説明

空気入りタイヤ

【課題】操縦安定性を損なうことなく転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】このタイヤ20は、その外面がトレッド面46をなすトレッド22と、このトレッド22の半径方向内側に位置するベルト34とを備える。ベルト34は、それぞれが赤道面に対して傾斜して延びる多数の第一コード及び第二コードを含む。第一コードは、赤道面を経由してトレッド22の一端T1の側からその他端T2の側に向かって延びる。第二コードは、赤道面を経由してトレッド22の他端T2の側からその一端T1の側に向かって延びる。トレッド22の一端T1の側において、第一コードは第二コードの半径方向外側に位置している。トレッド22の他端T2の側において、第二コードは第一コードの半径方向外側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、トレッドの半径方向内側にベルトを備えている。ベルトは、カーカスと積層されている。
【0003】
図5に示されているのは、従来タイヤのベルト2である。図5において、上下方向がタイヤの周方向であり、左右方向がタイヤの軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤの半径方向である。一点鎖線CLは、タイヤの赤道面を表わす。
【0004】
ベルト2は、内側層4a及び外側層4bからなる。内側層4a及び外側層4bのそれぞれは、並列された多数のコード6とトッピングゴム8とからなる。この図5においては、トッピングゴム8で覆われているコード6が実線で表されている。
【0005】
各コード6は、赤道面に対して傾斜している。図示されているように、内側層4aのコード6の赤道面に対する傾斜方向は外側層4bのコード6の赤道面に対する傾斜方向とは逆である。
【0006】
外側層4bは、内側層4aと積層されている。この外側層4bの半径方向外側に、トレッドが位置している。外側層4bに含まれるコード6は、赤道面を経由して、トレッドの一端側から他端側に向かって略直線状に延在している。このタイヤには、スリップ角が0°であるにも関わらず、横力が発生してしまう。この横力は、プライステアと称される。このプライステアの発生は、進行方向とは逆向きに作用する抵抗力の発生を伴う。このタイヤは、大きな転がり抵抗を有する。このタイヤは、燃費性能に劣る。
【0007】
図6に示されているのは、図5とは別の従来タイヤのベルト10である。図6において、上下方向がタイヤの周方向であり、左右方向がタイヤの軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤの半径方向である。一点鎖線CLは、タイヤの赤道面を表わす。
【0008】
ベルト10は、幅の狭い一対の第一プライ12と幅の広い第二プライ14とからなる。図示されているように、一方の第一プライ12aは半径方向において第二プライ14の内側に位置している。他方の第一プライ12bは、半径方向において第二プライ14の外側に位置している。第一プライ12及び第二プライ14のそれぞれは、並列された多数のコード16とトッピングゴム18とからなる。なお、この図3においては、トッピングゴム18で覆われているコード16が実線で表されている。
【0009】
ベルト10の半径方向外側には、トレッドが位置している。このタイヤでは、ベルト10のトレッド側の部分、言い換えれば、ベルト10の外側層は、第二プライ14の一部と第一プライ12bとで構成されている。このタイヤでは、第一プライ12bのコード16の傾斜方向は第二プライ14のコード16の傾斜方向とは逆である。このベルト10の外側層では、コード16は、その傾斜方向が赤道面に対して対称となるように配置されている。このタイヤでは、トレッドの一端側で発生するプライステアはその他端側で発生するプライステアにより相殺される。このタイヤでは、全体として、プライステアの発生が防止されている。このようなタイヤの一例が、特開平06−016009号公報に開示されている。
【0010】
上記特開平06−016009号公報以外にも、プライステアの発生防止の観点からベルト10の構成について様々な検討がされている。この検討例が、特開平11−028909号公報及び特開平11−028910号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平06−016009号公報
【特許文献2】特開平11−028909号公報
【特許文献3】特開平11−028910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図6に示されたベルト10では、第一プライ12aと第一プライ12bとは物理的に分離している。第一プライ12aと第一プライ12bとの間には、隙間が存在している。第一プライ12のコード16は、赤道面において連続していない。このベルト10の張力は、図5に示されたベルト2の張力よりも小さい。このベルト10では、充分なコーナリングパワーが得られない。このタイヤは、操縦安定性に劣る。
【0013】
複数本のコードが並列されたストリップを、菱形状に移動させながら、ベルトを形成することがある。このベルトでは、そのトレッド側において、コードは、その傾斜方向が赤道面に対して略対称となるように配置される。このベルトは、プライステアの発生防止に寄与しうる。しかし、このベルトのコードは赤道面において屈曲している。この屈曲は、ベルトに掛かる張力に影響する。このベルトでは、充分なコーナリングパワーが得られない。このタイヤは、操縦安定性に劣る。
