説明

空気入りタイヤ

【課題】サイドウォール部の耐カット性を向上できる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】この空気入りタイヤ1は、外側領域の距離Goと、内側領域の距離Giとが、1.20≦Go/Gi≦2.00の関係を有する。また、外側領域の距離SWoと、内側領域の距離SWiとが、1.05≦SWo/SWi≦1.20の関係を有する。また、外側領域のプロファイルラインの曲率半径Ro1、Ro2と、内側領域のプロファイルラインの曲率半径Ri1、Ri2とが、1.05≦Ri1/Ro1≦1.50かつ1.05≦Ri2/Ro2≦1.50の関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、サイドウォール部の耐カット性を向上できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の空気入りタイヤでは、車両装着時にて車幅方向外側に位置するサイドウォール部のカット損傷を低減すべき要請がある。このような課題に関する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−168543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、サイドウォール部の耐カット性を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、カーカス層およびサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤであって、タイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ赤道面を境界とする一方の領域を外側領域と呼び、他方の領域を内側領域と呼ぶときに、前記外側領域のタイヤ最大幅位置から前記カーカス層までの距離Goと、前記内側領域のタイヤ最大幅位置から前記カーカス層までの距離Giとが、1.20≦Go/Gi≦2.00の関係を有し、前記外側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ赤道面までの距離SWoと、前記内側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ赤道面までの距離SWiとが、1.05≦SWo/SWi≦1.20の関係を有し、前記外側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro1と、前記内側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri1とが、1.05≦Ri1/Ro1≦1.50の関係を有し、且つ、前記外側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro2と、前記内側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri2とが、1.05≦Ri2/Ro2≦1.50の関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、外側領域のサイドウォールゴムが厚肉(1.20≦Go/Gi)なので、外側領域のサイドウォール部の剛性が補強される。これにより、空気入りタイヤが外側領域を車幅方向外側にして車両に装着されたときに、サイドウォール部の耐カット性が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【図2】図2は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、空気入りタイヤ1の一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。なお、符号CLは、タイヤ赤道面である。
【0010】
この空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のビードゴム17、17を備える。
【0011】
一対のビードコア11、11は、環状構造を有し、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0012】
カーカス層13は、単層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で85[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
【0013】
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上30[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0014】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のビードゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびビードフィラー12、12のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて、左右のビード部を構成する。
【0015】
[サイドウォール部]
ここで、近年の空気入りタイヤでは、車両装着時にて車幅方向外側に位置するサイドウォール部のカット損傷を低減すべき要請がある。かかるカット損傷は、例えば、サイドウォール部と縁石との接触により発生する。かかるカット損傷を抑制するための構成として、車幅方向外側のサイドウォールゴムを厚肉とする構成が挙げられる。
【0016】
しかしながら、車幅方向外側のサイドウォールゴムのみを厚肉とすると、左右のサイドウォール部の剛性差が大きくなる。具体的には、車幅方向外側のサイドウォール部の剛性が増加して、変形し難くなる。このため、トレッド部の路面追従性が悪化して、タイヤの操縦安定性能が低下するという課題がある。
