説明

空気調和機の改造方法

【課題】 既存の空調機の大規模な改造を要することなく、化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストやCO2排出量を抑制することが可能な空気調和機の改造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる空気調和機の改造方法の代表的な構成は、予熱コイル108と、蒸気式加湿器114と、冷却コイル110と、再熱コイル112とを少なくとも備える外気処理用の空気調和機(既存空調機100)の改造方法であって、温水コイル308と、冷却コイル310と、気化式加湿器314とを有する外気調和機(外調機300)を、空気調和機の通風路の上流側に接続し、冷却コイル110に冷水を供給する冷水供給配管106aに加えて、ヒートポンプ306からの温水を冷却コイル110に供給する温水供給配管306aを追加し、冷却コイル110に対してそれらの配管を択一的に連通させる切替弁を追加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を処理し、それを室内空間に供給する外気処理用の空気調和機の改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームや工場の生産ライン等では、室内空間の温度および湿度を所定温度および所定湿度に保つために大型の空気調和機(外気のみを処理して送風する空調機は外気調和機と称されることもある。以下、空調機と称する。)が設置されている。空調機は、それに供給された空気(外気)の温度および湿度を、所定温度および所定湿度に調節し、調節後の空気(処理空気)を室内空間に送出する。これにより、室内空間の温度および湿度が所定温度および所定湿度に保たれる。
【0003】
上記の空調機の構成としては、例えば特許文献1に開示されている空調機のように、冷水などの冷却媒体を内部に循環させて空気の冷却を行う空気冷却器(冷却コイルとも称される)や、蒸気を噴霧して空気の加湿を行う蒸気噴霧装置(蒸気式加湿器とも称される)、蒸気によって加熱されるコイルやフィンを有しそれらによって空気を加熱する空気加熱器(加熱コイルとも称される)を備える構成が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−42971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に例示されるような従来の空調機では、蒸気噴霧装置や空気加熱器において用いられる蒸気は、ボイラ等の燃焼機関において化石燃料を燃焼させて生成される。このため、蒸気を生成するための化石燃料に莫大なランニングコストを要しており、その削減が課題となっていた。またエネルギの有効利用(省エネルギ)、および温室効果ガスであるCO2排出量削減の観点においても化石燃料の使用量削減が望まれている。
【0006】
そこで、化石燃料の使用量削減、およびそれに要するランニングコスト(すなわち蒸気に要するランニングコスト)の削減を図るために、ボイラレスの空調機を導入することが考えられる。しかしながら、既存の空調機やボイラを撤去して新規の空調機を導入するとなると莫大な費用や大規模な工事が必要になってしまうため、既存の空調機の大規模な改造を要することなく対応したいという要望があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、既存の空調機の大規模な改造を要することなく、蒸気の使用量ひいては化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能な空気調和機の改造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる空気調和機の改造方法の代表的な構成は、ケーシング内に設けられた通風路に、蒸気を熱源として空気の加熱を行う予熱コイルと、蒸気を用いて空気の加湿を行う蒸気式加湿器と、冷水を用いて空気の冷却を行う冷却コイルと、蒸気を熱源として空気の再加熱を行う再熱コイルとを少なくとも備える外気処理用の空気調和機の改造方法であって、ヒートポンプによって生成した温水を用いて空気の加熱を行う温水コイルと、冷水を用いて空気の冷却を行う冷却コイルと、水を気化させて空気の加湿を行う気化式加湿器とを有する外気調和機を、空気調和機の通風路の上流側に接続し、空気調和機の冷却コイルに冷水を供給する冷水供給配管に加えて、ヒートポンプによって生成した温水を冷却コイルに供給する温水供給配管を追加し、冷却コイルに対して冷水供給配管または温水供給配管を択一的に連通させる切替弁を追加することを特徴とする。