【0014】
本発明の目的は、操縦安定性を損なうことなく転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトとを備えている。このベルトは、それぞれが赤道面に対して傾斜して延びる多数の第一コード及び第二コードを含んでいる。この第一コードは、この赤道面を経由してこのトレッドの一端側からその他端側に向かって延びている。この第二コードは、この赤道面を経由してこのトレッドの他端側からその一端側に向かって延びている。このトレッドの一端側において、この第一コードはこの第二コードの半径方向外側に位置している。このトレッドの他端側において、この第二コードはこの第一コードの半径方向外側に位置している。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記ベルトは多数の連結部材を周方向に並べ連ねることにより形成されている。それぞれの連結部材は、上記第一コードを第一トッピングゴムで被覆した第一ストリングと上記第二コードを第二トッピングゴムで被覆した第二ストリングとを交差させたものからなる。この連結部材の交差点は、赤道面上に位置している。
【0017】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記コードの材質はスチールである。
【0018】
好ましくは、この空気入りタイヤは、それぞれが架橋ゴムからなり、軸方向に離間して配置された一対のエッジストリップをさらに備えている。このエッジストリップは、上記ベルトの端と積層されている。
【0019】
好ましくは、この空気入りタイヤは、螺旋状に巻かれたコードを含むバンドをさらに備えている。このバンドは、上記ベルトと積層されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る空気入りタイヤでは、ベルトのトレッド側の部分、言い換えれば、ベルトの外側層においては、コードは、その傾斜方向が赤道面に対して左右対称となるように配置される。このベルトの内側層においても、コードは、その傾斜方向が赤道面に対して左右対称となるように配置される。このタイヤでは、プライステアの発生が抑えられている。このタイヤの転がり抵抗は小さい。このタイヤは、燃費性能に優れる。このタイヤでは、このベルトのコードは、赤道面を経由して、トレッドの一端側からその他端側に向かって又は他端側から一端側に向かって略直線状に延在している。このベルトは、大きな張力を有する。このタイヤには、充分なコーナリングパワーが発生する。このタイヤは、操縦安定性に優れる。本発明によれば、操縦安定性を損なうことなく転がり抵抗の低減が達成されたタイヤが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のタイヤのベルトの一部が示された概略平面図である。
【図3】図3は、図1のタイヤの製造の様子が示された模式図である。
【図4】図4は、図3とは別の様子が示された模式図である。
【図5】図5は、従来タイヤのベルト一部が示された概略平面図である。
【図6】図6は、図5とは別従来のタイヤのベルトの一部が示された概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0023】
図1には、空気入りタイヤ20が示されている。図1において、上下方向がタイヤ20の半径方向であり、左右方向がタイヤ20の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ20の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ20の赤道面を表わす。このタイヤ20の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0024】
このタイヤ20は、トレッド22、サイドウォール24、ウィング26、クリンチ28、ビード30、カーカス32、ベルト34、バンド36、エッジストリップ38、インナーライナー40、クッション層42及びチェーファー44を備えている。このタイヤ20は、チューブレスタイプである。このタイヤ20は、乗用車に装着される。
【0025】
トレッド22は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド22は、路面と接地するトレッド面46を形成する。トレッド面46には、溝48が刻まれている。この溝48により、トレッドパターンが形成されている。トレッド22は、ベース層50とキャップ層52とを有している。キャップ層52は、ベース層50の半径方向外側に位置している。キャップ層52は、ベース層50に積層されている。ベース層50は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層50の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層52は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0026】
