説明

空気浮上式フレックスベルトコンベア

【課題】フレックスベルトを用いたフレックスベルトコンベアにおいて、ベルト支持ローラの交換を不要とし、フレックスベルトがベルト支持ローラに乗り上げることで発生する騒音と振動を回避する。
【解決手段】フレックスベルト3は、積載物が載せられる積載面17を有する底部3aと、フレックスベルト3の幅方向の両側において積載面17から上方側に突出した側壁部3bとを有する。フレックスベルト3の下方に配置されフレックスベルト3の長手方向に延び、空圧でフレックスベルト3を支持するベルト支持体5を設ける。ベルト支持体5には、フレックスベルト3を浮上させるためにフレックスベルト3の下面へ空気を噴出する噴出孔5aが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のフレックスベルトを空気圧で浮上走行させる空気浮上式フレックスベルトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、フレックスベルトコンベアの側面図であり、図2は、図1のII−II矢視図である。フレックスベルトコンベアは、フレックスベルト31で積載物1を搬送する装置である。フレックスベルト31は、積載物1が載せられる積載面33を有する底部31aと、フレックスベルト31の幅方向の両側において積載面33から上方側に突出した側壁部31bとを有する。側壁部31bは、前記フレックスベルト31の長手方向全体にわたって設けられる。
【0003】
フレックスベルトコンベアは、鉱石、石炭、穀物などの積載物1をフレックスベルト31に載せて次のように搬送する。無端状のフレックスベルト31が、キャリア側のベルト支持ローラ35上とリターン側のベルト支持ローラ35上を走行させられる。走行するフレックスベルト31は、図1の右下側にある投入口34から積載物1を受け取って積載し、ヘッドプーリ41を回って上下逆になることで、図1の左上側のシュート39へ積載物1を落とす。シュート39へ積載物1を落としたフレックスベルト31は、図1のリターン側のベルト支持ローラ35上を走行してテールプーリ36を回って上下が元に戻り、再び投入口34から積載物1が投入され、この積載物1を載せてキャリア側のベルト支持ローラ35上を走行する。
【0004】
上述したようなフレックスベルトコンベアは、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−182838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のフレックスコンベアでは、次の問題がある。
(1)ベルト支持ローラ35で、積載物1の荷重を受けるので、ベルト支持ローラ35の磨耗や破損が起こり、ベルト支持ローラ35を交換する頻度が高い。
(2)複数のベルト支持ローラ35が、フレックスベルト31の走行方向に間隔をおいて設けられるので、積載物1の重さにより、フレックスベルト31は、ベルト支持ローラ35間で下方に撓む。そのため、フレックスベルト31は、各ベルト支持ローラ35を通過する際に該ベルト支持ローラ35に乗り上げ、これにより騒音と振動が発生する。
【0007】
そこで、本発明の目的は、フレックスベルトを用いたフレックスベルトコンベアにおいて、ベルト支持ローラの交換を不要とし、フレックスベルトがベルト支持ローラに乗り上げることで発生する騒音と振動を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によると、
無端状のフレックスベルトを空気圧で浮上走行させる空気浮上式フレックスベルトコンベアであって、
前記フレックスベルトは、積載物が載せられる積載面を有する底部と、フレックスベルトの幅方向の両側において前記積載面から上方側に突出した側壁部とを有し、
前記フレックスベルトの下方に配置され前記フレックスベルトの長手方向に延び、空圧で前記フレックスベルトを支持するベルト支持体を備え、
前記ベルト支持体には、前記フレックスベルトを浮上させるために前記フレックスベルトの下面へ空気を噴出する噴出孔が設けられる、ことを特徴とする空気浮上式フレックスベルトコンベアが提供される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によると、空気浮上式フレックスベルトコンベアは、前記フレックスベルトの幅方向中央側に向けて、前記底部における前記幅方向の端面と前記側壁部の外側面の一方または両方に空気を噴出する噴出装置を備える。
【0010】
