説明

空気吹出調整用レジスタ

【課題】ベゼルの上面から前面にかけての表面が水平に近い緩やかな傾斜面として形成されるレジスタにおいて、上下の風向調整を良好に実施すると共に、指向性の良好な送風を行うことができる空気吹出調整用レジスタを提供する。
【解決手段】上面から前面にかけての表面が水平に近い緩やかな傾斜面として形成されるベゼル1を有し、ベゼル1の後下部に通風路を有したリテーナ2が取着される。リテーナ2の通風路20内の高さが、その底面を下方に拡張することにより、ベゼル1の空気吹出口11の高さより大きく形成される。リテーナ2の傾斜した空気吹出部11の傾斜面に沿って、後可動ルーバ4の複数の横フィン41が並設される。後可動ルーバ4の最下部の横フィン41とリテーナ2の底壁間の隙間を通して水平方向に吹き出す空気流が阻止されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内等の換気や空調の空気吹出口に使用される空気吹出調整用レジスタに関し、特に車内のインストルメントパネルなどにおける水平面から緩やかに前下がりに傾斜した前面傾斜部に好適に装着して使用することができる空気吹出調整用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインストルメントパネルに装着される空気吹出調整用レジスタは、一般に、図9(a)に示すように、インストルメントパネル自体の高さが高いために、その意匠面を形成するベゼル51の高さは比較的高く形成することができる。また、そのベゼル51の傾斜角度αは、水平面から約45度〜約60程度と比較的大きな下向き傾斜角度となっていたため、リテーナ52内の通風路50の高さH1は比較的大きくとることができた。このため、通風路50内に前可動ルーバ53のフィンを並設し、その後部に後可動ルーバ54のフィンを並設したとしても、通風路50を送られる送風の圧力損失はそれほど増大せず、送風時の騒音や風速の低下を生じさせずに、送風を行うことができた。
【特許文献1】特開2005−350029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、自動車の車内前部に配設されるインストルメントパネルは、その上面から前面にかけての表面が、水平に近い非常に緩やかな湾曲傾斜面として形成される傾向にあり、インストルメントパネル自体の高さも低くなる傾向にある。このようなインストルメントパネルの前面に装着される空気吹出調整用レジスタは、図9(b)のように、ベゼル61の高さが比較的低いH2に制限され、そのベゼル61の傾斜角度βは、水平面から約30度程度と比較的小さい下向き傾斜角度となる。このため、この種のインストルメントパネルで使用されるレジスタは、リテーナ62内の通風路60の高さH3が比較的小さくなり、通風路60内に前可動ルーバ63の縦フィンを並設し、その後部に後可動ルーバ64の横フィンを並設した場合、通風路60を通過する送風の圧力損失が増大し、送風時の騒音や風速の低下を生じさせやすいという課題があった。また、図9(b)のように、後可動ルーバの複数の横フィンにおける軸心位置の配列の傾斜が緩やかになるため、下向きの風向調整が難しくなる課題があった。
【0004】
一方、上面から前面にかけての表面が水平に近い非常に緩やかな前面傾斜部として形成される形態のインストルメントパネルに装着されるレジスタとして、従来、1枚のルーバ体と導風板を備えた風向調整装置が、上記特許文献1で提案されている。
【0005】
この従来の風向調整装置は、通風ダクトの傾斜した開口部の上部に、1枚のルーバ体が回動可能に軸支され、そのルーバ体の下側前方に1枚の導風板が回動可能に取り付けられて構成される。この風向調整装置を使用して、送風を上方に向ける場合、ルーバ体を上方に向けるように回動し、且つ下側前方の導風板を下側に回動させる。一方、送風を上方から正面に変える場合、上記状態からルーバ体の角度を正面側に向けるように調整し、送風を下方に変える場合は、ルーバ体の先端角度を下側に狭窄するよう調整し、且つ導風板を上側に上げるように回動させて調整する。
