説明

空気調和システム

【課題】冷凍サイクルの効率を高めつつ、熱交換器の腐食を抑制することができる空気調和システムを提供する。
【解決手段】空気調和システム1は、室外熱交換器16と、室外熱交換器13に空気を送る送風機14と、室外熱交換器13に向かう空気に水を噴霧する噴霧機構20と、外気温度を検知する温度センサ18と、外気湿度を検知する湿度センサ19と、噴霧機構20から噴霧される水滴が室外熱交換器13に向かう空気中において蒸発するように、噴霧機構20から噴霧する水噴霧量を、温度センサ18により検知される外気温度、湿度センサ19により検知される外気湿度及び送風機14の動作状態に基づいて演算する噴霧量演算部16aと、噴霧量演算部16aにおいて演算された水噴霧量の水滴が噴霧機構20から噴霧されるように噴霧機構20を制御する噴霧機構制御部16bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噴霧ノズルから水を熱交換器に噴霧して熱交換器を冷却する噴霧機構を備えた空気調和機が知られている。この空気調和機では、噴霧された水により熱交換器が冷却されるので、冷凍サイクルの効率が高まり、空気調和機に必要とされる動力(消費電力)を削減することができる。
【0003】
例えば特許文献1には、熱交換器と、噴霧手段とを備えた空気調和機が開示されている。この空気調和機では、噴霧手段から噴霧された水滴のほとんど全てを熱交換器に付着させるために、噴霧手段と熱交換器との間に電圧を印加して水滴を熱交換器に引き寄せる技術を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−214578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の空気調和機のように熱交換器の表面に水滴が付着すると、熱交換器が腐食する場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷凍サイクルの効率を高めつつ、熱交換器の腐食を抑制することができる空気調和システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気調和システムは、室外熱交換器(13)と、前記室外熱交換器(13)への空気の流れを形成する送風機(14)と、前記室外熱交換器(13)に向かう空気に水を噴霧する噴霧機構(20)と、外気温度を検知する温度センサ(18)と、外気湿度を検知する湿度センサ(19)と、前記噴霧機構(20)から噴霧される水滴が前記室外熱交換器(13)に向かう空気中において蒸発するように、前記噴霧機構(20)から噴霧する水噴霧量を、前記温度センサ(18)により検知される外気温度、前記湿度センサ(19)により検知される外気湿度及び前記送風機(14)の動作状態に基づいて演算する噴霧量演算部(16a)と、前記噴霧量演算部(16a)において演算された前記水噴霧量の水滴が前記噴霧機構(20)から噴霧されるように前記噴霧機構(20)を制御する噴霧機構制御部(16b)と、を備えている。
【0008】
この構成では、噴霧機構(20)から噴霧される水滴を室外熱交換器(13)に向かう空気中において蒸発させ、そのときの潜熱(気化熱)によって空気を冷却する。これにより、水が噴霧されていない場合に比べて、熱交換器を通過する空気の温度が低くなるので、冷凍サイクルの効率が高まり、空気調和システムの冷房運転時において圧縮機などを駆動させるのに必要な動力を低減することができる。
【0009】
また、この構成では、従来のように噴霧された水滴が室外熱交換器(13)に付着するように大量に水滴を噴霧するのではなく、噴霧機構(20)から噴霧される水滴が室外熱交換器(13)に向かう空気中において蒸発する適量の水滴を噴霧するので、室外熱交換器(13)への水滴の付着が抑制される。これにより、室外熱交換器(13)の腐食が抑制される。具体的には次の通りである。
【0010】
噴霧機構(20)から噴霧された水滴は、外気温度が高いほど蒸発しやすく、外気湿度が低いほど蒸発しやすい。また、噴霧機構(20)から噴霧された水滴は、送風機(14)の動作状態(例えば送風機の回転数など)により定まる風量が多いほど蒸発しやすい。そこで、噴霧量演算部(16a)は、温度センサ(18)により検知される外気温度、湿度センサ(19)により検知される外気湿度及び送風機(14)の動作状態に基づいて、噴霧機構(20)から噴霧する適量の水噴霧量を演算する。こうして得られた水噴霧量の水滴が噴霧機構(20)から噴霧されるように、噴霧機構(20)が噴霧機構制御部(16b)によって制御される。
【0011】
