説明

空気導入管の静音化装置

【課題】線スペクトル的でピーク周波数が広帯域に渡って一定間隔で現れるような騒音を確実に静音化する。
【解決手段】管路4の一方の開口2が騒音源90に接続されている。管路4における他方の開口3よりもλ/4だけ開口2側には消音器型消音器10が設けられている。管路4における開口3よりもλ/4だけ開口2側には消音器型消音器20が設けられている。管路4における開口3よりもλ/4だけ開口2側には消音器型消音器30が設けられている。管路4における消音器30と開口3との間には膨張型消音器40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)等に空気を導入する空気導入管における騒音の静音化に好適な静音化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子楽器やPA(Pro Audio)機器の電源としての用途が期待される技術の1つに直接メタノール型燃料電池がある。図32は、この電池80の構成を示す図である。図32に示すように、直接メタノール型燃料電池80は、燃料電池セル81と、燃料電池セル81における一方の極である空気極82に空気を供給する空気ポンプ84と、燃料電池セル81における他方の極である燃料極83にメタノールを供給する燃料ポンプ85と、燃料電池セル81において空気とメタノールとが化学反応を起こすことにより発生する水を廃棄するラジエータ86と、メタノールを循環させるラジエータ87とを有する。この電池80の空気極82及び燃料極83に電子機器やPA機器などの負荷89を接続し、空気極82及び燃料極83に空気及びメタノールを供給すると、空気及びメタノールの化学反応により発生した電力が負荷89に与えられる。ここで、この電池80の駆動中には、空気ポンプ84内のモータが定速で回転され、外部の空気が同ポンプ84を介して空気極82へ送り込まれる。このため、図33に示すように、この電池80の駆動中は、モータの回転数の整数倍の周波数に急峻なピークを持った複数の線スペクトルを含む騒音が、空気ポンプ84から発生する。このように広い周波数帯域に亙って多くの線スペクトルの分布した音の静音化に利用できる技術的手段として、騒音源に管路を連結し、この管路上に膨張型消音器や共鳴器型消音器などの消音器を備えつけたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
膨張型消音器は、管路の途中に、管路の内側の断面積よりも大きな断面積の空洞を内側に持った膨張部を設け、管路及び膨張部の断面積の不連続な部分で生じる反射によって伝搬音を減衰させるものである。図34は、膨張型消音器300の構成を示す図である。共鳴器型消音器は、管路の途中に閉管やヘルムホルツ共鳴器などの各種共鳴器を連結したものである。図35は、ヘルムホルツ共鳴器を用いた共鳴器型消音器301の構成を示す図である。
【0004】
膨張型消音器の管路の入口及び出口間における各周波数成分の透過損失Rは、管路長が無限大であると仮定した場合、次式(1)により求められ、図36(A)のようになる。次式(1)において、mは、膨張部内の空洞の面積S2を膨張部に繋がる一方の側の管路の断面積S1で除算した値である。m’は、膨張部内の空洞の面積S2を膨張部に繋がる他方の管路の断面積S3で除算した値である。kは、管路を伝搬する音の波数(=2π/波長)である。lは、膨張型消音器における空洞部の長さである。
【数1】

【0005】
また、例えば、共鳴器型消音器が図35に示す構成のもの(ヘルムホルツ共鳴器を利用したもの)である場合、透過損失Rは、次式(2)により求められ、図37のようになる。式(2)において、Vはヘルムホルツ共鳴器のキャビティの容積、Sは管路の断面積、fは管路を伝搬する音の周波数、frはヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数である。
【数2】

式(2)における共鳴周波数frは、次式(3)により与えられる。
【数3】

次式(3)において、Cは、音速である。また、式(2)及び(3)におけるCは、次式(4)により与えられる。
【数4】

式(4)において、nはキャビティと管路の連結孔であるネックの個数、aはネックの半径、lはネックの長さである。また、βは次式(5)により与えられる。
【数5】

【0006】
図36(A)に示すように、膨張型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数においては、前掲の式(1)におけるパラメータm,m’,k,lにより決まる一定の周波数帯域幅毎に急峻なピークが現れる。そして、この伝達関数においては、ピークとピークの間の周波数の利得が小さくなる。また、図37に示すように、共鳴器型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数は、共鳴器のパラメータ(図35の例の消音器であれば、キャビティの容積、キャビティと管路とを連結するネックの面積、ネックの長さ)により決まる1つの周波数に急峻なディップを持ったものとなる。よって、原理的には、当該膨張型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数のピークの周波数が騒音のピークの周波数と一致しないような寸法とした膨張型消音器を利用したり、各々の透過損失×(−1)で見積もった伝達関数のディップの周波数が騒音のピークの周波数と一致するような寸法とした複数個の共鳴器型消音器を利用することにより、直接メタノール型燃料電池の空気ポンプから発生する騒音を静音化することが可能ではある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−166689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような技術的手段には次のような問題がある。まず、図36(A)に示した膨張型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数は、膨張部の両側に無限長の管路が各々繋がっていると仮定した場合のものであるが、実際には、有限の長さの管路が膨張部の両側に接続される。このため、図36(B)に示すように、膨張型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数は、ピークの周波数の間隔が不均一なものとなる。そして、膨張型消音器の管路の長さが有限である場合における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数のピークの周波数は、膨張部内の空洞の断面積や膨張部の両端に繋がる各管路の形状(管路の断面積、管路の屈曲の有無、管路の枝分かれの有無、継手などの介在の有無など)といった様々な条件に依存して決まる。このため、膨張型消音器を、その伝達関数のピークの周波数が狙いとする騒音のピークの周波数のいずれとも一致しないように設計することは極めて困難である。
