説明

空気入りタイヤ

【課題】排水性能の悪化を抑えながら、ショルダーブロック列を構成するブロックのヒールアンドトウ摩耗を防止できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ショルダー主溝10は、タイヤ回転方向Rの前方に向かってタイヤ幅方向内側に傾斜する複数の周方向成分10cを有し、タイヤ周方向に隣接した周方向成分10cが横溝5を介して互いに連通する。ショルダーブロック列4は、周方向成分10cのタイヤ回転方向Rの後方側に位置するブロック2と、そのブロック2よりも頂面の面積が小さく、横溝5を挟んでブロック2とタイヤ周方向に隣接するブロック3とを含む。ショルダー主溝10の溝底から隆起し且つブロック3の側壁3aから突出した複数の突起7がタイヤ周方向に間隔を置いて設けられ、ブロック3の蹴り出し側に位置する突起7の体積が踏み込み側に位置する突起7の体積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、その主溝のうちタイヤ幅方向の最外側に位置するショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に配されたショルダーブロック列とをトレッド面に備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に、複数のブロックをタイヤ周方向に配列してなるショルダーブロック列を設けた構造が公知である。通常、トレッド面の両端側は中央側よりも外径が小さく、その径差に起因して、ショルダーブロック列ではブロックが滑りを起こしやすい。特にブロックの蹴り出し側部分は、接地時にタイヤ周方向に大きく弾性変形するため、滑り量が大きくなる。その結果、ブロックの蹴り出し側部分が優先的に摩耗し、ヒールアンドトウ摩耗と呼ばれる偏摩耗が発生する。
【0003】
また、図7のようにショルダー主溝10が傾斜している場合、ショルダーブロック列4を構成するブロック3でのヒールアンドトウ摩耗が顕著であった。これについて本発明者が研究したところ、ブロック3の踏み込み側(タイヤ回転方向Rの前方側)から蹴り出し側(タイヤ回転方向Rの後方側)にかけて、その主溝側部分の滑り方向が変化し且つ滑り量が大きくなることが分かった。図7では、滑りの方向と大きさを矢印で表しており、摩耗が顕著となる領域を黒く着色している。
【0004】
上記の現象は、相対的に大きなブロック2の踏み込み側に隣接する小さなブロック3で顕著となる。これは、ショルダーブロック列4において、ブロック2の踏み込み側部分では摩擦エネルギーが低いのに対し、ブロック3の蹴り出し側部分では摩擦エネルギーが高く、そのエネルギー差が大きいことが原因と考えられる。ここでいう摩擦エネルギーは、タイヤ周方向の摩擦エネルギーとタイヤ幅方向の摩擦エネルギーとの和であり、これらの摩擦エネルギーは各方向の応力と滑り量との積になる。
【0005】
特許文献1,2には、ショルダー主溝の溝底に設けた隆起部によって、ショルダーブロック列を構成するブロックと、そのタイヤ幅方向内側に位置するブロックとを連結した空気入りタイヤが記載されている。また、特許文献3には、ショルダー主溝で開口したラグ溝を備えるショルダーリブに、該ラグ溝により区画された部分の側壁を全面的に補強する凸部を設けた空気入りタイヤが記載されている。
【0006】
しかし、上記の如き隆起部や凸部を図7のブロック3に適用した場合、そのブロック3の主溝側部分の滑り方向は、蹴り出し側を向きつつタイヤ幅方向外側(図7の左側)に移動することになる。これにより、後述する実施例のように、摩耗が顕著となる領域が幾分か減少するものの、ブロック3の蹴り出し側部分が広く摩耗してヒールアンドトウ摩耗が発生する。しかも、上記の如き隆起部や凸部は、ショルダー主溝による排水の障壁となるため、排水性能の悪化を引き起こす。
【0007】
特許文献4には、ショルダーブロック列を構成するブロックの周方向端部に、主溝の中心線を超える補強部を設けた空気入りタイヤが記載されている。しかし、かかる補強部を図7のブロック3の蹴り出し側に設けたとしても、該ブロック3の主溝側部分における踏み込み側及び中央側での滑り量は変わらないため、ヒールアンドトウ摩耗を十分に抑制することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−88670号公報
【特許文献2】特開平11−227419号公報
【特許文献3】特開2007−320539号公報
