説明

空気浄化装置

【課題】空気中の汚染物質をより効果的に除去し、空気浄化性能を向上させる。
【解決手段】第一エレメント120に吸着した汚染物質は光触媒の光分解作用により分解される。第一エレメント120を通過する際に吸着されなかった空気に含まれる汚染物質は、第一エレメント120と第二エレメント130との間の微細ミスト噴霧空間118に充満する霧状の水Hに気液接触により溶解する。汚染物質が含まれる霧状の水Hの一部は重力により落下し、貯水部150に溜まる。汚染物資が溶解した霧状の水Hは、第二エレメント130を通過する際に、第二エレメント130に付着し捕獲される。第二エレメント130に捕獲された汚染物質が溶解した水は、重力により落下し、貯水部150に溜まる。このようにして、汚染された空気が、第一エレメント120、微細ミスト噴霧空間118、第二エレメント130と通過することで浄化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネル等の電子デバイスの製造は、クリーンルームにて行なわれている。半導体や液晶パネル等の電子デバイスの製造工程においては、ガス状の汚染物質が製造工程の製品と化学反応したり物理的に吸着したりすることにより、製品不良の原因となる虞がある。特に、露光工程においては、アンモニアや硫酸などの無機成分と有機成分が光学系のレンズやマスク(回路の原板)の表面に吸着して解像度を劣化させ、配線不良をもたらす虞がある。このため、クリーンルームのガス状の汚染物質を除去し、空気を浄化する必要がある。
【0003】
空気を浄化する方法として、活性炭や酸・アルカリの薬剤を担持した化学フィルターやイオン交換フィルターなどを用いることがある。しかし、フィルターはガス状汚染物質を物理的又は化学的に吸着させることによって除去するため、徐々に性能が低下し、その容量を越えると交換する必要がある。なお、発生する汚染物質の量にもよるが、一般的には1年〜2年に一度、フィルターを交換する必要があるとされている。
【0004】
そこで、フィルターを用いないで空気を浄化する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、霧状に水を噴霧し、空気中に含まれる可溶性ガスを気液接触により除去する除去装置が提案されている。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、噴霧装置によって噴霧された水と空気とを気液接触させる洗浄室内に紫外線発生装置と光触媒層とを設置した空気浄化装置が提案されている。
【0007】
また、例えば、特許文献4には、空気に含まれたガス成分を循環する水に溶解させて除去する空気浄化装置において、水が循環する水循環系の途中に水タンクを設けると共に、水タンクの上方に紫外線照射手段を配置し且つ水タンクの水に光触媒を浸漬配置したことを特徴とする空気浄化装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−104739号公報
【特許文献2】特開2003−334416号公報
【特許文献3】特開2002−95924号公報
【特許文献4】特開2005−31094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、空気浄化性能を向上させることが求められている。
本発明は、空気浄化性能を向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、空気が流入する流入口と、前記流入口から流入した空気が排出される排出口と、を備えた空気流路と、前記空気流路に水を霧状に噴霧する噴霧手段と、前記噴霧手段によって噴霧された水を排出する排出手段と、前記流入口と前記噴霧手段との間の前記空気流路に設けられ、空気が通過し、前記噴霧手段によって付着した水が前記排出手段によって排出されるように構成され、光触媒を担持した第一エレメントと、前記第一エレメントに光を照射する第一光照射手段と、前記噴霧手段と前記排出口との間の前記空気流路に設けられ、空気が通過し、通過する空気中の霧状の水が付着し、且つ付着した水が前記排出手段によって排出されるように構成された第二エレメントと、を備えている。
【0011】
請求項1の発明では、上流側の第一エレメントを空気が通過する際に、空気中に含まれる汚染物質は第一エレメントに吸着し、第一エレメントに付着している水に溶解する。第一エレメントに付着している汚染物質が溶解した水は、排出手段によって排出される。
【0012】
第一エレメントに吸着しなかった汚染物質に含まれる可溶性の無機イオン成分は、第一エレメントと第二エレメントとの間に噴霧されている霧状の水に気液接触により溶解する。
【0013】
汚染物質が溶解した霧状の水は第二エレメントに付着し捕獲される。第二エレメントに付着し捕獲された汚染物質が溶解した水は、排出手段によって排出される。
【0014】
