説明

空気清浄装置

【課題】集塵部と送風ファン(5)とを有する空気清浄装置(1)において、送風ファン(5)の薄型化を行うことにより、装置本体の薄型化を図る。
【解決手段】送風ファン(5)が、片面に膜状振動体を有する中空板状のファン本体(10)を備え、ファン本体(10)は、中空部に空気室が形成され、前面部に空気室へ連通する排気通路が形成され、背面部に空気室へ連通する吸気通路が形成される一方、膜状振動体の振動によって、吸気通路からファン本体(10)内の空気室に空気を取り込み、排気通路から空気室外に空気を排出するように構成され、吸気通路の開口部の入口が形成された面を吸気面とし、この吸気面が集塵部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵部と送風ファンとを有する空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内空気の浄化を行う空気清浄装置が知られている。例えば、特許文献1の空気清浄装置は、吸込口と吹出口とを有するケーシングと、該吸込口から吸い込まれて該吹出口から吹き出される空気流を発生させる送風ファンと、該空気流中の塵埃を捕集する集塵部とを備えている。
【0003】
上記ケーシングは直方体状に形成されている。そして、該ケーシングの上面に上記吸込口と上記吹出口とが長手方向に沿って並べて形成され、該ケーシングの内部に上記吸込口と上記吹出口とを連通する空気通路がU字状に形成されている。又、上記記吸込口の下流側であって該ケーシングの厚さ方向に向かって順に集塵フィルタ(集塵部)とシロッコファン(送風ファン)とが配置されている。又、上記吹出口の上流側であって該吹出口に対向するように脱臭フィルタが配置されている。
【特許文献1】特開平11−319445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気清浄装置において、集塵フィルタと送風ファンと脱臭フィルタとを上述したように配置することにより、該集塵フィルタとシロッコファンと脱臭フィルタとを直列に配置した場合に比べて、装置本体を薄型化することができる。しかしながら、上記空気清浄装置をシロッコファンの厚さ以上に薄型化するのは困難である。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、集塵部と送風ファンとを有する空気清浄装置において、送風ファンの薄型化を行うことにより、装置本体の薄型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、吸込口(7)と吹出口(8)とを有するケーシング(3)と、該吸込口(7)から吸い込まれて該吹出口(8)から吹き出される空気流を発生させる送風ファン(5)と、該空気流中の塵埃を捕集する集塵部を備えた空気清浄装置を前提としている。
【0007】
そして、上記空気清浄装置の送風ファン(5)は、片面に膜状振動体(19)を有する中空板状のファン本体(10)を備え、上記ファン本体(10)は、中空部に空気室(14)が形成され、前面部(11)に該空気室(14)へ連通する排気通路(15)が形成され、背面部(12)に該空気室(14)へ連通する吸気通路(16)が形成される一方、上記膜状振動体(19)の振動によって、吸気通路(16)からファン本体(10)内の空気室(14)に空気を取り込み、排気通路(15)から上記空気室(14)外に空気を排出するように構成され、上記吸気通路(16)の開口部の入口が形成された面を吸気面(16a)とし、該吸気面(16a)により上記集塵部が構成されていることを特徴としている。
【0008】
第1の発明では、上記空気清浄装置の送風ファン(5)が、板状に形成されたファン本体(10)を備えている。そして、このファン本体(10)は、従来のように回転軸周りにファンを回転させて空気流を発生させるのとは違い、板状の前面部(11)又は板状の背面部(12)に設けられた膜状振動体(19)を振動させることにより、空気流を発生することができる。したがって、上記送風ファン(5)を従来よりも薄くすることができる。
【0009】
又、板状に形成された上記背面部(12)を貫通するように上記吸気通路(16)を設けることができる。そして、この吸気通路(16)の入口側の開口部が形成された吸気面(16a)において、上記空気室(14)に取り込まれる空気が開口部を流れ、開口部以外の壁面で該空気中に含まれる塵埃を捕捉することができる。したがって、上記吸気面(16a)により上記集塵部を構成することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記吸気通路(16)は、上記背面部(12)に形成された複数の吸気孔で構成されていることを特徴としている。
