説明

空調コア

【課題】小型化を実現しつつ、耐久性の高い空調コアを提供する。
【解決手段】実施例1の空調装置が備える空調コア100は、複数のペルチェ素子9a〜9dと、各ペルチェ素子9a〜9dの各一面90aに設けられた内側フィン9a、9bと内部を冷却水が流通可能なチューブ7とを備えている。チューブ7は、インレット部23と、インレット部23と連通し、環状に形成されて各組付体19、21保持する環状部70aと、環状部70aと連通し、インレット部23と隣接するアウトレット部25とからなる。ペルチェ素子9a、9bと内側フィン9a及び熱交換用フィン15は組付体19を構成しており、ペルチェ素子9c、9dと内側フィン9b及び熱交換用フィン15は組付体21を構成している。各ペルチェ素子9a〜9dは、各一面90aが内側を向き、各他面90bが外側を向きつつ環状部70aに隣接するように整列している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調コアに関する。空調コアとは、クーラコア又はヒータコアとして用いられ得る空調用熱交換器である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2等に従来のクーラコアが開示されている。このクーラコアは、一面側が吸熱面となり、他面側が放熱面となる複数のペルチェ素子と、各ペルチェ素子の一面側に設けられ、空気に接触可能なフィンと、複数本のチューブとを備えている。各ペルチェ素子は、各一面側が内側を向き、各他面側が外側を向くように整列されている。また、各ペルチェ素子の外側、すなわち各ペルチェ素子の他面側には複数の放熱器が設けられている。
【0003】
各チューブの内部には、熱交換媒体としての冷却水を流通可能な液体流路が形成されている。そして、各チューブは、それぞれ放熱器に接続されており、この放熱器を介して各チューブが連通し、二つの流路を形成している。各流路の各端部は、インレット部とアウトレット部とにそれぞれ接続されており、これらのインレット部及びアウトレット部を介して各流路が連通するようになっている。
【0004】
このように構成されたクーラコアを例えば空調装置に用いる場合、フィンと接触する空気の熱が各ペルチェ素子により吸熱されて空気が冷却される。この際、吸熱された空気の熱は冷却水に放熱されるため、冷却水は加熱されることとなる。こうして、このクーラコアでは、冷却された空気を室内に供給して室内の冷房を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−339516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなクーラコアについては、小型化と、長期間の使用に耐え得る耐久性の向上とが求められている。特に、車両においては、搭載スペースに対する制限が厳しいとともに、走行により絶えず生じる振動への対処がより重要である。このため、上記のクーラコアを車両用の空調装置として採用するためには、上記の各要求を満たすことが強く求められる。
【0007】
この点、上記従来のクーラコアでは、各チューブが各ペルチェ素子の外側に設けられた各放熱器に接続されているため、クーラコアにおける各チューブの取り回しが複雑である。また、このクーラコアでは、各放熱器と各チューブとの間、すなわち各ペルチェ素子の外側と各チューブとの間に不必要な空間が生じてしまう。これらのため、このクーラコアでは小型化が難しくなっている。
【0008】
また、このクーラコアでは、各チューブが各放熱器に接続されているに過ぎず、各チューブによって、各ペルチェ素子を十分に固定することができなくない。このため、このクーラコアでは、その剛性が低く、耐久性についても懸念が生じる。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、小型化を実現しつつ、耐久性の高い空調コアを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の空調コアは、複数のペルチェ素子と、
各該ペルチェ素子の一面に設けられたフィンと、
内部を液体からなる熱交換媒体が流通可能なチューブとを備え、
前記チューブは、インレット部と、該インレット部と連通し、環状に形成されて各前記ペルチェ素子を保持する環状部と、該環状部と連通し、該インレット部と隣接するアウトレット部とからなり、
