説明

空洞エネルギーを増加させるためのワイヤグリッドを使用したバイオセンサ

本発明は、入力反射鏡(253)及び出力反射鏡(254)を有した、バイオセンシングのための発光センサを開示している。入力反射鏡と出力反射鏡の隙間(S)は光学空洞を構成する。入力反射鏡及び出力反射鏡のうち1つ又は両方が、開口部(211、212)を有したワイヤグリッド(270)でありえ、前記開口部のうち少なくとも1次元が回折限界よりも小さい。入力放射線(221)が入力反射鏡に衝突すると、わずかな入力放射線が空洞内へ透過される。前記空洞の共鳴特性のため、空洞内の放射線のエネルギーは増加する。空洞励起エネルギーの増加により、空洞内の発光粒子から放出される発光放射線を空洞外で検出することができる。入力及び出力反射鏡は高い反射係数を有しているため、入力放射線は、発光検出器を通って透過するのを効果的に禁止される。さらに、前記空洞内で生じた発光は空洞外で生じた発光よりも有意に高い。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサに関し、特に、生体分子により生じた発光を検出するためのバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的分子を含有した生物学的試料は、放射線のビームでその生物学的試料を照射し、放出された光を検出することにより分析することができる。一般的に標的分子と呼ばれる特定の生物学的分子の存在あるいは量の検出を可能にするために、その標的分子が対応するプローブ分子に結合する方法を利用することができる。標的分子は、DNA、RNA、細胞、蛋白質、ウイルス、細菌、及び抗体等を含む。従って、プローブ分子に結合する能力がある標的分子は、例えば抗体−抗原、細胞−抗体、及び、受容体−リガンドの対等、標的−プローブの対を形成する。さらなる例には、例えばDNA−DNAの対、RNA−RNAの対、及び、DNA−RNAハイブリッド等の結合又はハイブリダイゼーションが含まれる。発光団から放出される発光を検出することによって標的分子の存在又は量を決定することができるように、例えばフルオロフォア等の発光団を標的分子あるいはプローブ分子に結合させることができる。
【0003】
用意された体積内の標的分子、又は、用意された結合表面に結合された標的分子の存在又は量を検出するために、発光と照射放射線を区別することにおいて問題が生じる。それは、発光の威力が、一般的に、照射放射線の威力よりもはるかに低いためである。別の問題が、用意された体積内に存在するか、又は、用意された結合表面に結合された標的分子により生じた発光とどこか他で生じた発光を区別することにおいて生じる。従って、検出システムから、十分な発光の放射線力、及び、好ましくは十分に局所化された発光の放射線力を生じるという問題として見ることができる。
【0004】
従って、バイオセンサは有利であり、特に、より効率的及び/又は信頼できるバイオセンサが有利である。
【0005】
非公開の欧州特許出願第05105599.4号は、上部平板を通った、スリット又は開口部内の流体に溶解した発光団の励起を開示しており、励起光はその上部平板を通して伝えることができる。励起放射線がTE偏光されていると、エバネッセント場を生じることができ、スリットが十分に深い場合、励起放射線は本質的にスリットを通して伝達することができない。生じた発光は、従って、上部平板及び下部平板を通して検出することができる。スリット及びエバネッセント励起体積を使用した場合、その有意に小さいスリット内への透過度のため、TE偏光された励起光は、TM偏光された光よりも好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、前述の問題のうち1又は複数の問題を1つずつ若しくはいかなる組合せでも軽減、解消、又は除去するよう求めることが好ましい。特に、発光センサの空洞に置かれた、供給された発光粒子から発光放射線を生じる能力がある改善された発光センサを提供することによって前述の問題を解決するバイオセンサを提供することを本発明の目的として見ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的及びいくつか他の目的は、第1の所定の波長を有した入力放射線を受ける能力がある入力反射鏡、及び、出力反射鏡を含んだ発光センサを提供することにより、本発明の第1の態様において達せられ、
前記入力反射鏡と前記出力反射鏡の隙間は、前記第1の所定の波長を有した放射線の空洞励起エネルギー(cavity excitation energy)を増加させる能力がある空洞を構成し、該空洞は発光放射線を出力する能力があり、
前記入力反射鏡及び前記出力反射鏡のうち少なくとも1つが、開口部を有したワイヤグリッドであり、該ワイヤグリッドの面における前記開口部のうち少なくとも1次元(one dimension)が、前記入力放射線の回析限界よりも小さく、
前記入力反射鏡の反射係数は、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光に対して0.5を超え、さらに、
前記出力反射鏡の反射係数は、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光に対して0.5を超える。
【0008】
本発明は、特に、しかし排他的ではなく、前記入力反射鏡と前記出力反射鏡の間の空洞に置かれた発光粒子から発光放射線を生じる能力がある発光センサを得ることに対して有利である。
【0009】
好ましくは50%を超える、かなり大部分の、発光検出器の入力反射鏡に衝突する入力放射線を発光センサから反射させることができる。前記入力放射線のうち別の、好ましくは50%未満の部分は、前記空洞内に透過させることができる。前記空洞は入力放射線の共鳴条件を満たすことができるため、及び、出力反射鏡のできる限り大きいおそらく0.5よりも大きい反射係数のため、空洞内の入力放射線の部分を放射線の空洞励起エネルギーの増加にさらすことができる。供給された発光粒子を励起する空洞励起エネルギーの増加のため、発光放射線のエネルギーは、空洞励起エネルギーの増加に対応して増加することができる。
【0010】
空洞励起エネルギーの増加を得ることは、そのような増加した空洞励起エネルギーが空洞内に置かれた発光粒子からの発光放射線の生じたエネルギーを増加させることができるため、第1の態様の利点であり得る。
【0011】
発光センサから放射されている入力放射線に対する発光放射線の増加した比を得ることも第1の態様の利点であり得る。この利点は、0.5を超える入力反射鏡及び出力反射鏡の反射係数と組み合わせて、増加した空洞励起エネルギーにより達成することができる。
【0012】
