説明

空気浄化装置

【課題】装置規模を大型化せずに、大量の空気の処理が容易に行え、大気中の窒素酸化物
(NOx)等の有害ガスの高い除去効率が達成できる空気浄化装置の提供。
【解決手段】筒状体の中心軸線上に筒状体と同心状に励起発光管を設置し、有害ガス及び
粒子を含む汚染空気を筒状体の一方の端面側の入口から他方の端面側の出口へ通気する構
造の拡散スクラバ法による空気浄化装置とする。汚染空気を通気する間隙となり、通気流
路有効長を有するスリット形成用のプレートが励起発光管の外周面と筒状体の内周面との
間の空間に筒状体の中心軸から半径方向に放射状に配置され、該プレートの表面に光触媒
層が形成され、該光触媒層に拡散係数の相違により粒子と分離された有害ガスを拡散させ
るとともに、スリットの励起発光管側の端部の隙間及び/又は筒状体側の端部の隙間から
励起光を光触媒層に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置、特に、空調装置の空気流路又は排気ガス処理装置のガス流路
に付設して用いるのに適した環境空気中の有害ガスを低出力の送風手段により高速で連続
的に分解除去できる空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境空気の汚染への社会的関心の高まりから、空気浄化技術の研究が精力的に行われて
きている。最近では、酸化チタンなどの光触媒を利用した空気浄化技術が盛んに開発され
ている。その多くは、酸化チタン光触媒、又は酸化チタン光触媒と吸着剤を通気性のある
基体に塗布してエアフィルターとして用いて、粉塵をろ過し、かつ空気中の窒素酸化物(
NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、エチレン等の
有害ガスや悪臭成分を光触媒によって分解しようとするものである。
【0003】
これらのフィルタ方式で基板をプリーツ状やコルゲート状としたものも用いられている
が、いずれも、空気を不織布等の通気性基体の中を強制的に通過させる必要があり、また
、微細な粉塵の捕捉効率をあげるには、フィルタの目を細かくする必要があるので通気抵
抗が大きくなり、多量の空気処理が困難である。
【0004】
これに対して、光触媒層を形成した平面を積層平板にしたり、スリット状にしたりして
光触媒層の面に平行に汚染された空気を流して空気流の圧力損失を少なくする方法も考え
られているが、当然ながら素通りする被処理空気量が多くなり、接触面積を高めるために
プリーツ状やコルゲート状としても有害ガスの除去効率が悪くなる。
【0005】
また、筒状体の中心部に励起発光管を設ける方式として、筒状体の内周面に光触媒層を
設けたもの(例えば、特許文献1,2,3)、励起発光管と管体の内面との間隔を2〜9
mmとした管体を複数本並列に配置したもの(例えば、特許文献4)、表面に光触媒層を
設けたらせん状の空気流路を筒状体内に設けたもの(例えば、特許文献5)、表面に光触
媒層を設けた基体を所要の角度で傾けて配置したもの(例えば、特許文献6)、表面に光
触媒層を設けた放射状かつらせん状の空気透過流路を筒状体内に設けたもの(例えば、特
許文献7,8)、電気集塵用の正極板、負極板に光触媒層を放射状に配置した集塵ユニッ
ト(例えば、特許文献9)なども考えられている。
【0006】
本発明者らは、従来のフィルタ式や単なる平行板式の空気浄化技術の延長ではなく、環
境空気中に含まれている大気汚染物質であるNOxやSOxなどの有害ガスを効率良く完
全に空気中から除去し、しかも、大量の空気処理を行える革新的な空気浄化技術として、
酸化チタン(TiO2)光触媒と拡散スクラバの原理とを組み合わせた有害ガスの除去処
理技術について開発し、特許出願した(特許文献10、11)。
【0007】
前記の空気浄化装置は、拡散スクラバの原理を応用した小型平行板型装置であり、特に
、大気中のNOxの除去処理装置として高い除去効率を有する。この装置の構造は、図1
4に示すように、TiO2光触媒を塗布した基板、好ましくはステンレス鋼板を5mm程
度の狭い間隔で向き合わせて平行に並べて、保持部材8、固定部材9によって保持して平
行板2とし、その平行板2の隙間に極細(外径、4mmφ)のUVランプ5を設置したユ
ニットで構成される単純な構造であるが、その隙間の間隔や平行板の大きさが拡散スクラ
バの原理に関するGormleyの理論式(P.G.Gormley,Proceedings of the Royal Irish Acad
emy,Vol.45,59-63,(1938))に基づく除去効率に基づいて、有害ガスの大きな除去効率が
得られるように設計されることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明者は、装置規模を大型化せずに、大量の空気の処理が容易に行え、大気
中のNOx等の有害ガスの高い除去効率が達成できるとともに、光触媒を塗布した基板の
洗浄、再使用が容易な装置及びシステムの提供を目的として、平行板として不織布、紙、
プラスチックフィルム等の軽量な素材を用い、その形状を工夫することによって、大量の
空気を小型、軽量の装置で処理でき、大気中のNOx等の有害ガスの高い除去効率が達成
できる空気浄化装置を開発し、特許出願した(特願2003−371057)。
【0009】
【特許文献1】特開平10−281488号公報
【特許文献2】特開平11−114048号公報
【特許文献3】特開2003−310724号公報
【特許文献4】特開2000−262606号公報
【特許文献5】特開2002−346318号公報
【特許文献6】特開2001−212215号公報
【特許文献7】特開2000−300998号公報