各該ペルチェ素子は、前記一面が内側を向き、他面が外側を向くように該環状部に隣接していることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の空調コアでは、各ペルチェ素子の外側にチューブの環状部が配置されている。そして、この環状部で各ペルチェ素子の外側から各ペルチェ素子を保持する。このため、この空調コアでは、各ペルチェ素子が環状部の内側に位置し、各ペルチェ素子及び各フィンが環状部によって保持されつつ、囲包された状態となる。このため、この空調コアでは、各ペルチェ素子に対するチューブの取り回しが簡単であるとともに、各ペルチェ素子の外側とチューブとの間に不必要な空間も生じ難い。
【0012】
また、この空調コアでは、環状部によって各ペルチェ素子が囲包されることから、その環状部の内側で各ペルチェ素子を十分に固定することが可能となっている。このため、この空調コアでは、その剛性を高くすることが可能となっている。
【0013】
そして、この空調コアでは、各フィンを介して各ペルチェ素子の一面側を通過する空気に対して吸熱又は放熱を行い、空気を冷却又は加熱することが可能となっている。また同時に、この空調コアでは、各ペルチェ素子がチューブ内の液体に対して放熱又は吸熱を行うことで、液体を加熱又は冷却することが可能となっている。
【0014】
したがって、本発明の空調コアによれば、小型化を実現しつつ、その耐久性を高くすることが可能となる。
【0015】
本発明の空調コアにおいては、ペルチェ素子による吸熱又は放熱を受けて冷却又は加熱された空気を室内に供給して室内の空調を行っても良く、ペルチェ素子による放熱又は吸熱を受けた液体の熱や冷熱を利用して、室内の空調を行っても良い。また、このペルチェ素子は、一面側と他面側とで吸熱面と放熱面とが切り替え可能に構成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の空調コアにおける熱交換媒体としての液体としては、水や不凍液等を採用することができる。この水等は、ペルチェ素子による吸熱又は放熱のために専用に用いられる水等であっても良く、例えば、車両の空調装置としてこの空調コアを用いる場合には、エンジン等の冷却水等を利用しても良い。
【0017】
インレット部とアウトレット部とは互いに固定されていることが好ましい(請求項2)。この場合、インレット部とアウトレット部とを互いに固定することで生じる締付力が環状部に対して均等に伝達される。このため、この空調コアでは、チューブの環状部において、各ペルチェ素子を挟持する力が生じ、各ペルチェ素子を保持する力がより向上する。このため、空調コアでは、その剛性がより高くなり、耐久性をより向上させることが可能である。
【0018】
ペルチェ素子及びフィンを有する複数の組付体が環状部内に組み付けられていることが好ましい(請求項3)。この場合には、空調コアの製造コストを低廉化させることが可能である。
【0019】
また、上記の空調コアにおいて、フィンはペルチェ素子から直角に延びる複数の板状に形成され得る。そして、一方の組付体のフィンの間に他方の組付体のフィンが位置するように、一対の組付体が対面状態で組み付けられていることが好ましい(請求項4)。この場合には、環状部に対して各組付体を組み付けることが一層容易となる。このため、空調コア製造が容易となり、空調コアの製造コストを低廉化することが可能である。
【0020】
環状部の外側は断熱され得る(請求項5)。この場合には、環状部内の液体の熱が外部に放熱され難くなり、また、環状部内の液体の冷熱が外部の空気等によって加熱され難くなる。このため、この空調コアでは、液体に対するペルチェ素子の放熱及び吸熱をより効果的に行わせることができる。このため、この空調コアでは、空気に対するペルチェ素子の放熱及び吸熱がより効果的に行われ、好適に空気を加熱又は冷却することができる。このため、この空調コアでは、その空調能力を高くすることが可能となる。また、この空調コアでは、液体の熱や冷熱の利用も行い易くなる。なお、環状部の外側を断熱する方法としては、例えば環状部の外側の周囲を公知の断熱材で覆う方法が挙げられる。この場合、断熱材は環状部と近接した状態で設けられることが好ましい。これにより、環状部内の液体の熱がより外部に放熱され難くなり、また、環状部内の液体の冷熱が外部の空気等によってより加熱され難くなる。
【0021】
また、環状部の外側には、環状部と他面側で隣接する第2のペルチェ素子が設けられ得る。そして、第2のペルチェ素子の一面には、第2のフィンが設けられ得る(請求項6)。この場合には、第2のペルチェ素子及び第2のフィンによっても空気を加熱又は冷却することが可能となるとともに、第2のペルチェ素子によって、環状部内の液体をより好適に加熱又は冷却することが可能となる。このため、この空調コアでは、より好適に空調を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の車両用空調装置を示す模式構造図である。
