説明

空気入りタイヤ

【課題】ラテラルハイドロ性能、及び操縦安定性能をより向上させる。
【解決手段】車両装着内側のトレッド接地端よりもタイヤ軸方向外側からタイヤ赤道面を越えて内側にのびかつセンタリブ内で途切れる内側傾斜横主溝を具える。車両装着内側のショルダリブには、内側傾斜横主溝間でトレッド接地端よりもタイヤ軸方向外側から内側にのびかつショルダリブ内で途切れる内側ショルダ横溝が設けられる。車両装着外側のショルダリブには、トレッド接地端よりもタイヤ軸方向外側から内側にのびかつショルダリブ内で途切れる外側ショルダ横溝が設けられる。車両装着内側のミドルリブには、前記内側傾斜横主溝間にショルダ主溝から内側にのびかつミドルリブ内で途切れる内側ミドル横溝が設けられる。車両装着外側のミドルリブには、ショルダ主溝からタイヤ軸方向内側にのびかつミドルリブ内で途切れる外側ミドル横溝と外側ミドル横副溝とが設けられる。外側ミドル横副溝の総形成数は、内側ミドル横溝の総形成数よりも少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエット性能の低下を抑制しつつ操縦安定性能を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ウエット性能の低下を抑制しつつ操縦安定性能を向上させた空気入りタイヤとして、例えば図5に示す如きトレッドパターンのタイヤが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このタイヤは、タイヤ赤道面Coの両側に設ける各一対のセンタ主溝aとショルダ主溝bとにより、トレッド部をセンタリブr1とミドルリブr2、r2とショルダリブr3、r3との5本のリブに区分している。そして前記センタリブr1には、車両装着内側のセンタ主溝aiからタイヤ赤道面Coを越えた位置で車両装着外側のセンタ主溝aoに達することなく向き変えしてタイヤ赤道面Coよりも車両装着内側で途切れる複数本の湾曲傾斜溝y1が形成されている。各湾曲傾斜溝y1はタイヤ赤道面Co上で互いに交差し、これにより前記センタリブr1を、タイヤ周方向に連続する車両装着外側のリブ部分eと、湾曲傾斜溝y1、y1間で囲まれるブロックfの列とに区分している。又車両装着内側のミドルリブr2i、ショルダリブr3iは、横溝y2i、y3iにより複数のブロックh、iに区分されるとともに、車両装着外側のショルダリブr3oは、横溝y3oにより複数のブロックjに区分されている。
【0004】
このタイヤでは、例えば前記湾曲傾斜溝y1と横溝y2i、y3iとが一連に連なり、1本の長い傾斜横溝Yとして機能するなど、車両装着内側のトレッド半部分において優れた排水性を発揮しうる。しかし車両装着外側のミドルリブr2oでは排水性が充分とは言えず、旋回時のウエット性能、所謂ラテラルハイドロ性能を不充分なものとしている。又パターン剛性においても充分とは言い難く、このラテラルハイドロ性能、及び操縦安定性能の点で改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−6987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、車両装着内側のトレッド接地端よりもタイヤ軸方向外側からタイヤ赤道面を越えてタイヤ軸方向内側にのびかつセンタリブ内で途切れる内側傾斜横主溝を設けるとともに、車両装着内側外側における各ミドルリブ及び各ショルダリブに、各リブ内で途切れる所定の横溝を設けることを基本として、ラテラルハイドロ性能、及び操縦安定性能をより向上させうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、トレッド部に、タイヤ赤道面の両側を周方向にのびる一対のセンタ主溝と、このセンタ主溝の外側を周方向にのびる一対のショルダ主溝とが設けられることにより、前記トレッド部に、センタ主溝間のセンタリブと、センタ主溝とショルダ主溝との間のミドルリブと、ショルダ主溝よりもタイヤ軸方向外側のショルダリブとが形成され、しかも車両装着時にタイヤ赤道面よりも車両外側となる車両装着外側のトレッド半部分のランド比が、車両装着内側のトレッド半部分のランド比よりも大とした非対称パターンを具えた空気入りタイヤであって、