【特許文献8】特開2001−121002号公報
【特許文献9】特開2001−145692号公報
【特許文献10】特開2002−126451号公報
【特許文献11】特開2003−251147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光触媒を利用した空気浄化装置では、浄化効率を高めるためには、空気中の有害ガス成
分と光触媒との接触面積を大きくさせること(接触効率)と、光触媒層の全面に励起光を
一定値以上の照射強度でムラなく照射させること(励起光照射効率)と、を両立させる必
要がある。しかし、これまでの先行技術によるフィルタ式のものや本発明者らが開発した
平行板及びプリーツ型積層拡散スクラバは、光源のブラックライトなどの励起発光管を装
置の側面に配置するため、励起発光管を多数必要としたり、励起発光管の径を小さくした
りして隙間の奥まで照射されるようにする必要があり光照射効率が悪かった。
【0011】
管状体の中心軸上に励起発光管を配置し、管内面に光触媒層を設けたものでは光触媒層
の受光効率を高めることはできるものの光触媒と接触せずに流出してしまう空気の量が多
くなり、そのために、光触媒層をフィルタ式にしたり、空気通過間隙を狭くしたり、複数
本の管を束ねたりすることによって有害ガスと光触媒層との接触面積を多くするなどの複
雑な構造が必要であった。例えば、前記特許文献7及び特許文献8には、表面に光触媒層
を設けた放射状、かつ、らせん状の空気流路を筒状体内に設けたものが開示されており、
励起光照射効率は高いものの、空気の透過接触性を有する多孔性の帯状光触媒フィルタを
用いて微細な異物粒子などの透過を阻止するものであり、従来のフィルタ方式の空気浄化
装置と同様に、通気抵抗が大きくなり、多量の空気処理には不向きであり、また、空気中
に含まれる異物粒子が付着されて光触媒層の機能低下が早まることになる。
【0012】
前記特許文献9に示される集塵ユニットは、紫外線照射効率は高いものの、負極板に捕
集した塵等の成分を光触媒の酸化作用により分解するものであり、有害ガスを分解するも
のではなく、また、光触媒層に塵等の微細な固形物が付着して分解するので光触媒層の機
能低下も早い。
【0013】
したがって、本発明は、小型の装置であっても、空気中の有害ガスを低出力の送風手段
により高速で連続的に高効率で光触媒を用いて分解除去でき、しかも、空気中に含まれる
粒子の付着による光触媒の機能の低下が少ない空気浄化装置を提供することを課題とする

【課題を解決するための手段】
【0014】
空気浄化装置により有害ガス等を光触媒の酸化作用により分解して空気浄化する場合、
分解除去効率を高めるには、光触媒層の全面にムラなく一定強度以上の励起光を照射する
とともに、空気中の有害ガスが光触媒層へ効率よく拡散して集まるようにする必要がある

【0015】
本発明者は、励起光及び/又は太陽光を有効利用できる管状構造体と、単位時間当たり
の汚染空気処理量の大きな積層平行板型の構造を併せ持つ新しい拡散スクラバ方式を利用
することによって、大量の空気を小型、軽量の装置で連続的に処理でき、大気中のNOx
等の有害ガスの高い除去効率を達成できる空気浄化装置を開発した。また、この装置は、
拡散スクラバ方式なので、拡散係数の相違により粒子と有害ガスを分離し有害ガスのみを
除去処理することができるので、空気中に含まれる粒子の付着による光触媒の機能の低下
も少ない。
【0016】
本発明は、(1)筒状体の中心軸線上に筒状体と同心状に励起発光管を設置し、有害ガ
ス及び粒子を含む汚染空気を筒状体の一方の端面側の入口から他方の端面側の出口へ通気
する構造の空気浄化装置において、下記のGormley及びKennedyの拡散スクラバの原理を表
す理論式(1)(1949年)において、1パスで50%以上の有害ガス除去効率を得る様に、
M. Possanziniらが導き出した相当直径δの概念を用いる(式2)及び(3)(1983
年)で求められる気流中のガス成分の除去パラメータ(μ)を、0.035以上とし、か
つ、筒状体は太陽光透過素材から形成され、汚染空気を通気する間隙となり、通気流路有
効長を有するスリット形成用のプレートが励起発光管の外周面と筒状体の内周面との間の
空間に筒状体の中心軸から半径方向に放射状に配置され、該プレートの表面に光触媒層が
形成され、該光触媒層に拡散係数の相違により粒子と分離された有害ガスを拡散させると
ともに、スリットの励起発光管側の端部の隙間及び/又は筒状体側の端部の隙間から励起
光を光触媒層に照射するようにしたことを特徴とする空気浄化装置、である。
【数1】

【0017】
また、本発明は、(2)筒状体の中心軸線上に筒状体と同心状に励起発光管を設置し、
有害ガス及び粒子を含む汚染空気を筒状体の一方の端面側の入口から他方の端面側の出口
へ通気する構造の空気浄化装置において、汚染空気を通気する間隙となるスリット形成用
のプレートが励起発光管の外周面と筒状体の内周面との間の空間に筒状体の中心軸から半
径方向に放射状に配置され、該スリット内に、筒状体の内周面から中心軸方向に1枚又は
2枚以上の補助プレートが配置され、かつ、該スリット形成用のプレート及び補助プレー
トの表面に光触媒層が形成され、該光触媒層に拡散係数の相違により粒子と分離された有
害ガスを拡散させるとともに、スリットの励起発光管側端の端部の隙間及び/又は筒状体
側の端部の隙間から励起光を光触媒層に照射するようにしたことを特徴とする空気浄化装
置、である。
【0018】
また、本発明は、(3)補助プレートの幅はスリット形成用のプレートの幅の0.8〜
0.3倍であることを特徴とする上記(2)の空気浄化装置、である。
【0019】
