説明

空気浄化装置

【課題】 空気浄化装置(10)において、疎水性の臭気成分(S1)を含む被処理空気を十分に処理できるようにするとともに、装置(10)の大型化やコストアップを抑えるようにする。
【解決手段】 疎水性の臭気成分(S1)を含む被処理空気を処理する空気浄化装置(10)において、臭気成分(S1)を親水性に状態変化させるストリーマ放電部(20)と、このストリーマ放電部(20)に対して被処理空気の流れ方向下流側に配置され、ストリーマ放電部(20)で親水性に状態変化した臭気成分(S2)を水溶させて捕捉する臭気捕捉部(スクラバー部(40))とを備えた構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置に関し、特に、疎水性の臭気成分を含む被処理空気を処理するための空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気浄化装置には、電気的な処理を伴って被処理空気を処理するものがある。その一例として、被処理空気中のダストを帯電させるための荷電部と、該荷電部を通過した被処理空気を洗浄液で洗浄するスクラバー部とを備えた装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、被処理ガスの流れの上流側に荷電部が配置される一方、下流側にスクラバー部が配置されている。
【0003】
この空気浄化装置に被処理空気を流すと、まず、該空気中のダストが荷電部において帯電する。スクラバー部では、被処理空気に水などの洗浄液が散布され、ダストが電気的な吸引力により液滴に付着して装置の下方へ落下する。装置には、落下したダストと液滴を回収する回収槽が設けられており、回収した洗浄液が排出または再利用される。
【0004】
スクラバー部を通過した空気からはダストが除去されている。そして、このようにしてダストの除去された空気が装置の出口から排出される。
【特許文献1】特開2003−126728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被処理空気が厨房排気である場合、被処理空気中には、ダストやオイルミストと、親油性(疎水性)の臭気成分とが含まれている。また、被処理空気が印刷工場や塗装工場の排気である場合、これらの排気中には、ダスト、及びインクや塗料のミストと、疎水性の臭気成分とが含まれている。
【0006】
ここで、上記の従来の装置では、ダスト、オイルミスト、あるいはインクや塗料のミストはある程度は除去できるものの、疎水性の臭気成分がほとんど除去されない問題がある。これは、疎水性の臭気成分の大部分がスクラバー部の液滴に付着せずに該スクラバー部を通過してしまうためである。したがって、上記の装置で疎水性の臭気成分を含む被処理空気を処理しても、排気から臭気が発散されることになる。
【0007】
一方、被処理空気中の臭気成分の一部はスクラバー部の液滴に吸収されて回収槽に回収されるが、液中に臭気成分として存在したままであり、回収槽からも臭気が発生してしまう。
【0008】
また、スクラバー部で臭気を十分に処理するためには、該スクラバー部を大型にする必要があり、その結果、空気浄化装置が大型になるうえ、使用する洗浄液の量が増えるためにコストが増大してしまうことになる。
【0009】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、空気浄化装置において、疎水性の臭気成分を含む被処理空気を十分に処理できるようにするとともに、装置の大型化やコストアップの問題も抑えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、疎水性の臭気成分(S1)を含む被処理空気を処理する空気浄化装置を前提としている。そして、この空気浄化装置は、上記臭気成分(S1)を親水性に状態変化させるストリーマ放電部(20)と、上記ストリーマ放電部(20)に対して被処理空気の流れ方向下流側に配置され、該ストリーマ放電部(20)で親水性に状態変化した臭気成分(S2)を水溶させて捕捉する臭気捕捉部(40)とを備えていることを特徴としている。
【0011】
この第1の発明では、ストリーマ放電部(20)において、ストリーマ放電に伴って低温プラズマが生成され、電子や種々の励起分子などの活性種が発生する。
【0012】
そして、被処理空気がストリーマ放電部(20)を流れるとき、被処理空気に含まれる疎水性の臭気成分(S1)は、一部が上記活性種により直接に分解され、CO2やH2Oに変化して無臭化される。