【0009】
一方、共鳴器型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数のディップの周波数は、当該共鳴器型消音器の共鳴周波数を決めるパラメータとなる数種類の寸法(図35の例の消音器であれば、キャビティの容積V、キャビティと管路とを連結するネックの面積S、ネックの長さl)に依存するため、伝達関数のディップの周波数が狙いとする騒音のピークの周波数と一致するように設計することは、膨張型消音器に比べれば容易である。しかしながら、共鳴器型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数のディップは急峻であるから、空気ポンプ84の駆動中の温度変化などにより空気ポンプ84から発生する騒音のピークの周波数が僅かでも変化すると、静音効果が得られなくなる。
【0010】
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、多数の線スペクトルが広帯域に渡って分布した騒音を確実に静音化することができる静音化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、両端に開口を有し、これらの各開口のうち第1の開口が騒音源に連結される管路と、前記管路における第2の開口から第1の開口の側に離れた位置に設けられた共鳴器型消音器であって、当該共鳴器型消音器の共鳴周波数を変化させる手段を有する共鳴器型消音器と、前記管路における前記第1の開口と前記共鳴器型消音器の間に設けられた膨張型消音器とを具備する静音化装置を提供する。
【0012】
この発明は、低域から高域までの広帯域の周波数成分を減衰する膨張型共鳴器と、当該共鳴器の寸法に応じて決まる特定の周波数成分のみを減衰する共鳴器型消音器を併有している。そして、共鳴器型消音器はその共鳴周波数を決定づけるパラメータを変化させる手段を有している。よって、音の媒体である空気の温度などの環境変化に応じて共鳴器型消音器のパラメータを適宜変更しつつ利用することにより、多数の線スペクトルが広帯域に渡って分布した騒音を確実に静音化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態である静音化装置の構成を示す図である。
【図2】同装置の効果を確認するために行われた検証の結果を示す図である。
【図3】同装置の効果を確認するために行われた検証の結果を示す図である。
【図4】同装置の効果を確認するために行われた検証の結果を示す図である。
【図5】同装置の効果を確認するために行われた検証の結果を示す図である。
【図6】同装置の効果を確認するために行われた検証の結果を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図14】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図17】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図19】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図20】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図21】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図22】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図23】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図24】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図25】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図26】本発明の他の実施形態である静音化装置の共鳴器型消音器を示す図である。
【図27】本発明の他の実施形態である静音化装置の管路を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態である静音化装置の構成を示す図である。
【図29】本発明の他の実施形態である静音化装置の作用を説明するための図である。
【図30】本発明の他の実施形態である静音化装置の作用を説明するための図である。
【図31】本発明の他の実施形態である静音化装置の作用を説明するための図である。
【図32】直接メタノール型燃料電池の構成を示す図である。
【図33】同電池の空気ポンプが発生する騒音のパワースペクトルを示す図である。
【図34】膨張型消音器の構成を示す図である。
【図35】共鳴器型消音器の構成を示す図である。
【図36】膨張型共鳴器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数を示す図である 。
【図37】共鳴器型消音器における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態である静音化装置1及びこの静音化装置1が取り付けられる騒音源90の構成を示す図である。図1において、騒音源90は、上述した直接メタノール型燃料電池80の空気ポンプ84である。電池80の駆動中は、騒音源90である空気ポンプ84内のモータが定速(例えば、50回転/秒とする)で回転され、外部の空気が電池80の空気極82へ送り込まれる。このため、電池80の駆動中は、騒音源90である空気ポンプ84からは、同ポンプ84内のモータの回転数に基づいて決定される基本周波数f(f=200Hz)と、その整数倍の高次周波数f(f=400Hz),f(f=600Hz)…に急峻なピークを持った多数の線スペクトルを含む騒音が放射される。静音化装置1は、騒音源90たる空気ポンプ84から発生される騒音を静音化するものである。
【0015】
静音化装置1は、両端に開口2及び3を有する管路4と、管路4における開口3よりもλ/4(λ=c/f:cは15°Cにおいて空気中を伝搬する音の音速)だけ開口2側に設けられた共鳴器型消音器10と、管路4における開口3よりもλ/4(λ=c/f)だけ開口2側に設けられた共鳴器型消音器20と、管路4における開口3よりもλ/4(λ=c/f)だけ開口2側に設けられた共鳴器型消音器30と、管路4における共鳴器型消音器10と開口2の間に設けられた膨張型消音器40とを有する。
【0016】
図1において、管路4は、直接メタノール型燃料電池80と燃料電池セル81からなる騒音源90へ当該管路4内を経由して空気を引き込む役割を果たす。管路4の開口2は騒音源90に連結されており、開口3は外部に開放されている。ここで、この管路4における消音器40が設けられた位置から開口3までの区間は、断面積が均一でなければならない。一方、この管路4における消音器40が設けられた位置から開口2までの区間は、任意に設計できる。例えば、断面積が不均一であってもよいし、管路4が大きく湾曲していてもよい。