車両装着内側のトレッド接地端よりもタイヤ軸方向外側からタイヤ赤道面を越えてタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着外側の前記センタ主溝と交差することなく途切れるとともに周方向に隔設される内側傾斜横主溝を具え、
車両装着内側の前記ショルダリブには、周方向に隣り合う前記内側傾斜横主溝間に、トレッド接地端のタイヤ軸方向外側からタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着内側の前記ショルダ主溝に達することなく途切れる内側ショルダ横溝が設けられ、
車両装着外側の前記ショルダリブには、トレッド接地端のタイヤ軸方向外側からタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着外側の前記ショルダ主溝に達することなく途切れる外側ショルダ横溝が周方向に隔設され、
車両装着内側の前記ミドルリブには、周方向に隣り合う前記内側傾斜横主溝間に、車両装着内側の前記ショルダ主溝からタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着内側の前記センタ主溝に達することなく途切れる内側ミドル横溝が設けられ、
車両装着外側の前記ミドルリブには、車両装着外側のショルダ主溝からタイヤ軸方向内側にのび、車両装着外側のセンタ主溝に達することなく途切れる外側ミドル横溝と、この外側ミドル横溝間に配されかつ該外側ミドル横溝よりもタイヤ軸方向外側で途切れる外側ミドル横副溝とが設けられるとともに、
前記外側ミドル横副溝の総形成数は、前記内側ミドル横溝の総形成数よりも少ないことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記センタリブには、車両装着外側の前記センタ主溝からタイヤ赤道面側にのびるセンタ外側サイピングが周方向に隔設され、
車両装着外側の前記ミドルリブには、車両装着外側の前記センタ主溝から前記外側ミドル横溝のタイヤ軸方向内側端部までのびる外側ミドル第1サイピングと、周方向に隣り合う前記外側ミドル第1サイピング間をのびかつ車両装着外側の前記ショルダ主溝に達することなく途切れる外側ミドル第2サイピングとが設けられるとともに、
前記車両装着外側の前記センタ主溝にはサイピングのみ交差することを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明では、車両装着外側の前記ミドルリブは、前記外側ミドル横溝と交差するとともに、前記外側ミドル横副溝のタイヤ軸方向内側端部及び前記外側ミドル第2サイピングのタイヤ軸方向外側端部を通って周方向にのびる外側ミドル補助溝を具えることを特徴としている。
【0010】
又請求項4の発明では、前記内側傾斜横主溝のピッチ数は前記外側ミドル横溝のピッチ数と同数であり、かつ前記内側ミドル横溝は前記内側傾斜横主溝間に2本づつ設けられ、かつ前記外側ミドル横副溝は前記外側ミドル横溝間に1本づつ設けられることを特徴としている。
【0011】
又請求項5の発明では、車両装着内側の前記ミドルリブは、前記内側ミドル横溝のタイヤ軸方向内側端部から、周方向に隣り合う内側ミドル横溝のタイヤ軸方向内側端部を通って前記内側傾斜横主溝までのびる周方向の内側ミドル補助溝を具えることを特徴としている。
【0012】
又請求項6の発明では、車両装着内側の前記ショルダリブには、車両装着内側のショルダ主溝の近傍領域に周方向にのびる複数本の周方向サイピングが設けられることを特徴としている。
【0013】
なお前記トレッド接地端とは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規状態のタイヤに、正規荷重の88%の荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときのトレッド接地面のタイヤ軸方向最外端を意味する。特に断りがない場合、トレッド部2の各部の寸法は、上記正規状態での値とする。
【0014】
又前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"を意味するが、乗用車用タイヤの場合には180kPaとする。前記「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0015】