【図2】実施例1の車両用空調装置に係り、空調コアの一部を示す部分拡大断面図である。
【図3】実施例1の車両用空調装置に係り、組み付け前の組付体を示す側面図である。
【図4】実施例2の車両用空調装置を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施例)
図1に示すように、実施例1の車両用空調装置(以下、空調装置という。)は、車両に搭載されて車室内の空調を行う。この空調装置は、空調コア100と、ラジエータ3と、コントローラ5とを備えている。このコントローラ5は電源としてのバッテリ5aに接続されている。
【0025】
空調コア100は、内部を熱交換媒体としての冷却水が流通可能なチューブ7と、公知のペルチェ素子9a〜9hと、内側フィン11a、11bと、外側フィン13a、13bとを備えている。より詳細には、チューブ7は環状に形成された環状部70aを有しており、この環状部70aの内側にペルチェ素子9a〜9dが配置され、環状部70aの外側にペルチェ素子9e〜9hが配置されている。これらペルチェ素子9e〜9h及び外側フィン13a、13bがそれぞれ、第2のペルチェ素子及び第2のフィンに相当している。また、図2に示すように、各ペルチェ素子9a〜9hの各他面90bには、熱交換用フィン15がそれぞれ設けられている。なお、各ペルチェ素子9a〜9hは、一面90a側と他面90b側とで吸熱面と放熱面とが切り替え可能に構成されている。
【0026】
図1に示すように、各ペルチェ素子9a〜9dは、各一面90aが環状部70aの内側を向き、各他面90bが環状部70aの外側を向くように環状部70aに隣接している。より具体的には、ペルチェ素子9a、9bの各他面90bが環状部70aを構成する後述の配管27と隣接しており、ペルチェ素子9c、9dの各他面90bが環状部70aを構成する後述の配管29と隣接している。
【0027】
図3に示すように、ペルチェ素子9a、9bの各一面90aには、内側フィン11aが設けられており、ペルチェ素子9c、9bの各一面90aには、内側フィン11bが設けられている。各内側フィン11a、11bには、それぞれペルチェ素子9a〜9d側から直角に延びた複数の板状の第1放熱板110a、110bが形成されている。また、各内側フィン11a、11bには、公知の温度センサ17a、17bがそれぞれ設けられている。これらの温度センサ17a、17bは、図1に示すバッテリ5aに電気的に接続されている。
【0028】
図3に示すように、各第1放熱板110a、110bの各一面には、波板状の第2放熱板111がそれぞれ設けられている。各第1放熱板110aは、組み付け時に各第1放熱板110aの間に他方の第1放熱板110bが配置可能に形成されている。同様に、各第1放熱板110bは、各第1放熱板110bの間に他方の第1放熱板110aを配置可能に形成されている。
【0029】
図2に示すように、熱交換用フィン15は、複数の板状の放熱板からなり、各内側フィン11a、11b及び後述する外側フィン13a、13bの延びる方向と直行する方向、すなわち、同図中の実線矢印で示す環状部70a(配管27)内の冷却水の流通方向に沿うように形成されている。なお、熱交換フィン15を例えば上記の第2放熱板111のような波板状の放熱板によって構成することもできる。
【0030】
これらのペルチェ素子9a、9b、内側フィン11a及び熱交換用フィン15によって、図3に示すように、組付体19を構成している。また同じく、ペルチェ素子9c、9d、内側フィン11b及び熱交換用フィン15によって組付体21を構成している(図3では熱交換用フィン15の図示を省略する。)。これらの組付体19、21は、チューブ7の内側において、同図中の矢印方向で組み付けられており、対面状態となっている。また、組付体19及び組付体21の近傍には、図1に示すように空調用ファン100aが設けられている。この空調用ファン100aは、バッテリ5aに電気的に接続されている。
【0031】
一方、ペルチェ素子9e〜9hは、各一面90aが環状部70aの外側を向き、各他面90bが環状部70a内側を向くように環状部70aに隣接している。つまり、ペルチェ素子9e〜9hは、各他面90b側で環状部70aと隣接している。より具体的には、ペルチェ素子9e、9fがペルチェ素子9a、9bと対向するように後述の配管27と隣接しており、ペルチェ素子9g、9hがペルチェ素子9c、9dと対向するように後述の配管29と隣接している。