【0009】
上記構成のように既存の空気調和機(以下、既存空調機と称する。)の上流側に外気調和機を接続することにより、既存空調機の予熱コイルに替えて外気調和機の温水コイルにおいてヒートポンプによって生成した温水を用いて空気の加熱を行い、且つ既存空調機の蒸気式加湿器に替えて外気調和機の気化式加湿器において空気の加湿を行うことが可能となる。そして、ヒートポンプによって生成した温水を温水供給配管を通じて既存空調機の冷却コイルに供給することにより、かかる冷却コイルを、蒸気を用いずに空気の加熱を行う加熱コイル(再熱コイル)としても利用することが可能となる。すなわち、切換弁によって、冷水供給配管からの冷水の供給または温水供給配管からの温水の供給を切り換えれば、既存空調機に設けられた冷却コイルを冷却加熱コイルとして利用することができ、既存空調機の有効活用が図れる。これらにより、既存空調機の予熱コイル、再熱コイルおよび蒸気式加湿器を稼動させる必要がなくなるため、それらへの蒸気の供給が不要となり、ボイラにおける化石燃料の消費を抑制することができる。したがって、既存空調機の大規模な改造を要することなく、蒸気の使用量ひいては化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能となる。
【0010】
上記の空気調和機は複数台並設されていて、外気調和機は複数の空気調和機に接続されているとよい。かかる構成によれば、外気の処理を外気調和機において一括して行い、処理された外気(空気)を既存空調機の冷却コイル(冷却加熱コイル)において冷水または温水を用いて冷却または加熱し、温度の微調整を行うことができる。これにより、既存空調機が複数台並設されている場合であっても、個々の大規模な改造を要することなく、化石燃料の使用量の削減ひいてはランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既存の空調機の大規模な改造を要することなく、蒸気の使用量ひいては化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能な空気調和機の改造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態にかかる改造方法の適用対象となる空調機の構成を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる改造方法が適用された空調機の構成を示す図である。
【図3】本実施形態にかかる改造方法が適用された空調機の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
以下、理解を容易にするために、本実施形態にかかる空調機の改造方法の適用対象となる空調機の構成について詳述した後に、かかる空調機の改造方法について説明する。なお、空調機による空調の対象(室内空間)としては、クリーンルームを例示して説明するが、これに限定するものではない。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる改造方法の適用対象となる既存空調機の構成を示す図である。図1に示すように、既存空調機100のケーシング102には、上流端に外気口102aが、下流端に給気口102bが形成されている。またケーシング102の内部には通風路102cが形成されている。外気口102aから既存空調機100に供給された外気(OA:Out side Air)すなわち空気の温度および湿度は、通風路102cを通過しながら所定温度および所定湿度に調整される。その後、空気は処理空気すなわち供給空気(SA:Supply Air)として給気口102bから所定流速で室内空間(クリーンルーム)に供給される。すなわち、図1に示す既存空調機100は外気処理用の空調機である。
【0016】
既存空調機100において通風路102cの最上流側にはプレフィルタや中性能フィルタが設けられている(ともに不図示)。これにより、プレフィルタを用いて既存空調機100に供給された空気に含まれる粒径の大きい、すなわち粗い塵埃を空気中から除去することができ、プレフィルタよりも目の細かい中性能フィルタを用いてプレフィルタを通過した微細な塵埃を空気中から除去することができる。