又本明細書において溝巾とは、トレッド面における溝巾を意味し、又溝深さとは、トレッド面からの最大の溝深さを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は叙上の如く、車両装着内側のトレッド接地端よりもタイヤ軸方向外側からタイヤ赤道面を越えてタイヤ軸方向内側にのびる長い内側傾斜横主溝、車両装着内側のショルダリブに設ける内側ショルダ横溝、車両装着内側のミドルリブに設ける内側ミドル横溝、車両装着外側のショルダリブに設ける外側ショルダ横溝、及び車両装着外側のミドルリブに設ける外側ミドル横溝と外側ミドル横副溝とにより、優れたウエット性能を発揮しうる。特に、前記内側傾斜横主溝が、車両装着内側のトレッド半部分の全域を滑らかにのびるため、高い排水性を発揮し、タイヤ全体のウエット性能の確保に貢献しうる。
【0017】
又前記外側ミドル横溝と外側ミドル横副溝とにより、車両装着外側のミドルリブに排水性が確保されるため、前記外側ショルダ横溝と協働してラテラルハイドロ性能を向上させることができる。特にラテラルハイドロ性能は、排水性以外にもパターン剛性が重要となるが、前記外側ミドル横副溝の総形成数を内側ミドル横溝の総形成数よりも小として、剛性と排水性とをバランス化させているため、ラテラルハイドロ性能をより向上させることが可能となる。
【0018】
しかも前記内側傾斜横主溝、内側ショルダ横溝、内側ミドル横溝、外側ショルダ横溝、外側ミドル横溝、及び外側ミドル横副溝の各タイヤ軸方向内側端部が、それぞれリブ内で途切れている。そのため、センタリブ、ミドルリブ、ショルダリブの剛性を高く確保することができ、操縦安定性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの一実施例を示す展開図である。
【図2】車両装着内側のトレッド半部分のトレッドパターンを示す展開図である。
【図3】車両装着外側のトレッド半部分のトレッドパターンを示す展開図である。
【図4】トレッドパターンの他の実施例を示す展開図である。
【図5】従来タイヤのトレッドパターンの一例を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両装着時にタイヤ赤道面Coよりも車両外側となる車両装着外側のトレッド半部分2oのランド比Loが、車両装着内側のトレッド半部分2iのランド比Liよりも大とした非対称パターンを具えるタイヤであって、本例では、前記ランド比Loが69〜73%、かつランド比の差(Lo−Li)を0.5〜2.0%とした場合が示される。
【0021】
又前記空気入りタイヤ1のトレッド部2には、タイヤ赤道面Coの両側を周方向にのびる一対のセンタ主溝3と、このセンタ主溝3の外側を周方向にのびる一対のショルダ主溝4とを具える。これにより前記トレッド部2に、前記センタ主溝3、3間のセンタリブ5と、センタ主溝3とショルダ主溝4との間のミドルリブ6と、ショルダ主溝4よりもタイヤ軸方向外側のショルダリブ7とが形成される。なお前記センタ主溝3を車両装着内外で区別する場合、車両装着内側のセンタ主溝を3i、車両装着外側のセンタ主溝を3oとして示す。又前記ショルダ主溝4を車両装着内外で区別する場合、車両装着内側のショルダ主溝を4i、車両装着外側のショルダ主溝を4oとして示す。又ミドルリブ6を車両装着内外で区別する場合、車両装着内側のミドルリブを6i、車両装着外側のミドルリブを6oとして示す。又ショルダリブ7を車両装着内外で区別する場合、車両装着内側のショルダリブを7i、車両装着外側のショルダリブを7oとして示す。
【0022】
前記センタ主溝3、及びショルダ主溝4としては、排水性の観点からタイヤ周方向に直線状にのびるストレート溝が好ましく、又その溝巾Wgは、その下限値が、トレッド接地巾TWの3.5%以上さらには4.0%以上であるのが好ましく、また溝深さHg(図示しない。)は、その下限値が、6.0mm以上さらには7.0mm以上であるのが好ましい。なお前記トレッド接地巾TWは、トレッド端TEi、TEo間のタイヤ軸方向の距離を意味する。又操縦安定性能の観点から、前記センタ主溝3、及びショルダ主溝4の前記溝巾Wgの上限値はトレッド接地巾TWの6.5%以下さらには6.0%以下が好ましく、また溝深さHgの上限値は10.0mm以下さらには9.0mm以下が好ましい。又ウエット性能と操縦安定性能との観点から、センタ主溝3の溝巾Wgは、ショルダ主溝4の溝巾Wgよりも大であるのが好ましい。