このように浄化対象の空気が第一エレメント及び第二エレメントを通過することによって、汚染物質が除去されて浄化される。
【0015】
ここで、第一エレメントに吸着した汚染物質に含まれる高沸点の有機成分は、光触媒の分解作用により分解され、汚染影響の少ない低沸点化合物に変質する。
【0016】
このように、光触媒を担持する第一エレメントによって、汚染物質中の有機成分が低沸点化合物に変質され除去されるので、光触媒を担持する第一エレメントを設けない構成と比較し、空気浄化性能が向上する。
【0017】
請求項2の発明は、前記第二エレメントが光触媒を担持し、前記第二エレメントに光を照射する第二光照射手段を備えている。
【0018】
請求項2の発明では、第二エレメントによって捕獲された水に溶解した汚染物質の有機成分が、光触媒によって分解される。よって、第二エレメントが光触媒を担持していない構成と比較し、空気浄化性能が向上する。
【0019】
請求項3の発明は、前記排出手段から排出された水を前記噴霧手段に送る循環経路と、前記循環経路に設けられ、前記循環経路を流れる水を一時的に貯留する貯留槽と、前記貯留槽に設けられた排水口と、前記貯留槽に水を補給する補給手段と、を備えている。
【0020】
請求項3の発明では、貯留槽に貯留された汚染物質を含む水は、補給手段によって補給された水により希釈される。また、貯留槽の水の一部は再度噴霧手段に送られて噴霧され、一部は排水口から排水される。
【0021】
このように、排出手段から排出された汚染物質を含む水を希釈して、再度噴霧手段で噴霧するので、安定して空気中の汚染物質が水に溶解し除去される。よって、更に空気浄化性能が向上する。
【0022】
また、貯留槽から排出される水は希釈されているので、排出された水から汚染物質を除去して廃棄する必要がない(環境への負荷が少ない)。或いは、汚染物質を除去して廃棄する場合であっても、除去が容易である。
【0023】
請求項4の発明は、前記貯留槽内に設けられ、光触媒を担持した第三エレメントと、前記第三エレメントに光を照射する第三光照射手段と、を備えている。
【0024】
請求項4の発明では、貯留槽の水に含まる汚染物質の有機成分を光触媒で分解することで、貯留槽から排出される水の汚染濃度が更に低下する。また、再度噴霧手段で噴霧する水の汚染物質の溶解度が向上する。よって、更に空気浄化性能が向上する。
【0025】
請求項5の発明は、前記第一エレメント及び前記第二エレメントとの少なくとも一方は、多孔質金属で構成されている。
【0026】
請求項5の発明では、多孔質金属は高気孔率かつ三次元網目状構造とされているので、空気抵抗を抑えつつ、霧状の水がより多く付着する。よって、空気浄化性能が更に向上する。
【0027】
請求項6の発明は、前記第一光照射手段は、前記空気流路における前記流入口と前記第一エレメントとの間に配置されている。
【0028】
請求項6の発明では、第一光照射手段は、空気流路における流入口と第一エレメントとの間に配置されているので、噴霧手段によって噴霧された霧状の水によって光が遮られない。よって、第一光照射手段が第一エレメントと第二エレメントとの間に配置されている構成と比較し、空気浄化性能が向上する。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載の発明によれば、光触媒を担持する第一エレメントを設けない構成と比較し、空気浄化性能を向上させることができる。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、第二エレメントが光触媒を担持していない構成と比較し、空気浄化性能を向上させることができる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、安定して空気中の汚染物質が水に溶解し除去されるので、空気浄化性能が更に向上させることができる。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、貯留槽の水に含まる汚染物質の有機成分を光触媒で分解することで、貯留槽から排出される水の汚染濃度が更に低下するので、空気浄化性能を更に向上させることができる。
【0033】
請求項5に記載の発明によれば、第一エレメントと第二エレメントとの両方共が多孔質金属以外で構成されている場合と比較し、空気浄化性能を向上させることができる。
【0034】
請求項6に記載の発明によれば、第一光照射手段が第一エレメントと第二エレメントとの間に配置されている構成と比較し、空気浄化性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一実施形態の空気浄化装置を模式的に示す構成図である。
【図2】図1に示す本発明の第一実施形態に係る空気浄化装置とクリーンルームとを有するクリーンルーム装置の構成を模式的に示す構成図である。
【図3】第一変形例のクリーンルーム装置の構成を模式的に示す図2に対応する構成図である。