【0006】
しかし、上記風向調整装置は、上向き下向きの風向調整を1枚のルーバ体の回動調整によって行なうため、中間方向から上向き方向或いは中間方向から下向き方向にかけての風向の微調整が難しいという問題があった。また、ルーバ体を回動調整して、風向を上方に向け又は下方に向けたとき、ルーバ体によって通風路が狭窄されるため、送風の圧力損失が大きく、騒音や風量低下を招きやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、上下の風向調整を良好に実施すると共に、指向性の良好な送風を行うことができる空気吹出調整用レジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の空気吹出調整用レジスタは、前面にベゼルを有し、該ベゼルの後下部に通風路を有したリテーナが取着された空気吹出調整用レジスタであって、該リテーナの通風路内の高さが、その底面を下方に拡張することにより、該ベゼルの空気吹出口の高さより大きく形成され、該リテーナの傾斜した空気吹出部の傾斜面に沿って、後可動ルーバの複数の横フィンが並設され、該後可動ルーバの最下部の横フィンと該リテーナの底壁間の隙間を通して水平方向に吹き出す空気流を阻止するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
ここで、上記請求項1の空気吹出調整用レジスタにおいては、請求項2のように、上記リテーナの底壁に中間段部を設け、該中間段部の真上に上記横フィンを配置し、該横フィンと該リテーナの底壁間の隙間を、該横フィン傾斜動作に応じて閉じるように構成することができる。
【0010】
また、上記請求項1の空気吹出調整用レジスタにおいては、請求項3のように、後可動ルーバの前方に前可動ルーバが配設され、該前可動ルーバには、複数の縦フィンが縦方向の枢軸を介して左右に回動可能に枢支され、該前可動ルーバの各縦フィンを左右に回動させると共に、該後可動ルーバの各横フィンを上下に傾動させるための操作ノブを、該前可動フィンの外周部に摺動可能に外嵌することができる。
【0011】
また、上記請求項1の空気吹出調整用レジスタにおいては、請求項4のように、上記リテーナ内の通風路における後可動ルーバの後方に、ダンパが軸支され、ダンパのダンパ軸は通風路の通風方向と直角に中央水平面上に配置されるように構成することができる。
【0012】
また上記請求項3の空気吹出調整用レジスタにおいては、請求項5のように、前記リテーナの傾斜吹出口の前方に前可動ルーバ収容部が該傾斜吹出口より下側に延設された延設部を含んで形成され、該前可動ルーバ収容部内に上記前可動ルーバの複数の縦フィンが上下の軸支部を介して左右に回動可能に軸支されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の請求項1の空気吹出調整用レジスタによれば、リテーナの通風路内の高さが、その底面を下方に拡張することにより、ベゼルの空気吹出口の高さより大きく形成され、リテーナの通風路に、後可動ルーバの複数の横フィンが通風方向に沿って並設されるため、ベゼルの空気吹出口が水平に近い緩やかな傾斜面として形成されていても、横フィンと横フィンの間隙が狭窄されることはなく、送風時の圧力損失を増大させずに、低騒音で、斜め下方から上方まで良好な指向性をもって送風することができる。
【0014】
また、後可動ルーバの最下部の横フィンとリテーナの底壁間の隙間を通して吹き出す空気流が阻止されるから、後可動ルーバの横フィンを上方に回動させた際、最下部の横フィンとリテーナの底壁間を水平方向に抜ける通風は殆ど生じない。したがって、横フィンにより上方に誘導される風が下側に引かれて底壁に付着することはなく、送風における中心風速の低下を防止して、スポット感のある送風を指向性良く行うことができる。
【0015】