また、本発明の好ましい実施形態によると、空気浮上式フレックスベルトコンベアは、キャリア側のベルト支持体の上面に潤滑液を供給する潤滑液供給装置を備える。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、空気浮上式フレックスベルトコンベアは、
前記フレックスベルトがヘッドプーリを回って上下面が逆になることで、該フレックスベルトから落下する積載物を受けるシュート(chute)と、
前記ヘッドプーリを回った直後のフレックスベルトにおける前記積載面、前記側壁部の内側面、および該積載面と該内側面との境界の少なくともいずれかに空気を噴出し、これにより、前記フレックスベルトに残留している積載物を前記シュートへ落下させるノズル装置と、を備える。
【0012】
好ましくは、ベルト支持体の全体の形状が平板状である。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によると、前記フレックスベルトで積載物を搬送する場合に、前記フレックスベルトを、ベルト支持体の噴出孔から噴出した空気の圧力により浮上走行させるので、ベルト支持ローラの交換を不要とし、フレックスベルトがベルト支持ローラに乗り上げることで発生する騒音と振動を回避できる。本発明の実施形態による他の効果は後述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のフレックスベルトコンベアを示す側面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】本発明の実施形態による空気浮上式フレックスベルトコンベアを示す側面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】図4のV−V矢視図である。
【図6】図3のVI―VI矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
図3と図4は、本発明の実施形態による空気浮上式フレックスベルトコンベア10を示す。図3は側面図であり、図4は、図3のIV−IV矢視図である。
【0017】
空気浮上式フレックスベルトコンベア10は、無端状のフレックスベルト3で積載物1を搬送する装置であり、フレックスベルト3、ベルト支持体5、空気流路形成体7、噴出装置9、潤滑液供給装置11、シュート13、ノズル装置15などを備える。なお、本願において、長手方向とは、フレックスベルト3の長手方向であり、幅方向とは、フレックスベルト3の幅方向である。
【0018】
フレックスベルト3は、積載物1が載せられる積載面17を有する底部3aと、フレックスベルト3の幅方向両側において積載面17から上方側に突出した側壁部3bとを有する。側壁部3bは、フレックスベルト3の長手方向全体にわたって設けられる。フレックスベルト3は、可撓性を有する。図5は、図4のV−V矢視図であり、側壁部3bを形状を示す。図5において、側壁部3bは、波形状を有する。これにより、フレックスベルト3が、ヘッドプーリ19とテールプーリ21を回る時に、この回転中心から遠い側壁部3bの外周部は、回転方向に伸長できる。
【0019】
ベルト支持体5として、キャリア側のベルト支持体5と、リターン側のベルト支持体5とが設けられる。キャリア側のベルト支持体5は、リターン側のベルト支持体5よりも上方に位置し、積載物1を上面に載せているフレックスベルト3との間に圧縮空気層を形成する。これにより、積載物1を載せたフレックスベルト3が、キャリア側のベルト支持体5から浮上する。一方、リターン側のベルト支持体5は、キャリア側のベルト支持体5よりも下方に位置し、積載物1をシュート13に排出した後のフレックスベルト3との間に圧縮空気層を形成する。これにより、積載物1を載せていないフレックスベルト3が、リターン側のベルト支持体5から浮上する。
【0020】
各ベルト支持体5(即ち、キャリア側とリターン側のベルト支持体5。以下同様)は、フレックスベルト3を浮上走行させるために設けられる。各ベルト支持体5は、フレックスベルト3の下方に配置されフレックスベルト3の長手方向に延び、空圧でフレックスベルト3を支持する。各ベルト支持体5には、フレックスベルト3を浮上させるためにフレックスベルト3の下面へ空気を噴出する噴出孔5aが設けられる。噴出孔5aは、ベルト支持体5を貫通する。また、噴出孔5aは、フレックスベルト3の長手方向と幅方向に間隔をおいて複数設けられる。好ましくは、加工を容易にするため、各ベルト支持体5の全体の形状が平板状である。
【0021】
