説明

空気除菌装置及び制御方法

【課題】電解水に含まれる活性酸素種の濃度を精度良く目標濃度に制御可能な空気除菌装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】水交換を行った場合及び前回の電解運転からの経過時間が長い場合、電気分解前の水の電気分解に最適な立上運転モードで運転を行い(ステップSa3〜ステップSa7)、また、前回の電解運転からの経過時間が短い場合に電気分解後の水の電気分解に最適な定常運転モードで運転を行うようにした(ステップSa8〜ステップSa12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中浮遊微生物ウィルス等の除去が可能な空気除菌装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成し、生成した電解水による電解水ミストを空気中に拡散させて、この電解水ミストを空中浮遊微生物に直接接触させ、ウィルス等を不活化する空気除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−181358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のものは、電気分解前の水と電気分解後の水とでの活性酸素種の濃度が大きく異なるため、水交換後か否かによって活性酸素種の濃度にばらつきが生じ、除菌効果が低下してしまう場合があった。
そこで、本発明の目的は、電解水に含まれる活性酸素種の濃度を精度良く目標濃度に制御可能な空気除菌装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成し、この電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌手段と、電気分解前の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第1運転モードと、電気分解後の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第2運転モードとに電気分解の運転モードを切り換える切換手段とを備えることを特徴とする。
【0005】
この場合において、前記空気除菌手段内の水が交換されたか否かを検出する水交換検出手段を備え、前記切換手段は、前記水交換検出手段により水が交換されたと検出された後の初回運転時に電気分解の運転モードを前記第1運転モードにしてもよい。前記切換手段は、前回の電気分解からの経過時間が、活性酸素種の濃度が電気分解前の水と同程度と推定される予め定めた時間を経過している場合に電気分解の運転モードを前記第1運転モードにしてもよい。前記切換手段は、前回の電気分解からの経過時間が、活性酸素種の濃度が電気分解前の水より大きく、かつ、目標濃度を下回ると推定される予め定めた時間を経過している場合に電気分解の運転モードを前記第2運転モードにしてもよい。前記空気除菌手段内の水の導電率を検出する導電率検出手段と、電気分解前の水の導電率から目標濃度の活性酸素種を生成する制御時間を特定するための第1情報と、電気分解後の水の導電率から目標濃度の活性酸素種を生成する制御時間を特定するための第2情報とを記憶する記憶手段とを備え、前記第1運転モードの場合、前記第1情報に基づく制御時間で前記空気除菌手段内の水を電気分解し、前記第2運転モードの場合、前記第2情報に基づく制御時間で前記空気除菌手段内の水を電気分解してもよい。
【0006】
本発明は、水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成し、この電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌装置の制御方法において、電気分解前の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第1運転モードと、電気分解後の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第2運転モードとに電気分解の運転モードを切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、電気分解される前の水と、電気分解された後の水とで、電解運転を切り換えるため、電解水に含まれる活性酸素種の濃度を精度良く目標濃度に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
床置き式空気除菌装置1を図1に示す。この床置き式空気除菌装置1は、箱形の筐体2を備え、この筐体2は、脚片2Aと、前パネル2Bと、天パネル2Cとを含み、この天パネル2Cの両側には、操作蓋2D、開閉蓋2Eがそれぞれ横並びに配置されている。また、前パネル2Bの左側上部には、各種情報を報知するための複数のLED50を備える報知パネル39が配置されている。
この筐体2の下部には、図2に示すように、吸込口3が配置され、この吸込口3の上方にはプレフィルタ3Aが配置されている。このプレフィルタ3Aの上方には送風ファン7が支持板8を介して筐体2に支持されている。この支持板8の上方には、保水性の高い気液接触部材5が、図3に示すように斜めに配置されている。この気液接触部材5と送風ファン7との間には水受皿9が配置され、気液接触部材5の上方には、横長の吹出口4が配置されている。