【図4】第二変形例のクリーンルーム装置の構成を模式的に示す図2に対応する構成図である。
【図5】第三変形例のクリーンルーム装置の構成を模式的に示す図2に対応する構成図である。
【図6】本発明の第二実施形態の空気浄化装置を模式的に示す構成図である。
【図7】本発明の第三実施形態の空気浄化装置を構成するチャンバーを模式的に示す構成図である。
【図8】(A)は多孔質金属を説明する説明図であり、(B)は多孔質金属に光触媒が担持された状態を説明する説明図である。
【図9】光触媒による光分解作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る空気浄化装置100とクリーンルーム50とを備えるクリーンルーム装置10について、図1と図2とを用いて説明する。
【0037】
まず、図2を用いてクリーンルーム装置10の全体構成について説明する。
なお、本実施形態では、クリーンルーム50の中で、半導体や液晶パネルの製造が行なわれる。
【0038】
図2に示すように、クリーンルーム50の排気口52から排気された汚染された空気(浄化対象の空気)は、空気経路62を介して、空気浄化装置100に送られる。空気浄化装置100に送られた汚染された空気は、空気浄化装置100で浄化され排出される。空気浄化装置100によって浄化され排出された空気は、空気経路64を介してクリーンルーム50の吹出口54から吹き出される。
【0039】
なお、本実施形態においては、空気経路64には図示が省略されている空調装置が設けられており、浄化された空気は空調装置によって温度と湿度とが調整されたのち、クリーンルーム50の吹出口54から吹き出される。
【0040】
つぎに、空気浄化装置100について、図1を用いて説明する。
【0041】
空気浄化装置100はチャンバー110を備えている。チャンバー110には、クリーンルーム50(図2参照)から排出された汚染された浄化対象の空気が流入する流入口112と、流入口112から流入した空気が浄化されたのち排出される排出口114を有している。そして、流入口112と排出口114との間が空気流路116とされている。
【0042】
チャンバー110の空気流路116の中を流入口112から排出口114へと空気が流れるように構成されている。そして、このように流入口112から排出口114へと空気が流れるようにする空気流発生手段は、どのような構成であってもよい。
【0043】
例えば、流入口112又は排出口114の近傍にファンなどの送風装置を設けてもよい。或いは、空気経路62又は空気経路64(図2参照)にポンプを設けてもよい。或いは、クリーンルーム50の排気口52や吹出口54の近傍にファンなどの送風装置を設けてもよい。要は。チャンバー110の空気流路116の中を流入口112から排出口114へと空気が流れるように構成されていればよい。
【0044】
空気流路116における流入口112側には、第一エレメント120が設けられている。また、空気流路116における排出口114側には、第二エレメント130が設けられている。第一エレメント120及び第二エレメント130は、図8(A)に示す板状の多孔質金属(発泡金属)500で構成されている。
【0045】
図8(A)に模式的に示すように多孔質金属(発泡金属)500は、小さい気孔502が無数にあいた高気孔率かつ三次元網目状の構造を有する金属材料とされている。
【0046】
本実施形態においては、多孔質金属500は、ニッケルやアルミニウム等の金属をスポンジ状に成型されることによって構成されている。なお、本実施形態においては、空隙率は80%程度とされ、通風する空気抵抗が小さくなるように構成されている。
【0047】
図8(B)に示すように、第一エレメント120には、可視光で触媒作用(光分解作用)を発揮する光触媒Sが担持されている。なお、光触媒Sについての詳細は後述する。
また、本実施形態においては、多孔質金属500に光触媒Sを焼結させることによって、第一エレメント120に光触媒Sを担持させている。
【0048】
図1に示すように、空気流路116における第一エレメント120と第二エレメント130との間に、水を霧状に噴霧する噴霧装置140が設けられている。噴霧装置140は、チャンバー110の天井部110Aから下方に延びるパイプ142と、パイプ142に設けられた複数のスプレーノズル144と、を有している。
【0049】
よって、第一エレメント120と第二エレメント130との間の空間は、噴霧装置140によって噴霧された微細な霧状の水(ミスト)Hが充満した状態となる。なお、この第一エレメント120と第二エレメント130との間の霧状の水Hが充満した空間を「微細ミスト噴霧空間118」とする。
【0050】
また、噴霧装置140から噴霧された霧状の水Hが第一エレメント120に付着し、第一エレメント120が常に湿潤された状態となるように、噴霧装置140は第一エレメント120の近傍に配置されている。
【0051】