ウィング26は、トレッド22の端に位置している。ウィング26は、トレッド22とサイドウォール24との間に位置している。ウィング26は、トレッド22とサイドウォール24とを連結する。ウィング26は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。
【0027】
サイドウォール24は、ウィング26から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール24の半径方向外側端は、ウィング26と接合されている。このサイドウォール24の半径方向内側端は、クリンチ28と接合されている。このサイドウォール24は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール24は、カーカス32の損傷を防止する。
【0028】
クリンチ28は、サイドウォール24の半径方向略内側に位置している。クリンチ28は、軸方向において、ビード30及びカーカス32よりも外側に位置している。クリンチ28は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ28は、リムのフランジと当接する。
【0029】
このタイヤ20では、サイドウォール24及びクリンチ28はサイド部54を構成している。図示されているように、このサイド部54はリブ56を備えている。リブ56は、軸方向外側に向かって突出している。このタイヤ20が装着されるリムのフランジの損傷は、このリブ56により防止される。
【0030】
ビード30は、クリンチ28の軸方向内側に位置している。ビード30は、コア58と、このコア58から半径方向外向きに延びるエイペックス60とを備えている。コア58はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス60は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス60は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0031】
カーカス32は、第一プライ62a及び第二プライ62bからなる。第一プライ62a及び第二プライ62bは、両側のビード30の間に架け渡されており、トレッド22及びサイドウォール24に沿っている。第一プライ62aは、コア58の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ62aには、主部64aと折り返し部66aとが形成されている。第二プライ62bは、コア58の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第二プライ62bには、主部64bと折り返し部66bとが形成されている。第一プライ62aの折り返し部66aの端は、半径方向において、第二プライ62bの折り返し部66bの端よりも外側に位置している。
【0032】
それぞれのプライ62は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス32はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス32が、1枚のプライ62から形成されてもよい。
【0033】
ベルト34は、トレッド22の半径方向内側に位置している。ベルト34は、カーカス32と積層されている。ベルト34は、カーカス32を補強する。このタイヤ20では、ベルト34は第一層68a及び第二層68bからなる。図1から明らかなように、トレッド22の一端T1の側、言い換えれば、赤道面からトレッド22の一端T1までの領域(以下、第一領域R1)においては、第一層68aは第二層68bの半径方向外側に位置している。トレッド22の他端T2の側、言い換えれば、赤道面からトレッド22の他端T2までの領域(以下、第二領域R2)においては、第一層68aは第二層68bの半径方向内側に位置している。このタイヤ20では、赤道面において、第一層68aと第二層68bとは交差している。
【0034】
このタイヤ20では、ベルト34のトレッド22の側の部分、換言すれば、ベルト34の外側層は、第一領域R1に位置する第一層68aと第二領域R2に位置する第二層68bとから構成されている。ベルト34のカーカス32の側の部分、換言すれば、ベルト34の内側層は、第一領域R1に位置する第二層68bと第二領域R2に位置する第一層68aとから構成されている。
【0035】
バンド36は、ベルト34の半径方向外側に位置している。バンド36は、ベルト34と積層されている。軸方向において、バンド36の幅はベルト34の幅よりも大きい。このタイヤ20では、バンド36はベルト34を覆う。図示されていないが、このバンド36は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド36は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト34が拘束されるので、ベルト34のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0036】
ベルト34及びバンド36は、補強層を構成している。ベルト34のみから、補強層が構成されてもよい。バンド36のみから、補強層が構成されてもよい。
【0037】