【0032】
また、ペルチェ素子9e、9fの各一面90aには、外側フィン13aが設けられており、ペルチェ素子9g、9hの各一面90aには、外側フィン13bが設けられている。各外側フィン13a、13bには、それぞれペルチェ素子9e〜9h側から直角に延びた複数の板状の第1放熱板130a、130bが形成されている。これらの各第1放熱板130a、130bの両面には上記の第2放熱板111が設けられている。さらに、これらの外側フィン13a、13bの近傍には、それぞれ空調用ファン100b、100cが設けられている。なお、各外側フィン13a、13bについても、上記の温度センサ17a、17bを設けることもできる。
【0033】
チューブ7は、上記の環状部70aと、環状部70aと連通し、互いに隣接するインレット部23とアウトレット部25とから構成されている。
【0034】
環状部70aは冷却水が一方通行で流通可能に環状に形成された配管27〜30によって構成されている。各配管27〜30内には冷却水が流通可能な流路が形成されている。配管27は水平に延びており、一端側でインレット部23と接続するとともに、他端側で配管27と直行する配管28の一端側と接続している。配管28の他端側は、配管28と直行し、配管27と平行な配管29の一端側と接続している。そして、配管29の他端側は、配管29と直行し、配管28と平行な配管30の一端側と接続しており、配管30の他端側はアウトレット部25と接続している。インレット部23とアウトレット部25とは、連結リング31によって互いに固定されている。また、図2に示すように、配管27の両面には、それぞれ熱交換用フィン15を挿入可能な挿通孔27aが形成されている。配管29も同様である。これらの配管27〜30により、環状部70aは、組付体19、21を外側から囲包し、組付体19、21を対面状態で保持している。
【0035】
ラジエータ3は、流出口3a及び流入口3bを有している。このラジエータ3は、内部を冷却水が流通可能に構成されており、ラジエータ3内の冷却水と、ラジエータ3周りの空気との間で熱交換を行うことで、冷却水を冷却又は加熱することが可能となっている。また、ラジエータ3の近傍にはラジエータ用ファン3cが設けられている。このラジエータ用ファン3cは、バッテリ5aに対し電気的に接続されている。
【0036】
ラジエータ3の流出口3aとインレット部23とは、配管33によって接続されている。また、ラジエータ3の流入口3bとアウトレット部25とは配管35によって接続されている。配管33、35内には冷却水が流通している。配管33には第1ポンプP1が設けられており、この第1ポンプP1はバッテリ5aに対し電気的に接続されている。なお、第1ポンプP1は配管35側に設けられても良い。
【0037】
コントローラ5は、温度センサ17a、17bの制御信号に基づき、ペルチェ素子9a〜9hに通電する電力の強弱や方向等の制御を行う他、バッテリ5aを介してコントローラ5に接続された電動ポンプP1等の制御を行う。また、バッテリ5aは、ペルチェ素子9a〜9h等に対する電源として機能する。これらのコントローラ5及びバッテリ5aの構成は公知のものと同様であり、構成に関する詳細な説明を省略する。
【0038】
以上のように構成されたこの空調装置において、空調コア100では、各ペルチェ素子9a〜9dの外側、つまり、各ペルチェ素子9a〜9dの各他面90b側にチューブ7の環状部70aが配置されている。そして、このチューブ7は配管27〜30によって環状部70aが形成されており、環状部70aで各ペルチェ素子9a〜9d、すなわち、各組付体19、21の外側から各組付体19、21を対面状態で保持する。このため、この空調コア100では、各組付体19、21が環状部70aの内側に位置し、各組付体19、21が環状部70aよって囲包された状態となっている。このため、この空調コア100では、各組付体19、21に対するチューブ7の取り回しが簡単であるとともに、各組付体19、21の外側とチューブ7との間に不必要な空間も生じ難くなっている。
【0039】
また、この空調コア100では、環状部70aによって各組付体19、21が囲包されることから、その環状部70aの内側で各組付体19、21を十分に固定することが可能となっている。このため、この空調コア100では、その剛性が高くなっている。
【0040】