【0023】
車両装着内側のセンタ主溝3iと車両装着外側のセンタ主溝3o、及び車両装着内側のショルダ主溝4iと車両装着外側のショルダ主溝4oは、本例では、それぞれタイヤ赤道面Coに対して線対称位置に設けられる。
【0024】
次に、図2に示すように、前記トレッド部2には、車両装着内側のトレッド接地端TEiよりもタイヤ軸方向外側の位置からタイヤ赤道面Coを越えてタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着外側のセンタ主溝3oとは交差することなくセンタリブ5内で途切れる複数の内側傾斜横主溝9が、周方向に隔設される。本例の内側傾斜横主溝9は、タイヤ周方向に対する角度θが、タイヤ軸方向内側に向かって漸減する円弧状の湾曲溝であって、トレッド接地端TEiでの角度θaは70〜100°、タイヤ赤道面Coでの角度θbが20〜50°の範囲とするのが好ましい。又本例の内側傾斜横主溝9は、その溝巾Wyもタイヤ軸方向内側に向かって漸減している。このような内側傾斜横主溝9は、車両装着内側のトレッド半部分2iの全域を滑らかにのびるため、タイヤ赤道面Coからトレッド接地端TEiに向かって優れた排水性を発揮できる。従って、このような内側傾斜横主溝9は、トレッド剛性の低下を最低限に抑えながらタイヤ全体のウエット性能、或いは直進時のハイドロ性能を確保する上で不可欠となる。しかも内側傾斜横主溝9は、そのタイヤ軸方向内側端部9Eがセンタリブ5内で途切れているため、接地圧が高いセンタリブ5の剛性を高く維持でき、直進安定性を確保できる。なお前記内側端部9Eと車両装着外側のセンタ主溝3oとの間の距離L9が小さ過ぎるとセンタリブ5の剛性が過小となり、逆に大きすぎるとセンタリブ5内の排水性が減じて、ウエット性能と操縦安定性能との両立が難しくなる。そのため前記距離L9は1〜5mmの範囲が好ましい。
【0025】
又本例では、前記センタリブ5には、車両装着外側の前記センタ主溝3oからタイヤ赤道面Co側にのびるセンタ外側サイピング20o、及び車両装着内側の前記センタ主溝3iからタイヤ赤道面Co側にのびるセンタ内側サイピング20iが、周方向に隔設される。このサイピング20i、20oのタイヤ軸方向内端は、タイヤ赤道面Coの近傍で終端する。なおタイヤ赤道面Coの近傍とは、タイヤ赤道面Coからの距離が3mm以下の範囲の領域を意味する。このサイピング20i、20oは、センタリブ5の剛性維持を図りながら、排水性を高めて比較的浅い水膜におけるウエット性能を向上させる。本例では、前記センタ内側サイピング20iは、前記内側傾斜横主溝9、9間に1本形成されるとともに、前記センタ外側サイピング20oは、前記センタ内側サイピング20iと内側傾斜横主溝9との間に1本形成される。
【0026】
次に、車両装着内側のミドルリブ6iには、周方向に隣り合う前記内側傾斜横主溝9、9間に、車両装着内側の前記ショルダ主溝4iからタイヤ軸方向内側にのびる内側ミドル横溝10が形成される。この内側ミドル横溝10は、前記内側傾斜横主溝9と略平行にのび、又そのタイヤ軸方向内側端部10Eは、車両装着内側の前記センタ主溝3iに達することなくミドルリブ6i内で途切れている。本例では、前記内側ミドル横溝10が、内側傾斜横主溝9、9間に2本づつ形成される場合が示される。この内側ミドル横溝10のタイヤ軸方向内側端部の前記センタ主溝3iからの距離L10は、本例では前記ミドルリブ6iのリブ巾W6iの40〜60%としている。
【0027】
又前記ミドルリブ6iには、本例では、前記内側ミドル横溝10のタイヤ軸方向内側端部10Eから、周方向に隣り合う内側ミドル横溝10のタイヤ軸方向内側端部10Eを通って内側傾斜横主溝9までのびる周方向の内側ミドル補助溝11が設けられている。即ち、前記ミドルリブ6iは、内側傾斜横主溝9によりミドルブロック30に区分されるとともに、このミドルブロック30が、さらに前記内側ミドル横溝10と内側ミドル補助溝11とに囲まれる矩形状の小な2つの第1のミドルブロック部30Aと、残る大なL字状の1つの第2のミドルブロック部30Bとに区分される。このように、ミドルリブ6iは、大なL字状の第2のミドルブロック部30Bを含むため、ミドルリブ6iの剛性を相対的に高く確保しうる。