前記空洞内に置かれた発光粒子から生じる発光力/エネルギーが、前記空洞外に置かれた発光粒子から生じる発光力/エネルギーよりも有意に高いので、生じた発光放射線は十分に前記空洞に局在化されることが別の利点であり得る。
【0013】
一実施形態において、当該発光センサの入力反射鏡及び出力反射鏡のうち少なくとも1つは、開口部を有したワイヤグリッドであり、該ワイヤグリッドの面における前記開口部のうち少なくとも2次元(two dimensions)が、前記入力放射線の回析限界よりも小さい。入力反射鏡の前のTE及びTM偏光された放射線が抑制されることがこの実施形態の利点であり得る。すなわち、前記空洞の前で生じたそのような放射線における前記空洞を通る透過を減少させることができる。
【0014】
別の実施形態において、前記入力反射鏡のワイヤグリッドの開口部は、前記入力放射線を受けるよう方向づけられ、前記入力放射線の電場は、前記開口部の縦次元(longitudinal dimension)に平行して偏光される。開口部の縦次元に偏光された放射線が入力反射鏡からの高い反射にさらされることは、この実施形態の利点であり得る。
【0015】
さらなる実施形態において、前記入力反射鏡のワイヤグリッドの開口部の縦次元は、前記出力反射鏡のワイヤグリッドの開口部の縦次元に平行して方向づけられる。開口部の縦次元に偏光された電場を有した入力放射線が空洞励起エネルギーを増加させることができ、同時に、入力放射線が入力反射鏡及び出力反射鏡を通って透過されるのを禁止するということがこの実施形態の利点であり得る。
【0016】
本発明の実施形態において、前記入力反射鏡の反射係数は、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光方向に対して、例えば0.93等、0.7を超える、好ましくは0.8を超える。発光センサから放射される入力放射線に対する発光放射線の比を増加させるために、前記入力反射鏡の反射係数は0.7を超えるということが利点であり得る。前記空洞励起エネルギーが増加されるということがさらなる利点であり得る。
【0017】
類似の実施形態において、前記出力反射鏡の反射係数は、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光方向に対して、例えば0.98等、0.8を超える、好ましくは0.9を超える。発光センサから放射される入力放射線に対する発光放射線の比を増加させるために、前記出力反射鏡の反射係数は0.8を超えるということがさらなる利点であり得る。前記空洞励起エネルギーが増加されるということがさらなる利点であり得る。
【0018】
一実施形態において、前記出力反射鏡のワイヤグリッドのデューティサイクルは、例えば0.25等、0.9未満、好ましくは0.75未満、より好ましくは0.65未満であり、前記入力反射鏡のワイヤグリッドのデューティサイクルは、例えば0.63等、0.9未満、好ましくは0.85未満、より好ましくは0.8未満である。発光センサから放射される入力放射線に対する発光放射線の比を増加させるために、前記入力反射鏡及び前記出力反射鏡のデューティサイクルが0.9未満であることは利点であり得る。前記空洞励起エネルギーが増加されるということがさらなる利点であり得る。
【0019】
別の実施形態において、前記入力反射鏡のワイヤグリッド及び前記出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つは流体に対して浸透性がある。発光粒子を含有した流体が前記少なくとも1つのワイヤグリッドを通して前記空洞に供給されることがこの実施形態の利点であり得る。
【0020】
さらなる実施形態において、前記入力反射鏡のワイヤグリッド及び前記出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つは、透明な基板上に固定される。透明な基板上に固定されたワイヤグリッドは、独立したワイヤグリッドよりも耐久性があるということがこの実施形態の利点であり得る。
【0021】
一実施形態において、前記入力反射鏡及び前記出力反射鏡のうち少なくとも1つは、非浸透性の反射鏡であり、このことは、例えば入力反射鏡に対するワイヤグリッド及び出力反射鏡に対する反射表面を使用することによって前記空洞を生じることができるため利点であり得る。
【0022】
第2の態様において、本発明は、発光放射線を生じるための発光センサの使用に関する。
【0023】
第3の態様において、本発明は、第1の態様による入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのデューティサイクルを選ぶ方法に関し、
前記入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルの関数として空洞励起エネルギーを決定する能力があるモデルを提供するステップ、
前記入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルを変えるステップ、
前記ワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルにおける各変更に対して前記空洞励起エネルギーを算出するステップ、
前記入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルの値を選ぶステップ、
を含む。
【0024】
前記入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のデューティサイクルの値は、例えば、最大空洞励起エネルギーを提供するデューティサイクル、空洞励起エネルギーとワイヤグリッドの浸透性の組合せ、又は、空洞励起エネルギー対入力放射線の波長に対する許容度における変化等、種々の判断基準から選ぶことができる。
【0025】
第4の態様において、本発明は、バイオセンシングのための検出システムに関し、
第1の態様による発光センサ、
入力放射線を生じる能力がある放射線源、
発光放射線を検出する能力がある検出器、及び
前記発光センサに発光粒子を供給する能力がある容器
を含む。
【0026】
第5の態様において、本発明は、発光センサを使用したバイオセンシングの方法に関し、
第1の態様による発光センサを提供するステップ、
前記入力反射鏡と前記出力反射鏡の間の空洞に発光粒子を提供するステップ、
前記入力反射鏡を入力放射線で照射するステップ、
前記発光粒子から放出される発光放射線を検出するステップ、
を含む。
【0027】