【0017】
中性能フィルタの下流側には予熱コイル108が設けられている。予熱コイル108は、蒸気供給配管104aを通じてボイラ104から蒸気が供給され、かかる蒸気を熱源として(直接的に)用いて空気を加熱(予熱)する。これにより、既存空調機100に供給された空気の温度を上昇させる。
【0018】
予熱コイル108の下流側には冷却コイル110が設けられている。冷却コイル110は、空冷チラー106によって生成された冷水が冷水供給配管106aを通じて供給され、かかる冷水を用いて空気を冷却する。これにより、既存空調機100に供給された空気の温度を低下させ所定温度に調節することが可能となる。また空気の温度を低下させることにより、空気の飽和水蒸気圧を低下させて除湿を行い、空気の湿度を所定湿度に調節することが可能となる。一方、冷却コイル110において空気の冷却に用いられることにより温度が上昇した冷水(水)は、冷水戻り配管106bを通じて空冷チラー106で再度冷却され再利用可能となる。
【0019】
冷却コイル110の下流側には再熱コイル112が設けられている。再熱コイル112は、予熱コイル108と同様に蒸気供給配管104aを通じてボイラ104から蒸気が供給され、かかる蒸気を熱源として(直接的に)用いて空気を加熱(再加熱)する。これにより、冷却コイル110における除湿のために温度が低下した空気を再加熱し、所定温度に調整することが可能となる。
【0020】
再熱コイル112の下流側には蒸気式加湿器114が設けられている。蒸気式加湿器114は、蒸気供給配管104aを通じてボイラ104から蒸気が供給され、かかる蒸気を用いて空気を加湿する。これにより、既存空調機100に供給された空気の湿度を上昇させることが可能となる。
【0021】
なお、本実施形態においては、蒸気式加湿器114を再熱コイル112の後段に1つ配置する構成としたが、これに限定するものではない。蒸気式加湿器114は、例えば予熱コイル108の後段等、任意の位置に設けることが可能である。蒸気式加湿器114の設置数についても、例えば予熱コイル108の後段と再熱コイル112の後段というように、複数備える構成としてもよい。
【0022】
また本実施形態では、予熱コイル108、再熱コイル112および蒸気式加湿器114のすべてに、同一のボイラ104から蒸気を供給する構成とした。しかし、これに限定されず、それらには異なる複数のボイラから蒸気を供給する構成としてもよい。例えば、クリーン蒸気を生成するボイラ(不図示)を別途設け、蒸気式加湿器114にはかかるボイラからのクリーン蒸気を供給し、予熱コイル108および再熱コイル112にはボイラ104からの蒸気を供給する構成としてもよい。
【0023】
上述した蒸気式加湿器114の下流側には送風機116が設けられている。送風機116は、予熱コイル108、冷却コイル110、再熱コイル112ならびに蒸気式加湿器114を通過することにより温度および湿度が調節された空気、すなわち既存空調機100において所定温度および所定湿度となった空気(処理空気)を給気口102bを通じて室内空間に送出する。なお、図示は省略したが、送風機116の下流側にはケミカルフィルタおよびHEPAフィルタが設けられていて、それらにより、処理空気に含まれる化学物質の除去や、粒径が極めて小さい微細な粉塵の捕捉が行われる。
【0024】
以上、本実施形態にかかる改造方法の適用対象となる既存空調機100の構成について説明した。上述したように、既存空調機100では、予熱コイル108、再熱コイル112および蒸気式加湿器114において、ボイラ104において生成した蒸気を用いている。このため、ボイラ104において蒸気を生成するために燃焼させる化石燃料に莫大なランニングコストを要しており、その削減が課題となっていた。またエネルギの有効利用(省エネルギ)、および温室効果ガスであるCO2排出量削減の観点においても化石燃料の使用量削減が望まれていた。しかしながら、それらの課題を解決するために、ボイラレスの空調機を導入するとなると、その設備費や既存の既存空調機100やボイラ104の撤去費に莫大な費用がかかり、且つ大規模な工事が必要になってしまう。
【0025】
そこで、本実施形態では、既存の既存空調機100の大規模な改造を要することなく、蒸気の使用量、ひいては化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能な空気調和機の改造方法について説明する。
【0026】