【0017】
消音器10は、閉管(サイドブランチ管)である。この消音器10は、騒音源90から発生する音波における基本周波数f及びその近傍の周波数成分を低減させる役割を果たす。より詳細に説明すると、この消音器10は、管路4内における開口3よりもλ/4だけ開口2側の位置から当該管路4を貫いて外側に延在する円筒部11の一部分を、円筒部11の外周径と同じ内周径を持ち且つ一端側が閉塞された円筒部12内に挿入したものである。ここで、通常の状態では、円筒部12における閉塞された側の端面と管路4との間の距離Lは、周波数f及び音速cを次式(6)に代入して求まる長さに調整される。
=c/(4・f)=λ/4…(6)
【0018】
よって、通常の状態では、騒音源90から開口2を介して管路4内を伝搬される音波の中に周波数fの周波数成分が含まれている場合、消音器10内において管共鳴現象が発生し、周波数fの周波数成分の音響エネルギーが減衰する。
【0019】
また、この消音器10における円筒部11の外周は円筒部12の内周に対して僅かな摩擦力を持って接している。そして、円筒部12を円筒部11に近づけたり円筒部11から遠ざける方向に動かすことにより、円筒部12における閉塞された側の端面と管路4との間の距離LをL±αの範囲内において調整することができる。この距離Lの調整により、消音器10内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を基本周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0020】
消音器20は、ヘルムホルツ共鳴器である。この消音器20は、騒音源90から発生する音波における周波数f及びその近傍の周波数成分を低減させる役割を果たす。より詳細に説明すると、この消音器20は、管路4内における開口3よりもλ/4だけ開口2側の位置から当該管路4を貫いて外側に延在する円筒部21と、円筒部21の外周径と同じ内周径のネック22を持った壺状部23における当該ネック22とを連結させたものである。
【0021】
ここで、通常の状態では、騒音源90から開口2を介して管路4内を伝搬される音波の中に周波数fの周波数成分が含まれている場合、消音器20内においてヘルムホルツ共鳴現象が発生し、周波数fの周波数成分の音響エネルギーが減衰する。
【0022】
また、この消音器20における円筒部21の外周と壺状部23のネック22の内周にはネジ山及びネジ溝が各々設けられており、ネジ山及びネジ溝の締結により、円筒部21とネック22とが連結されている。そして、この消音器20では、壺状部23を円筒部21に対して回転させると、壺状部23におけるネック22と空洞24の境界面と管路4との間の距離LをL±βの範囲内において調整することができる。この距離Lの調整により、消音器20内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0023】
消音器30は、ヘルムホルツ共鳴器である。この消音器30は、騒音源90から発生する音波における周波数f及びその近傍の周波数成分を低減させる役割を果たす。より詳細に説明すると、この消音器30は、管路4内における開口3よりもλ/4だけ開口2側の位置から当該管路4を貫いて外側に延在する円筒部31の先端に、この円筒部31の内周径よりも大きな内周径をもったシリンダ部32を設け、このシリンダ部32内にピストン部33を挿入したものである。
【0024】
ここで、通常の状態では、騒音源90から開口2を介して管路4内を伝搬される音波の中に周波数fの周波数成分が含まれている場合、消音器30内においてヘルムホルツ共鳴現象が発生し、周波数fの周波数成分の音響エネルギーが減衰する。
【0025】
また、この消音器30におけるピストン部33の外周面は、シリンダ部32の内周面に対してある程度の摩擦力をもって接している。そして、この消音器30では、ピストン部33を円筒部31に近づけたり円筒部31から遠ざける方向に動かすことにより、空洞34の容積VをV±γの範囲内において調整することができる。この容積Vの調整により、消音器30内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0026】
消音器40は、騒音源90から発生する音波における低域から高域までの周波数成分を広く減衰させる役割を果たす。より詳細に説明すると、この消音器40は、管路4の断面積よりも大きな断面積の空洞を内側に持った膨張部41を有している。膨張部41の内側の空洞は、当該膨張部41の一端面及び他端面に各々設けられた孔42及び43を介して管路4と連通している。ここで、この膨張部41の両端面に連通している管路4の長さは有限である。よって、当該消音器40における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数は、不均一な間隔で急峻なピークが現れるようなものとなる(図36(B))。このため、開口2の側から当該消音器40を経由して共鳴器30の側に伝搬される音波における各周波数成分は、当該消音器40における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数のピークの周波数成分以外の周波数成分だけが減衰する。
【0027】
以上説明した本実施形態によると、次の効果が得られる。
第1に、本実施形態では、騒音源90である空気ポンプ84から管路4内に伝搬された音波が、膨張型消音器40、共鳴器型消音器10,20,及び30が連結された位置を経由し、開口3から外部に放射される。そして、管路4に設けられている4つの消音器10,20,30及び40のうち膨張型消音器40により、音波における低域から高域までの広帯域の周波数成分が減衰される。また、共鳴器型消音器10,20及び30により、音波における基本周波数f(f=200Hz)と、その整数倍の高次周波数f(f=400Hz),f(f=600Hz)…の周波数成分が減衰する。よって、実施形態によると、空気ポンプ84の騒音を確実に静音化することができる。
【0028】
