説明

空気入りタイヤ

【課題】 ウエット性能と静粛性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 トレッド部1とサイドウォール部2とビード部3とを備えた空気入りタイヤにおいて、トレッド部1にタイヤ周方向に延びる主溝11と該主溝11よりも狭幅であってタイヤ周方向に延びる補助溝12とからなる少なくとも1組の溝ユニット10を設け、主溝11及び補助溝12の少なくとも一方は波状又はジグザグ状に蛇行し、主溝11と補助溝12とが互いに絡み合うように交差し、これら主溝11と補助溝12とからなる溝ユニット10に沿ってタイヤ周方向に延在するリブ部13を隣接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部にタイヤ周方向に延びる主溝を設けた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ウエット路面での走行性能(以下、「ウエット性能」という)と静粛性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤにおいて、トレッド部にはタイヤ周方向に延びる複数本の主溝が形成されている。これら主溝は排水性に大きく寄与する。このような主溝に基づく排水性を改善するために、主溝の溝幅をタイヤ周方向に沿って周期的に変化させて主溝内の水の流れを円滑にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、主溝の溝幅を変化させるだけではウエット性能を必ずしも十分に改善することができないのが現状である。
【0003】
また、トレッド部に形成された主溝等の周方向溝は気柱共鳴音の発生源にもなるため、このような周方向溝に起因する騒音を低減し、静粛性を改善することが試みられている。その一つの手法として、周方向溝をタイヤ周方向の一部で分岐させることにより、トレッド部が接地した際に生じる振動周波数をタイヤ周上で変化させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この場合、分岐した周方向溝が再び合流する部分において水の滞留が生じ易くなるため、ウエット性能が必ずしも十分ではないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−179892号公報
【特許文献2】特開2004−351954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ウエット性能と静粛性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる主溝と該主溝よりも狭幅であってタイヤ周方向に延びる補助溝とからなる少なくとも1組の溝ユニットを設け、前記主溝及び前記補助溝の少なくとも一方は波状又はジグザグ状に蛇行し、前記主溝と前記補助溝とが互いに絡み合うように交差し、これら主溝と補助溝とからなる溝ユニットに沿ってタイヤ周方向に延在するリブ部を隣接させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、トレッド部にタイヤ周方向に延びる主溝と該主溝よりも狭幅であってタイヤ周方向に延びる補助溝とからなる溝ユニットを設け、主溝及び補助溝の少なくとも一方は波状又はジグザグ状に蛇行し、主溝と補助溝とが互いに絡み合うように交差する構造を採用したので、これら主溝及び補助溝によるエッジ効果により排水性を高めてウエット性能を向上することができる。また、主溝と補助溝とからなる溝ユニットに沿ってタイヤ周方向に延在するリブ部を隣接させているので、主溝と補助溝との交差によるトレッド部の剛性低下を抑制し、良好なウエット性能を維持することが可能になる。その一方で、主溝及び補助溝の少なくとも一方は波状又はジグザグ状に形成されているので、これら主溝及び補助溝に起因する気柱共鳴音の発生を抑制し、静粛性を向上することができる。
【0008】
本発明において、主溝及び補助溝の少なくとも一方はタイヤ周方向に沿って溝幅が変化することが好ましい。このように主溝又は補助溝の溝幅に変化を持たせることにより、走行時における溝内の水流にベンチュリー効果が生じ、排水性を更に向上することができる。特に、排水性への寄与が大きい主溝の溝幅を変化させることが望ましい。なお、本発明における溝幅とはトレッド部の踏面においてタイヤ幅方向に沿って測定される溝の開口幅である。
【0009】
本発明において、主溝及び補助溝の少なくとも一方は波状又はジグザグ状に蛇行することが必要であるが、特に主溝及び補助溝がいずれも波状又はジグザグ状に蛇行することが好ましい。この場合、溝面積を十分に確保し、エッジ効果を増大させることができるため、ウエット性能を向上することができ、更には気柱共鳴音を低減し、静粛性を向上することができる。