なお、噴霧装置140から噴霧される水Hには、種々の物質が溶解や分散された水も含まれる。例えば、酸やアルカリなどが添加された水やオゾン水なども含まれる。
【0052】
チャンバー110の微細ミスト噴霧空間118の下方には貯水部(ドレンパン)150が設けられている。第一エレメント120に付着している霧状の水Hは、重力により落下し、貯水部150に溜まるように構成されている。また、微細ミスト噴霧空間118の霧状の水Hの一部は重力により落下し、貯水部150に溜まるように構成されている。更に第二エレメント130を通過する際に、霧状の水Hが第二エレメント130に捕獲される(詳細は後述する)。そして、捕獲された水Hは、第一エレメント120と同様に、重力により落下し、貯水部150に溜まるように構成されている。つまり、噴霧装置140から噴霧された水Hは、最終的に、この貯水部150に溜まるように構成されている。
【0053】
貯水部150の底部150Aには、貯水部150に溜まった水が排水される排水口152が設けられている。
排水口152から排水された水は、貯留槽160に貯留される。貯留槽160と噴霧装置140とは、循環経路170で連結されている。
【0054】
貯留槽160には、貯留した水を循環経路170に送る送水口162と、貯留した水を排水する排水口164と、が設けられている。また、貯留槽160に補給水を補給する補給部166が設けられている。
また、送水口162と噴霧装置140との間の循環経路170には、噴霧装置140に水を送るポンプ172が設けられている。
【0055】
よって、チャンバー110の貯水部150から排水された貯留槽160に貯留された水の一部が排水口164から排水され、一部が送水口162から送水され循環経路170を介して噴霧装置140に送られ噴霧装置140によって噴霧される。また、補給部166から補給水が補給されることによって、貯留槽160に貯留された水が希釈される。
【0056】
空気流路116における流入口112と第一エレメント120との間に光照射装置180が配置されている。光照射装置180は、第一エレメント120に向けて光を照射する。光照射装置180から照射される光の波長は、光触媒S(図8(B)を参照)が触媒作用(光分解作用)を効果的に行なうことに適した波長が望ましい。
【0057】
ここで、光触媒Sと光照射装置180とについて説明する。
【0058】
光触媒Sは、光が照射されることにより触媒作用(光分解作用)を示す物質の総称とされている。
【0059】
図9に示すように、光触媒Sに光が当たると、光伝導によって電子と正孔とが発生する。電子は酸素と反応して活性酸素(スーパーオキシドラジカル)をつくり、正孔は水と反応して水酸化ラジカル(ヒドロキシル)をつくる。活性酸素及び水酸化ラジカルは強力な酸化力を持つので、汚染物質(有機物)を分解する。汚染物質(有機物)が分解されることによって、低沸点化合物、二酸化炭素、及び水等に変質する。
【0060】
光触媒Sとしては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化銅等の酸化金属が知られている。一般的には、光触媒が吸収する光の波長のピークは380nm以下の紫外領域にあるとされている。しかし、紫外線だけでなく、400nm〜600nmの可視光で作用する光触媒が開発されている。
【0061】
そして、本実施形態では、このような可視光で触媒作用を発揮する光触媒Sが、第一エレメント120に担持されている(図8(B)を参照)。また、本実施形態においては、光照射装置180の光源として、LEDを用いている。なお、LED以外の光源、例えば、通常の白熱球、蛍光灯等を用いてもよい。
【0062】
また、紫外線で触媒作用を発揮する光触媒を用いてもよい。この場合は、光源として紫外線を多く含む紫外線ランプを用いる。なお、同時にオゾンが発生するので、下流側でオゾン分解用の触媒やフィルターが必要とされる。
なお、前述した可視光で触媒作用を発揮する光触媒であっても、光源として紫外線ランプを用いてもよい。
【0063】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0064】
クリーンルーム50内での、半導体や液晶パネル等の電子デバイスの製造は、ガス状の汚染物質が製造工程の製品と化学反応したり物理的に吸着したりすることにより、製品不良の原因となる虞がある。特に、露光工程においては、アンモニアや硫酸などの無機成分と有機成分が光学系のレンズやマスク(回路の原板)の表面に吸着して解像度を劣化させ、配線不良をもたらす虞がある。このため、クリーンルーム50内のガス状の汚染物質を除去し、空気を浄化する必要がある。
【0065】
なお、本実施形態で浄化する具体的な汚染物質(ケミカル物質)は、無機イオン成分(アンモニア、SOx)、有機物、アンモニア、SOx、PGMEA、NMP(溶剤)、HMDS(密着性向上剤)、フタル酸エステル、シロキサン等があげられる。