【0028】
次に、車両装着内側のショルダリブ7iには、周方向に隣り合う前記内側傾斜横主溝9、9間に、前記トレッド接地端TEiのタイヤ軸方向外側からタイヤ軸方向内側にのびる内側ショルダ横溝12が形成される。この内側ショルダ横溝12は、前記内側傾斜横主溝9と略平行にのび、又そのタイヤ軸方向内側端部12Eは、車両装着内側の前記ショルダ主溝4iに達することなくショルダリブ7i内で途切れている。この内側端部12Eとショルダ主溝4iとの間の距離L12が小さ過ぎるとショルダリブ7iの剛性が過小となり、逆に大きすぎるとショルダリブ7i内の排水性が減じて、ウエット性能と操縦安定性能との両立が難しくなる。このような観点から、前記距離L12は、前記距離L9と同様1〜5mmの範囲が好ましい。
【0029】
又本例では前記ショルダリブ7iには、車両装着内側のショルダ主溝4iの近傍領域に、周方向にのびかつ両端がショルダリブ7i内で途切れる複数本の周方向サイピング21が設けられる。この周方向サイピング21は、前記内側ミドル補助溝11が、後述する外側ミドル補助溝16に比して周方向長さが短いことによる周方向のエッジ成分長さの不足を補い、ウエット時のコントロール性を確保するのに役立つ。なお前記近傍領域は、ショルダ主溝4iからタイヤ軸方向外側に3mm以上かつ13mm以下離れる領域であって、この領域から外れると、周方向サイピング21によるエッジ効果が小となって、ウエット時のコントロール性の向上効果が少なくなる。
【0030】
次に、図3に示すように、車両装着外側のショルダリブ7oには、車両装着外側のトレッド接地端TEoよりもタイヤ軸方向外側の位置からタイヤ軸方向内側に、例えばタイヤ周方向に対して60〜90°の角度αでのびる外側ショルダ横溝13が形成される。この外側ショルダ横溝13も、そのタイヤ軸方向内側端部13Eが、車両装着外側の前記ショルダ主溝4oに達することなくショルダリブ7o内で途切れる。この内側端部13Eとショルダ主溝4oとの間の距離L13が小さ過ぎるとショルダリブ7oの剛性が過小となり、逆に大きすぎるとショルダリブ7o内の排水性が減じて、ウエット性能と操縦安定性能との両立が難しくなる。このような観点から、前記距離L13は3〜8mmの範囲が好ましい。なお外側ショルダ横溝13のピッチ数は、本例では、前記内側傾斜横主溝9のピッチ数の2倍で形成されている。
【0031】
次に、車両装着外側のミドルリブ6oには、車両装着外側の前記ショルダ主溝4oからタイヤ軸方向内側に、例えばタイヤ周方向に対して40〜80°の角度βでのびる外側ミドル横溝14と、この外側ミドル横溝14、14間に配される外側ミドル横副溝15とが設けられる。本例では、前記角度βは前記角度α以下であり、又前記外側ショルダ横溝13、外側ミドル横溝14、及び外側ミドル横副溝15は、前記内側傾斜横主溝9、内側ショルダ横溝12、内側ミドル横溝10と同方向に傾斜している。なお前記外側ミドル横副溝15と外側ミドル横溝14とは互いに略平行をなし、ともに車両装着外側のセンタ主溝3oに達することなくミドルリブ6o内で途切れるとともに、外側ミドル横副溝15は、外側ミドル横溝14よりもタイヤ軸方向外側で終端している。なお前記外側ミドル横溝14のタイヤ軸方向内側端部14Eとセンタ主溝3oとの間の距離L14が小さ過ぎるとミドルリブ6oの剛性が過小となり、逆に大きすぎるとミドルリブ6o内の排水性が減じて、ウエット性能と操縦安定性能との両立が難しくなる。このような観点から、前記距離L14は、前記距離L13と同様3〜8mmの範囲が好ましい。又外側ミドル横副溝15のタイヤ軸方向内側端部15Eのセンタ主溝3oからの距離L15は、本例では前記ミドルリブ6oのリブ巾W6oの40〜60%としている。
【0032】
ここで、前記内側傾斜横主溝9のピッチ数は、前記外側ミドル横溝14のピッチ数と同数であり、又本例では前記内側ミドル横溝10は、前記内側傾斜横主溝9、9間に2本づつ設けられ、かつ前記外側ミドル横副溝15は、前記外側ミドル横溝14、14間に1本づつ設けられている。即ち、前記外側ミドル横副溝15の総形成数は、前記内側ミドル横溝10の総形成数よりも小であって、本例では内側ミドル横溝10の総形成数の1/2である。