【0010】
補助溝の溝幅は主溝の最小幅部分の溝幅の70%以下であることが好ましい。このように補助溝を相対的に狭くすることにより、トレッド部の剛性が過度に低下するのを回避し、良好なウエット性能を発揮することができる。
【0011】
補助溝の溝深さは主溝の溝深さよりも小さいことが好ましい。このように補助溝を相対的に浅くすることにより、主溝と補助溝との間に区分されたブロック部の倒れ込みを抑制し、良好なウエット性能を発揮することができる。
【0012】
溝ユニット内において主溝の位相と補助溝の位相とは互いに異なることが好ましい。これにより、トレッド部の剛性が過度に低下するのを回避し、良好なウエット性能を発揮することができる。
【0013】
トレッド部には少なくとも2組の溝ユニットを設けることが好ましい。上述した主溝と補助溝とからなる溝ユニットは1つの単位としてウエット性能と静粛性をバランス良く改善するものであるが、トレッド部に複数の溝ユニットを配置することで上述した効果を増幅することができる。
【0014】
溝ユニットの位相は互いに異なることが好ましい。このように溝ユニット単位で位相をずらすことにより、トレッド部が接地する際の振動周波数を分散させ、ピークとなる音圧レベルを低減し、静粛性を更に向上することができる。
【0015】
また、任意の溝ユニットに含まれる主溝の振幅と他の溝ユニットに含まれる主溝の振幅とは互いに異なることが好ましい。このように溝ユニット毎に振幅が異なる主溝を配置することにより、トレッド部が接地する際の振動周波数を分散させ、ピークとなる音圧レベルを低減し、静粛性を更に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【図3】本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの種々の変形例を示し、(a)〜(h)は各変形例を概略的に示す展開図である。
【図4】本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの種々の変形例を示し、(a)〜(d)は各変形例を概略的に示す展開図である。
【図5】本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの種々の変形例を示し、(a)〜(e)は各変形例を概略的に示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。図1及び図2に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0018】
一対のビード部3,3間には2層のカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0019】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0020】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる主溝11と該主溝11よりも狭幅であってタイヤ周方向に延びる補助溝12とからなる複数組の溝ユニット10が形成されている。主溝11及び補助溝12はいずれも波状又はジグザグ状に蛇行し、主溝11と補助溝12とが互いに絡み合うように交差している。主溝11の寸法は特に限定されるものではないが、例えば、溝幅が3.0mm〜15.0mmの範囲に設定され、溝深さが5.0mm〜10.0mmの範囲に設定されている。補助溝12の寸法も特に限定されるものではないが、例えば、溝幅が2.0mm〜10.0mmの範囲に設定され、溝深さが4.0mm〜9.0mmの範囲に設定されている。
【0022】
トレッド部1には、主溝11と補助溝12とからなる溝ユニット10に隣接するようにタイヤ周方向に延在するリブ部13が区画されている。また、主溝11と補助溝12との間には、リブ部13から独立した複数のブロック部14が区画されている。これらブロック部14の各々にはタイヤ幅方向に直線状に延びる複数本のサイプ15が形成されている。更に、トレッド部1の一方のショルダー領域(図中左側)には、蛇行しながらタイヤ周方向に延びる単独の補助溝12と、一方のショルダー領域の補助溝12からタイヤ幅方向外側に延長する複数本のサイプ15が形成されている。トレッド部1の他方のショルダー領域(図中右側)には、蛇行しながらタイヤ周方向に延びる単独の補助溝12と、他方のショルダー領域の補助溝12に沿って点在するディンプル16が形成されている。
【0023】