【0013】
一方、残余の臭気成分(S1)は、活性種である電子や種々の励起分子と結合し、親水性に状態変化する。親水性に変化した臭気成分(S2)は、ストリーマ放電部(20)の下流側に位置する臭気捕捉部(40)において水溶し、該捕捉部(40)に捕捉される。また、この臭気捕捉部(40)では、残余の活性種も捕捉される。したがって、臭気捕捉部(40)の中においても、上記活性種の働きにより臭気成分(S2)が分解される。
【0014】
以上のように、この第1の発明では、ストリーマ放電部(20)と臭気捕捉部(40)とで、2度にわたって臭気の分解作用が得られることになる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、臭気捕捉部(40)が、被処理空気に対して洗浄液を散布する方式のスクラバー部(40)により構成されていることを特徴としている。
【0016】
この第2の発明では、スクラバー部(40)において、被処理空気に対して水などの洗浄液が散布される。そして、上流側のストリーマ放電部(20)で親水性に状態変化をした臭気成分(S2)が該洗浄液の液滴に吸収され、臭気成分(S2)の除去された空気が装置から排出される。
【0017】
第3の発明は、第1または第2の発明において、臭気捕捉部(40)の上流側に、被処理空気中のダストまたはミスト(M1)を帯電させるイオン化部(30)を備えていることを特徴としている。
【0018】
この第3の発明では、例えば被処理空気が厨房排気である場合、被処理空気中のダストやオイルミスト(M1)がイオン化部(30)で帯電する。また、被処理空気が印刷工場や塗装工場の排気である場合、被処理空気中に含まれるダスト、及びインクや塗料のミスト(M1)がイオン化部(30)で帯電する。これらのダストやミスト(M1)は帯電すると親水性となり、スクラバー部(40)などの臭気捕捉部(40)で水に容易に捕捉される。したがって、被処理空気からは、臭気成分(S1)だけでなく、ダストやミスト(M1)も確実に除去される。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、ストリーマ放電部(20)とイオン化部(30)とが一体化されて1つの放電モジュール(11)を構成していることを特徴としている。
【0020】
この第4の発明では、ストリーマ放電部(20)とイオン化部(30)とが一体化された1つの放電モジュール(11)において、ストリーマ放電によるプラズマの生成と、ダストやミスト(M1)のイオン化とが同時に行われる。
【0021】
第5の発明は、疎水性の臭気成分(S1)を含む被処理空気を処理する空気浄化装置を前提としている。そして、この空気浄化装置は、上記臭気成分(S1)を親水性に状態変化させる放電部(20)を備えていることを特徴としている。
【0022】
また、第6の発明は、第5の発明において、放電部(20)が、ストリーマ放電部(20)により構成されていることを特徴としている。
【0023】
第5,第6の発明では、上記第1の発明に関して説明したように、放電部(20)(ストリーマ放電部(20))において、放電(ストリーマ放電)に伴って低温プラズマが生成され、電子や種々の励起分子などの活性種が発生する。
【0024】
そして、被処理空気が放電部(20)(ストリーマ放電部(20))を流れるとき、被処理空気に含まれる疎水性の臭気成分(S1)が上記の活性種により分解され、CO2やH2Oに変化して無臭化され、残余の臭気成分は親水性に状態変化をする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ストリーマ放電部(20)で疎水性の臭気成分(S1)の一部を直接に分解する一方、残りを親水性に変化させて、該臭気成分(S2)を下流側の臭気捕捉部(40)で残余の活性種とともに捕捉することにより、該臭気捕捉部(40)においても臭気成分(S2)の分解作用を得ることができる。したがって、疎水性の臭気成分(S1)が含まれている被処理空気を十分に処理することができる。
【0026】
また、被処理空気中の臭気成分(S1)をストリーマ放電部(20)の活性種により処理するようにしているため、スクラバー部(40)などの臭気捕捉部(40)に脱臭機能を持たせなくてよい。したがって、臭気捕捉部(40)を大型にする必要がなく、装置のコストも抑えられる。
【0027】