【0011】
第2の発明では、上記吸気通路(16)を複数の吸気孔で構成することにより、上記吸気面(16a)をフィルター状に形成することができ、空気中に含まれる塵埃を捕捉しやすくできる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記吸気面(16a)に付着した塵埃を取り除く除塵体(34)と、該除塵体(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させる駆動機構(37a)とを備えていることを特徴としている。
【0013】
第3の発明では、上記駆動機構(37a)によって除塵体(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させることにより、吸気面(16a)に付着した塵埃を取り除くことができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、上記除塵体(34)の表面に静電気を誘起させる静電気発生部(35)と、上記吸気面(16a)の上流側で空気流中の塵埃を上記除塵体(34)に対して逆極性に帯電させる帯電手段(6)とを備えていることを特徴としている。
【0015】
第4の発明では、上記静電気発生部(35)により、上記除塵体(34)の表面に静電気を誘起させることができる。又、上記帯電手段(6)により、上記送風ファンに吸い込まれようとする空気に含まれている塵埃を積極的に、上記除塵体(34)とは逆の極性に帯電させることができる。これにより、静電気が誘起した除塵体(34)と塵埃との間にクーロン力が生じる。そして、このクーロン力により、上記除塵体(34)に塵埃を吸着させることができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、上記除塵体(34)を上記静電気発生部(35)に接続する第1状態と、上記除塵体(34)を接地する第2状態とに切換可能な切換手段(32)を備えていることを特徴としている。
【0017】
第5の発明では、上記切換手段(32)により、上記除塵体(34)の表面に静電気が誘起している第1状態と、誘起していない第2状態とに適宜に切り換えることができる。したがって、上記除塵体(34)に塵埃を吸着させる場合には第1状態にし、上記除塵体(34)に吸着した塵埃を取り除く場合には第2状態にすることが可能である。
【0018】
第6の発明は、第3から第5の何れか一つの発明において、上記除塵体(34)の表面には、塵埃を掻き取る掻取部材(41)が設けられていることを特徴としている。
【0019】
第6の発明では、上記除塵体(34)の表面に上記掻取部材(41)を設けることにより、静電気を誘起させた除塵体(34)を吸着面に沿うように移動させた場合に、該除塵体(34)では吸着しにくい大きな塵埃を該掻取部材(41)に当接させて、吸気面(16a)から取り除くことができる。
【0020】
第7の発明は、第3から第6の何れか一つの発明において、上記除塵体(34)は、上記吸気面(16a)の表面上にある第1位置と上記吸気面(16a)の表面上から外れた第2位置とに設定可能に構成され、上記駆動機構(37a)は、上記除塵体(34)を第1位置と第2位置との間で往復移動させるように構成され、上記除塵体(34)を第2位置で収容する収容部(36)と、上記除塵体(34)の表面に付着した塵埃を取り除く清掃手段(37b,39)と、該収容部(36)内に設けられて該清掃手段(37b,39)で取り除かれた塵埃を捕集する捕集部材(42)とを備えていることを特徴としている。
【0021】
第7の発明では、上記清掃手段(37b,39)により、上記除塵体(34)の表面に付着した塵埃を取り除くことができる。又、取り除いた塵埃を上記捕集部材(42)に捕集することができる。
【0022】
第8の発明は、第1から7の何れか一つの発明において、複数の上記ファン本体(10)が、該ファン本体(10)の送風方向に対して直交する方向へ並列に並べられていることを特徴としている。
【0023】