上記空気入りタイヤでは、トレッド部1にタイヤ周方向に延びる主溝11と該主溝11よりも狭幅であってタイヤ周方向に延びる補助溝12とからなる溝ユニット10を設け、主溝11及び補助溝12の少なくとも一方が波状又はジグザグ状に蛇行し、主溝11と補助溝12とが互いに絡み合うように交差する構造を採用しているので、主溝11及び補助溝12によるエッジ効果と排水性を高めてウエット性能を向上することができる。
【0024】
また、主溝11と補助溝12とからなる溝ユニット10に沿ってタイヤ周方向に延在するリブ部13を隣接させているので、主溝11と補助溝12との交差によるトレッド部1の剛性低下を抑制し、良好なウエット性能を維持することが可能になる。
【0025】
なお、上記空気入りタイヤにおいて、リブ部13には必要に応じてサイプを設けたり表面加工を施すことが可能である。同様に、ブロック部14にも必要に応じてサイプを設けたり表面加工を施すことが可能である。ここで、サイプとは溝幅を0.3mm〜1.5mmとし、溝深さを2.0mm以上かつ主溝11の溝深さ以下としたものである。また、表面加工とは陸部の踏面に溝幅が0.3mm〜1.5mmであって溝深さが0.2mm〜2.0mmである複数本の浅溝を形成することである。このようなサイプや浅溝はエッジ効果によりウエット性能の向上に寄与するが、トレッド部1の剛性を大幅に低下させるものではない。
【0026】
一方、主溝11及び補助溝12の少なくとも一方は波状又はジグザグ状に形成されているので、これら主溝11及び補助溝12に起因する気柱共鳴音の発生を抑制し、静粛性を向上することができる。特に、主溝11及び補助溝12がいずれも波状又はジグザグ状に蛇行する場合、溝面積を十分に確保し、エッジ効果を増大させることができるため、ウエット性能を向上することができ、更には気柱共鳴音を低減し、静粛性を向上することができる。また、主溝11を波状又はジグザグ状に形成した場合、気柱共鳴音の低減効果が顕著になる。
【0027】
上記空気入りタイヤにおいて、主溝11及び補助溝12の少なくとも一方はタイヤ周方向に沿って溝幅が変化していると良い。このように主溝11又は補助溝12の溝幅に変化を持たせることにより、走行時における溝内の水流にベンチュリー効果が生じ、蛇行する主溝11又は補助溝12の排水性を更に向上することができる。特に、排水性への寄与が大きい主溝11の溝幅を変化させることが望ましい。より具体的には、主溝11の最小幅部分の溝幅は該主溝11の最大幅部分の溝幅の20%〜70%にすると良い。主溝11の最小幅部分の溝幅が該主溝11の最大幅部分の溝幅の20%未満であると最小幅部分にて水流が阻害され、逆に70%を超えるとベンチュリー効果が弱くなる。
【0028】
補助溝12の溝幅は主溝11の最小幅部分の溝幅の70%以下、より好ましくは、40%以上70%以下であると良い。このように補助溝12を相対的に狭くすることにより、トレッド部1の剛性が過度に低下するのを回避し、良好なウエット性能を発揮することができる。補助溝12の溝幅が主溝11の最小幅部分の溝幅の70%を超えるとトレッド部1の剛性が低下してウエット性能が悪化する恐れがある。
【0029】
補助溝12の溝深さは主溝11の溝深さよりも小さくすると良い。このように補助溝12を相対的に浅くすることにより、主溝11と補助溝12との間に区分されたブロック部14の倒れ込みを抑制し、良好なウエット性能を発揮することができる。より具体的には、補助溝12の溝深さは主溝11の溝深さの80%以下、より好ましくは、30%以上80%以下であると良い。補助溝12の溝深さが主溝11の溝深さの80%を超えるとブロック部14に倒れ込みを生じてウエット性能が悪化する恐れがある。
【0030】
溝ユニット10内において主溝11の位相と補助溝12の位相とは互いに異なることが好ましい。つまり、図1において、主溝11の周期Pに対して位相差ΔPを設けるのが良い。これにより、トレッド部1の剛性が過度に低下するのを回避し、良好なウエット性能を発揮することができる。より具体的には、主溝11の周期P(360°)に対して主溝11と補助溝12との位相差ΔPを90°以上270°以下にすると良い。位相差ΔPが上記範囲から外れるとブロック部14が過度に小さくなって剛性が低下するためウエット性能が悪化する恐れがある。
【0031】
トレッド部1には少なくとも2組の溝ユニット10を設けると良い。トレッド部1に複数の溝ユニットを配置することでウエット性能と静粛性をバランス良く改善する効果を増幅することができる。
【0032】
トレッド部1に複数の溝ユニット10を配置するにあたって、複数の溝ユニット10の位相は互いに異なることが好ましい。図1においては、4組の溝ユニット10の位相が互いにずれている。このように溝ユニット10の単位で位相をずらすことにより、トレッド部1が接地する際の振動周波数を分散させ、ピークとなる音圧レベルを低減し、静粛性を更に向上することができる。
【0033】