【0066】
そして、クリーンルーム50の排気口52から排気された汚染された空気(浄化対象の空気)は、空気経路62を介して、空気浄化装置100のチャンバー110の流入口112から流入する。流入口112から流入した浄化対象の空気は、第一エレメント120、微細ミスト噴霧空間118、第二エレメント130と通過することで浄化され、排出口114から排出される。空気浄化装置100によって浄化された空気はクリーンルーム50の吹出口54から吹き出される。
【0067】
噴霧装置140から噴霧された霧状の水Hによって第一エレメント120は、常に湿潤された状態となっている。よって、第一エレメント120を汚染された空気が通過する際に(図2の矢印L1参照)、空気中に含まれる汚染物質は第一エレメント120に吸着し、第一エレメントに付着している水に溶解する。第一エレメント120に付着している汚染物質が溶解した水は、重力によって落下し貯水部150に溜まる。
【0068】
第一エレメント120に吸着した汚染物質に含まれる高沸点の有機成分は、前述したように光触媒S(図8(B)参照)の光分解作用により分解され、汚染影響の少ない低沸点化合物、水、二酸化炭素等に変質する。
【0069】
よって、光触媒Sを担持する第一エレメント120がない構成と比較し、空気浄化性能が向上する。
【0070】
第一エレメント120を通過する際に吸着されなかった空気に含まれる汚染物質は、第一エレメント120と第二エレメント130との間の微細ミスト噴霧空間118に充満する霧状の水Hに、気液接触により溶解する。汚染物質が含まれる霧状の水Hの一部は重力により落下し、貯水部150に溜まる。
【0071】
汚染物資が溶解した霧状の水Hは、第二エレメント130を通過する際に(図1の矢印L2参照)、第二エレメント130に付着し捕獲される。第二エレメント130に捕獲された汚染物質が溶解した水は、重力により落下し、貯水部150に溜まる。
【0072】
このようにして、クリーンルーム50の排気口52から排気された汚染された空気(浄化対象の空気)が、第一エレメント120、微細ミスト噴霧空間118、第二エレメント130と通過することで浄化される。
【0073】
なお、図8(A)に示すように、第一エレメント120及び第二エレメント130は、高気孔率かつ三次元網目状構造とされた多孔質金属500で構成さている。よって、空気抵抗を抑えつつ、霧状の水Hがより多く付着する。したがって、多孔質金属500以外でエレメントが構成されている場合と比較し、空気浄化性能が向上する。
【0074】
また、第二エレメント130は、下流側に汚染物質が溶解した霧状の水Hが流出し、排出口114から排出されないようにするエリミネータの役割を果たす。多孔質金属500以外の、例えば大きなミストを慣性力でトラップする波型のエリミネータは、微細な霧状の水(ミスト)が捕獲されないで下流側へ飛散する虞がある。よって、本実施形態のように複雑な3次元構造の空隙間を有する多孔質金属500で第二エレメント130を構成することによって、微細な霧状の水(ミスト)Hの回収率(捕獲率)が向上するので、空気浄化性能が向上する。
【0075】
また、貯水部150に溜まった汚染物質を含む水は、排水口152から排水され貯留槽160に一時的に貯留される。貯留槽160に貯留された汚染物質を含む水は、補給部166から補給された補給水により希釈される。そして、貯留槽160の希釈された水の一部は噴霧装置140に送られて噴霧され、一部は排水口164から排水される。
【0076】
このように、貯水部150から排水された汚染物質を含む水を補給水で希釈して、噴霧装置140で噴霧するので、安定して空気中の汚染物質が水に溶解し除去される。よって、空気浄化性能が向上する。
【0077】
なお、貯留槽160において、補給部166から補給される補給水の補給量や排水口164から排水される排水量などの制御はどのように行なってもよい。
【0078】
例えば、貯留槽160の水の導電率を計測し、導電率(汚染物質の濃度)が閾値以下となるように補給量と排水量とを調整するようにしてもよい。或いは、定期的に或いは連続的に所定量の補給と排水とを行なってもよい。また、定期的に貯留槽160の水を入れ替えてもよい。
【0079】
また、光照射装置180は、空気流路116における流入口112と第一エレメント120との間に配置されている。よって、噴霧装置140によって噴霧された霧状の水Hによって光が遮られない。したがって、光照射装置180が、例えば第一エレメント120と第二エレメント130との間の微細ミスト噴霧空間118に配置されている構成と比較し、空気浄化性能が向上する。
【0080】
なお、光照射装置180をチャンバー110の外側に配置し、チャンバー110の壁面の一部を透明として、この透明の部位から光を照射するようにしてもよい。
【0081】
「変形例」