第8の発明では、複数のファン本体(10)を送風方向に対して直交する方向へ並列に並べて構成された送風ファンにおいても、上記駆動機構(37a)によって除塵体(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させることにより、吸気面(16a)に付着した塵埃を取り除くことができる。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、上記空気清浄装置の送風ファン(5)が、片面に膜状振動体(19)を有する中空板状のファン本体(10)を備えることにより、従来よりも上記送風ファン(5)を薄くすることができる。又、上記ファン本体(10)の吸気面(16a)により集塵部が構成されているので、送風ファン(5)と集塵部とを一体に構成できる。したがって、上記送風ファン(5)を備えた空気清浄装置の薄型化を図ることができる。
【0025】
また、上記第2の発明によれば、上記吸気通路(16)を複数の吸気孔で構成することにより、上記吸気面(16a)をフィルター状に形成することができる。したがって、空気中に含まれる塵埃が捕捉しやすくなるので、上記空気清浄装置の集塵能力を向上させることができる。
【0026】
また、上記第3の発明によれば、上記駆動機構(37a)によって除塵体(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させることにより、吸気面(16a)に付着した塵埃を取り除くことができる。これにより、塵埃が上記ファン本体(10)の吸気面(16a)に堆積するのを抑えることができ、該塵埃に起因する上記送風ファン(5)の送風量の低下を抑制することができる。
【0027】
また、上記第4の発明によれば、上記静電気発生部(35)により、上記除塵体(34)の表面に静電気を誘起させることができる。そして、表面に静電気が誘起した除塵体(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させることにより、該除塵体(34)と上記塵埃との間にクーロン力を発生させることができる。この発生したクーロン力により、吸気面(16a)に付着した塵埃を除塵体(34)に吸着させて、該吸気面(16a)から塵埃を取り除くことができる。これにより、塵埃が吸気面(16a)に堆積するのを抑えることができ、塵埃による送風量の低下を抑制することができる。
【0028】
また、上記第5の発明によれば、上記除塵体(34)に吸着した塵埃を取り除く場合には、上記切換手段(32)により、上記除塵体(34)の表面に静電気が誘起していない状態にすることができる。したがって、上記除塵体(34)と塵埃とがクーロン力で互いに引き付け合わないので、上記除塵体(34)の塵埃を簡単に取り除くことができる。
【0029】
また、上記第6の発明によれば、上記除塵体(34)の表面に上記掻取部材(41)を設けることにより、静電気を誘起させた除塵体(34)を吸着面に沿うように移動させた場合に、該除塵体(34)では吸着しにくい大きな塵埃を、吸気面(16a)から取り除くことができる。これにより、上記除塵体(34)の塵埃に対する除塵能力が向上するので、吸気面(16a)に付着した塵埃をさらに確実に取り除くことができる。
【0030】
また、上記第7の発明によれば、上記清掃手段(37b,39)により、上記除塵体(34)の表面に付着した塵埃を取り除くことができる。又、取り除いた塵埃を上記捕集部材(42)に捕集することができる。したがって、上記除塵体(34)に付着する塵埃の量が多くなり、該除塵体(34)の除塵能力が低下した場合であっても、上記清掃手段(37b,39)により、その低下した除塵能力を回復することができる。
【0031】
したがって、上記除塵体(34)の除塵能力を初期の状態に維持することができ、吸気面(16a)に付着した塵埃を長期的に効率よく取り除くことができる。又、取り除いた塵埃は上記捕集部材(42)に捕集されるので、手間をかけることなく、塵埃を捨てることができる。
【0032】
また、上記第8の発明によれば、複数のファン本体(10)を送風方向に対して直交する方向へ並列に並べて構成された送風ファンにおいても、上記駆動機構(37a)によって除塵体(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させることにより、吸気面(16a)に付着した塵埃を取り除くことができる。これにより、塵埃が上記ファン本体(10)の吸気面(16a)に堆積するのを抑えることができ、該塵埃に起因する上記送風ファンの送風量の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る空気清浄機(1)の概略図である。この空気清浄機(1)は、一般家庭及び店舗などに設置されて、室内の空気を浄化するためのものである。