エッジストリップ38は、バンド36の半径方向内側に位置している。左右のエッジストリップ38は、軸方向に離間して配置されている。それぞれのエッジストリップ38は、ベルト34の半径方向外側であって、かつベルト34の端72の近傍に位置している。エッジストリップ38は、ベルト34の端72と積層されている。エッジストリップ38は、ベルト34の端72を覆っている。エッジストリップ38は、ベルト34の端72を拘束する。エッジストリップ38は、タイヤ20の耐久性に寄与しうる。エッジストリップ38は、架橋ゴムからなる。耐久性の観点から、エッジストリップ38の硬度は40以上が好ましく、60以下が好ましい。
【0038】
本明細書では、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬度は、図1に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
【0039】
インナーライナー40は、カーカス32の内側に位置している。インナーライナー40は、カーカス32の内面に接合されている。インナーライナー40は、架橋ゴムからなる。インナーライナー40には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー40の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー40は、タイヤ20の内圧を保持する。
【0040】
クッション層42は、ベルト34の端72の近傍において、カーカス32と積層されている。クッション層42は、軟質な架橋ゴムからなる。クッション層42は、ベルト34の端72の応力を吸収する。このクッション層42により、ベルト34のリフティングが抑制される。
【0041】
チェーファー44は、ビード30の近傍に位置している。タイヤ20がリムに組み込まれると、このチェーファー44がリムと当接する。この当接により、ビード30の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー44は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー44が、その材質がクリンチ28の材質と同じとされ、このクリンチ28と一体とされてもよい。
【0042】
図2に示されているように、ベルト34の第一層68aは並列された多数の第一ストリング74aにより構成されている。図示されていないが、第一ストリング74aは第一コードとトッピングゴムとからなる。第一層68aは、並列された多数の第一コードを含んでいる。このタイヤ20では、第一コードの材質はスチールである。この第一コードに、有機繊維が用いられてもよい。このタイヤ20では、この第一ストリング74aには一本の第一コードが含まれる。この第一ストリング74aに、複数の第一コードが含まれてもよい。
【0043】
各第一ストリング74aは、赤道面に対して傾斜して延びている。第一ストリング74aは、第一コードをトッピングゴムで被覆したものである。この第一ストリング74aの第一コードは、赤道面に対して傾斜して延びている。このタイヤ20では、第一コードの傾斜角度の絶対値は10°以上35°以下である。
【0044】
ベルト34の第二層68bは、並列された多数の第二ストリング74bにより構成されている。図示されていないが、第二ストリング74bは第二コードとトッピングゴムとからなる。第二層68bは、並列された多数の第二コードを含んでいる。このタイヤ20では、第二コードの材質は、スチールである。この第二コードに、有機繊維が用いられてもよい。このタイヤ20では、この第二ストリング74bには一本の第二コードが含まれる。この第二ストリング74bに、複数の第二コードが含まれてもよい。
【0045】
各第二ストリング74bは、赤道面に対して傾斜して延びている。第二ストリング74bは、第二コードをトッピングゴムで被覆したものである。この第二ストリング74bの第二コードは、赤道面に対して傾斜して延びている。このタイヤ20では、第二コードの傾斜角度の絶対値は10°以上35°以下である。
【0046】
図2において、二点鎖線T1及びT2は、それぞれトレッド22の端を表している。このタイヤ20では、第一ストリング74aは、トレッド22の一端T1の側からその他端T2の側に向かって延在している。したがって、第一ストリング74aに含まれる第一コードは、トレッド22の一端T1の側からその他端T2の側に向かって延在している。第二ストリング74bは、トレッド22の他端T2の側からその一端T1の側に向かって延在している。この第二ストリング74bに含まれる第二コードは、トレッド22の他端T2の側からその一端T1の側に向かって延在している。このタイヤ20では、第一コードの赤道面に対する傾斜方向は、第二コードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。このタイヤ20では、周方向に沿った面において、第一コードと第二コードとは交差している。
【0047】
このタイヤ20では、第二コードの傾斜角度の絶対値は第一コードの傾斜角度の絶対値とは同等である。この第二コードの傾斜角度の絶対値が第一コードの傾斜角度の絶対値よりも大きくされてもよい。この第二コードの傾斜角度の絶対値が第一コードの傾斜角度の絶対値よりも小さくされてもよい。
【0048】