【0009】
この気液接触部材5は、図4に示すように、空気が流通するエレメント部Eと、このエレメント部Eを支持するフレーム部Fとで形成されている。
エレメント部Eは、波板状の波板素材5Aと平板状の平板素材5Bとが積層されて構成される。このため、波板素材5Aと平板素材5Bとの間に略三角形状の複数の開口5Fが形成される。
フレーム部Fは、気液接触部材5の両端枠を構成する一対の枠素材5Dと、一方の枠素材5Dの上部を貫通して他方の枠素材5Dに先端が固定される電解水供給管17と、この電解水供給管17を覆うように一対の枠素材5Dの上端部間に固定されて気液接触部材5の上枠を構成するカバー5Gとを備え、このカバー5Gは、電解水供給管17の下方に配置される第1分流シート5Cを支持している。また、上記エレメント部Eは、一対の枠素材5D間に配置され、このエレメント部Eの上面には、複数枚の第2分流シート5Eが配置されている。
【0010】
上記波板素材5A、平板素材5B、第1分流シート5C及び第2分流シート5Eは、液体の浸透性を有する繊維素材により形成されている。第1分流シート5Cには、電解水供給管17に形成された多数の散水孔(図示せず)から吐出される電解水が滴下され、これにより、電解水が第1分流シート5C全体に拡散し、電解水がエレメント部Eの上面全体に落下する。この落下した電解水は第2分流シート5Eに浸透して第2分流シート5E全体に拡散し、エレメント部Eの上部全体に電解水を供給し、これによって、電解水がエレメント部Eの波板素材5A及び平板素材5Bの隅々に浸透するようになっている。
【0011】
ここで、波板素材5A、平板素材5B、第1分流シート5C及び第2分流シート5Eの素材には、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)またはセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂が使用されている。なお、電解水は防かび性を発揮するため、気液接触部材5には防かび剤の塗布が不要である。
【0012】
気液接触部材5の傾斜角θは、図3に示すように、30°以上であることが望ましい。それ以下の傾斜角θの場合、滴下した電解水が、気液接触部材5の傾斜に沿って流れず、下方に落下する。また、傾斜角θが90°に近づいた場合、気液接触部材5を通過する送風経路が水平に近くなり、その分だけ上方への吹き出しが困難になる。この吹き出し方向を水平に近付けた場合、吹き出し空気を遠くに送風できなくなり、後述するように、大空間の除菌に適した装置とならない。傾斜角θは、80°>θ>30°が好ましく、さらに好ましくは、75°>θ>55°であり、本構成では約57°である。
【0013】
図5A及び5Bは、気液接触部材5に電解水を滴下する電解水供給機構を示す。
気液接触部材5の下方には、水受皿9が配置され、この水受皿9には、給水タンク支持皿10が連接されている。この給水タンク支持皿10には、当該支持皿10内に塩素イオンを含む水道水を供給する給水タンク11と、循環ポンプ13とが配置されている。この循環ポンプ13には電解槽31が接続され、この電解槽31には電解水供給管17が接続されている。
【0014】
図5Aに示すように、電解槽31は、水受皿9及び給水タンク支持皿10より上方に配置され、電解槽31には循環ポンプ13が運転を開始すると、給水タンク支持皿10から吸い上げられた水が貯留され、循環ポンプ13が運転を停止すると、電解槽31内の水は重力により給水タンク支持皿10に自然落下し、電解槽31が空になる。
【0015】
この電解槽31には、図5Bに示すように、一方が正、他方が負となる対の電極32、33を交互に備え、電極32、33は、通電された場合、電解槽31に流入した水道水を電気分解して活性酸素種を生成させる。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものとする。電解槽31は、気液接触部材5に接近して配置され、水道水を電気分解して生成された活性酸素種を、ただちに気液接触部材5に供給できるように構成される。
【0016】
電極32、33は、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板であり、この電極32、33に流れる電流値は、電流密度で数mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)〜数十mA/cm2になるように設定され、所定の遊離残留塩素濃度(例えば1mg(ミリグラム)/l(リットル))を発生させる。
【0017】
詳述すると、上記電極32、33により水道水に通電すると、カソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
の反応が起こり、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、
水に含まれる塩素イオン(水道水に予め添加されているもの)が、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、さらにこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