以上のことから、この構成では、冷凍サイクルの効率を高めつつ、室外熱交換器(13)の腐食を抑制することができる。
【0012】
前記空気調和システムにおいて、取り込んだ外気の温度及び湿度の少なくとも一方を調節してからその外気を室内へ供給する外気処理機(4)をさらに備え、前記湿度センサ(19)は、前記外気処理機(4)に設けられているのが好ましい。
【0013】
この構成では、外気処理機(4)に設けられている湿度センサ(19)を水噴霧量の演算用途にも併用できるので、水噴霧量を演算するための湿度センサを別途用意する必要がない。これにより、システムを簡略化できるので、コストダウンを図ることができる。
【0014】
前記空気調和システムにおいて、前記噴霧量演算部(16a)は、前記噴霧機構(20)から噴霧される水滴が前記室外熱交換器(13)に向かう空気中において蒸発することによって当該空気中の相対湿度が所定の目標相対湿度に近づくように、前記噴霧機構(20)から噴霧する水噴霧量を、前記温度センサ(18)により検知される外気温度、前記湿度センサ(19)により検知される外気湿度及び前記送風機(14)の動作状態に基づいて演算するのが好ましい。
【0015】
この構成では、水噴霧量は、噴霧された水滴の蒸発によってその空気中の相対湿度が所定の目標相対湿度に近づくように噴霧量演算部(16a)によって決められる。したがって、この構成では、水噴霧量が少なくなり過ぎるのを抑制できるので、室外熱交換器(13)に向かう空気を冷却する効果が比較的高いレベルで安定して得られる。これにより、冷凍サイクルの効率をより高めることができる。
【0016】
前記空気調和システムでは、前記噴霧機構(20)が、水噴霧量を調節する弁を有し、前記噴霧機構制御部(16b)が、前記噴霧量演算部(16a)において演算される前記水噴霧量の水滴が前記噴霧機構(20)から噴霧されるように前記弁の開度を制御する形態が例示できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷凍サイクルの効率を高めつつ、熱交換器の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気調和システムを示す概略図である。
【図2】前記噴霧ノズルを示す断面図である。
【図3】前記空気調和システムの制御例を示すフローチャートである。
【図4】前記空気調和システムにおける噴霧量演算部による演算例を説明するためのグラフである。
【図5】前記空気調和システムにおける噴霧量演算部による他の演算例を説明するためのテーブルである。
【図6】前記空気調和システムにおける噴霧量演算部によるさらに他の演算例を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る空気調和システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る空気調和システム1について図面を参照して説明する。
【0020】
(空気調和システムの全体構造)
図1に示すように、空気調和システム1は、室外機2と、図略の室内機と、噴霧機構20とを備えている。室外機2と前記室内機とは、図略の冷媒配管によって接続されている。
【0021】
室外機2は、室外熱交換器13、室外熱交換器13への空気の流れを形成する送風機14、コントローラ16、圧縮機15、これらを収容するケース12などを備えている。また、室外機2は、外気温度を検知する温度センサ18と、外気湿度を検知する湿度センサ19とをさらに備えている。
【0022】
前記室内機は、図略の室内熱交換器、室内送風機などを備えている。また、膨張機構が前記室内機又は室外機2に設けられている。圧縮機15、室外熱交換器13、室内熱交換器及び膨張機構は、空気調和システム1の冷媒回路に設けられている。送風機14、圧縮機15、噴霧機構20、前記膨張機構、室内送風機などは、コントローラ16により制御される。
【0023】
コントローラ16は、噴霧機構20からの水噴霧量を調節するための噴霧量演算部16a及び噴霧機構制御部16bを備えている。これらの詳細については後述する。
【0024】
室外熱交換器13としては、例えばクロスフィンコイル式の熱交換器が挙げられるが、これに限定されない。クロスフィンコイル式の熱交換器は、伝熱管と、伝熱管が貫通する多数のプレートフィンとを備えており、伝熱管の内部を冷媒が流れ、プレートフィン同士の間を外気が流れる。
【0025】
室外熱交換器13は、ケース12の底板から上方に延びており、例えば平面視で略U字形状を有している。ケース12の4つの側板のうち、室外熱交換器13に対向する3つの側板には、外気をケース12内に吸い込むために図略の吸込口が設けられている。また、ケース12の天板にはケース12内の空気を外部に吹き出すための図略の吹出口が設けられている。