本願発明者らは、この第1の効果を確認すべく、次のような検証を行った。まず、静音化装置1の開口2を騒音源90たる空気ポンプ84に接続し、空気ポンプ84を駆動させている間に開口3から放射された音を収音し、収音した音のパワースペクトルを測定した。また、静音化装置1のものと同寸法で消音器10,20,30,及び40が設けられていない管路4’の一方の開口2’を騒音源90たる空気ポンプ84に接続し、空気ポンプ84を駆動させている間にこの管路4’の他方の開口3’から放射された音のパワースペクトルを測定した。図2は、以上のようにして測定した両パワースペクトルを周波数軸を揃えて示した図である。また、図3は、静音化装置1を接続した場合におけるパワースペクトルを人間の聴覚特性に応じて補正したA特性波形と、管路4’を接続した場合におけるパワースペクトルを人間の聴覚特性に応じて補正したA特性波形とを、周波数軸を揃えて示した図である。騒音源90に静音化装置1を備え付けた場合と管路4を備え付けた場合の各々における各周波数成分の振幅を比較すると、低域から高域までのほぼ全周波数成分において、静音化装置1を備え付けた場合の方が管路4’を備え付けた場合よりも振幅が小さくなっている。また、静音化装置1を備え付けた場合のパワースペクトルでは、管路4’を備え付けた場合のパワースペクトルにおいてピークとなっている周波数成分が十分に小さくなっている。このことから、静音化装置1を騒音源90たる空気ポンプ84に備え付けることにより、確実な静音効果が得られることが分かる。
【0029】
第2に、本実施形態では、共鳴器型消音器10の共鳴周波数を決定付けるパラメータである距離L、共鳴器型消音器20の共鳴周波数を決定づけるパラメータの1つである距離L、及び共鳴器型消音器30の共鳴周波数を決定づけるパラメータの1つである体積Vを調整する手段が設けられている。よって、音波の媒質である空気の温度が変化し、騒音源90から発生する騒音における急峻なピークの周波数が変化している場合でも、距離L、Lや体積Vの調整により、そのピークの周波数成分を低減させることができる。また、騒音源90の静音用の静音化装置1の製造段階において共鳴器10,20,30の設置位置に寸法誤差があった場合でも、距離L及びLや体積Vを調整し、その騒音源90が発生する騒音のピーク周波数の周波数成分を低減させることができる。
【0030】
第3に、本実施形態では、管路4における開口3よりもλ/4(λ=c/f)だけ開口2側に共鳴器型消音器10が設けられているため、騒音源90から発生する騒音における基本周波数fの周波数成分の減衰量を大きくすることができる。以下、この効果が得られる理由について詳細に説明する。管路4内を開口3に向かって伝搬する音波に周波数fの周波数成分が含まれている場合、その周波数fの音波(進行波)と開口3において反射して逆方向に伝搬される音波(反射波)とが合成され、開口3に節を有する波長λの定在波が発生する。共鳴器型消音器10が開口3よりもλ/4(λ=c/f)だけ開口2側に設けられている場合、共鳴器型消音器10の位置がこの波長λの定在波の腹と一致する。このため、共鳴器型消音器10内の空気がこの波長λの定在波により加振され易くなる。この結果、共鳴器型消音器10を他の位置に設けた場合よりも周波数fの周波数成分の減衰量が大きくなる。また、同様に、本実施形態では、管路4における開口3よりもλ/4(λ=c/f)及びλ/4(λ=c/f)だけ開口2側に共鳴器型消音器20及び30が設けられているため、騒音源90から発生する騒音における周波数f及び周波数fの周波数成分の減衰量を大きくすることができる。
【0031】
本願発明者らは、この第3の効果を確認すべく、次のような検証を行った。まず、本願発明者らは、周波数f=200Hzの定在波の低減効果が最も高くなる共鳴器の位置が開口3からλ/4(λ=c/f)≒425mmだけ離れた位置であることを確認するための検証を行った。より具体的には、図4(A)に示すように、開管51における一方の開口52から425mmだけ離れた位置に共鳴器型消音器10aを設けた場合、この消音器10aよりも開口52側に共鳴器型消音器10bを設けた場合、この消音器10bの開口52側に共鳴器型消音器10cを設けた場合の各々における挿入損失を測定した。図4(B)は、3つの場合の各々における挿入損失×(−1)で見積もった伝達関数を示す図である。
【0032】
また、本願発明者らは、周波数f=400Hzの定在波の低減効果が最も高くなる消音器の位置が開口3からλ/4(λ=c/f)≒212.5mmだけ離れた位置であることを確認するための検証を行った。より具体的には、図5(A)に示すように、開管51における一方の開口52から212.5mmだけ離れた位置に共鳴器型消音器10dを設けた場合、この消音器10dよりも開口52側に共鳴器型消音器10eを設けた場合、共鳴器10dよりも開口53側に共鳴器型消音器10fを設けた場合の各々における挿入損失を測定した。図5(B)は、3つの場合の各々における挿入損失×(−1)で見積もった伝達関数を示す図である。
【0033】
また、本願発明者らは、周波数f=600Hzの定在波の低減効果が最も高くなる消音器の位置が開口3からλ/4(λ=c/f)≒141mmだけ離れた位置であることを確認するための検証を行った。より具体的には、図6(A)に示すように、開管51における一方の開口52から141mmだけ離れた位置に共鳴器型消音器10gを設けた場合、消音器10gよりも開口52側に共鳴器型消音器10hを設けた場合、消音器10gよりも開口53側に共鳴器型消音器10iを設けた場合、消音器10iよりも開口53側に共鳴器型消音器10jを設けた場合の各々における挿入損失を測定した。図6(B)は、3つの場合の各々における挿入損失×(−1)で見積もった伝達関数を示す図である。
【0034】
図4(B)における200Hzの周波数成分の振幅に着目すると、開口52から425mmだけ離れた位置に共鳴器型消音器10aを設けた場合は、残りの2つ場合に比べて、200Hzの周波数成分の減衰量が大きくなっている。また、図5(B)における400Hzの周波数成分の振幅に着目すると、開口52から212.5mmだけ離れた位置に共鳴器型消音器10dを設けた場合は、残りの2つ場合に比べて、400Hzの周波数成分の減衰量が大きくなっている。図6(B)における600Hzの周波数成分の振幅に着目すると、開口52から141mmだけ離れた位置に共鳴器型消音器10gを設けた場合は、残りの3つの場合に比べて、600Hzの周波数成分の減衰量が大きくなっている。このことから、開口3よりもλ/4,λ/4,及びλ/4だけ開口2側に共鳴器型消音器10,20,及び30を設けた場合に、周波数f,f,及びfの周波数成分の減衰量が最も大きくなることが分かる。
【0035】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記実施形態では、共鳴器型消音器10を円筒部11と円筒部12とを連結させたものにより構成した。しかし、共鳴器型消音器10の構成はこれに限らない。例えば、共鳴器型消音器10を次のような構成のものにしてもよい。図7に示すように、第1の変形例である共鳴器型消音器110は、円筒部111と、円筒部112と、円筒部113とから構成される。円筒部111は、管路4の内側から当該管路4を貫いて外側に延在している。円筒部111における管路4の反対側は開放されている。円筒部112は、円筒部111の外周径と同じ内周径を有している。円筒部112は両端が開放されている。円筒部113は、円筒部112の内周径と同じ外周径を有している。円筒部113における一端の側は開放され、他端の側は閉塞されている。この消音器110では、円筒部111における管路4と反対側の一部分が円筒部112内に挿入され、円筒部113における開放された側の端部の一部が円筒部112内に挿入されることにより、円筒部111,112,及び113の内周面を内郭とする閉管が形成される。この消音器110では、円筒部113を円筒部111に近づけたり遠ざける方向に動かすことにより、円筒部113における閉塞された側の端面と管路4と間の距離L110を調整することができる。この距離L110の調整により、消音器110内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0036】