【特許文献4】特開2003−154812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排水性能の悪化を抑えながら、ショルダーブロック列を構成するブロックのヒールアンドトウ摩耗を防止できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、前記主溝のうちタイヤ幅方向の最外側に位置するショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に配されたショルダーブロック列とをトレッド面に備える空気入りタイヤにおいて、前記ショルダー主溝が、タイヤ回転方向の前方に向かってタイヤ幅方向内側に傾斜する複数の周方向成分を有し、タイヤ周方向に隣接した前記周方向成分が横溝を介して互いに連通しており、前記ショルダーブロック列が、前記周方向成分のタイヤ回転方向の後方側に位置する第1ブロックと、その第1ブロックよりも頂面の面積が小さく、前記横溝を挟んで前記第1ブロックとタイヤ周方向に隣接する第2ブロックとを含み、前記ショルダー主溝の溝底から隆起し且つ前記第2ブロックの側壁から突出した複数の突起がタイヤ周方向に間隔を置いて設けられ、前記第2ブロックの蹴り出し側に位置する前記突起の体積が踏み込み側に位置する前記突起の体積よりも大きいものである。
【0011】
この空気入りタイヤは、上記の如きショルダー主溝とショルダーブロック列とをトレッド面に備えており、該ショルダーブロック列を構成するブロックのうち、特に第2のブロックでヒールアンドトウ摩耗を生じやすい。そこで、本発明では、ショルダー主溝の溝底から隆起し且つ第2ブロックの側壁から突出した複数の突起をタイヤ周方向に間隔を置いて設け、その突起の体積を踏み込み側よりも蹴り出し側で大きくしている。これにより、第2ブロックのショルダー主溝側部分の滑り方向の変化を抑えて且つ滑り量を小さくし、ヒールアンドトウ摩耗を防止することができる。
【0012】
また、この空気入りタイヤでは、複数の突起がタイヤ周方向に間隔を置いて設けられることから、突起によるショルダー主溝の容積減少を抑えて、排水性能の悪化を抑制することができる。更に、ブロックの滑りが抑えられるとともに、複数の突起を設けることによってブロックの剛性が高められるため、操縦安定性能を向上することができる。
【0013】
本発明では、前記第2ブロックの側壁に設けられる前記突起の個数が三つまたは四つであり、その第2ブロックの蹴り出し側に向かって前記突起の体積が大きくなるものが好ましい。これにより、第2ブロックの側壁において、相対的に大きな突起が蹴り出し側に設けられ、相対的に小さな突起が踏み込み側に設けられ、それらの中間の大きさの突起が中央側に設けられる。このため、第2ブロックのショルダー主溝側部分の滑り方向の変化を抑えて且つ滑り量を小さくする作用を的確に奏し、ヒールアンドトウ摩耗を効果的に防止できる。
【0014】
本発明では、前記突起は、前記第2ブロックの蹴り出し側に向かって前記側壁からの突出量が大きくなる形状をしているものが好ましい。かかる構成によれば、蹴り出し側に向かって滑り量が大きくなりがちな第2ブロックのショルダー主溝側部分の滑りを抑えるうえで有利になる。また、排水性能の悪化を抑えるうえでも有効である。この場合における好適な実施形態として、前記突起が平面視にて三角形状または階段状に形成されているものが挙げられる。
【0015】
本発明では、前記横溝を通って、前記ショルダー主溝に面する前記第1ブロックの踏み込み側角部と前記第2ブロックの蹴り出し側角部とを結ぶ第1仮想直線と、前記ショルダー主溝に面する前記第2ブロックの踏み込み側角部からタイヤ回転方向の後方に向かってタイヤ周方向に延びる第2仮想直線と、前記ショルダー主溝に面する前記第2ブロックの側壁とで囲まれる領域内に、その第2ブロックの側壁に設けられた全ての前記突起が収まっているものが好ましい。これにより、排水性能の悪化を効果的に抑制できる。
【0016】
本発明では、前記第2ブロックの蹴り出し側に位置する前記突起が、前記横溝に面した前記第2ブロックの側壁の延長方向に沿って、前記第2ブロックの蹴り出し側角部に設けられているものが好ましい。かかる構成によれば、蹴り出し側で滑り量が大きくなりがちな第2ブロックのショルダー主溝側部分の滑りを抑えるうえで有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部の一例を示す展開図
【図2】図1のトレッド面の要部を示す拡大図
【図3】ショルダー主溝の溝幅方向に沿った断面図
【図4】第2ブロックを示す拡大図