さらに、請求項2の空気吹出調整用レジスタによれば、リテーナの底壁に中間段部を設け、中間段部の真上に横フィンを配置し、横フィンとリテーナの底壁間の隙間を横フィンの回動動作に応じて閉じるようにしたから、後可動ルーバの横フィンを水平方向から斜め上方まで回動させた場合でも、最下部の横フィンとリテーナの底壁間を水平方向に抜ける通風は発生しない。したがって、横フィンにより誘導される風が下側に引かれて底壁に付着することはなく、送風における中心風速の低下をいっそう防止して、後可動ルーバの横フィンが向けられた方向に、スポット感のある送風を行うことができる。
【0016】
さらに、請求項3の空気吹出調整用レジスタによれば、後可動ルーバの前方に前可動ルーバが配設され、前可動ルーバには、複数の縦フィンが縦方向の枢軸を介して左右に回動可能に枢支され、前可動ルーバの各縦フィンを左右に回動させると共に、後可動ルーバの各横フィンを上下に傾動させるための操作ノブを、前可動ルーバの縦フィンに外嵌して取り付けたから、1つの操作ノブの操作により風向を上下左右に調整する、つまり、操作ノブを上下に回動操作したときには、後可動ルーバの上下の傾動角度が変更されて、風向が上下に調整され、操作ノブを左右方向に摺動させたときには、前可動ルーバの左右の角度が変更されて、風向を左右に調整することができる。
【0017】
また、請求項4の空気吹出調整用レジスタによれば、ダンパを設けることにより、送風を遮断することができ、ダンパを開放させたときには、ダンパのダンパ板を横フィンと平行に位置させ、これにより、斜め下方への送風を効率よく行なうことができる。
【0018】
また、請求項5の空気吹出調整用レジスタによれば、前可動ルーバの縦フィンが傾斜吹出口の下方まで延設された延設部まで延びるため、風向を下側に向けた際の空気流の左右の風向を、良好に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は空気吹出調整用レジスタの正面図を示し、図2はその左側面図を示し、図3はその右側面図を示し、図4はその分解斜視図を示している。
【0020】
1はレジスタの正面から上部の意匠面を形成し、空気吹出口11を有したベゼル、2はベゼル1の下側に取り付けられ、内部に形成した通風路20に前可動ルーバ3、後可動ルーバ4を設けたリテーナである。図1、図4に示すように、リテーナ2は、方形断面を有したダクト状に形成され、内部に通風路20を有し、リテーナ2の前面には矩形の傾斜吹出口21が、その下部を前方に出しその上部を後方に引戻すように、傾斜して形成されている。そして、図6に示すように、リテーナ2の通風路20内の上流側の高さH4は、通風路20の底面を下方に拡張することにより、その下流側である、ベゼル1の空気吹出口11の高さH5より大きく形成されている。さらに、リテーナ2の通風路20に、後可動ルーバ4の例えば7枚の横フィン41が、傾斜吹出口21の傾斜方向に沿って水平方向に所定の上下間隔をおいて並設されている。
【0021】
すなわち、図6に示す如く、リテーナ2の前部には、前面が斜め上方を向くように傾斜した傾斜吹出口21が形成され、リテーナ2の底壁には、前上方にかけて傾斜した傾斜面22が形成される。さらに、その底壁の傾斜面22の前上部に、中間段部22aが前方に上がる段差部を持って、ステップ状に形成されている。この中間段部22aの真上には、後述の後可動ルーバ4の最下部の横フィン41が配置され、特に最下部の横フィン41とリテーナ2の底壁との間を抜ける水平方向の空気流が阻止される構造となっている。さらに、中間段部22aの前部には延設部23aが形成され、この延設部23aは、リテーナ2の前部に形成される前可動ルーバ収容部23の底部に広がる延設部23aに接続されている。
【0022】
また、リテーナ2の傾斜吹出口21の上縁部に、前可動ルーバ3の軸支部材保持部が形成され、後述の前可動ルーバ3の上軸支部材31cがそこに嵌着される。また、リテーナ2の傾斜吹出口21の両側部に、後可動ルーバ4の軸支部材保持部が形成され、後述の後可動ルーバ4の軸支部材42,43がそこに嵌着される。
【0023】