図8に示すように、第2の変形例である共鳴器型消音器210は、円筒部211と円柱部212とから構成される。円筒部211は、管路4の内側から当該管路4を貫いて外側に延在している。この円筒部211における管路4と反対側の端部は開放されている。円柱部212は円筒部211の内周径と同じ外周径を有している。この消音器210では、円筒部211の内周と円柱部212の外周にネジ山及びネジ溝が各々設けられている。この消音器210では、ネジ山及びネジ溝の締結により、円筒部211内に円柱部212が嵌合され、円筒部211の内周面と円柱部212の端面213とを内郭とする閉管が形成される。この消音器210では、円筒部211内の円柱部212を円筒部211に対して回転させることにより、円柱部212の端面213と管路4との間の距離L210を調整することができる。この距離L210の調整により、消音器210内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0037】
図9(A)及び図9(B)に示すように、第3の変形例である共鳴器型消音器310は、管路4の内側から当該管路4を貫いて円筒を延在させ、この円筒における管路4と反対側の端部を閉塞したものである。この消音器310の側面311は、可撓性素材を蛇腹状に成形したものである。この消音器310では、管路4と反対側の端面312を管路4から離す方向に動かしたり、管路4に近づける方向に動かしたりすることにより、端面312と管路4との間の距離L310を調整することができる。この距離L310の調整により、消音器310内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0038】
図10に示すように、第4の変形例である共鳴器型消音器410は、円筒部411とピストン部412とから構成される。円筒部411は、管路4の内側から当該管路4を貫いて外側に延在している。ピストン部412は、幅薄の円柱状をなしている。ピストン部412は、円筒部411の内周径と同じ外周径を有している。この消音器410におけるピストン部412は円筒部411内に挿入され、円筒部411の内周面とピストン部412の底面413とにより閉管が形成される。この消音器410では、ピストン部412を管路4に近づけたり管路4から遠ざける方向に動かすことにより、円筒部411内におけるピストン部412の底面413と管路4との間の距離L410を調整することができる。この距離L410の調整により、消音器410内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0039】
図11に示すように、第5の変形例である共鳴器型消音器510は、円筒部511と円筒部512とから構成される。円筒部511は、管路4の内側から当該管路4を貫いて外側に延在している。この円筒部511における管路4と反対側の端部は開放されている。円筒部511は円筒部512の外周径と同じ内周径を有している。この消音器510では、円筒部511の外周と円筒部512の内周にネジ山及びネジ溝が各々設けられている。この消音器510では、ネジ山及びネジ溝の締結により、円筒部512内に円筒部511が嵌合され、円筒部511及び512の内周面を内郭とする閉管が形成される。この消音器510では、円筒部512を円筒部511に対して回転させることにより、円筒部512における閉塞された側の端面513と管路4との間の距離L510を調整することができる。この距離L510の調整により、消音器510内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0040】
(2)上記実施形態では、共鳴器型消音器20を円筒部21と壺状部23とを連結したものにより構成し、共鳴器型消音器30を、円筒部31、シリンダ部32、及びピストン部33を連結したものにより構成した。しかし、共鳴器型消音器20及び30の構成はこれに限らない。例えば、共鳴器型消音器20及び30の両方または一方(たとえば、共鳴器型消音器20とする)を次のような構成のものにしてもよい。図12に示すように、第6の変形例である共鳴器型消音器220は、円筒部221と、円筒部221の外周径と同じ内周径のネック222を持った壺状部223におけるネック222とを連結させたものである。この消音器220における円筒部221の内周と壺状部223のネック222の外周にはネジ山及びネジ溝が各々設けられている。この消音器220では、ネジ山及びネジ溝の締結により、円筒部221内に壺状部223のネック222が嵌合され、円筒部221及び壺状部223の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。そして、壺状部223を円筒部221に対して回転させることにより、壺状部223におけるネック222とその奥の空洞224との境界面と管路4との距離L220を調整することができる。この距離L220の調整により、消音器220内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0041】
図13に示すように、第7の変形例である共鳴器型消音器320は、円筒部321と、円筒部321の外周径と同じ内周径のネック322を持った壺状部323とから構成される。この消音器320では、円筒部321における管路4の反対側の一部分が壺状部323のネック322内に挿入され、円筒部321及び壺状部323の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器320では、壺状部323を管路4に対して近づけたり管路4から遠ざける方向に動かすことにより、壺状部323におけるネック322及びその奥の空洞324間の境界面と管路4と間の距離L320を調整することができる。この距離L320の調整により、消音器320内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0042】