【0026】
送風機14としては、遠心送風機、軸流送風機、斜流送風機などを用いることができる。送風機14は、羽根車14aと、この羽根車14aを回転させる図略のモータとを備えている。送風機14は、ケース12内の上部に設けられており、前記吹出口の直下に位置している。
【0027】
温度センサ18は、ケース12内に吸い込まれる外気温度を検知することができる。湿度センサ19は、ケース12内に吸い込まれる外気湿度を検知することができる。温度センサ18及び湿度センサ19は、室外機2の前記吸込口の近傍に設けられている。
【0028】
空気調和システム1の運転時には、圧縮機15に動力が与えられることにより冷媒が前記冷媒回路内を循環するとともに、送風機14の前記モータに動力が与えられることにより羽根車14aが回転し、前記吸込口からケース12の内部に外気が吸い込まれる。ケース12内に吸い込まれた外気は、室外熱交換器13において冷媒と熱交換した後、前記吹出口を通じてケース12の外部に吹き出される。具体的には、例えば冷房運転時には、ケース12内に吸い込まれた外気は、凝縮器として機能する室外熱交換器13における前記伝熱管を介して、この伝熱管内を流れる高温高圧の冷媒と熱交換する。すなわち、外気は、室外熱交換器13の伝熱管及び冷媒を冷却する。これにより、前記伝熱管を流れる冷媒は、冷却されて凝縮する。
【0029】
(噴霧機構の構造)
次に、噴霧機構20について説明する。噴霧機構20は、冷房運転時において室外熱交換器16に向かう外気を冷却することができる。図1に示すように、噴霧機構20は、噴霧ノズル21と、水供給機構60と、エア供給機構70とを備えている。
【0030】
噴霧ノズル21は、ケース12の側板又はケース12に別途設けられた図略の支持部材によって支持されている。噴霧ノズル21は、送風機14の羽根車14aが回転することにより形成される気流の方向において、室外熱交換器16よりも上流側に位置している。
【0031】
本実施形態では、噴霧ノズル21は、水滴が室外熱交換器16に向かって噴霧されるように配置されている。噴霧ノズル21は、その軸方向が空気の流れ方向に沿う方向に向けられた状態で配置されている。噴霧ノズル21から噴霧された水滴は、放射状に拡散しながら前記気流の方向に沿って室外熱交換器16に向かって移動する。
【0032】
噴霧ノズル21の軸方向の向きは、図1に示す形態に限定されるものではなく、送風機14により形成される気流の方向に対して、例えば直交する方向であってもよく、また、傾斜する方向であってもよく、さらに、反対方向であってもよい。
【0033】
水供給機構60は、液送配管61と、開度調整可能な開閉弁62とを含む。液送配管61は、図略の水供給源と噴霧ノズル21とを接続している。コントローラ16によって開閉弁62の開度が調節されることにより、噴霧ノズル21に供給される水量が調節される。水供給源としては、例えば上水道などの水道が例示できる。この場合、開閉弁6が開状態にされると、水道圧によって水が噴霧ノズル21に送られる。
【0034】
開閉弁62に代えて例えば液送ポンプなどを用いて水を噴霧ノズル21に送ることもできる。また、水供給源としては、水が貯留されたタンクなどであってもよい。この場合には、液送配管61は、タンクに設けられた給水口に接続され、液送ポンプなどを用いてタンクの水が噴霧ノズル21に送られる。
【0035】
エア供給機構70は、例えば圧縮機などの気送ポンプ72と、気送配管71とを含む。気送配管71は、気送ポンプ72と噴霧ノズル21とを接続している。開閉弁62が開状態とされ、気送ポンプ72が駆動すると、噴霧ノズル21から水が噴霧される。
【0036】
次に、噴霧ノズル21の構造について説明する。本実施形態では、図2に示すように噴霧ノズル21として、水と空気により水滴が噴霧される二流体ノズルを用いている。噴霧ノズル21は、胴部10と、胴部10よりも下流側(水の流れ方向の下流側)に位置するオリフィス部50とを有している。胴部10は、水道などの図略の水供給源から胴部10に供給された水に微細な気泡を混入させる機能と、気泡が混入した水をオリフィス部50に案内する機能とを有している。オリフィス部50は、水滴を微細化して噴霧する機能を有している。
【0037】
胴部10は、径方向よりも軸方向の方が長い円柱状の外形を有している。胴部10は、エア案内管31と、エア案内管31の内側に配置された水案内管41とを有している。すなわち、エア案内管31の内部に水案内管41が挿入されている。エア案内管31の軸方向と水案内管41の軸方向とは一致している。また、これらの軸は、ほぼ同一直線状に位置している。エア案内管31の内周面と水案内管41の外周面とは互いに離隔している。