【図5】本発明の別実施形態に係る突起を示す平面図
【図6】突起の配置領域に関する好ましい例を示す図
【図7】比較例1におけるショルダーブロック列を示す平面図
【図8】比較例2における第2ブロックを示す(a)平面図と(b)側面図
【図9】比較例3における第2ブロックを示す(a)平面図と(b)側面図
【図10】比較例4における第2ブロックを示す(a)平面図と(b)側面図
【図11】実施例1における第2ブロックを示す(a)平面図と(b)側面図
【図12】実施例2における第2ブロックを示す(a)平面図と(b)側面図
【図13】実施例3における第2ブロックを示す(a)平面図と(b)側面図
【図14】実施例4における第2ブロックを示す(a)平面図と(b)側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝1と、主溝1のうちタイヤ幅方向の最外側に位置するショルダー主溝10のタイヤ幅方向外側に配されたショルダーブロック列4とをトレッド面Trに備える。本実施形態では、タイヤ幅方向の両側にショルダーブロック列4を設けているが、片側のみでも構わない。矢印Rは、タイヤ回転方向を示している。
【0019】
図1では、タイヤ赤道CLを挟んだ一対のショルダー主溝10の中間となるセンター領域について、トレッドパターンの記載を省略しているが、このセンター領域の形態は特に限定されるものではなく、種々のパターンを適用可能である。即ち、センター領域には、他の主溝を含む溝部や、リブ又はブロック列で構成される陸部を適宜に設けることができる。
【0020】
ショルダー主溝10は、タイヤ回転方向Rの前方(図1の下方)に向かってタイヤ幅方向内側に傾斜する複数の周方向成分10cを有し、タイヤ周方向に隣接した周方向成分10cが横溝5を介して互いに連通している。横溝5は、ショルダーブロック列4を横断し、ブロック2とブロック3とをタイヤ周方向に区画している。ショルダー主溝10は、周方向成分10cと、横溝5の一部で構成された幅方向成分10wとを交互に繰り返し、全体としてジグザグに形成されている。
【0021】
周方向成分10cのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1は、例えば5〜25°に設定される。幅方向成分10wのタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2は、例えば0〜25°に設定される。これらの傾斜角度は、図2に一点鎖線で示したショルダー主溝10の溝中心線を基準にして定められる。本実施形態では、ショルダー主溝10の溝中心線を基準として、周方向成分10cが幅方向成分10wよりも長く、双方の成分が直線的に延びている。
【0022】
ショルダーブロック列4は、タイヤ周方向に配列された複数のブロックにより構成される。このトレッド面Trでは、ショルダーブロック列4が、周方向成分10cのタイヤ回転方向Rの後方側に位置する第1ブロック2(以下、ブロック2)と、そのブロック2よりも頂面の面積が小さく、横溝5を挟んでブロック2とタイヤ周方向に隣接する第2ブロック3(以下、ブロック3)とを含んでいる。
【0023】
ショルダーブロック列4では、ブロック2とブロック3とのペアを単位としたタイヤ周方向の繰り返しパターンが採用されており、ブロック2とブロック3がタイヤ周方向に交互に配置されている。また、ショルダーブロック列4には、ブロック3の蹴り出し側を区画する横溝5と、ブロック3の踏み込み側を区画する横溝6とが、タイヤ周方向に交互に形成されている。ブロック2の踏み込み側に隣接するのはブロック3であるが、ブロック2の蹴り出し側に隣接するのはブロック3とは別のブロックでも構わない。
【0024】
このようなショルダーブロック列4では、タイヤ転動に伴ってブロック3に回転モーメントが作用し、図7のような主溝側部分の滑りを起こすため、ブロック3でヒールアンドトウ摩耗が発生しやすい傾向にある。ブロック3の蹴り出し側部分(横溝5側部分)や踏み込み側部分(横溝6側部分)でも滑りが生じるものの、主溝側部分(ショルダー主溝10側部分)に比べると滑り量が小さいため、この主溝側部分の滑りを抑えることがヒールアンドトウ摩耗を防止するうえで重要となる。
【0025】
そこで、図2,3に示すように、ショルダー主溝10の溝底10aから隆起し且つブロック3の側壁3aから突出した複数の突起7をタイヤ周方向に間隔を置いて設けている。本実施形態では、ブロック3の側壁3aに三つの突起7a,7b,7cを設けており、このうちブロック3の蹴り出し側に位置する突起7aの体積は、踏み込み側に位置する突起7cの体積よりも大きく設定されている。これにより、ブロック3の主溝側部分の滑り方向の変化を抑えて且つ滑り量を小さくし、ヒールアンドトウ摩耗を防止できる。