【0018】
従って、電極32、33に通電することにより、殺菌力の大きいHClO(次亜塩素酸)を発生させ、この次亜塩素酸が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、この気液接触部材5で雑菌が繁殖することを防止でき、気液接触部材5を通過する空気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。また、空気中の臭気も気液接触部材5を通過する際に、次亜塩素酸と反応し、イオン化して溶解するので、空気が脱臭される。すなわち、電解槽31、気液接触部材5、送風ファン7、循環ポンプ13は空気除菌機構(空気除菌手段)12を構成している。
【0019】
床置き式空気除菌装置1は、この床置き式空気除菌装置1の各部を中枢的に制御する制御部30を備えている。図6は、制御部30とその周辺構成を示すブロック図である。
【0020】
制御部30は、マイコン34、記憶部35、入力部36、出力部37及びタイマカウンタ38を備え、操作蓋2Dを開くと露出する操作パネル40を介して、ユーザから各種指示を入力する。
操作パネル40は、水交換ボタンスイッチを備え、このスイッチは、ユーザが空気除菌機構12内の水を交換した際に操作するものである。この水交換ボタンスイッチの操作を検出することにより、制御部30は水交換を検出する。
マイコン34は、ユーザからの各種指示等に従い、EEPROM等の不揮発性メモリである記憶部35に予め記憶されている制御プログラムに基づいて、電解槽31、送風ファン7、循環ポンプ13等を制御するものである。
【0021】
入力部36は、電極32、33、槽温度センサ44、電解槽フロートスイッチ42及び水受皿フロートスイッチ43からの検出信号が入力されるインタフェースであり、出力部37は、電極32、33に電力を出力する電力供給手段として機能する。
マイコン34は、入力部36を介して水受皿フロートスイッチ43から水無しの検出信号を入力すると給水要求を発行し、報知パネル39に配置された給水報知ランプ(図示せず)を点灯させる。
タイマカウンタ38は、制御部30の制御の下、前回の電解運転が終了してからの経過時間(以下、電極停止時間t0という)をカウントする。
なお、マイコン22、記憶部35、入力部36、出力部37及びタイマカウンタ38は、基板に実装され、図示しない電装ボックスに収納されている。
【0022】
次に、この制御部30に接続される電源41、槽温度センサ44、電解槽フロートスイッチ42、水受皿フロートスイッチ43、電極32、33、報知パネル39を説明する。
電源41は、床置き式空気除菌装置1を動作させるための電源であり、操作パネル40の電源スイッチが投入されると、床置き式空気除菌装置1の各部に動作電力を供給する。
槽温度センサ44は、電解槽31内に配置され、電解槽31内の電解水の温度を検出する。
【0023】
電解槽フロートスイッチ42は、電解槽31内に予め定められた許可水位以上の電解水が有るか否かを検出することにより、電解槽31内の水の有無を検出する。
水受皿フロートスイッチ43は、水受け皿9内に予め定められた許可水位以上の電解水が有るか否かを検出することにより、電解槽31内の水の有無を検出する。
電解槽31に設けられた電極32、33は、水道水の電気分解に使用されるだけでなく、電解水の導電率を検出するための検出用電極としても使用される。
報知パネル39は、複数のLED50を備え、運転中である旨を報知したり、各種警告を行ったりする報知手段として機能する。この報知パネル39(図1)の上段には、LED50として、運転中である旨を報知する緑色ランプ、給水タンク11への給水を促す赤色ランプ、プレフィルタ3Aのメンテナンス時期を報知する赤色ランプ、水受皿9の水交換を促す赤色ランプを備える。また、報知パネル39の下段には、電極32、33の劣化に伴うメンテナンス時期を報知する赤色ランプ(図1)と、気液接触部材5の劣化に伴うメンテナンス時期を報知する赤色ランプ(図1)とを備える。
【0024】
次に、床置き式空気除菌装置1の空気除菌時の動作を説明する。
図1において、操作蓋2Dを開くと、図示を省略した操作パネル40が内側に設けられており、この操作パネル40を操作することで、床置き式空気除菌装置1の運転が開始される。この運転が開始されると、図5Aに示すように、循環ポンプ13が駆動され、給水タンク支持皿10に溜まった水道水が、電解槽31に供給される。
この電解槽31では、電極32、33への通電により、水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水が生成される。この電解水は、電解水供給管17の散水孔(図示せず)を経て、拡散穴5C中に散水され、ここから気液接触部材5の上縁部に浸透し、下部に向けて徐々に浸透する。
【0025】
気液接触部材5から滴下した電解水は、水受皿9が受けて、水受皿9の一端側の傾斜面により給水タンク支持皿10内に流入し、そこに貯留される。本構成では、水が循環式となっており、蒸発等により水量が減った場合、給水タンク11内の水道水が、給水タンク支持皿10に適量供給される。この給水タンク11は、開閉蓋2E(図1参照)を開いて取り出し自在に配置され、この給水タンク11を取り出して水道水の補給が可能となる。