【0035】
上記空気清浄機(1)は、吸込グリル(2)(図1の左側)と吹出グリル(4)(図1の右側)とが設けられたケーシング(3)を備え、該ケーシング(3)の内部には、吸込グリル(2)から吹出グリル(4)へ向かって順に、プレフィルタ(9)と荷電部(帯電手段)(6)と薄型送風ファン(送風ファン)(5)とが設けられている。
【0036】
〈プレフィルタ、荷電部〉
上記プレフィルタ(9)は、吸込グリル(2)からケーシング(3)内に吸い込まれた空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するためのフィルタを構成している。又、上記荷電部(6)は、ケーシング(3)内に吸込まれた空気中の塵埃を帯電させるものである。尚、該塵埃は、上記荷電部(6)により上記薄型送風ファン(5)に設けられた清掃棒(34)に対して逆極性に帯電するように構成されている。
【0037】
〈薄型送風ファン〉
図2は薄型送風ファン(5)の正面図、図3は側面図である。図2に示すように、上記薄型送風ファン(5)は、複数のファン本体(10)と支持部材(21)と清掃装置(30)とを備えている。
【0038】
−ファン本体−
図4(a)はファン本体(10)の正面図、図4(b)は背面図、図5は横断面図である。図4及び図5に示すように、上記ファン本体(10)は、厚みが1〜5mm程度で、例えば一辺が3cmの正方形の中空板状に形成され、前面を構成する前面部(11)と、背面を構成する背面部(12)と、側面を構成する側面部(13)とを備えている。
【0039】
上記前面部(11)と背面部(12)とは、共に厚みが薄い矩形状の平板である。側面部(13)は、外形が矩形状の枠部材である。前面部(11)と背面部(12)とは、所定の間隔を空けて、側面部(13)に連結されている。尚、前面部(11)は、外周が全周囲に亘って側面部(13)の一端側の内周に連結され、背面部(12)は、外周が全周囲に亘って側面部(13)の他端側の内周に連結されている。
【0040】
上記前面部(11)は、薄膜(18)を備えており、該薄膜(18)の中心部には、空気室(14)の空気をファン本体(10)の外部へ排出するための排気孔(15)が複数設けられている。尚、この複数の排気孔(15)が、排気通路(15)を構成している。
【0041】
一方、上記背面部(12)は、中心に円形状の開口部が形成された基板(20)と該基板(20)の開口部に取り付けられて支持された円形状の薄膜振動体(膜状振動体)(19)とを備えている。又、上記基板(20)には、ファン本体(10)の外部から空気室(14)へ空気を取り込むための吸気孔(16)が、該基板(20)を貫通して複数設けられている。ここで、上記各吸気孔(16)の開口面積は、上記プレフィルタ(9)に形成された各通気孔の開口面積よりも小さく形成されている。尚、この複数の吸気孔(16)が、吸気通路(16)を構成する一方、上記各吸気孔(16)の入口開口が形成された面が、吸気面(16a)を構成する。
【0042】
又、上記基板(20)の外面上であって、上記吸気面(16a)と上記薄膜振動体(19)との間には、円環状に形成された圧電素子(17)が取り付けられている。この圧電素子(17)は、例えば2枚の圧電部材を積層することによって構成されている。この圧電部材には、例えば圧電セラミックスが用いられている。圧電部材は、 電気エネルギーを機械エネルギーに変換する働きをもった部材である。なお、圧電素子(17)の構成は、この構成に限定されるものではない。
【0043】
上述したように、上記薄膜振動体(19)は、上記基板(20)の開口部に取り付けられており、上記圧電素子(17)の振動により該基板(20)を介して振動する。つまり、図5において、圧電素子(17)の外面(図5の下側の面)が縮んで、内面(図5の上側の面)が伸びるように圧電素子(17)に電圧を印加すると、図6に示すように圧電素子(17)と共に基板(20)が背面側に凸状に湾曲する。また、圧電素子(17)の外面が伸びて内面が縮むように圧電素子(17)に電圧を印加すると、図7に示すように、圧電素子(17)と共に基板(20)が前面側に凸状に湾曲する。そして、このような基板(20)の湾曲により、上記薄膜振動体(19)がファン本体(10)の厚さ方向に振動する。
【0044】
−支持部材−