そして、この空調コア100を備えた空調装置では、暖房運転時及び冷房運転時において、コントローラ5は第1ポンプP1及びラジエータ用ファン3cをそれぞれ作動させる。これにより、空調コア100とラジエータ3との間で図1中に示す矢印方向で冷却水が循環する。このため、チューブ7においては、インレット部23から流入した冷却水が配管27〜30の順で各配管27〜30内を流通し、アウトレット部25から流出することとなる(同図中の破線矢印参照。)。つまり、冷却水はチューブ7の環状部70aを一方通行で流通する。また、コントローラ5は、空調用ファン100a〜100cをそれぞれ作動させて、空調コア100に対して空気を供給する。
【0041】
そして、暖房運転時には、コントローラ5がペルチェ素子9a〜9hの各一面90a側が放熱面となり、各他面90b側が吸熱面となるように電流の向きを制御しつつ、ペルチェ素子9a〜9hへの給電を開始する。これにより、空調コア100では、各内側フィン11a、11b及び外側フィン13a、13bを介して各ペルチェ素子9a〜9hの一面側を通過する空気に対して放熱を行い、空気を加熱する。そして、空調用ファン100a〜100cを介して、この加熱された空気を車室内に供給して車室内の暖房を行う。
【0042】
また同時に、この空調コア100では、各ペルチェ素子9a〜9hがチューブ7内、より詳細には、環状部70aを構成する配管27、29内の冷却水に対して吸熱を行う。この際、図2に示すように、各ペルチェ素子9a〜9hの他面90bに設けられた熱交換用フィン15により、効率よく冷却水から吸熱を行うことが可能となっている。このため、各ペルチェ素子9a〜9hの一面90a側において、好適に放熱が行われることとなる。
【0043】
なお、各ペルチェ素子9a〜9hによる吸熱を受けて冷却された冷却水は、ラジエータ3内においてラジエータ3周りの空気との熱交換によって加熱される。
【0044】
一方、冷房運転時には、コントローラ5がペルチェ素子9a〜9hの各一面90a側が吸熱面となり、各他面90b側が放熱面となるように電流の向きを制御しつつ、ペルチェ素子9a〜9hへの給電を開始する。これにより、空調コア100では、各内側フィン11a、11b及び外側フィン13a、13bを介して各ペルチェ素子9a〜9hの一面側を通過する空気に対して吸熱を行い、空気を冷却する。そして、この冷却された空気を車室内に供給して車室内の冷房を行う。
【0045】
この際、この空調コア100では、各ペルチェ素子9a〜9hがチューブ7内の冷却水に対して放熱を行う。そして、各ペルチェ素子9a〜9hによる放熱を受けて加熱された冷却水は、ラジエータ3内においてラジエータ3周りの空気との熱交換によって冷却される。
【0046】
この空調コア100では、上記の暖房運転時及び冷房運転時において、温度センサ17a、17bが検知した空気の温度に基づいて、コントローラ5が各ペルチェ素子9a〜9hに通電する電力の強弱等を制御する。このため、暖房運転時及び冷房運転時において、ペルチェ素子9a〜9hにより空気が好適に加熱又は冷却されるようになっている。
【0047】
したがって、この空調装置が備える空調コア100によれば、小型化を実現しつつ、その耐久性を高くすることが可能となり、ひいては空調装置を小型化し、その耐久性を高くすることが可能となる。
【0048】
特に、この空調コア100では、インレット部23とアウトレット部25とが連結リング31によって互いに固定されている。このため、インレット部23とアウトレット部25とを互いに固定することで生じる締付力が環状部70aを形成する配管27〜30に対して均等に伝達されることとなる。このため、この空調コア100では、環状部70aにおいて、各組付体19、21を挟持する力が発生し、各組付体19、21を保持する力が高められている。このため、空調コア100では、その剛性が高くなり、耐久性が高くなっている。
【0049】
また、この空調コア100では、ペルチェ素子9a、9b、内側フィン11a及び熱交換用フィン15を有する組付体19と、ペルチェ素子9c、9d、内側フィン11b及び熱交換用フィン15を有する組付体21とが環状部70a内に組み付けられている。このため、空調コア100の製造が容易となっている。
【0050】
さらに、この空調コア100では、一方の組付体19の内側フィン11aにおける各第1放熱板110aの間に他方の組付体21における各第1放熱板110bが位置するように、一対の組付体19、21が対面状態で組み付けられている。このため、環状部70aに対して各組付体19、21を組み付けることが容易となっている。これらのため、空調コア100の製造コストの低廉化を実現している。
【0051】