【0026】
電解水が浸透した気液接触部材5には、送風ファン7を経て、矢印Xで示すように、室内の空気が供給される。この室内の空気は、気液接触部材5に浸透した電解水中の活性酸素種に接触して或いは近傍を通過して、再び、室内に吹き出される。この活性酸素種は、ウィルス、花粉及びダニのフンや死骸等のアレルギー物質を抑制する機能を持ち、例えば、空気中にインフルエンザウィルスが浮遊した場合、その感染に必須の当該ウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)し、これを破壊すると、インフルエンザウィルスと、当該ウィルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、これによって感染が阻止される。実証試験の結果、インフルエンザウィルスが浮遊した空気を、本構成の気液接触部材5に通した場合、当該ウィルスを99%以上除去できることが判明した。
【0027】
ところで、電気分解前の水と、電気分解後の水とでは、次亜塩素酸の濃度が大きく異なるため、電解運転が同一の場合、濃度にばらつきが生じ、安定した除菌運転を行うことができない。また、次亜塩素酸の濃度は、水交換を行った場合だけでなく、時間の経過と共に低下するため、空気除菌機構12を循環する電解水は、電極停止時間t0が短い場合と、電極停止時間t0が長い場合とで同じ電解運転をする場合も、次亜塩素酸の濃度にばらつきが生じ、安定した除菌運転を行うことができない。
【0028】
図7は電気分解前の水の導電率Bと電解制御時間t1との対応関係を記述したテーブルデータT1を示している。電解制御時間t1は、電気分解前の導電率Bの水を電気分解して目標濃度の次亜塩素酸を生成可能な時間であり、この関係は実験等により求められる。本構成では、導電率Bが100(μS/cm)以下のときの電解制御時間t1を値a1に設定し、導電率Bの値が101〜200(μS/cm)のときの電解制御時間t1を値b1に設定し、導電率Bの値が201〜250(μS/cm)のときの電解制御時間t1を値c1に設定し、導電率Bが251(μS/cm)以上のときの電解制御時間t1を値d1に設定しており、このテーブルデータT1は記憶部35に記憶される。
また、図8は電気分解後の水の導電率Bと電解制御時間t2との対応関係を記述したテーブルデータT2を示している。電解制御時間t2は、電気分解前の導電率Bの水を電気分解して目標濃度の次亜塩素酸を生成可能な時間であり、この関係は実験等により求められる。本構成では、導電率Bが100(μS/cm)以下のときの電解制御時間t2を値a2に設定し、導電率Bの値が101〜200(μS/cm)のときの電解制御時間t2を値b2に設定し、導電率Bの値が201〜250(μS/cm)のときの電解制御時間t2を値c2に設定し、導電率Bが251(μS/cm)以上のときの電解制御時間t2を値d2に設定しており、このテーブルデータT2は記憶部35に記憶される。
【0029】
図9は制御部30の運転モードの切り換えを行うときの動作処理を示すフローチャートである。なお、この動作処理は、床置き式空気除菌装置1の電源が投入されると、繰り返し実行される。ここで、この運転モードは、電気分解の運転モードであり、図7に示すテーブルデータT1に基づいて電解制御時間t1を設定し、この電解制御時間t1だけ電気分解する立上運転モードと、図8に示すテーブルデータT2に基づいて電解制御時間t2を設定し、この電解制御時間t2だけ電気分解する定常運転モードとを有している。
先ず、床置き式空気除菌装置1の電源が投入されると、制御部30は、水交換後の初回の運転であるか否かを判定する(ステップSa1)。この判定は、後述する記憶部35に記憶された立上運転完了フラグのオン/オフに基づいて行われる。初回の運転でない場合(ステップSa1:No)、制御部30は、電極停止時間t0が、活性酸素種の濃度が電気分解前の水と同程度と推定される予め定めた時間(本例では12時間)が経過したかを判定する(ステップSa2)。
【0030】
ステップSa1で水交換後の初回の運転であると判定した場合(ステップSa1:Yes)、あるいは、ステップSa2で電極停止時間t0が12時間よりも長いと判定した場合(ステップSa2:Yes)、次亜塩素酸の濃度が電気分解前の水と同程度と推定されるため、制御部30は、電気分解前の水に好適な電解制御時間t1を決定する以下の処理を行う。
すなわち、制御部30は、循環ポンプ13によって電解槽31に供給された水の導電率Bを電極32、33を用いて検出し(ステップSa3)、記憶部35に記憶されているテーブルデータT1を参照して、検出した導電率Bに対応する電解制御時間t1を特定する(ステップSa4)。
【0031】
電解制御時間t1を特定すると、制御部30は、立上運転モードで電解運転を開始し(ステップSa5)、つまり、電解制御時間t1が経過するまで、電極32、33に電力を供給する(ステップSa6)。
【0032】