【0026】
また、ブロック3の側壁3aに複数の突起7がタイヤ周方向に間隔を置いて設けられることから、突起7によるショルダー主溝10の容積減少を抑えて、排水性能の悪化を抑制することができる。これに対し、ブロック3の側壁3aを全面的に補強するような大きな突起を設けた場合には、ショルダー主溝10による排水の障壁となりやすく、排水性能の悪化を引き起こしてしまう。
【0027】
本実施形態では、突起7a、突起7b、突起7cの順に突起の体積が大きい。このように、ブロック3の側壁3aに設けられる突起7の個数を三つまたは四つとし、そのブロック3の蹴り出し側に向かって突起7の体積を大きくすることが好ましく、それによってヒールアンドトウ摩耗を効果的に防止できる。突起7の個数が二つであると、ブロック3の滑りを抑える効果が小さくなり、突起7の個数が五つ以上であると、突起の各々の大きさを確保したうえで間隔を置いて設けることが難しくなる傾向にある。
【0028】
突起7の体積に差異を設けるには、本実施形態のように平面視での大きさを異ならせるほか、突起の高さを異ならせたり、それらを併用したりすることが考えられる。本発明では、これらの何れを採用しても構わない。
【0029】
ブロック3の側壁3aの外縁を基準とした突起7の突出量P7は、ショルダー主溝10の溝幅W10の45〜80%の範囲内であることが好ましい。この割合が45%以上であることにより、ブロック3の側壁3aを適切に補強して、その主溝側部分の滑りを抑制することができる。また、この割合が80%以下であることにより、突起7が突出し過ぎることなく、排水性能の悪化を適切に抑えられる。突出量P7は、突起7ごとに、その最大値で以て定められる。
【0030】
ショルダー主溝10の溝底10aを基準とした突起7の高さH7は、そのショルダー主溝10の溝深さD10の25〜70%の範囲内であることが好ましい。この割合が25%以上であることにより、ブロック3の側壁3aを適切に補強して、その主溝側部分の滑りを抑制することができる。また、この割合が70%以下であることにより、突起7が高くなり過ぎることなく、排水性能の悪化を適切に抑えられる。高さH7は、突起7ごとに、その最大値で以て定められる。
【0031】
突起7は、図3に示したように、ショルダー主溝10の溝底10aとの接点P1と、ブロック3の側壁3aとの接点P2とを結ぶ直線SLを超える形状であることが好ましい。これにより、ブロック3の側壁3aを適切に補強して、その主溝側部分の滑り方向の変化を抑えて且つ滑り量を小さくし、ヒールアンドトウ摩耗を良好に防止することができる。
【0032】
本実施形態の突起7は、図4に拡大して示すように、平面視にて三角形状に形成され、ブロック3の蹴り出し側に向かって側壁3aからの突出量が大きくなる形状をしている。つまり、突起7における蹴り出し側の突出量Pxは、その突起7における踏み込み側の突出量Pyよりも大きい。これにより、蹴り出し側に向かって滑り量が大きくなりがちなブロック3の主溝側部分の滑りを抑えるうえで有利になる。また、排水性能の悪化を抑えるうえでも有効である。
【0033】
かかる観点に基づく他の例として、図5のように平面視にて階段状に形成された突起8が挙げられる。この突起8においても、ブロック3の蹴り出し側に向かって側壁3aからの突出量が大きくなる形状をしている。突起8の階段状面は、図示のような角張ったL字部分が連なる形状に代えて、外向き又は内向きの円弧が連なる形状としてもよく、該円弧の曲率半径は例えば0.5〜1.5mmに設定される。尚、異なる形状の突起が混在していてもよく、ブロック3の側壁3aに突起7と突起8を併設しても構わない。
【0034】
図4において、周方向成分10cの長さ方向における突起7の長さ、即ちL7a,L7b及びL7cは、それぞれ2〜10mmの範囲内であることが好ましい。これが2mm以上であることにより、ブロック3の側壁3aを適切に補強して、その主溝側部分の滑りを抑制することができる。また、これが10mm以下であることにより、ブロック3の側壁3aに対して複数の突起7をタイヤ周方向に間隔を置いて設けやすくなる。
【0035】
各突起7の長さの総計(L7a+L7b+L7c)は、周方向成分10cの長さ方向における側壁3aの長さL3の40%以上であることが好ましい。これにより、ブロック3の側壁3aを適切に補強して、その主溝側部分の滑りを抑制することができる。また、上記の総計は長さL3の80%以下であることが好ましい。それにより、突起7の総合的な長さが大きくなり過ぎることなく、排水性能の悪化を適切に抑えられる。