リテーナ2の傾斜吹出口21上に嵌着されるベゼル1には、図4のように、縦に長い長方形状の空気吹出口11が形成され、リテーナ2側の傾斜吹出口21は、ベゼル1の空気吹出口11の下側に重なるように連通する。また、図4に示すように、ベゼル1の左部には、ダンパ操作用のノブ用開口部12が形成される。さらに、ベゼル1の空気吹出口11を囲う枠部の下部には、下方に延びる4本の係止部14が突設され、それらの係止部14に形成した矩形係止孔に、リテーナ2の側壁に設けた4個の係止爪28が各々係止され、ベゼル1はリテーナ2の傾斜吹出口21の前部に装着される。ベゼル1のノブ用開口部12には、ダンパ10を操作するダンパ操作ノブ6が、回動操作可能に配置される。
【0024】
図3の如く、ベゼル1の空気吹出口11とリテーナ2の傾斜吹出口21の水平軸に対する傾斜角度θは、その下部を前方に突き出し、その上部を後方に引き込むように、前面が斜め上方を向く形態で、緩く傾斜して形成されている。
【0025】
図6に示すように、リテーナ2内の通風路20の基本通風方向は、中央水平面O上に設定され、中央水平面O上の送風方向に沿った中央線がこのレジスタの基本通風方向となっている。リテーナ2はこの中央水平面O上の基本通風方向が、図3の如く、やや下方を向くようにベゼル1の下部に取り付けられている。また、リテーナ2前部の傾斜吹出口21(ベゼル1の空気吹出口11)に沿った吹出口平面Sとこの中央水平面Oとの角度θは、傾斜吹出口21の傾斜角度をなすもので、通常のレジスタに比べ小さく、例えば約22度に設定される。
【0026】
この傾斜角度θは、レジスタが装着される自動車のインストルメントパネルの前部の傾斜角度に一致し、スラントタイプのインストルメントパネル、つまりパネルの上面から前面にかけての表面が、水平に近い非常に緩やかな湾曲傾斜面として形成されるインストルメントパネルに、本レジスタは使用される。また、本レジスタの傾斜吹出口21の傾斜角度θは、上記のように約22度に設定されるが、必ずしもこの角度に限定されるものではなく、例えば約18度〜約30度の範囲で設定することができる。なお、通風路20の通風方向に沿って中央の水平面に設定される中央水平面Oは、上又は下にずらして中央を外れた平面とすることもできる。
【0027】
リテーナ2前部に設けられる前可動ルーバ収容部23は、前可動ルーバ3を収容するように矩形枠型に形成され、傾斜吹出口21の開口下部からさらに前部に延びるトレイ状の延設部23aが設けられる。延設部23a上には、前可動ルーバ3の各縦フィン31の縦フィン下軸31bを支持する下軸支部材31dが取り付けられ、それに対応したリテーナ2の上部に、前可動ルーバ3の各縦フィン31の縦フィン上軸31aを支持する上軸支部材31cが取り付けられる。
【0028】
前可動ルーバ3には、例えば5本の縦フィン31が、斜め縦方向に沿って且つ左右に所定の間隔をおいて並設される。図4に示すように、各縦フィン31の縦フィン下軸31bは下軸支部材31dに嵌入され、その縦フィン上軸31aは上軸支部材31cに嵌入されて、各縦フィン31は軸の周りで回動可能に支持される。さらに、各縦フィン31の上端部に連結軸31eが偏心して設けられ、これらの連結軸31eには、1本のリンクバー31fが連結され、各縦フィン31が同期して回動する構造となっている。
【0029】
さらに、前可動ルーバ3の中央に位置する縦フィン31には、図4の如く、ルーバ操作用の操作ノブ8が、フィンの長手方向に所定に範囲で摺動可能に、外嵌される。操作ノブ8は、図5に示すように、縦フィン31を挿入するための挿入溝を内側に設けたノブ本体8aと、ノブ本体8a内に挿入され、操作負荷を発生するためのゴム状弾性体8cと、ノブ本体8aの挿入溝の開口部を覆うようにノブ本体8aの端部に嵌着される座板8bとから構成される。ノブ本体8aの両側端部には4本の係止爪8eが突設され、座板8bにはノブ本体8aの係止爪8eが係止される係止部が形成される。ゴム状弾性体8cは、ノブ本体8aの挿入溝内に縦フィン31と共に挿入され、縦フィン31とノブ本体8aとの間で摺動し、適度な操作負荷を発生させる。さらに、座板8bの背面側に、後可動ルーバ4の1本の横フィン41に設けた連係バー41dと係合する1対の係合部8dが突出して形成されている。