電極制御時間t1が経過し、立上運転モードによる電解運転が終了した場合、制御部30は、記憶部35の予め定めた領域に格納される立上運転完了フラグをオンに設定する(ステップSa7)。この立上運転完了フラグのオンは、立上運転モードの完了を示し、ユーザが空気除菌機構12を循環する水の交換を行い、操作パネル40に設けられた水交換ボタンスイッチを操作すると、制御部30は立上運転完了フラグをオフに設定する。
【0033】
一方、ステップSa2で電極停止時間が12時間以下と判定した場合(ステップSa2:No)、次亜塩素酸の濃度が電気分解前の水よりも高いと推定され、制御部30は、電極停止時間t0が60分以上であるか否かを判定する(ステップSa8)。電極停止時間t0が60分未満であると判定した場合(ステップSa8:No)、次亜塩素酸の濃度が目標濃度を満たしていると推定されるため、制御部30は、一連の処理を終了する。
【0034】
一方、電極停止時間t0が60分以上の場合(ステップSa8:Yes)、次亜塩素酸の濃度が目標濃度を満たしていないと推定されるため、制御部30は、次亜塩素酸の濃度が目標濃度を満たすのに好適な電解制御時間t2を決定する以下の処理を行う。
すなわち、制御部30は、循環ポンプ13によって電解槽31に供給された水の導電率Bを電極32、33を用いて検出し(ステップSa9)、記憶部35に記憶されているテーブルデータT2を参照して、検出した導電率Bに対応する電解制御時間t2を特定する(ステップSa10)。
【0035】
電解制御時間t2を特定すると、制御部30は、定常運転モードで電解運転を開始し(ステップSa11)、つまり、電解制御時間t2が経過するまで、電極32、33に電力を供給する(ステップSa12)。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、水交換を行った場合及び前回の電解運転からの経過時間が長い場合に電気分解前の水に最適な立上運転モードで運転を行い、また、前回の電解運転からの経過時間が短い場合に電気分解後の水に最適な定常運転モードで運転を行うため、電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度を精度良く目標濃度に制御することができ、次亜塩素酸の濃度のばらつきを抑制することができる。従って、安定した除菌能力を確保することができる。
また、電解水の導電率を検出し、検出した導電率に対応する次亜塩素酸の濃度を推定するため、さらに電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度を精度良く目標濃度に制御することができる。
【0037】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、活性酸素種としてオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を発生させる構成としても良い。この場合、電極として白金タンタル電極を用いると、イオン種が希薄な水から、電気分解により高効率に安定して活性酸素種を生成できる。
このとき、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応と同時に、
3H2O→O3+6H++6e-
2H2O→O3+4H++4e-
の反応が起こりオゾン(O3)が生成される。またカソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
2-+e-+2H+→H22
のように、電極反応によりO2-が生成したO2-と溶液中のH+とが結合して、過酸化水素(H22)が生成される。
【0038】
この構成では、電極に通電することにより、殺菌力の大きいオゾン(O3)や過酸化水素(H22)が発生し、これらオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を含んだ電解水を作ることができる。この電解水中におけるオゾンもしくは過酸化水素の濃度を、対象ウィルス等を不活化させる濃度に調整し、この濃度の電解水が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、空気中に浮遊する対象ウィルス等を不活化することができる。また、臭気も気液接触部材5を通過する際に、電解水中のオゾンまたは過酸化水素と反応し、イオン化して溶解することで、空気中から除去され、脱臭される。
【0039】
上記実施形態では、導電率Bの範囲毎に電解制御時間t1、t2が記述されたテーブルデータT1、T2を記憶する場合を示したが、これに限定されず、導電率Bから電解制御時間t1、t2を得るための算出式を記憶し、この算出式に基づいて電解制御時間t1、t2を特定してもよい。ここで、図10に示すように、水道水は地方によって塩素濃度や導電率にばらつきがあるため、導電率Bから電解制御時間t1、t2を特定する一つの式を特定するのが難しい。この場合、図10に示すように、各地方の水道水のばらつく範囲を特定し、この範囲の平均的な特性曲線K1を水道水の特性とみなし、この特性曲線K1から算出式を特定してもよい。
ここで、特性曲線K1は、塩素濃度を平均値とみなすため、この特性曲線K1から得られた算出式によれば、活性酸素種が目標濃度の電解水を平均的に得ることができる。
また、上記範囲の下縁に沿った特性曲線K2を水道水の特性とみなし、この特性曲線K2から算出式を特定してもよい。この特性曲線K2は、塩素濃度を低めとみなすため、この特性曲線K2から得た算出式によれば、少なくとも活性酸素種が目標濃度以上の電解水を得ることができる。