【0038】
水案内管41には、厚み方向に貫通する複数のエア導入孔43aが設けられている。エア案内管31には、エア流路F1に空気を供給するためのエア供給部32が設けられている。エア供給部32は、エア流路F1に連通する空気の供給孔32aが内部に形成された円筒形状を有している。このエア供給部32には、図1に示す気送配管71が接続される。
【0039】
エア案内管31の一端(下流側の端)と水案内管41の一端(下流側の端)とは、軸方向においてほぼ同じ位置にあり、水案内管41の他端(上流側の端)は、エア案内管31の他端(上流側の端)よりも上流側に位置している。すなわち、水案内管41の他端側の部位は、エア案内管31から上流側に突出している。エア流路F1の一端は、オリフィス部50によって塞がれており、エア流路F1の他端は、閉塞部材33によって塞がれている。
【0040】
胴部10は、エア案内部30と、水案内部40と、気泡形成部43とを有している。水案内部40は、水案内管41の内周面により区画される水流路F2を含む。エア案内部30は、水案内管41の外周面とエア案内管31の内周面とにより区画されるエア流路F1を含む。
【0041】
気泡形成部43は、複数のエア導入孔43aを含む。複数のエア導入孔43は、水案内管41の周方向及び軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。気泡形成部43は、水案内管41のうち、最上流に位置するエア導入孔43aから最下流に位置するエア導入孔43aまでの筒状の部位をいう。
【0042】
オリフィス部50は、水滴を微細化して噴霧するための噴霧部51と、エア流路F1の一端を塞ぐ閉塞部52とを有している。閉塞部52は、半径方向外側の環状の領域であり、噴霧部51は、閉塞部52よりも半径方向内側の領域である。閉塞部52は、エア案内管31の一端と水案内管41の一端に当接してエア流路F1の一端を塞ぐ内面(上流側の表面)52aを有している。
【0043】
噴霧部51は、水流路F2と噴霧ノズル21の外部とを連通する連通孔を有している。連通孔は、下流側に向かうにつれて内径が小さくなるテーパー面を有するテーパー孔51aと、テーパー孔51aの下流側に位置して水が噴霧される噴霧孔51bとを含む。
【0044】
テーパー面に沿ってテーパー孔51aを下流側に流れる水は、次第に流速が高められて噴霧孔51bに到達する。噴霧孔51bに到達した水は、多数の微細な気泡を含んでおり、これらの気泡とともに噴霧ノズル21の外部に噴霧される。多数の気泡を含む水が噴霧孔51bから噴霧されるとき又は噴霧孔51bから噴霧された後、内外の圧力差によって気泡が膨張してはじけて水滴が微細化される。
【0045】
水滴の平均粒径は、例えば50μm以下であるのが好ましく、25μm以下であるのがより好ましい。水滴の平均粒径は、噴霧孔51bの孔径、エア導入孔43aの孔径、水流路F2にかかる圧力、エア流路F1にかかる圧力などを調節することにより調整できる。
【0046】
(制御例)
次に、空気調和システム1の制御例について説明する。図3は、空気調和システム1の制御例を示すフローチャートである。噴霧機構20は、水滴の全部又はその大半が室外熱交換器16に到達する前に気化するように、コントローラ16によって制御される。具体的には次の通りである。
【0047】
空気調和システム1において、例えば冷房運転が開始されると(ステップS1)、コントローラ16は、温度センサ18により検知される外気温度、圧縮機15の吐出圧力などに基づいて、冷房運転の負荷が所定のレベルに達しているか否かを判断する(ステップS2)。冷房運転の負荷が所定のレベルに達している場合、コントローラ16は、噴霧機構20による水噴霧が必要であると判断する(ステップ2においてYES)。
【0048】
ついで、コントローラ16の噴霧量演算部16aは、噴霧機構20の噴霧ノズル21から噴霧する適量の水噴霧量Sを演算する(ステップS3)。具体的に、噴霧量演算部16aは、噴霧機構20から噴霧される水滴のほぼ全てが室外熱交換器13に向かう空気中において室外熱交換器13に到達する前に蒸発する噴霧量となるように、噴霧機構20から噴霧する水噴霧量を、温度センサ18により検知される外気温度、湿度センサ19により検知される外気湿度及び送風機14の動作状態に基づいて演算する。この制御例では、送風機14の動作状態として送風機14の回転数を用いており、外気湿度として相対湿度を用いている。以下、演算過程の一例を挙げる。
【0049】