【0017】
そこで、この空気入りタイヤ1では、タイヤの操縦安定性能を確保しつつ耐カット性能を向上させるために、以下の構成を採用している(図1参照)。
【0018】
まず、タイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の領域を外側領域と呼び、他方の領域を内側領域と呼ぶ。この実施の形態では、空気入りタイヤ1が、外側領域を車幅方向外側にして車両に装着される。
【0019】
このとき、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからカーカス層13までの距離Goと、内側領域のタイヤ最大幅位置Aiからカーカス層13までの距離Giとが、1.20≦Go/Gi≦2.00の関係を有する。これらの距離Go、Giは、タイヤ最大幅位置Ao、Aiにおけるサイドウォールゴム16のゲージを示す。また、外側領域のサイドウォールゴムが厚肉(1.20≦Go/Gi)なので、外側領域のサイドウォール部の剛性が補強される。また、図1の構成では、カーカス層13の両端部がタイヤ径方向外側に巻き返されてタイヤ最大幅位置Ao、Aiよりもタイヤ径方向外側に位置している。このため、距離Go、Giが、このカーカス層13の巻き返し端部とタイヤ最大幅位置Ao、Aiとの距離となっている。
【0020】
なお、タイヤ最大幅位置Ao、Aiは、タイヤ断面幅の最大幅位置をいう。
【0021】
また、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからタイヤ赤道面CLまでの距離SWoと、内側領域のタイヤ最大幅位置Aiからタイヤ赤道面CLまでの距離SWiとが、1.05≦SWo/SWi≦1.20の関係を有する。また、比SWo/SWiが、1.10≦SWo/SWi≦1.15の範囲内にあることが好ましい。
【0022】
また、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro1と、内側領域のタイヤ最大幅位置Aiからタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri1とが、1.05≦Ri1/Ro1≦1.50の関係を有する。また、比Ri1/Ro1が、1.20≦Ri1/Ro1≦1.30の範囲内にあることが好ましい。
【0023】
また、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro2と、内側領域のタイヤ最大幅位置Aiからタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri2とが、1.05≦Ri2/Ro2≦1.50の関係を有する。また、比Ri2/Ro2が、1.20≦Ri2/Ro2≦1.30の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
これらの曲率半径Ri1、Ro1、Ri2、Ro2は、サイドウォール部の外郭形状を規定する。また、これらの曲率半径Ri1、Ro1、Ri2、Ro2が規定されることにより、左右のタイヤ最大幅位置Ao、Aiからタイヤ断面高さSHの±25[%]の範囲のプロファイルラインが適正化される。また、左右の曲率半径が相異することにより、左右非対称なプロファイルラインが形成される。また、内側領域の曲率半径Ri1、Ri2が大きい(1.05≦Ri1/Ro1かつ1.05≦Ri2/Ro2)ので、内側領域のサイドウォール部の剛性が補強される。
【0025】
なお、タイヤ断面高さSHとは、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいう。また、リム径は、タイヤのビードヒールとの接触点にて測定される。
【0026】
また、上記した距離Go、Gi、SWo、SWi、曲率半径Ri1、Ro1、Ri2、Ro2およびタイヤ断面高さSHは、タイヤをJATMA規定の適用リムに装着して50[kPa]の内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。また、距離Go、Gi、SWo、SWiおよび曲率半径Ri1、Ro1、Ri2、Ro2の数値は、タイヤサイズに応じて適宜設定され得る。
【0027】
また、左右のサイドウォールゴム16、16のゴム硬度Ho、Hiが、40≦Ho≦70かつ41≦Hi≦75の範囲内にある。これにより、左右のサイドウォールゴム16、16のゴム硬度Ho、Hiが適正化される。また、外側領域のサイドウォールゴム16のゴム硬度Hoと、内側領域のサイドウォールゴム16のゴム硬度Hiとが、1≦Hi−Ho≦5の関係を有する。これにより、内側領域のサイドウォール部の剛性が補強される。
【0028】
なお、ゴム硬度とは、JIS−K6263に準拠したJIS−A硬度をいう。
【0029】
また、左右のサイドウォールゴムの損失正接tanδ_o、tanδ_iが、0.05≦tanδ_o≦0.20かつ0.06≦tanδ_i≦0.30の範囲内にある。これにより、左右のサイドウォールゴム16、16の損失正接tanδ_o、tanδ_iが適正化される。また、外側領域のサイドウォールゴム16の損失正接tanδ_oと、内側領域のサイドウォールゴム16の損失正接tanδ_iとが、0.01≦tanδ_i−tanδ_o≦0.10の関係を有する。また、この差tanδ_i−tanδ_oの上限がtanδ_i−tanδ_o≦0.15であることが好ましい。
【0030】
なお、損失正接tanδ_o、tanδ_iは、粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度60[℃]、剪断歪み10[%]、周波数20[Hz]の条件で測定される。