【0033】
又車両装着外側のミドルリブ6oには、車両装着外側のセンタ主溝3oから外側ミドル横溝14のタイヤ軸方向内側端部14Eまでのびる外側ミドル第1サイピング22と、周方向に隣り合う前記外側ミドル第1サイピング22、22間をのびかつ車両装着外側の前記ショルダ主溝4oに達することなく途切れる外側ミドル第2サイピング23とが設けられる。このサイピング22、23は、ミドルリブ6oの剛性維持を図りながら、排水性を高めて比較的浅い水膜におけるウエット性能を向上させる。本例では、前記外側ミドル第2サイピング23は、前記外側ミドル第1サイピング22、22間に2本形成される。特に、前記車両装着外側のセンタ主溝3oの位置は、旋回時の操縦安定性に与える影響が大きくシビアリティーの高い領域であり、本実施形態のタイヤ1では、このセンタ主溝3iにサイピング20o、22、23のみ交差し、それ以外交差しないことにより、センタ主溝3oの位置での剛性を確保し、操縦安定性を向上している。
【0034】
又前記ミドルリブ6oには、周方向にのびる外側ミドル補助溝16が形成される。この外側ミドル補助溝16は、前記外側ミドル横溝14とは交差するとともに、前記外側ミドル横副溝15のタイヤ軸方向内側端部15E及び前記外側ミドル第2サイピング23のタイヤ軸方向外側端部23Eを通って周方向にのびる。この外側ミドル補助溝16により、前記ミドルリブ6oは、該外側ミドル補助溝16のタイヤ軸方向外側に配されかつ前記外側ミドル横溝14と外側ミドル横副溝15とに囲まれる矩形状のミドルブロック部31の列と、周方向にのびるリブ状部32とに区分される。
【0035】
前記外側ミドル補助溝16は、前記外側ミドル横副溝15の形成数が、前記内側ミドル横溝10の形成数よりも小となって車両装着外側のミドルリブ6oの排水性が相対的に減じるのを抑制し、ラテラルハイドロ性能の向上に貢献しうる。
【0036】
このように本実施形態の空気入りタイヤ1では、前記内側傾斜横主溝9が、車両装着内側のトレッド半部分の全域を滑らかにのびるため、トレッド剛性の低下を最低限に抑えながらタイヤ赤道面Coからトレッド接地端TEiに向かって優れた排水性を発揮できる。又前記外側ミドル横溝14と外側ミドル横副溝15とにより、車両装着外側のミドルリブ6oに排水性が確保されるため、前記外側ショルダ横溝13と協働してラテラルハイドロ性能を向上させることができる。特にラテラルハイドロ性能は、排水性以外にパターン剛性も重要となるが、前記外側ミドル横副溝15の総形成数を内側ミドル横溝10の総形成数よりも小として、剛性と排水性とをバランス化させているため、ラテラルハイドロ性能をより向上させることが可能となる。
【0037】
しかも前記内側傾斜横主溝9、内側ショルダ横溝12、内側ミドル横溝10、外側ショルダ横溝13、外側ミドル横溝14、及び外側ミドル横副溝15の各タイヤ軸方向内側端部が、それぞれ各リブ内で途切れている。そのため、センタリブ5、ミドルリブ6i、6o、ショルダリブ7o、7iの剛性を高く確保することができ操縦安定性能を向上させることができる。
【0038】
ここで、前記内側傾斜横主溝9、内側ミドル横溝10、内側ショルダ横溝12、外側ショルダ横溝13、外側ミドル横溝14、外側ミドル横副溝15、内側ミドル補助溝11、及び外側ミドル補助溝16の溝巾Wyや溝深さHy(図示しない)は、特に限定されないが、排水性能の観点から、前記溝巾Wyの下限値は2mm以上さらには3mm以上が好ましく、又溝深さHyの下限値は1mm以上、さらには3mm以上が好ましい。又パターン剛性の観点から、前記溝巾Wyの上限値は、前記センタ主溝3の溝巾Wgの60%以下さらには50%以下が好ましく、又前記溝深さHyの上限値は、前記センタ主溝3の溝深さHgの90%以下さらには80%以下が好ましい。なお内側ミドル補助溝11の溝巾Wy、溝深さHyは、前記内側傾斜横主溝9および内側ミドル横溝10の溝巾Wy、溝深さHyよりも小であるのが好ましく、又外側ミドル補助溝16の溝巾Wy、溝深さHyは、外側ミドル横溝14および外側ミドル横副溝15の溝巾Wy、溝深さHyよりも小であるのが好ましい。
【0039】