図4は、空気調和システム1における噴霧量演算部16aによる演算例を説明するためのグラフである。このグラフに示される外気温度Tの関数は、本実施形態における噴霧ノズル21の特性、噴霧ノズル21と熱交換器13との位置関係などの具体的な構成を考慮に入れて実験、シミュレーションなどにより得ることができる。
【0050】
このグラフに示される外気温度Tの関数は、例えば次の式(1)によって表される。そして、噴霧量演算部16aは、式(1)から得られた係数Aと、外気湿度H及び送風機14の回転数Rとから水噴霧量Sを算出する(式(2))。
【0051】
係数A=aT+bT+c ・・・(1)
水噴霧量S=A×(1−H)×R ・・・(2)
T:外気温度
H:外気湿度(相対湿度:%)
R:送風機の回転数
【0052】
ついで、コントローラ16の噴霧機構制御部16bは、噴霧量演算部16aにおいて演算された水噴霧量Sの水滴が噴霧機構20から噴霧されるように噴霧機構20を制御して水噴霧を開始する(ステップS4)。具体的に、噴霧機構制御部16bは、噴霧ノズル21から噴霧される量が水噴霧量Sとなるように開閉弁62の開度を調節する。本実施形態では、噴霧ノズル21が二流体ノズルであるので、ステップS4において、噴霧機構制御部16bは、気送ポンプ72を制御して噴霧ノズル21に送られる空気量も調節する。
【0053】
ついで、コントローラ16は、水噴霧を継続する必要があるか否かを判断する(ステップS5)。この判断基準としては、例えば水噴霧が開始されたときからの経過時間が所定の時間に達したことが挙げられる。また、例えば温度センサ18により検知される外気温度、圧縮機15の吐出圧力などに基づいて、冷房運転の負荷が所定のレベルを下回ったことを前記判断基準としてもよい。
【0054】
水噴霧の継続が不要である場合、噴霧機構制御部16bは、開閉弁62を閉じて噴霧ノズル21からの水噴霧を停止する(ステップS6)。また、噴霧機構制御部16bは、気送ポンプ72を制御して噴霧ノズル21への空気送りを停止する。
【0055】
水噴霧の継続が必要である場合、コントローラ16は、ステップS3に戻り、上述したステップS3〜S5の制御を繰り返す。すなわち、ステップS3において噴霧量演算部16aが再度水噴霧量Sを演算し、これに基づいてステップS4において噴霧機構制御部16bが開閉弁62の開度などを調節する。そして、ステップS5において、水噴霧の継続が必要か否かの判断が再度行われる。
【0056】
このように図3に示す制御例では、水噴霧量Sの演算、開閉弁62の開度調節を繰り返し実行しているが、これに限定されない。例えば、水噴霧の開始から水噴霧の停止までの間、水噴霧量Sは、一定であってもよい。この場合、ステップS5において水噴霧の継続が必要と判断されると(ステップS5においてYES)、図3に示すようにステップS3に戻るのではなく、ステップS5の判断が繰り返し実行される。
【0057】
図5は、空気調和システム1における噴霧量演算部16aによる他の演算例を説明するためのテーブルである。この演算例では、図5に示すテーブルのように外気温度Tと係数Aとが予め関連付けられている。このテーブルに示すデータは、噴霧ノズル21の特性、噴霧ノズル21と熱交換器13との位置関係などの具体的な構成を考慮に入れて実験、シミュレーションなどにより得ることができ、コントローラ16のメモリに予め記憶されている。
【0058】
噴霧量演算部16aは、温度センサ18により検知される外気温度Tと、図5に示すテーブルとに基づいて係数Aが得られると、例えば上述した式(2)に基づいて水噴霧量Sを演算する。その他の制御の流れは、上述した通りであるので説明を省略する。
【0059】
図6は、空気調和システム1における噴霧量演算部16aによるさらに他の演算例を説明するためのグラフ(空気線図)である。この演算例では、空気調和システム1において、噴霧量演算部16aは、目標相対湿度(図6において一点鎖線で示す相対湿度)を基準に水噴霧量Sを演算する。具体的には次の通りである。
【0060】
図6に示す状態Aは、水噴霧前における室外熱交換器13に向かう空気の状態を示している。噴霧量演算部16aは、水噴霧前の状態Aから水噴霧後に空気が状態B(水噴霧することにより室外熱交換器13に向かう空気の相対湿度が目標相対湿度まで上昇した状態)に近づくように、水噴霧量Sを演算する。水噴霧量Sは、上述したように温度センサ18により検知される外気温度T、湿度センサ19により検知される外気湿度H及び送風機14の動作状態に基づいて演算される。
【0061】
目標相対湿度は、噴霧ノズル21の特性、噴霧ノズル21と熱交換器13との位置関係などの具体的な構成を考慮に入れて、100%未満で、かつ極力大きな値に設定される(例えば70〜80%程度)。このように目標相対湿度が100%未満に設定されることにより、噴霧機構20から噴霧される水滴は、室外熱交換器13に向かう空気中において室外熱交換器13に到達する前に蒸発する。