上記第2の発明によれば、臭気捕捉部(40)を、被処理空気に対して洗浄液を散布する方式のスクラバー部(40)により構成している。この方式によれば、装置を簡単な構成にすることができるので、装置のコストアップをより効果的に抑えることができる。また、洗浄液を被処理空気に対して散布するだけの簡単な方式でありながら、親水性になった臭気成分(S2)をストリーマ放電による活性種とともに確実に捕捉できるので、十分な分解性能を得ることもできる。
【0028】
上記第3の発明によれば、臭気捕捉部(40)の上流側に、被処理空気中のダストまたはミスト(M1)を帯電させるイオン化部(30)を設けたことにより、被処理空気中のダストやミスト(M1)をイオン化することで親水性に変えることができる。したがって、スクラバー部(40)などの臭気捕捉部(40)で、上記のダストやミスト(M1)を水で容易に捕捉できる。このため、被処理空気中の臭気成分(S1)だけでなく、ダストやミスト(M1)も確実に除去することが可能となる。
【0029】
上記第4の発明によれば、ストリーマ放電部(20)とイオン化部(30)とを一体化した1つの放電モジュール(11)を設けているので、ストリーマ放電部(20)とイオン化部(30)とを別々に設ける場合と比較して、装置を小型化することが可能となる。
【0030】
上記第5,第6の発明によれば、放電部(20)(ストリーマ放電部(20))において低温プラズマが生成され、その際に発生する種々の活性種により疎水性の臭気成分(S1)を分解して無臭化することができる。また、装置を簡単且つ小型の構成にすることができ、コストの増加も抑えられるし、別途、スクラバー装置などの臭気捕捉装置と組み合わせれば、臭気を確実に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
この実施形態は、例えば飲食店における厨房の排気を室外へ排出する排気ダクトに、本発明に係る空気浄化装置を適用した例であり、図1は、この空気浄化装置(10)を含む厨房排気システム(1)の模式図である。
【0033】
図に示すように、厨房に配置されている調理機器(2)の上方には、排気フード(3)が設けられている。この排気フード(3)には、建物の外へのびる排気ダクト(4)の一端(室内側端部)が接続され、排気ダクト(4)の他端(室外側端部)には排気ファン(5)が接続されている。この構成により、被処理空気である厨房排気は、排気フード(3)、排気ダクト(4)、及び排気ファン(5)を順に流れて外気中に放出される。
【0034】
排気フード(3)内には、厨房排気中に含まれているオイルミスト(M1)やダスト(図示せず)を捕集するためのグリスフィルタ(6)が配設されている。また、グリスフィルタ(6)の下方には、廃油を受けるオイルパン(7)が配設されている。
【0035】
厨房排気中には、オイルミスト(M1)やダストのほか、親油性(疎水性)の臭気成分(S1)が含まれている。そして、本発明の空気浄化装置(10)は、上記オイルミスト(M1)や臭気成分(S1)を除去するために、上記排気ダクト(4)の途中に設けられている。
【0036】
この空気浄化装置(10)は、上記臭気成分(S1)を親水性に状態変化させるストリーマ放電部(20)と、このストリーマ放電部(20)に対して厨房排気の流れ方向下流側に配置されたスクラバー部(臭気捕捉部)(40)とを備えている。スクラバー部(40)は、厨房排気に対して洗浄液を散布する方式のものであり、詳しくは後述するが、上記ストリーマ放電部(20)で親水性に状態変化した臭気成分(S2)を水溶させて捕捉するように構成されている。
【0037】
スクラバー部(40)の上流側には、厨房排気中のダストやオイルミスト(M1)を帯電させるイオン化部(30)が配設されている。そして、ストリーマ放電部(20)とイオン化部(30)とが一体化されて1つの放電モジュール(11)を構成している。この放電モジュール(11)の概略構成を、図2の斜視図に示している。
【0038】
上記イオン化部(30)は、グリスフィルタ(6)を通過した比較的小さなオイルミスト(M1)やダストを帯電させ、これらを、放電モジュール(11)の下流側に配置されているスクラバー部(40)により捕集するためのものである。
【0039】
このイオン化部(30)は、複数のイオン化線(31)と、複数の対向電極(32)とから構成されている。複数のイオン化線(31)は、イオン化部(30)の上端から下端まで等間隔で張架されていて、それぞれが互いに平行に、一枚の仮想面上に配置されている。対向電極(32)は、水平断面が「コ」の字形となった長尺部材で構成され、その開放側の縁部が厨房排気の流れ方向下流側を向くように配置されている。この対向電極(32)は、各イオン化線(31)の間に上記イオン化線(31)と平行に配列されている。そして、各対向電極(32)は、1枚のメッシュ板(33)にそれぞれの開放側の縁部が接合されている。