また、上記範囲の上縁に沿った特性曲線K3を水道水の特性とみなし、この特性曲線K3から算出式を特定してもよい。この特性曲線K3は、塩素濃度を高めとみなすため、この特性曲線K3から得た算出式によれば、電解制御時間t1、t2を短くすることができる。
【0040】
上記実施形態では、電解制御時間を変更して、様々な水に含まれる活性酸素種の濃度を目標濃度に制御する場合を示したが、これに限定されず、例えば、電極32、33に供給する電流値等の電力を変更するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】内部構成を示す斜視図である。
【図3】筐体の縦断面図である。
【図4】気液接触部材の断面図である。
【図5】気液接触部材に電解水を滴下する手段を示す系統図であり、Aは側面図、Bは電解槽の構成図である。
【図6】制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】立上運転モードにおける導電率の各範囲に対する電解制御時間を示す図である。
【図8】定常運転モードにおける導電率の各範囲に対する電解制御時間を示す図である。
【図9】運転モードの切り換えを行うときの動作処理を示すフローチャートである。
【図10】導電率と塩素濃度とが対応する特性曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 床置き式空気除菌装置(空気除菌装置)
5 気液接触部材
12 空気除菌機構(空気除菌手段)
30 制御部(切換手段、水交換検出手段、導電率検出手段)
32、33 電極
35 記憶部(記憶手段)
38 タイマカウンタ(経過時間検出手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成し、この電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌手段と、
電気分解前の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第1運転モードと、電気分解後の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第2運転モードとに電気分解の運転モードを切り換える切換手段とを備えることを特徴とする空気除菌装置。
【請求項2】
前記空気除菌手段内の水が交換されたか否かを検出する水交換検出手段を備え、
前記切換手段は、前記水交換検出手段により水が交換されたと検出された後の初回運転時に電気分解の運転モードを前記第1運転モードにすることを特徴とする請求項1に記載の空気除菌装置。
【請求項3】
前記切換手段は、前回の電気分解からの経過時間が、活性酸素種の濃度が電気分解前の水と同程度と推定される予め定めた時間を経過している場合に電気分解の運転モードを前記第1運転モードにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気除菌装置。
【請求項4】
前記切換手段は、前回の電気分解からの経過時間が、活性酸素種の濃度が電気分解前の水より大きく、かつ、目標濃度を下回ると推定される予め定めた時間を経過している場合に電気分解の運転モードを前記第2運転モードにすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気除菌装置。
【請求項5】
前記空気除菌手段内の水の導電率を検出する導電率検出手段と、
電気分解前の水の導電率から目標濃度の活性酸素種を生成する制御時間を特定するための第1情報と、電気分解後の水の導電率から目標濃度の活性酸素種を生成する制御時間を特定するための第2情報とを記憶する記憶手段とを備え、
前記第1運転モードの場合、前記第1情報に基づく制御時間で前記空気除菌手段内の水を電気分解し、前記第2運転モードの場合、前記第2情報に基づく制御時間で前記空気除菌手段内の水を電気分解することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気除菌装置。
【請求項6】
水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成し、この電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌装置の制御方法において、
電気分解前の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第1運転モードと、電気分解後の水を電気分解により活性酸素種を目標濃度に制御する第2運転モードとに電気分解の運転モードを切り換えることを特徴とする空気除菌装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−202753(P2007−202753A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24426(P2006−24426)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】