本発明の基本的な見解は、入力反射鏡と出力反射鏡の間の空洞における励起放射線のエネルギーを、前記空洞の共鳴特性を利用することにより増加させることに関する。比較的高い反射係数を有した入力及び出力反射鏡を提供することによって、励起放射線を効果的に増加させるよう、さらに、その励起放射線が発光センサから透過されるのを効果的に禁止するよう成し遂げることができる。その結果、発光センサに相対して配置された付随の放射線検出器が高い解像度で発光放射線のみを検出することができるように、入力放射線が発光放射線から効果的に取り除かれるということを成し遂げることができる。
【0028】
本発明の第1、第2、第3、第4、及び第5の態様はそれぞれ、他の態様のうちどの態様とも組み合わせることができる。本発明の前記及び他の態様は、以下に記述される実施形態から明らかになり、さらに、以下の実施形態を参考にして説明される。
【0029】
本発明は、次に、例えば付随の図のみを参考にして説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】発光センサ101、容器160、放射線源111、及び検出器130を含むバイオセンシングのための検出システム100の概略図を示している。
【図2】発光センサ101の例証を示している。
【図3】ワイヤグリッドの反射及び透過特性のシミュレーションを示したグラフを示している。
【図4】発光センサの空洞内部の放射線におけるエネルギー増強のシミュレーションを示したグラフを示している。
【図5】放射線のエネルギー増強を示したグラフを示している。
【図6A】入力放射線221、110のうち出力反射鏡のワイヤグリッドを通って透過された割合のシミュレーションを示したグラフを示している。
【図6B】一部の発光粒子650が出力反射鏡104、254の裏に置かれた発光センサの例証である。
【図7】入力反射鏡と出力反射鏡の間の隙間スペースの関数として、空洞におけるエネルギー増強曲線710を示したグラフを示している。
【図8】増強エネルギーの波長依存性を示したグラフを示している。
【図9】空洞内部の放射線エネルギーと透過された放射線のエネルギーの比を示したグラフを示している。
【図10】発光センサ201の厚さに対する位置1013の関数として、放射線エネルギー密度1012を示したグラフを示している。
【図11】2次元のワイヤグリッド1100の例を示している。
【図12】透明な基板1201上に固定されたワイヤグリッドを示している。
【図13】入力反射鏡103又は出力反射鏡104が反射面1301である例を示している。
【図14】反射鏡103と254の間に依然として画定されている空洞が、固体の材料から作製され且つ隙間Sに一致する厚さを有した平板1401を含む例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、実施形態による発光センサ101を含んだ、バイオセンシングのための検出システム100の概略図である。発光センサ101は、光学空洞102を形成する入力反射鏡103及び出力反射鏡104を含む。空洞102には、例えば流体151内に含有させることができる発光粒子150を供給することができる。発光粒子150を含有した流体151を、流体連絡路161を介して容器160から発光センサ101に供給することができる。
【0032】
発光粒子150は、発光団を結合させた生物学的分子であり得る。生物学的分子は、例えば、標的がプローブに結合するようプローブ分子と反応してきた標的分子を含むことができる。標的分子とプローブ分子の対の例は、抗体−抗原の対、細胞−抗体の組合せ、DNA鎖の対、RNA鎖の対、抗体−抗原の対、及び、受容体−リガンドの対である。
【0033】
標的分子を含有した流体151を空洞102に供給する前に、プローブが空洞102内の一部の表面に固着するようにプローブ分子は空洞内に提供されている場合がある。
【0034】
あるいは、反応したプローブ/標的の対、又は、発光団に結合した他の生物学的分子を発光センサ101に供給することができる。
【0035】
標的分子、又はプローブ分子には、発光若しくは蛍光特性を有したラベリング剤を提供することができるか、又は、前記ラベリング剤に結合させることができる。そのようなラベリング剤は、発光団、量子ドット、フルオロフォア、発色団、染料、発光ナノ粒子、ナノロッド、ビーズ、及び、金粒子を含む。
【0036】
入力反射鏡103には、放射線源111から生じた入力放射線110を受ける能力があり、入力放射線110のうちわずかな力を空洞102に透過する能力がある。入力反射鏡103と出力反射鏡104の距離が入力放射線110の波長に対する共鳴条件を満たす場合、空洞102内の放射線の空洞励起エネルギーは増加する。従って、発光粒子150が増加した空洞励起エネルギーの放射線で照射及び励起された場合、発光粒子150は発光放射線120を放出する。発光放射線120の力の一部が出力反射鏡104を通して透過され、検出器130により受け取られる。従って、検出器130は、例えば発光粒子150の存在あるいは量に関する情報を提供することができる。
【0037】
例えば放射線エネルギー又は空洞励起エネルギー等のエネルギーが参照される場合はいつでも、これは、放射力又は空洞励起力として等しく理解することができる。
【0038】
図1における検出システム100の概略図は、検出システムにおける単なる一例である。従って、本発明の他の実施形態から明らかになるように、発光センサ101、検出器130、入力放射線110、及び容器160を組み合わせる他の方法が存在する。例えば、検出器130は、発光センサ101の前に配置することができる。
【0039】
図2は、入力反射鏡253及び出力反射鏡254を含む発光センサ101の例証である。入力反射鏡253は、条片201及び開口部211により形成されたワイヤグリッド270である。同様に、出力反射鏡254は、条片202及び開口部212により形成されたワイヤグリッド270である。条片201、202及び開口部211、212は、図2の面に垂直な方向に延びる縦次元を有している。
【0040】
従って、入力反射鏡253のワイヤグリッドの開口部211又は条片201の縦次元は、出力反射鏡254のワイヤグリッドの開口部212又は条片202の縦次元と平行に方向づけられる。開口部211及び212、又は、条片201及び202は、厳密に平行である必要はなく、すなわち、平行から、例えば5度等、数度のずれは許容されることが理解されるべきである。
【0041】
条片201及び202は、例えばアルミニウム、金、又は銀等、いかなる金属からも作製することができる。ワイヤグリッドは、金属をパターン形成するための腐食技術と組み合わせた、転写−、レーザ−、干渉−、又は、深紫外線リソグラフィー等のプロセスにより作製することができる。
【0042】
条片201及び開口部211の形状は、隣接する条片間の距離D1により画定される。開口部211の幅は距離f1D1により与えられ、f1はワイヤグリッド270のデューティサイクルである。すなわち、f1は、開口部211の幅と距離D1の比である。条片202及び開口部212の形状は、距離D2、距離f2D2、及び、開口部212の幅と距離D2の比であるデューティサイクルf2により同様に画定される。