【0040】
ストリーマ放電部(20)は、複数の放電電極(21)と、この放電電極(21)に対向する対向電極(22)とを備えている。なお、この対向電極(22)は、上記イオン化部(30)の対向電極(32)と共用されており、各放電電極(21)は、各対向電極(22)の「コ」の字の内側に配置されている。
【0041】
具体的に、対向電極(22)の内側には、ストリーマ放電部(20)の部分拡大斜視図である図3に示すように、上下方向に延在する電極保持部材(23)が設けられ、放電電極(21)は固定部材(24)を介して電極保持部材(23)に保持されている。放電電極(21)は線状ないし棒状の電極であり、固定部材(24)から突出した放電電極(21)が、対向電極(22)の電極面(22a)と略平行になるように配置されている。
【0042】
上記スクラバー部(40)は、空気浄化装置(10)の上部において厨房排気に対して洗浄液を散布する散布部(41)と、この散布部(41)に接続された給水管(42)と、給水管(42)に設けられた開閉機構(43)とを備えている。また、空気浄化装置(10)には、散布部(41)から噴霧された洗浄液の液滴(D)を受ける回収槽(44)が、臭気捕捉部であるスクラバー部(40)の構成要素の一部として設けられている。
【0043】
この回収槽(44)は、洗浄液と油とを分離するオイルセパレータの役割を果たしている。そして、回収槽(44)内に溜まった洗浄液が図示しない配水管によって排水される一方、分離した油は洗浄液とは別に排出される。
【0044】
−運転動作−
次に、この厨房排気システム(1)の動作中における厨房排気の浄化作用について説明する。
【0045】
厨房排気は、排気ファン(5)によって排気ダクト(4)を介して排気フード(3)内に吸引される。排気フード(3)内にはグリスフィルタ(6)が設けられているので、厨房排気に含まれているオイルミスト(M1)やダストは、このグリスフィルタ(6)によって大半が捕集される。具体的には、厨房排気中のオイルミスト(M1)全体のほぼ80%から90%程度を占める比較的大粒径(粒径が3ミクロン以上程度)のオイルミスト(M1)がグリスフィルタ(6)で概ね捕捉される。そして、グリスフィルタ(6)を通過した厨房排気には、粒径が1ミクロン程度以下の微小なオイルミスト(M1)が、少量ではあるものの残存した状態となる。また、厨房排気に含まれる親油性(疎水性)の臭気成分(S1)は、気体分子であるため、グリスフィルタ(6)ではほとんど除去されずに排気ダクト(4)中を流れて行く。
【0046】
この厨房排気は、空気浄化装置(10)を通過するときに、オイルミスト(M1)やダストの除去作用と、疎水性の臭気成分(S1)の分解作用とを受ける。
【0047】
具体的には、イオン化部(30)において、オイルミスト(M1)やダストが帯電する。オイルミスト(M1)は、もともとは疎水性であるが、帯電すると親水性に変化する。この変化の様子を、図では5角形のオイルミスト(M1)から円形のオイルミスト(M2)への変化によって表している。また、図示していないが、ダストも帯電することにより親水性となる。
【0048】
スクラバー部(40)では、散布部(41)から洗浄液が散布されている。したがって、親水性になったオイルミスト(M2)やダストが洗浄液の液滴(D)に付着し、洗浄液と一緒に装置(10)の下方へ落下して回収槽(44)に回収される。なお、回収槽(44)内では洗浄液と油とが分離し、油が洗浄液に浮いた状態となる。
【0049】
上記ストリーマ放電部(20)では、各放電電極(21)の先端から対向電極(22)の電極面(22a)に向かってストリーマ放電が生じている。ストリーマ放電は、放電電極(21)の先端から対向電極(22)の電極面(22a)まで微小アークが連続することにより、発光を伴ったプラズマ柱として形成される。この微小アークは、放電電極(21)の先端と対向電極(22)の電極面(22a)との間において、フレア状に広がって進展する。
【0050】