また、本発明は、(4)該スリットは励起発光管側の端部の隙間が1〜10mmである
ことを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかの空気浄化装置、である。
【0020】
また、本発明は、(5)筒状体は、内管と外管とからなる2重管とし、内管を励起光透
過素材から形成し、内管の内側に励起発光管を設けたことを特徴とする上記(1)ないし
(4)のいずれかの空気浄化装置、である。
【0021】
また、本発明は、(6)前記筒状体は、多段に直列に配置された複数個の筒状体からな
ることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかの空気浄化装置、である。
【0022】
また、本発明は、(7)励起発光管により励起光を照射するとともに外管の外側から太
陽光を照射させることを特徴とする、上記(1)ないし(6)のいずれかの空気浄化装置
の使用方法、である。
【0023】
本発明の空気浄化装置は、筒状体の中心軸に励起発光管を配置した筒状構造体を汚染空
気中の有害ガス成分の分解除去ゾーンとして用いる。そして、該発光管の外面と筒状体の
内面との空間に筒状体の中心軸からみて半径方向にスリット形成用プレートを放射状に並
べて多数のスリットを形成する。プレートの表面には光触媒層を設けている。プレートの
長さは筒状体と実質的に同じ長さとする。この長さが通気流路有効長(L)に相当する。
そして、筒状体の一方の端面側を汚染空気の入口として、このスリットに汚染空気を流し
、光触媒層に拡散した有害ガスを光触媒層で分解することによって浄化された空気を他方
の端面側の出口から排出させるようにする。本発明の装置は従来のフィルタ方式のような
大きな圧力損失がないので、汚染空気は、ファンなどの低出力の送風手段で通気させるこ
とができる。
【0024】
また、本発明の空気浄化装置の筒状構造体内で拡散係数の差により有害ガスと分離され
た粒子はそのまま、出口から排出されるので、後段でこれらの粒子をフィルタや集塵機な
どにより除去できるが、筒状構造体の前段に汚染空気中の微粒子を除去するフィルタを設
けて、微粒子を除去した後の汚染空気を通気するようにしてもよい。さらに、本発明の空
気浄化装置は、筒状構造体の前段にVOC(ベンゼン、トルエン等)除去装置を組み合わ
せたシステムとすることによってより効率的にNOxやSOxなどの有害ガスを分解除去
できる。
【0025】
本発明の装置においては、拡散スクラバの原理によって汚染空気中の有害ガスはスリッ
ト中を素通りすることなくプレート表面の光触媒層に拡散するので、空気中の有害ガスを
光触媒によって高効率で分解できる。本発明の装置においては、スリットの励起発光管側
の端部の隙間及び/又は筒状体側の端部の隙間から励起光を光触媒層に照射するようにし
ているので、建物の壁、屋根、屋外に設置する場合は、筒状体(2重管の場合は外管)に
励起光透過素材を用いることで360度方向から太陽光を取り入れることが可能であり、
昼間が晴天や薄曇りの場合には、太陽光のみを使用して、装置を稼動させることができ、
明け方、夕方、雨天や曇天の場合には、太陽光を内側に配置した励起発光管と併用して昼
間の電気代を節約することができ、夜間の場合は内側に配置した励起発光管のみを使用す
るようにすることができる。また、小型の装置として自動車搭載用としても利用できる。
【0026】
本発明の空気浄化装置によれば、有害ガスを含有する汚染空気をスリットに流しながら
連続的に有害ガスの除去処理が行えるので、通気抵抗が少なく、小型の装置で時間当たり
の空気の処理を大幅に増加させることができる。なお、空気中の有害ガスであるNOx等
は光触媒により分解されて硝酸等となりプレートの表面の光触媒層に捕捉されるが、プレ
ートを水等により洗浄することによって簡単に回収でき、プレートを乾燥すれば再び空気
中の有害ガスを繰り返し連続して除去処理することができる。
【0027】
本発明の空気浄化装置において利用する拡散スクラバの原理とは、管内をガスと粒子を
含む気流が層流で流れる場合に、ガスと粒子の拡散係数の大きな違いによって、ガスが粒
子と分離されて管壁面に捕集されるという乾式のガスの捕集・除去法の原理である。狭い
流路を有する2枚の平行板は管の直径を無限大とした場合に相当し、平行板の内壁面へガ
スが拡散し、内壁面へ到達したガスが内壁表面で吸着除去される。したがって、本明細書
で言う拡散スクラバの原理は、水などの溶液にガスを拡散させるいわゆる湿式拡散スクラ
バ法とは異なる。
【0028】
図12に、Gormley及びKennedy理論式(1938年)に基づく大気中のガス成分の除去効率の
算出式のための平行板による拡散スクラバの寸法の取り方を示す。図12において、a:
平行板の間隔(cm)、b:平行板の幅(cm)、L:平行板の長さ(cm)、D:対象
とするガスの拡散係数(cm2/秒)、Q:通気流量(cm3/秒)である。拡散スクラバ
法において、平行板による大気中のガス成分の除去パラメータ(μ)及び除去効率(f)
は、下記のGormley−Kennedy理論式(1938年)に基づいて算出できる。
f=1−[0.910exp(−3.77μ)+0.0531exp(−42.8μ)]
、μ=bDL/aQ
【0029】
本発明の空気浄化装置においては、円筒状体内の個々のスリットを空気が層流で流れる
1個の管とみなすことができる。よって、この拡散スクラバの原理に基づいて、空気中の
有害ガスと粒子は分離され、光触媒層に拡散した有害ガスのみを選択的に光触媒によって
分解させることにより空気中から除去することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の空気浄化装置は、