【0043】
条片201及び条片202の深度は、それぞれt1及びt2によって表示される。入力反射鏡253のワイヤグリッド270と出力反射鏡254のワイヤグリッド270の距離Sは、隙間Sにより画定される。
【0044】
入力反射鏡253と出力反射鏡254の隙間Sはナノ空洞260を構成し、そのナノ空洞260は、空洞260内の放射線223、224のエネルギーを増強する能力がある。
【0045】
入力反射鏡253及び出力反射鏡254を形成するワイヤグリッドは、環境203、151により取り囲まれる。環境203、151は、例えば水等の流体であり得る。従って、環境203は、開口部211、212、並びに空洞260を充填することができる。入力及び出力反射鏡253、254の間の空洞206内に存在する環境203は、一般に、入力反射鏡253の前、又は、第2の反射鏡254の後ろに存在する環境203とは異なり得ることに気づくべきである。
【0046】
発光センサ101は、開口部の縦次元と平行に偏光された電場を有した入力放射線を受けるよう方向づけられた入力反射鏡のワイヤグリッド270の開口部を有することによって、入力放射線221を受けるようされる。従って、入力放射線221はTE偏光され(230)、すなわち、入力放射線は、入力放射線221の電場が図2の面に対して垂直に偏光される偏光方向を有する。入力放射線221のうちわずかな力が、反射された放射線222として入力反射鏡253から反射されるが、入力放射線221のうち別の部分の力が入力反射鏡を通って空洞260内に透過される。空洞260内の放射線は順方向伝搬性の放射線223及び逆方向伝搬性の放射線224を含む。空洞260内の放射線のうちわずかな力が、透過された放射線225として出力反射鏡254を通って透過される。空洞260内の放射線のうち別の部分の力が、反射された放射線222として入力反射鏡253を通って透過される。
【0047】
空洞260が共鳴において作用するよう入力放射線221の波長及び距離Sが選択された場合、空洞内の空洞放射線における放射線223、224のエネルギーの増強が得られる。従って、空洞励起エネルギーが増加するので、発光放射線120も等しく増加する。
【0048】
入力放射線221は、例えばレーザ、ガスレーザ、又は、ダイオードレーザ等の放射線源111により生じる。あるいは、入力放射線221は、広範囲なスペクトルバンド幅を有した発光ダイオード等、他の放射線源により生じることができる。
【0049】
入力放射線221の波長は、10〜400nmのUVスペクトル、380〜780nmの可視スペクトル、又は、750〜1600nmの赤外スペクトル内であり得る。放射線の波長が参照される場合、1つの波長数が参照されるけれども、放射線は、例えば波長数の中央に位置するスペクトル分布を有しているとして理解されるべきである。
【0050】
距離D1及びD2は、入力放射線の波長に応じて10〜1000nmの範囲内にあり得る。深度t1及びt2は、例えば100nm等、10〜1000nm、好ましくは50〜200nmの範囲内にあり得る。デューティサイクルf1及びf2は、0から1に及ぶことができる。
【0051】
ワイヤグリッドの面における開口部の幅f1D1及びf2D2は、入力放射線110の回折限界に等しいか、又は、それよりも小さいことが好ましい。ここで、さらには詳細な説明において他の箇所でも、回折限界は、開口部211、212、及び空洞260を充填する媒体における入力放射線の回折限界として理解されるべきである。ワイヤグリッド270の面における、条片201、202及び開口部211、212の縦次元は、入力放射線110の回折限界よりも大きい長さを有する。例えば、開口部211、212、及び/又は空洞260を充填する環境203が水の屈折率に相当する1.3という屈折率を有していると仮定すると、縦次元の長さは、380nmという入力放射線110、221の波長に対して146nmを超えるか、又は、例えば、780nmという入力放射線110、221の波長に対して300nmを超える。
【0052】
回折限界よりも小さい1次元、及び、回折限界よりも大きい1次元を有したワイヤグリッド270は、1次元のワイヤグリッドと呼ばれることになる。従って、1次元のワイヤグリッド270の開口部は、長方形の孔又は長円形の孔等、細長い孔として見ることができる。
【0053】
入力反射鏡253及び出力反射鏡254のワイヤグリッドは、反射鏡を流体151に対して浸透性にする開口部を有しているということが利点である。従って、発光粒子を含有した流体151を、ワイヤグリッド内の開口部を介して空洞160内に移すことができる。
【0054】
図3は、ワイヤグリッド270の反射及び透過の特性におけるシミュレーションを示したグラフ300であり、デューティサイクルfaの関数として、1つのワイヤグリッド270の、曲線311は反射係数を示し、曲線312は透過係数を示している。従って、グラフ100の横座標に沿ったデューティサイクルfaは、図2に関して記述されたf1又はf2に相当し、すなわち、faは距離D1又はD2の幅に対する開口部の幅の比である。グラフ300の縦座標は、それぞれ反射曲線311及び透過曲線312に対する反射係数R及び透過係数Tを示している。
【0055】
0と等しいデューティサイクルfaは、開口部211又は212の幅が0であるワイヤグリッド270に等しく、すなわち、ワイヤグリッド270は完全に閉じている。1と等しいデューティサイクルfaは、条片201又は202の幅が0であるワイヤグリッド270に等しく、すなわち、ワイヤグリッド270は完全に開いている。
【0056】
図3は、デューティサイクルfaが増加する(すなわち、ワイヤグリッド270はより開くようになる)に従い、ワイヤグリッド270の反射係数311は減少するが、デューティサイクルfaが増加するに従い、ワイヤグリッド270の透過係数312は増加することを示している。
【0057】
図3の曲線は、650nmの波長を有し且つTE偏光された、すなわち、放射線の電気要素が条片201又は202の縦次元に沿って方向づけられた入力放射線を使用して算出される。ワイヤグリッド270は100nmの深度t1を有し、距離D1は200nmである。条片201の材料はアルミニウムである。
【0058】