ストリーマ放電により、放電場には低温プラズマ状のガスが発生する。このガスには、活性種として、高速電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカルなどのラジカルや、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子など)が含まれる。そして、これらの活性種は、放電モジュール(11)のメッシュ板(33)を通過し、厨房排気の下流側へ流れ出す。
【0051】
厨房排気がストリーマ放電部(20)を流れるとき、該厨房排気に含まれる疎水性の臭気成分(S1)は、一部が上記活性種により直接に分解され、CO2やH2Oに変化して無臭化される。
【0052】
一方、残余の臭気成分(S1)は、活性種である電子や種々の励起分子と結合し、親水性に状態変化する。この変化の様子を、図では十字形の臭気成分(S1)から円形の臭気成分(S2)への変化によって表している。親水性に変化した臭気成分(S2)は、ストリーマ放電部(20)の下流側に位置するスクラバー部(40)において洗浄液の液滴(D)に水溶する。また、このスクラバー部(40)では、残余の活性種も洗浄液の液滴(D)に捕捉される。したがって、回収槽(44)には、分解されていない親水性の臭気成分(S2)と、臭気の分解作用を行っていない活性種も捕捉される。
【0053】
このため、スクラバー部(40)では、洗浄液の液滴(D)が落下する途中から、回収槽(44)に液滴(D)が回収された後までの間に、上記活性種の働きにより臭気成分(S1)が分解される。
【0054】
以上のように、この実施形態では、ストリーマ放電部(20)の直後とスクラバー部(40)の中(及び回収槽(44)の中)とで、2度にわたって臭気の分解作用が得られることになる。
【0055】
そして、オイルミスト(M1)やダストとともに疎水性の臭気成分(S1)も除去された厨房排気が、排気ファン(5)の作用によって、装置(10)の出口から室外へ排出される。このとき、排気からは既に臭気成分(S1,S2)が除去されているので、室外への臭気の放出は起こらない。
【0056】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、ストリーマ放電部(20)で疎水性の臭気成分(S1)の一部を直接に分解することに加えて、残りの臭気成分(S1)を親水性に変化させて、該臭気成分(S2)を下流側のスクラバー部(40)で残余の活性種とともに捕捉するようにしたことによって、スクラバー部(40)においても臭気成分(S2)の分解作用を得ることができる。したがって、厨房排気中に含まれる疎水性の臭気成分(S1)を十分に処理することが可能である。
【0057】
また、厨房排気中の臭気成分(S1)をストリーマ放電部(20)の活性種により処理するようにしているため、スクラバー部(40)自体に臭気の処理機能を持たせる必要がない。このため、スクラバー部(40)を大型にする必要がなく、装置(10)のコストも抑えられる。
【0058】
また、本実施形態によれば、厨房排気に対して洗浄液を散布する方式のスクラバー部(40)を臭気捕捉部として用いている。この方式では、装置(10)を簡単な構成にすることができるので、装置(10)のコストアップをより効果的に抑えることができる。さらに、この方式では、洗浄液を厨房排気に対して散布するだけの簡単な方式でありながら、親水性になった臭気成分(S2)をストリーマ放電による活性種とともに確実に捕捉できるので、十分な分解性能を得ることもできる。
【0059】
また、本実施形態では、スクラバー部(40)の上流側に、厨房排気中のダストやオイルミスト(M1)を帯電させるイオン化部(30)を、ストリーマ放電部(20)と一体化した放電モジュール(11)として設けている。このことにより、ストリーマ放電部(20)とイオン化部(30)とを別々に設ける場合と比較して、装置(10)を小型化することが可能となる。また、厨房排気中のダストやミスト(M1)をイオン化することで親水性に変えられるので、スクラバー部(40)などの臭気捕捉部において水で容易に捕捉することが可能となる。したがって、厨房排気中の臭気成分(S1)だけでなく、ダストやオイルミスト(M1)も確実に除去することが可能となる。
【0060】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0061】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る空気浄化装置を厨房排気システムに適用した例について説明したが、本発明において、疎水性の臭気成分を含む被処理空気は、厨房排気以外のものであってもよい。
【0062】