(1)通気抵抗が少なく、また光触媒層へ有害ガスが拡散するので小型の装置で数ppm
のNOx等の有害ガスを含む汚染空気を毎秒数十cmから数mの早い速度で流しても高効
率で分解除去できること、
(2)実用的に適切な長さ、例えば、50cm程度の長さの筒状体とする場合に、管状構
造体を1段とせずに、長さの短い筒状体を直列につないで多段に配置することによって除
去効率を高めることができること、
(3)拡散スクラバの隙間を形成する平面状のプレート両面の全面に光触媒層を設けるこ
とができ、かつプレート両面の全面における励起光の照射効率が高いこと、
(4)光触媒層に粒子が捕捉されることがなく、励起光の照射効率の低下が少なく、また
光触媒層の機能が長時間続くこと、
(5)光触媒層の形成に特別な工夫をせずに、一般的な酸化チタンなどの光触媒を塗布し
ただけの平面状のプレートを用いた単純な筒状体構造であり、製作コストが小さいこと、
(6)太陽の自然光のみでも有害ガスを分解除去できること、
などの特長を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明の空気浄化装置の管状構造体の一実施形態を示す模式図であり、図2は
、図1に示す管状構造体の中心軸方向と直角方向の断面図である。この実施形態では、管
状構造体は外管1と内管2との2重管となっており、内管2内にブラックライトや蛍光管
などの励起発光管3を設ける。光触媒は可視光反応型のものも開発されており、励起光と
して可視光を用いてもよい。内管2を設けない場合は、空気は励起発光管3と接触して流
れることになる。管の材料としては、内管は励起発光管3からの励起光の透過性が良好な
ものであればよく、外管は太陽光の透過性が良好なものであればよく、好ましくは、パイ
レックス(登録商標)ガラスやアクリル透明樹脂が用いられる。
【0032】
汚染空気を通気する間隙となる多数のスリット形成用のプレートを励起発光管の外面と
筒状体の内面との間の空間に筒状体の中心軸から半径方向に放射状に配置する。内管を用
いる場合は、外管1と内管2との空間にスリット形成用プレート4を半径方向に配置する
。外管1と内管2との空間には外管1と内管2の共通の中心軸から放射状に多数のスリッ
ト形成用プレート4を半径方向に配置して通気流路有効長(L)を有する汚染空気通過部
分となる多数のスリットSを形成する。スリットS内には励起発光管3からの励起光が外
管1方向へ照射される。
【0033】
プレート4の両面には酸化チタン等の光触媒層5が形成されている。プレート4の素材
は、特に限定されず、金属板、プラスチック板、ガラス板、不織布などが使用できるが、
耐久性、耐食性の点からはステンレス鋼板が好ましい。光触媒層5の形成方法は種々の方
法が公知であり、通常は光触媒粒子をプレートの表面に塗布したものや練り込んだものに
よって形成されている。
【0034】
光触媒物質は特に限定されないが、光触媒として代表的な酸化チタンが望ましい。酸化
チタン粒子をプレートの表面に塗布する場合は、バインダーとしては、二酸化ケイ素又は
過酸化ケイ素等のケイ素化合物を主成分とするもの、シリコーン樹脂、弗素樹脂等が挙げ
られるが、特に、耐酸化性に優れ、かつ透光性を有するポリテトラフルオロエチレンが好
ましい。TiO2光触媒の量に対するバインダーの割合が多くなるとNOx等の有害ガス
の除去効率は低下するのでバインダーの量は、TiO2光触媒の量に対して1:1より少
ないことが望ましい。少なすぎると十分な接着力が得られないので、1:0.1程度以上
が好ましい。
【0035】
プレートの表面に光触媒層を塗布するには、光触媒微粒子とバインダーの水分散体から
なる塗布液を浸漬法又はロールコーターやスプレー法等の塗布法で塗布し、乾燥するか、
又はポリテトラフルオロエチレンの融点の220℃より低い温度で1〜10分間加熱する
。ただし、粗な塗布層を形成できるスプレー法が好ましい。
【0036】
図3に、隣接する2枚のスリット形成用プレート4,4で形成されるスリットSの部分
の拡大図を示す。内管2の外周面から外管1の内周面までのプレート4の幅は、外管1
の内径dの半分(d/2)から内管の外径dの半分(d/2)を差し引いた長さ
である。内管の内径は、励起発光管を収容できる最小限の大きさであればよい。筒状体の
中心軸方向と直角方向のスリット部の断面積(S:通気流路断面積)は、隣接する1対の
プレート4,4の平面を内管2と外管1の共通の中心軸まで延長した場合に交差する角度
θに依存する。また、角度θにより360度を分割した数により筒状体1個当りのスリッ
トの総数が決まる。図4(A)に、角度θとスリット数の関係についての具体例を示す。
例えば、角度θを10度とすればスリットの数は36となる。このような構造において、
該スリットの励起発光管側の端部の隙間を1〜10mm程度とすることが装置の規模や効
率等から実用上は好ましい。筒状体側の端部の隙間はこの値に応じて、プレートの幅と3
60度の分割数により定まるが、その10倍程度、すなわち、10〜100mm程度とす
ることが好ましい。
【0037】
2枚のスリット形成用プレートで構成されるスリット内に、図4(B)に示すように、
外管1の内周面側から内管2の外周面側方向に、スリットを等間隔で2分割するように、
補助プレート4Aを設けることにより光触媒層の面積を増やすことができる。この場合、
補助プレート4Aの内管側端部が内管2の外周面に近づきすぎると励起発光管3からの照
射光が遮られるようになるので、補助プレート4Aの幅はスリット形成用プレート4の幅
の0.8〜0.3倍程度、より好ましくは0.4〜0.6倍程度がよい。また、一つのス