【0030】
この操作ノブ8は、ゴム状弾性体8cをノブ本体8aの挿入溝内に挿入した状態で、縦フィン31をその挿入溝内に挿入し、挿入溝の開口部側を覆うように座板8bをノブ本体8aに嵌め込み、その係止爪8eを係止部に係止させて、操作ノブ8は中央に位置する1本の縦フィン31に装着される。このような装着状態で、操作ノブ8の前部は前可動ルーバ3の前方に少し突出し、その突き出した前部を持って左右に操作する。このとき、前可動ルーバ3の各縦フィン31が縦フィン上軸31a、縦フィン下軸31bを軸に左右に回動し、風向を左右に調整する。また、操作ノブ8は縦フィン31の長手方向(上下方向)にも所定の範囲内で摺動可能とされ、後述の後可動ルーバ4の横フィン41を上下に回動させる。
【0031】
リテーナ2の傾斜吹出口21の直ぐ内側、つまり前可動ルーバ3の後方(内側)に後可動ルーバ4が上下の風向調整のために設けられる。この後可動ルーバ4は、リテーナ2の傾斜吹出口21の傾斜部に沿って、例えば7本の横フィン41を各々水平方向に、上下に間隔をおいて並設して構成される。図4に示すように、各横フィン41の左側の横フィン軸41aに、1本の軸支部材42が軸孔に嵌め込むように嵌着され、各横フィン41の右側の横フィン軸41aに、1本の軸支部材43がその軸孔に嵌め込み装着される。右側の横フィン軸41aの先端にはリンクアーム41bが軸着され、リンクアーム41bの端部に連結軸41cが突設される。それらの連結軸41cに1本のリンクバー44が連結される。7本のうちの1本の横フィン41の略中央に、連係バー41dが設けられる。その連係バー41dに、上記操作ノブ8の二又状の係合部8dが係合し、操作ノブ8の上下摺動に応じて係合部8dと連係バー41dを連係させ、横フィン41をその横フィン軸41a回動する構造となっている。
【0032】
このような7本の横フィン41を軸支部材42,43とリンクバー44によって連結した後可動ルーバユニットは、その軸支部材42,43を、リテーナ2の傾斜吹出口21の左右両側の枠部内に嵌め込むようにして、リテーナ2内の傾斜吹出口21内に装着され、このとき、連結軸41cに連結されたリンクバー44は図3に示すように、リテーナ2の右側面の外側に取り付けられる。さらに、リテーナ2の最前部の前可動ルーバ収容部23に、5本の縦フィン31を上軸受部材31c、下軸支部材31d及びリンクバー31fにより連結した前可動ルーバユニットが挿入されて組み付けられる。このとき、上部の上軸受部材31cはリテーナ2の前可動ルーバ収容部23の上辺部内側に嵌入され、下部の下軸受部材31dは延設部23a上に嵌入されて取り付けられ、さらに、1本の縦フィン31に外嵌された操作ノブ8の二又状の係合部8dは、後可動ルーバ4の1本の横フィン41の連係バー41dに係合して取り付けられる。この操作ノブ8の係合部8dと横フィン41の連係バー41dとの係合により、操作ノブ8を縦フィン31の長手方向(上下方向)に操作すると、操作ノブ8が縦フィン31上で上または下に摺動し、横フィン41の向きが上下に調整される。
【0033】
図4、図6に示すように、リテーナ2内の通風路20の後部には、ダンパ10が水平軸を中心に回動可能に支持される。ダンパ10は、図4に示すように、ダンパ板10aの周囲にシール材10bを嵌着し、ダンパ板10aの両側の中点を、ダンパ軸10c、10dを介して回動可能に支持して構成される。ダンパ軸10c、10dは、通風路20内の中央水平面上に配置され、一方のダンパ軸10cは、リテーナ2の側壁の外側から内側に挿入されてダンパ板10aの縁部に嵌着され、他方のダンパ軸10dはダンパ板10aの縁部に突設され、リテーナ2の側壁に設けた軸孔に回動可能に嵌め込まれる。外側から嵌入したダンパ軸10cにリンクアーム10eが軸着され、図2の如く、リンクアーム10eの先端がリンクバー19の端部の連結軸19aに連結される。
【0034】