【0031】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからカーカス層13までの距離Goと、内側領域のタイヤ最大幅位置Aiからカーカス層13までの距離Giとが、1.20≦Go/Gi≦2.00の関係を有する(図1参照)。また、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからタイヤ赤道面CLまでの距離SWoと、内側領域のタイヤ最大幅位置Aiからタイヤ赤道面CLまでの距離SWiとが、1.05≦SWo/SWi≦1.20の関係を有する。また、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro1と、内側領域のタイヤ最大幅位置Aiからタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri1とが、1.05≦Ri1/Ro1≦1.50の関係を有する。また、外側領域のタイヤ最大幅位置Aoからタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro2と、前記内側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri2とが、1.05≦Ri2/Ro2≦1.50の関係を有する。
【0032】
かかる構成では、(1)外側領域のサイドウォールゴム16が厚肉(1.20≦Go/Gi)なので、外側領域のサイドウォール部の剛性が補強される。これにより、空気入りタイヤ1が外側領域を車幅方向外側にして車両に装着されたときに、サイドウォール部の耐カット性が向上する利点がある。また、(2)SWo>SWiなので、外側領域のサイドウォール部の曲率が大きくサイドゲージアップによる過度の剛性アップを防ぐこととなる。また、(3)内側領域の曲率半径Ri1、Ri2が大きい(1.05≦Ri1/Ro1かつ1.05≦Ri2/Ro2)ので、内側領域のサイドウォール部の剛性が補強される。これにより、外側領域と内側領域との剛性差が緩和されて、タイヤの操縦安定性能および耐久性能が向上する利点がある。
【0033】
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域のサイドウォールゴム16のゴム硬度Hoと、内側領域のサイドウォールゴム16のゴム硬度Hiとが、40≦Ho≦70かつ41≦Hi≦75の範囲内にある。これにより、サイドウォールゴム16、16のゴム硬度Ho、Hiが適正化されて、タイヤ特性が適正に確保される利点がある。
【0034】
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域のサイドウォールゴム16のゴム硬度Hoと、内側領域のサイドウォールゴム16のゴム硬度Hiとが、1≦Hi−Ho≦5の関係を有する。これにより、内側領域のサイドウォール部の剛性が補強されるので、外側領域のサイドウォールゴム16が厚肉(1.20≦Go/Gi)であることに起因する外側領域と内側領域との剛性差が緩和される利点がある。特に、上記の曲率半径Ri1、Ro1、Ri2、Ro2およびゴム硬度Ho、Hiの双方を調整して、外側領域と内側領域との剛性差を緩和することにより、左右の曲率半径比Ri1/Ro1、Ri2/Ro2および左右のゴム硬度差Hi−Hoの差を小さくできるので、好ましい。
【0035】
また、この空気入りタイヤ1では、左右のサイドウォールゴムの損失正接tanδ_o、tanδ_iが、0.05≦tanδ_o≦0.20かつ0.06≦tanδ_i≦0.30の範囲内にある。これにより、左右のサイドウォールゴム16、16の損失正接tanδ_o、tanδ_iが適正化されて、タイヤ特性が適正に確保される利点がある。
【0036】
また、この空気入りタイヤ1では、外側領域のサイドウォールゴム16の損失正接tanδ_oと、内側領域のサイドウォールゴム16の損失正接tanδ_iとが、0.01≦tanδ_i−tanδ_o≦0.10の関係を有する。上記のように、外側領域のサイドウォールゴム16が厚肉(1.20≦Go/Gi)なので、外側領域での発熱量が大きくなり、転がり抵抗が増加する。そこで、外側領域のサイドウォールゴム16の損失正接tanδ_oが小さく設定されることにより、外側領域での発熱が抑制される。これにより、タイヤ左右の転がり抵抗が均一化されて、タイヤの高速耐久性能が向上する利点がある。
【0037】
また、この空気入りタイヤ1は、外側領域を車幅方向外側にして車両に装着すべき装着方向の指定を有する(図1参照)。かかる構成では、空気入りタイヤ1が厚肉(1.20≦Go/Gi)なサイドウォールゴム16を有する外側領域を車幅方向外側に向けて車両に装着されるので、サイドウォール部の耐カット性が向上する利点がある。なお、装着方向の指定は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって表示され得る。
【実施例】
【0038】
図2は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
【0039】
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)耐カット性能、(2)操縦安定性能および(3)耐久性能に関する評価が行われた(図2参照)。この性能試験では、タイヤサイズ195/65R15 91Hの空気入りタイヤがリムサイズ15×6Jのリムに組み付けられ、この空気入りタイヤに空気圧210[kPa]およびJATMA規定の最大負荷が付与される。また、試験車両として、排気量1800[cc]クラスのセダンが用いられる。また、空気入りタイヤ1が、外側領域を車幅方向外側にして試験車両に装着される。
【0040】
(1)耐カット性能に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両が走行速度10[km/h]かつ進入角度30[度]にて高さ110[mm]の縁石に乗り上げる。また、タイヤサンプル100[本]について、サイドウォール部に発生した亀裂(亀裂の長さや深さ)が観察される。そして、この観察結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましく、105以上であれば、優位性ありと認められる。
