード部7の剛性をさらに高めることができ、操縦安定性をより一層向上させることができる。また、補助繊維補強層30のタイヤ径方向内側の端部と、繊維補強層28の、タイヤ幅方向の内側に位置する端部28aとは、タイヤ径方向に互いに重複させることで、箍効果が補助繊維補強層30と繊維補強層28とのオーバーラップ分増大させることができる。
【0028】
また、図5に示す実施形態では、ビードコア13とカーカス9の間の繊維補強層28に加えて、有機繊維コードをゴム被覆してなりカーカス本体部9aの外面(タイヤ幅方向外側の面)に沿って配置された2枚の補助繊維補強層32、33を備えている。これらの繊維補強層28および補助繊維補強層32、33は、互いにタイヤ径方向に離間して配置されている。
【0029】
さらに、図6に示す実施形態では、繊維補強層28に加えて、カーカス本体部9aの外面(タイヤ幅方向外側の面)に沿って2枚の補助繊維補強層を備えている点は、図5の実施形態の空気入りタイヤ1と同じであるが、本実施形態では、補助繊維補強層35、36は互いに重なり合って配置されている。かかる実施形態の空気入りタイヤ1によれば、補助繊維補強層35、36のオーバーラップ分、箍効果を増大させることができる。
【実施例】
【0030】
次いで、供試タイヤとして、従来技術に係る空気入りタイヤ(従来例のタイヤ)、本発明にしたがう空気入りタイヤ(実施例1〜10のタイヤ)、および比較としての空気入りタイヤ(比較例のタイヤ)を試作し、それぞれのタイヤについて性能評価を行ったので、以下説明する。なお、供試タイヤは全て、タイヤサイズが275/80R22.5である。
【0031】
ここで、従来例のタイヤは、丸素線のビードワイヤを周状に巻回して形成した断面略六角形のビードコアをビード部に有するとともに、ビードコアとカーカスとの間に繊維補強層を備えていない。その他の構成は、図1に示す空気入りタイヤと同じである。
【0032】
実施例1〜10のタイヤは、断面平行四辺形のビードワイヤをタイヤ幅方向に8列、タイヤ径方向に6段積み重ねて構成されるビードコアをビード部に有するとともに、ビードコアとカーカスとの間に有機繊維コードとしてナイロン製のコードをゴム被覆してなる繊維補強層を備えるものであり、その詳細は、表1に示すとおりである。なお、実施例1〜10のタイヤは全て、ビードワイヤの使用量(総重量)を、従来例のタイヤのビードワイヤの使用量(総重量)の78%としている。また、実施例10のタイヤは、繊維補強層に加えて、補助繊維補強層を備えている点で実施例1〜9のタイヤと異なる。また、表1において、「h/H」とは、タイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、カーカスのタイヤ径方向最内側位置からカーカスのタイヤ径方向最外側位置までの距離Hに対する、カーカスのタイヤ径方向最内側位置から繊維補強層の、タイヤ幅方向でみて内側に位置する端部までの距離hの比率を示すものである。
【0033】
【表1】

【0034】
比較例1のタイヤは、繊維補強層を有していない点を除いて、実施例4のタイヤと概ね同じ構成を有し、また、ビードワイヤの使用量(総重量)は、従来例のタイヤのビードワイヤの使用量(総重量)の78%である。
【0035】
(ビード部の耐久性の試験)
上記供試タイヤをサイズ8.25J×22.5のリムに組み付け、内圧900kPa(相対圧)を適用し、タイヤ負荷荷重57kN、走行速度60km/h、室温46℃の条件下でドラム試験機上を走行させ、ビード部に故障が発生する走行距離を計測することにより、ビード部の耐久性を評価した。その評価結果を表2に示す。なお、表中のビード部耐久性は、従来例のタイヤの走行距離を100とし、実施例1〜10のタイヤおよび比較例のタイヤの走行距離をそれぞれ指数で表したものであり、その数値が大きいほどビード部の耐久性に優れることを意味する。
【0036】
(操縦安定性の試験)
上記供試タイヤをサイズ8.25J×22.5のリムに組み付け、テスト車両(2D4トラック)の全軸に装着し、内圧900kPa(相対圧)の下、ドライ路面のテストコースを走行したときのテストドライバーのフィーリングにより操縦安定性を評価した。その評価結果を表2に示す。なお、操縦安定性の評価は5段階とし、数値が大きいほど操縦安定性が良好であることを示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示すとおり、本発明の適用により、ビードコアの小型化、すなわちタイヤの軽量化を図りつつもビード部の耐久性を確保できることが分かる。また、ビードコアの小型化を図りつつも操縦安定性を確保できることが分かる。とくに、繊維補強層に加えて補助繊維補強層を有する実施例10のタイヤでは、より一層優れた操縦安定性を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
かくして、本発明により、ビードコアを、断面平行四辺形のビードワイヤをタイヤ幅方向に2列以上、タイヤ径方向に2段以上に積み重ねて構成することにより、所定の耐久性を確保しつつ、ビードコアの小型化による軽量化を図った空気入りタイヤにつき、軽量化と操縦安定性の両立を実現することが可能な空気入りタイヤを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0040】
1 空気入りタイヤ
3 トレッド部
5 サイドウォール部
7 ビード部
9 カーカス
9a カーカス本体部
9b カーカス折返し部
11 ベルト
13 ビードコア
22 ビードワイヤ
28 繊維補強層
30、32、33、35、36 補助繊維補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部に各々埋設されたビードコアと、該ビードコア間にトロイダルに延びるカーカス本体部および該カーカス本体部から延び前記ビードコアの周りに内側から外側に折り返されたカーカス折返し部からなるカーカスと、を備え、前記ビードコアが、断面平行四辺形のビードワイヤをタイヤ幅方向に2列以上、タイヤ径方向に2段以上積み重ねてなる空気入りタイヤにおいて、
前記ビードコアと前記カーカスとの間に、有機繊維コードをゴム被覆してなる繊維補強層を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、
前記繊維補強層の、タイヤ幅方向でみて内側に位置する端部を、前記カーカスのタイヤ径方向最内側位置を基準に、該カーカスの高さの20〜70%の間に配置してなる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、
前記繊維補強層の両端部をそれぞれ、前記カーカスの折り返し端部よりもタイヤ径方向内側に配置してなる、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、
前記ビードコアの中心を通りタイヤ幅方向に平行な直線とビード部表面との交点間の距離を、前記リムのビードシートと前記ビード部との接触領域のタイヤ幅方向長さ以下とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記空気入りタイヤを所定のリムに装着し、所定の内圧を適用した状態において、
前記ビード部の外表面が前記リムのリムフランジに接触する点から前記カーカス本体部に対して垂直に引いた直線と前記カーカスとの交点間の距離を、前記ビードコアの中心を通りタイヤ幅方向に平行な直線と前記カーカスとの交点間の距離に対して80%以下とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100062(P2013−100062A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245920(P2011−245920)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)