上記支持部材(21)は、複数のファン本体(10)を、該ファン本体(10)の送風方向に対して直交する方向へ縦横に並べて固定するためのものである。具体的に、上記支持部材(21)は、図2に示すように、外周が矩形状に形成されるとともに、該支持部材(21)には複数の枠状部(22)が形成されている。そして、各枠状部(22)は、支持部材(21)の長手方向及び短手方向に対して格子状に配列されている。又、各枠状部(22)の内側開口部(23)の形状は、平面視でファン本体(10)と同一形状であり、この内側開口部(23)にファン本体(10)が嵌め込まれ固定されている。尚、上記ファン本体(10)は、該ファン本体(10)の前面側が上記吸込グリル(2)に対向し、該ファン本体(10)の背面側が上記吹出グリル(4)に対向する向きに配置される。
【0045】
−清掃装置−
上記清掃装置(30)は、図2又は図3に示すように、薄型送風ファン(5)の吸気側に配置されており、上記各ファン本体(10)の吸気面(16a)を清掃するための清掃棒(除塵体)(34)を備えている。この清掃棒(34)は細長い円柱状に形成され、その長さは支持部材(21)の幅よりも長くなっている。そして、この清掃棒(34)をスライド自在に保持する一対のガイドレール(38)が設けられている。
【0046】
上記一対のガイドレール(38)は直線状に形成されている。そして、上記一対のガイドレール(38)は、上記支持部材(21)の両側に位置するとともに、該支持部材(21)の厚さ方向に対して所定の間隔を空けて、該支持部材(21)と平行に配置されている。又、上記ガイドレール(38)の上端は支持部材(21)の上端に固定され、該ガイドレール(38)の下端は、支持部材(21)の下端側よりも下方に位置している。ここで、上記清掃棒(34)は、この一対のガイドレール(38)に跨って配置されている。そして、上記清掃装置(30)には、上記清掃棒(34)をガイドレール(38)のレール方向に沿って往復スライド移動させる第1駆動部(駆動機構)(37a)が設けられている。
【0047】
又、上記清掃装置(30)には、上記清掃棒(34)に電気的に接続された静電気発生部(35)が設けられている。上記静電気発生部(35)は、上記空気清浄機(1)に供給される電力を電源として静電気を発生し、発生した静電気は清掃棒(34)の表面に誘起される。そして、上記静電気発生部(35)と清掃棒(34)との間にはスイッチ(切換手段)(32)が設けられている。
【0048】
このスイッチ(32)は、図2に示すように、清掃棒(34)に接続された端子がA側の端子又はB側の端子に接触するように切換可能に構成されている。上記スイッチ(32)において、清掃棒(34)に接続された端子がA側の端子に接触するように切り換えられると、上記静電気発生部(35)と清掃棒(34)とが通電して該清掃棒(34)の表面に静電気が誘起される。一方、清掃棒(34)に接続された端子がB側の端子に接触するように切り換えられると、上記清掃棒(34)が接地して、該清掃棒(34)の表面に静電気が誘起されなくなる。
【0049】
又、上記清掃装置(30)は、上記清掃棒(34)に付着した塵埃を取り除くブラシ(清掃手段)(39)を備えている。このブラシ(39)は円環状に形成され、円環の内側に清掃棒(34)が挿入されている。尚、上記ブラシ(39)は、該ブラシ(39)の内周面と清掃棒(34)の外周面とは当接している。そして、上記清掃装置(30)には、上記ブラシ(39)を清掃棒(34)の長さ方向に沿って、往復スライドさせる第2駆動部(移動手段)(37b)が設けられている。
【0050】
又、上記清掃装置(30)において、上記支持部材(21)の下端には、上記第1駆動部(37a)によりガイドレール(37)の下端まで移動した清掃棒(34)を収容する収納庫(36)が設けられている。この収納庫(36)は上部が開口した箱状に形成されており、該収納庫(36)の底部には、上記第2駆動部(37b)によりブラシ(39)がスライドした際に、該ブラシ(39)により取り除かれた塵埃を捕集するための塵埃捕集受け(42)が設けられている。
【0051】
−運転動作−
次に、上記空気清浄機(1)の運転動作について説明する。上記空気清浄機(1)では、 上記薄型送風ファン(5)が駆動することにより行われる送風動作と、該送風動作により発生する空気流中の塵埃を除去する空気清浄動作とが行われる。以下、上記送風動作と空気清浄動作とについて説明する。
【0052】
〈送風動作〉