図4は、図2に示された発光センサに相当する発光センサ101の空洞206内の放射線223、224のエネルギー増強のシミュレーションを示したグラフ400である。空洞260は、入力反射鏡253のワイヤグリッド270と出力反射鏡254のワイヤグリッド270の隙間Sにより形成される。等高線に沿った領域412は、横座標に沿ったデューティサイクルf1及び縦座標に沿ったデューティサイクルf2の関数として、シミュレートしたエネルギー増強を示している。従って、等高線に沿った領域412は、f1及びf2を変え、各変更に対するエネルギー増強を引きだすことにより算出される。エネルギー増強数411は、異なる等高線412に対する数字で表されたエネルギー増強を示している。エネルギー増強数411は、1という数字で表されたエネルギー値を有する入力放射線110に相関して理解されるべきである。例えば、入射する放射線が1というエネルギー値を有していると仮定すると、100%反射する鏡の前のエネルギー増強は、鏡上で反射されることになる垂直に入射する放射線に対して2である。
【0059】
図3中の曲線は、650nmの波長を有し且つTE偏光された、垂直に入射する入力放射線110を使用して算出される。ワイヤグリッドは100nmの深度t1及びt2を有し、距離D1及びD2は200nmである。条片201の材料はアルミニウムである。共鳴条件が空洞260内の入力放射線110に対して満たされるように、隙間Sは選ばれる。
【0060】
このように、図4に示された等高線のシミュレーションは、最高のエネルギー増強が見つかるまでデューティサイクルf1及びf2を変えることによって最適のデューティサイクルf1及びf2を得る方法を提供する。あるいは、入力反射鏡253、103の最適の反射係数、及び/又は、出力反射鏡254、104の最適の反射係数を、最高のエネルギー増強が見つかるまで入力反射鏡及び/又は出力反射鏡の反射係数を変えることによって得ることができる。
【0061】
図5は、図4と同じシミュレーションに基づくグラフ500を示しており、デューティサイクルf2は0.25に固定され、デューティサイクルf1は横座標に沿って0から1まで変更されている。縦座標は、エネルギー増強512を示している。エネルギー増強曲線511は、デューティサイクルf1が0.63の場合に51.6というピークの増強を示している。
【0062】
図5を参考にすると、図3から反射係数を読むことにより確証できるように、出力鏡のワイヤグリッド270のデューティサイクルf2=0.25は、約0.98の反射係数に相当するが、入力鏡のワイヤグリッド270のデューティサイクルf1=0.63は、約0.93の反射係数に相当する。
【0063】
このように、51.6という高いエネルギー増強が、特定の高い反射係数を有した入力鏡253及び出力鏡254の使用により得られる。例えば、ワイヤグリッドの形状が図4〜5の例とは異なる、又は、入力放射線221が異なる波長を有する等、入力鏡253及び出力鏡254の他の配置において、他の最適なデューティサイクルf1及びf2を算出することができる。
【0064】
しかし、空洞260において高いエネルギー増強を得るために、入力反射鏡253及び出力反射鏡254は、特定の高い反射係数を有するべきである。好ましくは、入力反射鏡253の反射係数は0.5を超えているべきであり、それは、0.9未満のデューティサイクルに対応し、図4から確証することができるように5〜10以上のエネルギー増強を生じる。より好ましくは、入力反射鏡253の反射係数は0.7を超えているべきであり、それは、0.85未満のデューティサイクルに対応し、15〜20以上のエネルギー増強を生じる。さらにより好ましくは、入力反射鏡253の反射係数は0.8を超えているべきであり、それは、0.8未満のデューティサイクルに対応し、25〜30以上のエネルギー増強を生じる。
【0065】
同様に、出力鏡254の反射係数は、好ましくは0.5を超えているべきであり、それは、0.9未満のデューティサイクルに対応し、図4から確証することができるように0〜5以上のエネルギー増強を生じる。より好ましくは、入力反射鏡253の反射係数は0.8を超えているべきであり、それは、0.75未満のデューティサイクルに対応し、10〜15以上のエネルギー増強を生じる。さらにより好ましくは、入力反射鏡253の反射係数は0.9を超えているべきであり、それは、0.65未満のデューティサイクルに対応し、25〜30のエネルギー増強を生じる。
【0066】
図6Aは、入力放射線221、110のうち、出力反射鏡254のワイヤグリッド270を通って透過された割合のシミュレーションを示したグラフ600である。等高線611は、放射線エネルギーに対する、出力反射鏡254のワイヤグリッド270を通って透過された入力放射線エネルギーの割合における数値612を有した領域を示している。数値612により与えられた放射線の比は、透過割合と呼ばれる。
【0067】
従って、グラフ600により、約0.1パーセントの入力放射線エネルギー221が出力反射鏡を通って透過されると示されている。特定の計算は、デューティサイクルf1=0.63及びf2=0.25に対して透過された放射線の割合が、図6Aから確証することができるように0.16パーセントであることを示している。0.16パーセントの透過割合を図5に示されている51.4のエネルギー増強と比較することにより、51.6/0.0016=32230という出力反射鏡裏の入力放射線の抑制割合が生じる。
【0068】
図6Bは、例えば空洞102、260内の発光粒子150が浸透性の出力反射鏡104、254のワイヤグリッドを通って移動できる場合にあり得るように、一部の発光粒子650が出力反射鏡104、254の後ろに置かれた発光センサ101の例証である。前に記述された特徴の数字と同一の数字を有した図6Bにおける特徴は、前に記述された特徴と同一又はそれに対応する機能を有しており、従って、ここでは説明は省略される。空洞内部の発光粒子150により生じる発光120のエネルギーは、ここでもエネルギー増強率(例えば51.6)に相当する空洞102内部の放射線のエネルギーと比例しているため、32250の抑制率は、空洞裏の発光粒子650により生じる発光放射線620が、空洞内部の発光粒子150により生じる発光120と比較してどのくらい効率的に抑制されているかを示している。すなわち、空洞外の発光粒子650は、空洞内部の発光粒子を励起する放射線エネルギーよりも約32250(抑制率)倍低い放射線エネルギーで励起されるため、空洞外で生じた発光620は、空洞内部で生じた発光120よりも32250倍低い。大きな抑制率は、例えば発光粒子150の量又は濃度のより正確で局在化された測定を可能にするため有利である。
【0069】
図7は、入力反射鏡253と出力反射鏡254の間の隙間スペース711、S、の関数として、空洞260におけるエネルギー増強曲線710を示したグラフ700を示している。エネルギー増強が縦座標712に沿って示されている。グラフ700は、隙間スペース711が空洞260内の入力放射線211の共鳴に対する条件を満たす位置を示している。共鳴条件を満たす隙間スペース711の第1の位置は、約198nmに等しい隙間の距離Sにより与えられる。グラフ701における曲線715は、第1のエネルギー増強曲線710の拡大されたバージョンを示している。