前述したように、第一領域R1においては、第一層68aは第二層68bの半径方向外側に位置し、第二領域R2においては、第一層68aは第二層68bの半径方向内側に位置している。したがって、第一領域R1では、第一層68aに含まれる第一コードは第二層68bに含まれる第二コードの半径方向外側に位置している。第二領域R2においては、第一層68aに含まれる第一コードは、第二層68bに含まれる第二コードの半径方向内側に位置している。このタイヤ20では、赤道面において、第一コードと第二コードとは交差している。より詳細には、半径方向に沿った面において、第一コードと第二コードとは交差している。
【0049】
このタイヤ20は、次のようにして製造される。1本の第一コードをトッピングゴムで被覆することにより、第一被覆コードが形成される。この第一被覆コードがその長さ方向に間隔を空けて切断され、多数の第一ストリング74aが形成される。1本の第二コードをトッピングゴムで被覆することにより、第二被覆コードが形成される。この第二被覆コードがその長さ方向に間隔を空けて切断され、多数の第二ストリング74bが形成される。
【0050】
このタイヤ20の製造方法では、多数の第一ストリング74a及び多数の第二ストリング74bを用いて、図3に示されたような連結部材76が多数形成される。この連結部材76は、第一ストリング74aと第二ストリング74bとを交差させたものからなる。図3において、符号PJはこの第一ストリング74aと第二ストリング74bとが交差する位置を表している。この点PJは、連結部材76の交差点である。この図3において、左右方向はこのタイヤ20の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ20の周方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ20の半径方向である。
【0051】
この製造方法では、連結部材76はカーカス32に積層される。この積層に際し、この連結部材76は、その交差点PJが赤道面上に位置するように配置される。
【0052】
この製造方法では、第一連結部材76aが積層された後、第二連結部材76bがカーカス32に積層される。この積層の様子が、図4に示されている。この図4において、左右方向はこのタイヤ20の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ20の周方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ20の半径方向である。
【0053】
この製造方法では、この第二連結部材76bは、その積層に際し、交差点PJ2が第一連結部材76aの交差点PJ1とは重ならないように配置される。言い換えれば、第二連結部材76bは、第一連結部材76aとは周方向に間隔を空けて配置される。
【0054】
この製造方法では、第二連結部材76bは、その交差点PJ2がこの第一連結部材76aの交差点PJ1よりも第一連結部材76aの先端78aの側に位置するように配置される。この第二連結部材76bが、その交差点PJ2がこの第一連結部材76aの交差点PJ1よりも第一連結部材76aの後端78bの側に位置するように配置されてもよい。
【0055】
この製造方法では、多数の連結部材76が周方向に並べ連ねられることにより、図2に示されたベルト34が形成される。このベルト34に、トレッド22、サイドウォール24等の他の部材が組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。
【0056】
前述のようにして形成されたベルト34を含むローカバーは、モールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ20が得られる。
【0057】
前述したように、この製造方法では、ベルト34は多数の連結部材76が周方向に並べ連ねられることにより形成される。このベルト34の形成は、容易である。このベルト34は、工程管理の容易に寄与しうる。
【0058】
図3において、両矢印W1はベルト34を形成する連結部材76の先端78aの側の幅を表している。この幅W1は、この連結部材76の先端78aの側における、第一ストリング74aの一端PA1における第一コードの中心から第二ストリング74bの一端PB1における第二コードの中心までの軸方向距離で表される。両矢印W2は、連結部材76の後端78bの側の幅を表している。この幅W2は、この連結部材76の後端78bの側における、第一ストリング74aの他端PA2における第一コードの中心から第二ストリング74bの他端PB2における第二コードの中心までの軸方向距離で表される。
【0059】
この製造方法では、幅W1は幅W2よりも大きい。これにより、内側層が外側層の幅よりも大きな幅を有するベルト34が得られる。この幅W1が幅W2よりも大きくされてもよい。この場合、内側層が外側層の幅よりも小さな幅を有するベルト34を得ることができる。この幅W1及びW2は、タイヤ20の仕様に応じて適宜決められる。
【0060】
前述したように、このタイヤ20では、ベルト34の外側層は第一領域R1に位置する第一層68aと第二領域R2に位置する第二層68bとから構成されており、この第一層68aに含まれる第一コードの赤道面に対する傾斜方向はこの第二層68bに含まれる第二コードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。この外側層では、コードはその傾斜方向が赤道面に対して対称となるように配置されている。この外側層を有するベルト34は、プライステアの発生防止に寄与しうる。