図14に示すように、第8の変形例である共鳴器型消音器420は、円筒部421と、円筒部421の外周径と同じ内周径のネック422を持った壺状部423とから構成される。この消音器420では、壺状部423のネック422の一部分が円筒部421内に挿入され、円筒部421及び壺状部423の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器420では、壺状部423を管路4に対して近づけたり管路4から遠ざける方向に動かすことにより、壺状部423におけるネック422とその奥の空洞424との境界面と管路4と間の距離L420を調整することができる。この距離L420の調整により、消音器420内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0043】
図15に示すように、第9の変形例である共鳴器型消音器520は、円筒部521と、円筒部522と、円筒部522の外周径と同じ内周径のネック523を持った壺状部524とから構成される。この消音器520では、円筒部521における管路4の反対側の一部分と、壺状部524におけるネック523の一部分が円筒部522の両側から円筒部522内に挿入され、円筒部521,522及び壺状部524の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器520では、壺状部524を円筒部521に近づけたり遠ざける方向に動かすことにより、壺状部524におけるネック522とその奥の空洞528との境界面と管路4と間の距離L520を調整することができる。この距離L520の調整により、消音器520内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0044】
図16(A)及び図16(B)に示すように、第10の変形例である共鳴器型消音器620は、管路4と連通するネック621を有する壺状をなしている。この消音器620におけるネック621は、可撓性素材を蛇腹状に成形したものである。この消音器620では、当該消音器620を管路4から離す方向に引いたり、管路4に近づける方向に押したりすることにより、ネック621とその奥の空洞622との境界面と管路4と間の距離L620を調整することができる。この距離L620の調整により、消音器620内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0045】
図17に示すように、第11の変形例である共鳴器型消音器720は、管路4と連通するネック721を有する壺状をなしている。この消音器720におけるネック721の奥の空洞722には体積調整部材723が挿入される。体積調整部材723は、空洞722の内周径と同じ外周径を持った円柱状をなしている。この体積調整部材723における一端面の中心と他端面の中心との間には、ネック721の内周と同じ直径を持った孔724が穿設されている。ここで、空洞722内における体積調整部材723の体積が大きい程、空洞722における体積調整部材723を除いた部分の体積は小さくなる。この消音器720では、空洞722内に挿入されている体積調整部材723を体積のより大きなものや小さなものに置き換えることにより、空洞722における体積調整部材723を除いた部分の体積V720を調整することができる。この体積V720の調整により、消音器720内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0046】
図18に示すように、第12の変形例である共鳴器型消音器820は、管路4内と連通する碗部821と、この碗部821とともに空洞822を形成する円筒部823とから構成される。この消音器820における碗部821は、管路4内から当該管路4を貫いて外側に延在する小径の円筒の先端に大径の円筒を連結したものである。円筒部823は、碗部821における大径の円筒の部分の内周径と同じ外周径を有している。碗部821の大径の円筒の部分は開放されている。円筒部823における一方の端部は閉塞されており、他方の端部は開放されている。この消音器820では、円筒部823がその開放された側の端面を碗部821に向けて碗部821内に挿入され、碗部821及び円筒部823の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器820では、円筒部823を管路4に対して近づけたり管路4から遠ざける方向に動かすことにより、空洞822の体積V820を調整することができる。この体積V820の調整により、消音器820内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0047】
図19に示すように、第13の変形例である共鳴器型消音器920は、管路4内と連通する碗部921と、この碗部921とともに空洞922を形成する円筒部923とから構成される。この消音器920では、碗部921における大径の円筒の部分がその開放された側の面を円筒部923に向けて円筒部923内に挿入され、碗部921及び円筒部923の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器920では、円筒部923を管路4に対して近づけたり管路4から遠ざける方向に動かすことにより、空洞922の体積V920を調整することができる。この体積V920の調整により、消音器920内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0048】
図20に示すように、第14の変形例である共鳴器型消音器1020は、管路4内と連通する碗部1021と、この碗部1021とともに空洞1022を形成する円筒部1023及び1024とから構成される。この消音器1020では、碗部1021における大径の円筒の部分がその開放された側の面を円筒部1023に向けて円筒部1023内に挿入されるとともに、円筒部1024がその開放された側の面を円筒部1023に向けて円筒部1023内に挿入され、碗部1021と円筒部1023及び1024の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器1020では、円筒部1024を管路4に対して近づけたり管路4から遠ざける方向に動かすことにより、空洞1022の体積V1020を調整することができる。この体積V1020の調整により、消音器1020内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0049】
図21に示すように、第15の変形例である共鳴器型消音器1120では、管路4内と連通する碗部1121と、この碗部1121とともに空洞1122を形成する円筒部1123とから構成される。この消音器1120の碗部1121における大径の円筒の部分の内周と円筒部1123の外周には、ネジ山及びネジ溝が各々設けられている。この消音器1120では、ネジ山及びネジ溝の締結により、碗部1121における大径の円筒の部分内に円筒部1123が嵌合され、碗部1121及び円筒部1123の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器1120では、円筒部1123を碗部1121に対して回転させ、円筒部1123を碗部1121に対して接離する方向に移動させることにより、空洞1122の体積V1120を調整することができる。この体積V1120の調整により、消音器1120内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0050】