上記送風動作は、図6に示す上記ファン本体(10)の第1動作と図7に示す上記ファン本体(10)の第2動作とで構成されている。尚、図6と図7とは第1動作と第2動作とを誇張して表している。上記第1動作において、上記圧電素子(17)が空気室(14)の内方に向かって凸状に湾曲する。すると、同じように、上記背面部(12)の基板(21a)も空気室(14)の内方に向かって凸状に湾曲する。そして、この基板(21a)の湾曲により薄膜振動体(19)が空気室(14)の外方に振れる。上記薄膜振動体(19)が空気室(14)の外方に振れると、空気室(14)の容積が拡大し、上記吸込グリル(2)の外側の空気が、複数の吸気孔(16)を経て空気室(14)内に取り込まれる。
【0053】
第2動作において、上記圧電素子(17)が空気室(14)の外方に向かって凸状に湾曲する。すると、同じように、上記背面部(12)の基板(21a)も空気室(14)の外方に向かって凸状に湾曲する。そして、この基板(21a)の湾曲により薄膜振動体(19)が空気室(14)の内方に振れる。上記薄膜振動体(19)が空気室(14)の内方に振れると、空気室(14)の容積が縮小し、上記空気室(14)内の空気が、複数の排気孔(15)を経て上記吹出グリル(4)から吹き出される。
【0054】
このような第1動作と第2動作との繰り返しによって、上記薄型送風ファン(5)の送風動作が行われ、吸込グリル(2)から吸い込まれて上記吹出グリル(4)から吹き出される空気流が発生する。
【0055】
〈空気清浄動作〉
上記薄型送風ファン(5)の送風動作により、上記ケーシング(3)内に吸い込まれた空気は、上記プレフィルタ(9)と上記荷電部(6)とを通過する。ここで、上記空気に含まれる塵埃のうち、比較的大きな塵埃が上記プレフィルタ(9)で捕集され、上記プレフィルタ(9)で捕集できなかった比較的小さな塵埃が上記荷電部(6)により帯電する。そして、この帯電した塵埃は、上記荷電部(6)とを通過した空気とともに、上記各ファン本体(10)へ流れて、該ファン本体(10)の吸気面(16a)に付着する。この吸気面(16a)に付着した塵埃は、上記清掃装置(30)の清掃動作により除去される。
【0056】
上記清掃動作は、上記ファン本体(10)の吸気面(16a)に付着した塵埃を除去するための除塵動作と、上記清掃棒(34)に吸着した塵埃を除去するための集塵動作とで構成されている。ここで、上記集塵動作は、上記清掃棒(34)が上記収納庫(36)に収納されているときに行われる。
【0057】
尚、上記除塵動作を行う場合には、上記スイッチ(32)が切り換えられて、清掃棒(34)に接続された端子がA側の端子に接触し、該清掃棒(34)の表面には、静電気が誘起する。一方、上記集塵動作を行う場合には、上記スイッチ(32)が切り換えられて、清掃棒(34)に接続された端子がB側の端子に接触し、該清掃棒(34)の表面には、静電気が誘起しなくなる。
【0058】
上記除塵動作は、第1駆動部(37a)により、静電気が誘起された状態の清掃棒(34)を、ガイドレール(37)のレール方向に沿って図2の下側から上側、上側から下側へ往復スライドさせることにより行われる。
【0059】
具体的に、上記清掃棒(34)がスライドしながら吸気面(16a)に近づくと、図8(a)に示すように、吸気面(16a)に付着した塵埃が、清掃棒(34)に誘起された静電気の影響により、清掃棒(34)に引き寄せられて該清掃棒(34)の表面に吸着する。この結果、吸気面(16a)に付着した塵埃が除去される。そして、図8(b)に示すように、清掃棒(34)が、さらにスライドしながら、上側の吸気面(16a)に付着した塵埃を吸着していく。このように、上記除塵動作が行われることにより、複数のファン本体(10)の吸気面(16a)全体に付着した塵埃が除去される。
【0060】
一方、上記集塵動作は、静電気が誘起されていない状態の清掃棒(34)に対して、上記ブラシ(39)を該清掃棒(34)の両端間を長さ方向に沿って図2の左側から右側、右側から左側へ往復スライドさせることにより行われる。
【0061】
具体的に、上記ブラシ(39)がスライドすると、該ブラシ(39)の内周面が、上記清掃棒(34)の表面に当接しながら、上記清掃棒(34)の表面にある塵埃を掻き落とす。この結果、掻き落とされた塵埃は、上記収納庫(36)の底部に設置された塵埃捕集受け(42)に落ちて収集される。
【0062】
このような動作が繰り返されることにより、上記空気清浄機(1)の空気清浄動作が行われる。