【0061】
前述したように、このタイヤ20では、ベルト34の内側層は、第一領域R1に位置する第二層68bと第二領域R2に位置する第一層68aとから構成されており、この第一層68aに含まれる第一コードの赤道面に対する傾斜方向はこの第二層68bに含まれる第二コードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。この内側層では、コード16はその傾斜方向が赤道面に対して対称となるように配置されている。この内側層を有するベルト34は、プライステアの発生防止に寄与しうる。
【0062】
このタイヤ20では、プライステアの発生が抑えられている。したがって、このタイヤ20の転がり抵抗は小さい。このタイヤ20は、燃費性能に優れる。プライステアの発生が抑えられているので、このタイヤ20には偏摩耗が生じにくい。
【0063】
このタイヤ20では、第一コードは、赤道面を経由して、トレッド22の一端T1の側からその他端T2の側に向かって略直線状に延びている。第二コードは、赤道面を経由して、トレッド22の他端T2の側からその一端T1の側に向かって略直線状に延びている。したがって、このタイヤ20のベルト34は大きな張力を有する。このタイヤ20には、充分なコーナリングパワーが発生する。このタイヤ20は、操縦安定性に優れる。前述したように、このタイヤ20では、プライステアの発生が効果的に抑えられている。このタイヤ20では、操縦安定性を損なうことなく、転がり抵抗の低減が達成されうる。
【0064】
前述したように、このタイヤ20では、ベルト34の第一層68aを形成する第一ストリング74aは、第一コードをトッピングゴムで被覆したものである。このベルト34の第二層68bを形成する第二ストリング74bは、第二コードをトッピングゴムで被覆したものである。このベルト34においては、一のコードと他のコードとの間にトッピングゴムが介在している。このタイヤ20では、一のコードと他のコードとが直接接触することが防止されている。このベルト34は、タイヤ20の耐久性に寄与しうる。
【0065】
このタイヤ20では、操縦安定性の観点から、ベルト34の第一層68aにおける第一コードの密度は25エンズ/5cm以上が好ましく、30エンズ/5cm以上が特に好ましい。タイヤ20の軽量の観点から、この第一層68aにおける第一コードの密度は50エンズ/5cm以下が好ましく、45エンズ/5cm以下が特に好ましい。なお、この密度は第一層68aの第一コードの長手方向に垂直な断面において、第一層68aの5cm幅あたりに存在する第一コードの本数(エンズ)が計測されることにより、得られる。後述する第二層68bにおける第二コードの密度も、同様にして計測される。
【0066】
このタイヤ20では、操縦安定性の観点から、ベルト34の第二層68bにおける第二コードの密度は25エンズ/5cm以上が好ましく、30エンズ/5cm以上が特に好ましい。タイヤ20の軽量の観点から、この第二層68bにおける第二コードの密度は50エンズ/5cm以下が好ましく、45エンズ/5cm以下が特に好ましい。
【0067】
このタイヤ20では、操縦安定性の観点から、第一コードの外径は0.4mm以上が好ましい。軽量化の観点から、この第一コードの外径は0.7mm以下が好ましい。
【0068】
このタイヤ20では、操縦安定性の観点から、第二コードの外径は0.4mm以上が好ましい。軽量化の観点から、この第二コードの外径は0.7mm以下が好ましい。
【0069】
本発明では、タイヤ20の各部材の寸法及び角度は、タイヤ20が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ20に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ20には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ20が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ20が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ20の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0071】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた空気入りタイヤ(サイズ=225/45R18)を得た。このタイヤのベルトは、図2に示された構成を有している。このベルトに含まれる第一コード及び第二コードの傾斜角度の絶対値は、24°とされた。第一コード及び第二コードの材質は、スチールとされた。第一コード及び第二コードの外径は、0.5mmとされた。このベルトの第一層における第一コードの密度は、40エンズ/5cmとされた。このベルトの第二層における第二コードの密度は、40エンズ/5cmとされた。
【0072】
[実施例2−5]
傾斜角度を下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0073】
[比較例1]