一方、リテーナ2の前部の左側壁部に、図4の如く、ダンパ操作ノブ6用の軸部6aが水平に突設され、この軸部6aにダンパ操作ノブ6の軸中心が回動可能に軸支される。また、操作荷重を付加するために、その軸部6aにはゴム状弾性体6cが嵌装される。ダンパ操作ノブ6の下部には、リンク部材6bが突設され、図4のように、このリンク部材6bの先端が、リンクバー19を介して上記リンクアーム10eに連結される。ダンパ操作ノブ6を図2の位置に回動したとき、リテーナ2内のダンパ10は、図6のように中央水平面O上に位置して開状態となる。一方、ダンパ操作ノブ6を図2の時計方向に回すと、リンクバー19が図2の左側に移動し、ダンパ10は時計方向に回動して図6の仮想線に示す閉鎖状態となる。
【0035】
上記構成の空気吹出調整用レジスタは、例えば自動車の車室内の前部における水平面から緩やかに前下がりに傾斜したインストルメントパネルの前面傾斜部に装着される。このとき、ベゼル1はインストルメントパネルの前面傾斜部に沿って配置され、リテーナ2内の通風路20の基本通風方向、つまり通風路20内を通る中央水平面Oが、僅かに下方に傾斜して向くように、取り付けられる。
【0036】
送風の風向を調整する際には、前可動ルーバ3の中央の縦フィン31に装着した操作ノブ8を操作して風向を調整する。風向を上または下に調整する場合、操作ノブ8を縦フィン31上で上又は下に摺動操作する。この操作ノブ8の上又は下への摺動操作により、係合部8dと連係バー41dを介して後可動ルーバ4の各横フィン41がその横フィン軸41aを軸に回動し、送風方向が略水平方向を含む上方または下方に調整される。
【0037】
横フィン41が、例えば、図6に示すように、中央水平面Oに沿ったフラットな状態に調整されると、通風路20内の空気流は横フィン41に沿って誘導され、略水平方向に送風する状態となるが、通風路20の底部に沿った空気流は遮断される状態となる。つまり、通風路20の底壁の傾斜面22に沿って流れる空気流は、中間段部22aの箇所でブロックされ、水平方向または上方に抜ける空気流は底壁近傍で発生しない。したがって、図6に示すようなレジスタの送風は、横フィン41に誘導されて、通風路20の中央水平面Oに沿った方向つまり、略水平から下方を向いた方向に、良好な指向性をもって、低騒音、低圧力損失で送風することができる。
【0038】
一方、操作ノブ8を上方に摺動操作すると、図7に示すように、後可動ルーバ4の横フィン41は、係合部8dと連係バー41dを介して横フィン軸41aを軸に回動し、斜め上方を向くように調整される。横フィン41が、図7に示すように、斜め上方を向く状態に調整されると、通風路20内の空気流は横フィン41に沿って誘導され、斜め上方に送風する状態となるが、通風路20の底部に沿った空気流はやはり遮断される状態となる。つまり、通風路20の底壁の傾斜面22に沿って流れる空気流は、中間段部22aの箇所でブロックされ、水平方向に抜ける空気流は底壁近傍では発生しない。
【0039】
したがって、図7に示すように、レジスタの通風路20内の空気流は、斜め上方を向く横フィン41に誘導され、斜め上方に向けて送風され、最下部の横フィン41とリテーナ2の底壁間を水平方向に抜ける通風は発生しないから、最下部の横フィン41により誘導される風が下側に引かれて底壁に付着することはなく、送風における中心風速の低下を防止して、後可動ルーバ4の横フィン41が向けられた方向に、スポット感のある送風を行うことができる。
【0040】
また、風向を上側に調整した場合、リテーナ2の通風路20内には、その上流側の高さH4全体の開口から充分な流量の空気流が流入し、各横フィン41の間隙でも狭窄されずに、斜め上方に向けて効率よく送風される。このため、送風時の圧力損失は小さく、低騒音で、横フィン41を向けた斜め下方から上方まで、良好な指向性をもって送風することができる。
【0041】
さらに、この空気吹出調整用レジスタは、ベゼルの上面から前面にかけての表面が水平に近い緩やかな傾斜面として形成される従来のレジスタとは異なり、前可動ルーバ3と後可動ルーバ4が空気吹出口に配設されるため、後可動ルーバ4の横フィン41が開放されたときの開口部(窪み)は外観的に目立つものではなく、良好な意匠性を損なうことはない。