【0070】
エネルギー増強曲線710のスペクトルバンド幅は隙間の距離Sと逆比例するため、隙間スペース711又は隙間の距離Sは、共鳴条件を満たす最小の隙間の距離Sとして有利に選ばれる。
【0071】
図8では、グラフ800の曲線810が、隙間711、S、がS=200nmであるように選ばれた場合に、曲線810により与えられた、空洞260内部の増強エネルギー812の波長依存性811を示している。図7において描写されたエネルギー増強曲線710と比較して、51.4という最大エネルギー増強率が、ここでは、656nmの波長にあり、S=200nmを有した空洞260の1番目の縦共鳴モードに相当している。2番目の縦モードである348nmの波長周辺の増強エネルギーにおける第1のピークは、たったの7.7という有意に低いエネルギー増強、並びに、FWHMがたったの7.2nmである656nmにおけるスペクトル分布と比較してより広範なスペクトル分布(FWHM=22nm)を示している。エネルギー増強率及びFWHM値における差は、348nmの波長における入力及び出力反射鏡102、104のより低い反射係数並びにより高い透過係数によって生じる。グラフ801の曲線815は、656nmでの共鳴ピークをより詳細に示している。
【0072】
図9は、曲線911が、図6Aに関連して規定された抑制率913すなわち空洞260内部の放射線エネルギーと透過割合の比を示すグラフ900である。曲線911は、波長912(マイクロメートル)の関数として、抑制率913を示している。
【0073】
図10は、発光センサ201の厚さに対する位置1013の関数として、放射線エネルギー密度1012を示したグラフである。入力反射鏡253は、線1010により示され、出力反射鏡は線1011により示されている。縦座標1014は、正規化されたエネルギー密度を示している。入力放射線110が位置0にて入力鏡253のワイヤグリッド270に入ると、放射線エネルギーは開口部の深度t1を通して増加する。空洞1015内では、エネルギーが出力反射鏡1011のワイヤグリッド270の端面で0に近づくように放射線エネルギーが減少し始めるまで、放射線エネルギーはさらなる増加を経験する。
【0074】
入射放射線110はTE偏光されるけれども、例えば発光粒子により生じる等、ある量のTM偏光された放射線を入力鏡253の前で生じる場合がある。電場方向は開口部211の縦方向に垂直しているため、TM偏光された放射線はワイヤグリッド270を通して効果的に透過される。従って、例えばたった0.18%のTE偏光された入力放射線を出力反射鏡254のワイヤグリッドを通して透過するのに対して、100%ほどのTM偏光された入力放射線を出力反射鏡254のワイヤグリッド270を通して透過する場合がある。
【0075】
細長い開口部の幅が回折限界よりも小さく、細長い開口部の縦次元が回折限界よりも大きい1次元のワイヤグリッドを使用することの代わりに、ワイヤグリッド270の面における開口部の2次元が回折限界よりも小さい2次元のワイヤグリッド270を使用することが可能である。従って、2次元のワイヤグリッド270の開口部は、円形、長円形、正方形、又は長方形の孔として理解することができる。
【0076】
図11は、2次元のワイヤグリッド1100の例を示しており、ワイヤグリッド1100の面における開口部f11D1及びf12D2の2次元は回折限界よりも小さい。図11に示された2次元のワイヤグリッド1100も図2に示された1次元のワイヤグリッド260も、入力反射鏡253及び出力反射鏡254のうちどれに対しても等しく使用することができ、従って、ワイヤグリッドが参照される時はいつでも、これは2次元のワイヤグリッド270、1100、又は、1次元のワイヤグリッド270、1100であるとして理解されるべきである。
【0077】
1次元のワイヤグリッド270と同様に、2次元のワイヤグリッド270も流体に対して浸透性である。
【0078】
2次元のワイヤグリッド270は、TM偏光された入射放射線に対する反射特徴を有しており、図3において描かれたTE偏光された入射放射線に対する反射特徴に等しいか、又は、それに相当する。従って、入力反射鏡103、254が2次元のワイヤグリッドである場合、TM偏光された放射線の、入力反射鏡を通った、従って出力反射鏡も通った透過は、入力反射鏡103の面における1次元のワイヤグリッド270を使用した場合と比較して、非常に減少される。
【0079】
入力反射鏡254に対して2次元のワイヤグリッドを使用することの利点は、入力反射鏡103前で生じたTE偏光された放射線もTM偏光された放射線も抑制されるということである。すなわち、空洞の前で生じたそのような放射線の空洞を通した透過は減少される。従って、空洞(102)と共鳴する(すなわち、増強される)放射線のスペクトル部分からは除いて、入力放射線110及び/又は発光センサ101の前に置かれた発光粒子により生じた発光放射線120の形状のTE及びTM偏光された放射線は、発光センサ101を通して透過するのを実質的に禁止される。一般に、生じた発光のスペクトルは、入力放射線110のスペクトルよりも有意により広範(一般的に50nm)である(例えば、HeNeレーザの入力放射線110のスペクトルは、20cmのコヒーレンス長と調和して2pm(ピコメートル)であり得る)。発光センサ101の前で生じる発光放射線のスペクトルと入力放射線110のスペクトルにおける差のため、発光センサ101の前で生じる発光放射線は、空洞102内で生じる発光放射線120に対して、効果的に抑制されるか、又は、少なくとも実質的に抑制される。
【0080】
従って、出力反射鏡254はTM偏光された放射線に対して優れた透過を有し、TM偏光された放射線に対する有意なエネルギー増強を阻止するため、2次元のワイヤグリッド270と1次元のワイヤグリッド270の隙間において形成された空洞260は、TM偏光された放射線に対して低フィネスの空洞として理解することができる。
【0081】
入力反射鏡253に対して2次元のワイヤグリッド270が使用される場合、TM偏光された発光放射線120の一部は、直接1次元の出力反射鏡254を通って放出されるが、TM偏光された発光放射線254の別の部分は、入力反射鏡253の2次元のワイヤグリッド270に向かって放出され、放射線は出力反射鏡254に向かって逆反射され、且つ、出力反射鏡254を通り抜けて反射される。
【0082】