又前記センタ外側サイピング20o、センタ内側サイピング20i、周方向サイピング21、外側ミドル第1サイピング、及び外側ミドル第2サイピング23のサイプ巾は1.5mm以下であって、又サイプ深さは、前記溝深さHy以下である。
【0040】
図4に他の実施例を示す。本例では、車両装着内側のショルダリブ7iに、ショルダ主溝4iから前記内側ショルダ横溝12のタイヤ軸方向内側端部12Eまでのびるサイピング24が配されるとともに、内側ショルダ横溝12と内側傾斜横主溝9との間に、該内側傾斜横主溝9と略平行かつ両端がショルダリブ7i内で途切れるサイピング25が配されている。又車両装着外側のショルダリブ7oには、ショルダ主溝4oから前記外側ショルダ横溝13のタイヤ軸方向内側端部13Eまでのびるサイピング26が配されるとともに、外側ショルダ横溝13、13間に、該外側ショルダ横溝13と略平行かつ両端がショルダリブ7o内で途切れるサイピング27が配されている。又車両装着外側のミドルリブ6oには、前記ミドルブロック部31内に、外側ミドル横溝14と略平行かつ両端がミドルブロック部31内で途切れるサイピング28が配されている。
【0041】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0042】
図1に示すトレッドパターンを基本パターンとして、タイヤサイズ(225/55R17)の乗用車用ラジアルタイヤを表1の仕様に基づいて試作し、操縦安定性能能、及びラテラルハイドロ性能をテストした。
なお比較例1として、図5に示すトレッドパターンのタイヤを用いた。
各部の共通仕様は次の通りである。
トレッド接地巾TW :180mm

センタ主溝の溝巾Wg:10mm
センタ主溝の溝深さHg:9mm

ショルダ主溝の溝巾Wg:9mm
ショルダ主溝の溝深さHg:9mm

センタリブのリブ巾W5:21mm
ミドルリブのリブ巾W6:26mm
ショルダリブのリブ巾W7:36mm

内側傾斜横主溝の溝巾Wy:8mm
内側傾斜横主溝の溝深さHy:7mm

内側ショルダ横溝の溝巾Wy:6mm
内側ショルダ横溝の溝深さHy:4mm

外側ショルダ横溝の溝巾Wy:6mm
外側ショルダ横溝の溝深さHy:4mm

内側ミドル横溝の溝巾Wy:7mm
内側ミドル横溝の溝深さHy:4mm

外側ミドル横溝の溝巾Wy:7mm
外側ミドル横溝の溝深さHy:4mm

外側ミドル横副溝の溝巾Wy:2mm
外側ミドル横副溝の溝深さHy:4mm
【0043】
(1)操縦安定性能能:
排気量3500ccの国産FR乗用車に各供試タイヤ(リム:17×7.00JJ、内圧:200kPa)を4輪装着するとともに、ドライアスファルト路面のテストコースをドライバー1名乗車で走行し、旋回時のハンドル応答性、剛性感及びグリップ等に関する特性をドライバーの官能評価により評価した。結果は、比較例1を100とする指数で表示している。数値が大きいほど良好である。
【0044】
(2)ラテラルハイドロ性能
前記車両を用い、半径100mのアスファルト路面に、水深5mm、長さ20mの水たまりを設けたコース上を、速度を段階的に増加させながら進入させ、横加速度(横G)を計測し、50〜80km/hの速度における前輪の平均横Gを算出した。そして平均横Gを、比較例1を100とした指数で表示した。数値が大きい程良好である。
【0045】
【表1】

【0046】
テストの結果から明らかなように、実施例のタイヤは、ラテラルハイドロ性能、及び操縦安定性能に優れるのが確認できる。
【符号の説明】
【0047】
2 トレッド部
2i、2o トレッド半部分
3、3i、3o センタ主溝
4、4i、4o ショルダ主溝
5 センタリブ
6、6i、6o ミドルリブ
7、7i、7o ショルダリブ
9 内側傾斜横主溝
10 内側ミドル横溝
11 内側ミドル補助溝
12 内側ショルダ横溝
13 外側ショルダ横溝
14 外側ミドル横溝
15 外側ミドル横副溝
16 外側ミドル補助溝
20o センタ外側サイピング
21 周方向サイピング
22 外側ミドル第1サイピング
23 外側ミドル第2サイピング
Co タイヤ赤道面