空気流路形成体7は、キャリア側とリターン側のベルト支持体5の下面に取り付けられる。空気流路形成体7の内部は、配管8(図3において破線で示す)を通して送風機14から空気が供給される空気流路7aとなっている。この空気流路7aは、各噴出孔5aに直接連通している。従って、送風機14から空気流路7aに供給された空気は、噴出孔5aからフレックスベルト3の下面へ向けて噴出される。
【0022】
噴出装置9は、図4のように、フレックスベルト3の幅方向中央側に向けて、底部3aにおける前記幅方向の端面16と側壁部3bの外側面25の一方または両方(図4の例では、底部3aにおける前記幅方向の端面16)に空気を噴出する。これにより、フレックスベルト3の蛇行が防止される。このような噴出装置9が、図4のように、フレックスベルト3の幅方向両側に設けられる。また、噴出装置9は、当該幅方向両側において、フレックスベルト3の長手方向に間隔を置いて複数設けられる。好ましくは、この噴出装置9には、空気流路形成体7の空気流路7aに空気を供給する送風機14から空気が供給され、噴出装置9はこの空気を噴出する。
【0023】
潤滑液供給装置11は、キャリア側のベルト支持体5の上面に潤滑液を供給する。潤滑液は、好ましくは、水であるが、フレックスベルト3とベルト支持体5との摩擦を低減できれば水以外のもの(例えば潤滑油)であってもよい。潤滑液供給装置11は、図4の例では、ベルト支持体5の上面よりも上方から該上面へ潤滑液を供給している。このような潤滑液供給装置11が、図4のように、フレックスベルト3の幅方向両側に設けられる。また、潤滑液供給装置11は、当該幅方向両側において、フレックスベルト3の長手方向に間隔を置いて複数設けられる。好ましくは、潤滑液供給装置11は、ベルト支持体5の上面の大部分が潤滑液で濡れる程度に、潤滑液を該上面に供給する。従って、潤滑液により噴出孔5aからの空気噴出が妨げられることは、ほとんどない。
【0024】
シュート(chute)13は、フレックスベルト3がヘッドプーリ19を回って上下面が逆になることで、該フレックスベルト3から落下する積載物1を受ける。
【0025】
ノズル装置15は、ヘッドプーリ19を回った直後のフレックスベルト3における積載面17、側壁部3bの内側面23、および該積載面17と該内側面23との境界の少なくともいずれかに空気を噴出し、これにより、フレックスベルト3に残留している積載物1をシュート13へ落下させる。内側面23、または積載面17と該内側面23との境界には、積載物1が残留しやすいので、好ましくは、ノズル装置15は、内側面23または当該境界に空気を噴出する。図6は、図3のVI−VI矢視図である。図6では、ノズル装置15が、前記幅方向に間隔をおいて複数設けられている。好ましくは、このノズル装置15には、空気流路形成体7の空気流路7aに空気を供給する送風機14から空気が供給され、ノズル装置15はこの空気を噴出する。
【0026】
上述した空気浮上式フレックスベルトコンベア10の動作を説明する。空気浮上式フレックスベルトコンベア10は、キャリア側とリターン側のベルト支持体5から浮上した状態で、キャリア側とリターン側のベルト支持体5上を走行する。空気浮上式フレックスベルトコンベア10を浮上させるために、送風機14は、空気流路7aへ空気を供給する。空気流路7aに供給された空気は、キャリア側とリターン側のベルト支持体5に形成された噴出孔5aを通って、キャリア側とリターン側トラフ15とフレックスベルト3との間の空間に噴出される。これにより、この空間に圧縮空気の層が形成されることで、フレックスベルト3は、浮上した状態で走行する。
空気浮上式フレックスベルトコンベア10は、次のように積載物1を搬送する。ヘッドプーリ19とテールプーリ21にフレックスベルト3が掛けられ、ヘッドプーリ19またはテールプーリ21が回転駆動されることで、前記長手方向にフレックスベルト3が走行する。テールプーリ21側にある投入口27からフレックスベルト3上に積載物1が投入される。この積載物1は、フレックスベルト3の走行により、ヘッドプーリ19まで搬送され、ヘッドプーリ19を回る時に、フレックスベルト3の上下が反転することでシュート13内へ落とされる。ヘッドプーリ19を回った直後のフレックスベルト3の下面には、ノズル装置15から空気が噴出され、これにより、フレックスベルト3に残留した積載物1がシュート13内へ落下する。
【0027】
上述した本発明の実施形態によると、以下の効果(A)〜(D)が得られる。
【0028】
(A)フレックスベルト3で積載物1を搬送する場合に、フレックスベルト3を、ベルト支持体5の噴出孔5aから噴出した空気の圧力により浮上走行させるので、ベルト支持ローラの交換を不要とし、フレックスベルト3がベルト支持ローラに乗り上げることで発生する騒音と振動を回避できる。また、浮上走行によりフレックスベルト3の走行抵抗が低減されるので、ベルト走行に用いるモータの出力を下げられ、ベルト走行による騒音と振動が低減される。