【0063】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、上記空気清浄機(1)の薄型送風ファン(5)が、片面に膜状振動体(19)を有する中空板状のファン本体(10)を備えることにより、従来よりも上記薄型送風ファン(5)を薄くすることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、上記吸気通路(16)を複数の吸気孔(16)で構成することにより、上記ファン本体(10)の吸気面(16a)をフィルター状に形成することができる。したがって、上記吸気面(16a)において、空気中に含まれる塵埃が捕捉しやすくなるので、上記空気清浄装置(1)の集塵能力を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、上記第1駆動部(37a)によって、上記清掃棒(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させることができる。これにより、帯電した塵埃と上記清掃棒(34)との間に生じるクーロン力によって、帯電した塵埃を清掃棒(34)に吸着させることができ、上記吸気面(16a)から塵埃を取り除くことができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、上記ブラシ(39)により、上記清掃棒(34)の表面に付着した塵埃を取り除き、その取り除いた塵埃を上記塵埃捕集受け(42)に捕集することができる。これにより、上記清掃棒(34)において、塵埃の付着により低下した除塵能力を回復することができる。
【0067】
又、本実施形態によれば、上記ブラシ(39)で上記清掃棒(34)に吸着した塵埃を取り除く場合には、上記スイッチ(32)を切り換えて、上記清掃棒(34)の表面に静電気が誘起していない状態にすることができる。したがって、静電気が誘起している状態に比べて、上記清掃棒(34)に吸着した塵埃を容易に取り除くことができる。
【0068】
−実施形態の変形例−
図9は、実施形態の変形例に係る薄型送風ファン(60)の概略図である。上述した実施形態との違いは、清掃棒(34)の構成が異なる点である。以下では、実施形態と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0069】
図9に示すように、上記清掃棒(34)の表面には、植毛ブラシ(掻取部材)(41)が設けられている。これにより、静電気を誘起させた清掃棒(34)を吸着面に沿うように移動させた場合に、該清掃棒(34)では吸着しきれなかった塵埃を植毛ブラシ(41)に当接させて、吸気面(16a)から取り除くことができる。これにより、上記清掃棒(34)の除塵能力をさらに向上することができる。
【0070】
《その他の実施形態》
又、本実施形態では、上記収納庫(36)の底部には、塵埃捕集受け(42)が設けられているが、これに限定されず、上記収納庫(36)が塵埃捕集受け(42)を兼ねてもよい。
【0071】
又、本実施形態の変形例では、静電気が誘起可能な清掃棒(34)の表面に植毛ブラシ(41)を取り付けたが、これに限定される必要はなく、静電気が誘起可能な第1清掃棒と、静電気が誘起せずに表面に植毛ブラシを有する第2清掃棒とに分けてもよい。
【0072】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明は、集塵部と送風ファンとを有する空気清浄機について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄機の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る薄型送風ファンの正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る薄型送風ファンの側面図である。
【図4】(a)は本発明の実施形態に係るファン本体の正面図、(b)はファン本体の背面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るファン本体の横断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るファン本体の第1動作を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るファン本体の第2動作を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る薄型送風ファンの除塵動作を示す図であり、(a)は塵埃が清掃棒に吸着する前の状態図であり、(b)は塵埃が清掃棒に吸着した後の状態図である。