また、例えば、上記実施形態では、ストリーマ放電部(20)とともに、スクラバー部(40)などの臭気捕捉部を一体的に備えた装置構成について説明したが、本発明の技術思想のポイントは疎水性の臭気成分(S1)をストリーマ放電部(20)などの放電部によって親水性に状態変化させることにある。したがって、放電部(ストリーマ放電部(20))からなる空気浄化装置(10)を単体で用いて疎水性の臭気成分(S1)を親水性に変化させ、親水性の臭気成分(S2)をこの装置(10)とは別体の臭気捕捉装置で捕らえる用い方をしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、スクラバー部(40)として、洗浄液を厨房空気に対して上方から散布する方式(厨房排気の流れに対して加圧洗浄水を噴射する方式(加圧水式))を採用しているが、その他の方式の装置を用いてもよい。
【0064】
具体的には、溜水中に厨房排気などの被処理空気をくぐらせることにより処理する方式(溜水式)や、プラスチック・磁器などの充填物に噴霧した水による水膜に被処理空気を接触させて処理する方式(充填層式)や、洗浄水を回転体で分散させて被処理空気に接触させ、被処理空気を処理する方式(回転式)など、種々の方式を採用することができる。要するに、水などの液体を洗浄液として、厨房排気などの被処理空気を該洗浄液による液滴(D)や液膜で処理する装置であれば、臭気捕捉部(40)の具体的な構成は任意に変更してもよい。
【0065】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明は、疎水性の臭気成分を含む被処理空気を処理するための空気浄化装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る空気浄化装置を含む厨房排気システムの模式図である。
【図2】ストリーマ放電部の斜視図である。
【図3】ストリーマ放電部の部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 空気浄化装置
11 放電モジュール
20 ストリーマ放電部(放電部)
30 イオン化部
40 スクラバー部(臭気捕捉部)
S1 臭気成分
M1 オイルミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性の臭気成分(S1)を含む被処理空気を処理する空気浄化装置であって、
上記臭気成分(S1)を親水性に状態変化させるストリーマ放電部(20)と、
上記ストリーマ放電部(20)に対して被処理空気の流れ方向下流側に配置され、該ストリーマ放電部(20)で親水性に状態変化した臭気成分(S2)を水溶させて捕捉する臭気捕捉部(40)と、
を備えていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
臭気捕捉部(40)は、被処理空気に対して洗浄液を散布する方式のスクラバー部(40)により構成されていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
臭気捕捉部(40)の上流側に、被処理空気中のダストまたはミスト(M1)を帯電させるイオン化部(30)を備えていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項4】
請求項3において、
ストリーマ放電部(20)とイオン化部(30)とが一体化されて1つの放電モジュール(11)を構成していることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項5】
疎水性の臭気成分(S1)を含む被処理空気を処理する空気浄化装置であって、
上記臭気成分(S1)を親水性に状態変化させる放電部(20)を備えていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項6】
請求項5において、
放電部(20)は、ストリーマ放電部(20)により構成されていることを特徴とする空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−231161(P2006−231161A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47310(P2005−47310)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】