図22に示すように、第16の変形例である共鳴器型消音器1220は、管路4内と連通する碗部1221、この碗部1221とともに空洞1222を形成する円筒部1223とから構成される。この消音器1220の碗部1221における大径の円筒の部分の外周と円筒部1223の内周には、ネジ山及びネジ溝が各々設けられている。この消音器1220では、ネジ山及びネジ溝の締結により、碗部1221における大径の円筒の部分が円筒部1223内に嵌合され、碗部1221及び円筒部1223の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器1220では、円筒部1223を碗部1221に対して回転させ、円筒部1223を碗部1221に対して接離する方向に移動させることにより、空洞1222の体積V1220を調整することができる。この体積V1220の調整により、消音器1220内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0051】
図23に示すように、第17の変形例である共鳴器型消音器1320は、管路4内と連通する碗部1321と、この碗部1321とともに空洞1322を形成する円柱部1323とから構成される。碗部1321は、管路4内から当該管路4を貫いて外側に延在する小径の円筒に大径の円筒を連結したものである。円柱部1323は、碗部1321における大径の円筒の内周径と同じ外周径を有している。碗部1321の大径の円筒は開放されている。この消音器1320の碗部1321における大径の円筒の内周と円柱部1321の外周には、ネジ山及びネジ溝が各々設けられている。この消音器1320では、ネジ山及びネジ溝の締結により、碗部1321における大径の円筒内に円柱部1323が嵌合され、碗部1321及び円柱部1323の内周面を内郭とするヘルムホルツ共鳴器が形成される。この消音器1320では、円柱部1323を碗部1321に対して回転させ、円柱部1323を碗部1321に対して接離する方向に移動させることにより、空洞1322の体積V1320を調整することができる。この体積V1320の調整により、消音器1320内において音響エネルギーを減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0052】
図24(A)及び図24(B)に示すように、第18の変形例である共鳴器型消音器1420は、管路4内と連通するネック1421を持った壺状をなしている。この消音器1420におけるネック1421の奥の空洞1422を覆う側面1423は、可撓性素材を蛇腹状に成形したものである。この消音器1420では、当該消音器1420を管路4から離す方向に引いたり、管路4に近づける方向に押したりすることにより、空洞1422の体積V1420を調整することができる。この体積V1420の調整により、消音器1420内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0053】
図25に示すように、第19の変形例である共鳴器型消音器1520は、管路4内と連通するネック1521を有する壺状をなしている。この消音器1520におけるネック1521の奥の空洞1522には内挿材1523が挿入される。内挿材1523は、例えば、砂や粘土である。空洞1522内における内挿材1523の体積が大きいほど、空洞1522内における内挿材1523を除いた部分の体積V1520は小さくなる。この消音器1520では、空洞1522内に挿入されている内挿材1523を体積のより大きなものや小さなものに置き換えることにより、体積V1520を調整することができる。この体積V1520の調整により、消音器1520内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0054】
図26に示すように、第20の変形例である共鳴器型消音器1620は、管路4内と連通するネック1621を持った壺状をなしている。消音器1620では、ネック1621にネック径調整部材1622が挿入される。このネック径調整部材1622は、ネック1621の内周径とほぼ同じ外周径を持った円柱状をなしている。ネック径調整部材1622における一端面の中心と他端面の中心との間には、孔1623が穿設されている。この消音器1620では、ネック1621に挿入されているネック径調整部材1622を孔1623の直径がより大きいものや小さいものに置き換えることにより、ヘルムホルツ共鳴周波数を決定づけるパラメータの1つである開口端補正値を変化させることができる。よって、ネック1621に挿入されているネック径調整部材1622を孔1623の直径がより大きいものや小さいものに置き換えることにより、消音器1620内において音響エネルギーが減衰する周波数成分を周波数fの低周波側または高周波側に変化させることができる。
【0055】
(3)上記実施形態において、空気ポンプ84内のモータの回転数を検出する検出手段と、共鳴器型消音器10,20,30の共鳴周波数を決定づけるパラメータとなる寸法を検出手段が検知した回転数に応じて変化させる制御手段とを設けてもよい。また、空気ポンプ84から発生する騒音を収音する収音手段と、共鳴器型消音器10,20,30の共鳴周波数を決定づけるパラメータとなる寸法を収音手段が検知した回転数に応じて変化させる制御手段とを設けてもよい。
【0056】
(4)上記実施形態では、管路4は断面積が一定で一直線状をなしていた。しかし、管路4において開口2から孔42の間は任意の断面積であってもよいし、任意に屈曲していてもよい。また、管路4における開口2から孔42の間は任意に枝分かれしていてもよい。つまり、開口2から孔42の間は自由に設計できる。また、管路4における孔43から開口3の間は、静音化の対象となる音波の波長λと管路4の断面積dとに依存して決まる影響が軽微なものである場合は、管路4を屈曲させて全体のコンパクト化を図ってもよい。より具体的には、図27に示すように、管路4内における屈曲方向を向いた面310の近傍を通る音波の行路とその反対側の面311の近傍を通る音波の行路の行路差が音波の波長λよりも十分に小さい場合には、当該管路4を屈曲させることよる影響は無視できるほど小さい。よって、この場合、管路4を屈曲させてもよい。
【0057】
(5)上記実施形態において、図28に示す静音化装置1Aのように、管路4に当該管路4の管路長を調整する一又は複数の管路長調整手段95(例えば、蛇腹、シリンダー、ゴム、ネジ込み、継手など:図28の例では管路長調整手段95の個数は3つ)を設けてもよい。この静音化装置10Aによると、管路4における共鳴器型消音器10,20,及び30の位置と管路4内の定在波の音圧が最も高くなる位置が一致するように開口3と共鳴器型消音器10,20,及び30との距離を調整し、消音効果をより高めることができる(第1の効果)。