【0062】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る空気調和システム1を示す概略図である。第2実施形態にかかる空気調和システム1は、外気処理機4をさらに備えており、この外気処理機4に湿度センサ19が設けられている点が第1実施形態と異なっている。この空気調和システム1では、室外機2が湿度センサ19を備えていない点以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。部屋5の天井には、室内機3と外気処理機4が設けられている。室内機3は、図略の冷媒配管によって室外機2と接続されている。
【0063】
外気処理機4は、その内部に取り込んだ外気の温度及び湿度の少なくとも一方を調節してからその外気を室内へ供給する。具体的に、外気処理機4としては、例えば冷房除湿運転及び暖房加湿運転が可能な調湿外気処理機が挙げられる。また、他の外気処理機4としては、例えば外気処理エアコン、全熱交換器を有する換気装置などが挙げられる。
【0064】
調湿外気処理機は、冷媒回路に設けられた図略の一対の吸着熱交換器を備えている。各吸着熱交換器は、例えば熱交換器に吸着剤が塗布された構造を有している。冷房・除湿運転時には、外気が一方の吸着熱交換器を通過するときに、外気中の水分が吸着されるとともに外気が冷却される。この吸着熱交換器が水分を十分に吸着すると、他方の吸着熱交換器が用いられるように冷媒回路と空気流路が切り換えられる。そして、この他方の吸着熱交換器を外気が通過するときに、外気中の水分が吸着されるとともに外気が冷却される。また、水分が吸着された前記一方の吸着熱交換器においては、室内の空気が外に排出される際に排気とともに水分が室外へ放出される。これにより、前記一方の吸着熱交換器の吸着能力が再生される。このような切り換えを行うことにより、連続的に除湿を行うことができる。
【0065】
外気処理エアコンは、例えば送風機、熱交換器、加湿器などを備えており、外気を冷却又は加熱処理して室内に取り入れる。これにより、室内機3のみで空調する場合に比べて負荷が低減される。また、暖房時には加湿により室内環境をさらに快適にすることができる。
【0066】
換気装置は、室内の空気を換気する換気運転を行う。この換気装置は、屋外の空気を供給空気として室内に供給する給気ファンと、室内の空気を排出空気として屋外に排出する排気ファンと、上記供給空気が流れる給気流路及び上記排出空気が流れる排気流路を有する全熱交換器とを備えている。
【0067】
上記のように例示した各外気処理機4は、湿度センサ19を備えている。湿度センサ19は、外気処理機4に吸い込まれた外気の湿度(相対湿度)を検知する。この湿度センサ19により検知された外気湿度は、上述したように噴霧機構20の噴霧ノズル21から噴霧される水噴霧量Sの演算に用いられる。
【0068】
以上説明したように、各実施形態では、噴霧機構20から噴霧される水滴を室外熱交換器13に向かう空気中において蒸発させ、そのときの潜熱(気化熱)によって空気を冷却する。これにより、水が噴霧されていない場合に比べて、熱交換器を通過する空気の温度が低くなるので、冷凍サイクルの効率が高まり、空気調和システムの冷房運転時において圧縮機などを駆動させるのに必要な動力を低減することができる。また、従来のように過剰に水噴霧しないので、水資源を節約することができる。
【0069】
また、各実施形態では、従来のように室外熱交換器に水滴を付着させるのではなく、噴霧機構20から噴霧される水滴を室外熱交換器13に向かう空気中において蒸発させるので、室外熱交換器13の腐食を抑制することができる。
【0070】
また、水噴霧量Sが、噴霧された水滴の蒸発によってその空気中の相対湿度が所定の目標相対湿度に近づくように噴霧量演算部16aによって決められる場合には、水噴霧量Sが少なくなり過ぎるのを抑制できるので、室外熱交換器13に向かう空気を冷却する効果が比較的高いレベルで安定して得られる。これにより、冷凍サイクルの効率をより高めることができる。
【0071】
第2実施形態では、外気処理機4に設けられている湿度センサ19を水噴霧量の演算用途にも併用できるので、水噴霧量の演算用の湿度センサを別途用意する必要がない。これにより、システムを簡略化できるので、コストダウンを図ることができる。
【0072】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0073】