図2は、本実施形態にかかる改造方法が適用された空調機200の構成を示す図である。図2に示す空調機200のように、本実施形態にかかる改造方法では、まず既存空調機100の通風路102cの上流側に外気調和機(以下、外調機300と称する。)を接続する。
【0027】
外調機300のケーシング302には、既存空調機100と同様に上流端に外気口302a、下流端に給気口302b、内部に通風路302cが形成されている。外調機300において通風路302cの最上流側にはプレフィルタ304aや中性能フィルタ304bが設けられていて、中性能フィルタ304bの下流側には温水コイル308が設けられている。温水コイル308は、ヒートポンプ306によって生成された温水が温水供給配管306aを通じて供給され、かかる温水を熱源として用いて空気を加熱(予熱)する。これにより、既存空調機100の予熱コイル108に替えて外調機300の温水コイル308において空気の加熱を行うことができ、予熱コイル108への蒸気供給が不要となる。
【0028】
一方、温水コイル308において空気の加熱に用いられることにより温度が低下した温水(水)は、温水戻り配管306bを通じてヒートポンプ306に戻る。ヒートポンプ306の内部には冷媒の冷凍サイクル(不図示)が構成されていて、ヒートポンプ306に戻った温水(水)は、ヒートポンプ306においてかかる冷媒との熱交換を行うことにより再度加熱され再利用可能となる。
【0029】
温水コイル308の下流側には冷却コイル310が設けられている。冷却コイル310は、冷却コイル110と同様に、冷水供給配管106aを通じて供給された空冷チラー106からの冷水を用いて空気を冷却する。これにより、外調機300に供給された空気の温度を低下させ所定温度に調節するとともに、空気の飽和水蒸気圧を低下させて除湿を行い、空気の湿度を所定湿度に調節することが可能となる。
【0030】
冷却コイル310の下流側には気化式加湿器314が設けられている。気化式加湿器314は、加湿用水供給配管314aを通じて供給された加湿用水(水)を気化させて空気の加湿を行う。厳密には、気化式加湿器314にはエレメント(不図示)が充填されていて、供給された加湿用水はかかるエレメントに保持される。そして、外調機300に供給された空気がこのエレメントを通過することにより、空気の顕熱が水の潜熱に代わって水が蒸発し空気が加湿される。これにより、既存空調機100の蒸気式加湿器114の代わりに気化式加湿器314を用いて空気の加湿を行うことができ、蒸気式加湿器114への蒸気の供給が不要となる。なお、気化式加湿器314の設置数および設置位置については、これに限定するものではなく、任意の数および任意の位置に変更可能である。
【0031】
上述したように既存空調機100に外調機300を接続することにより、ヒートポンプからの温水を用いての温水コイル308における空気の加熱、および水を用いての気化式加湿器314における空気の加湿が可能となり、予熱コイル108および蒸気式加湿器114への蒸気の加湿が不要となる。したがって、化石燃料の使用量の削減、ひいてはランニングコストおよびCO2排出量の抑制を図ることができる。
【0032】
外気口302aから外調機300に供給された外気は、通風路302cを通過しながら温水コイル308、冷却コイル310および気化式加湿器314によって温度および湿度が調整された後、空気は処理空気すなわち供給空気(SA:Supply Air)として給気口302bから既存空調機100に供給される。
【0033】
本実施形態にかかる改造方法の更なる特徴として、既存空調機100において、冷却コイル110に冷水だけでなく温水を供給可能とし、かかる冷却コイル110を冷却加熱コイルとして使用する。
【0034】
詳細には、既存空調機100では、冷却コイル110に冷水を供給する冷水供給配管106aから分岐して温水供給配管306aに接続された温水供給配管306cを追加する。また、冷却コイル110の冷水戻り配管106bから分岐して温水戻り配管306bに接続された温水戻り配管306dを追加する。これにより、温水供給配管306cを通じて冷却コイル110に温水を供給し、かかる冷却コイル110を、温水を用いて、換言すれば蒸気を用いずに空気の加熱を行う加熱コイル(再熱コイル)としても利用することが可能となる。したがって、従来空気の再熱に用いられていた再熱コイル112への蒸気の供給が不要となり、化石燃料の消費を抑制することができる。
【0035】