【0036】
蹴り出し側に位置する突起7aは、ブロック3の蹴り出し側角部に設けられたうえで、その長さL7aが側壁3aの長さL3の25〜40%であることが好ましい。踏み込み側に位置する突起7cは、ブロック3の踏み込み側角部から長さLAの領域を避けたうえで、その長さL7cが側壁3aの長さL3の5〜20%であることが好ましい。長さLAは、長さL3の5〜50%に設定される。
【0037】
中央側に位置する突起7bは、突起7aや突起7cとの間に間隔S1,S2を設けつつ、その長さL7bが側壁3aの長さL3の10〜20%であることが好ましく、そのうえで長さL7cよりも大きく設定されることが更に好ましい。突起7aと突起7bとの間隔S1、並びに、突起7bと突起7cとの間隔S2は、それぞれ側壁3aの長さL3の5〜10%に設定できる。
【0038】
図6において、直線L1は、横溝5を通って、ショルダー主溝10に面するブロック2の踏み込み側角部とブロック3の蹴り出し側角部とを結ぶ第1仮想直線である。直線L2は、ショルダー主溝10に面するブロック3の踏み込み側角部からタイヤ回転方向Rの後方に向かってタイヤ周方向に延びる第2仮想直線である。ブロック3の側壁3aに設けられた突起7a〜7cは、直線L1と直線L2と側壁3aとで囲まれた三角形の領域内に全て収められている。
【0039】
複数の突起7のうち、ブロック3の蹴り出し側に位置する突起7aは、横溝5に面したブロック3の側壁3bの延長方向に沿って、ブロック3の蹴り出し側角部に設けられている。かかる構成によれば、蹴り出し側で滑り量が大きくなりがちなブロック3の主溝側部分の滑りを抑えるうえで有利になる。
【0040】
本実施形態では、タイヤ回転方向が一方向に指定された空気入りタイヤの例を示しており、車両装着時にタイヤ回転方向Rが図1の如く向くように指定されている。かかる指定は、例えば、車両に対する装着の向きをサイドウォール部に表示することにより行われる。但し、図1の右側に示したショルダー主溝10とショルダーブロック列4を上下逆向きに配置しているなど、装着の向きに関係なく所定の方向関係が得られる場合には、このような指定がなくても構わない。
【0041】
本発明に係る空気入りタイヤでは、上記の如きショルダー主溝とショルダーブロック列が設けられている限り、トレッドパターンは特に制限されない。但し、排水性能を考慮すると、一対のショルダー主溝を含めた少なくとも三本の主溝がトレッド面に形成されていることが好ましい。
【0042】
本発明の空気入りタイヤは、上記の如きショルダー主溝とショルダーブロック列をトレッド面に備えること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。評価に供したタイヤは、サイズが225/40R18であり、18×8JJのリムに組み付けて車両に装着し、空気圧を230kPa、縦荷重を4903Nとした。
【0044】
(1)耐ヒールアンドトウ摩耗性能
12000kmを走行した後、ヒールアンドトウ摩耗が問題視されるブロック(第2ブロック)の摩耗状態を観察し、摩耗が顕著であった領域の形態と面積を調べた。該形態については図示するとともに、面積については摩耗前のブロックの頂面の面積に対する割合で表した。
【0045】
(2)排水性能(耐ハイドロプレーニング性能)
水深8mmの濡れた路面でタイヤを転動させて、ハイドロプレーニング現象が発生するときの速度を測定した。比較例1の結果を100としたときの指数で評価し、数値が大きいほど性能に優れていることを示す。
【0046】
(3)操縦安定性能
2名のドライバーにより、乾燥路面における直進安定性、レーンチェンジ性、コーナリング性などを官能評価した。比較例1の結果を100としたときの指数で評価し、数値が大きいほど性能に優れていることを示す。
【0047】
比較例1は、図7のようにブロック3に突起を設けていない。比較例2は、図8のようにブロック3に一対の突起20を設け、それらを陸部21に連結している。比較例3は、図9のようにブロック3の側壁3aの全面に突起30を設けている。比較例4は、図10のようにブロック3に蹴り出し側の突起7aのみを設けている。実施例1,2では、図11,12のように三角形状の突起7を設け、実施例3,4では、図13,14のように階段状の突起8を設けている。
【0048】