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、クリーンルーム50の排気口52から排出された汚染された空気を空気浄化装置100に送り、空気浄化装置100によって浄化された空気がクリーンルーム50の吹出口54から吹き出されている。つまり、空気が循環する構成であったがこれに限定されない。
【0082】
「第一変形例」
例えば、図3に示す第一変形例のクリーンルーム装置11のように、空気浄化装置100によって浄化された空気を外気に排出する構成であってもよい。この場合、クリーンルーム50の吹出口54から吹き出す空気は、本発明が適用されていない浄化装置802やフィルター(図示略)を介して取り込まれる。
【0083】
「第二変形例」
また、図4に示す第二変形例のクリーンルーム装置12のように、空気浄化装置100は外気を取り込んで浄化し、浄化された空気がクリーンルーム50の吹出口54から吹き出される構成であってもよい。この場合、クリーンルーム50の排気口52から排気された汚染された空気は、本発明が適用されていない浄化装置804やフィルター(図示略)などを介して外気に排出される。
【0084】
「第三変形例」
また、図5に示す第三変形例のクリーンルーム装置13のように、クリーンルーム51の中に空気浄化装置100を設置してもよい。
【0085】
<第二実施形態>
つぎに、本発明の第二実施形態の空気浄化装置200について、図6を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
また、本実施形態の空気浄化装置200においても、変形例を含む第一実施形態で説明したクリーンルーム50、51内の空気を浄化する目的で用いている。
【0086】
図6に示すように、第二実施形態の空気浄化装置200は、第二エレメント130にも光触媒S(図8(B)参照)が担持されている。また、空気流路116における排出口114と第二エレメント130との間にも光照射装置182が配置されている。光照射装置182は、第二エレメント130に向けて光を照射する。
【0087】
また、貯留槽160の中に、光触媒S(図8(B)参照)を担持した第三エレメント220と光照射装置184とが設けられている。光照射装置184は、第三エレメント220に向けて光を照射する。
【0088】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
第二エレメント130によって捕獲された水に溶解した汚染物質の有機成分が、第一エレメント120と同様に光触媒Sによって分解される。よって、第二エレメント130が光触媒Sを担持していない構成と比較し、空気浄化性能が向上する。
【0089】
また、貯留槽160の水に含まる汚染物質の有機成分を第三エレメント220が担持する光触媒Sが分解することで、貯留槽160から排出される水の汚染濃度が更に低下する。これにより、噴霧装置140で噴霧する水の汚染物質の溶解度が向上する。よって、更に空気浄化性能が向上する。
【0090】
なお、第三エレメント220に通過する水を増やし、光触媒Sによる分解作用を促進さるために(空気浄化性能を向上させるために)、図中の矢印L3で示すような水流を発生させるようにしてもよい。
【0091】
<第三実施形態>
つぎに、本発明の第三実施形態の空気浄化装置300について、図7を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、図7は、第三実施形態の空気浄化装置300のチャンバー310を上から平面視した模式図である。
また、本実施形態の空気浄化装置300においても、変形例を含む第一実施形態で説明したクリーンルーム50、51内の空気を浄化する目的で用いている。
【0092】
図7に示すように、空気浄化装置300は、チャンバー310の壁面310Bに流入口112と排出口114とが設けられている。壁面310Bにおける流入口112と排出口114との間の部位310Eから、対向する壁面310Cに向かって延出する壁315が形成されている。このように、チャンバー310内の一部が壁315によって仕切られることによって、平面視略U字状の空気流路316が形成されている。この平面視略U字状の空気流路316を、矢印L4で示すように、空気が流れていく。
【0093】
空気流路316における流入口112側には、光触媒S(図8(B)参照)を担持した第一エレメント120が設けられ、排出口114側には、第二エレメント130が設けられている。
【0094】
図1に示すように、空気流路316における第一エレメント120の近傍には、水を霧状に噴霧する噴霧装置140が設けられている。よって、第一エレメント120と第二エレメント130との間が空間は、霧状の水(ミスト)Hが充満した微細ミスト噴霧空間318が形成される。
【0095】
また、流入口112と第一エレメント120との間に光照射装置180が配置されている。
【0096】