ベルトを図5に示された構成を有するものに変えるとともにコードの傾斜角度の絶対値を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。比較例1は、従来のタイヤである。
【0074】
[比較例2−4]
ベルトを図6に示された構成を有するものに変えるとともにコードの傾斜角度の絶対値を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。比較例2−4は、従来のタイヤである。
【0075】
[比較例5−7]
複数本のコードが並列されたストリップを菱形状に移動させながら、ベルトを形成するとともにコードの傾斜角度の絶対値を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。比較例5−7は、従来のタイヤである。この表3のコードの角度の欄には、菱形の各辺をなすストリップにおけるコードの傾斜角度の絶対値から得られる平均値が、このベルトにおけるコードの傾斜角度の絶対値として記載されている。
【0076】
[コーナリングパワー及びプライステアの測定]
フラットベルト式タイヤ6分力測定装置を用い、下記の測定条件で横力を測定した。
使用リム:18×7.5J
内圧:230kPa
荷重:4.72kN
速度:80km/h
キャンバー角:0°
スリップ角:0°、1°
0°における横力がプライステアとして、1°における横力がコーナリングパワー(CP)として、下記の表1から3に示されている。
【0077】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:18×7.5J(アルミニウム合金製)
内圧:230kPa
荷重:4.72kN
速度:80km/h
この結果が、比較例1を100とした指数として、下記の表1から3に示されている。数値が小さいほど好ましい。
【0078】
[操縦安定性]
タイヤを18×7.5JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2500ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性を評価させた。この結果が、比較例1を100とした、指数として下記の表1から3に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
表1から3に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明されたベルトは、種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0084】
2、10、34・・・ベルト
20・・・タイヤ
22・・・トレッド
24・・・サイドウォール
26・・・ウィング
28・・・クリンチ
30・・・ビード
32・・・カーカス
36・・・バンド
38・・・エッジストリップ
40・・・インナーライナー
42・・・クッション層
44・・・チェーファー
68a、68b・・・層
74a、74b・・・ストリング
76・・・連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトとを備えており、
このベルトが、それぞれが赤道面に対して傾斜して延びる多数の第一コード及び第二コードを含んでおり、
この第一コードが、この赤道面を経由してこのトレッドの一端側からその他端側に向かって延びており、
この第二コードが、この赤道面を経由してこのトレッドの他端側からその一端側に向かって延びており、
このトレッドの一端側において、この第一コードがこの第二コードの半径方向外側に位置しており、
このトレッドの他端側において、この第二コードがこの第一コードの半径方向外側に位置している空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記ベルトが、多数の連結部材を周方向に並べ連ねることにより形成されており、
それぞれの連結部材が、上記第一コードを第一トッピングゴムで被覆した第一ストリングと上記第二コードを第二トッピングゴムで被覆した第二ストリングとを交差させたものからなり、
この連結部材の交差点が、赤道面上に位置している請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
上記コードの材質が、スチールである請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
それぞれが架橋ゴムからなり、軸方向に離間して配置された一対のエッジストリップをさらに備えており、
このエッジストリップが、上記ベルトの端と積層されている請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
螺旋状に巻かれたコードを含むバンドをさらに備えており、
このバンドが、上記ベルトと積層されている請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95173(P2013−95173A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236827(P2011−236827)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)