リット内の補助プレート4Aは1枚に限らず、プレート4と補助プレート4Aとの間に補
助プレートをさらに設けてもよい。補助プレートの幅を大きくしたり、数を増加させたり
することにより光触媒層の面積は増加するが、照射される励起光が遮られることによる照
射強度分布パターンが悪くなるので、両者のバランスを考慮する必要がある。
【0038】
上記の筒状体の構造において、Gormley-Kennedy理論式による理論除去効率(f)が、
空気浄化装置を構成する筒状体を通過する汚染空気の1パス当りで50%以上となるよう
に、除去パラメータ(μ)を構成するスリットの総数(360度の分割数;n)、スリッ
ト形成用プレートの幅及び補助プレートの幅の合計(通気流路断面での吸着面の周囲長;
l)、スリット形成用プレートの長さ(通気流路有効長;L)、通気流量(Q)を設定す
る。
【0039】
図13に、本発明者らが先に開発した平行板型拡散スクラバを用いた空気浄化装置の原
理を示す。光触媒層としてTiO2 /HAP(1)を表面に塗布した平行板(2)を2枚
向き合わせ、2枚の平行板(2)の隙間にはUVランプ(5)等により励起光を照射して
光触媒を活性化させる。一端側を汚染空気の入り口として、2枚の平行板(2)の隙間に
汚染空気(3)を通気すると、拡散係数の大きいNOx ガス(4)は、TiO2 /HA
P(1)が塗布された平行板(2)の内壁面へ拡散する。内壁表面へ到達したNOx ガ
ス(4)は、TiO2により生じたHO2、OHラジカルによりNO2、HNO3に酸化され
、TiO2/HAP(1)の表面に吸着され、汚染空気中から除去され、清浄空気(7)
が出口側から排出される。TiO2は、吸着したNO、NO2を保持する能力が低いために
、NO2がHNO3になる前に脱着してしまう可能性が高い。この脱着したNO2を確実に
除去するために、NO2の吸着剤としてHAPをTiO2に混合して使用することが好まし
い。
【0040】
一方、汚染空気が流れる層流条件下では拡散係数の小さい粒子(6)は壁面へ拡散しな
い内に一対の平行板(2)の隙間をそのまま通過してしまう。そして、一対の平行板(2
)の出口側から排出される。したがって、原理的に空気中の粒子は平行板表面に付着しな
いので、空気を処理する際の粒子による除去装置への汚れの影響は極めて少ない。本件発
明の筒状構造体を用いる空気浄化装置においてもNOX ガスの除去のメカニズムはこれと
同じである。
【0041】
図14は、平行板2、2を向かい合わせて用いた実施形態を示すものであり、平行板の
内壁表面に光触媒層が塗布されている。平行板2の場合は、正面から見て平行板2の長方
形の上辺、下辺が有害ガス吸着面である。
【0042】
平行板の間隔は、平行板の内壁表面が有害ガスに対して理想的な完全吸着面であると仮
定すると、平行板による拡散スクラバ法におけるGormley-Kennedy理論式(1938年)により
設定することができる。この小型平行板型装置の大きさは、本体が440×150×38
mmとし、TiO2光触媒層を塗布した通気流路面が350×100mm(面積、350
cm2)の2面とした基本ユニットの場合、通気流量10リットル/分(風速0.33m
/秒)の条件で、0.5cm程度の平行板の間隔にすれば、ほぼ100%近く有害ガス成
分を除去できる。
【0043】
本発明の空気浄化装置において、管状構造体のスリットを空気流路として使用した場合
、M.Possanziniらが導き出した( 出典;M.Possanzini et al. , Atmospheric Environme
nt,17(2),2605-2610(1983))様に、円管を対象としたGormley及びKennedyの下記式(1)
で示される理論除去式(Gormley P., Kennedy M.:Proc. R. Ir. Acad., 52A, 163-169 (
1949))に、下記式(3)で示される相当直径δの概念を用いて求めた下記式(2)の除
去パラメータ(μ)を代入して算出される。
【0044】
【数2】

【0045】
したがって、図3に示す1スリットの相当直径δは、下記式(4)、(5)から式(6
)で示される。
【0046】
【数3】

【0047】
よって、除去パラメータ(μ)は、下記式(7)で示される。
【数4】

【0048】
この式(7)で示される除去パラメータ(μ)を式(1)に代入することで理論除去効
率を算出することができる。図5に、除去パラメータ(μ)と理論除去効率との関係を図
示する。
【0049】
上記各式は、本発明の空気浄化装置の筒状構造体に適用した場合、図3及び図4に示さ
れるように、L:通気流路有効長(cm)は、スリット形成用プレートの長さ、S:通気
流路の断面積(cm)は、スリットの断面積、l:通気流路断面での吸着面の周囲長(
cm)は、(スリット形成用プレートの幅+補助プレートの幅)×2に相当し、n:分割
数は、360度をθで除した数である。D:拡散係数(cm/s)は、各ガス成分によ
って固有な数値となるが、NOの場合0.1988cm/sである。
【0050】
本発明の空気浄化装置を使用する際には、管状構造体に空気を1回(1パス)だけ、又
は繰り返し数回循環させて流して処理する方法を採用することができるので、上記の理論
式において求められる除去効率は空気を1回(ワンパス)流して50%程度以上でよい。
本装置を用いて1回で有害ガスを50%以上除去するには、図5から明らかのように式(
7)で表せる除去パラメーター(μ)を0.035以上に設定すればよいことになる。外
管の内径(do)、内管の外径(di)、通気流路有効長(L)、通気流量(Q)、360度の分割
数(n)はそれに合わせて設定できる。
【0051】
なお、筒状体に汚染空気を1回流して50%の除去効率でも3回通過させれば約90%