なお、図示は省略されているが、チャンバー310の微細ミスト噴霧空間318の下方には貯水部(ドレンパン)が設けられている。そして、噴霧装置140から噴霧された水Hは、最終的にこの貯水部に溜まるように構成されている。
【0097】
また、第一実施形態と同様に貯留槽や循環経路などが設けられており、チャンバー310の貯水部から排水された水が一時的に貯留槽に貯留されるとともに、貯留された水の一部が排水口から排水され一部が送水口から送水され循環経路を介して噴霧装置140に送られ噴霧装置140によって噴霧される。また、補給部から水が補給されることによって、貯留槽に貯留された水が希釈される。
【0098】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
空気流路316を平面視略U字状とすることで、チャンバーの全長が長くなることを抑えつつ、霧状の水Hが充満した微細ミスト噴霧空間318の全長を長くすることができる。そして、微細ミスト噴霧空間318の全長を長くすることで空気浄化性能が向上する。
【0099】
なお、本実施形態においても、図7に示す第二実施形態のように、第二エレメント130にも光触媒S(図8(B)参照)が担持されていてもよい。また、貯留槽160の中に、光触媒S(図8(B)参照)を担持する第三エレメント220と光照射装置184とが設けられていてもよい。
【0100】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【0101】
例えば、上記実施形態では、空気浄化装置は、クリーンルームに適用したがこれに限定されない。クリーンルーム以外の適用例としては、例えば、工場や実験施設から汚染された空気を浄化して排出する目的で使用することがきる。また、排気ガスの浄化にも使用することができる。
【符号の説明】
【0102】
100 空気浄化装置
112 流入口
114 排出口
116 空気流路
120 第一エレメント
130 第二エレメント
140 噴霧装置(噴霧手段)
150 貯水部(排出手段)
160 貯留槽
164 排水口
166 補給部(補給手段)
170 循環経路
180 光照射装置(第一光照射手段)
182 光照射装置(第二光照射手段)
184 光照射装置(第三光照射手段)
200 空気浄化装置
220 第三エレメント
300 空気浄化装置
500 多孔質金属
S 光触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流入する流入口と、前記流入口から流入した空気が排出される排出口と、を備えた空気流路と、
前記空気流路に水を霧状に噴霧する噴霧手段と、
前記噴霧手段によって噴霧された水を排出する排出手段と、
前記流入口と前記噴霧手段との間の前記空気流路に設けられ、空気が通過し、前記噴霧手段によって付着した水が前記排出手段によって排出されるように構成され、光触媒を担持した第一エレメントと、
前記第一エレメントに光を照射する第一光照射手段と、
前記噴霧手段と前記排出口との間の前記空気流路に設けられ、空気が通過し、通過する空気中の霧状の水が付着し、且つ付着した水が前記排出手段によって排出されるように構成された第二エレメントと、
を備える空気浄化装置。
【請求項2】
前記第二エレメントが光触媒を担持し、
前記第二エレメントに光を照射する第二光照射手段を備える、
請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記排出手段から排出された水を前記噴霧手段に送る循環経路と、
前記循環経路に設けられ、前記循環経路を流れる水を一時的に貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に設けられた排水口と、
前記貯留槽に水を補給する補給手段と、
を備える、
請求項1又は請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記貯留槽内に設けられ、光触媒を担持した第三エレメントと、
前記第三エレメントに光を照射する第三光照射手段と、
を備える、
請求項3に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記第一エレメント及び前記第二エレメントとの少なくとも一方は、多孔質金属で構成されている、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記第一光照射手段は、前記空気流路における前記流入口と前記第一エレメントとの間に配置されている、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177691(P2011−177691A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47044(P2010−47044)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】