また、この空調コア100では、環状部70aの外側にもペルチェ素子9e〜9hが設けられている。そして、ペルチェ素子9e、9fの一面90a側には、外側フィン13aが設けられており、ペルチェ素子9g、7hの一面90a側には、外側フィン13bが設けられている。このため、各ペルチェ素子9e〜9h及び外側フィン13a、13bによっても空気を加熱又は冷却することが可能となるとともに、ペルチェ素子9e〜9hによって、環状部70a内の冷却水を好適に加熱又は冷却することが可能となっている。このため、この空調コア100では、好適に空調を行うことができるようになっている。
【0052】
(実施例2)
実施例2の空調装置では、図1に示す実施例1における空調コア100に替えて、図4に示す空調コア200を備えている。
【0053】
この空調コア200では、各ペルチェ素子9a〜9dの各一面90aが内側を向いて対面し、各他面90bが外側を向くように環状部70aの各辺に隣接している。より具体的には、ペルチェ素子9aの他面90bが後述の配管53と隣接しており、ペルチェ素子9bの他面90bが後述の配管54と隣接している。また、ペルチェ素子9cの他面90bが後述の配管55と隣接しており、ペルチェ素子9dの他面90bが後述の配管56と隣接している。
【0054】
そして、ペルチェ素子9a、9cの各一面90aには、それぞれ内側フィン41a、41bが設けられている。また、ペルチェ素子9b、9dの各一面90aには、それぞれ内側フィン43a、43bが設けられている。
【0055】
内側フィン41a、41b及び内側フィン43a、43bは、それぞれペルチェ素子9a〜9d側から直角に延びた複数の板状の放熱板410、430が形成されている。放熱板410、430は、それぞれ内側フィン41a、41b及び内側フィン43a、43bの中心から両端部に向かって順にその全長が短くなるように形成されている。また、内側フィン41a、41b及び内側フィン43a、43bは、それぞれ温度センサ17a〜17dが設けられている。
【0056】
これらペルチェ素子9a、内側フィン41a及び熱交換用フィン15(図2参照)によって組付体45を構成しており、ペルチェ素子9b、内側フィン43a及び熱交換用フィン15によって組付体47を構成している。同じくペルチェ素子9c、内側フィン41b及び熱交換用フィン15によって組付体49を構成しており、ペルチェ素子9d、内側フィン43b及び熱交換用フィン15によって組付体51を構成している。そして、チューブ7の内側において、組付体45と組付体49とが対面状態で組み付けられており、組付体47と組付体51とが対面状態で組み付けられている。なお、空調用ファン100aは組付体45〜51の近傍に位置している。
【0057】
環状部70aは、図1に示す空調コア100における配管27〜30に替えて、図4に示す配管53〜56によって構成されている。各配管53〜56内には冷却水が流通可能な流路が形成されている。これらの配管53〜56は、それぞれペルチェ素子9a〜9dが隣接する側にのみ、熱交換用フィン15を挿通可能な挿通孔(符号なし)が形成されている。また、配管53は一端側でインレット部23と接続しており、配管56は他端側でアウトレット部25と接続している。なお、各配管53〜56同士の接続については、上記の配管27〜30と同様である。これらの配管53〜56によって形成された環状部70aは、組付体45、47、49、51をそれぞれ外側から囲包して、組付体45と組付体49及び組付体47と組付体51とをそれぞれ対面状態で挟持しつつ保持している。
【0058】
環状部70aの外側からインレット部23及びアウトレット部25の外側にかけて、真空断熱材57が設けられている。なお、真空断熱材57に替えて、例えば、断熱性を有した発泡樹脂等を採用することもできる。他の構成は実施例1における空調コア100及び空調装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0059】
この空調コア200を備えた空調装置では、暖房運転時及び冷房運転時において、各ペルチェ素子9a〜9dの各一面70における放熱又は吸熱により、各内側フィン41a、41b、43a、43b周りの空気を加熱又は冷却する。そして、空調用ファン100aがこの加熱又は冷却された空気を車室内に供給することにより、車室内の暖房又は冷房を行うことができる。
【0060】