の有害ガスを除去できる。よって、この式に基づいて理論除去効率がワンパスで50%以
上、望ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上となるように装置を設計するこ
とにより、汚染空気中から有害ガス成分を高効率で除去できる。
【0052】
また、同じ通気流路有効長(L)であれば、筒状体を短く分割し、多段に直列に複数個
を接続して使用する方が除去効率は高くなる。図5から明らかなように、除去パラメータ
ー(μ)が0.1の場合、理論除去効率は81.03%となる。式(7)で、他のパラメ
ータを一切変えずに、通気流路有効長(L)のみを1/4に短くすると、除去パラメーター
(μ)は、単純に1/4の0.025となるが、理論除去効率は42.13%と小さくな
るものの、単純には1/4にはならない。通気流路有効長(L)を1/4に短くしたものを
4個直列につなぎ、同じ通気流路有効長(L)にすると、下記の(8)式で表される複数
直列に使用した場合の除去効率の算出式から、除去効率(f)は88.62%となり、分
割しない場合(81.03%)より除去効率は高くなる。
f(%)={1−(1−α/100)4 }×100 (8)
α(%):短く分割した筒状体1個における除去効率
【0053】
上記の除去効率の観点から、筒状体は、複数個多段に直列に配置された筒状体からなる
ようにしてもよい。1個の筒状体の除去効率が50%の場合では、除去パラメータ(μ)
は0.035であるが、これを4個に短く分割した筒状体1個を使用する場合の除去パラメ
ーター(μ)は0.00875となり、そのときの除去効率は23.47%となり、(8
)式より短く分割した筒状体を4個直列に接続した場合の除去効率は65.70%となる
。したがって、短く分割しないで使用する場合に比べて15.7%も除去効率が高くなる
。短く分割して、4個直列に接続した場合には、ワンパスで50%以上の除去効率を得る
には、(8)式より、短く分割した筒状体1個の除去効率(α)を15.91%以上とし
、除去パラメータ(μ)を0.004に設定すればよい。したがって、実用的には直列に
接続して2〜6段程度の多段構造とすることが好ましい。
【0054】
<NOの理論除去効率の比較>
以下に具体的な除去効率の算出例を示す。全通気量は、10m/h〜300m/h
(線速度5.90cm/s〜176.9cm/s)とした。表1に示す1スリットの寸法
におけるNOの理論除去効率を図4に示す36/72混合スリット型(補助プレート使用
)と36スリット型(補助プレートなし)についてそれぞれ求め、結果を表2に記した。
なお、管状構造体を1段とした場合と4段とした場合の比較も示す。
【0055】
【表1】

【0056】
36/72混合スリット型(補助プレート使用)の場合は、通気流路の断面積(S)、
通気流路断面での吸着面の周囲長(l)、相当直径(δ)は下記の(9)式でそれぞれ示
される。
【0057】
【数5】

【0058】
36スリット型(補助プレートなし)の場合は、通気流路の断面積(S)、通気流路断
面での吸着面の周囲長(l)、相当直径(δ)は下記の(10)式でそれぞれ示される。
【0059】
【数6】

【0060】
式(9)及び式(10)より相当直径δが36/72混合スリット型の場合は、36ス
リット型の場合と比較して2/3小さくなる。したがって、式(2)から除去パラメータ
(μ)は、9/4=2.25倍大きくなる。したがって、同じNO除去効率の場合、空気
処理量は、2.25倍大きくできる。
【0061】
表2から分かるように、毎秒5.9cm(全通気量10m/h)の線速度で通気させ
た場合の理論除去効率は、36/72混合スリット型(1段)で91.5%であり、36
型スリット(1段)で70.2%であり、いずれも高効率でNO除去が可能である。更に
4段にすれば線速度を5〜6倍に高めても同等の除去効率が得られることがわかる。
【0062】
【表2】

【0063】
<紫外線照射強度の分布パターン>
本発明の空気浄化装置において、筒状構造体の仕様を上記のように設定した場合にプレ
ートの光触媒層上の紫外線照射強度の分布が好ましいパターンになることを下記の実験に
より確認した。なお、本発明者らが先に開発した小型平行板片面拡散スクラバ(不織布(
TiO2(ST-01):高疎水性バインダー=3.5:0.5))を用いて導入ガス:1ppmのNOを通
気流量:5L/min,TiOコーティング面積350cmの条件で流したときの紫外
線照射強度とNOxの除去効率の測定結果から、1ppmのNOを80%の除去効率で除
去するには、最低32μW/cm2の紫外線照射強度が必要であることが判明している。
【0064】
実験1
励起光としてブラックライトのみを用いた場合
図4の断面図及び図6の側面模式図に示すように、外管の内径(d)25cm、内管
の外径(d)5cm、通気流路有効長(L)56cm(14cm×4段)、スリット数36、3
6/72混合、72の3種類の同寸大の模型を各1スリットずつ作製し、ブラックライト
(ナショナル製FL20S/BL-B)からのプレート表面の紫外線照射強度の分布パターン(紫外
線波長領域:300〜400nm)を測定した。紫外線照射強度分布パターンの測定には
住田光学ガラス製のUV-200とマキ製作所のSS-01を用いた。測定結果を図7に示す。
【0065】
図7において、横軸は円筒体の内管の外周面(中心軸から2.5cm)から筒状体の内周面
への奥行き(x軸、cm)を示し、縦軸は円筒体の4個の合計高さ(y軸、cm)を示し
、(A)図が、スリット数36の場合、(B)図が補助プレートを用いたスリット数36