図7〜14では、前述の実施形態で説明した構成と同一の構成に、同一の符号を付している。また、耐ヒールアンドトウ摩耗性能の評価において、摩耗が顕著な領域を黒く着色しているとともに、推察される滑りの方向と大きさを矢印で表している。第2ブロックの側壁に設けた突起の形状を除き、各例におけるトレッドパターンやタイヤ構造、ゴム配合は共通である。評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
比較例1では、ブロック3の蹴り出し側部分が広い範囲で摩耗しており、ヒールアンドトウ摩耗が顕著に発生している。比較例2,3では、摩耗が顕著となる領域が幾分か減少したものの、ブロック3の蹴り出し側部分が広く摩耗してヒールアンドトウ摩耗が生じているうえ、排水性能が悪化している。比較例4では、摩耗が顕著となる領域が減少したものの、ヒールアンドトウ摩耗を十分に防止できていない。
【0051】
実施例1〜4では、排水性能の悪化を抑制しつつ、摩耗が顕著となる領域を比較例1〜4よりも少なくして、ヒールアンドトウ摩耗を防止できている。また、ブロックの滑りが抑えられるとともに、突起によりブロックの剛性が高められることで、操縦安定性能も向上できている。特に実施例2,4においては、突起の平面視での大きさと共に、突起の高さも異ならせたことにより、ヒールアンドトウ摩耗を効果的に抑制できている。
【符号の説明】
【0052】
1 ショルダー主溝
2 第1ブロック
3 第2ブロック
3a 側壁
4 ショルダーブロック列
5 横溝
6 横溝
7 突起
7a 突起
7b 突起
7c 突起
8 突起
10 ショルダー主溝
10a 溝底
10c 周方向成分
L1 第1仮想直線
L2 第2仮想直線
Tr トレッド面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、前記主溝のうちタイヤ幅方向の最外側に位置するショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に配されたショルダーブロック列とをトレッド面に備える空気入りタイヤにおいて、
前記ショルダー主溝が、タイヤ回転方向の前方に向かってタイヤ幅方向内側に傾斜する複数の周方向成分を有し、タイヤ周方向に隣接した前記周方向成分が横溝を介して互いに連通しており、
前記ショルダーブロック列が、前記周方向成分のタイヤ回転方向の後方側に位置する第1ブロックと、その第1ブロックよりも頂面の面積が小さく、前記横溝を挟んで前記第1ブロックとタイヤ周方向に隣接する第2ブロックとを含み、
前記ショルダー主溝の溝底から隆起し且つ前記第2ブロックの側壁から突出した複数の突起がタイヤ周方向に間隔を置いて設けられ、前記第2ブロックの蹴り出し側に位置する前記突起の体積が踏み込み側に位置する前記突起の体積よりも大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2ブロックの側壁に設けられる前記突起の個数が三つまたは四つであり、その第2ブロックの蹴り出し側に向かって前記突起の体積が大きくなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記突起は、前記第2ブロックの蹴り出し側に向かって前記側壁からの突出量が大きくなる形状をしている請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記突起が平面視にて三角形状または階段状に形成されている請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記横溝を通って、前記ショルダー主溝に面する前記第1ブロックの踏み込み側角部と前記第2ブロックの蹴り出し側角部とを結ぶ第1仮想直線と、
前記ショルダー主溝に面する前記第2ブロックの踏み込み側角部からタイヤ回転方向の後方に向かってタイヤ周方向に延びる第2仮想直線と、
前記ショルダー主溝に面する前記第2ブロックの側壁とで囲まれる領域内に、
その第2ブロックの側壁に設けられた全ての前記突起が収まっている請求項1〜4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2ブロックの蹴り出し側に位置する前記突起が、前記横溝に面した前記第2ブロックの側壁の延長方向に沿って、前記第2ブロックの蹴り出し側角部に設けられている請求項1〜5いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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