また、この空調コア200では、環状部70の外側、インレット部23の外側及びアウトレット部25の外側が真空断熱材57によって断熱されており、この真空断熱材57は、環状部70、インレット部23及びアウトレット部25のそれぞれの外側に近接した状態で設けられている。このため、チューブ7内の冷却水の熱が外部に放熱され難くなっており、また、チューブ7内の冷却水の冷熱が外部の空気等によって加熱され難くなっている。このため、この空調コア200では、冷却水に対するペルチェ素子9a〜9dの放熱及び吸熱をより効果的に行わせることができる。このため、この空調コア200では、内側フィン41a、41b、43a、43bを介して、空気に対するペルチェ素子9a〜9dの放熱及び吸熱がより効果的に行われることとなり、好適に空気を加熱又は冷却することができるようになっている。このため、この空調コア200を備えた空調装置では、その空調能力を高くすることが可能となっている。
【0061】
また、この空調コア200を備えた空調装置では、例えば、加熱された冷却水の熱によってエンジン等の暖機を行ったり、冷却された冷却水の冷熱によってエンジン等の冷却を行なったりする等、冷却水の熱や冷熱の利用も行い易くなっている。他の作用効果は実施例1における空調コア100及び空調装置と同様である。
【0062】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0063】
例えば、空調コア100において、配管28、30の外側にもペルチェ素子及び外側フィンを設けることができる。この場合には、より一層空気を加熱又は冷却することが可能となり、好適に暖房又は冷房を行うことが可能となる。
【0064】
また、空調コア200において、配管53〜56を全て等しい長さで形成することにより、環状部70a各辺の長さを等しく形成することもきる。この場合には、各内側フィン41a、41b、43a、43bをいずれも同型とすることが可能となる。この場合には各組付体45、47、49、51を同一とすることが可能となり、空調コア200の製造コストを削減することが可能となる。
【0065】
さらに、ラジエータ3について、エンジンやモータ等の駆動装置の冷却を兼ねることもできる。また、バッテリ5aについて、モータ等の電源を兼ねることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の空調コアは車両用空調装置の他、建物の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
9a〜9d…ペルチェ素子
90a…一面
11a、11b、41a、41b、43a、43b…内側フィン(フィン)
7…チューブ
23…インレット部
70a…環状部
25…アウトレット部
90b…他面
100、200…空調コア
19、21、45、47、49、51…組付体
9e〜9h…ペルチェ素子(第2のペルチェ素子)
13a、13b…外側フィン(第2のフィン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のペルチェ素子と、
各該ペルチェ素子の一面に設けられたフィンと、
内部を液体からなる熱交換媒体が流通可能なチューブとを備え、
前記チューブは、インレット部と、該インレット部と連通し、環状に形成されて各前記ペルチェ素子を保持する環状部と、該環状部と連通し、該インレット部と隣接するアウトレット部とからなり、
各該ペルチェ素子は、前記一面が内側を向き、他面が外側を向くように該環状部に隣接していることを特徴とする空調コア。
【請求項2】
前記インレット部と前記アウトレット部とは互いに固定されている請求項1記載の空調コア。
【請求項3】
前記ペルチェ素子及び前記フィンを有する複数の組付体が前記環状部内に組み付けられている請求項1又は2記載の空調コア。
【請求項4】
前記フィンは前記ペルチェ素子から直角に延びる複数の板状に形成され、
一方の前記組付体の該フィンの間に他方の該組付体の該フィンが位置するように、一対の該組付体が対面状態で組み付けられている請求項3記載の空調コア。
【請求項5】
前記環状部の前記外側は断熱されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の空調コア。
【請求項6】
前記環状部の前記外側には、該環状部と他面側で隣接する第2のペルチェ素子が設けられ、
該第2のペルチェ素子の一面には、第2のフィンが設けられている請求項1乃至3のいずれか1項記載の空調コア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159233(P2012−159233A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18877(P2011−18877)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】