TEi、TEo トレッド接地端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ赤道面の両側を周方向にのびる一対のセンタ主溝と、このセンタ主溝の外側を周方向にのびる一対のショルダ主溝とが設けられることにより、前記トレッド部に、センタ主溝間のセンタリブと、センタ主溝とショルダ主溝との間のミドルリブと、ショルダ主溝よりもタイヤ軸方向外側のショルダリブとが形成され、しかも車両装着時にタイヤ赤道面よりも車両外側となる車両装着外側のトレッド半部分のランド比が、車両装着内側のトレッド半部分のランド比よりも大とした非対称パターンを具えた空気入りタイヤであって、
車両装着内側のトレッド接地端よりもタイヤ軸方向外側からタイヤ赤道面を越えてタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着外側の前記センタ主溝と交差することなく途切れるとともに周方向に隔設される内側傾斜横主溝を具え、
車両装着内側の前記ショルダリブには、周方向に隣り合う前記内側傾斜横主溝間に、トレッド接地端のタイヤ軸方向外側からタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着内側の前記ショルダ主溝に達することなく途切れる内側ショルダ横溝が設けられ、
車両装着外側の前記ショルダリブには、トレッド接地端のタイヤ軸方向外側からタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着外側の前記ショルダ主溝に達することなく途切れる外側ショルダ横溝が周方向に隔設され、
車両装着内側の前記ミドルリブには、周方向に隣り合う前記内側傾斜横主溝間に、車両装着内側の前記ショルダ主溝からタイヤ軸方向内側にのび、かつ車両装着内側の前記センタ主溝に達することなく途切れる内側ミドル横溝が設けられ、
車両装着外側の前記ミドルリブには、車両装着外側のショルダ主溝からタイヤ軸方向内側にのび、車両装着外側のセンタ主溝に達することなく途切れる外側ミドル横溝と、この外側ミドル横溝間に配されかつ該外側ミドル横溝よりもタイヤ軸方向外側で途切れる外側ミドル横副溝とが設けられるとともに、
前記外側ミドル横副溝の総形成数は、前記内側ミドル横溝の総形成数よりも少ないことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センタリブには、車両装着外側の前記センタ主溝からタイヤ赤道面側にのびるセンタ外側サイピングが周方向に隔設され、
車両装着外側の前記ミドルリブには、車両装着外側の前記センタ主溝から前記外側ミドル横溝のタイヤ軸方向内側端部までのびる外側ミドル第1サイピングと、周方向に隣り合う前記外側ミドル第1サイピング間をのびかつ車両装着外側の前記ショルダ主溝に達することなく途切れる外側ミドル第2サイピングとが設けられるとともに、
前記車両装着外側の前記センタ主溝にはサイピングのみ交差することを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
車両装着外側の前記ミドルリブは、前記外側ミドル横溝と交差するとともに、前記外側ミドル横副溝のタイヤ軸方向内側端部及び前記外側ミドル第2サイピングのタイヤ軸方向外側端部を通って周方向にのびる外側ミドル補助溝を具えることを特徴とする請求項2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記内側傾斜横主溝のピッチ数は前記外側ミドル横溝のピッチ数と同数であり、かつ前記内側ミドル横溝は前記内側傾斜横主溝間に2本づつ設けられ、かつ前記外側ミドル横副溝は前記外側ミドル横溝間に1本づつ設けられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
車両装着内側の前記ミドルリブは、前記内側ミドル横溝のタイヤ軸方向内側端部から、周方向に隣り合う内側ミドル横溝のタイヤ軸方向内側端部を通って前記内側傾斜横主溝までのびる周方向の内側ミドル補助溝を具えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
車両装着内側の前記ショルダリブには、車両装着内側のショルダ主溝の近傍領域に周方向にのびる複数本の周方向サイピングが設けられることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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