また上記の冷却コイル110への冷水または温水(冷却水)の供給を選択可能とするために、空調機200には、第1切換弁202aおよび第2切換弁202bからなる切換弁が追加されている。
【0036】
第1切換弁202aは、冷水供給配管106aと温水供給配管306cの分岐箇所に設けられ、それらの配管を冷却コイル110に対して択一的に連通させる。かかる第1切換弁202aを切り換えることにより、冷水供給配管106aを通じて空冷チラー106からの冷水を冷却コイル110に供給して空気の冷却を行ったり、温水供給配管306cを通じてヒートポンプ306からの温水を冷却コイル110に供給して空気の加熱を行ったりすることができる。すなわち、第1切換弁202aによって、冷水供給配管106aからの冷水の供給または温水供給配管306cからの温水の供給を切り換えることにより、既存空調機100に設けられた冷却コイル110を冷却加熱コイルとして利用することができる。したがって、既存空調機100の有効活用が図れる。
【0037】
第2切換弁202bは、冷水戻り配管106bと温水戻り配管306dの分岐箇所に設けられ、それらの配管を冷却コイル110に対して択一的に連通させる。かかる第2切換弁202bを切り換えることにより、冷却コイル110に供給された冷水を冷水戻り配管106bを通じて再び空冷チラー106に戻したり、冷却コイル110に供給された温水を温水戻り配管306dを通じて再びヒートポンプ306に戻したりすることができる。したがって、冷水の再利用および温水の再利用が可能となる。
【0038】
なお、本実施形態では、温水が流通する経路である温水供給配管306cおよび温水戻り配管306dを既設の冷水供給配管106aや冷水戻り配管106bに接続する構成としたが、これに限定するものではなく、それぞれ独立した配管で冷却コイル110に接続してもよい。ただし、かかる構成によれば、既存設備の有効活用を図ることができ、新規の配管の増設を最小限に留め、設備コストの増大を抑制することが可能となる。
【0039】
上記説明したように、本実施形態にかかる空調機の改造方法によれば、既存空調機100の上流側に外調機300を接続することにより、外調機300の温水コイル308や気化式加湿器314によって蒸気を用いずに空気の加熱および加湿を行うことが可能となる。そして、温水供給配管306cを通じて冷却コイル110に温水を供給し、かかる冷却コイル110を、蒸気を用いない加熱コイル(再熱コイル)としても利用することが可能となる。これにより、既存空調機100の予熱コイル108や再熱コイル112を稼動させる必要がなくなり、それらへの蒸気の供給を不要とし、ボイラ104における化石燃料の消費を抑制することが可能となる。したがって、既存空調機100の大規模な改造を要することなく、蒸気の使用量ひいては化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能となる。なお、改造後の空調機200においてボイラ104は不要となるが、ボイラ104を撤去することも費用がかかることであるから、あえて撤去することなく、熱源のバックアップとすることが好適である。
【0040】
次に、本実施形態の改造方法の他の例について説明する。図3は、本実施形態にかかる改造方法が適用された空調機の他の例を示す図である。図3に示す空調機400では、既存空調機100は3台(複数台)並設されていて、かかる3台の既存空調機100は各々異なるクリーンルームに供給する空気の温湿度調整を行っている。
【0041】
外調機300は上記の3台の既存空調機100の通風路102cの上流側に接続されていて、3台の既存空調機100の冷却コイル110には、各々温水供給配管306cによってヒートポンプ306からの温水を供給可能である。これにより、3台の既存空調機100が各々行っていた外気の温湿度調整が外調機300において一括して行なわれる。そして、外調機300において処理された外気(空気)が既存空調機100に供給されると、既存空調機100では冷却コイル110(冷却加熱コイル)において冷水または温水を用いて、供給された空気を冷却または加熱し温度の微調整を行う。
【0042】
上記のように複数台の既存空調機100の通風路102cの上流側に1つの外調機300を接続することで、既存空調機100が複数台並設されている場合であっても、既存空調機100個々の大規模な改造を要することなく、化石燃料の使用量の削減ひいてはランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能となる。そして、外調機300で外気を一括して処理し、複数台の既存空調機100でその微調整を行うことにより、複数のクリーンルームの設定温度が異なる場合であっても、それに応じた温度制御を容易に行うことが可能となる。