【0042】
一方、風向を左右に調整する場合、操作ノブ8を左または右方向に回動操作すると、操作ノブ8と共に前可動ルーバ3の各縦フィン31が、その縦フィン上軸31aと縦フィン下軸31bを軸に回動し、その向きを左または右に変える。
【0043】
これにより、前可動ルーバ3の各縦フィン31の向きが左右に変わり、操作ノブ8の簡単な回動操作によって、風向を任意の左右方向に調整することができる。特に、後可動ルーバ4の調整によって風向が下側に向けられている場合でも、傾斜吹出口21から送風された空気流は、下方に延設された前可動ルーバ3の下部を通過するため、その縦フィン31によって調整された左右方向に、良好な指向性をもって送風を行うことができる。
【0044】
一方、送風を遮断する場合は、ダンパ操作ノブ6を操作して、ダンパ10をそのダンパ軸10c、10dを軸に回動させ、通風路20を閉じる。送風時には、ダンパ10を通風路20内で略水平状態まで回動させて、通風路20を開放させて通風抵抗の少ない、低圧力損失の送風を行うことができる。
【0045】
図8は他の実施形態における横フィンとリテーナの底壁との関係を示している。上記実施形態では、リテーナ2の底壁に傾斜面22を設けると共に、その傾斜面22の上部(前部)に中間段部22aを設け、中間段部22aの真上に最下部の横フィン41を配置したが、図8(a)〜(d)に示す形態であっても、最下部の横フィンと底壁との間を流れる空気流を遮断または曲げることにより、横フィンの上向き時の指向性を向上させることができる。
【0046】
すなわち、図8(a)に示すように、リテーナ底壁の傾斜面222の上部における平坦部に、最下部の横フィン411を配置し、横フィン411を斜め上方に回動させたとき、平坦部と横フィン411との間の隙間を狭搾して、横フィン411と底壁との間を流れる空気流を遮断する構造とする。これにより、最下部の横フィン411と底壁との間を流れる空気流が遮断され、横フィン411によって誘導される上向きの空気流が底壁に付着する不具合は防止される。このため、上向き送風時の指向性を向上させて、送風の中心風速の低下を防止し、スポット感の良好な送風を実現することができる。
【0047】
また、図8(b)に示すように、リテーナ底壁の傾斜面223の上部に、中間段部223aを設け、その中間段部223aの傾斜面223bの上部に横フィン412を配置する。そして、横フィン412を斜め上向きにしたとき、横フィン412の下面が傾斜面223bに略当接するように配置する。これにより、横フィン412を斜め上向きに回動させたとき、中間段部223aの傾斜面223bと横フィン412との間の隙間を狭搾して、横フィン412と底壁との間を流れる空気流を遮断することができる。
【0048】
また、図8(c)に示すように、リテーナ底壁の傾斜面224の上部に、中間段部224aを設け、その中間段部224aの真上に横フィン413を配置し、横フィン413を斜め上向きにしたとき、横フィン413の下端が中間段部224aに略当接するように配置する。これにより、横フィン413を斜め上向きに回動させたとき、中間段部224aと横フィン413の端部間の隙間を狭搾して、横フィン413と底壁との間を流れる空気流を遮断することができる。
【0049】
また、図8(d)に示すように、リテーナ底壁の傾斜面223の上部に、第1中間段部225aと第2中間段部225bを設け、それらの第1中間段部225a、225bの真上に横フィン414を配置する。そして、横フィン414を水平にしたとき、横フィン414の前部が第2中間段部225bに略当接し、横フィン414を斜め上向きにしたとき、横フィン412の後部が第1中間段部225aの傾斜面に略当接するように配置する。
【0050】