2次元のワイヤグリッド270の場合、ワイヤグリッド270の2つのデューティサイクルf11及びf12を開口部の面における2次元に対して規定することができる。特別な場合において、f11はf12に等しくなる。デューティサイクルf11及びf12は、1次元のワイヤグリッドと同じ方法で2次元のワイヤグリッド270に対して規定される。すなわち、第1のデューティサイクルf11は、ワイヤグリッドの面における第1の方向において規定され、第2のデューティサイクルf12は、ワイヤグリッドの面における第2の方向において規定され、そこで、第2の方向は第1の方向に対して垂直又は実質的に垂直である。
【0083】
f11がf12に等しい特別な場合において、最適なデューティサイクルf11及びf2を得る方法は、図4に関して記述されたエネルギー増強を最適化する方法に一致する。従って、その方法には、最高のエネルギー増強が見つかるまでデューティサイクルf11及びf2を変えるステップが含まれる。f11がf12とは異なる一般的な場合において、最高のエネルギー増強が見つかるまでデューティサイクルf11、f12、及びf2を変えるにより、エネルギー増強を最適化することができる。
【0084】
図12に示されているように、ガラス等の透明な基板1201上にワイヤグリッド270を固定することは有利であり得る。従って、入力反射鏡は透明な基板1201上に固定された1次元又は2次元のワイヤグリッド270、1100を含むことができる。あるいいは、又は、さらに、出力反射鏡は、透明な基板1201上に固定された1次元のワイヤグリッド270又は2次元のワイヤグリッド270、1100を含むことができる。透明な基板1201は、ワイヤグリッド1201のどちらかの側面に置くことができる。透明な基板1201は、入力反射鏡103に使用される場合は入力放射線110に対して透明であるべきであるが、透明な基板は、出力反射鏡104に使用される場合は入力放射線110に対しても発光放射線120に対しても透明であるべきである。入力反射鏡も出力反射鏡も透明な基板を利用する場合、流体150は反射鏡間の開口部を介して空洞102に供給することができる。
【0085】
入力反射鏡103の前に検出器130を置くことは有利であり得る。この場合、出力反射鏡104は、浸透性であるか又は透明な基板に固定された有利な2次元のワイヤグリッドである。入力反射鏡を通して検出器130に向かってTM偏光された発光放射線を透過するために、入力反射鏡は、浸透性であるか又は透明な基板に固定された有利な1次元のワイヤグリッドである。
【0086】
入力反射鏡103又は出力反射鏡104は、図13において示されているように、非浸透性の反射鏡1301であり得る。非浸透性の反射鏡1301は、例えば金属被覆された鏡若しくは誘電体被覆された鏡13等の反射面又は鏡であり得る。反射面1301は、完全に反射的又は半透明であり得る。
【0087】
発光検出器101は、スペクトル及び/若しくは偏光フィルタリング目的のために入力反射鏡103の前若しくは出力反射鏡104と検出器130の間に置かれた、波長フィルタ、偏光フィルタ、又は、他の光学的要素と組み合わせることができる。
【0088】
次に図14を参考にすると、本発明に従い、反射鏡103と254の間に依然として画定されている空洞は、固体の材料から作製され且つ隙間Sに一致する厚さを有した平板1401を含むことができる。
【0089】
好ましくは、この平板1401は、少なくとも400から900nmの波長に対して透明である。
【0090】
例えば反射鏡254等、反射鏡のうち少なくとも1つは、流体検体(analyte fruid)120に対して、条片202間の開口部1402又はスリット1402を介して浸透性である。
【0091】
平板1401とこの浸透性の反射鏡254の界面で、及び、前記開口部又はスリット内で、捕獲プローブ660は置かれる。
【0092】
媒体120内に存在する発光分子670又は発光ラベル分子670は、これらの捕獲プローブ660に結合することができる。
【0093】
前記界面は空洞の一部であるため、発光分子670の励起は、依然として前記空洞内の励起光の増強から利益を得ることができる。
【0094】
励起光強度のエバネッセントの減衰も、スリット又は開口部外にある発光分子又は発光でラベルされた分子650により生じた発光が、スリット又は開口部内にある発光分子又は発光でラベルされた分子670により生じた蛍光よりも実質的に低いことを確実にする。
【0095】
さらに、例えば腐食技術により実現することができる、開口部又はスリットの深度を平板材料内に(例えば図14の矢印EXの方向に)拡張することによって、空洞のより中心(中心は隙間Sの厚さの半分を意味する)に向かって置かれた結合部位を、開口部又はスリット1402と平板1401の界面に捕獲プローブ660を置くことにより生じることが可能である(励起エネルギーが最大の場合、この点においては図10を再度参照されたい)。
【0096】
そのような平板1401内への開口部又はスリット1402の拡張におけるさらなる利点は、捕獲プローブを置くことができる表面積の増加である。
【0097】
反射鏡254が1次元のワイヤグリッドである場合、装置1400は反射鏡103を介した励起光で照射され、励起された発光分子670により生じた発光放射線の検出は、励起源とは反対である装置側、すなわち、反射鏡254側に設置された検出器により行われる。
【0098】
反射的な配置において、検出器は、励起源と同じ側、すなわち、反射鏡103の側に設置することができる。
【0099】
この場合、反射鏡254による強い反射を経るために、励起光をTE偏光することができる。
【0100】
反射鏡254が2次元のワイヤグリッドである場合、励起源とは反対である装置側、すなわち、反射鏡254側に検出器を置くことが好ましい。
【0101】
本発明は特定の実施形態に関して記述されてきたけれども、本明細書において規定された特定の形態に限定するよう意図されない。正しくは、本発明の範囲は付随の特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップの存在を除外しない。さらに、請求項によってそれぞれ異なる特徴を含むことができるけれども、これらはおそらく有利に組み合わせることができ、ことなる請求項に含むことは、特徴の組合せが可能でない及び/又は有利でないと意味しない。加えて、単数名詞の言及は、複数形を除外しない。従って、不定冠詞、定冠詞、「第1」、「第2」等の言及は、複数形を排除しない。さらに、特許請求の範囲内の参照番号は、その範囲を限定するとして解釈するべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の所定の波長を有した入力放射線を受ける能力がある入力反射鏡、及び、出力反射鏡を含む発光センサであって、
前記入力反射鏡と前記出力反射鏡の隙間が、前記第1の所定の波長を有した放射線の空洞励起エネルギーを増加させる能力がある空洞を構成し、該空洞は発光放射線を出力する能力があり、