また、任意の溝ユニット10に含まれる主溝11の振幅と他の溝ユニット10に含まれる主溝11の振幅とは互いに異なることが好ましい。図1においては、4組の溝ユニット10に含まれる主溝11の振幅がトレッド部1のタイヤ幅方向の一端側(図中左側)に向かって徐々に大きくなっている。このように溝ユニット10毎に振幅が異なる主溝11を配置することにより、トレッド部1が接地する際の振動周波数を分散させ、ピークとなる音圧レベルを低減し、静粛性を更に向上することができる。
【0034】
上記空気入りタイヤにおいては、複数組の溝ユニット10に含まれる主溝11の振幅がトレッド部1のタイヤ幅方向の一端側(図中左側)に向かって徐々に大きくなると共に、複数組の溝ユニット10に含まれる主溝11の溝幅がトレッド部1のタイヤ幅方向の一端側(図中左側)に向かって徐々に大きくなっている。このような構造を有する空気入りタイヤは、トレッド部1のタイヤ幅方向の一端側(図中左側)が車両内側となるように車両に対して装着すると良い。
【0035】
図3(a)〜(h)、図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(e)はそれぞれ本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの種々の変形例を示すものである。
【0036】
図3(a)〜(h)においては、トレッド部1に1組の溝ユニット10が配置されている。図3(a),(b)では主溝11及び補助溝12の双方が蛇行しているのに対して、図3(c),(d)では主溝11及び補助溝12の一方だけが蛇行している。図3(e),(g)では補助溝12が途中で分断されている。このように補助溝12は断続的に形成される場合、補助溝12の各分割片が主溝11と連通していれば良い。図3(h)では主溝11と補助溝12との間に区画されたブロック部14に複数本のサイプ15が形成され、これらサイプ15の一部がブロック部14を横断する構造を有し、サイプ15の残部がブロック部14を横断しない構造を有している。
【0037】
図4(a)〜(d)においては、トレッド部1に1組の溝ユニット10とタイヤ周方向に蛇行しながら延びる単独の主溝11が配置されている。
【0038】
図5(a)〜(e)においては、トレッド部1に2組の溝ユニット10が配置されている。図5(a)では2組の溝ユニット10の位相が一致しているのに対して、図5(b)では2組の溝ユニット10の位相が互いに異なっている。図5(c)では一方の溝ユニット10に含まれる主溝11の振幅と他方の溝ユニット10に含まれる主溝11の振幅とが互いに異なっている。図5(d)では2組の溝ユニット10の間に区画されたリブ部13に複数本のサイプ15が形成され、これらサイプ15がリブ部13を横断しない構造を有している。図5(e)では2組の溝ユニット10の間に区画されたリブ部13に複数本のサイプ15が形成され、これらサイプ15がブロック部14を横断する構造を有している。
【実施例】
【0039】
タイヤサイズが205/55R16であり、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、トレッド部にタイヤ周方向に延びる主溝と該主溝よりも狭幅であってタイヤ周方向に延びる補助溝とからなる少なくとも1組の溝ユニットを設け、主溝及び補助溝の少なくとも一方は波状に蛇行し、主溝と補助溝とが互いに絡み合うように交差し、これら主溝と補助溝とからなる溝ユニットに沿ってタイヤ周方向に延在するリブ部を隣接させ、主溝の本数、溝ユニットの数、補助溝の溝幅(主溝の溝幅に対する比率)、補助溝の溝深さ(主溝の溝深さに対する比率)、主溝の溝幅変化の有無、主溝の形状、補助溝の形状、主溝同士の振幅の関係、主溝と補助溝との位相差、溝ユニットの位相差の有無、サイプの有無を表1及び表2のように種々異ならせた実施例1〜20のタイヤを作製した。
【0040】
比較のため、トレッド部に溝ユニットの替わりにタイヤ周方向に延びるストレート状の主溝を設けた従来例1,2のタイヤと、トレッド部に溝ユニットの替わりにタイヤ周方向に延びる波状の主溝を設けた比較例1,2のタイヤを用意した。
【0041】
従来例1,2、比較例1,2及び実施例1〜20において、主溝の溝幅変化がない場合は、主溝の溝幅を10.0mmとし、主溝の溝深さを10.0mmとし、主溝の溝幅変化がある場合は、主溝の最小幅部分の溝幅を2.0mmとし、主溝の最大幅部分の溝幅を10.0mmとし、主溝の溝深さを10.0mmとした。
【0042】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、ウエット性能、静粛性を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0043】