【0058】
また、この静音化装置10Aによると、当該静音化装置10Aにおける騒音源90に塞がれた開口2からその反対側の開口3に至る全区間の透過損失×(−1)で見積もった伝達関数のピークの周波数と騒音源90から発生する線スペクトルの周波数とが一致した場合にはその周波数と共鳴器型消音器10,20,30の共鳴周波数を一致させたとしても充分な消音効果が得られない、という問題を改善することができる(第2の効果)。
【0059】
以下、この第2の効果について、詳細に説明する。静音化装置1は、管路4に膨張型消音器40と3つの共鳴器型消音器10,20,及び30を設けたものであるから、消音化装置1における騒音源90に塞がれた開口2からその反対側の開口3に至る全区間の透過損失×(−1)で見積もった伝達関数R10は、管路4に共鳴器型消音器10のみを設けたものの透過損失×(−1)で見積もった伝達関数R11と、管路4に共鳴器型消音器20のみを設けたものの透過損失×(−1)で見積もった伝達関数R12と、管路4に共鳴器型消音器30のみを設けたものの透過損失×(−1)で見積もった伝達関数R13と、管路4に膨張側消音器40のみを設けたものの透過損失×(−1)で見積もった伝達関数R14の影響を含むものと考えることができる。図29(A)に示すように、伝達関数R11は、各消音器10の寸法に依存する周波数f11に急峻なディップを持ったものとなる(R12,R13は同等であるので以後説明を省く)。一方、伝達関数R14は、ピークを複数持ったものとなる(図36(B)参照)。そして、前述した通り、伝達関数R14に現れるピークの周波数は、膨張側消音器40の膨張部内の空洞の断面積や膨張部の両端に繋がる各管路4の形状(管路4の断面積、管路4の屈曲の有無、管路4の枝分かれの有無、継手などの介在の有無など)や長さなどの様々な条件に依存するため、騒音源90に接続して実際に利用してみるまで伝達関数R14のどの周波数(f14)にピークが発生するかは予測が困難である。このため、図29(B)に示すように、騒音源90から発生した騒音における周波数fpと伝達関数R14の周波数f14が一致することにより充分消音できなくなる場合がある。
【0060】
騒音における周波数fpの成分を減衰させるためには、消音器10の周波数f11を周波数fp(=f14)に合わせる必要がある。消音器10の距離Lを調整して周波数f11を周波数fp(=f14)に合わせる操作を行ったとすると、図30(A)に示すように、伝達関数R11と伝達関数R14を各々有する共鳴器を含めた系における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数RXの振幅特性は、周波数fp(=f11=f14)にディップを有し、周波数fp(=f11=f14)の高域側近傍及び低域側近傍に2つのピークP及びPを有するものとなる。このため、騒音における周波数fpとその前後のピークP及びPの内側の狭い帯域の成分は減衰させることができるものの、ピークP及びP付近の成分はあまり減衰させることができずに残ってしまう(図30(B)参照)。
【0061】
これに対し、静音化装置10Aでは、管路長調整手段95による管路長自体の調整を通じて、伝達関数R14におけるピークの周波数f14を低域側または高域側にずらすことができる。静音化装置10Aにおいて、伝達関数R11の周波数f11を周波数fpに合わせ、伝達関数R14のピークの周波数f14を周波数fpの低域側または高域側(図31(A)の例では高域側)にずらす操作を行ったとすると、図31(A)に示すように、伝達関数R11と伝達関数R14を各々有する共鳴器を含めた系における透過損失×(−1)で見積もった伝達関数RXの振幅特性では、周波数fpの高域側近傍及び低域側近傍に現れるピークP及びPが低減される。このため、周波数fpと周波数f11及びf14が一致している場合に比べると、周波数fpの高域側の減衰量が幾分劣るものの、周波数fpとその高域側及び低域側の全体としての減衰量は大きくなる(図31(B)参照)。上述したように、空気ポンプ84たる騒音源90が発生する騒音は多数の線スペクトルを有しており、静音化装置1における伝達関数R14の周波数f14がそれらの線スペクトルのいずれとも重ならないように管路4を設計するのは極めて困難である。本実施形態によると、設計上の困難性を回避しつつ、大きな静音効果を得ることができる。
【0062】
(6)上記実施形態において、消音器40内に多孔質素材等を充填することにより、消音器40を騒音源90への粉塵等の進入やセルスタックへの化学物質の進入を防ぐ役割を果たすケミカルフィルタと兼用する構成にしてもよい。この構成によると、騒音源90への粉塵等の流入を防ぎつつ静音効果をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…静音化装置、2,3…開口、4…管路、10,20,30…共鳴器型消音器、11,12,21…円筒部、22,31…ネック、23…壺状部、24,34,41…空洞、32…シリンダ部、33…ピストン部、40…膨張型共鳴器、42,43…孔、90…騒音源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口を有し、これらの各開口のうち第1の開口が騒音源に連結される管路と、
前記管路における第2の開口から第1の開口の側に離れた位置に設けられた共鳴器型消音器であって、当該共鳴器型消音器の共鳴周波数を変化させる手段を有する共鳴器型消音器と、
前記管路における前記第1の開口と前記共鳴器型消音器の間に設けられた膨張型消音器と、
を具備することを特徴とする空気導入管の静音化装置。
【請求項2】
前記共鳴器型消音器が、前記騒音源から発生される音波の基本周波数で音速を除算した波長の1/4の長さだけ前記第2の開口から前記第1の開口の側に離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の静音化装置。
【請求項3】
前記管路における少なくとも前記第1の開口と前記膨張型消音器の間の区間の断面積が均一であることを特徴とする請求項1または2に記載の静音化装置。
【請求項4】
前記管路の管路長を調整する管路長調整手段を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の請求項に記載の静音化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2012−128230(P2012−128230A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280219(P2010−280219)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】