前記入力反射鏡及び前記出力反射鏡のうち少なくとも1つが、開口部を有したワイヤグリッドであり、該ワイヤグリッドの面における前記開口部のうち少なくとも1次元が、前記入力放射線の回析限界よりも小さく、
前記入力反射鏡の反射係数が、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光に対して0.5を超え、さらに、
前記出力反射鏡の反射係数が、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光に対して0.5を超える、
発光センサ。
【請求項2】
前記入力反射鏡及び前記出力反射鏡のうち少なくとも1つが、開口部を有したワイヤグリッドであり、該ワイヤグリッドの面における前記開口部のうち少なくとも2次元が、前記入力放射線の回析限界よりも小さい、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項3】
前記入力反射鏡の前記ワイヤグリッドの前記開口部が、前記入力放射線を受けるよう方向づけられ、前記入力放射線の電場が、前記開口部の縦次元に平行して偏光される、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項4】
前記入力反射鏡のワイヤグリッドの開口部の縦次元が、前記出力反射鏡の前記ワイヤグリッドの前記開口部の縦次元に平行して方向づけられる、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項5】
前記入力反射鏡の反射係数が、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光方向に対して、例えば0.93等、0.7を超える、好ましくは0.8を超える、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項6】
前記出力反射鏡の反射係数が、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光方向に対して、例えば0.98等、0.8を超える、好ましくは0.9を超える、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項7】
前記出力反射鏡のワイヤグリッドのデューティサイクルが、例えば0.25等、0.9未満、好ましくは0.75未満、より好ましくは0.65未満であり、前記入力反射鏡のワイヤグリッドのデューティサイクルが、例えば0.63等、0.9未満、好ましくは0.85未満、より好ましくは0.8未満である、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項8】
前記入力反射鏡のワイヤグリッド及び前記出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つが流体に対して浸透性がある、請求項1又は2に記載の発光センサ。
【請求項9】
前記入力反射鏡のワイヤグリッド及び前記出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つが透明な基板上に固定される、請求項1又は2に記載の発光センサ。
【請求項10】
前記入力反射鏡及び前記出力反射鏡のうち少なくとも1つが、非浸透性の反射鏡である、請求項1又は2に記載の発光センサ。
【請求項11】
発光放射線を生じる発光センサの使用であって、前記発光センサが第1の所定の波長を有した入力放射線を受ける能力がある入力反射鏡、及び、出力反射鏡を含み、
前記入力反射鏡と前記出力反射鏡の隙間が、前記第1の所定の波長を有した放射線の空洞励起エネルギーを増加させる能力がある空洞を構成し、該空洞は前記発光放射線を出力する能力があり、
前記入力反射鏡及び前記出力反射鏡のうち少なくとも1つが、開口部を有したワイヤグリッドであり、該ワイヤグリッドの面における前記開口部のうち少なくとも1次元が、前記入力放射線の回析限界よりも小さく、
前記入力反射鏡の反射係数が、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光に対して0.5を超え、さらに、
前記出力反射鏡の反射係数が、前記第1の所定の波長を有した放射線及び前記入力放射線の偏光に対して0.5を超える、
使用。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのデューティサイクルを選ぶ方法であって、
前記入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルの関数として空洞励起エネルギーを決定する能力があるモデルを提供するステップ、
前記入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルを変えるステップ、
前記ワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルにおける各変更に対して前記空洞励起エネルギーを算出するステップ、
前記入力反射鏡及び/又は出力反射鏡のワイヤグリッドのうち少なくとも1つのデューティサイクルの値を選ぶステップ、
を含む方法。
【請求項13】
バイオセンシングのための検出システムであって、
請求項1に記載の発光センサ、
入力放射線を生じる能力がある放射線源、
発光放射線を検出する能力がある検出器、及び
前記発光センサに発光粒子を供給する能力がある容器
を含む、検出システム。
【請求項14】
発光センサを使用したバイオセンシングの方法であって、
請求項1に記載の発光センサを提供するステップ、
前記入力反射鏡と前記出力反射鏡の間の空洞に発光粒子を提供するステップ、
前記入力反射鏡を入力放射線で照射するステップ、
前記発光粒子から放出される発光放射線を検出するステップ、
を含む方法。
【請求項15】
前記隙間が平板、好ましくはガラスの基板を含み、所定の発光分子又は発光でラベルされた分子が結合することができる捕獲プローブが前記反射鏡のうちの1つと前記平板の界面付近で固定化される、請求項1に記載の発光センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−508508(P2010−508508A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534046(P2009−534046)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054425
【国際公開番号】WO2008/053442
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】