ウエット性能:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5JJのホイールに組み付けて空気圧を200kPaとして排気量1600ccの試験車両(前輪駆動車)に装着し、ウエット路面からなるテストコースにおいて、速度100km/hでの走行状態からABS制動を行って車両が停止するまでの制動距離を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、表1では従来例1を100とする指数値にて示し、表2では従来例2を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほど制動距離が短くウエット性能が優れていることを意味する。
【0044】
静粛性:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5JJのホイールに組み付けて空気圧を200kPaとして排気量1600ccの試験車両(前輪駆動車)に装着し、ドライ路面からなるテストコースにおいて、速度20〜100km/hでの惰性走行時の車内騒音についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、表1では従来例1を100とする指数値にて示し、表2では従来例2を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほど静粛性が優れていることを意味する。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1から明らかなように、実施例1〜13のタイヤは、いずれも、従来例1との対比において、ウエット性能と静粛性がバランス良く改善されていた。一方、比較例1のタイヤは、主溝を波状に蛇行させただけであるためウエット性能と静粛性の改善効果が得られなかった。
【0048】
また、表2から明らかなように、実施例14〜20のタイヤは、いずれも、従来例2との対比において、ウエット性能と静粛性がバランス良く改善されていた。一方、比較例2のタイヤは、主溝を波状に蛇行させただけであるためウエット性能と静粛性の改善効果が得られなかった。
【符号の説明】
【0049】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
10 溝ユニット
11 主溝
12 補助溝
13 リブ部
14 ブロック部
15 サイプ
16 ディンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる主溝と該主溝よりも狭幅であってタイヤ周方向に延びる補助溝とからなる少なくとも1組の溝ユニットを設け、前記主溝及び前記補助溝の少なくとも一方は波状又はジグザグ状に蛇行し、前記主溝と前記補助溝とが互いに絡み合うように交差し、これら主溝と補助溝とからなる溝ユニットに沿ってタイヤ周方向に延在するリブ部を隣接させたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記主溝及び前記補助溝の少なくとも一方はタイヤ周方向に沿って溝幅が変化することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記主溝及び前記補助溝はいずれも波状又はジグザグ状に蛇行することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記補助溝の溝幅は前記主溝の最小幅部分の溝幅の70%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記補助溝の溝深さは前記主溝の溝深さよりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記溝ユニット内で前記主溝の位相と前記補助溝の位相とが互いに異なることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部に少なくとも2組の溝ユニットを設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記溝ユニットの位相が互いに異なることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
任意の溝ユニットに含まれる主溝の振幅と他の溝ユニットに含まれる主溝の振幅とが互いに異なることを特徴とする請求項7又は8に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35479(P2013−35479A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174588(P2011−174588)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)