【0029】
(B)噴出装置9が、フレックスベルト3の幅方向中央側に向けて、底部3aにおける前記幅方向の端面16と側壁部3bの外側面25の一方または両方に空気を噴出するので、フレックスベルト3の蛇行を防止できる。
【0030】
(C)キャリア側のベルト支持体5とリターン側のベルト支持体5の各々は、その全体が平板状に形成されるので、ベルト支持体5の加工が容易であり、ベルト支持体5を精度よく製作できる。
【0031】
(D)ノズル装置15が、フレックスベルト3における積載面17、側壁部3bの内側面23、または該積載面17と該内側面23との境界に空気を噴出し、これにより、フレックスベルト3に残留している積載物1をシュート13へ落下させるので、フレックスベルト3を清掃できる。
【0032】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0033】
例えば、図3では、空気浮上式フレックスベルトコンベア10は、水平に配置されていたが、その一部または全部を水平面に対し斜めに配置してもよい。この場合、積載物1を斜め下方から支える仕切板が、一方側の側壁部3bから他方側の側壁部3bまで幅方向に延びるように配置される(例えば、特許文献1に記載されている仕切板)。このような仕切板が、前記長手方向に間隔を置いて複数設けられる。
【0034】
キャリア側とリターン側のベルト支持体5のうち、リターン側のベルト支持体5をベルト支持ローラに代えてもよい。このベルト支持ローラは、支持フレックスベルト3に下方側から接触し、幅方向を向く軸の回りに回転可能であり、長手方向に間隔を置いて複数設けられる。この場合、他の構成は、上述の実施形態と同じであってよい。
【符号の説明】
【0035】
1 積載物、3 フレックスベルト、3a 底部、3b 側壁部、
5 ベルト支持体、5a 噴出孔、7 空気流路形成体、
7a 流路空間、8 配管、9 噴出装置、
10 空気浮上式フレックスベルトコンベア、11 潤滑液供給装置、
13 シュート、14 送風機、15 ノズル装置、17 積載面、
19 ヘッドプーリ、21 テールプーリ、
23 側壁部の内側面、25 側壁部の外側面、27 投入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のフレックスベルトを空気圧で浮上走行させる空気浮上式フレックスベルトコンベアであって、
前記フレックスベルトは、積載物が載せられる積載面を有する底部と、フレックスベルトの幅方向の両側において前記積載面から上方側に突出した側壁部とを有し、
前記フレックスベルトの下方に配置され前記フレックスベルトの長手方向に延び、空圧で前記フレックスベルトを支持するベルト支持体を備え、
前記ベルト支持体には、前記フレックスベルトを浮上させるために前記フレックスベルトの下面へ空気を噴出する噴出孔が設けられる、ことを特徴とする空気浮上式フレックスベルトコンベア。
【請求項2】
前記フレックスベルトの幅方向中央側に向けて、前記底部における前記幅方向の端面と前記側壁部の外側面の一方または両方に空気を噴出する噴出装置を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の空気浮上式フレックスベルトコンベア。
【請求項3】
キャリア側のベルト支持体の上面に潤滑液を供給する潤滑液供給装置を備える、ことを特徴とする請求項1または2に記載の空気浮上式フレックスベルトコンベア。
【請求項4】
前記フレックスベルトがヘッドプーリを回って上下面が逆になることで、該フレックスベルトから落下する積載物を受けるシュートと、
前記ヘッドプーリを回った直後のフレックスベルトにおける前記積載面、前記側壁部の内側面、および該積載面と該内側面との境界の少なくともいずれかに空気を噴出し、これにより、前記フレックスベルトに残留している積載物を前記シュートへ落下させるノズル装置と、を備える、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の空気浮上式フレックスベルトコンベア。
【請求項5】
ベルト支持体の全体の形状が平板状である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気浮上式フレックスベルトコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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