【図9】実施形態の変形例に係る薄型送風ファンの概略図である。
【符号の説明】
【0075】
1 空気清浄機
2 吸込グリル
3 ケーシング
4 吹出グリル
5 薄型送風ファン
6 帯電部(帯電手段)
10 ファン本体
17 圧電素子
19 薄膜振動体(膜状振動体)
32 スイッチ(切換手段)
34 清掃棒(除塵体)
30 清掃装置
35 静電気発生部
36 収納庫(収容部)
37a 第1駆動部(駆動機構)
37b 第2駆動部(移動手段)
41 植毛ブラシ(掻取部材)
42 塵埃捕集受け(捕集部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口(7)と吹出口(8)とを有するケーシング(3)と、該吸込口(7)から吸い込まれて該吹出口(8)から吹き出される空気流を発生させる送風ファン(5)と、該空気流中の塵埃を捕集する集塵部を備えた空気清浄装置であって、
上記送風ファン(5)は、片面に膜状振動体(19)を有する中空板状のファン本体(10)を備え、
上記ファン本体(10)は、中空部に空気室(14)が形成され、前面部(11)に該空気室(14)へ連通する排気通路(15)が形成され、背面部(12)に該空気室(14)へ連通する吸気通路(16)が形成される一方、上記膜状振動体(19)の振動によって、吸気通路(16)からファン本体(10)内の空気室(14)に空気を取り込み、排気通路(15)から上記空気室(14)外に空気を排出するように構成され、
上記吸気通路(16)の開口部の入口が形成された面を吸気面(16a)とし、該吸気面(16a)により上記集塵部が構成されていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記吸気通路(16)は、上記背面部(12)に形成された複数の吸気孔で構成されていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記吸気面(16a)に付着した塵埃を取り除く除塵体(34)と、該除塵体(34)を上記吸気面(16a)に沿うように移動させる駆動機構(37a)とを備えていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記除塵体(34)の表面に静電気を誘起させる静電気発生部(35)と、上記吸気面(16a)の上流側で空気流中の塵埃を上記除塵体(34)に対して逆極性に帯電させる帯電手段(6)とを備えていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項5】
請求項4おいて、
上記除塵体(34)を上記静電気発生部(35)に接続する第1状態と、上記除塵体(34)を接地する第2状態とに切換可能な切換手段(32)を備えていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項6】
請求項3から5の何れか一つにおいて、
上記除塵体(34)の表面には、塵埃を掻き取る掻取部材(41)が設けられていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項7】
請求項3から6の何れか一つにおいて、
上記除塵体(34)は、上記吸気面(16a)の表面上にある第1位置と上記吸気面(16a)の表面上から外れた第2位置とに設定可能に構成され、
上記駆動機構(37a)は、上記除塵体(34)を第1位置と第2位置との間で往復移動させるように構成され、
上記除塵体(34)を第2位置で収容する収容部(36)と、上記除塵体(34)の表面に付着した塵埃を取り除く清掃手段(37b,39)と、該収容部(36)内に設けられて該清掃手段(37b,39)で取り除かれた塵埃を捕集する捕集部材(42)とを備えていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つにおいて、
複数の上記ファン本体(10)が、該ファン本体(10)の送風方向に対して直交する方向へ並列に並べられていることを特徴とする空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−119362(P2009−119362A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296064(P2007−296064)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】