【0041】
(2)操縦安定性能に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両が平坦な周回路を有するテストコースを60[km/h]〜100[km/h]で走行する。そして、テストドライバーがレーチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について官能評価を行う。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。また、評価が100以上であれば、性能が適正に確保されているといえる。
【0042】
(3)耐久性能に関する評価は、室内ドラム試験機を用いた低圧耐久試験により行われる。そして、距離20000[km]の走行後にビード部に発生したクラックの個数が測定され、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。また、評価が100以上であれば、性能が適正に確保されているといえる。
【0043】
実施例1〜11の空気入りタイヤ1は、図1に記載した構成を有する。また、実施例1では、Go=4.8[mm]、Gi=3.0[mm]、SWo=113[mm]、SWi=100[mm]、Ri1=62[mm]、Ro1=50[mm]、Ri2=87[mm]、Ro2=70[mm]である。
【0044】
従来例の空気入りタイヤは、左右対称な構造を有する。
【0045】
試験結果に示すように、実施例1〜11の空気入りタイヤ1は、操縦安定性能および耐久性能を維持しつつ、耐カット性能を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0046】
1 空気入りタイヤ、11 ビードコア、12 ビードフィラー、13 カーカス層、14 ベルト層、141、142 交差ベルト、143 ベルトカバー、15 トレッドゴム、16 サイドウォールゴム、17 ビードゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカス層およびサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤであって、
タイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ赤道面を境界とする一方の領域を外側領域と呼び、他方の領域を内側領域と呼ぶときに、
前記外側領域のタイヤ最大幅位置から前記カーカス層までの距離Goと、前記内側領域のタイヤ最大幅位置から前記カーカス層までの距離Giとが、1.20≦Go/Gi≦2.00の関係を有し、
前記外側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ赤道面までの距離SWoと、前記内側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ赤道面までの距離SWiとが、1.05≦SWo/SWi≦1.20の関係を有し、
前記外側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro1と、前記内側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向外側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri1とが、1.05≦Ri1/Ro1≦1.50の関係を有し、且つ、
前記外側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ro2と、前記内側領域のタイヤ最大幅位置からタイヤ径方向内側かつタイヤ断面高さSHの25[%]までの範囲におけるプロファイルラインの曲率半径Ri2とが、1.05≦Ri2/Ro2≦1.50の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記外側領域の前記サイドウォールゴムのゴム硬度Hoと、前記内側領域の前記サイドウォールゴムのゴム硬度Hiとが、40≦Ho≦70かつ41≦Hi≦75の範囲内にある請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外側領域の前記サイドウォールゴムのゴム硬度Hoと、前記内側領域の前記サイドウォールゴムのゴム硬度Hiとが、1≦Hi−Ho≦5の関係を有する請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記外側領域の前記サイドウォールゴムの損失正接tanδ_oと、前記内側領域の前記サイドウォールゴムの損失正接tanδ_iとが、0.05≦tanδ_o≦0.20かつ0.06≦tanδ_i≦0.30の範囲内にある請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記外側領域の前記サイドウォールゴムの損失正接tanδ_oと、前記内側領域の前記サイドウォールゴムの損失正接tanδ_iとが、0.01≦tanδ_i−tanδ_o≦0.10の関係を有する請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記外側領域を車幅方向外側にして車両に装着すべき装着方向の指定を有する請求項1〜5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−112131(P2013−112131A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259413(P2011−259413)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)