【0043】
なお、図3では既存空調機100を3台並設する場合を例示したが、これに限定するものではなく、既存空調機100は2台以上並設されていればよい。また既存空調機100の台数が多い場合には、複数台の外調機300にそれぞれ複数台の既存空調機100を接続してもよい。また、複数台の既存空調機100は必ずしも異なるクリーンルームに空気を供給する必要はなく、同一のクリーンルームに空気を供給していてもよい。更に、3台の既存空調機100が備える予熱コイル108、冷却コイル110、再熱コイル112および蒸気式加湿器114には、すべて同一のボイラ104、空冷チラー106およびヒートポンプ306から、蒸気、冷水および温水が供給される場合を例示しているが、これにおいても限定するものではない。
【0044】
また上記説明した実施形態においては、既存空調機100が備える予熱コイル108および再熱コイル112として、蒸気供給配管104aを通じてボイラ104から供給される蒸気を熱源として直接的に用いて空気を加熱する、すなわち蒸気を直接通す蒸気加熱コイルを例示して説明したが、これに限定するものではない。例えば、予熱コイル108および再熱コイル112のいずれか一方または両方が、ボイラ104からの蒸気を熱源として熱交換器(不図示)において生成された温水を通して空気の加熱を行う温水加熱コイルであった場合等、すなわちボイラからの蒸気を間接的に用いて空気を加熱する場合であっても本発明を適用することにより上述した効果を好適に得ることが可能である。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、外気を処理し、それを室内空間に供給する外気処理用の空気調和機の改造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…既存空調機、102…ケーシング、102a…外気口、102b…給気口、102c…通風路、104…ボイラ、104a…蒸気供給配管、106…空冷チラー、106a…冷水供給配管、106b…冷水戻り配管、108…予熱コイル、110…冷却コイル、112…再熱コイル、114…蒸気式加湿器、300…外調機、302…ケーシング、302a…外気口、302b…給気口、302c…通風路、304a…プレフィルタ、304b…中性能フィルタ、306…ヒートポンプ、306a、306c…温水供給配管、306b、306d…温水戻り配管、308…温水コイル、310…冷却コイル、314…気化式加湿器、400…空調機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に設けられた通風路に、蒸気を熱源として空気の加熱を行う予熱コイルと、蒸気を用いて空気の加湿を行う蒸気式加湿器と、冷水を用いて空気の冷却を行う冷却コイルと、蒸気を熱源として空気の再加熱を行う再熱コイルとを少なくとも備える外気処理用の空気調和機の改造方法であって、
ヒートポンプによって生成した温水を用いて空気の加熱を行う温水コイルと、冷水を用いて空気の冷却を行う冷却コイルと、水を気化させて空気の加湿を行う気化式加湿器とを有する外気調和機を、前記空気調和機の通風路の上流側に接続し、
前記空気調和機の冷却コイルに冷水を供給する冷水供給配管に加えて、ヒートポンプによって生成した温水を該冷却コイルに供給する温水供給配管を追加し、
前記冷却コイルに対して前記冷水供給配管または前記温水供給配管を択一的に連通させる切替弁を追加することを特徴とする空気調和機の改造方法。
【請求項2】
前記空気調和機は複数台並設されていて、前記外気調和機は該複数の空気調和機に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の改造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127564(P2012−127564A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278876(P2010−278876)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】