これにより、横フィン414を水平または斜め上向きに回動させたとき、第1中間段部225aまたは第2中間段部225bと横フィン414との間の隙間を狭搾して、横フィン414と底壁との間を流れる空気流を遮断することができる。したがって、上向き時に横フィン414によって誘導される上向きの空気流が底壁に付着する不具合は防止され、上向き送風時の指向性を向上させて、送風の中心風速の低下を防止し、スポット感の良好な送風を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態を示す空気吹出調整用レジスタの正面図である。
【図2】同レジスタの左側面図である。
【図3】同レジスタの右側面図である。
【図4】同レジスタの分解斜視図である。
【図5】同レジスタの操作ノブの分解斜視図である。
【図6】同レジスタの後可動ルーバを水平にした状態の縦断面図である。
【図7】後可動ルーバを上向きにした状態の縦断面図である。
【図8】他の実施形態を示す最下部の横フィンと底壁との関係を示す断面説明図である。
【図9】(a)は従来の一般的な空気吹出調整用レジスタの概略断面図、(b)はベゼルの前面が水平に対し緩やかに傾斜して形成された空気吹出調整用レジスタの概略断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ベゼル
2 リテーナ
3 前可動ルーバ
4 後可動ルーバ
6 ダンパ操作ノブ
8 操作ノブ
10 ダンパ
11 空気吹出口
20 通風路
21 傾斜吹出口
22 傾斜面
22a 中間段部
23 前可動ルーバ収容部
23a 延設部
31 縦フィン
31a 縦フィン上軸
31b 縦フィン下軸
31c 上軸支部材
31d 下軸支部材
41 横フィン
41a 横フィン軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にベゼルを有し、該ベゼルの後下部に通風路を有したリテーナが取着された空気吹出調整用レジスタであって、
該リテーナの通風路内の高さが、その底面を下方に拡張することにより、該ベゼルの空気吹出口の高さより大きく形成され、該リテーナの傾斜した空気吹出部の傾斜面に沿って、後可動ルーバの複数の横フィンが並設され、該後可動ルーバの最下部の横フィンと該リテーナの底壁間の隙間を通して水平方向に吹き出す空気流を阻止するように構成したことを特徴とする空気吹出調整用レジスタ。
【請求項2】
前記リテーナの底壁に中間段部が設けられ、該中間段部の真上に前記最下部の横フィンが配置され、該横フィンと該リテーナの底壁間の隙間を、該横フィンの回動動作に応じて閉じるように構成したことを特徴とする請求項1記載の空気吹出調整用レジスタ。
【請求項3】
前記後可動ルーバの前方に前可動ルーバが配設され、該前可動ルーバには、複数の縦フィンが縦方向の枢軸を介して左右に回動可能に枢支され、該前可動ルーバの各縦フィンを左右に回動させると共に、該後可動ルーバの各横フィンを上下に傾動させるための操作ノブが、該前可動フィンの外周部に摺動可能に外嵌されたことを特徴とする請求項1記載の空気吹出調整用レジスタ。
【請求項4】
前記リテーナ内の通風路における後可動ルーバの後方に、ダンパが軸支され、該ダンパのダンパ軸は通風路の通風方向と直角に且つ中央水平面上に配置されたことを特徴とする請求項1記載の空気吹出調整用レジスタ。
【請求項5】
前記リテーナの傾斜吹出口の前方に前可動ルーバ収容部が該傾斜吹出口より下側に延設された延設部を含んで形成され、該前可動ルーバ収容部内に前記前可動ルーバの複数の縦フィンが上下の軸支部を介して左右に回動可能に軸支されたことを特徴とする請求項3記載の空気吹出調整用レジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−126937(P2008−126937A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317046(P2006−317046)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(595058336)豊和化成株式会社 (48)
【Fターム(参考)】