例えば、前記実施形態では、噴霧ノズル21として噴霧孔よりも上流側において予め水に空気を混入させる二流体ノズルを用いる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、噴霧ノズルの噴霧孔において空気と水を同時に噴射する二流体ノズルや、空気を利用しない噴霧ノズルなどを用いることもできる。
【0074】
また、前記実施形態では、送風機14の動作状態として送風機14の回転数Rを用いる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、室外機2のケース2内に吸い込まれる風量を測定し、この風量を送風機14の動作状態として用いることもできる。なお、送風機14がACモータに接続されている場合であっても、ファンタップ(例えば、HIGH,MIDDLE,LOWの3段階)によってそのときの回転数を得ることができる。
【0075】
また、前記実施形態では、図5に示すテーブルにおいて、外気温度Tが0〜35℃まで1℃刻みで対応する係数Aが設定されている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、外気温度が高温領域(例えば35℃以上)の場合には、空気調和システム1の冷房時の負荷が高くなるので、例えば1℃刻みなどで係数Aとの対応付けが細かく設定され、低温領域では、例えば3℃刻みなどで係数Aとの対応付けが粗く設定されていてもよい。
【0076】
また、前記実施形態では、温度センサ18及び湿度センサ19を室外機2の吸込口近傍でケース12の外に設ける場合を例示したが、これに限定されず、外気温度、外気湿度を検知可能な位置であればよく、例えばケース12内などの他の場所であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 空気調和システム
2 室外機
3 室内機
4 外気処理機
12 ケース
13 室外熱交換器
14 送風機
15 圧縮機
16 コントローラ
16a 噴霧量演算部
16b 噴霧機構制御部
18 温度センサ
19 湿度センサ
20 噴霧機構
21 噴霧ノズル
60 水供給機構
70 エア供給機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外熱交換器(13)と、
前記室外熱交換器(13)への空気の流れを形成する送風機(14)と、
前記室外熱交換器(13)に向かう空気に水を噴霧する噴霧機構(20)と、
外気温度を検知する温度センサ(18)と、
外気湿度を検知する湿度センサ(19)と、
前記噴霧機構(20)から噴霧される水滴が前記室外熱交換器(13)に向かう空気中において蒸発するように、前記噴霧機構(20)から噴霧する水噴霧量を、前記温度センサ(18)により検知される外気温度、前記湿度センサ(19)により検知される外気湿度及び前記送風機(14)の動作状態に基づいて演算する噴霧量演算部(16a)と、
前記噴霧量演算部(16a)において演算された前記水噴霧量の水滴が前記噴霧機構(20)から噴霧されるように前記噴霧機構(20)を制御する噴霧機構制御部(16b)と、を備えている空気調和システム。
【請求項2】
取り込んだ外気の温度及び湿度の少なくとも一方を調節してからその外気を室内へ供給する外気処理機(4)をさらに備え、
前記湿度センサ(19)は、前記外気処理機(4)に設けられている、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記噴霧量演算部(16a)は、前記噴霧機構(20)から噴霧される水滴が前記室外熱交換器(13)に向かう空気中において蒸発することによって当該空気中の相対湿度が所定の目標相対湿度に近づくように、前記噴霧機構(20)から噴霧する水噴霧量を、前記温度センサ(18)により検知される外気温度、前記湿度センサ(19)により検知される外気湿度及び前記送風機(14)の動作状態に基づいて演算する、請求項1又は2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記噴霧機構(20)は、水噴霧量を調節する弁を有し、
前記噴霧機構制御部(16b)は、前記噴霧量演算部(16a)において演算される前記水噴霧量の水滴が前記噴霧機構(20)から噴霧されるように前記弁の開度を制御する、1〜3のいずれか1項に記載の空気調和システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104598(P2013−104598A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247899(P2011−247899)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】