/72混合の場合、(C)図がスリット数72の場合をそれぞれ示している。
【0066】
36スリット型については、60〜80μw/cm以上の紫外線が装置全体に届いてい
ることが確認された。一方、紫外線の入る内側の開口幅が半分と狭くなった72スリット
型においては、ブラックライトから離れた装置の外側ではUV強度が弱く、40μw/cm
以下であり、酸化チタン光触媒が必要とするUV強度(32μw/cm2)に充分達していない
ことが確認された。また、36/72混合スリット型は、36スリット型と同じく、60
〜80μw/cm以上の紫外線が装置全体に届いていることが確認された。
【0067】
実験2
励起光として太陽光のみを用いた場合
実験1と同じ模型のスリットを使用し、太陽光からの紫外線によるプレート表面の紫外
線照射強度分布パターンを測定するために、模型を紫外線照射強度が安定している直射日
光が当たらない日陰で実験1と同様の測定手段で測定した。太陽光の紫外線照射強度は7
21μW/cm2であった。測定結果を図8に示す。
【0068】
36スリット型は、36/72混合スリット型と比較して、太陽光の入る外側の開口幅
が2倍と広く、明らかにUV強度は高くなったが、36/72混合スリット型でも、酸化チ
タン光触媒が必要とするUV強度(32μw/cm2)以上の紫外線(80-100μw/cm2)が装置
全体に届いていることが確認された。
【0069】
実験3
励起光としてブラックライトと太陽光を併用した場合
実験1と同じ模型のスリットを使用し、ブラックライトと太陽光からの紫外線によるプ
レート表面の紫外線照射強度分布パターンを測定するために、模型を紫外線照射強度が安
定している直射日光が当たらない日陰でブラックライトを併用しながら実験1と同様の測
定手段で測定した。太陽光からの紫外線照射強度は721μW/cm2であった。測定結果を
図9に示す。
【0070】
36スリット型、36/72混合スリット型ともに、UV強度 100μw/cm2以上の紫外線
が装置全体に届き、両者の差がないことが確認された。
【実施例1】
【0071】
以下に本発明の実施例を示す。
図10に、筒状構造体のプレート支持用フレームの概略斜視図を示す。幅5mm、厚み
2mmの鋼材を用いて、内側リング5Aと外側リング5Bとからなる2重リングを作製し
た。内側リング5Aは幅5mm、厚み2mmの鋼材からなる支持板6で内側リング5Aと
外側リング5Bが同心状になるように固定した。外側リング5B同士をφ3mmの鋼棒か
らなる支柱7を3本用いてネジ止め固定し、筒状構造体の長さを14cmとした。内側リ
ング5Aの外径は50mm、内径は40mmとした。外側リング5Bの外径は236mm
、内径は226mmとした。
【0072】
内側リング5Aの外側及び外側リング5Bの内側には表面に光触媒層を形成したプレー
ト(図示せず)を固定する溝幅0.7mm、深さ1.5mmの溝を36ヶ所、等間隔に形
成した。また、外側リング5Bの内側には、36ヶ所の溝の他に、表面に光触媒層を形成
した補助プレート(図示せず)を固定する溝幅0.7mm、深さ1.5mmの溝を36ヶ
所の溝の中央に等間隔に36ヶ所形成した。2重リングの下方の外側リング5Bの下部に
はプレートが下に抜けないように外側リング部5Bと同寸法で溝を設けていない下リング
8を設けた。
【0073】
図11は、本発明の空気浄化装置の概略側面図である。図11に示すように、上板リン
グ円板9(23×30cmφ)と下板リング円板10(23×30cmφ)とでUV透過ガラスの円筒1
1(24×25cmφ)を挟み、支柱12を4本用いてネジ止め固定した。下板リング円板10を
支持台13に固定し、下板リング円板10の下部に空気流入口14を設け下板リング円板
10と空気流入口14との間には整流板15を設けた。空気流入口14と粒子フィルタを
取り付けた流量調整可能なファン(図示せず)とをエアホース16で接続した。
【0074】
プレートは厚さ0.5mm×幅8.8cm×長さ13.8cm、補助プレートには、厚
さ0.5mm×幅4.4cm×長さ13.8cmのステンレス鋼板をそれぞれ用い、その
表面に下記の方法で光触媒層を形成した。光触媒粒子として、アナターゼ型二酸化チタン
粒子(粒径:7nm、比表面積:約300m2/g)を使用した。
【0075】
この光触媒粉体を、含フッ素共重合体樹脂(フッ素含有量約45重量%)を有機溶剤で希
釈して調製されたフッ素樹脂ワニスに混合し、攪拌し、この光触媒粒子含有含フッ素樹脂
ワニスをステンレス鋼板表面に、二酸化チタン付着量が約120g/cmとなるようス
プレーガンで塗布し、この塗布層を100℃で60分間乾燥させた。
【0076】
UV透過ガラス円筒11の内側に図10に示す構造の表面に光触媒層を形成したプレー
ト(補助プレートも含む)を装着したプレート支持用フレーム(36/72混合スリット
型)4個を直列に挿入した。フレームの内側リング内には、ブラックライト17(ナショ
ナル製(FL20S/BL-B)20W,32.5mmφ,長さ60cm)を1本配置した。
【0077】
この装置を用いて下記の表3に示す空気処理量25m/h(毎秒18.2cmの線速度)、
50m/h(毎秒36.4cmの線速度)又は100m/h(毎秒72.8cmの線速度)で汚染空
気を流した。なお、NOの濃度は1ppmとした。NOx除去効率は、開始時でそれぞれ
96.2%(空気処理量25m/h)、87.0%(空気処理量50m/h)、68.4%
(空気処理量100m/h)であった。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の拡散スクラバの原理を利用した管状構造の空気浄化装置の構造は根本的に簡便
であり、既存の空調施設等に簡単に組み込むことができ、また、建物の壁、屋根、屋外に
設置して太陽光を利用することができ、したがって、温度・湿度の調整の為に行ってきた
ビル等における空調と同時に本装置により有害ガス成分を除去処理し、質の高い生活環境
を提供することができる。また、本装置はビルの空調設備に用いるばかりでなく、自動車
トンネル、地下駐車場、工事・特殊車両からの窒素酸化物、VOCの効率的な除去処理が
行える。更に、装置自体は簡単に小型化できるので、一般家庭での可搬型空気浄化装置や
車載用の装置としても使用できること等極めて応用範囲が多岐に亘る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の空気浄化装置の筒状体構造の外観模式図である。
【図2】図1に示す筒状体構造の中心軸方向と直角方向の断面図である。
【図3】図2に示す筒状体構造の断面図のスリット一個を示す拡大図である。
【図4】筒状体構造のスリットの形状を示す図である。
【図5】拡散スクラバ法による除去パラメータ(μ)と理論除去効率との関係を示すグラフである。
【図6】ブラックライト及び太陽光からの紫外線照射強度分布パターン測定用の模型の概略図である。
【図7】ブラックライトからの紫外線照射強度分布パターンの測定結果を示す図である。
【図8】太陽光からの紫外線照射強度分布パターンの測定結果を示す図である。
【図9】ブラックライトと太陽光からの紫外線照射強度分布パターンの測定結果を示す図である。
【図10】実施例の空気浄化装置の筒状体構造のフレームの一実施形態の概略斜視図である。
【図11】実施例の空気浄化装置の概略側面図である。
【図12】Gormley及びKennedy理論式に基づく大気中のガス成分の除去効率の算出式のための平行板による拡散スクラバの寸法の取り方を示す図である。
【図13】平行板型拡散スクラバ装置の原理を示す模式図である。
【図14】従来の平行板型拡散スクラバ装置の平行板ユニットの概念斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の中心軸線上に筒状体と同心状に励起発光管を設置し、有害ガス及び粒子を含む汚
染空気を筒状体の一方の端面側の入口から他方の端面側の出口へ通気する構造の空気浄化
装置において、
下記のGormley及びKennedyの拡散スクラバの原理を表す理論式(1)(1949年)において、
1パスで50%以上の有害ガス除去効率を得る様に、M. Possanziniらが導き出した相当
直径δの概念を用いる(式2)及び(3)(1983年)で求められる気流中のガス成分
の除去パラメータ(μ)を、0.035以上とし、かつ、
筒状体は太陽光透過素材から形成され、
汚染空気を通気する間隙となり、通気流路有効長を有するスリット形成用のプレートが励
起発光管の外周面と筒状体の内周面との間の空間に筒状体の中心軸から半径方向に放射状
に配置され、
該プレートの表面に光触媒層が形成され、該光触媒層に拡散係数の相違により粒子と分離
された有害ガスを拡散させるとともに、
スリットの励起発光管側の端部の隙間及び/又は筒状体側の端部の隙間から励起光を光触
媒層に照射するようにしたことを特徴とする空気浄化装置。
【数1】

【請求項2】
筒状体の中心軸線上に筒状体と同心状に励起発光管を設置し、有害ガス及び粒子を含む汚
染空気を筒状体の一方の端面側の入口から他方の端面側の出口へ通気する構造の空気浄化
装置において、
汚染空気を通気する間隙となるスリット形成用のプレートが励起発光管の外周面と筒状体
の内周面との間の空間に筒状体の中心軸から半径方向に放射状に配置され、
該スリット内に、筒状体の内周面から中心軸方向に1枚又は2枚以上の補助プレートが配
置され、かつ、該スリット形成用のプレート及び補助プレートの表面に光触媒層が形成さ
れ、
該光触媒層に拡散係数の相違により粒子と分離された有害ガスを拡散させるとともに、
スリットの励起発光管側端の端部の隙間及び/又は筒状体側の端部の隙間から励起光を光
触媒層に照射するようにしたことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項3】
補助プレートの幅はスリット形成用のプレートの幅の0.8〜0.3倍であることを特徴
とする請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
該スリットは励起発光管側の端部の隙間が1〜10mmであることを特徴とする請求項1
ないし3のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項5】
筒状体は、内管と外管とからなる2重管とし、内管を励起光透過素材から形成し、内管の
内側に励起発光管を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の空気浄
化装置。
【請求項6】
前記筒状体は、多段に直列に配置された複数個の筒状体からなることを特徴とする請求項
1ないし5のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項7】
励起発光管により励起光を照射するとともに外管の外側から太陽光を照射させることを特
徴とする、請求項1ないし7のいずれかの空気浄化装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−158994(P2006−158994A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349917(P2004−349917)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】